JP7108140B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7108140B2
JP7108140B2 JP2021530487A JP2021530487A JP7108140B2 JP 7108140 B2 JP7108140 B2 JP 7108140B2 JP 2021530487 A JP2021530487 A JP 2021530487A JP 2021530487 A JP2021530487 A JP 2021530487A JP 7108140 B2 JP7108140 B2 JP 7108140B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alkali metal
hydrogen sulfide
sulfide
recovery
dehydration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021530487A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2021005839A1 (ja
Inventor
賢司 鈴木
宏 坂部
道寿 宮原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kureha Corp filed Critical Kureha Corp
Publication of JPWO2021005839A1 publication Critical patent/JPWO2021005839A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7108140B2 publication Critical patent/JP7108140B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/02Polythioethers
    • C08G75/0204Polyarylenethioethers
    • C08G75/025Preparatory processes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/02Polythioethers
    • C08G75/0204Polyarylenethioethers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G75/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing sulfur with or without nitrogen, oxygen, or carbon in the main chain of the macromolecule
    • C08G75/02Polythioethers
    • C08G75/0204Polyarylenethioethers
    • C08G75/0277Post-polymerisation treatment
    • C08G75/0281Recovery or purification

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」とも称する)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、「PAS」とも称する)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気特性及び寸法安定性等に優れたエンジニアリングプラスチックである。PASは、押出成形、射出成形及び圧縮成形等の一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート及び繊維等に成形可能である。そのため、電気機器、電子機器、自動車機器及び包装材料等の広範な技術分野において汎用されている。
PASの製造においては通常、原料である硫黄源に水が含まれているので、PASの重合工程の前に当該原料を脱水する必要がある。また、当該原料を脱水する際に、反応原料である硫黄源由来の硫化水素が揮散するため、硫化水素を回収する必要がある。
例えば、特許文献1には、PASの原料である含水硫黄源を脱水する際に生じる硫化水素を、有機極性溶媒に接触させ、さらにアルカリ金属水酸化物水溶液に接触させることによって回収する、PASの製造装置が開示されている。
国際公開第2018/135372号
しかしながら、特許文献1に開示されたPASの製造装置を用いた場合においても、硫化水素回収処理後の廃ガス及び廃水に硫化水素が少量含まれている。環境負荷の低減の点等で、当該廃ガス及び廃水に含まれる硫化水素の量をさらに減らすことが望まれる。特に廃水に含まれる硫化水素の回収が強く望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、PASの原料である含水硫黄源を脱水する際に生じる硫化水素の反応系外への排出を抑制することができるPASの製造方法及びPASの製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、PASの原料である含水硫黄源を脱水する際に生じる気体成分を凝縮させる前に、当該脱水により生じた硫化水素を吸収し回収する処理を行うことによって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係るPASの製造方法は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる重合工程を含み、前記硫黄源は水を含む原料混合物として供給され、該原料混合物を加熱して脱水する、脱水工程と、前記脱水工程で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収液を得る、硫化水素回収工程と、前記脱水工程で生じた前記気体成分を凝縮させる、凝縮工程と、をさらに含み、前記硫化水素回収工程は、前記凝縮工程よりも先に行われる。
また、本発明に係る脱水処理方法は、ポリアリーレンスルフィドの製造に供される原料混合物の、脱水処理方法であって、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源及び水を含む原料混合物を加熱して脱水する、脱水工程と、前記脱水工程で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収液を得る、硫化水素回収工程と、前記脱水工程で生じた前記気体成分を凝縮させる、凝縮工程とを含み、前記硫化水素回収工程は、前記凝縮工程よりも先に行われる。
また、本発明に係るPASの製造装置は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる、重合部と、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源及び水を含む原料混合物を加熱して脱水する、脱水部と、前記脱水部で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収する、硫化水素回収部と、前記硫化水素回収部によって硫化水素が回収された気体成分を凝縮する、凝縮部と、を備え、前記回収部は前記凝縮部の上流側に設けられている。
本発明の一態様によれば、PASの原料である含水硫黄源を脱水する際に生じる硫化水素の反応系外への排出を十分に抑制することができるPASの製造方法及びPASの製造装置を提供することができる。
図1は、本発明に係るPASの製造装置の一実施形態を示す模式図である。 図2は、PASの連続製造器である場合のPAS連続脱水重合部の一実施形態を示す部分断面図である。 図3は、従来技術に係るPASの製造装置の一例を示す模式図である。
<PASの製造方法>
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法は、脱水工程と、硫化水素回収工程と、凝縮工程と、重合工程とを含む。以下、各工程について説明する。
(脱水工程)
脱水工程では、PASの製造に用いられる硫黄源を含む原料混合物を加熱して脱水する。原料混合物には水が含まれ、硫黄源は水を含む原料混合物として供給される。
硫黄源としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素を挙げることができ、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物であることが好ましい。硫黄源は、例えば、水性スラリーまたは水溶液の状態で扱うことができ、計量性、及び搬送性等のハンドリング性の観点から、水溶液の状態であることが好ましい。アルカリ金属硫化物としては、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム及び硫化セシウムが挙げられる。アルカリ金属水硫化物としては、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム及び水硫化セシウムが挙げられる。硫黄源を硫化水素とする場合、気体もしくは溶液等の液体として扱うことができ、脱水工程前及び/または脱水工程に供給することができる。さらに、脱水工程前及び/または脱水工程にアルカリ金属水酸化物を供給することで、硫黄源の硫化水素が中和され、水が生成する。ゆえに、硫黄源を硫化水素とする場合でも、硫黄源は水を含む混合物となる。アルカリ金属硫化物及び/またはアルカリ金属水硫化物と有機極性溶媒を80~220℃に加熱した後の混合物を原料混合物として供給してもよい。
なお、重合に供される後述する有機極性溶媒及びジハロ芳香族が原料混合物に混合された状態で、脱水処理を施してもよい。また、原料混合物には、後述する重合助剤等が含まれていてもよい。
脱水時間は、含水量が低減された原料混合物中の硫黄源1モル当たりの水分量が、1.7モル以下になるまでの時間である。水が有機極性溶媒の加水分解に消費された場合は、この水も含める。脱水時間は、例えば、通常0.5~10時間で行うことができ、1~5時間が好ましい。
脱水温度は、例えば、連続式により脱水工程を行う場合は、通常110℃~270℃であればよく、140℃~250℃であることが好ましく、150℃~235℃であることがより好ましい。脱水工程を行う時間の50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の時間において、190℃~270℃、好ましくは193℃~250℃、より好ましくは195℃~235℃の範囲で脱水を行うことができる。
バッチ式により脱水工程を行う場合、脱水温度は、通常100~270℃の温度範囲内で行うことができる。発泡を抑制するために、100~220℃が好ましい。
原料混合物を加熱することで原料混合物中の水が蒸気になるとともに、硫黄源としての硫化水素、または、アルカリ金属硫化物もしくはアルカリ金属水硫化物から生じる硫化水素の一部も気化して、脱水工程で生じる気体成分に含まれることになる。有機極性溶媒及びジハロ芳香族化合物が原料混合物に混合された状態で脱水処理を施した場合は、これらも同様に気体成分に含まれることになる。
(硫化水素回収工程)
硫化水素回収工程では、脱水工程で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収し、回収液を得る。従来、脱水の際に生じていた気体成分に含まれる硫化水素は、コンデンサー等で水を凝縮した後で、アルカリ金属水酸化物水溶液及び有機極性溶媒等に吸収させて回収していた。しかしながら本実施の形態では、硫化水素回収工程は、後述する凝縮工程よりも先に行われる。
硫化水素がアルカリ金属水酸化物水溶液に接触することによって以下の式(1)に示す反応がおこる。式(1)に示すように、硫化水素はアルカリ金属硫化物に変換され、アルカリ金属水酸化物水溶液を含む回収液に存在する。これにより、気化した硫化水素を硫黄源として回収することができる。
S+2XOH→XS+2HO・・・(1)
(式(1)中、Xはアルカリ金属を示す。)
十分な量のアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させる点、また、連続式にてPASの重合を行い、それゆえ脱水工程も連続的に行う点からは、アルカリ金属水酸化物水溶液は、例えば、アルカリ金属水酸化物供給工程によって連続的に供給することが好ましい。供給されたアルカリ金属水酸化物水溶液と、硫化水素を含む気体成分とを接触させることによって、気体成分から硫化水素を回収することができる。また、硫化水素回収工程において、アルカリ金属水酸化物水溶液を供給することによって、硫化水素の回収効率が向上する。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、工業的に安価に入手可能な点等から、水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は、特に制限ないが、硫化水素回収工程の全般において溶液状態を保持し、さらに脱水工程を効率的に実施する観点から、より好ましくは5~80質量%、さらに好ましくは10~77質量%である。
上記の通り、本実施形態における硫化水素回収工程は、後述する凝縮工程よりも先に行われる。凝縮工程よりも先に行うことによって、凝縮の後に硫化水素の回収を行う従来の方法と比べ、脱水工程により生じる硫化水素をより多く回収することができる。例えば従来は、脱水の際に生じていた気体成分に含まれる硫化水素は、コンデンサー等で水を凝縮した後に、アルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収していた。この場合、硫化水素が溶存した凝縮水は廃水として処理されていた。本実施形態では、硫化水素回収工程は凝縮工程よりも先に行われ、これにより凝縮工程での凝縮水に溶存する硫化水素を効果的に減少させることができる 。より多くの硫化水素の回収により、反応系外への硫化水素の排出を抑制することができ、環境負荷を低減することができる。さらに、回収された硫化水素は後述の再供給工程において硫黄源として反応系に戻される。そのため、反応系外への硫化水素の排出を抑制することで、反応に利用される硫黄源の量が高まり、収率を向上させることができる。また、反応系外への硫化水素の排出を抑制することで、硫黄源の意図した濃度及び量での反応を行うことが容易となる。
(凝縮工程)
凝縮工程では、脱水工程で生じた気体成分中で凝縮成しうる成分を凝縮させる。ただし本実施の形態においては、脱水工程で生じた気体成分はまずは硫化水素回収工程に供される。そのため、凝縮工程に供される気体成分は、硫化水素回収工程を経た後、すなわちアルカリ金属水酸化物水溶液に接触させた後の気体成分である。凝縮は、公知の方法により行うことができ、例えば、コンデンサーを用いて行うことができる。凝縮工程後、液相は廃液として廃棄すればよい。また廃液中にジハロ芳香族化合物が含まれている場合、ジハロ芳香族化合物を液相と分離して回収し、回収したジハロ芳香族化合物を重合反応の原料として再利用してもよい。凝縮工程後に残存する気体は廃ガスとして廃棄されるか、除外設備に送られる。
(硫化水素追加回収工程)
本実施形態においては、硫化水素回収工程よりも後に、気体成分に残存する硫化水素を有機極性溶媒またはアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収する、硫化水素追加回収工程をさらに含んでいてもよい。硫化水素を吸収および回収する工程が2段階存在することによって、脱水工程で生じた気体成分に含まれる硫化水素の反応系外への排出をさらに抑制することができる。硫化水素の回収効率の点で、硫化水素追加回収工程において、有機極性溶媒を用いて硫化水素を吸収させることが好ましい。硫化水素追加回収工程は脱水工程よりも後であればよく、例えば、硫化水素回収工程の後かつ凝縮工程の前、または凝縮工程の後であり得る。
硫化水素追加回収工程において、例えば一つの吸収塔を用いる場合は、塔の下部(硫化水素の流れの上流側)でアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させ、塔の上部(硫化水素の流れの下流側)で有機極性溶媒と接触させることができる。複数の塔を用いる場合は、例えば、上流側の塔でアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させ、下流側の塔で有機極性溶媒またはアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させることができる。
有機極性溶媒は、後述する重合工程で用いられる有機極性溶媒と同じであっても異なっていてもよい。作業性の向上等の観点から、硫化水素追加回収工程において硫化水素の回収に用いられる有機極性溶媒は、重合工程で用いられる有機極性溶媒と同じであることが好ましい。
また、硫化水素追加回収工程で得られた、硫化水素を回収した回収液を、さらに硫化水素回収工程に供給することもできる。
(再供給工程)
本実施形態においては、硫化水素回収工程または硫化水素追加回収工程で得られた、硫化水素を回収した回収液を、PASの製造に用いられる原料混合物または後述する重合工程における有機極性溶媒または反応混合物に添加する、再供給工程をさらに含んでいてもよい。本明細書において、反応混合物とは、有機極性溶媒を含む、硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応が行われている混合物を示す。再供給工程によって、硫化水素回収工程で回収した硫化水素も重合反応に用いることができ、収率を向上させることができる。
(重合工程)
重合工程では、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる。重合工程においては、脱水工程により脱水された(含水量が低減された)原料混合物及びジハロ芳香族化合物を、反応槽において混合し、有機極性溶媒中で、硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応を行うことにより、PASを製造することができる。有機極性溶媒、及びジハロ芳香族化合物としては、PASの製造において通常用いられるものを用いることができる。
具体的には、有機極性溶媒としては、例えば、有機アミド溶媒;有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒;環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒が挙げられる。有機アミド溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N-メチル-ε-カプロラクタム等のN-アルキルカプロラクタム化合物;N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」とも称する。)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン等のN-アルキルピロリドン化合物またはN-シクロアルキルピロリドン化合物;1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン等のN,N-ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン等が挙げられる。環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、1-メチル-1-オキソホスホラン等が挙げられる。中でも、入手性、取り扱い性等の点で、有機アミド溶媒が好ましく、N-アルキルピロリドン化合物、N-シクロアルキルピロリドン化合物、N-アルキルカプロラクタム化合物、及びN,N-ジアルキルイミダゾリジノン化合物がより好ましく、NMP、N-メチル-ε-カプロラクタム、及び1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノンが更により好ましく、NMPが特に好ましい。有機極性溶媒の使用量は、重合反応の効率等の観点から、硫黄源1モルに対し、0.5~30モルが好ましく、1~15モルがより好ましい。
また、ジハロ芳香族化合物としては、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド及びジハロジフェニルケトン等が挙げられ、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指す。ジハロ芳香族化合物における2個のハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。中でも、入手性、反応性等の点で、p-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、及びこれら両者の混合物が好ましく、p-ジハロベンゼンがより好ましく、p-ジクロロベンゼン(以下、「pDCB」とも称する。)が特に好ましい。ジハロ芳香族化合物の使用量は、硫黄源の仕込み量1モルに対し、好ましくは0.90~1.50モルであり、より好ましくは0.92~1.10モルであり、更により好ましくは0.95~1.05モルである。使用量が上記の範囲内であると、分解反応が生じにくく、安定的な重合反応の実施が容易であり、高分子量ポリマーを生成させやすい。
分岐または架橋重合体を生成させるために、3個以上のハロゲン原子が結合したポリハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなくてもよい)、活性水素含有ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化芳香族ニトロ化合物等を併用することもできる。分岐・架橋剤としてのポリハロ化合物として、好ましくはトリハロベンゼンが挙げられる。
重合反応は、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを含む混合物を加熱して重合反応を開始させ、重量平均分子量2,000以上のポリマーを生成させる重合反応である。
重合反応では、重合反応の効率等の観点から、温度170~300℃の加熱下で重合反応を行うことが好ましい。重合温度は、180~280℃の範囲であることが、副反応及び分解反応を抑制する上でより好ましい。
ジハロ芳香族化合物の転化率は、好ましくは50~100%、より好ましくは60~100%、更に好ましくは65~100%、特に好ましくは70~100%である。ジハロ芳香族化合物の転化率は、反応混合物中に残存するジハロ芳香族化合物の量をガスクロマトグラフィにより求め、その残存量とジハロ芳香族化合物の仕込み量に基づいて算出することができる。
より高分子量のPASを得るために、2段階以上に分けて行うこともできる。重合反応は、例えば、比較的低温で硫黄源とジハロ芳香族化合物との前段重合反応を行い、その後比較的高温で後段重合することが好ましい。前段重合反応は、硫黄源とジハロ芳香族化合物とを含む混合物を加熱して重合反応を開始させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が50%以上のプレポリマーを生成させる重合反応が好ましい。特に、前段重合反応では、重合反応の効率等の観点から、温度170~270℃の加熱下で重合反応を開始させ、ジハロ芳香族化合物の転化率が50%以上のプレポリマーを生成させることが好ましい。前段重合反応での重合温度は、180~265℃の範囲から選択することが、副反応および分解反応を抑制する上で好ましい。後段重合では、温度230~300℃、好ましくは235~280℃で重合反応を進め、ジハロ芳香族化合物の転化率を80%以上、好ましくは90%以上とし、高分子量ポリマーを生成させる。
<重合助剤>
また、重合工程は、PASの重合助剤存在下で行ってもよい。余分な水の存在はPASの重合を阻害するので、重合助剤に付随する水を原料混合物と共に脱水することが好ましい。
このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ土類金属リン酸塩等が挙げられる。これらは単独または2種以上を同時に用いることができる。なかでも有機カルボン酸塩、特にC2~C12の有機カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましく用いられる。より具体的には、短鎖脂肪酸、または芳香族系カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が挙げられる。これらの中でも酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、及び安息香酸、フェニル酢酸、p-トルイル酸等のナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましい。有機カルボン酸塩は1種または2種以上を同時に用いることができる。重合反応を促進する点等で、酢酸、カプロン酸、吉草酸、イソ吉草酸、2-エチル酪酸、安息香酸のナトリウムまたはリチウム塩が好ましく用いられる。
これらの材料は、単独で用いてもよいし、PASの製造が可能である組み合わせであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。また酸及び対応するアルカリ金属水酸化物の形態で用いてもよい。
供給する重合助剤の供給量は、化合物の種類により異なるが、供給硫黄源1モルに対し、通常0.01~5.0モル、好ましくは0.02~1.0モル、より好ましくは0.03~0.9モル、特に好ましくは0.05~0.8モルの範囲で供給する。
重合は従来知られている方法であれば特に限定されるものではなく、連続式またはバッチ式等公知の方法で行うことができる。
例えば、本実施形態のPASの製造方法において、上記脱水工程、上記硫化水素回収工程、及び上記重合工程を並行して行うことにより、連続式のPASの製造方法とすることができる。また、これらの工程を並行して行うことによって、省資源化、省エネルギー化、及び設備コスト削減等が可能である。さらに、脱水工程、硫化水素回収工程、及び重合工程に加え、再供給工程、凝縮工程及び硫化水素追加回収工程のいずれか一つ以上を並行して行ってもよい。
原料混合物中に含まれる硫黄源に対する、凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源のモル比率は、0~3モル%が好ましく、0~2モル%がより好ましく、0~1モル%がさらに好ましい。凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源は特別な除害・廃水処理が必要となる硫黄源である。凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源の量が上記範囲であると廃水処理コストを低減できるという効果を奏する。さらに、凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源を重合工程および脱水工程へとリサイクルすることは困難であるため、凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源の量が上記範囲であると、重合工程の重要な制御因子である硫黄源の制御性を向上できるという効果をも奏する。
[脱水処理方法]
上述の通り、本実施形態のPASの製造方法によれば、脱水工程により生じる硫化水素の反応系外への排出を抑制することができ、環境負荷を低減することができる。したがって、硫化水素の反応系外への排出を抑制することができる原料混合物の脱水処理方法も提供される。具体的には、本実施形態に係る脱水処理方法は、PASの製造に供される原料混合物の、脱水処理方法であって、上述した脱水工程と、硫化水素回収工程と、凝縮工程とを含むものである。また、上述のPASの製造方法と同じく、硫化水素回収工程は、凝縮工程よりも先に行われる。本実施形態の脱水処理方法では、硫化水素回収工程を凝縮工程よりも先に行うことによって、凝縮の後に硫化水素の回収を行う従来の方法と比べ、脱水工程により生じる硫化水素を硫化水素回収工程においてより多く効果的に回収することができる。その結果、反応系外への硫化水素の排出を十分に抑制することができ、環境負荷を低減することができる。
[PASの製造装置]
以下、図1に基づいて、本実施形態に係るPASの製造装置について説明する。図1は、本実施形態に係るPASの製造装置100の構成を示す模式図である。
PASの製造装置100は、上流側から下流側に向けて、脱水重合部20と、脱水重合部20に接続された硫化水素回収部30と、硫化水素回収部30に接続された凝縮部40と、を備えている。
(脱水重合部20)
脱水重合部20は、原料混合物を加熱して脱水を行うとともに、有機極性溶媒中で硫黄源とジハロ芳香族化合物とを重合させてPASを生成させる装置である。
脱水重合部20には、原料供給ラインL2が接続されており、原料供給ラインL2を通じて、有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族混合物等のPASの原料が供給される。なお、硫黄源は上述のPASの製造方法で説明した通り、水を含む原料混合物として供給される。PASの原料には、上述の重合助剤が含まれていてもよい。なお、本明細書において「PASの原料」とは、PASの構成成分となる硫黄源およびジハロ芳香族化合物の他にPASの重合に必要な溶媒および重合助剤等を含んでもよいことを意図している。
図1では、原料供給ラインL2は1つのみ示しているが、供給されるPASの原料それぞれ異なるラインを設けてもよい。なお、PASの原料を予め混合した状態で供給してもよく、この場合には原料供給ラインL2は1つでもよい。
脱水重合部20には反応混合物回収ラインL3が接続されており、脱水重合部20で生成されたPAS、有機極性溶媒、及びアルカリ金属ハロゲン化物を含む反応混合物は、反応混合物回収ラインL3を通じて、回収される。
脱水重合部20には気体送達ラインL4が接続されており、脱水重合部20は、気体送達ラインL4を通じて、硫化水素回収部30と連通している。脱水重合部20において、原料混合物の加熱により生じた気体成分及び重合工程において生じる気体成分は、気体送達ラインL4を通じて、硫化水素回収部30に移動する。
図1の例では、脱水重合部20が、硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合を行う重合部と、原料混合物を加熱して脱水処理を行う脱水部との両方の役割を担っているが、重合部と脱水部とをそれぞれ別々に設けてもよい。
また、本実施形態においては、脱水重合部20には、不活性ガスを供給するガス供給ラインL1が接続されている。ガス供給ラインL1から不活性ガスを供給することにより蒸発した水分が脱水重合部20内で凝縮することを防ぐことができる。不活性ガスの例として、アルゴン等の希ガス;窒素等が挙げられる。
脱水重合部20としては、特に限定されず、例えば、公知の脱水容器も兼用する重合容器または脱水容器と重合容器の組み合わせを用いることができ、バッチ式でも連続式でもよい。
(硫化水素回収部30)
硫化水素回収部30は、気体送達ラインL4を介して脱水重合部20と接続されている。硫化水素回収部30には、気体送達ラインL4から、少なくとも原料混合物の加熱により脱水重合部20において生じた気体成分が供給される。
また、硫化水素回収部30には、アルカリ金属水酸化物水溶液を供給するアルカリ金属水酸化物供給ラインL6が中央部付近に接続されている。硫化水素回収部30では、脱水重合部20から送られてくる気体成分を、アルカリ金属水酸化物供給ラインL6から連続的に供給されたアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させる。当該接触によって、気体成分に含まれる硫化水素がアルカリ金属硫化物としてアルカリ金属水酸化物水溶液に溶存することによって、硫化水素を気体成分から回収することができる。気体送達ラインL4から供給される気体成分とアルカリ金属水酸化物水溶液とは、向流で接触させても並流で接触させてもよいが、向流接触であることが好ましい。
本実施形態においては、さらに、アルカリ金属水酸化物供給ラインL6よりも下流側において、有機極性溶媒を供給する追加回収液供給ラインL5が硫化水素回収部30の上部付近に接続されている。これにより、アルカリ金属水酸化物水溶液に接触させた気体成分を、追加回収液供給ラインL5から供給された有機極性溶媒とさらに接触させる。追加回収液供給ラインL5をさらに備えることによって、アルカリ金属水酸化物水溶液に接触させた気体成分に残存する硫化水素を、有機極性溶媒に吸収させて回収することができる。すなわち、硫化水素の回収を2段階で行うことによって、脱水処理で生じた気体成分に含まれる硫化水素の反応系外への排出をさらに抑制することができる。気体成分と、有機極性溶媒とは、向流で接触させても並流で接触させてもよい。なお、有機極性溶媒の代わりに、アルカリ金属水酸化物水溶液を追加回収液供給ラインL5から供給してもよい。アルカリ金属水酸化物供給ラインL6から供給されるアルカリ金属水酸化物水溶液との接触及び追加回収液供給ラインL5から供給されるアルカリ金属水酸化物水溶液との接触の2段階の接触により、有機極性溶媒が供給される場合と同様に、硫化水素の回収を2段階で行うことができる。追加回収液供給ラインL5の代わりに、有機極性溶媒供給ライン4またはアルカリ金属水酸化物供給ラインL6から有機極性溶媒またはアルカリ金属水酸化物水溶液を供給してもよい。
なお、本実施形態においては、追加回収液供給ラインL5を硫化水素回収部30に接続させている。硫化水素回収部30よりも下流側、例えば、硫化水素回収部30と凝縮部40との間、または凝縮部40の下流側に、追加回収塔を設け、当該追加回収塔に追加回収液供給ラインL5を接続させてもよい。
硫化水素回収部30には、硫化水素を回収したアルカリ金属水酸化物水溶液または有機極性溶媒を含む回収液を脱水重合部20に供給するための再供給ラインL7が接続されている。当該回収液は、再供給ラインL7を通じて、脱水重合部20に再供給される。これにより、回収液に含まれる硫黄源を重合反応の原料として再利用させることができる。再供給時に余分な水を脱水重合部20に供給しなくて済むので、追加回収液として有機極性溶媒を使用し、これに吸収させて回収することが好ましい。
重合反応においてアルカリ金属水酸化物が必要となる場合、脱水重合部20の原料供給ラインL2からアルカリ金属水酸化物を供給してもよいが、硫化水素の回収効率向上の点等から、アルカリ金属水酸化物供給ラインL6または追加回収液供給ラインL5から供給されたアルカリ金属水酸化物水溶液であって、回収液に含まれているアルカリ金属水酸化物水溶液を、再供給ラインL7を介して供給することが好ましい。
硫化水素回収部30としては、気体成分をアルカリ金属水酸化物水溶液または有機極性溶媒と接触させる方式を採用する限り、特に限定されず、例えば、湿式ガス洗浄塔が挙げられる。湿式ガス洗浄塔としては、特に限定されず、例えば、充填塔、棚段塔、スプレー塔(スクラバー)、およびバブリング式吸収塔等が挙げられる。硫化水素回収部30としては、充填塔を用いることが好ましい。充填塔では、保持される液量が少ないため、定常状態に至るまでの時間が早く、少ない液量で高い回収率を実現しやすいことに加え、圧損が少ない。
また、本実施形態の製造装置100においては、充填塔を用いる場合、脱水重合部20で生じた気体成分が、凝縮を経ずに、硫化水素回収部30に供給される。気体成分には腐食作用のある硫化水素が含まれているので、脱水重合部20で生じた気体成分が、凝縮を経ずに、硫化水素回収部30に供給されるために、当該気体成分は高温かつ高腐食性となる。そのため、充填塔に充填する充填剤は、高温及び腐食に強い材質のものが好ましい。具体的には、ニッケル、ニッケル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、タンタル、タンタル合金等の金属、アルミナ等のセラミックス、及び樹脂等が挙げられる。
硫化水素回収部30には、アルカリ金属水酸化物水溶液または有機極性溶媒と接触させた後の気体成分を凝縮部40に送る気体送達ラインL8が接続されている。
(凝縮部40)
凝縮部40は、硫化水素回収部30において硫化水素を回収した後の気体成分の凝縮を行う装置である。凝縮部40は、気体送達ラインL8を介して硫化水素回収部30と接続されている。凝縮部40には、気体送達ラインL8を通じて、硫化水素が回収された気体成分が硫化水素回収部30から供給される。
凝縮部40には、廃ガスラインL10が接続されており、凝縮処理後のガスは廃ガスラインL10を通じて、PASの製造装置100の外に排出される。製造装置100の外に放出する前に、ガスにアルカリ金属水酸化物水溶液または有機極性溶媒を接触させて、微量残った硫化水素を吸収及び回収してもよい。また、凝縮部40には、廃液ラインL11がさらに接続されており、凝縮処理により生じた液体(液相)は廃液として廃液ラインL11を通じて廃棄される。また、凝縮部40には、凝縮処理により生じた液体(液相)に含まれるジハロ芳香族化合物を脱水重合部20に供給するための、再供給ラインL9がさらに接続されている。液体から分離したジハロ芳香族化合物を、再供給ラインL9を通じて脱水重合部20に供給し、重合反応の原料として再利用することができる。液体(液相)からのジハロ芳香族化合物の分離は凝縮部40で行ってもよいし、分離部を別途設けてもよい。分離部としては、液液分離部でも固液分離部でもよく、具体例としては、静置槽等が挙げられる。
凝縮部40としては、特に限定されず、例えば、公知のコンデンサーを用いることができる。
次に、脱水重合部20としてPAS連続製造器を用いる場合の具体例について、詳述する。
[PAS連続脱水重合部21の実施形態]
図2は、PAS連続製造器である場合のPAS連続脱水重合部21の一実施形態を示す部分断面図である。以下、図2に基づき、実施形態1の構成を説明する。
実施形態1に係るPAS連続脱水重合部21は、反応槽1a、1b、及び1cを収容する収容室2を備える。PAS連続脱水重合部21において、収容室2は、水平面Hに対し角度θをなすように、傾斜して設置されている。収容室2の形状としては、特に限定されず、例えば、反応槽1aに接する側壁3a及び反応槽1cに接する側壁3bを底面とする中空円柱形または中空角柱形等が挙げられる。
収容室2の側壁3aには、収容室2に有機極性溶媒を供給する有機極性溶媒供給ライン4、収容室2にアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源を供給する硫黄源供給ライン5、及び収容室2にジハロ芳香族化合物を供給するジハロ芳香族化合物供給ライン6が接続されている。必要に応じて収容室2に水を供給する水供給ラインを接続してもよい。収容室2の側壁3bには、収容室2から反応混合物を回収する反応混合物回収ライン7が接続されている。有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物は、気相を介して反応槽1aの液相に供給されてもよいし、直接、反応槽1aの液相に供給されてもよい。
反応槽1aと反応槽1bとは隔壁8aによって隔てられ、反応槽1bと反応槽1cとは隔壁8bによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cは、収容室2における気相を介して、互いに連通している。その結果、収容室2における気相の圧力は均一となる。収容室2が、水平面Hに対し角度θをなすように、傾斜して設置されているため、収納し得る液体の最大液面レベルは、反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cの順番で高い。反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cは、上記順番で直列に接続されている。なお、反応混合物の移動方向の最上流の反応槽1aを除いた各反応槽において、移動方向の上流側の隔壁の最小高さは、その反応槽の最大液面レベルよりも高い。即ち、反応槽1bにおいて、移動方向の上流側の隔壁8aの最小高さは、反応槽1bの最大液面レベルよりも高く、反応槽1cにおいて、移動方向の上流側の隔壁8bの最小高さは、反応槽1cの最大液面レベルよりも高い。これにより、反応槽1bから反応槽1aへの逆流、及び、反応槽1cから反応槽1bへの逆流が防止される。反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cは、それぞれ反応混合物9a、反応混合物9b、及び反応混合物9cを収容し得る。なお、別の実施形態においては、収容室2が上述の通りに傾斜して設置されていることによってだけでなく、隔壁高さの調整によっても、収納し得る液体の最大液面レベルを、反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cの順番で高くしてもよい。
収容室2においては、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10a、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10b、及び反応槽1c中の反応混合物9cを撹拌する撹拌翼10cが、同一の軸11に設置されている。軸11は、収容室2外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。軸11の側壁3a側の末端には、軸11を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
収容室2の側壁3a近傍には、気体送達ライン13の一端が接続されている。気体送達ライン13の他端には、硫化水素回収部(図2において図示せず)が接続されている。硫化水素回収部は、気体送達ライン13を通じて収容室2における気相と連通している。
収容室2の側壁3bには、収容室2における気相と連通し、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1cから反応槽1aに向けて、該気相に不活性ガスを送り込む送気部28が、ガス供給ライン29を介して接続されている。不活性ガスとしては、特に限定されず、例えば、アルゴン等の希ガス;窒素等が挙げられる。なお、別の実施形態において、側壁3bには送気部28が接続されていなくてもよい。
また、PAS連続脱水重合部21として、特許文献1に開示されている他のPAS連続製造器も用いることができる。
<ポリアリーレンスルフィド>
本実施形態の製造方法で得られるPASは、直鎖状の、または分岐したPASであり、好ましくはポリフェニレンスルフィド(PPS)である。
PASの重量平均分子量(Mw)は特に限定されるものではなく広範囲にわたる。通常、PASのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算重量平均分子量の下限値は、2,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上である。また、この重量平均分子量の上限値は300,000以下、好ましくは100,000以下である。
[まとめ]
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる重合工程を含み、前記硫黄源は水を含む原料混合物として供給され、該原料混合物を加熱して脱水する、脱水工程と、前記脱水工程で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収液を得る、硫化水素回収工程と、前記脱水工程で生じた前記気体成分を凝縮させる、凝縮工程と、をさらに含み、前記硫化水素回収工程は前記凝縮工程よりも先に行われる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記硫化水素回収工程が、前記アルカリ金属水酸化物水溶液を連続的に供給するアルカリ金属水酸化物供給工程を有していてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記重合工程、前記脱水工程、及び前記硫化水素回収工程を並行して行ってもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記原料混合物が前記ジハロ芳香族化合物を含んでいてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記硫化水素回収工程で得られた回収液を、前記有機極性溶媒または前記原料混合物に添加する、再供給工程をさらに含んでいてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記硫化水素回収工程より後に、前記気体成分に残存する前記硫化水素を有機極性溶媒またはさらなるアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収する硫化水素追加回収工程を含んでいてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造方法において、前記原料混合物中に含まれる硫黄源に対する、前記凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源のモル比率が3モル%以下であってもよい。
本実施形態に係る脱水処理方法は、ポリアリーレンスルフィドの製造に供される原料混合物の、脱水処理方法であって、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源及び水を含む原料混合物を加熱して脱水する、脱水工程と、前記脱水工程で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収液を得る、硫化水素回収工程と、前記脱水工程で生じた前記気体成分を凝縮させる、凝縮工程と、を含み、前記硫化水素回収工程は、前記凝縮工程よりも先に行われる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造装置は、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる、重合部と、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源及び水を含む原料混合物を加熱して脱水する、脱水部と、前記脱水部で生じた気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収する、硫化水素回収部と、前記硫化水素回収部によって硫化水素が回収された気体成分を凝縮する、凝縮部と、を備え、前記回収部は前記凝縮部の上流側に設けられている。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造装置において、前記硫化水素回収部は充填剤を備え、前記充填剤の材質は、ニッケル、ニッケル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、タンタル、タンタル合金、セラミックス及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材質であってもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造装置は、前記硫化水素回収部によって得られた回収液を、前記重合部または前記脱水部に供給する再供給ラインをさらに備えてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造装置において、前記硫化水素回収部は、前記アルカリ金属水酸化物水溶液が連続的に供給されるアルカリ金属水酸化物供給ラインを備えてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造装置において、前記硫化水素回収部は、前記有機極性溶媒または前記アルカリ金属水酸化物水溶液が供給される追加回収液供給ラインを備えていてもよい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィドの製造装置において、前記追加回収液供給ラインは、前記アルカリ金属水酸化物供給ラインよりも下流側に設けられていてもよい。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
[実施例1]
図1に示す構成を有するPASの製造装置を用いた。脱水重合部20としては、収容室2が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する以外は、図2に示すのと同様のPAS連続脱水重合部21を用いた。このPAS連続脱水重合部21は、隔壁が半円形状であり、直径100mm×長さ300mmの寸法を有するTi製反応装置であった。このPAS連続脱水重合部21に、NMP950gを仕込んだ後、上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁とで区切られた部分の温度1を230℃、3番目の隔壁と4番目の隔壁とで区切られた部分の温度2を260℃に保持した。そして、NMP-pDCB混合液を、定量ポンプを用いてジハロ芳香族化合物供給ライン6より3.12g/min(NMP:pDCB(質量比)=940:930)の流量で、38質量%NaSH水溶液を硫黄源供給ライン5より1.54g/minの流量にて連続的に供給した。一方で、PAS連続脱水重合部21の下流側のガス供給ライン29からは窒素を20mL/minの流量で流入させた。また、同時にPAS連続脱水重合部21に接続された充填塔である硫化水素回収部30には追加回収液供給ラインL5から充填塔上部にNMP1.57g/min、及びアルカリ金属水酸化物供給ラインL6から充填塔中部に25質量%NaOH水溶液1.54g/minを連続的に供給し、PAS連続脱水重合部21から流入する気相(具体的には、図2では気体送達ライン13からの気相、図1では気体送達ラインL4からの気相)と向流接触させた。硫化水素回収部30からの液相は再供給ラインL7を通じて、PAS連続脱水重合部21の反応槽1aに流入させた。硫化水素回収部30から気体送達ラインL8を通じて流出する気相は、凝縮部40を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.32MPaに制御しながら、PAS連続脱水重合部21より連続的に水を除去した。更に、除去した水に同伴されるpDCBについては、凝縮部40の一部を構成する静置槽で分離して、再供給ラインL9を通してPAS連続脱水重合部21の反応槽1aに戻した。水及び微量の硫黄源は廃液ラインL11を通して廃棄した。さらに凝縮部40からのガスは廃ガスラインL10から、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液5kgに通じて極微量の硫化水素を完全に吸収/回収した後に、大気放出した。重合反応物はPAS連続脱水重合部21の反応混合物回収ライン7から連続的に溢流させて抜出し、冷却した。
以上の操作を9時間継続し、硫黄源についてマテリアルバランスを調べた。具体的には、原料供給ラインL2(本実施例1では図2の硫黄源供給ライン5)を通じて供給された硫黄源の量、廃ガスラインL10及び廃液ラインL11を通じてロスした硫黄源の量を、硫化水素換算で測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007108140000001
[実施例2]
硫化水素回収部30に供給するNMP1.57g/minを追加回収液供給ラインL5からアルカリ金属水酸化物供給ラインL6へと変更(即ち、アルカリ金属水酸化物を同一ラインにて供給)した以外は、実施例1と同様に行った。以上の操作を9時間継続し、硫黄源についてマテリアルバランスを調べた。結果を表2に示す。
Figure 0007108140000002
[実施例3]
硫化水素回収部30に供給するNMP1.57g/minを、追加回収液供給ラインL5からPAS連続脱水重合部21に接続された有機極性溶媒供給ライン4へと変更した以外は、実施例1と同様に行った。以上の操作を9時間継続し、硫黄源についてマテリアルバランスを調べた。結果を表3に示す。
Figure 0007108140000003
[比較例1]
図3に示す構成を有するPASの製造装置を用いた。図3は、従来技術に係るPASの製造装置の一例を示す模式図である。当該模式図は特許文献1を参考に本願明細書の表記に準じて作成した。
まず、図3に示すPASの製造装置について説明する。PASの製造装置200は、上流側から下流側に向けて、脱水重合部120と、凝縮部130と、硫化水素回収部160(第1硫化水素回収部140と第2硫化水素回収部150を含む)と、を備えている。凝縮部130は、気体送達ラインL24を通じて脱水重合部120と連通している。第1硫化水素回収部140は気体送達ラインL25を通じて凝縮部130と連通している。第2硫化水素回収部150は気体送達ラインL29を通じて第1硫化水素回収部140と連通している。凝縮部130は、水、ジハロ芳香族化合物、有機極性溶媒、及び硫化水素を含有する気相を凝縮し、有機極性溶媒、ジハロ芳香族化合物は再供給ラインL27を通じて脱水重合部120に再供給される。有機極性溶媒供給ラインL28を通じて有機極性溶媒が、アルカリ金属水酸化物供給ラインL31を通じてアルカリ金属水酸化物水溶液がそれぞれ第1硫化水素回収部140及び第2硫化水素回収部150に供給され、凝縮部130で凝縮処理された気体と接触させる。そして、凝縮部130で凝縮処理された気体に含まれる硫化水素が第1硫化水素回収部140及び第2硫化水素回収部150で吸収され、回収される。第1硫化水素回収部140で得られた回収液は回収液ラインL30、第2硫化水素回収部で得られた回収液は回収液ラインL32を通じて、脱水重合部120に再供給され、脱水重合反応の原料として再利用される。図3のPASの製造装置200では、原料混合物の脱水処理及び脱水処理で生じた気体成分の凝縮処理の後に、硫化水素の回収処理を行っている。
脱水重合部120としては、実施例1と同じPAS連続脱水重合部21を用いた。このPAS連続脱水重合部21に、NMP950gを仕込んだ後、上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁とで区切られた部分の温度1を230℃、3番目の隔壁と4番目の隔壁とで区切られた部分の温度2を260℃に保持した。そして、NMP-pDCB混合液を定量ポンプを用いてジハロ芳香族化合物供給ライン6より3.52g/min(NMP:pDCB(質量比)=990:278)の流量で、36質量%NaSH水溶液を硫黄源供給ライン5より0.84g/minの流量にて連続的に供給した。同時にPAS連続脱水重合部21に気体送達ライン13により接続された凝縮部130を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.32MPaに制御しながら、PAS連続脱水重合部21より連続的に水を除去した。更に、除去した水に同伴されたpDCBについては、凝縮部130の一部を構成する静置槽で分離して再供給ラインL27を通してPAS連続脱水重合部21の反応槽1aに戻した。凝縮した水及び硫黄源は廃液ラインL26を通して廃棄した。凝縮部130からのガスは、気体送達ラインL25を通して充填塔である第1硫化水素回収部140に供給され、向流で0.5g/minの流量のNMPと接触させた。NMPは有機極性溶媒供給ラインL28から供給した。第1硫化水素回収部140からの液相は、回収液ラインL30を通してPAS連続脱水重合部21の反応槽1aに戻した。一方、第1硫化水素回収部140からのガスは、気体送達ラインL29を通して充填塔である第2硫化水素回収部150に供給され、向流で1.37g/minの流量の15.84質量%水酸化ナトリウム水溶液と接触させた。水酸化ナトリウム水溶液はアルカリ金属水酸化物供給ラインL31より供給した。第2硫化水素回収部150からの液相は、回収液ラインL32を通してPAS連続脱水重合部21の反応槽1aに戻した。一方、第2硫化水素回収部150からの廃ガスラインL33から、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液5kgに通じて硫化水素を完全に吸収し、回収した後に、大気放出した。重合反応物は反応混合物回収ラインL23を通してPAS連続脱水重合部21から連続的に抜出し、冷却した。
以上の操作を5時間継続し、硫黄源についてマテリアルバランスを調べた。具体的には、原料供給ラインL22(本比較例1では図2の硫黄源供給ライン5)を通じて供給された硫黄源の量、廃液ラインL26及び廃ガスラインL33を通じてロスした硫黄源の量を、硫化水素換算で測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007108140000004
[比較例2]
操作時間を5時間から2時間に変更し、NMP-pDCB混合液の流量及び組成をそれぞれ3.54g/min及びNMP:pDCB(質量比)=988:286に変更した以外は、比較例1と同様にして、硫黄についてマテリアルバランスを調べた。結果を表5に示す。
Figure 0007108140000005
[比較例3]
操作時間を5時間から7時間に変更し、NMP-pDCB混合液の流量及び組成をそれぞれ3.55g/min及びNMP:pDCB(質量比)=986:294に変更し、15.84質量%水酸化ナトリウム水溶液の流量を1.36g/minに変更した以外は、比較例1と同様にして、硫黄についてマテリアルバランスを調べた。結果を表6に示す。
Figure 0007108140000006
[実施例と比較例のまとめ]
実施例1~3のPASの製造装置は、比較例1~3のPASの製造装置と比較して、硫黄源のロスした量が削減できており、特に廃液に含まれる硫黄源の量が大幅に軽減された。比較例1~3のPASの製造装置では、凝縮処理した後のガスに対して水酸化ナトリウム水溶液を接触させることによって、凝縮処理したガスから硫化水素の回収を行った。一方、実施例1~3のPASの製造装置では、連続製造器からの気体成分を凝縮させる前に、水酸化ナトリウム水溶液と接触させることにより当該気体成分からの硫化水素の回収を行った。これらの結果から、PASの製造において、原料の脱水処理で生じた気体成分を凝縮させる前に、当該脱水処理により生じた気体に含まれる硫化水素の回収処理を行うことによって、反応系外への硫化水素の排出を大幅に抑制できることが分かった。
1a~1c 反応槽
2 収容室
3a~3b 側壁
4 有機極性溶媒供給ライン
5 硫黄源供給ライン
6 ジハロ芳香族化合物供給ライン
7 反応混合物回収ライン
8a~8b 隔壁
9a~9c 反応混合物
10a~10c 撹拌翼
11 軸
12 回転駆動装置
13 気体送達ライン
20、120 脱水重合部
21 PAS連続脱水重合部
28 送気部
29 ガス供給ライン
30、160 硫化水素回収部
40、130 凝縮部
100、200 PASの製造装置
140 第1硫化水素回収部
150 第2硫化水素回収部
L1、L21 ガス供給ライン
L2、L22 原料供給ライン
L3、L23 反応混合物回収ライン
L4、L8、L24、L25、L29 気体送達ライン
L5 追加回収液供給ライン
L6、L31 アルカリ金属水酸化物供給ライン
L7 再供給ライン
L9、L27 再供給ライン
L10、L33 廃ガスライン
L11、L26 廃液ライン
L28 有機極性溶媒供給ライン
L30、L32 回収液ライン

Claims (13)

  1. ポリアリーレンスルフィドの製造方法であって、
    アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる重合工程を含み、
    前記硫黄源は水を含む原料混合物として供給され、該原料混合物を加熱して脱水する、脱水工程と、
    前記脱水工程で生じた気体成分をアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させることで、前記気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属硫化物に変換し、前記アルカリ金属硫化物と前記アルカリ金属水酸化物水溶液とを含む回収液を得る、硫化水素回収工程と、
    前記硫化水素回収工程を経た気体成分を凝縮させる、凝縮工程と、をさらに含む、ポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記硫化水素回収工程が、前記アルカリ金属水酸化物水溶液を連続的に供給するアルカリ金属水酸化物供給工程を有する、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記重合工程、前記脱水工程、及び前記硫化水素回収工程を並行して行う、請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記原料混合物が前記ジハロ芳香族化合物を含む、請求項1~3の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記硫化水素回収工程で得られた回収液を、前記有機極性溶媒または前記原料混合物に添加する、再供給工程をさらに含む、請求項1~4の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. 前記硫化水素回収工程より後に、前記硫化水素回収工程を経た気体成分を有機極性溶媒またはさらなるアルカリ金属水酸化物水溶液に接触させることで、前記気体成分に残存する前記硫化水素を前記有機極性溶媒または前記さらなるアルカリ金属水酸化物水溶液に吸収させて回収する硫化水素追加回収工程を含む、請求項1~5の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. 前記原料混合物中に含まれる硫黄源に対する、前記凝縮工程後に排出される液体中に存在する硫黄源のモル比率が3モル%以下である、請求項1~6の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  8. ポリアリーレンスルフィドの製造に供される原料混合物の、脱水処理方法であって、
    アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源及び水を含む原料混合物を加熱して脱水する、脱水工程と、
    前記脱水工程で生じた気体成分をアルカリ金属水酸化物水溶液と接触させることで、前記気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属硫化物に変換し、前記アルカリ金属硫化物と前記アルカリ金属水酸化物水溶液とを含む回収液を得る、硫化水素回収工程と、
    前記硫化水素回収工程を経た後の気体成分を凝縮させる、凝縮工程と、を含む、脱水処理方法。
  9. アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源と、ジハロ芳香族化合物とを、有機極性溶媒中で重合反応させる、重合部と、
    アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素から選択される少なくとも1つの硫黄源及び水を含む原料混合物を加熱して脱水する、脱水部と、
    前記脱水部で生じた気体成分をアルカリ金属水酸化物水溶液に接触させ、前記気体成分に含まれる硫化水素をアルカリ金属硫化物に変換し、前記アルカリ金属硫化物を前記アルカリ金属水酸化物水溶液に溶存させて回収する、硫化水素回収部と、
    前記硫化水素回収部によって硫化水素回収した後の気体成分を凝縮する、凝縮部と、を備え、
    前記硫化水素回収部は前記凝縮部の上流側に設けられている、ポリアリーレンスルフィドの製造装置。
  10. 前記硫化水素回収部は充填剤を備え、
    前記充填剤の材質は、ニッケル、ニッケル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、タンタル、タンタル合金、セラミックス及び樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材質である、請求項9に記載のポリアリーレンスルフィドの製造装置。
  11. 前記硫化水素回収部によって得られた、前記アルカリ金属硫化物が溶存した前記アルカリ金属水酸化物水溶液を、前記重合部または前記脱水部に供給する再供給ラインをさらに備える、請求項9または10に記載のポリアリーレンスルフィドの製造装置。
  12. 前記硫化水素回収部は、前記アルカリ金属水酸化物水溶液が連続的に供給されるアルカリ金属水酸化物供給ラインを備える、請求項9~11の何れか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造装置。
  13. 前記硫化水素回収部は、前記アルカリ金属水酸化物供給ラインよりも下流側に、前記アルカリ金属水酸化物水溶液に接触させた後の気体成分に残存する前記硫化水素を回収するための有機極性溶媒またはさらなるアルカリ金属水酸化物水溶液が供給される追加回収液供給ラインをさらに備える、請求項12に記載のポリアリーレンスルフィドの製造装置。
JP2021530487A 2019-07-09 2020-03-19 ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置 Active JP7108140B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019127561 2019-07-09
JP2019127561 2019-07-09
PCT/JP2020/012193 WO2021005839A1 (ja) 2019-07-09 2020-03-19 ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2021005839A1 JPWO2021005839A1 (ja) 2021-01-14
JP7108140B2 true JP7108140B2 (ja) 2022-07-27

Family

ID=74114674

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021530487A Active JP7108140B2 (ja) 2019-07-09 2020-03-19 ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置

Country Status (5)

Country Link
US (1) US11453752B2 (ja)
JP (1) JP7108140B2 (ja)
KR (1) KR102415435B1 (ja)
CN (1) CN114008111B (ja)
WO (1) WO2021005839A1 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003029328A1 (fr) 2001-09-27 2003-04-10 Kureha Chemical Industry Company, Limited Procede de production d'un sulfide polyarylene
WO2004060974A1 (ja) 2002-12-27 2004-07-22 Kureha Chemical Industry Company, Limited ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP2015218214A (ja) 2014-05-15 2015-12-07 Dic株式会社 スルフィド化剤およびポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法
WO2018135372A1 (ja) 2017-01-18 2018-07-26 株式会社クレハ ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの製造装置

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4371671A (en) * 1981-09-01 1983-02-01 Phillips Petroleum Company Controlled, elevated pressure dehydration of poly(arylene sulfide) prepolymerization mixture
US4368321A (en) * 1981-09-01 1983-01-11 Phillips Petroleum Company Elevated, declining pressure dehydration of poly(arylene sulfide) prepolymerization mixture
US4767841A (en) * 1987-02-24 1988-08-30 Phillips Petroleum Company Arylene sulfide polymer preparation from dehydrated admixture comprising sulfur source, cyclic amide solvent and water
JP2800209B2 (ja) * 1988-12-14 1998-09-21 東レ株式会社 ポリアリーレンスルフィドの製造方法
US5200499A (en) * 1990-11-29 1993-04-06 Phillips Petroleum Company Removal of water by venting during the polymerization of phenylene sulfide polymers with sulfur source/polar organic compound molar ratio being at least 0.36/1
US5840830A (en) * 1996-02-21 1998-11-24 Kureha Kagaku Kogyo K.K. Process for producing poly(arylene sulfide)
JP3779021B2 (ja) * 1996-02-21 2006-05-24 株式会社クレハ ポリアリーレンスルフィドの製造方法
DE10008161A1 (de) * 1999-02-25 2000-08-31 Idemitsu Petrochemical Co Verfahren zur Herstellung eines wasserfreien Alkalimetallsulfids und einer Alkalimetallsulfidlösung
CA2342136A1 (en) * 2000-04-05 2001-10-05 Vijay Ramanand Balse Treatment of gas streams containing hydrogen sulphide
DE60323394D1 (de) * 2002-12-27 2008-10-16 Kureha Corp Polyarylensulfid und dessen herstellungsverfahren
KR101541055B1 (ko) * 2008-11-21 2015-07-31 디아이씨 가부시끼가이샤 폴리아릴렌설피드 수지의 제조 방법
JP5898963B2 (ja) 2011-01-12 2016-04-06 興和株式会社 ロキソプロフェン又はその塩含有の医薬組成物
CN102675682B (zh) * 2011-03-18 2014-01-22 四川得阳工程塑料开发有限公司 聚苯硫醚生产中剧毒介质硫化氢废气回收及利用方法
CN102432879B (zh) * 2011-08-11 2013-07-24 深圳市宝力特科技有限公司 一种聚苯硫醚树脂合成工艺中的多水硫化钠脱水工艺
JP2016536377A (ja) * 2013-09-25 2016-11-24 ティコナ・エルエルシー ポリアリーレンスルフィドを形成するためのスクラビングプロセス
CN110799574B (zh) 2017-06-29 2022-04-12 Dic株式会社 聚芳硫醚树脂的制造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003029328A1 (fr) 2001-09-27 2003-04-10 Kureha Chemical Industry Company, Limited Procede de production d'un sulfide polyarylene
WO2004060974A1 (ja) 2002-12-27 2004-07-22 Kureha Chemical Industry Company, Limited ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP2015218214A (ja) 2014-05-15 2015-12-07 Dic株式会社 スルフィド化剤およびポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法
WO2018135372A1 (ja) 2017-01-18 2018-07-26 株式会社クレハ ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの製造装置

Also Published As

Publication number Publication date
US11453752B2 (en) 2022-09-27
CN114008111B (zh) 2022-07-26
KR20220025102A (ko) 2022-03-03
CN114008111A (zh) 2022-02-01
JPWO2021005839A1 (ja) 2021-01-14
US20220204700A1 (en) 2022-06-30
WO2021005839A1 (ja) 2021-01-14
KR102415435B1 (ko) 2022-06-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6452890B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの連続製造装置及びポリアリーレンスルフィドの連続製造方法
JP5731196B2 (ja) 末端ハロゲン基含量が低減されたポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP5713402B2 (ja) ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法
JP4777610B2 (ja) ポリアリーレンスルフィド及びその製造方法
JP6716732B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP6473277B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの連続製造装置
JP6438180B1 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの製造装置
JP6473279B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
CN109923153B (zh) 聚合物的连续制造装置以及连续制造方法
JP7108140B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法、脱水処理方法、及びポリアリーレンスルフィドの製造装置
JP6473278B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
US11155682B2 (en) Continuous dehydration method and method for producing polyarylene sulfide
JP6977173B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP2022126431A (ja) 精製されたポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP7262664B2 (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法
JP2019044016A (ja) ポリアリーレンスルフィドの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211008

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20211008

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211221

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220217

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220419

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220519

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220705

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220714

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7108140

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150