JP7110756B2 - 脂肪酸マグネシウム塩組成物 - Google Patents
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一方、複分解法は、水性の溶媒中で脂肪酸に塩基性化合物を反応させ脂肪酸の塩基性化合物とし、さらに金属又は半金属を含有する金属塩を反応させる方法である。この方法においても水性溶媒を用いるため、熱による乾燥工程を経て金属石鹸に付着する水を除去し、目的の金属石鹸を製造している。乾燥工程により、金属石鹸表面に付着した水分はほぼ揮発し、通常1%程度まで除去した状態で用いる(特許文献1)。
なお、トラップ水とは、金属石鹸の分子中に若干取り込まれており、一定以上の熱を加えないと除去できない水分である。
0.4≦トラップ水含有量(mol/mol)≦2.0・・・(1)
但し、トラップ水含有量とは、前記脂肪酸マグネシウム塩の熱重量分析測定において、70℃から120℃の間までに減少する、前記脂肪酸マグネシウム塩1molに対する水のmol数である。
(CnHmCOO)2Mg・AH2O(n:8~22の整数、m:17~45の整数、A:トラップ水含有量)
本発明の脂肪酸マグネシウム金属塩は、例えば複分解法により製造することができ、脂肪酸に塩基性化合物を反応させて脂肪酸塩基性化合物を調製した後、マグネシウム塩を反応させて製造することができる。以下、複分解法により製造する方法について説明する。
また、トラップ水を本発明規定の範囲に含有する金属石鹸を容易に製造できる点で、水と低級アルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。低級アルコールとしては炭素数2~3の脂肪族アルコールが好ましく、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールが挙げられ、エタノールが特に好ましい。水と低級アルコールとの混合比率については特に制限を受けないが、水100質量部に対して、低級アルコールは1~50質量部が好ましく、5~40質量部が特に好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。
マグネシウム塩としては、特に限定されないが、水に対する溶解度が高く、効率的に脂肪酸塩基性化合物と反応する点から、マグネシウム塩化物、マグネシウム硫酸塩、及びマグネシウム硝酸塩が好ましい。
また、脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応に際しては、通常、溶媒として水を用いるが、脂肪酸と塩基性化合物との反応の場合と同様に、水と低級アルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応に用いられる低級アルコールや水と低級アルコールとの混合比率は、脂肪酸と塩基性化合物との反応の場合と同様である。
なお、マグネシウム塩の濃度は、金属石鹸の生産性の点、及び脂肪酸塩基性化合物水溶液又は得られる金属石鹸スラリーのハンドリング性の点から、通常、水溶液中、10~50質量%、好ましくは10~40質量%である。
なお、ポリアルキレングリコール系エーテルは、脂肪酸と塩基性化合物とを反応させる前に反応系に存在させても良く、また脂肪酸塩基性化合物の調製後であって、脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩との反応の前に反応系に存在させても良い。
加熱減量X(%)を求めるために使用する熱重量分析は、試料を一定の加熱速度で昇温しながら、試料の質量変化を連続的に測定する分析方法である。本発明においては、サンプルをアルミニウム製サンプルパンに5mg計量し、窒素雰囲気下、1分間に2℃の加熱速度にて30~600℃の測定範囲に設定して測定を行なう。
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、モル質量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を1800g、エタノールを400g仕込み、80℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
3Lセパラブルフラスコにステアリン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-180、モル質量:286.0g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を1800g、エタノールを400g仕込み、80℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を59.2g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液203.6g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでステアリン酸マグネシウム(モル質量:594.3g/mol)を得た。
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、モル質量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2200g仕込み、95℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、モル質量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2230g仕込み、70℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄した。その後60℃の温風乾燥機で72時間乾燥し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、分子量:228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2230g仕込み、70℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄し、60℃の温風乾燥機で72時間乾燥した。その後、温度40℃、湿度75%に設定した恒温恒湿槽にて9時間加湿し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
3Lセパラブルフラスコにミリスチン酸(日油株式会社製、商品名:NAA-142、分子量: 228.8g/mol)を200g、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)を10g、および水を2230g仕込み、70℃まで昇温した。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液を73.6g(脂肪酸に対して1.0mol)加え、同温度にて1時間撹拌し、脂肪酸アルカリ金属塩の水溶液を調製した。
その後、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を撹拌しながら、22.8質量%硫酸マグネシウム水溶液253.8g(脂肪酸に対して1.01mol)を40分かけて滴下した。滴下後、同温度にて30分間加熱撹拌して熟成した。得られた金属石鹸スラリーを吸引ろ過機にてろ過した後、1000gの水にて3回洗浄し、60℃の温風乾燥機で72時間乾燥した。その後、温度40℃、湿度75%に設定した恒温恒湿槽にて18時間加湿し、ミキサーで解砕後、500μmのふるいを通すことでミリスチン酸マグネシウム(モル質量:479.9g/mol)を得た。
実施例1~3および比較例1~3で得られた各金属石鹸をアルミサンプルパンに5mg計量し、窒素雰囲気下、1分間に2℃の加熱速度にて30~600℃の測定範囲で熱重量分析を行った。本発明においては、日立ハイテクサイエンス社製のSTA-7200を用いて測定した。また、得られた各金属石鹸を以下の方法で分析した。結果を表1に示す。
精秤した磁性るつぼに金属石鹸を0.5g測り、再度るつぼを精秤した後、電熱器にて金属石鹸を燃焼させた。次に、マッフル炉(ヤマト科学(株)製)にて800℃、1時間強熱した後、デシケーター内で30分冷却してからるつぼを精秤した。その後0.5mol/l塩酸を1ml加えて灰分を溶解させコニカルビーカーに移し緩衝液(塩化アンモニウム/アンモニウム)、および指示薬(エリオクロムブラックTおよびメチルイエロー)を加えた。その後、0.05mol/lエチレンジアミン四酢酸水溶液を用いて滴定し、下記の(4)式にしたがってマグネシウム含有量を計算した。
f:0.05mol/lエチレンジアミン四酢酸水溶液のファクター
W:金属石鹸のサンプル量(g)
水分:下記(c)乾燥減量法により求めた水分
金属石鹸5gをビーカーに取り、ジエチルエーテル/エタノール混合溶媒(容積比1:1)75gを加え、30秒撹拌した後に30分静置し、5Bのろ紙を使用してろ過を行った。ろ液に指示薬(フェノールフタレイン)を加え0.1mol/lの水酸化カリウム滴定溶液を用いて滴定した。同様の操作をブランクでも行い、下記の(5)式にしたがって遊離脂肪酸を計算した。
B:ブランクへの滴定量(ml)
f:0.1mol/l水酸化カリウム滴定溶液のファクター
M:使用した脂肪酸の分子量(g/mol)
W:金属石鹸のサンプル量(g)
精秤した秤量瓶に金属石鹸を3g測り、再度秤量瓶を精秤した後、105±2℃に設定した乾燥機に3時間、金属石鹸粉体を静置し、金属石鹸表面に付着した水およびトラップ水を乾燥させた。その後、デシケーター内で30分冷却してからるつぼを精秤し、減量を測定した。
上記(C)で測定した水分(%)と加熱減量(%)の差から算出した。
実施例1~3および比較例1~3で得られた各金属石鹸3質量%、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール・ブロックエーテル(日油株式会社製、商品名:プロノン♯104)1質量%、および精製水100質量%を胴径40.0mm、全長120mmのスクリュー管に加え、ロッキングミル((株)セイワ技研製)にて振動速度50rpm、15秒間混合した。次いで、スクリュー管を室温にて6時間静置し、得られた分散液を用いて以下のように評価を行った。結果を表2に示す。
a.底面から水層上面までの高さ(cm)
b.底面に沈殿する金属石鹸の高さ(cm)
c.水層に対する金属石鹸の沈殿の割合=b/a(%)
これに対して比較例1~3では、十分な性能が得られていない。つまり金属石鹸のトラップ水含有量が少なく水との親和性が低いために、cの値が大きく分散安定性に劣っている。
Claims (1)
- トラップ水を含有し、下記(1)式を満たす炭素数8~22の脂肪酸マグネシウム塩組成物であって、
前記脂肪酸マグネシウム塩組成物は、炭素数8~22の脂肪酸と塩基性化合物とを反応させて脂肪酸塩基性化合物を調製した後、前記脂肪酸塩基性化合物とマグネシウム塩とを反応させて得られたものであり、
前記脂肪酸塩基性化合物は、水と炭素数2~3の脂肪族アルコールとの混合比率が、前記水100質量部に対して、前記脂肪族アルコールが1~50質量部である水性溶媒中で、前記脂肪酸と前記塩基性化合物とを反応させて得られたものであることを特徴とする脂肪酸マグネシウム塩組成物。
0.4≦トラップ水含有量(mol/mol)≦2.0・・・(1)
但し、トラップ水含有量とは、前記脂肪酸マグネシウム塩組成物の熱重量分析測定において、70℃から120℃の間までに減少する、前記脂肪酸マグネシウム塩1molに対する水のmol数である。
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医薬部外品原料規格2006統合版II,2006年,第707―708頁 |
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