JP7110756B2 - 脂肪酸マグネシウム塩組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、水分散体を調製した際の分散性が良好な脂肪酸マグネシウム塩組成物に関する。なお、以下では「脂肪酸マグネシウム塩組成物」を「脂肪酸マグネシウム塩」と表記することもある。
脂肪酸マグネシウム塩などの金属石鹸は、樹脂加工分野、化粧品分野、電子印刷分野、セメント分野、塗料分野および食品分野など多くの分野において様々な目的のために幅広く用いられている。特に、化粧品、塗料分野においては、金属石鹸粉体の平滑性や被覆性、分散性を活かし顔料等の分散剤として用いられている。
金属石鹸は直接法や複分解法により工業的に製造されている。直接法は脂肪酸と金属酸化物又は金属水酸化物とを直接反応させる方法であり、複分解法は脂肪酸に塩基性化合物を反応させた後、金属塩を反応させる方法である。
直接法による金属石鹸の製造方法としては、例えば、加熱式混練型反応器内で脂肪酸を溶解させ、無溶媒下で金属の酸化物又は水酸化物を徐々に添加する方法がある。この方法においては反応で水が生成するため、熱による乾燥工程を経て金属石鹸に付着する水を除去し、目的の金属石鹸を製造している。
一方、複分解法は、水性の溶媒中で脂肪酸に塩基性化合物を反応させ脂肪酸の塩基性化合物とし、さらに金属又は半金属を含有する金属塩を反応させる方法である。この方法においても水性溶媒を用いるため、熱による乾燥工程を経て金属石鹸に付着する水を除去し、目的の金属石鹸を製造している。乾燥工程により、金属石鹸表面に付着した水分はほぼ揮発し、通常1%程度まで除去した状態で用いる(特許文献1)。
こうして得られた金属石鹸は一般的に疎水性や撥水性が高い粉体である。建材分野、紙・パルプ分野、化粧品分野などでは、金属石鹸の撥水性が高いことを利用して、防水剤、コート紙製造時の潤滑剤、コート液の粘度調整剤として金属石鹸を溶媒に分散させて使用することがあり、特に水系の溶媒に金属石鹸を分散させる場合には工夫が必要である。
特許文献2には、脂肪酸金属塩水分散体及びポリオキシアルキレン化合物を混合して得られる、塗工紙用として好適な潤滑離型剤の製造法が提案されており、脂肪酸金属塩水分散体の体積平均粒子径が0.1~7μmであることが記載されている。同文献には、本製造法により、脂肪酸金属塩から構成される乾燥体(皮張り)が発生しにくい潤滑離型剤が得られることが記載されている。しかし、例えば化粧品分野では、粒子径が細かくなることで肌への感触が悪くなるため、塗工紙以外の他分野で本水分散体を用いる場合には使用感などの点で問題がある。
特許文献3には、脂肪酸金属石鹸を含有する皮膚外用剤が提案されており、ローション製剤などの水系製剤形に金属石鹸を添加することで、ケーキングの発生を抑制して粉体を含有させることが可能であると記載されている。しかし、金属石鹸自体の水分散性については問題があり、疎水性の金属石鹸粉末を分散剤として用いるための改善が求められていた。
特開2004-300335号公報 特開2007-231446号公報 特開2002-193739号公報
本発明の目的は、水分散体を調製した際の分散性が良好な金属石鹸を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、金属石鹸のうち特にトラップ水を含有する脂肪酸マグネシウム塩において、熱重量分析(TGA)測定によるトラップ水含有量が所定範囲であることによって、上記目的を達成できることを見出した。
なお、トラップ水とは、金属石鹸の分子中に若干取り込まれており、一定以上の熱を加えないと除去できない水分である。
即ち本発明は、トラップ水を含有し、下記(1)式を満たすことを特徴とする炭素数8~22の脂肪酸マグネシウム塩である。
0.4≦トラップ水含有量(mol/mol)≦2.0・・・(1)
但し、トラップ水含有量とは、前記脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析測定において、70℃から120℃の間までに減少する、前記脂肪酸マグネシウム塩1molに対する水のmol数である。
トラップ水を含有する炭素数8~22の脂肪酸マグネシウム塩のうち、脂肪酸が飽和脂肪酸であり、分子中に置換基を持たない脂肪酸マグネシウム塩は下記式で表される。
(CCOO)Mg・AHO(n:8~22の整数、m:17~45の整数、A:トラップ水含有量)
トラップ水含有量は、脂肪酸マグネシウム塩を加熱したときの70℃から120℃までの間の脂肪酸マグネシウム塩の減量、即ち加熱減量X(%)を用いて下記(2)式で表され、(1)式および(2)式から(3)式の関係が導き出される。
Figure 0007110756000001
Figure 0007110756000002
なお、(2)式および(3)式中のMは炭素数8~22の脂肪酸マグネシウム塩のモル質量(g/mol)であり、本発明においては少数第一位を四捨五入した整数値である。
本発明の金属石鹸としての脂肪酸マグネシウム塩によれば、当該金属石鹸を含有する水分散体の分散性を向上させることができる。
図1は実施例1の脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析による測定結果を示すチャートである。 図2は実施例2の脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析による測定結果を示すチャートである。 図3は比較例1の脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析による測定結果を示すチャートである。 図4は比較例3の脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析による測定結果を示すチャートである。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の脂肪酸マグネシウム金属塩は、例えば複分解法により製造することができ、脂肪酸に塩基性化合物を反応させて脂肪酸塩基性化合物を調製した後、マグネシウム塩を反応させて製造することができる。以下、複分解法により製造する方法について説明する。
脂肪酸は炭素数が8~22であり、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよい。さらに、脂肪酸の構造中に水酸基、アルデヒド基、エポキシ基等の官能基が含まれていてもよい。かかる脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられ、好ましくは炭素数12~18の脂肪酸であり、特に好ましくはミリスチン酸である。これらの脂肪酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物、及びアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類などが挙げられる。脂肪酸アルカリ金属塩を形成したときに水に対する溶解度が高い点から、好ましくはナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)である。これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪酸と塩基性化合物との反応は水性溶媒中で行なわれる。水性溶媒としては、一般的に使用される水が用いられ、例えば、イオン交換水、精製水、または蒸留水などのように、金属イオンなどの不純物の少ないものが好ましい。
また、トラップ水を本発明規定の範囲に含有する金属石鹸を容易に製造できる点で、水と低級アルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。低級アルコールとしては炭素数2~3の脂肪族アルコールが好ましく、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられ、エタノールが特に好ましい。水と低級アルコールとの混合比率については特に制限を受けないが、水100質量部に対して、低級アルコールは1~50質量部が好ましく、5~40質量部が特に好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。
脂肪酸と塩基性化合物との反応温度は、一般に、脂肪酸の融点以上であり、かつ100℃以下である。脂肪酸の融点未満の温度で反応を行うと、脂肪酸塩基性化合物の溶解度が低下するので、目標物質は得られるが、最終的に得られる金属石鹸量が反応溶液量に対して少なく生産効率が低下するおそれがある。100℃を超える温度で反応を行うと、金属石鹸の微細粒子同士の凝集が起こり、得られる金属石鹸の分散安定性が低下するおそれがある。好ましくは75~100℃であり、特に好ましくは80~95℃、さらに好ましくは75~95℃である。反応温度が低すぎると、脂肪酸と塩基性化合物との反応率が低下するおそれがある。
脂肪酸と塩基性化合物との混合割合は、特に制限はなく、状況に応じて適宜選定すればよい。通常は、脂肪酸に対する塩基性化合物の当量比が0.95~1.10の範囲になるように選ぶのが有利である。その当量比が上記範囲を逸脱すると未反応原料が多く残存し、その除去工程が必要となる場合がある。残存不純物を少なくするためには、該当量比は1.00~1.05の範囲が好ましい。
脂肪酸と塩基性化合物との反応により脂肪酸塩基性化合物が得られ、これとマグネシウム塩とを反応させる。脂肪酸と塩基性化合物との反応により得られた脂肪酸塩基性化合物を単離した後にマグネシウム塩を反応させてもよく、脂肪酸と塩基性化合物との反応の後に連続的にマグネシウム塩を反応させてもよい。
マグネシウム塩としては、特に限定されないが、水に対する溶解度が高く、効率的に脂肪酸塩基性化合物と反応する点から、マグネシウム塩化物、マグネシウム硫酸塩、及びマグネシウム硝酸塩が好ましい。
脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応は、例えば、マグネシウム塩の水溶液、及び脂肪酸塩基性化合物の水溶液を別々に調製した後、これらを混合することにより行なうことができる。例えば、脂肪酸塩基性化合物の水溶液中に、マグネシウム塩の水溶液を添加する、あるいは別の反応槽に両者を添加することによって行なうことができる。脂肪酸塩基性化合物の水溶液と、マグネシウム塩の水溶液との混合に際しては、例えば、脂肪酸塩基性化合物の水溶液に対して、マグネシウム塩の水溶液を一度に投入すると、得られる金属石鹸粒子の形状が不均一になり、粒度分布が広くなるおそれがある。したがって、本発明においては、脂肪酸塩基性化合物の水溶液に対して、マグネシウム塩の水溶液を適度な速度で徐々に滴下することが好ましい。
脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩の混合割合は、特に制限はなく、状況に応じて適宜選定すればよい。通常は、脂肪酸塩基性化合物に対するマグネシウム塩の当量比が0.9~1.1の範囲になるように選ぶのが有利である。その当量比が上記範囲を逸脱すると未反応原料が多く残存し、その除去工程が必要となる場合がある。残存不純物を少なくするためには、該当量比は0.95~1.05の範囲が好ましい。
脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応は、脂肪酸塩基性化合物の溶解度を考慮して、当業者が通常行う温度条件下で行なうことができるが、脂肪酸と塩基性化合物とを反応させる際の温度条件と同じ温度条件下で行なうことが好ましい。
また、脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応に際しては、通常、溶媒として水を用いるが、脂肪酸と塩基性化合物との反応の場合と同様に、水と低級アルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応に用いられる低級アルコールや水と低級アルコールとの混合比率は、脂肪酸と塩基性化合物との反応の場合と同様である。
金属石鹸製造時の脂肪酸塩基性化合物の濃度は、金属石鹸の生産性の点、及び脂肪酸塩基性化合物水溶液又は得られる金属石鹸スラリーのハンドリング性の点から、通常、水溶液中、1~20質量%、好ましくは5~15質量%である。脂肪酸塩基性化合物の濃度が低すぎる場合は、金属石鹸の生産性が低下することがある。濃度が高すぎる場合は、脂肪酸塩基性化合物水溶液又は得られる金属石鹸スラリーの粘度が上昇するので、均一な反応を行うことが困難となることがある。
なお、マグネシウム塩の濃度は、金属石鹸の生産性の点、及び脂肪酸塩基性化合物水溶液又は得られる金属石鹸スラリーのハンドリング性の点から、通常、水溶液中、10~50質量%、好ましくは10~40質量%である。
脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応時に、金属石鹸スラリーを安定化させて金属石鹸の生産性を向上させる目的で、ポリアルキレングリコール系エーテル、特にオキシプロピレンブロック(PO)がオキシエチレンブロック(EO)で挟まれた構造(EO-PO-EO)を有するトリブロックエーテルを金属石鹸スラリー中に存在させることが好ましい。金属石鹸スラリー中におけるポリアルキレングリコール系エーテルの含有量は、通常、脂肪酸塩基性化合物100質量%に対して、0.01~5質量%であり、好ましくは0.05~2質量%である。
なお、ポリアルキレングリコール系エーテルは、脂肪酸と塩基性化合物とを反応させる前に反応系に存在させても良く、また脂肪酸塩基性化合物の調製後であって、脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応の前に反応系に存在させても良い。
上記方法によって金属石鹸スラリーが得られる。この金属石鹸スラリーはそのまま用いてもよく、あるいは遠心脱水機、フィルタープレス、真空回転濾過機などにより溶媒を分離し、必要に応じて、洗浄を行い、副生する金属又は半金属を含有する塩を除去した後に、回転乾燥機、気流乾燥装置、通気式乾燥機、噴霧式乾燥機、流動層型乾燥装置などにより乾燥させてもよい。乾燥方法は、連続式又は回分式、あるいは常圧又は真空下のいずれでもよい。さらに、乾燥させた金属石鹸を必要に応じて解砕する。解砕方法としては、特に限定されず、例えばピンミル、ジェットミル、アトマイザー等による解砕方法を採用することができる。解砕された金属石鹸粒子は多段篩装置等を用いて分級される。このようにして、本発明の金属石鹸としての脂肪酸マグネシウム金属塩を得ることができる。
本発明の脂肪酸マグネシウム塩は、トラップ水含有量(mol/mol)が0.4~2.0であり、好ましくは0.5~2.0であり、特に好ましくは0.6~2.0であり、さらに好ましくは1.0~2.0であり、より好ましくは1.5~2.0である。トラップ水含有量が0.4~2.0であることによって、金属石鹸(脂肪酸マグネシウム塩)と水溶液との相溶性が高くなり、金属石鹸を含有する水分散体の分散安定性を向上させることができる。トラップ水含有量が少なすぎる場合、金属石鹸と水溶液との相溶性が低くなるため、金属石鹸を含有する水分散体の分散安定性が向上し難くなることがあり、トラップ水含有量が多すぎる場合、金属石鹸の製造が難しくなることがある。
脂肪酸マグネシウム塩のトラップ水含有量は、脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析(TGA)測定において、70℃から120℃の間までの加熱減量X(%)から上記(2)式により算出することができる。
加熱減量X(%)を求めるために使用する熱重量分析は、試料を一定の加熱速度で昇温しながら、試料の質量変化を連続的に測定する分析方法である。本発明においては、サンプルをアルミニウム製サンプルパンに5mg計量し、窒素雰囲気下、1分間に2℃の加熱速度にて30~600℃の測定範囲に設定して測定を行なう。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、脂肪酸の分子量は酸価より算出し、金属石鹸の分子量は脂肪酸の分子量を基に算出している。
(合成例1)
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、モル質量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を1800g、エタノールを400g仕込み、80℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
(合成例2)
3Lセパラブルフラスコにステアリン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-180、モル質量:286.0g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を1800g、エタノールを400g仕込み、80℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を59.2g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液203.6g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでステアリン酸マグネシウム(モル質量:594.3g/mol)を得た。
(合成例3)
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、モル質量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2200g仕込み、95℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
(合成例4)
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、モル質量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2230g仕込み、70℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
(合成例5)
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、分子量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2230g仕込み、70℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄し、60℃の温風乾燥機で72時間乾燥した。その後、温度40℃、湿度75%に設定した恒温恒湿槽にて9時間加湿し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
(合成例6)
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、分子量: 228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2230g仕込み、70℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄し、60℃の温風乾燥機で72時間乾燥した。その後、温度40℃、湿度75%に設定した恒温恒湿槽にて18時間加湿し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
(実施例1~3、比較例1~3;金属石鹸の分析)
実施例1~3および比較例1~3で得られた各金属石鹸をアルミサンプルパンに5mg計量し、窒素雰囲気下、1分間に2℃の加熱速度にて30~600℃の測定範囲で熱重量分析を行った。本発明においては、日立ハイテクサイエンス社製のSTA-7200を用いて測定した。また、得られた各金属石鹸を以下の方法で分析した。結果を表1に示す。
(A)マグネシウム含有量
精秤した磁性るつぼに金属石鹸を0.5g測り、再度るつぼを精秤した後、電熱器にて金属石鹸を燃焼させた。次に、マッフル炉(ヤマト科学(株)製)にて800℃、1時間強熱した後、デシケーター内で30分冷却してからるつぼを精秤した。その後0.5mol/l塩酸を1ml加えて灰分を溶解させコニカルビーカーに移し緩衝液(塩化アンモニウム/アンモニウム)、および指示薬(エリオクロムブラックTおよびメチルイエロー)を加えた。その後、0.05mol/lエチレンジアミン四酢酸水溶液を用いて滴定し、下記の(4)式にしたがってマグネシウム含有量を計算した。
Figure 0007110756000003
A:0.05mol/lエチレンジアミン四酢酸水溶液の滴定量(ml)
f:0.05mol/lエチレンジアミン四酢酸水溶液のファクター
W:金属石鹸のサンプル量(g)
水分:下記(c)乾燥減量法により求めた水分
(B)遊離脂肪酸含有量
金属石鹸5gをビーカーに取り、ジエチルエーテル/エタノール混合溶媒(容積比1:1)75gを加え、30秒撹拌した後に30分静置し、5Bのろ紙を使用してろ過を行った。ろ液に指示薬(フェノールフタレイン)を加え0.1mol/lの水酸化カリウム滴定溶液を用いて滴定した。同様の操作をブランクでも行い、下記の(5)式にしたがって遊離脂肪酸を計算した。
Figure 0007110756000004
A:サンプルへの滴定量(ml)
B:ブランクへの滴定量(ml)
f:0.1mol/l水酸化カリウム滴定溶液のファクター
M:使用した脂肪酸の分子量(g/mol)
W:金属石鹸のサンプル量(g)
(C)水分(乾燥減量)
精秤した秤量瓶に金属石鹸を3g測り、再度秤量瓶を精秤した後、105±2℃に設定した乾燥機に3時間、金属石鹸粉体を静置し、金属石鹸表面に付着した水およびトラップ水を乾燥させた。その後、デシケーター内で30分冷却してからるつぼを精秤し、減量を測定した。
(D)付着水分
上記(C)で測定した水分(%)と加熱減量(%)の差から算出した。
Figure 0007110756000005
(実施例1~3、比較例1~3;金属石鹸の評価)
実施例1~3および比較例1~3で得られた各金属石鹸3質量%、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)1質量%、および精製水100質量%を胴径40.0mm、全長120mmのスクリュー管に加え、ロッキングミル((株)セイワ技研製)にて振動速度50rpm、15秒間混合した。次いで、スクリュー管を室温にて6時間静置し、得られた分散液を用いて以下のように評価を行った。結果を表2に示す。
a.底面から水層上面までの高さ(cm)
b.底面に沈殿する金属石鹸の高さ(cm)
c.水層に対する金属石鹸の沈殿の割合=b/a(%)
Figure 0007110756000006
実施例1~3では、水層に対する金属石鹸の沈殿の割合cが小さいことから、金属石鹸の分散性が高くなり、金属石鹸分散液に高い安定性を付与できていることが分かる。
これに対して比較例1~3では、十分な性能が得られていない。つまり金属石鹸のトラップ水含有量が少なく水との親和性が低いために、cの値が大きく分散安定性に劣っている。
本発明の脂肪酸マグネシウム塩は、金属石鹸として用いることができ、樹脂加工分野、化粧品分野、電子印刷分野、セメント分野、塗料分野および食品分野などで利用することができる。例えば、合成樹脂や錠剤の成型時に用いられる滑剤や離型剤、製紙・金属加工用潤滑剤に用いることができる。

Claims (1)

  1. トラップ水を含有し、下記(1)式を満たす炭素数8~22の脂肪酸マグネシウム塩組成物であって、
    前記脂肪酸マグネシウム塩組成物は、炭素数8~22の脂肪酸と塩基性化合物とを反応させて脂肪酸塩基性化合物を調製した後、前記脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩とを反応させて得られたものであり、
    前記脂肪酸塩基性化合物は、水と炭素数2~3の脂肪族アルコールとの混合比率が、前記水100質量部に対して、前記脂肪族アルコールが1~50質量部である水性溶媒中で、前記脂肪酸と前記塩基性化合物とを反応させて得られたものであることを特徴とする脂肪酸マグネシウム塩組成物
    0.4≦トラップ水含有量(mol/mol)≦2.0・・・(1)
    但し、トラップ水含有量とは、前記脂肪酸マグネシウム塩組成物の熱重量分析測定において、70℃から120℃の間までに減少する、前記脂肪酸マグネシウム塩1molに対する水のmol数である。
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