JP7107196B2 - 二次電池 - Google Patents
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Description
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、電池特性に優れる新たな二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、まず、負極と電解液との関係について検討を行った。
一般に、エーテルはHOMOのエネルギー準位が高いため、高電位での充電条件下において、正極と接触することで、酸化分解することが懸念される。
実際に、本発明者が、電解液の非水溶媒として6員環の環状エーテルである4-メチルテトラヒドロピランを採用したリチウムイオン二次電池を製造し、高電位条件下での充放電試験を行ったところ、容量が急激に低下することを確認した。
これらの知見に基づき、本発明は完成された。
電解質及びアルキル基で置換されていてもよい6員環の環状エーテルを含有する電解液と、
ホウ素含有部で被覆された正極活物質を具備する正極と、
を備えることを特徴とする。
一般式(1) LiBF4-mRm
一般式(1)において、mは0、1、2、3、4のいずれかである。RはCnHaFbである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。
一般式(2) (RSO2)2NLi
一般式(2)において、Rは、それぞれ独立に、CnHaFbである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。また、2つのRは、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+bを満たす。
一般式(3) RSO3Li
一般式(3)において、RはCnHaFbである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。
しかし、ラジカルが生じた炭素は、それまでのsp3混成軌道から、sp2混成軌道へと変換する。sp2混成軌道における3つの結合は、同一の平面上に存在するのが理想的である。
かかる熱エネルギー的に不安定な立体構造が、6員環の環状エーテルをラジカル化するためのエネルギー障壁となっていると考えられる。
6員環の炭素に結合し得るアルキル基としては、炭素数1~6のものが好ましく、炭素数1~4のものがより好ましく、炭素数1~2のものがさらに好ましい。
エーテルの酸素に隣接する炭素にアルキル基が結合した場合には、当該炭素はO-CH(アルキル基)-CH2との構造になる。ここで、酸素とアルキル鎖で挟まれたCH基においては、隣接する酸素と隣接するアルキル鎖が及ぼす隣接基相互作用に因り、ラジカルが安定化されるため、ラジカルが生じ易いと考えられている。よって、エーテルの酸素に隣接する炭素にアルキル基が結合した6員環の環状エーテルは、比較的ラジカルが発生しやすいと推定される。
ホウ素化合物としては、無機ホウ素化合物及び有機ホウ素化合物がある。
2)正極活物質に対してホウ素化合物溶液を噴霧し、乾燥する方法
3)正極活物質とホウ素化合物溶液を混合した混合液を噴霧乾燥する方法
4)正極活物質とホウ素化合物溶液を混合した混合液を加熱して、溶媒を留去する方法
正極活物質の使用量に対するホウ素化合物の使用量が、概ね、ホウ素含有部で被覆された正極活物質における正極活物質に対するホウ素含有部の質量比に反映される。
加熱処理における加熱温度としては、150~400℃、200~370℃、250~350℃の範囲内を例示できる。加熱温度が高すぎると、ホウ素が正極活物質の内部に拡散する場合がある。
集電体としては、正極で説明したものを適宜適切に採用すればよい。
3CaSi2+6HCl → Si6H6+3CaCl2
Si6H6 → 6Si+3H2↑
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に本発明の電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
4-メチルテトラヒドロピランにLiBF4を溶解して、LiBF4の濃度が1.5mol/Lである参考例1の電解液を製造した。
4-メチルテトラヒドロピランに(FSO2)2NLiを溶解して、(FSO2)2NLiの濃度が1.5mol/Lである参考例2の電解液を製造した。
参考例2の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
4-メチルテトラヒドロピランに(CF3SO2)2NLiを溶解して、(CF3SO2)2NLiの濃度が1.5mol/Lである参考例3の電解液を製造した。
参考例3の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
4-メチルテトラヒドロピランに(C2F5SO2)2NLiを溶解して、(C2F5SO2)2NLiの濃度が1.5mol/Lである参考例4の電解液を製造した。
参考例4の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
4-メチルテトラヒドロピランにCF3SO3Liを溶解して、CF3SO3Liの濃度が1.5mol/Lである参考例5の電解液を製造した。
参考例5の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
4-メチルテトラヒドロピランにC4F9SO3Liを溶解して、C4F9SO3Liの濃度が1.5mol/Lである参考例6の電解液を製造した。
参考例6の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例6のリチウムイオン二次電池を製造した。
LiBF4を含有する参考例1の電解液に対して、LiBF4と等モルの(ジフルオロメチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で12時間撹拌した後に、50℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF3(CHF2)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例7の電解液とした。
参考例7の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例7のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMe3は低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF4+(CHF2)SiMe3 → LiBF3(CHF2)+FSiMe3↑
LiBF4を含有する参考例1の電解液に対して、LiBF4と等モルの(トリフルオロメチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で12時間撹拌した後に、50℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF3(CF3)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例8の電解液とした。
参考例8の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例8のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMe3は低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF4+(CF3)SiMe3 → LiBF3(CF3)+FSiMe3↑
LiBF4を含有する参考例1の電解液に対して、LiBF4と等モルの(ペンタフルオロエチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で6時間撹拌した後に、60℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF3(C2F5)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例9の電解液とした。
参考例9の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例9のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMe3は低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF4+(C2F5)SiMe3 → LiBF3(C2F5)+FSiMe3↑
LiBF4を含有する参考例1の電解液に対して、LiBF4と等モルの(ヘプタフルオロプロピル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で6時間撹拌した後に、60℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF3(C3F7)を濃度1.5mol/Lで含有する参考例10の電解液とした。
参考例10の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例10のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMe3は低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF4+(C3F7)SiMe3 → LiBF3(C3F7)+FSiMe3↑
LiBF4を含有する参考例1の電解液に対して、LiBF4の2倍モルに相当する(トリフルオロメチル)トリメチルシランを加えて反応液とし、これを室温で12時間撹拌した後に、50℃で8時間撹拌した。反応液を冷却して、LiBF2(CF3)2を濃度1.5mol/Lで含有する参考例11の電解液とした。
参考例11の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考例11のリチウムイオン二次電池を製造した。
なお、上記の反応における反応式は以下のとおりである。副生するFSiMe3は低沸点なので反応系外に移動する。
LiBF4+2(CF3)SiMe3 → LiBF2(CF3)2+2FSiMe3↑
フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:9で混合して混合溶媒とした。混合溶媒にLiPF6を混合して、LiPF6の濃度が2mol/Lである参考比較例1の電解液を製造した。
参考比較例1の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
テトラヒドロフランにLiBF4を溶解して、LiBF4の濃度が1.5mol/Lである参考比較例2の電解液を製造した。
参考比較例2の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
シクロペンチルメチルエーテルにLiBF4を溶解して、LiBF4の濃度が2mol/Lである参考比較例3の電解液を製造した。
参考比較例3の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
テトラヒドロフランに(FSO2)2NLiを溶解して、(FSO2)2NLiの濃度が2mol/Lである参考比較例4の電解液を製造した。
参考比較例4の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
1,2-ジメトキシエタンに(FSO2)2NLiを溶解して、(FSO2)2NLiの濃度が2mol/Lである参考比較例5の電解液を製造した。
参考比較例5の電解液を用いた以外は、参考例1と同様の方法で、参考比較例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
各リチウムイオン二次電池に対して、0.2mAで0.01Vまで充電し、0.2mAで1.0Vまで放電を行うとの初回充放電を行った。さらに、各リチウムイオン二次電池に対して、0.5mAで0.01Vまで充電し、0.5mAで1.0Vまで放電を行うとの充放電サイクルを20回繰り返した。
なお、本評価例では、Si含有負極活物質がリチウムを吸蔵する印加を充電といい、Si含有負極活物質がリチウムを放出する印加を放電という。
初期効率(%)=100×(初回放電容量)/(初回充電容量)
容量維持率(%)=100×(20サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
なお、以下の表において、MTHPとは4-メチルテトラヒドロピランの略称であり、FECとはフルオロエチレンカーボネートの略称であり、DECとはジエチルカーボネートの略称であり、THFとはテトラヒドロフランの略称であり、CPMEとはシクロペンチルメチルエーテルの略称であり、DMEとは1,2-ジメトキシエタンの略称である。
しかしながら、参考例のリチウムイオン二次電池の方が参考比較例1のリチウムイオン二次電池よりも優れた容量維持率を示したことから、参考比較例1のリチウムイオン二次電池においては、SEI被膜がSi含有負極活物質と電解液との直接接触を防止したものの、SEI被膜に含まれるCO3基などの酸化性の成分に因り、Si含有負極活物質が酸化して、劣化したと推定される。
4-メチルテトラヒドロピランに(FSO2)2NLiを溶解して、電解質である(FSO2)2NLiの濃度が1.8mol/Lである実施例1の電解液を製造した。
100質量部の正極活物質と100質量部のホウ酸水溶液を、室温で2時間混合して混合物とした。混合物を80℃で加熱乾燥することで、水を除去して、粉末を得た。得られた粉末を、大気条件下、300℃で6時間加熱して、LiNi0.8Co0.1Al0.1O2の表面がホウ素含有部で被覆された実施例1の正極活物質を製造した。
実施例1の正極活物質、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン及び導電助剤としてのアセチレンブラックを、実施例1の正極活物質とポリフッ化ビニリデンとアセチレンブラックとの質量比が94:3:3となるように混合し、溶剤としてのN-メチル-2-ピロリドンを添加してスラリーとした。このスラリーを、集電体としてのアルミニウム箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で20分間乾燥することで、溶剤を揮発により除去して、正極活物質層を形成した。表面に正極活物質層を形成したアルミニウム箔を、ロ-ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを密着させた接合物を得た。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱して、正極を製造した。
セパレータとしてポリプロピレン製多孔質膜を準備した。
上記正極、セパレータ、参考例1と同様の方法で製造した負極の順に積層して、積層体とした。この積層体及び実施例1の電解液をラミネートフィルム製の袋に収容して、袋を密閉し、実施例1-2のリチウムイオン二次電池を製造した。
ホウ酸水溶液として、ホウ酸を1.0質量%で含有するホウ酸水溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の正極活物質を製造した。
実施例2の正極活物質を用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、実施例2-1のリチウムイオン二次電池を製造した。
正極の製造において実施例1の正極活物質に替えてLiNi0.8Co0.1Al0.1O2をそのまま用いたこと以外は、実施例1-1及び実施例1-2と同様の方法で、比較例1-1及び比較例1-2のリチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1-1、実施例2-1、比較例1-1のリチウムイオン二次電池に対して、0.5mAの電流で4.2Vまで充電し、10分間の休止後に0.5mAの電流で3.0Vまで放電を行うとの充放電サイクルを20回繰り返した。
以下の式で容量維持率を算出した。結果を表2に示す。
容量維持率(%)=100×(20サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
実施例1-2及び比較例1-2のリチウムイオン二次電池に対して、3.9Vまで0.3Cの電流で充電し、60℃で20時間保存するというコンディショニングを行った後、1Cの電流で4.07Vまで充電し、1Cの電流で3Vまで放電するとの充放電サイクルを100回繰り返した。
以下の式で容量維持率を算出した。結果を表3に示す。
容量維持率(%)=100×(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
飛行時間型二次イオン質量分析(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)測定装置にて、一次イオン源としてBi、スパッタイオン源としてCsを用い、実施例1の正極活物質の深さ方向の分析を行った。
結果を図1に示す。なお、図1の横軸のサイクル数は、実施例1の正極活物質表面から内部へのエッチングの深さを示す値である。サイクル数が増加するほどエッチング深さが深いことを意味する。
図1に示すように、実施例1の正極活物質においては、表面近傍にBO2及びLiB2O4が多く存在すること、及び、正極活物質表面から正極活物質内部に向かうにつれ、BO2及びLiB2O4のイオン強度が低下することがわかる。以上の結果から、ホウ素含有部が正極活物質の表面を被覆していることが裏付けられたといえる。そして、ホウ素含有部が正極活物質と電解液との直接接触を防ぐ保護層としての役割を果たしており、当該保護層に因り、電解液の分解が抑制されたと考えられる。
Claims (4)
- 電解質及びアルキル基で置換されていてもよい6員環の環状エーテルを含有する電解液と、
ホウ素含有部で被覆された正極活物質を具備する正極と、
Si含有負極活物質を具備する負極と、
を備えることを特徴とする二次電池。 - 電解質及びアルキル基で置換されていてもよい6員環の環状エーテルを含有する電解液と、
ホウ素含有部で被覆された正極活物質を具備する正極と、
を備え、
前記6員環の環状エーテルは4-メチルテトラヒドロピランであることを特徴とする二次電池。 - 前記電解液に含有される非水溶媒全体に対する前記6員環の環状エーテルの割合が50体積%以上である請求項1又は2に記載の二次電池。
- 前記正極活物質がリチウム基準で4V以上の電位にて充放電を行うものである請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
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