JP7110767B2 - 活性エネルギー線硬化型インク、インクジェット記録方法および印刷物 - Google Patents
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Description
その中で、アクリル酸エステル化合物を主成分とする光重合性インクジェットインクは公知である(例えば特許文献1等参照)。しかし、アクリル酸エステル化合物の多くは皮膚に触れると腫れやかゆみなどを引き起こす皮膚感さ性を有している。
一方、アクリル酸エステル化合物のかわりにメタクリル酸エステル化合物を用いることにより、皮膚感さ性を改善できることが知られているが、重合反応性が低下するため光重合性インクジェットインクの重要な特性のひとつである速乾性が得られず、高速印刷などの用途には使用しにくいという問題点があった。なお、メタクリロイルオキシエチルアクリルアミドのように、アクリルアミド構造を有するモノマーは皮膚感さ性が低く、なおかつ反応性も良好で速乾性にも優れる(特許文献2参照)。
なお、光重合性インクジェットインクとして水や有機溶剤を使用する方式も存在するが、これらの場合は水や有機溶剤を蒸発させるための熱源などが必要となるため省エネルギーの観点で好ましくない。したがって光重合性インクジェットインクは、水や有機溶剤を含まないことが望ましい。
しかし、これらの手法では、非吸収性媒体と画像層との密着性が今だ不十分である。
1)エステル構造を有し、150以上200以下の分子量を有するアクリルアミド化合物(A1)と、
フェニルケトン構造と、ヒドロキシ基およびリン元素から選択された1種以上とを有し、かつアミノ基を有しない、重合開始剤(B1)と
を含み、
前記アクリルアミド化合物(A1)が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク。なお、一般式(1)は実施形態で示す。
(一般式(1)中、R 1 は水素原子または炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表し、R 2 は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表し、R 3 は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。R 1 はR 2 と結合して、窒素原子を含んだ環構造を形成してもよい。)
フェニルケトン構造と、ヒドロキシ基およびリン元素から選択された1種以上とを有し、かつアミノ基を有しない、重合開始剤(B1)と
を含む。
アクリルアミド化合物(A1)は、エステル構造を有し、かつ150以上200以下の分子量を有し、活性エネルギー線硬化型インクにおける重合性モノマーである。
アクリルアミド基は、重合性を示し、アクリロイル基(CH2=CH-CO-)がアミン化合物の窒素原子と結合した基をいう。アクリルアミド化合物(A1)の合成方法は特に限定されないが、アクリル酸クロリドやアクリル酸無水物等の活性化されたアクリロイル基を有する化合物を、アミン化合物と反応させる方法が挙げられる。アクリルアミド化合物(A1)を合成する際に用いることができるアミン化合物としては、1級アミン及び2級アミンのいずれでもよいが、アミド基間の水素結合が生じず低粘度化に有利な3級アミドが得られる点で、2級アミンであることが好ましい。
アクリルアミド化合物(A1)が有するエステル構造は、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキルエステルであることが好ましい。ここで、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキルとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
一般式(1)中、R2は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を表す。R2としては、例えば、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、2-メチルプロパン-1,1-ジイル基、2-メチルプロパン-1,2-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基などが挙げられる。
一般式(1)中、R3は炭素数1~4の直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。R3としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
また、本発明の効果が向上するという観点から、R3が炭素数1~2のアルキル基であるのが好ましい。
なお、R1、R2及びR3の炭素数の合計は2~6であるのが好ましい。
一般式(2)中、R4は単結合、又は炭素数1~3の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表す。R4としては、例えば、単結合、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基などが挙げられる。
一般式(2)中、R5は炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。R5としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
ただし、環X、R4及びR5の炭素数の合計は3~6であるのが好ましい。
アクリルアミド化合物(A1)以外の重合性化合物(A2)としては、(メタ)アクリル酸エステル類に代表される公知の重合性モノマーを適用できる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルをいい、(メタ)アクリレート等についても同様の意味である。
また、(メタ)アクリル酸の誘導体以外にも、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド等のN-ビニル化合物類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等のビニルエーテル類;アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類も用いることができる。
なお、上記のエステル構造を含まないアクリルアミド化合物についても、その他の重合性化合物(A2)として使用することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、フェニルケトン構造と、ヒドロキシ基およびリン元素から選択された1種以上とを有し、かつアミノ基を有しない、重合開始剤(B1)を含有する。
このような重合開始剤(B1)は、黄変の抑制にとくに効果がある。重合開始剤(B1)としては皮膚感さ性が陰性であるもの、または陰性となる濃度範囲で用いることがさらに好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)インクであれば、当該インクを扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクの粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該インクをノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~15mPa・sがより好ましく、6~12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34'×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
活性エネルギー線硬化型インクを硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されないが、省エネルギー化や装置小型化の観点から、紫外線発光ダイオード(以下、UV-LEDともいう)から照射される波長285nm以下にピークを有する紫外線が好ましい。なお、重合開始剤の光吸収スペクトルは一般にブロードであるが、低波長側に吸収域を有するものが多く、図4のような285nm以下にピークを有するUV-LEDを用いることは、インクの硬化性向上及び使用可能な重合開始剤が多岐に渡る点においても好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクの用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
さらに、本発明の活性エネルギー線硬化型インクは、2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用下塗り材料としても用いることができる。この立体造形用下塗り材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、図2や図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、図2は、本発明の活性エネルギー線硬化型インクを所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、図3は、本発明の活性エネルギー線硬化型インク5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクを用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、活性エネルギー線硬化型インクを硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられる。
本発明の組成物収容容器は、活性エネルギー線硬化型インクが収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、被記録媒体上に下塗り層用インクをインクジェット方式により付与する下塗り層用インク付与工程と、前記付与された下塗り層用インクを硬化させることなく、前記下塗り層用インク上に画像形成用インクをインクジェット方式により付与する画像形成用インク付与工程と、前記下塗り層用インクおよび前記画像形成用インクに活性エネルギー線を照射して前記下塗り層用インクおよび前記画像形成用インクを硬化させる硬化工程と、を有し、前記下塗り層用インクが、前記本発明の活性エネルギー線硬化型インクであることを特徴とする。
インクジェット方式としては、特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
まず、供給ロール21から供給された被記録媒体22に、本発明の下塗り層用インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える印刷ユニット40により下塗り層用インクが吐出され、下塗り層用インク層を形成する。その後、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、被記録媒体22に設けられた下塗り層上に画像形成用インクが吐出される。その後、下塗り層用インクおよび画像形成用インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により被記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する被記録媒体に対し、ヘッドを移動させて被記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に被記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから被記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
とくに本発明では、被記録媒体22が非吸収性媒体であっても、硬化後のタック感、黄変が抑えられ、下塗り層用インクおよび画像形成用インクとの密着性を改善できる。
ここで非吸収性媒体とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する記録媒体を指しており、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれる。
より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である被記録媒体を指す。
前記非吸収性媒体としては、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムなどのプラスチック基材が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型用インクの調製に用いた原材料の略号、化合物名、メーカー名及び製品名を表1に示した。
市販されていない原材料は、合成例1~6に示す方法で合成した。合成した化合物の同定は核磁気共鳴分光法(使用装置:日本電子株式会社製「JNM-ECX500」)で実施し、純度の測定はガスクロマトグラフ法(使用装置:株式会社島津製作所製「GCMS-QP2010 Plus」)で実施した。これらの化学分析は定法により実施した。
<N-アクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(A1-1)の合成>
N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩(シグマアルドリッチジャパン合同会社製試薬)0.30モル、炭酸カリウム(関東化学株式会社製試薬)0.45モル、及び水400mLを0~10℃で攪拌混合し、その温度を保ったままアクリル酸クロリド(和光純薬工業株式会社製試薬)0.33モルをゆっくり滴下した。滴下終了後、酢酸エチル(関東化学株式会社製試薬)400mLで3回抽出し、酢酸エチル層を合わせて水400mLで1回洗浄した。酢酸エチルを減圧下40℃で留去して、目的のN-アクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(A1-1)0.20モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.3質量%であった。
なお、N-アクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(A1-1)の分子量は157.2であり、公知の化合物である(CAS登録番号72065-23-7)。
<N-アクリロイル-N-メチルグリシンエチルエステル(A1-2)の合成>
合成例1において、N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩をN-メチルグリシンエチルエステル塩酸塩(東京化成工業株式会社製試薬)に変更した以外は合成例1と同様にして、目的のN-アクリロイル-N-メチルグリシンエチルエステル(A1-2)0.22モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.5質量%であった。
なお、N-アクリロイル-N-メチルグリシンエチルエステル(A1-2)の分子量は171.2であり、公知の化合物である(CAS登録番号170116-05-9)。
<N-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸メチル(A1-3)の合成>
合成例1において、N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩をピペリジン-4-カルボン酸メチル(東京化成工業株式会社製試薬)に変更した以外は合成例1と同様にして、目的のN-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸メチル(A1-3)0.25モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.6質量%であった。
なお、N-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸メチル(A1-3)の分子量は197.2であり、公知の化合物である(CAS登録番号845907-51-9)。
<N-アクリロイルピペリジン-3-カルボン酸エチル(A2-1)の合成>
合成例1において、N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩をピペリジン-3-カルボン酸エチル(東京化成工業株式会社製試薬)に変更した以外は合成例1と同様にして、目的のN-アクリロイルピペリジン-3-カルボン酸エチル(A2-1)0.26モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.2質量%であった。
なお、N-アクリロイルピペリジン-3-カルボン酸エチル(A2-1)の分子量は211.3であり、公知の化合物である(CAS登録番号1156229-85-4)。
<N-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸エチル(A2-2)の合成>
合成例1において、N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩をピペリジン-4-カルボン酸エチル(東京化成工業株式会社製試薬)に変更した以外は合成例1と同様にして、目的のN-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸エチル(A2-2)0.27モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は99.2質量%であった。
なお、N-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸エチル(A2-2)の分子量は211.3であり、公知の化合物である(CAS登録番号845907-79-1)。
N-アクリロイルピペリジン-4-カルボン酸エチル(A2-2)は、アクリルアミド基、及びエステル構造を有するが、分子量が211.3であるため、本発明のアクリルアミド化合物(A1)には該当しない化合物である。
N-(ブトキシメチル)アクリルアミド(A2-3)は、市販品(東京化成工業株式会社製試薬)を用いた。
N-(ブトキシメチル)アクリルアミド(A2-3)は、分子量が157.2であり、アクリルアミド基を有するが、エステル構造を有さないため、本発明のアクリルアミド化合物(A1)には該当しない化合物である。
<N-メタクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(A2-4)の合成>
合成例1において、アクリル酸クロリドをメタクリル酸クロリド(和光純薬工業株式会社製試薬)に変更した以外は合成例1と同様にして、目的のN-メタクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(A2-4)0.22モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は97.2%であった。
N-メタクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(A2-4)は、分子量が171.2であり、エステル構造を有するが、アクリルアミド基を有さないため、本発明のアクリルアミド化合物(A1)には該当しない化合物である。
(1)LLNA法(Local Lymph Node Assay)による皮膚感さ性試験において、感さ性の程度を示すStimulation Index(SI値)が3未満である化合物
(2)MSDS(化学物質安全性データシート)において、「皮膚感さ性陰性」又は「皮膚感さ性なし」と評価された化合物
(3)文献〔例えば、Contact Dermatitis 8 223-235(1982)〕において「皮膚感さ性陰性」又は「皮膚感さ性なし」と評価された化合物
(1)については、例えば「機能材料」2005年9月号、Vol.25、No.9、P55にも示されるように、SI値が3未満の場合に皮膚感さ性が陰性であると判断される。SI値が低いほど皮膚感さ性が低いことになるから、本発明ではSI値がなるべく低いモノマーを用いることが好ましく、3未満、好ましくは2以下、更に好ましくは1.6以下のものを用いる。
<活性エネルギー線硬化型インク組成物の作製>
A1-1:95.8質量%、B1-1:4.0質量%、重合禁止剤:0.1質量%、界面活性剤:0.1質量%を順に添加して2時間撹拌し、目視にて溶解残りがないことを確認した後、メンブランフィルターでろ過して粗大粒子を除去し、活性エネルギー線硬化型インクを作製した。
実施例1において、下記表2、表3の組成及び含有量(質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ活性エネルギー線硬化型インクを作製した。
また比較例9はトルエンを10%配合した。
活性エネルギー線硬化型インクをプラスチック製の組成物収容容器に充填し、吐出手段としてのインクジェットヘッド(株式会社リコー製「MH5440」)、活性エネルギー線照射手段としてのUV-LED(シーシーエス社製、波長285nm、照射面における照度30mW/cm2)、吐出を制御するコントローラー、及び組成物収容容器からインクジェットヘッドへの供給経路を備えた像形成装置に組み込んだ。活性エネルギー線硬化型インクの粘度が10~12mPa・sとなるように適宜インクジェットヘッドの温調を行い、汎用的なフィルム材料である市販のPETフィルム(東洋紡株式会社製「コスモシャインA4100」、厚み188μm)及びガラス基材上に活性エネルギー線硬化型インクを膜厚5μmでインクジェット吐出し、UV-LEDで紫外線照射を行って印刷画像を作製した。このとき、紫外線照射の積算光量を1000mJcm2としたものと、10000mJcm2としたものを作成した。
上記の方法で作製された印刷画像を指触して、粘着感の状態を以下の4段階の基準で評価し、下記表4、5に併せて示した。なお、B以上が、実用可能である。なお、積算光量を10000mJcm2とした際に硬化しなかった場合、「-」と表示した。
A:積算光量1000mJcm2において、表面も内部も粘着感がない。
B:積算光量10000mJcm2において、表面も内部も粘着感がない。
C:積算光量10000mJcm2において、表面または内部のいずれか一方に粘着感がある。
D:積算光量10000mJcm2において、表面および内部ともに粘着感がある。
印刷画像を以下の3段階の基準で評価し、下記表4、5に併せて示した。なお、△以上が、実用可能である
○:目視で黄変がわからない。
△:わずかに黄変がわかる。
×:明確に黄変がわかる。
硬化させたベタ塗膜に対して、JIS-K-5600-5-6に示されるクロスカット法による付着性を評価し、はがれが見られなかったり、カットの交差点における小さなはがれのみの場合は○とし、カット部周辺が少しはがれが見られた場合は△、明確にはがれが見られた場合は×とした。実用上△以上が問題ないとした。
<画像形成用インク>
プラスチック製ビンに、着色剤、分散剤、および重合性化合物(A1-1又はA2-5又は両者)を表6に示す配合量(質量%)で計り取り、これに0.1mmジルコニアビーズ100部を加えて、この混合物をペイントコンディショナーにより2時間分散処理して、一次分散体を得た。次に、得られた一次分散体に、表6の配合量で残りの成分を加え、マグネチックスターラーにより混合物を30分攪拌した。攪拌後、グラスフィルターを用いて、この混合物を吸引濾過し、各画像形成用インクを調製した。なお、表6中、HDDAは1,6-ヘキサンジオールジアクリレートであり、TMPTAはトリメチロールプロパントリアクリレートである。また、重合禁止剤および界面活性剤は表1に記載のものと同様である。
実施例1の活性エネルギー線硬化型インク及び各画像形成用インク(G1インク)をプラスチック製の組成物収容容器にそれぞれ充填し、吐出手段としてのインクジェットヘッド(株式会社リコー製「MH5440」)、活性エネルギー線照射手段としてのUV-LED(シーシーエス社製、波長285nm、照射面における照度30mW/cm2)、吐出を制御するコントローラー、及び組成物収容容器からインクジェットヘッドへの供給経路を備えた像形成装置に組み込んだ。実施例1の活性エネルギー線硬化型インクの粘度が10~12mPa・sとなるように適宜インクジェットヘッドの温調を行い、汎用的なフィルム材料である市販のPETフィルム(東洋紡株式会社製「コスモシャインA4100」、厚み188μm)及びガラス基材上に実施例1の活性エネルギー線硬化型インクを膜厚5μmでインクジェット吐出し、UV-LEDで1000mJcm2の紫外線照射を行って下塗り層を形成後、下塗り層上に、G1の画像形成用インクを7μmの膜厚でインクジェット吐出、紫外線硬化し、ベタ画像を作製し、前記の[硬化性(タック感)の判定]、[硬化物の黄変の判定]、[密着性の評価]を行った。また、下記のように画質評価を行った。結果を表7の実施例11として示す。また実施例11において、表7、8に示すように各インク組成を変更したこと以外は、実施例11を繰り返した。結果を実施例12~19および比較例10~18として表7、8に示す。
形成した画像を目視観察して、はじき、にじみ、色むらのない場合を○、少し認められるが実施上問題ない場合は△、いずれか一つでもはっきり認められた場合は×とした。
前記インクジェットによる画像形成1において、下塗り層を形成する活性エネルギー線硬化型インクの硬化を行わないこと以外は、前記インクジェットによる画像形成1を繰り返し、同様の評価を行った。結果を表9、10に示す。
3 可動ステージ
4 活性エネルギー線
5 活性エネルギー線硬化型インク
6 硬化層
21 供給ロール
22 被記録媒体
23a、23b、23c、23d 印刷ユニット
24a、24b、24c、24d 光源
25 加工ユニット
26 印刷物巻取りロール
30 造形物用吐出ヘッドユニット
31、32 支持体用吐出ヘッドユニット
33、34 紫外線照射手段
35 立体造形物
36 支持体積層部
37 造形物支持基板
40 印刷ユニット
Claims (6)
- エステル構造を有し、150以上200以下の分子量を有するアクリルアミド化合物(A1)と、
フェニルケトン構造と、ヒドロキシ基およびリン元素から選択された1種以上とを有し、かつアミノ基を有しない、重合開始剤(B1)と
を含み、
前記アクリルアミド化合物(A1)が、下記一般式(1)で表されることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インク。
- 前記アクリルアミド化合物(A1)において、R3が炭素数1~2のアルキル基である請求項1に記載の組成物を含む活性エネルギー線硬化型インク。
- 有機溶剤を含まない請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インク。
- 被記録媒体上に下塗り層用インクをインクジェット方式により付与する下塗り層用インク付与工程と、
前記付与された下塗り層用インクを硬化させることなく、前記下塗り層用インク上に画像形成用インクをインクジェット方式により付与する画像形成用インク付与工程と、
前記下塗り層用インクおよび前記画像形成用インクに活性エネルギー線を照射して前記下塗り層用インクおよび前記画像形成用インクを硬化させる硬化工程と、
を有するインクジェット記録方法であって、
前記下塗り層用インクが、請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクである、
インクジェット記録方法。 - 前記硬化工程において、紫外線発光ダイオード(UV-LED)を用い、前記下塗り層用インクおよび前記画像形成用インクに、波長285nm以下にピークを有する紫外線を照射する請求項4に記載のインクジェット記録方法。
- 被記録媒体上に、請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクの硬化物からなる下塗り層と、前記下塗り層上に設けられた画像層と、を備える印刷物。
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