JP6665641B2 - センサホルダ部を有する保護カバーの製造方法 - Google Patents
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Description
このような回転速度検出装置を自動車のホイール支持用の転がり軸受(ハブベアリング)に備えた軸受装置も広く用いられており、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べた磁気エンコーダを軸受の軸方向の一端部の内輪に取り付け、保護カバーを軸受の軸方向の一端部の外輪に圧入して密封するように構成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された発明の保護カバーは、合成樹脂で有蓋円筒状に形成された保護カバーに、前記磁気エンコーダの回転を検知するための磁気センサを保持するセンサホルダ部を設けている(特許文献1参照)。
よって、このような保護カバーを用いることにより、厚み方向に貫通するセンサ取付穴が設けられたもの(特許文献1の従来技術の記載である図3(b)参照)のようにセンサ取付穴を形成する壁面及び磁気センサ間にOリング等のゴム製のシール部材を組み込む必要がない。
また、このようなセンサホルダ部を有する保護カバーを設けることにより、軸受の軸方向の一端部が密封されて前記磁気エンコーダに小石や泥水等が当たらないことから前記磁気エンコーダの破損を防止でき、前記磁気エンコーダのアウター側のシール部材が不要になることから摺動抵抗の低減により前記軸受装置の回転トルクを低減できるとともに、前記磁気エンコーダと前記磁気センサとのエアギャップ調整作業の煩雑さを解消できる。
しかしながら、磁気センサの検出精度を向上する観点から仕切壁の厚みが0.3〜0.5mm程度と薄く、本体部の厚みと仕切壁の厚みとの相対差が大きいとともに、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂等の繊維強化樹脂で成形されることが多いため、射出成形において本体部を形成する成形空間内から仕切壁を形成する成形空間内に溶融樹脂を充填した際に、成形品の仕切壁の一部は溶融樹脂が最後に充填され(充填末端)、また仕切壁の一部に周囲からの溶融樹脂の合流部が発生する(ウェルド)。従って、本体部と仕切壁を一体成形すると、仕切壁の一部に充填末端ウェルドが発生する。
よって、気密性の低下や仕切壁の強度低下等の問題があるとともに、仕切壁の板厚が不均一になるという問題がある。
その上、前記のとおり仕切壁の厚みが薄いことから、充填不良が発生して、成形ができない場合もある。
前記軸受の軸方向の一端部を密封するように前記外輪に圧入される、前記磁気センサを保持するセンサホルダ部を有し、前記磁気エンコーダ及び前記磁気センサ間を仕切る、他の部分よりも薄肉の仕切壁が形成されたカップ状の保護カバーの製造方法であって、
前記カップ状を成す円筒状部材及び円盤状部材の中の少なくとも前記円盤状部材を成形するために金型のキャビティ内に溶融樹脂を充填する射出成形における充填工程を有し、
前記射出成形における充填工程において、
前記キャビティのゲート位置から前記仕切壁を形成する薄肉部までの間に、前記薄肉部に前記溶融樹脂を優先的に充填する流路を形成してなること、
前記金型内で前記仕切壁になる部分の厚さを機械的に制御可能な装置を用いて、前記工程の前半では前記仕切壁になる部分が厚くなり、前記工程の後半では前記仕切壁になる部分が薄くなるように制御することにより、前記工程の前半の前記仕切壁になる部分が厚い状態で前記部分に前記溶融樹脂を優先的に充填するとともに、前記後半の工程で前記仕切壁になる部分を薄肉に成形してなること、
又は、前記キャビティの前記仕切壁を形成する薄肉部から離れた位置にメインゲートを配置するとともに、前記仕切壁を形成する薄肉部若しくは前記薄肉部近傍にサブゲートを配置し、前記サブゲートから前記溶融樹脂を射出するタイミングを前記メインゲートから前記溶融樹脂を射出するタイミングに対して制御することにより、前記サブゲートから前記薄肉部に前記溶融樹脂を優先的に充填すること、
により前記仕切壁に充填末端ウェルドが発生しないように前記溶融樹脂を充填することを特徴とする。
よって、このような製造方法により製造されたセンサホルダ部を有する保護カバーにおいて、磁気センサ及び磁気エンコーダ間の仕切壁の気密性の低下や強度低下を阻止できる。
以下で説明する保護カバー1の円盤状部材3において、センサA側の面を表面、磁気エンコーダ16側の面を底面という。
図1の縦断面図に示すように、本発明の実施の形態1に係る軸受装置11は、外輪13に対して内輪12が回転する軸受の他に、磁気エンコーダ16、保護カバー1、及び磁気センサA等を備える。
前記軸受は、外周面に内輪軌道面12Aが形成された内輪12、及び内周面に外輪軌道面13Aが形成された外輪13、並びに、内輪軌道面12A及び外輪軌道面13A間を転動する転動体14,14,…等を有する。
また、磁気エンコーダ16は、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べたものであり、前記軸受の軸方向の一端部に位置する支持部材17により内輪12に固定される。
さらに、保護カバー1は、前記軸受の軸方向の一端部を密封するように外輪13に取り付けられ、磁気センサAを保持するセンサホルダ部3Bを有する。
さらにまた、保護カバー1のセンサホルダ部3Bに装着された磁気センサAは、仕切壁Bを隔てて磁気エンコーダ16に対向し、磁気エンコーダ16の回転を検知するものである。
また、軸受装置11は、前記軸受の軸方向の他端部に配置したシール部材15等を備える。
円盤状部材3は、円筒状部材2と外周部が結合された本体部3A、及び磁気センサAを取り付けるための取付ボルト9が螺合するナット10を保持するとともに、磁気センサAが挿入されるセンサ取付穴8が形成されたセンサホルダ部3Bを有する。
また、図2及び図3に示すように、保護カバー1の円盤状部材3には、その底面に、後述する射出成形に用いる金型のゲートに対応する位置Fから仕切壁Bまでの間に、前記金型のキャビティにおいて仕切壁Bを形成する薄肉部に溶融樹脂を優先的に充填する流路となった厚肉部6が形成されている。
ここで、厚肉部6の形状(円盤状部材3を底面から見た形状)は、図3(b)に示すように、例えば、円盤状部材3の中心Oに位置するゲートに対応する位置Fから仕切壁Bを含むセンサホルダ部3Bに対応する位置に向って(径方向外方へ行くにしたがって)幅寸法が徐々に大きくなる略扇形状であり、厚肉部6の厚み(円盤状部材3の板厚方向の厚み)は、例えば、その周辺の厚みの1.2〜3倍程度である。なお、図4の斜視図に示すように、厚肉部6を形成する際に前記扇形状の途中に肉盗みEを設けて流路を複数個形成してもよい。
厚肉部6の方が、その周囲の薄肉の部分よりも溶融樹脂が流れやすい。また、ゲートに対応する位置Fから仕切壁Bを形成する薄肉部までの溶融樹脂の流路が最短となる厚肉部6の形状が前記略扇形状である。
また、保護カバー1により軸受装置11の軸受の軸方向の一端部が密封されるので、磁気エンコーダ16に小石や泥水等が当たらないことから磁気エンコーダ16の破損を防止できる。
さらに、保護カバー1により軸受装置11の軸受の軸方向の一端部が密封されるので、磁気エンコーダ16のアウター側のシール部材が不要になるため、摺動抵抗の低減により軸受装置11の回転トルクを低減できる。
さらにまた、保護カバー1がセンサホルダ部3Bを備えているので、磁気エンコーダ16と磁気センサAとのエアギャップ調整作業の煩雑さを解消できる。
図3に示す保護カバー1を成形する射出成形について、図5の縦断面図に示す射出成形金型を参照して説明する。
先ず、インサート品であるナット10を固定型18の支持軸20にセットし、インサート品である円筒状部材2を可動型19にセットする。
次に、射出成形機に取り付けられた固定型18及び可動型19を型締めした状態で、溶融樹脂(溶融したプラスチック材料)をスプルーから注入してゲートGから固定型18及び可動型19間のキャビティC内に充填する。
次に、溶融樹脂を冷却・固化させた後、可動型19を開いてインサート成形品を取り出す。なお、可動型19はスライドコアであってもよい。
ここで、前記プラスチックは、例えば、ポリアミド(ナイロン6,ナイロン66,ナイロン612等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又はポリブチレンテレフタレート(PBT)にガラス繊維を20〜70重量%含有したものを用いる。
また、円筒状部材2の軸方向端の屈曲部に本体部3Aの外周部が回り込んでいるので、円筒状部材2と円盤状部材3は機械的に結合する。
さらに、合成樹脂製の円盤状部材3において、他の部分よりも薄肉の仕切壁Bに充填末端ウェルドがないので、磁気センサA及び磁気エンコーダ16間に位置する仕切壁Bの気密性の低下や強度低下を阻止できる。
以下で説明する図6〜図11の形状の変形例において、図2及び図3と同じ符号は、図2及び図3について説明した構成部品や部分と同一又は相当する構成部品や部分を示している。
以下の変形例における表面側に突出する厚肉部6の厚みは、その周辺の厚みの1.2〜8倍程度であり、最大でセンサ取付穴8の周壁の高さまでである。また、底面側に突出する厚肉部6の厚みは、その周辺の厚みの1.2〜3倍程度である。
また、ゲートに対応する位置Fを円盤状部材3の中心Oから径方向へずらしている。
そして、厚肉部6をゲートに対応する位置Fから径方向へ延びるように形成している。
さらに、厚肉部6の高さをセンサ取付穴8の周壁の高さよりも低くしている。
そして、厚肉部6を、ゲートに対応する位置Fから、中心Oからセンサ取付穴8(仕切壁B)の中心を結ぶ径方向と平行に延びるように形成している。なお、厚肉部6を、ゲートに対応する位置Fから、前記径方向と平行な線に対して角度を持たせた方向に延びるように形成してもよい。
また、厚肉部6の高さを、第1変形例と同様にセンサ取付穴8の周壁の高さよりも低くしている。
また、ゲートに対応する位置Fを円盤状部材3の中心Oから径方向へずらしている。
そして、厚肉部6を、ゲートに対応する位置Fから径方向外方へ行くにしたがって幅寸法が徐々に大きくなる略扇形状に形成している。
さらに、表面側の厚肉部6の高さをセンサ取付穴8の周壁の高さよりも低くしている。
図12の縦断面図に示すように、本発明の実施の形態2に係る保護カバー1において、実施の形態1の図3と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
ここで、実施の形態2に係る保護カバー1には、実施の形態1に係る保護カバー1のような厚肉部6がない。
先ず、図13(a)の射出成形金型において、インサート品であるナット10を固定型18の支持軸20にセットし、インサート品である円筒状部材2を可動型19にセットする。
次に、射出成形機に取り付けられた固定型18及び可動型19を型締めした状態で、溶融樹脂Pをスプルーから注入してゲートGから固定型18及び可動型19間のキャビティC内に充填する。
また、図13(b)に示す射出成形における充填工程の後半では、金型内で仕切壁になる部分21の厚さを機械的に制御可能な装置Dの加圧ピン7を進出させて、仕切壁になる部分21が薄くなるように制御しており、それにより仕切壁になる部分21が薄肉に成形される。
よって、図12の仕切壁Bに充填末端ウェルドが発生しないので、磁気センサA及び磁気エンコーダ16間に位置する仕切壁Bの気密性の低下や強度低下を阻止できる。
先ず、図14の射出成形金型において、インサート品であるナット10を固定型18の支持軸20にセットし、インサート品である円筒状部材2を可動型19にセットする。
図14の射出成形金型には、図12の仕切壁Bを形成する薄肉部4から離れた位置にメインゲートMGが配置され、図12の仕切壁Bを形成する薄肉部4の近傍には、サブゲートSGが配置される。なお、サブゲートSGは、仕切壁Bを形成する薄肉部4に配置してもよい。
ここで、サブゲートSGから溶融樹脂を射出するタイミングは、メインゲートMGから溶融樹脂を射出するタイミングに対して、サブゲートSGから薄肉部4に溶融樹脂を優先的に充填できるように制御される。
例えば、キャビティC内に溶融樹脂を充填する初期の段階では、メインゲートMGから流路の断面積が大きい部分に溶融樹脂を先行して充填させ、薄肉部4近傍の本体部3Aとセンサホルダ部3Bがある程度充填されたタイミングで、サブゲートSGからフレッシュな溶融樹脂を充填させることにより、薄肉部4の外側でメインゲートMGからの溶融樹脂と合流させる。
よって、図12の仕切壁Bに充填末端ウェルドが発生しないので、磁気センサA及び磁気エンコーダ16間に位置する仕切壁Bの気密性の低下や強度低下を阻止できる。
なお、図14の射出成形金型により製造された図12のような保護カバー1には、メインゲートMGのゲート痕、及びサブゲートSGのゲート痕が残る。また、これらのゲート痕を除去加工した場合は、除去加工部が形成される。
2 円筒状部材(インサート品)
3 円盤状部材
3A 本体部
3B センサホルダ部
4 仕切壁を形成する薄肉部
5 薄肉部に溶融樹脂を優先的に充填する流路
6 厚肉部
7 加圧ピン
8 センサ取付穴
9 取付ボルト
10 ナット(インサート品)
10A 周溝
11 軸受装置
12 内輪
12A 内輪軌道面
13 外輪
13A 外輪駆動面
14 転動体
15 シール部材
16 磁気エンコーダ
17 支持部材
18 固定型
19 可動型
20 支持軸
21 仕切壁になる部分
A 磁気センサ
B 仕切壁
C キャビティ
D 仕切壁になる部分の厚さを機械的に制御可能な装置
E 肉盗み
F 金型のゲートに対応する位置
G ゲート
MG メインゲート
O 円盤状部材の中心
P 溶融樹脂
SG 時間制御が可能なサブゲート
Claims (1)
- 外周面に内輪軌道面が形成された内輪、及び内周面に外輪軌道面が形成された外輪、並びに、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面間を転動する転動体を有する軸受、前記軸受の軸方向の一端部に位置して前記内輪に固定された、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べてなる磁気エンコーダ、並びに、前記磁気エンコーダの磁極に対向して前記磁気エンコーダの回転を検知するための磁気センサを備えた軸受装置において、
前記軸受の軸方向の一端部を密封するように前記外輪に圧入される、前記磁気センサを保持するセンサホルダ部を有し、前記磁気エンコーダ及び前記磁気センサ間を仕切る、他の部分よりも薄肉の仕切壁が形成されたカップ状の保護カバーの製造方法であって、
前記カップ状を成す円筒状部材及び円盤状部材の中の少なくとも前記円盤状部材を成形するために金型のキャビティ内に溶融樹脂を充填する射出成形における充填工程を有し、
前記射出成形における充填工程において、
前記キャビティのゲート位置から前記仕切壁を形成する薄肉部までの間に、前記薄肉部に前記溶融樹脂を優先的に充填する流路を形成してなること、
前記金型内で前記仕切壁になる部分の厚さを機械的に制御可能な装置を用いて、前記工程の前半では前記仕切壁になる部分が厚くなり、前記工程の後半では前記仕切壁になる部分が薄くなるように制御することにより、前記工程の前半の前記仕切壁になる部分が厚い状態で前記部分に前記溶融樹脂を優先的に充填するとともに、前記後半の工程で前記仕切壁になる部分を薄肉に成形してなること、
又は、前記キャビティの前記仕切壁を形成する薄肉部から離れた位置にメインゲートを配置するとともに、前記仕切壁を形成する薄肉部若しくは前記薄肉部近傍にサブゲートを配置し、前記サブゲートから前記溶融樹脂を射出するタイミングを前記メインゲートから前記溶融樹脂を射出するタイミングに対して制御することにより、前記サブゲートから前記薄肉部に前記溶融樹脂を優先的に充填すること、
により前記仕切壁に充填末端ウェルドが発生しないように前記溶融樹脂を充填することを特徴とするセンサホルダ部を有する保護カバーの製造方法。
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