JP6473277B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの連続製造装置 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの連続製造装置 Download PDF

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Description

本発明はポリアリーレンスルフィドの製造方法及びポリアリーレンスルフィドの連続製造装置に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」とも称する)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、「PAS」とも称する)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気特性及び寸法安定性等に優れたエンジニアリングプラスチックである。PASは、押出成形、射出成形及び圧縮成形等の一般的溶融加工法により、各種成形品、フィルム、シート及び繊維等に成形可能である。そのため、PASは、電気機器、電子機器、自動車機器及び包装材料等の広範な技術分野において汎用されている。
PASの製造方法は、特許文献1に開示されている。
特許文献2〜4には、耐圧重合缶を直列につなぎ、各重合缶の間の反応液の移送を圧力差で行うPASの連続重合装置及び該装置を用いたPASの連続重合法が開示されている。
また、特許文献5には、(a)スルフィドと溶媒から成る混合物を第一の反応容器中で調製し、(b)芳香族ジハロゲン化合物と上記スルフィドとを第二の反応容器中で反応させて硫黄含有重合体を形成する工程を含む、硫黄含有重合体の製造方法が開示されている。
日本国特許公報「特公昭45−3368号公報」 米国特許第4056515号明細書 米国特許第4060520号明細書 米国特許第4066632号明細書 日本国公開特許公報「特表2002−505361号公報」
ところで、PASの重合は求核置換反応であるため、重合を短時間で行うために用いる原料の含水量は少ないことが好ましい。しかしながら、一般的に入手可能なモノマーの硫黄源は含水物であるため、重合反応の前に含水量を減量するための脱水の工程が必要となる。この工程では入熱が必須である。また、原料である硫黄源と有機ハロゲン化合物とが反応すると熱が発生し、この熱が原因で生じる熱暴走を抑えるために、除熱の必要がある。そのため、熱エネルギーの損失が大きい。また重合反応において短時間に発生する熱による熱暴走も抑制する必要がある。
特許文献5には、第一の反応容器中で硫黄源と溶媒とを反応させた混合物を第二の反応容器でp−ジクロロベンゼンと反応させ、その反応中に硫黄源の水和水の脱水を行う手法が開示されているが、特許文献5の方法で得られるPASの重量平均分子量は低い。そのため、この方法で得られるPASを製品化するためには、更なる重合を重ねる必要があり、そのためには設備が複雑化してしまう。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その課題は、発熱が生じる重合反応下における温度制御を容易にし、また重合発熱を有効に利用する高分子量のポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一実施態様に係るポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法(以下、「本製造方法」とも称する)は、気相を介して互いに連通する複数の反応槽の少なくとも1つに反応原料を供給する供給工程と、前記複数の反応槽を用いて重合反応を行う重合工程と、前記複数の反応槽に存在する水の少なくとも一部を除去する脱水工程とを含み、前記各工程は並行して行われるとともに、反応混合物は前記反応槽間を順次移動し、前記重合反応において反応系からの除熱を行うことを含み、当該除熱における除熱量は、当該重合反応の反応熱量未満である。
また、本発明は、本製造方法において好適に用いられるポリアリーレンスルフィドの連続製造装置を提供する。
上記連続製造装置は、直列に接続された複数の反応槽を収容する収容室と、前記収容室に反応原料を供給する供給部と、前記収容室に接続された除熱部とを備え、隣接する前記反応槽同士は隔壁によって隔たれているとともに、前記収容室における気相を介して互いに連通しており、前記隔壁の高さは前記収容室の底部が設置されている水平面を基準として反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、前記反応槽の最大面レベルが低い位置となるように設けられている。
本発明の一態様によれば、高分子量のPASを短時間で容易に得られる製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態1に係るPAS連続製造装置の部分断面図である。 本発明の実施形態2に係るPAS連続製造装置の部分断面図である。 本発明の実施形態3に係るPAS連続製造装置の部分断面図である。 本発明の実施形態5に係るPAS連続製造装置の構成を概略的に示す図である。
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
<ポリアリーレンスフルィド連続製造装置>
はじめに、本発明の一実施形態に係るポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法(以下、「本製造方法」とも称する)において使用可能なPAS連続製造装置の構成について、図1に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るPAS製造方法において用いることが可能なPAS連続製造装置の構成を示す部分断面図である。
図1を参照して説明すると、PAS連続製造装置100は、反応槽1a、1b、及び1cの複数の反応槽を収容する収容室2を備えている。PAS連続製造装置100において、収容室2は、図1に示す水平面Hに対し角度θをなすように、傾斜して設置されている。収容室2の形状としては、特に限定されず、例えば、反応槽1aに接する側壁3a及び反応槽1cに接する側壁3bを底面とする中空円柱形又は中空角柱形等が挙げられる。
収容室2の側壁3aには、各反応原料を供給するラインが接続されている。具体的には、収容室2に有機極性溶媒を供給する有機極性溶媒供給ライン4、収容室2にアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源を供給する硫黄源供給ライン5、及び収容室2にジハロ芳香族化合物を供給するジハロ芳香族化合物供給ライン6が、それぞれ収容室2の側壁3aに接続されている。なお、必要に応じて側壁3aには収容室2にアルカリ金属水酸化物を供給するアルカリ金属水酸化物供給ライン(図示せず)又は水を供給する水供給ライン(図示せず)を接続してもよい。
反応原料である有機極性溶媒、硫黄源、ジハロ芳香族化合物、及び任意で使用されるその他の反応原料は、それぞれが気相を介して反応槽1aの液相に供給されてもよいし、直接、反応槽1aの液相に供給されてもよい。なお、本明細書において、反応原料とは、PAS製造方法の重合反応において用いられる原料をいう。
収容室2の側壁3bには、収容室2から反応混合物を回収するための反応混合物回収ライン7が接続されている。
反応槽1aと反応槽1bとは隔壁8aによって隔てられ、反応槽1bと反応槽1cとは隔壁8bによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cは、収容室2における気相を介して、互いに連通している。その結果、収容室2における気相の圧力は均一となる。なお、このように連通していることによる効果は後述する。
本実施形態において、側壁3a、3b及び隔壁8a、8bは除熱部も兼ねている。これにより、側壁3a、3b及び隔壁8a、8bを伝熱面とすることによって、重合反応による反応熱を除去することができる。なお、側壁3a、3b、隔壁8a、8b、収容室2、特に収容室2本体の下半分(少なくとも底部)は、反応原料及び反応混合物に対する耐食性があり、熱を除去できるような材料、例えばチタン、ジルコニウム及びニッケルなどの金属材料あるいはこれらを主成分とする合金(ハステロイ(登録商標)、及びインコネル(登録商標)等)等から構成することができる。
収容室2が、図1中に示す水平面Hに対し角度θをなすように、傾斜して設置されているため、収納し得る液体の最大液面レベルは、反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cの順番で高い。反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cは、上記順番で直列に接続されている。このように接続されていることによる効果は後述する。なお、前記反応混合物の移動方向の最上流の反応槽1aを除いた各反応槽において、前記移動方向の上流側の隔壁の最小高さは、その反応槽の前記最大液面レベルよりも高い。即ち、反応槽1bにおいて、前記移動方向の上流側の隔壁8aの最小高さは、反応槽1bの最大液面レベルよりも高く、反応槽1cにおいて、前記移動方向の上流側の隔壁8bの最小高さは、反応槽1cの最大液面レベルよりも高い。これにより、反応槽1bから反応槽1aへの逆流、及び、反応槽1cから反応槽1bへの逆流が防止される。反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cは、それぞれ反応混合物9a、反応混合物9b、及び反応混合物9cを収容し得る。
反応槽1a〜1cが上記順番で直列に接続されていることによって、液面レベルの差と重力とに従って反応混合物が移動する。そのため、本実施形態によれば、反応混合物を次の反応槽へ移動させるために別途手段を設ける必要がない。
収容室2においては、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10a、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10b、及び反応槽1c中の反応混合物9cを撹拌する撹拌翼10cが、同一の撹拌軸11に設置されている。撹拌軸11は、収容室2外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。撹拌軸11の側壁3a側の末端には、撹拌軸11を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
収容室2の側壁3a近傍には、排気ライン13の一端が接続されている。排気ライン13の他端には、収容室2における気相からの脱水を行う脱水部14が接続されている。脱水部14は、排気ライン13を通じて収容室2における気相と連通している。脱水部14の一端(例えば、下部)には、有機極性溶媒回収ライン15の一端が接続されている。脱水部14の他端(例えば、上部)には、蒸気回収ライン16の一端が接続されている。蒸気回収ライン16の他端には、気液分離部17が接続されている。気液分離部17の一端(例えば、上部)から分岐した気体回収ライン18の他端には反応原料分離回収部19が接続されている。反応原料分離回収部19からは、廃ガスライン20と反応原料再供給ライン21とが分岐し、反応原料再供給ライン21には、反応原料分離回収部19において分離回収した反応原料の少なくとも一部を反応槽1a〜1cの少なくとも一部に再供給する反応原料再供給部22が接続されている。一方、気液分離部17の他端(例えば、下部)から分岐した液体回収ライン23の他端には反応原料分離回収部24が接続されている。反応原料分離回収部24からは、廃水ライン25と反応原料再供給ライン26とが分岐し、反応原料再供給ライン26には、反応原料分離回収部24において分離回収した反応原料の少なくとも一部を反応槽1a〜1cの少なくとも一部に再供給する反応原料再供給部27が接続されている。前記反応原料の少なくとも一部は、気相を介して反応槽1a〜1cの少なくとも一部の液相に供給されてもよいし、直接、反応槽1a〜1cの少なくとも一部の液相に供給されてもよい。
収容室2の側壁3bには、収容室2における気相と連通し、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1cから反応槽1aに向けて、該気相に不活性ガスを送り込む送気部28が、送気ライン29を介して接続されている。不活性ガスとしては、特に限定されず、例えば、アルゴン等の希ガス;窒素等が挙げられる。
次に、図1に基づき、本実施形態に係るPAS製造方法について、PAS連続製造装置の動作の説明と併せて説明する。
<PAS製造方法>
本製造方法は、気相を介して互いに連通する複数の反応槽の少なくとも1つに反応原料を供給する工程と、これら複数の反応槽を用いて重合反応を行う重合工程と、これら複数の反応槽に存在する水の少なくとも一部を除去する脱水工程とを含み、前記各工程は並行して行われるとともに、反応混合物はこれら反応槽間を順次移動する構成を有している。また、重合反応において反応系からの除熱を行うことを含んでおり、その除熱量は、当該重合反応の反応熱量未満である。
[供給工程]
本製造方法について具体的に説明すると、供給工程において、収容室2には、有機極性溶媒、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源、並びにジハロ芳香族化合物の各反応原料が、それぞれ有機極性溶媒供給ライン4、硫黄源供給ライン5、及びジハロ芳香族化合物供給ライン6を通じて供給される。なお、反応原料の一部又は全部を予め混合してから収容室2に供給してもよい。例えば、有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物との混合物、あるいは有機極性溶媒と硫黄源との混合物を予め調製し、この混合物を収容室2に供給してもよい。また該混合物を加温してから、又は加温して反応させてから、又は加温せずに反応させてから供給してもよい。この場合、例えば、有機極性溶媒供給ライン4及びジハロ芳香族化合物供給ライン6に代えて、混合物供給ライン(図示せず)を側壁3aに接続させ、この混合物供給ラインを通じて収容室2に上記混合物を供給することができる。
有機極性溶媒としては、例えば、有機アミド溶媒が挙げられる。有機アミド溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物;N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びN−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン化合物又はN−シクロアルキルピロリドン化合物;1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;並びにヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド化合物等が挙げられる。
硫黄源としては、例えば、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素等を挙げることができる。取扱いが容易である点および価格が安価である観点から、硫黄源としては、アルカリ金属硫化物及びアルカリ金属水硫化物が好ましい。硫黄源は、例えば、水性スラリー又は水溶液の状態で扱うことができ、計量性及び搬送性等のハンドリング性の観点から、水溶液の状態であることが好ましい。
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム及び硫化セシウム等が挙げられる。
アルカリ金属水硫化物としては、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウム及び水硫化セシウム等が挙げられる。硫黄源としてアルカリ金属水硫化物又は硫化水素を使用する場合、アルカリ金属水酸化物を併用する。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムが好ましい。また取扱い等の点から水溶液又はスラリー状のものが好ましい。
アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素のいずれかを混合して用いる場合には、当然、これらを合わせたものが硫黄源となる。
ジハロ芳香族化合物としては、例えば、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシド及びジハロジフェニルケトン等が挙げられる。ジハロ芳香族化合物におけるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の各原子を指す。ジハロ芳香族化合物における2個のハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。これらの中でも、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、及びこれら両者の混合物が好ましく、p−ジハロベンゼンがより好ましく、p−ジクロロベンゼン(pDCB)が、特に好ましく用いられる。
アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、及びジハロ芳香族化合物のそれぞれは、いずれも単独で用いてもよいし、PASの製造が可能である組み合わせであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。
本実施形態では、供給反応槽、すなわち本実施形態において反応原料が供給される反応槽1aの内部温度は好ましくは110〜230℃であり、より好ましくは140〜220℃であり、さらに好ましくは150〜210℃である。また、この供給反応槽に隣接する隣接反応槽、すなわち本実施形態における反応槽1bの内部温度は、好ましくは170〜260℃であり、より好ましくは180〜250℃であり、さらに好ましくは190〜240℃である。本実施形態では、互いに隣接する反応槽の内部温度の差が2℃以上であることが好ましく、3℃以上であることがより好ましく、5℃以上であることがさらに好ましい。
[重合工程]
供給された有機極性溶媒、硫黄源、及びジハロ芳香族化合物等は、重合工程において、まず、反応槽1aにおいて混合され、前記有機極性溶媒中で、前記硫黄源と前記ジハロ芳香族化合物との重合反応が行われることにより、反応混合物9aが形成される。
有機極性溶媒、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物及び硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源、及びジハロ芳香族化合物としては、PASの製造において通常用いられるものを用いることができる。
本製造方法においては、重合反応において反応系からの除熱を行っており、その除熱量は、この重合反応熱量未満である。PASの重合反応は発熱反応であるため、重合反応における除熱量は、一般的にはこの重合反応熱量となる。本実施形態においては、同じ収容室2中で、吸熱反応である後述する脱水工程が同時に進行する。そのため、重合反応に必要な除熱における熱量の一部が、脱水に必要な熱量の一部として相殺される。これにより、重合反応における除熱量を、この重合反応熱量未満としてPASの製造を行うことができる。脱水の熱量の一部として用いられる重合反応熱は、好ましくは重合反応熱量の80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。本実施形態における重合反応熱量は、硫黄源1モル当たり300kJである。そのため、除熱量は、硫黄源1モル当たり300kJ未満である。具体的には、この除熱量は、硫黄源1モル当たり240kJ以下であることが好ましく、210kJ以下であることがより好ましく、180kJ以下であることがさらに好ましい。なお、重合反応による反応熱量よりも脱水に必要な熱量が大きく、前記除熱量が負の値となる場合、すなわち加熱する場合も好ましい形態の一つである。除熱量が負の値となる場合、すなわち加熱となる場合には多大の熱エネルギーが必要になることから、除熱量の下限については、好ましくは硫黄源1モル当たり−800kJ以上、より好ましくは−600kJ以上、さらに好ましくは−400kJ以上である。
各反応槽の除熱量は、その側壁及び隔壁と反応槽との温度差によって調節される。側壁及び隔壁の温度は外部熱源からの熱伝導、熱伝達又は熱輻射によって調節される。
本実施形態の製造方法によれば、除熱量が少なるため、重合反応における温度制御が容易になる。また、除熱部に対する負荷を小さくすることができる。
なお、反応槽1a〜1cのうち少なくとも一つの反応槽に水を添加してもよい。その際に添加する水の量は特に限定されるものではなく、例えば硫黄源1モル当たり0.1〜10モル程度とすることができる。
前記重合反応は、170〜290℃で、ジハロ芳香族化合物の転化率が50%以上になるまで行うことにより、最終的に得られるPASとして、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が2,000以上、好ましくは5,000以上、特に好ましくは6,000以上であり、300,000以下、好ましくは100,000以下のPASを得ることができる。
また、ジハロ芳香族化合物の転化率は、好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜98%、更に好ましくは65〜97%、特に好ましくは70〜96%である。ジハロ芳香族化合物の転化率は、反応混合物中に残存するジハロ芳香族化合物の量をガスクロマトグラフィーにより求め、その残存量とジハロ芳香族化合物の仕込み量と硫黄源の仕込み量とに基づいて算出することができる。
前記重合反応においてプレポリマーを製造及び回収し、このプレポリマーの重量平均分子量をさらに増大させる工程をさらに含んでいてもよい。
プレポリマーの重量平均分子量は、2,000以上、好ましくは5,000以上、特に好ましくは6,000以上であり、10,000以下、好ましくは9,000以下である。
[脱水工程]
本製造方法では、脱水工程において、排気ライン13を通じた脱水部14の作用(詳細は後述する。)により、収容室2内の水の少なくとも一部が、収容室2における気相を介して、収容室2から除去される。これにより、反応槽1a〜1cに存在する水の少なくとも一部は除去される。収容室2内の水としては、例えば、収容室2に供給した水、及び前記重合反応で生成した水等が挙げられる。ここで、収容室2に供給した水とは、例えば、積極的に収容室2に供給した水、及び、積極的に水を収容室2に供給していない場合には、通常、反応原料に含まれた状態で反応原料とともに収容室2に供給された水を指す。水は蒸気圧が高いため、収容室2の気相に水分が多く含まれると、収容室2内が高圧となりやすい。そのため、収容室2の耐圧化が必要となり、省資源化及び設備コスト削減等を図りにくい。脱水部14により脱水を行い、収容室2内を低圧化することで、省資源化及び設備コスト削減等を効果的に実現することができる。反応系である収容室2内の圧力は、例えば、0.01MPa以上、0.8MPa以下であることが好ましく、0.02MPa以上、0.65MPa以下であることがより好ましく、0.03MPa以上、0.39MPa以下であることがさらに好ましく、0.04MPa以上、0.37MPa以下であることが特に好ましい。
反応槽1a〜1cは、上述したように、収容室2における気相を介して、互いに連通しており、収容室2における気相の圧力は均一である。このことから、脱水工程においては、脱水部14により、反応槽1a〜1cのいずれからも同等に水が除去される。そのため、反応槽1aから反応槽1cに向かうほど、即ち、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる。通常、重合工程において硫黄源は水と反応し結合した状態で存在するが、重合の進行による硫黄源の消費に伴って水が遊離し、この遊離した水が求核置換反応を阻害し重合が遅延する。本実施形態では、上述の通り、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる。その結果、水による反応阻害が抑制され、重合反応が促進される。また、反応混合物の沸点が上昇するため、高温での重合が可能となり、更に重合反応を促進できる。そして、上述の重合反応促進により、反応混合物の温度が上昇しやすくなり、更に重合反応が促進されやすくなる。
[製造方法の流れ]
以上の通り、PAS連続製造装置100では、例えば、上述の通りに各部を配置し、連続反応を行うこと全体を通じて、前記移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応槽1a〜1cの温度を上昇させることができる。言い換えれば、反応槽1a〜1cの内部温度が、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど高くなるように設けることができる。
また、上述したように、反応槽1a〜1cは、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順に接続されている。これにより、反応混合物の移動工程において、最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させることができる。より具体的には、反応混合物9a及び反応混合物9bが最大液面レベルを超えたときに、それぞれ隔壁8a及び隔壁8bを超えることができる。なお、反応槽1a、反応槽1b、及び反応槽1cが、収容室2における気相を介して互いに連通することが妨げられない限り、隔壁8a及び8bの形状は特に限定されず、任意の形状であってもよい。また、隔壁に開口部、例えば貫通口またはスリット(いずれも図示せず)を設け、この開口部により反応液が移動する構成としてもよい。
本実施形態では、送気部28により、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1cから反応槽1aに向けて、収容室2における気相に不活性ガスを送り込むことが好ましい。上述の通りに、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる状態を保つためには、反応混合物から蒸発した水分が上記下流側に流れて、反応混合物上で凝縮しないようにすることが好ましい。送気部28により上記の通り上記気相に不活性ガスを送り込むことにより、水蒸気が上記下流側に流れて反応混合物上で凝縮するのを効果的に防止することができる。
不活性ガスの流速としては、水蒸気が上記下流側に流れにくくなる範囲である限り、特に限定されない。例えば、収容室2が側壁3a及び側壁3bを底面とする内半径rの中空円柱形である場合、不活性ガスの流速をu、不活性ガスの体積流量をFとすると、u=F/(πr)と表される。ここで、水蒸気が上記下流側に流れにくくなる場合には、テーラー分散が成立している、即ち、分子拡散支配から対流拡散支配になっていると考えると、テーラー分散が成立する条件として、r・u≫D(但し、Dは水蒸気の拡散係数)が成り立つ。以上から、不活性ガスの流速としては、例えば、F≫D・πr、より具体的にはF>10D・πr、好ましくはF>25D・πr、より好ましくはF>50D・πrが成り立つような範囲の値が挙げられる。なお、収容室2が側壁3a及び側壁3bを底面とし、反応混合物の移動方向に垂直な断面が任意形状を有する中空柱形状である場合には、反応混合物の移動方向に垂直な方向における代表的な長さ、例えば、任意形状である断面の円相当半径をrとして、上記の式を適用することができる。
回転駆動装置12により撹拌軸11が回転し、それに伴い、撹拌軸11に設置された撹拌翼10a〜10cが撹拌軸11の周りを回転して、反応混合物9a〜9cが撹拌される。撹拌翼10a〜10cは同一の撹拌軸11に設置されている。そのため、回転駆動装置12により撹拌軸11を回転させるだけで、撹拌翼10a〜10cの全てを同じ条件で回転させ、均質な撹拌を高い効率で実現することができる。
上記重合反応が進むと、NaCl等のアルカリ金属ハロゲン化物が析出し、反応槽1a〜1cに蓄積する。その結果、例えば、反応槽1a〜1cにおいて十分な重合反応を進行させるのに有効な体積が減少し、生産性の低下等が生じやすい。そのため、蓄積したアルカリ金属ハロゲン化物を除去するための余計なメンテナンス作業が発生してしまう。撹拌翼10a〜10cにより反応混合物9a〜9cを撹拌することにより、アルカリ金属ハロゲン化物が反応混合物9a〜9c中に分散して、上記下流側に移動し、収容室2外に排出することが容易となる。一方で、撹拌が激しすぎると、反応混合物は、隔壁8a及び/又は隔壁8bを超えて、上流側の反応槽から下流側の反応槽へ不必要に混入しやすい。
アルカリ金属ハロゲン化物の分散を促進し、反応槽1a〜1c間での反応混合物の不必要な混入を回避できるよう、適宜、撹拌翼の形状、枚数、回転数等を調整することが好ましい。このうち、撹拌翼の回転数としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物が沈降しない条件、より具体的には、撹拌翼による撹拌速度が粒子浮遊限界撹拌速度以上となるような回転数が挙げられる。なお、撹拌翼の先端における回転速度の上限は、反応混合物が隔壁8a及び/又は隔壁8bを超えるのを防ぎやすい点で、撹拌翼の回転数が60rpm以下となるような速度が好ましく、20.5rpm以下となるような速度がより好ましい。また、撹拌が十分に行われるように、撹拌翼の回転経路等も、適宜、調整することが好ましい。例えば、撹拌翼は、少なくとも、反応槽1a〜1cの各々の平均深さよりも深い部分を通過することが好ましい。特に、反応槽1a〜1cの各々の最深部周辺で撹拌が十分に行われ、アルカリ金属ハロゲン化物が堆積しないように、撹拌翼10aと反応槽1aの底部との間隙、撹拌翼10aと隔壁8aとの間隙、撹拌翼10bと反応槽1bの底部との間隙、撹拌翼10bと隔壁8bとの間隙、撹拌翼10cと反応槽1cの底部との間隙、撹拌翼10cと側壁3bとの間隙の大きさを小さくすることが好ましい。
脱水部14には、収容室2からの排気が排気ライン13を通じて供給される。脱水部14は、例えば、蒸留塔として作用し、一端(例えば、下部)からは、有機極性溶媒を主成分とする液体が回収され、他端(例えば、上部)からは、前記硫黄源、前記ジハロ芳香族化合物、及び水を含む蒸気が回収される。
脱水部14から回収された有機極性溶媒は、適宜、精製等を経て、重合反応の反応原料として、再度、収容室2に供給してもよい。その際、回収された有機極性溶媒の収容室2への供給は、有機極性溶媒供給ライン4を通じて行ってもよいし、有機極性溶媒供給ライン4以外の有機極性溶媒供給ラインを通じて行ってもよい。回収された有機極性溶媒の供給先は、反応槽1a〜1cのいずれか1つでもよいし、これらの2以上の組み合わせでもよい。
脱水部14の上記他端から回収された蒸気は、蒸気回収ライン16を介して、気液分離部17に供給される。気液分離部17は、例えば、蒸留塔として作用し、一端(例えば、上部)からは、前記硫黄源を含む気体が回収され、他端(例えば、下部)からは、前記ジハロ芳香族化合物及び水を含む液体が回収される。
気液分離部17の上記一端から回収された気体は、気体回収ライン18を介して、反応原料分離回収部19に供給される。反応原料分離回収部19では、上記気体から前記硫黄源が分離回収され、反応原料再供給部22を介して、反応原料再供給ライン21に送られる。一方、残りの気体は、廃ガスとして廃ガスライン20を介して廃棄される。
反応原料分離回収部19により分離回収した前記硫黄源の少なくとも一部が、反応原料再供給部22により反応槽1a〜1cの少なくとも一つに再供給されることが好ましい。その際、分離回収した硫黄源の反応槽1aへの再供給は、硫黄源供給ライン5を通じて行ってもよいし、硫黄源供給ライン5以外の硫黄源供給ラインを通じて行ってもよい。前記硫黄源の少なくとも一部の再供給により、前記硫黄源が有効利用され、省資源化を図ることができる。
気液分離部17から回収された液体は、液体回収ライン23を介して、反応原料分離回収部24に供給される。反応原料分離回収部24では、上記液体から前記ジハロ芳香族化合物が分離回収され、反応原料再供給部27を介して、反応原料再供給ライン26に送られる。一方、残りの液体は、廃水として廃水ライン25を介して廃棄される。
このために、反応原料分離回収部24により分離回収した前記ジハロ芳香族化合物の少なくとも一部が、反応原料再供給部27により反応槽1a〜1cの少なくとも一つに再供給されることが好ましい。その際、分離回収したジハロ芳香族化合物の反応槽1aへの再供給は、ジハロ芳香族化合物供給ライン6を通じて行ってもよいし、ジハロ芳香族化合物供給ライン6以外のジハロ芳香族化合物供給ラインを通じて行ってもよい。前記ジハロ芳香族化合物の少なくとも一部の再供給により、前記ジハロ芳香族化合物が有効利用され、省資源化を図ることができる。
また、PAS連続製造装置100の駆動には、最大液面レベルの高低差に基づき、重力を利用して反応混合物の移動等を行っており、多大なエネルギーが不要である。よって、PAS連続製造装置100は、省資源化、省エネルギー化、設備コスト削減等を図りやすい。
このように、本製造方法によれば、気相を介して互いに連通する複数の少なくとも1つに反応原料を供給すればよいので、複雑な制御等が不要であり、PASの製造が容易となる。
本実施形態はさらに、重合反応後に得られる最終的なPASの重量平均分子量を増大させる工程を含んでいてもよい。PASの重量平均分子量の増大は、例えば重合反応において重合助剤を用いて行うことができる。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独または2種以上を同時に用いることができる。なかでも有機カルボン酸金属塩又はハロゲン化リチウムが好ましく用いられる。より具体的には、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸ナトリウム及び塩化リチウムなどが挙げられる。なかでも酢酸リチウム又は酢酸ナトリウムが好ましく用いられ、安価で入手しやすいことから酢酸ナトリウムがより好ましく用いられる。
これらの重合助剤は単独で用いてもよいし、PASの製造が可能である組合せであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。
なお、反応槽1a〜1cのうち少なくとも一つの反応槽に水を添加してもよい。その際に添加する水の量は特に限定されるものではなく、例えば硫黄源1モル当たり0.1〜10モル程度とすることができる。
本実施形態において、各反応原料に含まれる水の合計量を100質量%とすると、上述した供給反応槽、すなわち反応槽1a中に含まれる水の量は5質量%以上、99質量%以下であることが好ましく、6質量%以上、90質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上、80質量%以下であることがさらに好ましい。供給反応槽の中に含まれる水の量がこの範囲内であることは、重合工程において脱水する水の量が低減される点から好ましい。
また、供給反応槽の下流側に隣接する隣接反応槽、すなわち反応槽1b中に含まれる水の量は5質量%以上、50質量%以下であることが好ましく、6質量%以上、40質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上、30質量%以下であることがさらに好ましい。隣接反応槽中に含まれる水の量がこの範囲であることは、重合工程において脱水する水の量が低減される点から好ましい。
なお、本実施形態では特定の構成を有するPASの連続製造装置を示したが、本発明に係るPASの連続製造装置は、少なくとも、直列に接続された複数の反応槽を収容する収容室と、収容室に反応原料を供給する供給部と、収容室に接続された除熱部とを備え、隣接する前記反応槽同士は隔壁によって隔たれているとともに、前記収容室における気相を介して互いに連通しており、隔壁の高さは前記収容室の底部が設置されている水平面を基準として反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応槽の最大面レベルが低い位置となるように設けられているのであれば、他の部材等を備えていてもよい。
また、本実施形態では特定の装置を用いたPASの製造方法として説明したが、本発明に係る製造方法は、少なくとも気相を介して互いに連通する複数の反応槽を用いるものであって、上述した供給工程、重合工程及び脱水工程とを含み、これら各工程は並行して行われるとともに、反応混合物はこれら反応槽間を順次移動し、重合反応における除熱量をこの重合反応の反応熱量未満とするものであれば、本製造方法はさらに他の工程を含んでいてもよい。
また、本実施形態では特定形状の反応槽を用いているが、反応槽の形状は特に限定されるものではない。
さらに、本実施形態において除熱部は特に限定されるものではない。除熱部は、収容室の壁面(側壁も含む)の少なくとも一部をその伝熱面とすることができ、また、反応槽の隔壁の少なくとも一部を伝熱面とすることもできる。また、収容室内の液相部、あるいは、気相部に別に伝熱面を設けてもよい。ここでの除熱量とは、収納室内の質量、あるいは、成分の変化を伴わずに、純粋に熱の移動のみによって除去される熱量である。
さらに、本実施形態において反応槽の数は特に限定されるものではない。また、反応槽は必ずしも図1に示すように直列に接続されている必要はない。したがって、例えば複数の反応槽のうち一部が並列に並んでいてもよい。
さらに、本実施形態において、上述した不活性ガスを送り込む送り込み工程は、上述した各工程と並行して行うことが好ましい。さらにまた、反応原料の一部を分離して回収する分離回収工程と、反応原料の少なくとも一部を反応槽の少なくとも一つに供給する再供給工程は、上述した工程と並行して行うことが好ましい。
さらに、本実施形態では反応槽1aに反応原料を供給する構成について説明したが、反応原料が供給される反応槽は特定されるものではない。
[実施形態2]
続いて、本発明の他の一実施形態について、詳細に説明する。
図2は、本製造方法において用いられる他のPAS連続製造装置を示す部分断面図である。以下、図2に基づき、本実施形態に係るPAS連続製造装置の構成及び動作を説明する。なお、実施形態1において説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態において、本製造方法で用いられるPAS連続製造装置200は、収容室2が水平に設置されている点、隔壁8aの寸法と隔壁8bの寸法が異なる点、側壁3bにおける反応混合物回収ライン7の接続位置が異なる点を除いて、実施形態1に係るPAS連続製造装置100と同様である。
図2に示すように反応槽1a〜1cの底面積が同一である場合、反応槽1a、1b、及び1cの順に、収容し得る反応混合物の量が減る点を除き、PAS連続製造装置200は、実施形態1で示したPAS連続製造装置100(図1参照)と同様に動作する。
PAS連続製造装置200では、PAS連続製造装置100と異なり、反応槽1a〜1c各々の深さは、場所によってほぼ一定である。よって、重合反応によって生じるアルカリ金属ハロゲン化物が反応槽1a〜1cの底面全体に蓄積しやすいことから、撹拌翼10a〜10cによる撹拌が十分に行われることが特に好ましい。アルカリ金属ハロゲン化物が堆積しないように、撹拌翼10a〜10cによる撹拌が十分に行われるためには、撹拌翼10a〜10cの幅は広いことが好ましく、例えば、反応槽1a〜1cの幅の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上である。また、撹拌翼10a〜10cの全部又は一部は、撹拌に大きな偏りが生じにくい点等から、各反応槽の中央に位置することが好ましい。
本発明において、上記実施形態1及び2における撹拌軸11は単軸の場合を示しているが、2軸又は3軸以上の多軸であってもよい。
〔実施形態3〕
続いて、本発明のさらに他の一実施形態について、詳細に説明する。
図3は、本製造方法において用いられる他のPAS連続製造装置を示す部分断面図である。以下、図3に基づき、本実施形態の構成及び動作を説明する。
図3を参照して説明すると、PAS連続製造装置300は収容室2内で、反応槽を隔離する隔離手段が、隔壁ではなく、回転中心を有する仕切板である点において、上述の実施形態と異なる。
本実施形態では、反応槽1aと反応槽1bとは、仕切板30aによって隔てられ、反応槽1bと反応槽1cとは、仕切板30bによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1b及び反応槽1cは、収容室2における気相部を介して、互いに連通している。
また、仕切板30aの片面には、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10aが取り付けられている。同様に、仕切板30bの片面には、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10bが取り付けられている。なお、本実施形態における撹拌翼10a及び10bは、内側に開口が設けられている構造を有している。
撹拌翼10a及び10b並びに仕切板30a及び30bは、いずれも同一の回転軸31に設置されている。回転軸31は、収容室2外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。回転軸31の側壁3a側の末端には、回転軸31を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
なお、撹拌翼は、仕切板に対して任意の位置に設置可能である。仕切板は撹拌翼の上流側であってもよく、下流側であってもよく、またこれらが混在してもよい。仕切板は撹拌翼と離れていても良いが、図3のように密着して連結させることにより、仕切板の固定及び補強ができるので好ましい。また、撹拌翼と仕切板は必ずしも、一対である必要はなく、隣接する仕切板の間に、撹拌翼が無いところがあってもよい。少なくとも1つの撹拌翼を設けることにより、重合反応の進行を補助すると共に、反応混合物中の固体の移動をよりスムーズにすることができる。あるいは、撹拌翼は設けなくてもよく、これにより、より簡素な装置構成が可能になる。
仕切板の形状としては、特に限定されず、回転中心を有し、且つ、収容室2内の鉛直断面を部分的に塞ぐ一方で、隣り合う反応槽が連通するように、所定の幅のクリアランス又は開口部を与える任意の形状であってよい。例えば、収容室2が中空円柱形である場合、図3に示されるように、収容室の内部空間よりも一回り小さい半径を有する円盤状の仕切板であってよい。なお、仕切板の形状はこれに限定されず、中心軸を有しない、かご状回転物であってもよい。
回転軸上に設けられる仕切板の数は、収容室のサイズ及び重合反応の種類等に応じて、1以上の任意の数であってよい。
仕切板が2枚以上設けられている場合、これらは同一の形状であっても、又はそれぞれ異なっていてもよい。
また、各仕切板の位置は、特に限定されず、任意の位置に設けることができる。
一方、撹拌翼の形状としては、特に限定されず、仕切板と同軸に設けられ、反応混合物を撹拌する任意の形状であってよい。撹拌翼10a,10bは、図3に示されるように、仕切板30a,30bのいずれか一方の面に取り付けられていてもよく、又は、両面に取り付けられていてもよい。又は、仕切板とは別個に、回転軸31上に取り付けられていてもよい。
反応槽1a〜1cは、その液相部どうしが互いに連通している。その結果、反応槽1aに供給された原料及び溶媒は、反応混合物として重合反応を進行させながら、反応槽1b及び1cへと順次移動する。
また、反応槽1a〜1cは、その気相部どうしも互いに連通している。その結果、収容室2内の気相の圧力は均一となる。そして、各反応槽内で重合時に発生する蒸発成分は、装置内部の温度差等により、この気相部を介して反応槽1cから、1b及び1aの方向へと順次移動し、排気ライン13から排出される。
本実施形態におけるPAS連続製造装置300では、収容室2の内壁と、仕切板30a〜30bのそれぞれの外縁との間には、所定の幅のクリアランスが存在する。これにより、隣接する反応槽の気相部どうし、及び、液相部どうしが連通し、反応混合物、蒸発成分を含む気体等が移動する。なお、クリアランスを設ける代わりに、仕切板に開口部、例えば貫通孔又はスリットを設け、これを介して反応槽を連通させてもよい。又は、クリアランス及び開口部の両方を設けてもよい。あるいは、仕切板は、複数の細かい貫通孔を有するメッシュ状であってもよい。
クリアランスの幅又は開口部のサイズは、特に限定されず、容器の形状、仕切板の形状及び数等に応じて適宜に設定することができる。
〔実施形態4〕
続いて、本発明のさらに他の一実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態に係るPAS連続製造装置(図示せず)は、収容室内において、複数の反応槽が鉛直方向に隣接して配置されている。互いに隣接する反応槽は、隙間のなく固定されている仕切板によって隔たれているとともに、接続管を通して上側の反応槽から下側の反応槽へと反応混合物が順次移動さするように構成されている。また各反応槽は連通管により、各反応槽の気相部が互いに連通している。そのため収容室における各反応槽の気相の圧力はほぼ同一である。気相部を連通する連通管は、反応混合物が順次移動する接続管と同一であってもよいし、接続管とは別に設けた管であってもよい。ここで、鉛直方向上側から順に第1の反応槽と、第2の反応槽が設けられている場合を例にして具体的に説明する。第1の反応槽と第2の反応槽とは第1の接続管を通じて連通しており、第1の反応槽側には、第1の接続管の管壁が突出している。第1の接続管の管壁の高さは、第1の反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルと等しくなるように設けられている。第1の接続管は、第1の反応槽と第2の反応槽とを隔てる第1の仕切り板を貫通している。
このような構成のPAS連続製造装置において、反応混合物の高さが第1の反応槽の最大液面レベルを超えると、反応混合物は、第1の接続管の管壁を超えて第1の接続管に流れ込み、第1の接続管を介して第2の反応槽に流れ込む。このようなPAS連続製造装置の構成として反応混合物を順次移動させてもよい。
また第一の反応槽及び第二の反応槽は、接続管または連通管により第一の反応槽の気相部と第二の反応槽の気相部とが互いに連通している。
〔実施形態5〕
続いて、本発明のさらに他の一実施形態について、詳細に説明する。
図4は、PAS連続製造装置の構成の変形例を概略的に示す図である。
図4を参照して説明すると、PAS連続製造装置400は、第1の反応槽50、第2の反応槽51及び第3の反応槽52を備えている。第2の反応槽51は第1の反応槽50に対して、第3の反応槽52は第2の反応槽51に対して、それぞれ鉛直方向下方に配置されている。
第1の反応槽50と第2の反応槽51とは、第1の配管65によって接続されている。また、第2の反応槽51と第3の反応槽52とは、第2の配管67によって接続されている。
第1の配管65は、第1の反応槽50中の反応混合物(図示せず)が最大液面レベルを超えたときに、反応混合物が第1の配管65を通って第2の反応槽51に移動するように設けられている。また、第2の配管67は、第2の反応槽51中の反応混合物(図示せず)が最大液面レベルを超えたときに、反応混合物が第2の配管67を通って第3の反応槽52に移動するように設けられている。
さらに、第1〜第3の反応槽50〜52のそれぞれは、通気部70が接続されている。通気部70を介して、第1〜第3の反応槽50〜52は気相と介して連通している。
PAS連続製造装置400では、主に各反応槽の液部側壁で除熱を行う構成としている。また、熱媒を共有するといった手段により各反応槽間の伝熱を行うことによって、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
このようなPAS連続製造装置400の構成によって、第1の反応槽50及び第2の反応槽51のそれぞれの最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。さらにPAS連続製造装置400によれば、実施形態1及び2に示したような隔壁、及び実施形態3に示したような仕切板を設ける必要がない。
実施形態2〜5におけるPAS連続製造装置は、実施形態1におけるPAS連続製造装置と構成が異なるものの、何れにおいて各反応槽の気相部は連通している点で共通する。そのため、実施形態1におけるPAS連続製造装置と同様の機構により脱水が行われる。したがって、実施形態1におけるPAS連続製造装置を用いた場合と同様に、必要な除熱の熱量の一部を、脱水に必要な熱量の一部として相殺することができる。除熱量を効果的に脱水に利用できる点から、実施形態1〜4におけるPAS連続製造装置を用いた方法が好ましく、実施形態1〜3におけるPAS連続製造装置を用いた方法がさらに好ましい。
(まとめ)
以上の通り、本発明の一実施態様に係るポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法は、気相を介して互いに連通する複数の反応槽の少なくとも1つに反応原料を供給する供給工程と、前記複数の反応槽を用いて重合反応を行う重合工程と、前記複数の反応槽に存在する水の少なくとも一部を除去する脱水工程とを含み、前記各工程は並行して行われるとともに、反応混合物は前記反応槽間を順次移動し、前記重合反応において反応系からの除熱を行うことを含み、当該除熱における除熱量は、当該重合反応の反応熱量未満である。
本製造方法の一実施態様において、除熱量は、硫黄源1モル当たり240kJ以下であることが好ましい。
本製造方法の一実施形態において、前記重合反応による反応熱の一部を、脱水における熱量の一部として用いることが好ましい。
本製造方法の一実施態様において、複数の反応槽のうち少なくとも一部は直列に接続されていてもよい。
本製造方法の一実施態様において、前記複数の反応槽は、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順に接続されており、当該最大液面レベルの高低差を利用して前記反応混合物を順次移動させてもよい。
本製造方法の一実施態様において、前記供給工程、前記重合工程、前記反応混合物の移動工程、及び前記脱水工程を並行して行ってもよい。
本製造方法の一実施態様において、さらに、前記反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて不活性ガスを送り込む送り込み工程を前記各工程と並行して行ってもよい。
本製造方法の一実施態様において、さらに、前記反応原料の一部を分離して回収する分離回収工程と、当該反応原料の少なくとも一部を前記反応槽の少なくとも一つに供給する再供給工程とを、前記各工程と並行して行ってもよい。
本製造方法の一実施態様において、前記反応槽の内部温度は、前記反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど高くなるように設けてもよい。
本製造方法の一実施態様において、反応系における圧力は、0.01MPa以上、0.8MPa以下であることが好ましい。
本製造方法の一実施態様において、前記重合工程によって得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量を増大させる工程をさらに含んでいてもよい。
また、本発明は、本製造方法において好適に用いられるポリアリーレンスルフィドの連続製造装置を提供する。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
〔実施例1〕
収容室2が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する以外は、図1に示すのと同様のPAS連続製造装置を用いた。このPAS連続製造装置は、隔壁が半円形であり、直径100mm×長さ300mmの寸法を有するTi製反応装置であった。上記PAS連続製造装置に、NMP950gを仕込んだ後、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁とで区切られた部分の温度1を230℃、3番目の隔壁と4番目の隔壁とで区切られた部分の温度2を260℃に保持し、各供給ラインより定量ポンプを用いてNMPとp−ジクロロベンゼン(pDCB)との混合液3.53g/min(NMP:pDCB(重量比)=988:268)、36.00重量%NaSH0.84g/minの流量にて連続的に5時間原料を供給した。反応装置に供給された硫黄源のモル数は1.62molであり、この反応熱量は約475kJであった。
同時にPAS連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.32MPaに制御しながら、PAS連続製造装置より連続的に水を除去し、更に、除去した水中のpDCBについては静置槽で分離してPAS連続製造装置に戻した。
また、蒸留装置からのガスは、ガス吸収塔に供給された15.84重量%NaOH1.37g/min及び、NMP0.50g/minにて洗浄し、放出した。その際、ガス吸収したNaOH水溶液、及びNMPはその全量を上流側から1番目の隔壁の上流側の反応槽に供給した。これにより、上流側から1番目の隔壁の上流側の反応槽に供給に供給された水は硫黄源1モルあたり17.4モルとなった。反応装置から除去された水の総量は534gであり、この除去に要する熱量は約967kJであった。
この結果、反応装置での反応熱量と反応装置からの水の除去に要する熱量の差は−492kJであった。反応装置の温度は、この熱量の差を前記の外部ヒーターによって入熱することにより保持した。重合反応物は反応装置から連続的に溢流させて抜出し、冷却した。この際、反応装置内における重合反応物の平均滞留時間は約3時間であった。
得られた反応物を採取して分析した。原料pDCBの転化率は97.0%であった。当該反応混合物を同重量のアセトンで3回、水で3回洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、80℃で8時間乾燥しPPS紛体を得た。このPPS紛体のGPCによる重量平均分子量Mwは27,300であった。
〔実施例2〕
収容室本体が、10枚の円盤型仕切板により仕切られて形成された11個の反応槽を有する以外は、図3に示すのと同様の連続製造装置を用いた。この連続製造装置において、収容室本体は、内径108mm×長さ300mmの寸法を有していた。10枚の仕切板はいずれも同一形状であり、径5mmの回転軸上に設けられた。それぞれの仕切板について、反応混合物の移動方向の上流側の面に、下流側仕切り板と同一材質の2枚のアンカー型撹拌翼を十字に設けた。仕切板の直径は100mmであり、アンカー型撹拌翼の長手軸方向の長さは90mmであり、短手軸方向の長さは40mmであった。仕切板を設けた位置において、収容室の内部空間の鉛直断面に対し、クリアランスの断面積が占める割合は、約14%であった。
上記連続製造装置に、有機アミド溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1700gを仕込んだ後、反応混合物の移動方向の上流側から数えて第11番目の反応槽の下流側から窒素ガスを流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより、上流側から数えて第2番目の反応槽の温度1を230℃、第5番目の反応槽の温度2を260℃、第11番目の反応槽の温度3を260℃に保持した。ここで、窒素ガスの流量は0.1NL/minであり、標準状態において、仕切板のクリアランスを通過する窒素ガス線速度は0.8cm/sであった。
各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP−pDCB混合液3.76g/min(NMP:pDCB(重量比)=1852:1382)、36.5重量%NaSH1.63g/minの流量にて連続的に8時間原料を供給した。反応装置に供給された硫黄源のモル数は5.09molであり、この反応熱量は約1492kJであった。
同時に連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.32MPaに制御しながら、連続製造装置より連続的に水を除去し、更に、除去した水中のpDCBについては静置槽で分離して連続製造装置に戻した。また、蒸留装置からのガスは、ガス吸収塔に供給された16.32重量%NaOH2.68g/min及びNMP0.50g/minにて洗浄し、放出した。その際、ガス吸収したNaOH水溶液及びNMPはその全量を上流側から1番目の反応槽に供給した。
反応装置から除去された水の総量は1664gであり、この除去に要する熱量は約3013kJであった。
この結果、反応装置での反応熱量と反応装置からの水の除去に要する熱量の差は−1521kJであった。反応装置の温度は、この熱量の差を前記の外部ヒーターによって入熱することにより保持した。重合反応物は反応装置から連続的に溢流させて抜出し、冷却した。
以上の操作を8時間継続した後、上流側から1番目の仕切板と2番目の仕切板とで区切られた反応槽内の反応混合物の水分量を測定したところ、原料硫黄源1モルあたり1.0モルであった。また、その際に反応装置から溢流した反応混合物を分析したところ原料pDCBの転化率は94.7%であった。当該反応混合物を同重量のアセトンで3回、水で3回洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、80℃で8時間乾燥しPPS紛体を得た。このPPS紛体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは11,000であった。
〔実施例3〕
各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP−pDCB混合液3.76g/min(NMP:pDCB(重量比)=1852:1382)、45重量%NaSH1.58g/minの流量にて連続的に原料を8時間供給した以外は実施例2と同様におこなったところ、反応装置に供給された硫黄源のモル数は6.11molであり、この反応熱量は約1789kJであった 。
同時に連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.32MPaに制御しながら、連続製造装置より連続的に水を除去し、更に、除去した水中のpDCBについては静置槽で分離して連続製造装置に戻した。また、蒸留装置からのガスは、ガス吸収塔に供給された48重量%NaOH1.09g/min及びNMP0.50g/minにて洗浄し、放出した。その際、ガス吸収したNaOH水溶液及びNMPはその全量を上流側から1番目の反応槽に供給した。
反応装置から除去された水の総量は801gであり、この除去に要する熱量は約1450kJであった。
この結果、反応装置での反応熱量と反応装置からの水の除去に要する熱量の差は339kJであった。反応装置の温度は、この熱量の差を前記の外部ヒーターによって側壁温度を調整することによって除熱して保持した。重合反応物は反応装置から連続的に溢流させて抜出し、冷却した。
以上の操作を8時間継続した後に得られた反応物を採取して分析した。ガスクロマトグラフィー分析による原料pDCBの転化率は95%であった。当該反応混合物を同重量のアセトンで3回、水で3回洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、80℃で8時間乾燥しPPS紛体を得た。このPPS紛体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは11,000であった。
上記各実施例から以下のことが明らかである。本発明の構成により、重合反応の発熱量を含水原料の脱水のための熱量に利用することができるため、重合発熱の制御を容易に行うことができるとともに重合発熱を有効に利用する省エネルギー化を図れる。また重合装置の簡素化が図れ、設備コストの削減も図ることができる。また反応原料を回収・再利用することができるため、省資源化を図れる。また簡便に高分子量のポリアリーレンスルフィド(PAS)の製造方法を提供することができる。
1a、1b、1c 反応槽
2 収容室
3a、3b 側壁
4 有機極性溶媒供給ライン
5 硫黄源供給ライン
6 ジハロ芳香族化合物供給ライン
7 反応混合物回収ライン
8a、8b 隔壁
9a、9b、9c 反応混合物
10a、10b、10c 撹拌翼
11 撹拌軸
12 回転駆動装置
13 排気ライン
14 脱水部
15 有機極性溶媒回収ライン
16 蒸気回収ライン
17 気液分離部
18 気体回収ライン
19、24 反応原料分離回収部
20 廃ガスライン
21、26 反応原料再供給ライン
22、27 反応原料再供給部
23 液体回収ライン
25 廃水ライン
28 送気部
29 送気ライン
30a、30b 仕切板
31 回転軸
100、200、300、400 PAS連続製造装置
H 水平面

Claims (11)

  1. 直列に接続された複数の反応槽を収容する収容室を備えるポリアリーレンスルフィドの連続製造装置内の前記反応槽の少なくとも1つに反応原料を供給する供給工程と、
    前記複数の反応槽を用いて重合反応を行う重合工程と、
    前記複数の反応槽に存在する水の少なくとも一部を除去する脱水工程とを含み、
    前記各工程は並行して行われるとともに、反応混合物は前記反応槽間を順次移動し、
    前記重合反応において反応系からの除熱を行うことを含み、当該除熱における除熱量は、当該重合反応の反応熱量未満であり、
    隣接する前記反応槽同士は隔壁または仕切板によって隔たれているとともに、前記収容室における気相を介して互いに連通している、ことを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  2. 前記除熱量は、硫黄源1モル当たり240kJ以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記重合反応による反応熱の一部を、脱水における熱量の一部として用いることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記複数の反応槽は、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順に接続されており、当該最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記供給工程、前記重合工程、前記反応混合物の移動工程、及び前記脱水工程を並行して行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. さらに、前記反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて不活性ガスを送り込む送り込み工程を前記各工程と並行して行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. さらに、前記反応原料の一部を分離して回収する分離回収工程と、当該反応原料の少なくとも一部を前記反応槽の少なくとも一つに供給する再供給工程とを、前記各工程と並行して行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  8. 前記反応槽の内部温度は、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど高くなるように設けることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  9. 反応系における圧力は、0.01MPa以上、0.8MPa以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  10. 前記重合工程によって得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量を増大させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  11. 直列に接続された複数の反応槽を収容する収容室と、
    前記収容室に反応原料を供給する供給部と、
    前記収容室に接続された除熱部とを備え、
    隣接する前記反応槽同士は隔壁によって隔たれているとともに、前記収容室における気相を介して互いに連通しており、
    前記隔壁の高さは前記収容室の底部が設置されている水平面を基準として反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、前記反応槽の最大液面レベルが低い位置となるように設けられていることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの連続製造装置。
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