JP2020042987A - 電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】電池特性に優れる新たなリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】 Si含有負極活物質を具備する負極と、スルホンイミドリチウム塩及びスルホン酸リチウム塩から選択される電解質、並びに、下記一般式(1)のエーテルを含有する電解液と、を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。一般式(1) R1OR2R1は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。R2は、メチル基であるか、又は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。【選択図】なし

Description

本発明は、蓄電装置に用いられる電解液、及び、当該電解液を備えるリチウムイオン二次電池に関するものである。
一般に、二次電池等の蓄電装置は、主な構成要素として、正極、負極及び電解液を備える。そして、負極には、充放電に関与する負極活物質が具備されている。産業界からは蓄電装置の高容量化が求められており、その対応として、各種の技術が検討されている。具体的な高容量化技術の一つに、蓄電装置の負極活物質として、リチウムなどの電荷担体の吸蔵能力に優れるSiを含有するSi含有負極活物質を採用することが知られている。
例えば、特許文献1及び特許文献2には、負極活物質がSiOであるリチウムイオン二次電池が記載されている。
特許文献3には、CaSiを酸と反応させてCaを除去した層状ポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成し、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させたシリコン材料を製造したこと、及び、当該シリコン材料を負極活物質として具備するリチウムイオン二次電池が記載されている。
蓄電装置に用いられる一般的な電解液は電解質及び非水溶媒を含有する。ここで、電解質としてはLiPFを採用するのが一般的であり、非水溶媒としてはエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状カーボネートを併用するのが一般的である。実際に、特許文献1〜特許文献3には、電解質としてLiPFを採用し、非水溶媒としてエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート及び環状カーボネートであるエチレンカーボネートを併用した電解液を備えるリチウムイオン二次電池が具体的に記載されている。
また、非水溶媒の一部として、フルオロエチレンカーボネートやジフルオロエチレンカーボネートなどのフッ素含有環状カーボネートを採用することも知られている。実際に特許文献4には、Si含有負極活物質を備える二次電池における電解液の非水溶媒として、フルオロエチレンカーボネートやジフルオロエチレンカーボネートなどのフッ素含有環状カーボネートを用いることで、二次電池の容量維持率が好適化したことが記載されている(表17を参照。)。
特開2015−185509号公報 特開2015−179625号公報 国際公開第2014/080608号 特開2009−32492号公報
産業界からは、電池特性に優れるリチウムイオン二次電池が求められている。
本発明はかかる事情に鑑みて為されたものであり、電池特性に優れる新たなリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
本発明者は、Si含有負極活物質を備えるリチウムイオン二次電池の電池特性、特に容量維持率をさらに向上させるための技術について検討した。
本発明者は、Si含有負極活物質を備えるリチウムイオン二次電池の容量維持率を向上させるためには、Si含有負極活物質の劣化を防止することが必要であると考えた。そして、従来、一般的に使用されていたカーボネート系の溶媒が、Si含有負極活物質の劣化の原因の一つではないかと考えた。その理由は以下のとおりである。
カーボネート系の溶媒は、負極表面での還元分解にて、負極の表面にSEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜を形成することが知られている。SEI被膜は、負極活物質と電解液との直接接触を防止できるが、カーボネート系の溶媒を原料として生成されたSEI被膜には、CO基が存在すると考えられる。そして、当該CO基の酸素がSi含有負極活物質を酸化すると推定される。また、Si含有負極活物質は、充放電時の膨張及び収縮の程度が大きいため、SEI被膜が破壊されて、SEI被膜で被覆されていない新たな箇所(以下、かかる箇所を「新生面」という。)が生じ得る。ここで、新生面におけるSi含有負極活物質がカーボネート系の溶媒と接触することで、Si含有負極活物質が酸化することが懸念される。
そこで、本発明者は、電解液の非水溶媒として、負極表面での還元分解が生じ難く、酸化能力も低いと考えられるエーテルを採用することを指向した。しかし、具体的なエーテルとしてテトラヒドロフランを採用したところ、リチウムイオン二次電池の容量維持率は悪化した。
本発明者は、テトラヒドロフランによる不具合は、テトラヒドロフランにおけるラジカル発生に関連があるのではないかと考えた。一般に、酸素とアルキル鎖で挟まれたCH基においては、隣接する酸素と隣接するアルキル鎖が及ぼす隣接基相互作用に因り、ラジカルが安定化されるため、ラジカルが生じ易いと考えられている。テトラヒドロフランにおいては、2位のCH基が最もラジカルが生じ易い箇所である。
そこで、本発明者は、テトラヒドロフランよりもラジカルを発生し難いエーテルを採用することを指向した。ここで、ラジカルの生じ易さの点では、O−CHR>O−CHR>O−CHの順であるといえる(Rはアルキル鎖である。)。そうすると、エーテルとしてはCH−O−CHが好ましいといえるが、ジメチルエーテルは常温で気体であり、取り扱いに困難が生じる。
本発明者がO−CHと同等程度にラジカルを発生し難いエーテルを探索したところ、シクロペンチルメチルエーテルにたどり着いた。そして、電解液の非水溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルを採用したリチウムイオン二次電池を製造し、試験したところ、好適な電池特性を示すことが確認された。ただし、電解質として、LiPF又はLiBFを採用した場合は、不具合が生じることも知見した。
これらの知見に基づき、本発明は完成された。
本発明のリチウムイオン二次電池は、
Si含有負極活物質を具備する負極と、
スルホンイミドリチウム塩及びスルホン酸リチウム塩から選択される電解質、並びに、下記一般式(1)のエーテルを含有する電解液と、
を備えることを特徴とする。
一般式(1) ROR
は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。Rは、メチル基であるか、又は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。
本発明のリチウムイオン二次電池は電池特性、特に容量維持率に優れる。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、
Si含有負極活物質を具備する負極と、
スルホンイミドリチウム塩及びスルホン酸リチウム塩から選択される電解質、並びに、下記一般式(1)のエーテルを含有する電解液(以下、本発明の電解液という。)と、
を備えることを特徴とする。
一般式(1) ROR
は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。Rは、メチル基であるか、又は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。
まず、本発明の電解液について説明する。
スルホンイミドリチウム塩及びスルホン酸リチウム塩としては、分子内にフッ素を含有するものが好ましい。
スルホンイミドリチウム塩として一般式(2)のスルホンイミドリチウム塩を例示できる。
一般式(2) (RSONLi
一般式(2)において、Rは、それぞれ独立に、Cである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。また、2つのRは、互いに結合して環を形成しても良く、その場合は、2n=a+bを満たす。
スルホン酸リチウム塩として一般式(3)のスルホン酸リチウム塩を例示できる。
一般式(3) RSOLi
一般式(3)において、RはCである。n、a、bはそれぞれ独立に0以上の整数であり、2n+1=a+bを満たす。
一般式(2)及び一般式(3)において、nは0、1、2、3、4、5、6のいずれかが好ましい。また、a=0、1、2のいずれかが好ましい。
スルホンイミドリチウム塩としては、具体的に、(FSONLi、(CFSONLi、(CSONLi、FSO(CFSO)NLi、FSO(CSO)NLi、(SOCFCFSO)NLi、(SOCFCFCFSO)NLi、FSO(CHSO)NLi、FSO(CSO)NLiを例示できる。
スルホン酸リチウム塩としては、具体的に、FSOLi、CFSOLi、CSOLi、CSOLi、CSOLi、C11SOLi、C13SOLi、CHSOLi、CSOLi、CSOLi、CFCHSOLi、CFSOLiを例示できる。
本発明の電解液におけるスルホンイミドリチウム塩及び/又はスルホン酸リチウム塩の濃度としては、0.3〜4mol/L、0.5〜3.5mol/L、1〜3mol/L、1.5〜2.5mol/L、1.8〜2.2mol/Lを例示できる。
本発明の電解液に含有される一般式(1)のエーテルは、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基を有する。環状アルキル基に結合し得るアルキル基の炭素数としては、1〜6、1〜4、1〜2を例示できる。
一般式(1)のエーテルは、4〜6員環の環状アルキル基であるRを含有するので、ラジカルを発生し難いと考えられる。その理由は以下のとおりである。
まず、一般式(1)のエーテルにおいて最もラジカルを発生しやすい箇所、換言すれば、最も水素ラジカルが離脱しやすい炭素は、環状アルキル基のうち、エーテルの酸素に隣接する炭素であるといえる。なお、エーテルの酸素に隣接するメチル基がラジカル化し難いことは、既述したとおりであるから、Rがメチル基の場合でも、一般式(1)のエーテルにおいて最もラジカルを発生しやすい箇所は、環状アルキル基のうち、エーテルの酸素に隣接する炭素である。
酸素に隣接する炭素において水素ラジカルが離脱して生じたラジカルは、隣接する酸素の非共有電子対の電子と相互作用することで、安定化される。また、ラジカルが生じた炭素は、それまでのsp混成軌道から、sp混成軌道へと変換する。sp混成軌道における3つの結合は、同一の平面上に存在し、互いの結合角が120°であるのが理想的である。
ここで、Rは環を構成する元素すべてが炭素である4〜6員環構造のものである。例えば、シクロヘキサン環の結合角は約109.5°であって、すべての炭素元素が理想的なsp混成軌道を形成できる環構造となっている。
しかしながら、環構造の炭素の1つがsp混成軌道を形成すれば、環自体にひずみエネルギーが生じることになる。当該ひずみエネルギーの存在が、Rをラジカル化するためのエネルギー障壁となっていると考えられる。この点から、一般式(1)のエーテルは、ラジカルを発生し難いといえる。
7員環以上の環状アルキル基においては、ひずみエネルギーが比較的小さいため、ラジカル化しやすいといえる。また、3員環の環状アルキル基においては、環構造を保ったままラジカル化するのではなく、開環することが懸念される。
以上の事項から、一般式(1)のエーテルが有する4〜6員環の環状アルキル基としては、6員環の環状アルキル基よりも環のひずみエネルギーが大きいと推定され、かつ、4員環の環状アルキル基よりも開環の懸念が低いと推定される、5員環の環状アルキル基が好ましいと考えられる。
なお、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルを、ラジカル化させた場合に生じるsp混成軌道におけるひずみエネルギーを計算すると、シクロペンチルメチルエーテル>t−ブチルメチルエーテル>ジメチルエーテル>ジイソプロピルエーテルの順になる。
また、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルを、ラジカル化させた場合の生成熱を計算すると、ジメチルエーテル>シクロペンチルメチルエーテル>t−ブチルメチルエーテル>ジイソプロピルエーテルの順になる。
すなわち、シクロペンチルメチルエーテルをラジカル化させるためは、ジメチルエーテルやt−ブチルメチルエーテルのメチル基をラジカル化させるためのエネルギーと同程度のエネルギーが必要であるといえる。
この点からも、一般式(1)のエーテルは、ラジカルを発生し難いといえるし、5員環の環状アルキル基を有するのが好ましいといえる。
本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、一般式(1)のエーテル以外の公知の非水溶媒を併用してもよい。本発明の電解液に含まれる非水溶媒全体に対する一般式(1)のエーテルの割合として、50〜100体積%、70〜100体積%、90〜100体積%、50〜100質量%、70〜100質量%、90〜100質量%、50〜100モル%、70〜100モル%、90〜100モル%を例示できる。
本発明の電解液には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の添加剤を配合してもよい。
次に、本発明のリチウムイオン二次電池を具体的に特定する、本発明の電解液以外の事項を説明する。本発明のリチウムイオン二次電池は、具体的には、本発明の電解液と、Si含有負極活物質を具備する負極と、正極と、セパレータを備える。負極の具体的な態様は、集電体と、集電体の表面に形成された負極活物質層とを具備する。そして、負極活物質層には、Si含有負極活物質が含有される。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子伝導体をいう。集電体の材料は、使用する活物質に適した電圧に耐え得る金属であれば特に制限はない。集電体の材料としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
負極活物質層は、Si含有負極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。なお、負極活物質層には、Si含有負極活物質以外の公知の負極活物質を含んでもよい。
Si含有負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得るSi含有材料が使用可能である。
Si含有材料の具体例として、Si単体や、SiO(0.3≦x≦1.6)を例示できる。SiOのxが下限値未満であると、Siの比率が過大になるため、充放電時の体積変化が大きくなりすぎてリチウムイオン二次電池のサイクル特性が低下する場合がある。一方、xが上限値を超えると、Si比率が過小になってエネルギー密度が低下する。xの範囲は0.5≦x≦1.5であるのがより好ましく、0.7≦x≦1.2であるのがさらに好ましい。
Si含有材料の具体例として、国際公開第2014/080608号などに開示されるシリコン材料(以下、単に「シリコン材料」という。)を挙げることができる。
シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有するものである。シリコン材料は、例えば、CaSiと酸とを反応させてポリシランを主成分とする層状シリコン化合物を合成する工程、さらに、当該層状シリコン化合物を300℃以上で加熱して水素を離脱させる工程を経て製造されるものである。
シリコン材料の製造方法を、酸として塩化水素を用いた場合の理想的な反応式で示すと以下のとおりとなる。
3CaSi+6HCl → Si+3CaCl
Si → 6Si+3H
ただし、ポリシランであるSiを合成する上段の反応では、副生物や不純物除去の観点から、通常、反応溶媒として水が用いられる。そして、Siは水と反応し得るため、上段の反応を含む層状シリコン化合物を合成する工程において、層状シリコン化合物がSiのみを含むものとして製造されることはほとんどなく、層状シリコン化合物はSi(OH)(Xは酸のアニオン由来の元素若しくは基、s+t+u=6、0<s<6、0<t<6、0<u<6)で表されるものとして製造される。なお、上記の化学式においては、残存し得るCaなどの不可避不純物については、考慮していない。そして、当該層状シリコン化合物を加熱して得られるシリコン材料も、酸素や酸のアニオン由来の元素を含む。
既述のとおり、シリコン材料は、複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有する。リチウムイオンが効率的に吸蔵及び放出されるためには、板状シリコン体は厚さが10nm〜100nmの範囲内のものが好ましく、20nm〜50nmの範囲内のものがより好ましい。板状シリコン体の長手方向の長さは、0.1μm〜50μmの範囲内のものが好ましい。また、板状シリコン体は、(長手方向の長さ)/(厚さ)が2〜1000の範囲内であるのが好ましい。板状シリコン体の積層構造は走査型電子顕微鏡などによる観察で確認できる。また、この積層構造は、原料のCaSiにおけるSi層の名残りであると考えられる。
シリコン材料には、アモルファスシリコン及び/又はシリコン結晶子が含まれるのが好ましい。特に、上記板状シリコン体において、アモルファスシリコンをマトリックスとし、シリコン結晶子が当該マトリックス中に点在している状態が好ましい。シリコン結晶子のサイズは、0.5nm〜300nmの範囲内が好ましく、1nm〜100nmの範囲内がより好ましく、1nm〜50nmの範囲内がさらに好ましく、1nm〜10nmの範囲内が特に好ましい。なお、シリコン結晶子のサイズは、シリコン材料に対してX線回折測定を行い、得られたX線回折チャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いたシェラーの式から算出される。
シリコン材料に含まれる板状シリコン体、アモルファスシリコン及びシリコン結晶子の存在量や大きさは、主に加熱温度や加熱時間に左右される。加熱温度は、350℃〜950℃の範囲内が好ましく、400℃〜900℃の範囲内がより好ましい。
Si含有負極活物質は、粒子の集合体である粉末状のものが好ましい。Si含有負極活物質の平均粒子径は、1〜30μmの範囲内が好ましく、2〜20μmの範囲内がより好ましい。平均粒子径が小さすぎるSi含有負極活物質を用いると、製造作業が困難になる場合がある。他方、平均粒子径が大きすぎるSi含有負極活物質を用いた負極を具備するリチウムイオン二次電池は、好適な充放電ができない場合がある。
なお、本明細書における平均粒子径とは、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で試料を測定した場合におけるD50を意味する。
Si含有負極活物質として、Si含有負極活物質を炭素層で被覆した炭素層被覆−Si含有負極活物質を採用してもよい。炭素層被覆−Si含有負極活物質は、炭素層とSi含有負極活物質とが一体化しているものが好ましい。そのような炭素層被覆−Si含有負極活物質の製造方法としては、Si含有負極活物質及び炭素粉末の混合物に対して、強い圧力を付した上で撹拌して一体化するメカニカルミリング法や、炭素源から生じる炭素をSi含有負極活物質に蒸着させるCVD(chemical vapor deposition)法を例示できる。
Si含有負極活物質の表面を薄い炭素層で均一に被覆できる点から、CVD法が好ましい。そして、CVD法のうち、炭素源である気体状態の有機物を熱で分解して炭素を発生させる熱CVD法が好ましい。
熱CVD法を用いて炭素層被覆−Si含有負極活物質を製造する、熱CVD工程について具体的に説明する。詳細に述べると、熱CVD工程は、非酸化性雰囲気下及び加熱条件下にて、Si含有負極活物質を有機物と接触させて、Si含有負極活物質の表面に有機物が炭素化してなる炭素層を形成させる工程である。熱CVD工程を行う場合には、ホットウォール型、コールドウォール型、横型、縦型などの型式の、流動層反応炉、回転炉、トンネル炉、バッチ式焼成炉、ロータリーキルンなどの公知のCVD装置を用いればよい。
有機物としては、非酸化性雰囲気下での加熱によって熱分解して炭化し得るものが用いられ、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの不飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、ベンゾフラン、ピリジンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどのエステル類、脂肪酸類などから選択される一種又は混合物が挙げられる。
熱CVD工程における処理温度は、有機物の種類によって異なるが、有機物が熱分解する温度より50℃以上高い温度とすることが望ましい。しかし、加熱温度が過度に高いと、系内に遊離炭素(煤)が発生する場合があるので、遊離炭素(煤)が発生しない条件を選択することが好ましい。形成される炭素層の厚さは、処理時間によって制御することができる。
熱CVD工程は、Si含有負極活物質を流動状態にして行うことが望ましい。このようにすることで、Si含有負極活物質の全表面を有機物と接触させることができ、より均一な炭素層を形成することができる。Si含有負極活物質を流動状態にするには、流動床を用いるなど各種方法があるが、Si含有負極活物質を撹拌しながら有機物と接触させるのが好ましい。例えば、内部に邪魔板をもつ回転炉を用いれば、邪魔板に留まったSi含有負極活物質が回転炉の回転に伴って所定高さから落下することで撹拌され、その際に有機物と接触して炭素層が形成されるので、Si含有負極活物質の全体にいっそう均一な炭素層を形成することができる。
炭素層被覆−Si含有負極活物質の炭素層は非晶質及び/又は結晶質であり、そして、当該炭素層はSi含有負極活物質粒子の表面全体を被覆しているのが好ましい。炭素層の厚みは、1nm〜100nmの範囲内が好ましく、5〜50nmの範囲内がより好ましく、10〜30nmの範囲内がさらに好ましい。
負極活物質層には、負極活物質が負極活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムなどの公知のものを採用すればよい。
また、国際公開第2016/063882号に開示される、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボキシル基含有ポリマーをジアミンなどのポリアミンで架橋した架橋ポリマーを、結着剤として用いてもよい。
架橋ポリマーに用いられるジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の含飽和炭素環ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ベンジジン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
負極活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:結着剤=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)、および各種金属粒子などが例示される。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどが例示される。これらの導電助剤を単独又は二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助剤=1:0.01〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
集電体の表面に負極活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に負極活物質を塗布すればよい。具体的には、負極活物質、結着剤、溶剤、並びに必要に応じて導電助剤を混合してスラリーにしてから、当該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
正極は、集電体と集電体の表面に形成された正極活物質層とを具備する。集電体としては、負極で説明したものを適宜適切に採用すればよい。
正極の電位をリチウム基準で4V以上とする場合には、正極用集電体としてアルミニウムを採用するのが好ましい。
具体的には、正極用集電体として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを用いるのが好ましい。ここでアルミニウムは、純アルミニウムを指し、純度99.0%以上のアルミニウムを純アルミニウムと称する。純アルミニウムに種々の元素を添加して合金としたものをアルミニウム合金と称する。アルミニウム合金としては、Al−Cu系、Al−Mn系、Al−Fe系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Zn−Mg系が挙げられる。
また、アルミニウム又はアルミニウム合金として、具体的には、例えばJIS A1085、A1N30等のA1000系合金(純アルミニウム系)、JIS A3003、A3004等のA3000系合金(Al−Mn系)、JIS A8079、A8021等のA8000系合金(Al−Fe系)が挙げられる。
正極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る正極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を含む。正極活物質層には、正極活物質が正極活物質層全体の質量に対して、60〜99質量%で含まれるのが好ましく、70〜95質量%で含まれるのがより好ましい。結着剤及び導電助剤としては、負極で説明したものを適宜適切な量で採用すればよい。
正極活物質としては、層状岩塩構造の一般式:LiNiCo(MはMn及びAlから選択される。DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素である。a、b、c、d、e、fは0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、1.7≦f≦3を満足する。)で表されるリチウム複合金属酸化物、LiMnOを挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn等のスピネル構造の金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO、LiMVO又はLiMSiO(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePOFなどのLiMPOF(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBOなどのLiMBO(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、リチウムイオンを含まないものを用いても良い。例えば、硫黄単体、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiSなどの金属硫化物、V、MnOなどの酸化物、ポリアニリン及びアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。リチウムイオンを含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極及び/又は負極に、公知の方法により、予めリチウムを添加しておくのが好ましい。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、層状岩塩構造の一般式:LiNiCo(MはMn及びAlから選択される。DはW、Mo、Re、Pd、Ba、Cr、B、Sb、Sr、Pb、Ga、Nb、Mg、Ta、Ti、La、Zr、Cu、Ca、Ir、Hf、Rh、Fe、Ge、Zn、Ru、Sc、Sn、In、Y、Bi、S、Si、Na、K、P、Vから選ばれる少なくとも1の元素である。a、b、c、d、e、fは0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、1.7≦f≦3を満足する。) で表されるリチウム複合金属酸化物を採用することが好ましい。
上記一般式において、b、c、dの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが10/100<b<90/100、10/100<c<90/100、5/100<d<70/100の範囲であることが好ましく、20/100<b<80/100、12/100<c<70/100、10/100<d<60/100の範囲であることがより好ましく、30/100<b<70/100、15/100<c<50/100、12/100<d<50/100の範囲であることがさらに好ましい。
a、e、fについては、上記一般式で規定する範囲内の数値であればよく、好ましくは0.5≦a≦1.5、0≦e<0.2、1.8≦f≦2.5、より好ましくは0.8≦a≦1.3、0≦e<0.1、1.9≦f≦2.1をそれぞれ例示することができる。
高容量及び耐久性などに優れる点から、正極活物質として、スピネル構造のLiMn2―y(Aは、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、P、Ga、Geから選ばれる少なくとも1の元素、及び、Niなどの遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素から選択される。0<x≦2.2、0≦y≦1)を例示できる。xの値の範囲としては、0.5≦x≦1.8、0.7≦x≦1.5、0.9≦x≦1.2を例示でき、yの値の範囲としては、0≦y≦0.8、0≦y≦0.6を例示できる。具体的なスピネル構造の化合物として、LiMn、LiMn1.5Ni0.5を例示できる。
具体的な正極活物質として、LiFePO、LiFeSiO、LiCoPO、LiCoPO、LiMnPO、LiMnSiO、LiCoPOFを例示できる。他の具体的な正極活物質として、LiMnO−LiCoOを例示できる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、公知のものを採用すればよく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の具体的な製造方法について述べる。
例えば、正極と負極とでセパレータを挟持して電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極の積層体を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までを、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に本発明の電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、例えば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
シクロペンチルメチルエーテルに(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである実施例1の電解液を製造した。
実施例1の電解液を用いて、実施例1のリチウムイオン二次電池を以下のとおり製造した。
撹拌条件下の0℃の濃塩酸溶液に、CaSiを加えて1時間反応させた。反応液に水を加え、濾過を行い、黄色の粉体を濾取した。黄色の粉体を水洗し、さらにエタノール洗浄した後に、減圧乾燥して、層状ポリシランを含有する層状シリコン化合物を得た。次いで、層状シリコン化合物をアルゴン雰囲気下、800℃で加熱して、水素を離脱させて、シリコン材料を製造した。プロパンガス雰囲気下、シリコン材料を880℃で加熱することで、炭素層被覆−Si含有負極活物質である炭素被覆シリコン材料を製造した。
重量平均分子量80万のポリアクリル酸をN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、ポリアクリル酸が10質量%で含有されるポリアクリル酸溶液を製造した。また、4,4’−ジアミノジフェニルメタン0.2g(1.0mmol)を0.4mLのN−メチル−2−ピロリドンに溶解して、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液を製造した。撹拌条件下、ポリアクリル酸溶液7mL(アクリル酸モノマー換算で、9.5mmolに該当する。)に、4,4’−ジアミノジフェニルメタン溶液の全量を滴下して、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。その後、ディーンスターク装置を用いて、混合物を130℃で3時間撹拌して脱水反応を進行させることで、結着剤溶液を製造した。
Si含有負極活物質として炭素被覆シリコン材料72.5質量部、導電助剤としてアセチレンブラック13.5質量部、結着剤として固形分が14質量部となる量の上記結着剤溶液、及び、適量のN−メチル−2−ピロリドンを混合して、スラリーを製造した。負極用集電体として厚み10μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を80℃、15分間乾燥することで、N−メチル−2−ピロリドンを除去した。その後、プレスすることで、厚み25μmの負極活物質層が形成された負極を製造した。
負極を径11mmに裁断し、評価極とした。厚さ500μmの金属リチウム箔を径13mmに裁断し対極とした。セパレータとしてガラスフィルター(ヘキストセラニーズ社)及び単層ポリプロピレンであるcelgard2400(ポリポア株式会社)を準備した。対極、ガラスフィルター、celgard2400、評価極の順に、2種のセパレータを対極と評価極で挟持し電極体とした。この電極体をコイン型電池ケースCR2032(宝泉株式会社)に収容し、さらに実施例1の電解液を注入して、コイン型電池を得た。これを実施例1のリチウムイオン二次電池とした。
(実施例2)
シクロペンチルメチルエーテルに(CFSONLiを溶解して、(CFSONLiの濃度が2mol/Lである実施例2の電解液を製造した。
実施例2の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例3)
シクロペンチルメチルエーテルに(CSONLiを溶解して、(CSONLiの濃度が2mol/Lである実施例3の電解液を製造した。
実施例3の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例4)
シクロペンチルメチルエーテルにCFSOLiを溶解して、CFSOLiの濃度が2mol/Lである実施例4の電解液を製造した。
実施例4の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例5)
シクロペンチルメチルエーテルにCSOLiを溶解して、CSOLiの濃度が2mol/Lである実施例5の電解液を製造した。
実施例5の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例1)
フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:9で混合して混合溶媒とした。混合溶媒にLiPFを混合して、LiPFの濃度が2mol/Lである比較例1の電解液を製造した。
比較例1の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例2)
シクロペンチルメチルエーテルにLiPFを溶解して、LiPFの濃度が2mol/Lである比較例2の電解液を製造した。
比較例2の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例3)
シクロペンチルメチルエーテルにLiBFを溶解して、LiBFの濃度が2mol/Lである比較例3の電解液を製造した。
比較例3の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例4)
テトラヒドロフランにLiPFを溶解して、LiPFの濃度が2mol/Lである比較例4の電解液を製造した。
比較例4の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例5)
テトラヒドロフランに(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである比較例5の電解液を製造した。
比較例5の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例5のリチウムイオン二次電池を製造した。
(比較例6)
1,2−ジメトキシエタンに(FSONLiを溶解して、(FSONLiの濃度が2mol/Lである比較例6の電解液を製造した。
比較例6の電解液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、比較例6のリチウムイオン二次電池を製造した。
(評価例1)
各リチウムイオン二次電池に対して、0.2mAで0.01Vまで充電し、0.2mAで1.0Vまで放電を行うとの初回充放電を行った。さらに、各リチウムイオン二次電池に対して、0.5mAで0.01Vまで充電し、0.5mAで1.0Vまで放電を行うとの充放電サイクルを20回繰り返した。
なお、本評価例では、Si含有負極活物質がリチウムを吸蔵する印加を充電といい、Si含有負極活物質がリチウムを放出する印加を放電という。
以下の式で、初期効率と容量維持率を算出した。結果を表1に示す。
初期効率(%)=100×(初回放電容量)/(初回充電容量)
容量維持率(%)=100×(20サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)
なお、以下の表において、CPMEとはシクロペンチルメチルエーテルの略称であり、FECとはフルオロエチレンカーボネートの略称であり、DECとはジエチルカーボネートの略称であり、THFとはテトラヒドロフランの略称であり、DMEとは1,2−ジメトキシエタンの略称である。
Figure 2020042987
表1の結果から、本発明の電解液を備える、実施例のリチウムイオン二次電池は、初期効率及び容量維持率に優れていることがわかる。
比較例1のリチウムイオン二次電池の容量維持率の結果と他の比較例の結果からみて、比較例1のリチウムイオン二次電池は、主にフルオロエチレンカーボネートの分解物で形成されるSEI被膜の存在に因り、他の比較例のリチウムイオン二次電池よりも優れた容量維持率を示したと考えられる。しかしながら、実施例のリチウムイオン二次電池の方が比較例1のリチウムイオン二次電池よりも優れた容量維持率を示したことから、比較例1のリチウムイオン二次電池においては、SEI被膜がSi含有負極活物質と電解液との直接接触を防止したものの、SEI被膜に含まれるCO基などの酸化性の成分に因り、Si含有負極活物質が酸化して、劣化したと推定される。
実施例1〜実施例5で裏付けられたとおり、非水溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル、電解質としてスルホンイミドリチウム塩又はスルホン酸リチウム塩を使用した場合の電解液は、リチウムイオン二次電池に好適な特性を与えるといえる。しかし、比較例2及び比較例3で裏付けられたとおり、非水溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル、電解質としてLiPF又はLiBFを使用した場合の電解液は、不適切であるといえる。
実施例1、比較例5及び比較例6の結果からみて、エーテルであっても、その化学構造の違いに因り、電池性能に大きな影響を与えることがわかる。
テトラヒドロフランの2位の炭素、及び、1,2−ジメトキシエタンのO−CHCH−Oの炭素においては、いずれも酸素及び炭素鎖が隣接しており、ラジカルが発生しやすいといえる。そのため、比較例5及び比較例6のリチウムイオン二次電池においては、テトラヒドロフランの2位の炭素又は1,2−ジメトキシエタンのO−CHCH−Oの炭素にラジカルが発生して、Si含有負極活物質などの電池構成成分を劣化させたと考えられる。
なお、テトラヒドロフランの2位の炭素にラジカルが発生して当該炭素がsp混成軌道へと変換した場合のひずみエネルギーについて考察すると、テトラヒドロフラン環の5員環構造には酸素が存在する。ここで、酸素の存在が5員環構造のひずみを緩和するため、テトラヒドロフランにおいては、ラジカル発生におけるエネルギー障壁となるひずみエネルギーが小さいといえる。よって、5員環を構成する元素がすべて炭素であるシクロペンチル環と比較して、5員環を構成する元素に酸素を含むテトラヒドロフラン環は、ラジカルが生じ易いといえる。
シクロペンチルメチルエーテルは、酸素に隣接するのがメチル基とシクロペンチル環であり、いずれもラジカルが発生し難い。そのため、実施例1のリチウムイオン二次電池においては、Si含有負極活物質などの電池構成成分の劣化が抑制されたといえる。

Claims (6)

  1. Si含有負極活物質を具備する負極と、
    スルホンイミドリチウム塩及びスルホン酸リチウム塩から選択される電解質、並びに、下記一般式(1)のエーテルを含有する電解液と、
    を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
    一般式(1) ROR
    は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。Rは、メチル基であるか、又は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。
  2. 前記電解液に含有される非水溶媒全体に対する前記エーテルの割合が50体積%以上、50質量%以上又は50モル%以上である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記4〜6員環の環状アルキル基が5員環の環状アルキル基である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記スルホンイミドリチウム塩及び前記スルホン酸リチウム塩が、分子内にフッ素を含有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. スルホンイミドリチウム塩及びスルホン酸リチウム塩から選択される電解質、並びに、下記一般式(1)のエーテルを含有することを特徴とする電解液。
    一般式(1) ROR
    は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。Rは、メチル基であるか、又は、アルキル基で置換されていてもよい4〜6員環の環状アルキル基である。
  6. 含有される非水溶媒全体に対する前記エーテルの割合が50体積%以上、50質量%以上又は50モル%以上である請求項5に記載の電解液。
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