JP2008509092A - 改良されたステアリン酸塩組成物およびそれらの産生方法 - Google Patents

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Abstract

改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物が開示される。そして、ステアリン酸およびパルミチン酸を含む脂肪酸成分をアルカリ水酸化物と反応させ、アルカリ性石鹸を形成させることにより製造される。次いで、水性金属塩溶液を石鹸に添加し、pHを約pH8より低く調節し、改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩を形成させる。改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩は、実質的に純粋なステアリン酸塩の二水和形態をもたらす。

Description

発明の背景
本発明は、金属形成および医薬品の錠剤形成を含む用途の工業用滑沢剤として有用なアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物の工業的製造に関する。より具体的には、本発明は、錠剤形態の医薬品の潤滑および溶解に際して、改善された特性を示す、ステアリン酸マグネシウム滑沢剤の製造方法に関する。
多数の特許が、ステアリン酸塩の滑沢剤または粉末流動促進剤として有用性を開示している。米国特許第6,437,000号、第5,032,632号、第5,952,004号、第5,447,729号、第4,800,082号、第4,777,080号および米国出願公開2002/0052411は、かかる有用性の典型的な開示を提供する。
医薬の錠剤化用の滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウムの使用は、当分野で周知である。USP/NF(2004)によると、ステアリン酸マグネシウムは、少なくとも40%のステアリン酸、合計として90%のステアリン酸とパルミチン酸、および6.0%を超えない水を含有する物質として記載されている。医薬適用に一般的に使用されるステアリン酸マグネシウムは、ステアリン酸マグネシウムとパルミチン酸マグネシウムの混合物である。なぜなら、ステアリン酸マグネシウムを製造するのに使用される供給源には、獣脂、パーム油およびダイズ油が含まれ、これらの全てはC16およびC18脂肪酸のグリセリルエステルであるからである。さらに、ステアリン酸マグネシウムの状態は無定形であっても、無水、一水和物、二水和物および三水和物の結晶形のいずれであってもよい。USP/NFのステアリン酸マグネシウムの組成および属性の記載は、様々な結晶形の機能的差異を説明していない。さらに、6.0%までの水含有量は、製品が概論的研究書中の要件を満たす多数の可能な水和形態の組合せを含むことを許容する。
医薬の製造者および研究者は、3種の多形の水和物(一、二および三)のうち、二水和物形態が、優れた潤滑特性をもたらすので好ましいことを見出した。水の含有量とそれに由来する結晶形が、ステアリン酸マグネシウムの機能性に寄与することも知られている。いくらかの二水和物を含有するステアリン酸マグネシウム組成物は、固体投与形の製剤化および製造に利点を有するとわかっている。崩壊、溶解、破壊強度(crush strength)および押出力(extrusion force)の改善は、ステアリン酸マグネシウムの他の水和形態と反対に、二水和物の存在に特異的に関連すると報告された。二水和物は、最良の抗固化特性を有すると報告された。
しかしながら、先行技術は、ステアリン酸/パルミチン酸含有量の観点で市販の供給源を代表する混合脂肪酸組成物から二水和物を製造する方法も、それを調製する方法も記載していない。先行技術には、市販の脂肪酸が純粋な二水和物を、または、十分な量の二水和物さえ、得るのに適当な組成を有することを示唆する記載はない。市販の脂肪酸組成における一貫性の欠如は、最終生成物中の二水和物の含有量の制御を困難にする。二水和物は、高湿度にさらされたときの無水形態からの三水和物の形成の中間物質ではなく、一定の環境下で溶液から結晶化するのみである。
さらに、現在入手可能なステアリン酸マグネシウム組成物は、薬物の溶解への水忌避性障壁をもたらすことにより、薬理活性に悪影響を及ぼす可能性があり、特に持続放出薬物のバイオアベイラビリティーに重大な影響を有し得る。
医薬工業が、これらの知見に基づいて新しい製剤を創成する目的で、二水和形態の潜在的利益を確保するために、二水和物の物質を含有する、純粋であるか、または少なくとも十分に定義された組成が、最終的に購入できるようにならなくてはならない。
購入できるステアリン酸マグネシウムは、実際には、マグネシウムのステアリン酸塩とパルミチン酸塩の混合物であり、水和および結晶化度は、製造プロセスに依存して、そして出発物質に依存してバッチ間で、有意に変動する。高純度形態のステアリン酸マグネシウム二水和物またはパルミチン酸マグネシウム二水和物が実験室で調製および特徴解析されてきたが、好ましい二水和形態の調製に利用できる商業的に実行可能な方法はない。
ステアリン酸塩の工業的調製における改善と効率化は、少なからぬ研究の主題であった。特に錠剤形態の薬物の数と使用が拡大するにつれて、医薬的な錠剤の製剤化および工業的操作において用いられる成分への要望も拡大する。そのような工業的適用の1つは、米国特許第5,277,832号に見出される通り、手頃な価格のステアリン酸塩のクラスの滑沢剤への要望の高まりが同様にある、金属加工術である。
効率化および製品の改良を達成するための別の試みは、米国特許第5,175,322号に開示されている。この特許は、複分解法によるアルカリ土類金属ステアリン酸塩石鹸の連続的製造プロセスを開示している。その方法では、アルカリ土類金属石鹸および無機金属塩の流れを、動いているミキサーのインペラーに滴下し、それにより即座に反応物を共に混合し、続いて新しく形成されたステアリン酸塩をリアクターから迅速に取り出す。このプロセスは、未反応の出発物質および望まざる副生成物を含まない生成物をもたらすと言われている。改良された複分解反応が、米国特許第5,434,277号で開示された。そこでは、かかる反応は、生成物中に存在する未反応の出発物質があるために、高純度の生成物をもたらさないことが開示されている。この開示によると、この問題への解決は、反応混合物の塩基性化−酸性化を交互に提供することである。反応混合物の交互の処理の有効性は、交互の処理後のステアリン酸出発物質の消失を示す生成物のDSC分析により示された。先行開示のいずれも、水和に影響を与えるステアリン酸/パルミチン酸組成の関連にも、水性媒体中で沈殿したステアリン酸塩の水和を制御するいかなる手段にも言及していない。
最初に論文として1992年に発表され、次いで、Manufacturing Chemist, December 1993 で出版された"The Magnesium Stearate Problem"と題する刊行物は、工業で観察されてきた、様々なステアリン酸塩の工業的バッチの生成物の潤滑特性における変動の研究を開示している。観察された変動は、K.J. Steffens および J. Koglin により、同一に見えるステアリン酸塩の工業生産バッチの説明されていない性能の変動原因を、製造業者が報告した属性に基づいて決定する試みにおいて、報告された。潤滑および錠剤の特性に関して、商業的供給源の間に、有意な変動が観察された。
著者たちは、ステアリン酸マグネシウムの商業的等級を、それらの水和および結晶性の差異により識別される6つのタイプにクラス分けした。モデル製剤中で滑沢剤として使用されたとき、「支配的な二水和形態」を含有する結晶性ステアリン酸マグネシウムが、明らかに優れていることが決定された。不幸なことに、極端に高い費用がかかる比較的純粋なステアリン酸からの合成を除き、純粋な二水和物相の製造方法はその文献に記載されていない。
従って、アルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物、および、アルカリ土類金属ステアリン酸塩の二水和形態の一貫した産生をもたらす関連産生方法を提供することが望ましい。
発明の概要
本発明の態様は、塩基性溶液中の少なくとも1種の脂肪酸と、少なくとも1種のアルカリ土類金属硫酸塩との反応生成物を含む、改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物を提供することである。脂肪酸は、少なくとも約80重量%のステアリン酸および少なくとも約5重量%のパルミチン酸を含む。
本発明の別の態様は、改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物の調製方法を提供することである。少なくとも約80重量%のステアリン酸および少なくとも約5重量%のパルミチン酸を含む少なくとも1種の脂肪酸を、塩基性水性溶液に添加する。少なくとも1種のアルカリ土類金属硫酸塩を添加する。少なくとも1種のアルカリ土類金属硫酸塩は、少なくとも1種の脂肪酸と反応して、改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物を形成する。
本発明のまた別の態様では、少なくとも約40%のアルカリ土類金属ステアリン酸塩二水和物を含む改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物が提供される。
本発明のまたさらなる態様では、アルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物の調製方法が提供される。その方法は、塩基性水性溶液を提供し、少なくとも1種の脂肪酸をその塩基性水性溶液に導入することを含む。脂肪酸は、ステアリン酸およびパルミチン酸を含む。少なくとも1種のアルカリ土類金属硫酸塩を添加してスラリーを形成させ、スラリーのpHを約pH8より低く調節する。次いで、スラリーを真空濾過による固体−液体分離に付し、得られる湿ったケーキをフラッシュ乾燥し、改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物を形成させる。
図面の簡単な説明
改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物および関連調製方法が提供され、そこでは、ステアリン酸塩の実質的な部分が二水和形態である。脂肪酸の金属塩の作成方法は、当分野で周知である。「複分解」法は、2段階のプロセスを含む。第1に、脂肪酸を塩基性水性溶液中で少なくとも1種の塩基、典型的には少なくとも1種のアルカリ水酸化物と反応させ、アルカリ性石鹸を形成させる。第2に、少なくとも1種の水性金属塩溶液を石鹸に添加し、対応する脂肪酸の金属塩を形成させる。
アルカリ土類金属ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムの常套の医薬調製物は、典型的にはこの方法を利用する。下記に示す通り、ステアリン酸は、アルカリ水酸化物、例えばNaOHと反応し、ナトリウム石鹸を形成し、次いでそれはアルカリ土類金属塩、例えば塩化マグネシウムと反応する:
2CH(CH16COOH+2NaOH→ (1)
2C1835Na+MgCl→ (2)
3670Mg+2NaCl (3)
この方法で産生されたステアリン酸塩組成物は、品質と特性において大きい変動を示す。購入できるステアリン酸は、典型的にはパルミチン酸も含有することが知られている。純粋なステアリン酸の入手可能性は限られている一方、精製は工業的スケールで実行可能ではない。
しかしながら、この度、この不純物(パルミチン酸)は、改良されたステアリン酸塩組成物の形成を導くことができると決定された。ステアリン酸出発物質の成分、より詳しくはステアリン酸のパルミチン酸に対する比を操作することにより、有意な量のステアリン酸塩生成物の二水和形態を形成させることができる。ステアリン酸塩の二水和形態は、実質的な小板形成を伴って、実質的に結晶性である生成物をもたらす。二水和物(dehydrate)形態は、水和以外は同様の特性のステアリン酸塩と比較したとき、ステアリン酸塩二水和物で観察される潤滑特性の改良およびバイオアベイラビリティーとの干渉の減少を担うと考えられる。
本発明では、少なくとも約80重量%のステアリン酸および少なくとも約5重量%のパルミチン酸の脂肪酸成分が決定され、88重量%のステアリン酸対約10重量%のパルミチン酸が好ましく;90重量%のステアリン酸対8重量%のパルミチン酸がより好ましく;そして約93重量%のステアリン酸対約5重量%のパルミチン酸が最適である。
代替的実施態様では、ステアリン酸/パルミチン酸の好ましい組成物の使用に加えて、ステアリン酸/パルミチン酸の水含有量を定義する。この実施態様では、開示する組成物は、少なくとも10:1のステアリン酸塩/パルミチン酸塩比のステアリン酸パルミチン酸マグネシウム二水和物を含み、総水含有量は約6%より少ない。その6%の水のうち、好ましくは総水含有量の15−100%は、結晶水二水和物であり、総水含有量の約10%より少ないものが遊離の水であり、水含有量の残りは、一水和物である。この代替的実施態様で使用する脂肪酸の流れは、合計で総酸含有量の98%を下回らないステアリン酸塩およびパルミチン酸塩を含有する。最終生成物の水含有量および水和状態は、ステアリン酸/パルミチン酸の比、pHおよび乾燥条件が変動するにつれて変動する。所望の二水和物は、恐らく、ステアリン酸/パルミチン酸の比が>10のとき、またはそれより低い比で、pHが中性に近いとき、そして乾燥温度が60℃を超えないとき、アルカリ性溶液中で形成される。
この代替的実施態様で開示される組成物は有益な機能性を示す。これには、粉末流動特徴の改善、突出力/圧縮力の比の低減、および、錠剤の作成において常套のステアリン酸マグネシウムを滑沢剤として使用するときに頻繁に観察される、ジランチン(dilantin)、モダフィニル、ゾルピデムなどの疎水性または水溶性に乏しい薬物の崩壊および溶解速度の遅延の最小化が含まれる。
これらの最初の2つの本発明の実施態様によると、脂肪酸成分を塩基性水性溶液に分散させ、それにより脂肪酸成分を塩基と反応させ、石鹸を形成させる。場合により、脂肪酸成分の凝結の防止を補助するために、脂肪酸成分の導入に先立ち、塩基性水性溶液を加熱してもよい。アルカリ土類金属塩、典型的には硫酸マグネシウムまたは硫酸カルシウムを、次いで添加し、pHを調節してアルカリ性環境をもたらし、過剰のMgをMgOとして沈殿させることにより生成物のアッセイを高める。
また別の代替的実施態様では、沈殿段階中にpHを制御することにより、実質的に純粋なステアリン酸マグネシウム二水和物が得られる。上記概説の通り、ステアリン酸マグネシウムを産生するための常套の方法は、ステアリン酸をアルカリ水酸化物と反応させて金属石鹸を形成させ、次いでそれをアルカリ土類金属塩と反応させてステアリン酸マグネシウムを形成させることを含む。常套の反応では、水和したマグネシウム石鹸の形成は、水性沈殿媒体の結果である。生じる溶液がアルカリ性であるとき、得られる最も一般的な水和形態は、一水和形態である。
沈殿媒体のpHのアルカリ性が低いならば、または、溶液を約8より低いpHに調節するとき、沈殿中または後に、その水和形態、ステアリン酸マグネシウム二水和物を得る傾向が大きいことが決定された。この実施態様では、脂肪酸出発物質は、合計して少なくとも90%のステアリン酸およびパルミチン酸の任意の組合せであることができる。このことは、典型的には約40%のステアリン酸しかなく、少なくとも約90%の合計したステアリン酸塩およびパルミチン酸を含む、任意の購入できる脂肪酸混合物からの、二水和形態の産生を可能にする。
脂肪酸を、水中、約75℃の温度で水酸化ナトリウムと反応させ、可溶性ステアリン酸ナトリウム/パルミチン酸ナトリウム混合物を形成させ、それを「石鹸溶液」と称する。脂肪酸と水酸化ナトリウムを、約1:1のモル比で反応させ、水酸化ナトリウムを添加し、僅かにアルカリ性の石鹸溶液を産生する。ステアリン酸とパルミチン酸の任意の組合せを使用して、相対的に純粋なステアリン酸マグネシウムの二水和形態を形成できる。
1735COOH+NaOH→C1735COONa+HO (4)
次いで、水性アルカリ土類金属硫酸塩溶液を石鹸溶液に添加し、それにより不溶性アルカリ土類金属ステアリン酸塩を沈殿させる。下記の非限定的な例示的反応式は、アルカリ土類金属硫酸塩として硫酸マグネシウムを利用する。
2C1735COONa+MgSO7HO→Mg(C1735COO)2●xO+NaSO+6HO (5)
アルカリ土類金属硫酸塩を僅かに過剰に添加し、確実に全てのステアリン酸ナトリウムが反応してアルカリ土類金属ステアリン酸塩を形成するようにする。この段階の後のpHは、典型的には約6.0−6.7である。石鹸溶液は、当分野で周知の通り、任意の常套の方法により産生されてもよいことに留意する。
スラリーに水を添加し、混合し、次いで分離し、水を切ることにより、可溶性の塩を生成物から除去する。この段階の後のpHは、典型的には約8.0−8.5である。
次いで、アルカリ土類金属ステアリン酸塩スラリーのpHを、酸で調節する。適する酸には、硫酸、塩酸、硝酸およびそれらの混合物などの有機酸が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、pHは約pH8より低く調節する;7より低いpHがより好ましい;そして、約6.3ないし約6.4のpHが最も好ましいが、より低いpH、例えばpH5で、有意な二水和形態の形成が達成される。pHは、ステアリン酸塩の沈殿の前または後に調節し得る。例示的実施態様では、pHの調整は、フラッシュ乾燥システムに送る直前に行う。
硫酸マグネシウムを利用する例示的な実施例では、熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)を使用して分析すると、pH6.3−6.4で形成される湿ったケーキは、少なくとも約95%またはそれより良好な実質的に純粋なステアリン酸マグネシウム二水和物であり、他の水和形態は存在しない。ある実施態様では、後続の二水和物形成の塩基性水性溶液中の成分として使用するために、湿ったケーキの形成後に残っている液体またはスラリーを回収する。
乾燥前にpHを8.0に調節したときにも、有意な量の二水和物が存在した。二水和物は約70%であり、残りは一水和形態であった。
水性ステアリン酸マグネシウムスラリーのpHが乾燥前に8.5より低いとき、有意な量の二水和物が形成されると考えられる。8.5より高いpHでは二水和物の量は急速に減少し、水性ステアリン酸マグネシウムスラリーのpHをpH9.0またはそれ以上に調節すると二水和物が形成されなくなる。
ステアリン酸マグネシウムは、約50ないし約90℃で、典型的にはフラッシュ乾燥する。約60ないし約65℃が好ましい。生成物は乾燥すると僅かに脱水する傾向があるが、依然として約80%より多く二水和形態を含有し、残りは二水和物の無水結晶である。例示的乾燥システムは、ロータリーバキュームフィルター(固体−液体分離)、ハンマーミル、天然ガス燃料炉および空気輸送システムからなるが、生成物をいかなる常套の方法により乾燥および処理してもよい。ステアリン酸マグネシウムスラリーのpH調整の間に形成された二水和物を維持するために、他の適する乾燥のタイプには、50−90℃の範囲でのスプレー乾燥、トレイ乾燥および流動床乾燥が含まれる。
以下の実施例は、例示のためだけに供し、本発明の範囲をどのようにも限定することを意図しない。
実施例1
定まらない比の別々の一水和物と二水和物の多形を含有するステアリン酸マグネシウム組成物を、「石鹸溶液」から、沈殿により、当分野で周知の通りに製造する。この例示的実施例の塩は、少なくとも1種の脂肪酸および少なくとも1種の強塩基、NaOHおよびマグネシウム塩、MgSOの混合により形成される。本発明では、適当なステアリン酸/パルミチン酸組成物の脂肪酸混合物から石鹸溶液を産生し、相当量の生じるステアリン酸塩の二水和形態を得る。アルカリ土類金属塩のアルカリ性「石鹸溶液」への添加は、二水和物相を含有するステアリン酸マグネシウムの沈殿をもたらす。沈殿を液体から分離し、水含有量3.5−6.0%、主に水和の水、まで乾燥させる。微粒子状の固体が得られる。生成物は医薬用滑沢剤/離型剤として使用するために計画されているが、当分野で周知の通り、他の適用にも使用できる。
以下は、所望のステアリン酸マグネシウム二水和物を含有する生成物の工業的製造プロセスの例示的実施例であり、医薬的使用のためのステアリン酸/パルミチン酸マグネシウムの産生に本発明を限定することを意図しない:
水または以前のバッチからの残液(heel)である水性溶液を、周知の通り、脂肪酸が水性溶液に導入されたときに凝結しない温度に加熱した。実質的に全ての脂肪酸構成物がナトリウム石鹸に変換されるように、50%水酸化ナトリウム溶液を、少なくとも1:1のモル比で脂肪酸に添加した。次いで、溶液がフェノールフタレイン指示薬に対して僅かにアルカリ性になるまで、脂肪酸成分を添加した。この例示的実施例では、約93重量%のステアリン酸対約5重量%のパルミチン酸の脂肪酸組成物を使用した。
次いで、硫酸マグネシウム溶液を、撹拌せずに、実質的にナトリウム石鹸を沈殿させる量で添加し、それによりステアリン酸/パルミチン酸マグネシウムを形成させた。次いで、均質な混合物を創成し、硫酸マグネシウムとの反応を保証するために、典型的には約20分間、反応混合物を混合した。この段階と残りの段階の間中ずっと反応混合物を加熱したままにして反応混合物の凝固を防止し、それにより取扱いの容易さをもたらした。次いで、水酸化ナトリウムでpHを調節し、いかなる過剰のマグネシウムもMgOとして沈殿させた。例示的なpH範囲は、約9.0ないし約9.5である。固体−液体の分離を実施し、得られた固体生成物を乾燥させ、適する常套法により脱凝集(deagglomerated)する。これらの段階および反応条件は、当業者に周知である。
この得られる生成物を、以下の通りに、ステアリン酸マグネシウムおよびパルミチン酸マグネシウムの混合物を混合水和物として含有すると特徴付けた:
1.生成物は、乾燥の際に3.5−6.0%を失った。このことは、有意な量の二水和形態が存在することを示す。TGAは、2回の水損失事象を、一方は約60℃で、そして一方は約90℃で示し、このことは、各々二水和および一水和形態に対応する。
2.DSC分析は、各々独特の水和物から誘導される2つの偽多形(pseudopolymorph)の結果として、100°ないし135℃の間で2回の吸熱転移を示した(ステアリン酸Mgについて、約118℃および128℃)。
3.X線回折は、結晶性(無定形ではない)を示し、二水和形態が存在することを示す特徴的なXRDパターンを示した。
生成物は、規則的または不規則的な(例えば、断片化した)小板形態を有した。ステアリン酸マグネシウムの製造に関連すると考えられる製造プロセスの他の特徴は、当業者にとって明白である。
実施例2
ステアリン酸マグネシウム組成物は、実施例1の方法に従い、少なくとも約10:1のステアリン酸/パルミチン酸の比および約6%より少ない総水含有量を有する脂肪酸を利用して製造する。その6%の水のうち、好ましくは総水含有量の15−100%が二水和物の結晶水であり、総水含有量の約10%より少ない量が遊離の水であり、水含有量の残りが一水和物である。この代替的実施態様で使用する脂肪酸の流れは、合計で総酸含有量の98%を下回らないステアリン酸塩とパルミチン酸塩を含有する。pH調整を行って、反応混合物を実質的に中性にする。60℃またはそれ以下の温度で生成物を乾燥してバルクの水の殆どを除去し、TGA/DSCで証明される通り、二水和物相を含有する細かい結晶性の粉末を得る。
実施例3
98グラムの硫酸マグネシウム七水和物を水643mLに溶解することにより、硫酸マグネシウム溶液を調製する。塩が溶解するまで、混合物を80℃で撹拌する。別の容器中で、50%(w/w)NaOH34mLを水1.13リットルに添加し、90℃に加熱する。温度を90℃で維持し、撹拌しながら、93%のステアリン酸および5%のパルミチン酸を含有する脂肪酸181グラムをNaOH溶液に添加することにより、アルカリ性ステアリン酸ナトリウム(石鹸)を作成する。水681mLを石鹸溶液に添加し、その温度を75℃に下げる。硫酸マグネシウム溶液を石鹸溶液に添加し、撹拌して完全な反応を確実にする。沈殿が完了したら、50%NaOHを使用してバッチをpH9.0に調節する。得られる固体を水で洗浄し、硫酸ナトリウムの副生成物を除去する。固体を60℃で乾燥させる。生成物は、ステアリン酸パルミチン酸マグネシウムの一水和および二水和形態の組合せを含有する。
実施例4
脂肪酸(約65%のステアリン酸および約35%のパルミチン酸および小さい割合の他の脂肪酸の混合物)(181g)を、水中の水酸化ナトリウム(50%wt/wtNaOH34mlを水1.13リットルに添加したもの)と、90℃で反応させ、可溶性ステアリン酸ナトリウム石鹸溶液を形成させることにより、石鹸溶液を形成させた。アセトン溶液、水およびフェノールフタレイン指示薬に溶解したスラリー5mLが、終点まで滴定するのに0.1N HCl0.1−0.3mLを要するような程度に、得られる石鹸溶液は、僅かにアルカリ性である。硫酸マグネシウム七水和物98グラムを水643mLに溶解することにより、水性硫酸マグネシウム溶液を調製した。硫酸マグネシウム溶液を石鹸溶液に添加した。不溶性ステアリン酸マグネシウム191g(一水和物としての重量)が沈殿した。硫酸マグネシウムを僅かに過剰に添加し、全てのステアリン酸ナトリウムが反応してステアリン酸マグネシウムを形成することを確実にした。この段階の後のpHは6.2−6.8であった。水中の50%wt/wtNaOHを添加することにより、pHを9.0ないし9.5の範囲に調節した。生成物を水道用水(3400ml)で洗浄することにより、可溶性の塩を除去した。この段階の後のpHは、8.5であった。ステアリン酸マグネシウムのスラリーをフラッシュ乾燥システムに送る直前に、硫酸の添加によりスラリーのpHをpH6.3が達成されるまで調節した。pH6.3で形成される、得られる湿ったケーキは、熱重量分析を使用して分析すると、90%より高い純度の実質的に純粋なステアリン酸マグネシウム二水和物であり、他の水和形態は存在しなかった。ステアリン酸マグネシウムを、標的温度71℃でフラッシュ乾燥した。それは、僅かな生成物の脱水をもたらすが、80%より多い二水和形態をもたらし、残りは二水和物の無水結晶である。乾燥システムは、ロータリーバキュームフィルター(固体−液体分離)、ハンマーミル、天然ガス燃料炉および空気輸送システムからなる。フラッシュ乾燥システムは、30秒間より短い滞留時間および典型的な入口温度150ないし260℃を有する。ハンマーミルは、12個のハンマーを有し、1800rpmで回転し、主に湿ったケーキの脱凝集に作用して乾燥を助長する。
実施例5
実施例4に従ってステアリン酸マグネシウム組成物を作成し、pHを5.0に調節した。得られる組成物は、熱重量分析を使用して分析すると、90%より多いステアリン酸マグネシウム二水和物であり、他の水和形態は存在しなかった。
実施例6
実施例4に従って3種のステアリン酸マグネシウム組成物を作成し、pHを6.3、7.3および8.0に調節した。得られる組成物を、x線粉末回折で特徴解析した。Long Fine Focus X-ray Tube (Type: FL Cu 4KE) を利用する Siemens D500 X-ray Diffractometer および回折ビームモノクロメーターを、シンチレーション検出器の前に設置した。この装置を、DataScan および Jade を含む Materials Data, Inc. のソフトウエアを使用するデータ取得および分析のために、IBM適合性コンピューターと連結した。スパチュラの縁で各サンプルを均一に砕き(すりつぶさない)、バックグラウンドゼロを有する石英の上に散らした。
実験パラメーター:
スキャン範囲−2.0ないし40.0度 2−シータ
表示範囲−2.0ないし40.0度 2−シータ
ステップの大きさ−0.02度 2−シータ
ステップ毎のスキャン時間−1.0秒
放射線源−銅Kα(1.5406Å)
X線管の電力−40kV/30mA
pH6.3に調節した組成物について得られたパターンは、実質的に純粋な二水和形態と一致した。
pH7.3および8.0に調節した組成物について得られたパターンは、一水和物、二水和物および三水和物の相の混合物と一致した。
本発明を詳細に説明したので、当業者は、その精神および範囲から逸脱せずに、本発明の改変を行い得ることを理解するであろう。従って、説明した特定の実施態様に本発明の範囲を限定することを意図しない。むしろ、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物が、本発明の範囲を決定すると意図している。

Claims (28)

  1. 少なくとも約40%の土類金属ステアリン酸塩二水和物を含む、改良されたアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物。
  2. アルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物が、少なくとも約70%のアルカリ土類金属ステアリン酸塩二水和物を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. アルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物が、少なくとも約99%のアルカリ土類金属ステアリン酸塩二水和物を含む、請求項1に記載の組成物。
  4. アルカリ土類金属が、マグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  5. 少なくとも約40%のステアリン酸マグネシウム二水和物を含む、改良されたステアリン酸マグネシウム組成物。
  6. ステアリン酸マグネシウム組成物が少なくとも約70%のステアリン酸マグネシウム二水和物を含む、請求項5に記載の組成物。
  7. ステアリン酸マグネシウム組成物が少なくとも約99%のステアリン酸マグネシウム二水和物を含む、請求項5に記載の組成物。
  8. アルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物の調製方法であって、
    塩基性水性溶液を提供すること;
    少なくとも1種の脂肪酸であって、少なくとも合計で約90%のステアリン酸およびパルミチン酸を含む脂肪酸を、塩基性水性溶液に導入すること;
    少なくとも1種のアルカリ土類金属硫酸塩を添加し、それによりアルカリ土類金属ステアリン酸塩を沈殿させ、アルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物のスラリーを形成させること;および、
    スラリーのpHを約pH8より低く調節すること、
    を含む方法。
  9. 塩基性水性溶液が水およびNaOHを含む、請求項8に記載の方法。
  10. スラリーのpHを約pH7より低く調節する、請求項8に記載の方法。
  11. スラリーのpHを、pH約6.3ないしpH約6.4に調節する、請求項8に記載の方法。
  12. スラリーのpHを、約pH5.0に調節する、請求項8に記載の方法。
  13. 硫酸、塩酸、硝酸およびそれらの混合物からなる群から選択される有機酸でpHを調節する、請求項8に記載の方法。
  14. アルカリ土類金属ステアリン酸塩が沈殿する前にpHを調節する、請求項8に記載の方法。
  15. アルカリ土類金属ステアリン酸塩が沈殿した後にpHを調節する、請求項8に記載の方法。
  16. 液体−固体分離を実施して、スラリーからアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物を取り出すことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
  17. 後続のアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物の調製で使用するためにスラリーを回収し、回収したスラリーを塩基性水性溶液に添加することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
  18. アルカリ土類金属がマグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
  19. ステアリン酸マグネシウム組成物の製造方法であって、
    塩基性水性溶液を提供すること;
    塩基性水性溶液を加熱すること;
    少なくとも1種の脂肪酸であって、少なくとも合計で約90%のステアリン酸およびパルミチン酸を含む脂肪酸を、塩基性水性溶液に導入すること;
    塩基性水性溶液および少なくとも1種の脂肪酸の加熱を、該少なくとも1種の脂肪酸が塩基性水性溶液に分散するまで継続すること;
    硫酸マグネシウム溶液を添加し、それにより硫酸マグネシウムを少なくとも1種の脂肪酸と反応させ、ステアリン酸マグネシウム組成物を形成させること;および、
    得られた溶液のpHをpH約8より低く調節すること、
    を含む方法。
  20. 塩基性水性溶液が水およびNaOHを含む、請求項19に記載の方法。
  21. 硫酸、塩酸、硝酸およびそれらの混合物からなる群から選択される有機酸でpHを調節する、請求項19に記載の方法。
  22. pHを約7より低く調節する、請求項19に記載の方法。
  23. pHをpH約6.3ないし約6.4に調節する、請求項19に記載の方法。
  24. スラリーのpHを、pH約5.0に調節する、請求項19に記載の方法。
  25. ステアリン酸マグネシウム組成物が沈殿する前にpHを調節する、請求項19に記載の方法。
  26. ステアリン酸マグネシウム組成物が沈殿した後にpHを調節する、請求項19に記載の方法。
  27. 液体固体分離を実施して、スラリーからステアリン酸マグネシウム組成物を回収することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
  28. 後続のアルカリ土類金属ステアリン酸塩組成物の製造で使用するためにスラリーを回収し、回収したスラリーを塩基性水性溶液に添加することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
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