〔電話機〕
<電話機の概要>
ユーザからの質問や要望などを受け付けるために、多くの企業は、コールセンター又はサポートセンターと呼ばれる窓口を有する。以下では、窓口の一例としてコールセンターを用いる。コールセンターには1又は複数の電話機が設置されている。コールセンターの各オペレータは、その電話機を用いてユーザと通話することによって、ユーザからの質問や要望などを把握し、それらに対する回答などをユーザに伝える。
本発明の一実施形態に係る電話機1は、このようなコールセンターに好適に配置することができる。なお、以下においては、電話機1を利用しているユーザを送話側のユーザと称し、電話機1の接続先である電話機を利用しているユーザを受話側のユーザと称する。本願明細書では、電話機1のユーザが音声を発し、電話機1の接続先である電話機のユーザが前記音声を聞き取る態様について主に説明するためである。
上述したようなコールセンターに電話をしてくるユーザには、耳が遠いユーザが含まれている。電話機1は、相手側の電話機を利用しているユーザが耳の遠いユーザである場合に効果を奏しやすい。
したがって、電話機1を配置する場所は、コールセンターに限定されるものではなく、例えば、病院の入院用病棟のナースセンターであってもよいし、家庭であってもよい。受話側のユーザとしては、次のような例が挙げられる。すなわち、電話機1がコールセンターに配置されている場合であれば、コールセンターを設置している企業の製品又はサービスのユーザが挙げられ、電話機1がナースセンターに配置されている場合であれば、病院に入院している患者が挙げられ、電話機1が家庭に配置されている場合であれば、その家庭の家族が挙げられる。
また、電話機1を考案した背景は、以下のようにも表現できる。
一般的な電話回線での会話に於いて受話側の環境により情報が正確に伝達できないという不具合が頻繁に発生しており、特に高齢化が進む現在では例えば受話者が言語を理解しにくい難聴障害を有する場合は重要な情報が伝わらないという場面が頻発している現状が報告されている。一般的な発想では受話音量を大きくする程度の対策が取られるが難聴障害は伝音難聴と内耳側の障害で起こる感音難聴などがあり特に感音難聴では大きな音量でも全く言語が理解できなくその原因は聴覚器官である蝸牛という器官での高い周波数を聴覚信号に変換する機能低下で起こる事が解明されている。
電話機1では、特に難聴障害を有する方々に対し電話による様々な情報を確実に伝達するために高齢化などにより聴こえ難くなった高い周波数成分に対し送話者側で信号処理を施し受話側の電話装置に関係なく聴き取り易く伝送するという点に注目を置いて開発されたものである。
高齢化等により聴覚機能が低下してしまった状況では日常生活に於いて会話による情報交換が希薄となるため補聴器や集音器などによる補助装置が一般的に使用されている。これらの補助装置はマイクロフォンにより集音される音声を聴き取り易くするため音量増大や多少の周波数処理を行ってイヤホンから出音する方法がとられている。
特に高齢化による難聴障害を抱えている人口割合は年々増加していることから大きな社会問題へとなりつつある中で近年電話による公的機関への相談事やショッピング、日常情報の交換など、電話の重要性がますます貴重な通信手段となってきている。
電話にあっては昨今固定型電話機を始め携帯型電話機が存在し何時でも何処でも自由に相手先と通話が可能な環境が出来てきたのであるが前述のごとく高齢化による聴覚不具合を抱える方々が年々増加していることから重要な情報を先方に正確に伝えることが困難な状況になっている。
以下では、本発明の一実施形態である電話機1について、図1~図3を参照して説明する。図1は、電話機1のブロック図である。図2は、電話機1の模式図である。なお、図2においては、送受話器20を本体30から外した状態の電話機1を示している。図3は、電話機1における周波数特性を示すグラフである。
<電話機の着想>
前述したように言語を理解する上で重要な役割を持つ周波数成分を補助的に補正することで聴き取りにくかった言語を正確に理解することが可能となる技術を搭載し受話者側で既に使用している電話装置に手を加えることなく送話者側で音声信号を補正処理するという従来の発想と全く逆の手法で実現するものである。
電話機1では、受話者側の言語理解力を想定し送話者側で任意に信号処理成分の強度を設定することが可能となる機能を有しており快適な会話を成立することが具現化できる。
一方電話における会話で先方の言語が聴き取り難い場合も報告されている。このような場合を想定し発信者の受話ラインに於いても前記送話ラインと同様の音声処理機能を有する装置を搭載する事で送話、受話両ラインで任意に聴き取り具合を制御できるように配慮した。
<電話機の構成>
図1及び図2に示すように、電話機1は、音声処理器10と、送受話器20と、本体30と、ケーブル41,42,43と、を備えている。
音声処理器10については、後述する。
(送受話器)
送受話器20は、マイクロフォン21と、スピーカー22と、ポートP21と、を備えている。マイクロフォン21及びスピーカー22の各々は、ポートP21に接続されている。マイクロフォン21は、送話器の一例であり、スピーカー22は、受話器の一例である。
図1及び図2に示すように、マイクロフォン21は、送話側のユーザが発した音声を音声信号SVに変換し、音声信号SVをポートP21に供給する。本実施形態において、音声信号SVは、アナログ信号であり且つ電気信号である。ただし、マイクロフォン21は、送話側のユーザが発した音声をデジタル信号である音声信号SVに変換するように構成されていてもよい。
マイクロフォン21としては、例えば、エレクトリックコンデンサ型のマイクロフォンを採用することができる。エレクトリックコンデンサ型のマイクロフォンには、駆動用の直流電圧が印加されている。また、エレクトリックコンデンサ型のマイクロフォンは、メーカーあるいは機種ごとに異なる形式のコネクタも用いて接続されている場合が多い。
スピーカー22は、ポートP21から供給された音声信号であって、受話側のユーザが発した音声が変換された音声信号を音声に変換し、該音声を出力する。本実施形態において、ポートP21から供給される音声信号は、アナログ信号であり且つ電気信号である。ただし、ポートP21から供給される音声信号は、デジタル信号であり、スピーカー22は、デジタル信号である音声信号を音声に変換するように構成されていてもよい。
ポートP21は、送受話器20のポートの一例であり、本実施形態においては、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックを採用している。ただし、ポートP21は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックに限定されない。ポートP21としては、音声信号を入出力可能なコネクタであれば如何なるコネクタを採用してもよい。
(本体)
図1及び図2に示すように、本体30は、ポートP31,P32を備えている。
ポートP31は、本体30の送受話器20側のポートの一例であり、本実施形態においては、ポートP21と同様にRJ-9規格に準拠したモジュラージャックを採用している。
ポートP32は、本体30の回線側のポートの一例であり、本実施形態においては、RJ-11規格に準拠したモジュラージャックを採用している。ただし、ポートP32は、RJ-11規格に準拠したモジュラージャックに限定されない。ポートP32としては、例えば、RJ-12規格又はRJ-14規格に準拠したモジュラージャックを採用してもよい。
本体30は、2線式の電話回線を用いた電話機の本体である。本体30は、ポートP32に該電話回線を接続し、ポートP31に送受話器20を接続することによって、受話側の電話機の本体との間で音声信号を双方向通信することができるように構成されている。本体30は、既存の電話機の本体と同様に構成されていればよい。したがって、本実施形態では、本体30に関する説明を省略する。
なお、本体30は、後述する音声処理器10の加算合成器16からポートP31に供給された合成音声信号SSVを後述するケーブル43に出力する。
(ケーブル)
ケーブル41,42,43の各々は、何れも、複数の信号線を備えている。複数の信号線の各々は、電気信号である音声信号を伝送可能なように、導体により構成されている。
図1及び図2に示すように、ケーブル41は、後述する音声処理器10のポートP11と、送受話器20のポートP21とを接続し、ケーブル42は、音声処理器10のポートP12と、本体30のポートP31とを接続し、ケーブル43は、電話回線の端部を構成し、本体30のポートP32に接続される。
本実施形態において、ケーブル41,42の各々は、それぞれ、両端にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルである。また、本実施形態において、ケーブル43は、両端にRJ-11規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルである。なお、図2において、ケーブル41,42の各々の両端に図示された黒塗りの四角は、RJ-9規格に準拠したモジュラープラグを示し、ケーブル43の端部に図示された白抜きの四角は、RJ-11規格に準拠したモジュラープラグを示している。
(音声処理器)
図1に示すように、音声処理器10は、ポートP11と、ポートP12と、分岐部11と、位相補正器12と、フィルタ13と、アンプ14と、調整器15と、加算合成器16と、を備えている。音声処理器10は、送受話器20と本体30との間に介在するように設けられている。分岐部11、フィルタ13、アンプ14、及び加算合成器16は、音声処理部の一例である。また、音声処理器10は、図1に図示していない電源部と、検出部と、制御部と、を更に備えている。
ポートP11は、送受話器20に接続されるポートであり、第1ポートの一例である。ポートP11と、送受話器20のポートP21とは、ケーブル41を用いて接続されている。ポートP11の端子のうち、マイクロフォン21に接続されている端子には、マイクロフォン21によって送話側のユーザが発した音声から変換された音声信号SVが、マイクロフォン21から供給される。
音声信号SVは、特許文献1の図1に記載されているように、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分を含む。なお、nは、送話側のユーザに依存し、多少の個人差はあるものの、少なくとも4以上の正の整数である。なお、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分の各々は、それぞれ、特許文献1の図1に記載の第1ホルマント、第2ホルマント、・・・、第n次ホルマントに読み替えられる。
なお、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分については、特許文献1に記載されているため本実施形態では、その説明を省略する。
分岐部11は、音声信号SVを第1音声信号SV1と第2音声信号SV2とに分岐する。本実施形態において、分岐部11は、第1音声信号SV1と第2音声信号SV2との強度比が1:1になるように、すなわち分配比が1:1になるように構成されている。ただし、分岐部11の分配比は、1:1に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
なお、第1音声信号SV1及び第2音声信号SV2の各々のスペクトルは、音声信号SVのスペクトルと同様である。すなわち、第1音声信号SV1及び第2音声信号SV2の各々は、1次のホルマント成分、2次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分を含む。
フィルタ13は、分岐部11を通過した第1音声信号SV1から周波数が400Hz未満の成分である低周波成分を除去するハイパスフィルタである。フィルタ13は、前記低周波成分を含まない第1音声信号SV1’を出力する。したがって、第1音声信号SV1’は、1次のホルマント成分を含まず、且つ、2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分を含む音声信号である。
アンプ14は、フィルタ13を通過した第1音声信号SV1’を増幅することによって、2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、・・・、n次のホルマント成分の強度が高められた第1音声信号SV1”を出力する。
調整器15は、アンプ14のゲインを調整する。本実施形態において、調整器15は、前記ゲインを3段階に調整可能なスイッチを用いて構成されている(図2参照)。調整器15は、スイッチにより「0」を選択した場合に前記ゲインが1倍となり、スイッチにより「1」を選択した場合に前記ゲインが3倍となり、スイッチにより「2」を選択した場合に前記ゲインが5倍となるように構成されている。
ただし、調整器15を構成するスイッチの段数、及び、スイッチにより選択される前記ゲインは、上述した例に限定されるものではなく、適宜選択することができる。また、調整器15は、ゲインを離散的に変化させるスイッチの代わりにゲインを連続的に変化させるボリュームを採用することもできる。また、電話機1が家庭に配置されている場合のように、受話側のユーザがある程度特定できる場合には、前記ゲインを予め設定しており、調整器15を省略することもできる。
位相補正器12は、アンプ14を通過した第1音声信号SV1”の位相と合うように、第2音声信号SV2の位相を補正する。すなわち、位相補正器12は、第1音声信号SV1”と位相が合っている第2音声信号SV2’を出力する。
加算合成器16は、アンプ14を通過した第1音声信号SV1”と、位相補正器12を通過した第2音声信号SV2’とを加算合成することによって合成音声信号SSVを生成し、合成音声信号SSVをポートP12に供給する。
ポートP12は、本体30に接続されるポートであり、第2ポートの一例である。ポートP12と、本体30のポートP31とは、ケーブル42を用いて接続されている。ポートP12の端子のうち加算合成器16が接続されている端子には、加算合成器16から合成音声信号SSVが供給される。
本実施形態において、マイクロフォン21は、ポートP21を介して、アナログ信号である音声信号SVをポートP11に供給する。ポートP12は、ポートP31を介して、アナログ信号である合成音声信号SSVを本体30に供給する。ただし、マイクロフォン21は、デジタル信号である音声信号SVをポートP11に供給し、且つ、ポートP12は、デジタル信号である合成音声信号SSVを本体30に供給するように構成されていてもよい。
また、本実施形態において、位相補正器12、フィルタ13、アンプ14、及び加算合成器16の各々は、アナログ回路により構成されている。ただし、位相補正器12、フィルタ13、アンプ14、及び加算合成器16の各々は、デジタル回路により構成されていてもよい。
また、本実施形態において、音声処理器10は、第1音声信号SV1に対してフィルタリング処理を施すフィルタとしてハイパスフィルタであるフィルタ13を備えている。ただし、音声処理器10は、フィルタ13は、分岐部11を通過した第1音声信号SV1から、(1)周波数が400Hz未満の成分である低周波成分と、(2)周波数が7kHzを超える成分である高周波成分と、を除去するように構成されていてもよい。すなわち、フィルタ13は、周波数が400Hz以上であり7kHz以下である成分を通過させるバンドパスフィルタであってもよく、周波数が400Hz以上であり5kHz以下である成分を通過させるバンドパスフィルタであってもよい。なお、この場合、フィルタ13は、1つのバンドパスフィルタとして実現されていてもよいし、ハイパスフィルタとローパスフィルタとを直列に接続することによって実現されていてもよい。
また、本実施形態において、音声処理器10の筐体は、アルミニウム製である。ただし、筐体を構成する材料は、アルミニウムに限定されず、例えば銅やステンレスなどの金属であってもよい。また、筐体を構成する材料は、樹脂を主にし、その表面に金属層が設けられたものであってもよい。筐体は、少なくともその表面が金属により覆われていることによって、外部から内部へ侵入する電磁波を遮蔽することができる。
また、本実施形態において、音声処理器10は、本体30とは別体となるように構成されている。ただし、音声処理器10は、本体30と一体となるように、本体30の筐体内に収容されていてもよい。すなわち、音声処理器10を本体30の筐体に収容した電話機も本発明の範疇に含まれる。
なお、音声処理器10において、ポートP11の端子のうちスピーカー22に接続されている端子と、ポートP12の端子のうち所定の端子とは、直結されている。したがって、音声処理器10は、本体30からポートP12に供給された音声信号であって、受話側のユーザが発した音声が変換された音声信号に対しては、何ら音声処理を施さないままポートP11に出力する。したがって、電話機1は、受話側のユーザが発した音声に対して何ら音声処理を施さないまま、スピーカー22から出力する。
なお、図1に図示していない選択部、電源部、検出部、及び制御部の各々は、次のように構成されている。
選択部については、図5を参照して後述するが、送話側の音声を表す音声信号SVに対して音声処理を施すか否かを選択する。なお、選択部は、後述する制御部によって、音声処理を施すか否かを選択するように制御される。
電源部は、音声処理部(特にアンプ14)及び制御部に電力を供給する。電源部の態様は、限定されるものではなく、ACアダプタに代表される交流/直流変換器であってもよいし、電池であってもよい。
検出部は、前記電源部から前記音声処理部に前記電力が供給されているか否かを検出するように構成されている。電源部が通常どおり機能している場合であれば、検出部は、「Yes」を示す検出情報を制御部に供給する。一方、電源部が通常どおり機能していない場合であれば、検出部は、「No」を示す検出情報を制御部に供給する。電源部が交流/直流変換器でる場合、通常どおり機能していない状態の例としては、停電が挙げられる。また、電源部が電池である場合、通常どおり機能していない状態の例としては、電池切れが挙げられる。
制御部は、検出部の検出結果に応じて、音声信号SVに対して音声処理を施す、あるいは、施さないように、選択部を制御する。制御部は、検出部の検出結果が「Yes」である場合、音声信号SVに対して音声処理を施すように選択部を制御する。一方、制御部は、検出部の検出結果が「No」である場合、音声信号SVに対して音声処理を施さないように選択部を制御する。
また、音声処理器10は、ポートP11と分岐部11との間に介在する極性切り替え器及びアンプを更に備えていてもよい。
また、音声処理器10は、加算合成器16とポートP12との間に介在する選択部、アンプ、回路分離器、送話出力調整器、及び極性切り替え器を更に備えていてもよい。
これらの構成については、図5及び図6を参照しながら後述する。
<電話機の周波数特性>
図3は、音声処理器10を備えた電話機1における周波数特性を示すグラフである。図3に示した特性線aは、マイクロフォン21から供給される音声信号SVの周波数特性を示す。図3に示した特性線bは、ポートP11と分岐部11との間に介在するアンプにより出力値を調整されたあとの音声信号SVの周波数特性を示す。図3に示した特性線cは、アンプ14を通過したあとの第1音声信号SV1”の周波数特性を示す。図3に示した特性線dは、合成音声信号SSVの周波数特性を示す。図3に矢印で示した特性線bと特性線dとの差が、音声処理器10により実施される音声処理の効果である。
なお、特性線cにより表される第1音声信号SV1”の周波数特性の出力レベルは、調整器15を用いてアンプ14のゲインを調整することによって、調整することができる。
<電話機及び音声処理器の効果>
電話機1は、対難聴者との電話による情報会話において確実に会話内容を伝達出来る方法を提供する機能を搭載する通話補助装置である。従来の補聴器や集音器などとは全く逆の発想から誕生した手法で声を発する側で聴覚障害者が聴こえ易くなる音声処理をした音声を電話の発信者の装置に組み込むことで受話者側の電話装置が固定電話であれ、携帯型電話であれ関係なく情報を伝達できるように構成した装置。
電話機1に搭載する音声処理による音声明瞭化技術によれば高齢化により聴覚障害の原因となる内耳の聴覚器官である「蝸牛」の音声~電気信号への変換効率とくに高い周波数帯域(ホルマントと呼称される)の効率低下が言語の理解を阻害している点に注目し、言葉に含まれる高い周波数成分を強調する処理を施すことにより聴こえを取り戻すことが出来る事という特長を採り入れている。音声のスペクトル分析に於いて一番低い周波数に現れるレベルの大きいピーク周波数を第一ホルマント、2番目に現れるピーク周波数を第2ホルマントなどと呼称されそれぞれのピーク周波数は整数倍のポイントに現れるがそのピーク周波数は発声者の骨格などにより異なるが一般的には言語を理解するに必要なホルマント成分は第1ホルマントから第4ホルマントを確実に聴きとる必要がある事が長年にわたる我々の多くの知見結果により解明されており、電話機1に於いては400Hz~5KHzを重点的に補償することでその効果を発揮出来ることが確認されている。
以上のように、電話機1の音声処理器10は、ポートP11と、分岐部11と、フィルタ13と、アンプ14と、位相補正器12と、加算合成器16と、ポートP12と、を備えている。
上記の構成によれば、アンプ14は、第1音声信号SV1’を増幅し、第2音声信号SV2を増幅しない。したがって、音声処理器10において、1次のホルマント成分が増幅されず、且つ、所定のホルマント成分(例えば2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分)が増幅された合成音声信号を出力することができる。したがって、電話機1は、受話側のユーザが明瞭と感じられる合成音声信号SSVを、受話側の電話機に依存することなく、出力することができる。
その結果、受話側のユーザとの間で誤解が生じたり、受話側のユーザの気分を害したりする可能性を低減することができるので、送話側のユーザと受話側のユーザとの間におけるコミュニケーションを円滑に進めやすくなる。
なお、音声を明瞭化する場合、第1音声信号SV1から、(1)周波数が400Hz未満の成分である低周波成分と、(2)周波数が7kHzを超える成分である高周波成分と、を除去したうえで、第1音声信号SV1’を増幅し、位相が合っている第1音声信号SV1”と第2音声信号SV2とを加算合成することが好ましいことを発明者は、見出した。しかしながら、普及している電話機の多くにおいて、スピーカーから出力可能な音声の帯域は、300Hz以上3kHz以下程度になっている。したがって、電話機1を構成する音声処理器10において、フィルタ13は、多くの場合、前記低周波成分のみを第1音声信号SV1から除去することができればよい。すなわち、フィルタ13においては、第1音声信号SV1から前記高周波成分を除去するように構成しなくてもよい。したがって、音声処理器10を電話機1に適用することを前提とした場合、フィルタ13を簡易に構成することができ、コストを抑制することができる。
また、電話機1において、マイクロフォン21は、アナログ信号である音声信号SVをポートP11に供給し、ポートP12は、アナログ信号である合成音声信号SSVを本体30に供給する、ことが好ましい。
上記の構成によれば、送受話器20と本体30とを接続する構成として、既存の据え置き型の電話機として広く普及している電話機と同様の構成を採用することができる。したがって、このように構成された電話機1は、コストを抑制することができる。
また、電話機1において、位相補正器12、フィルタ13、アンプ14、及び加算合成器16の各々は、アナログ回路により構成されている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、音声処理器10を容易に構成することができ、且つ、音声処理器10を小型化することができる。また、フィルタ13をデジタル回路により構成した場合と比較して、このように構成された電話機1は、受話側のユーザがより明瞭と感じられる合成音声信号SSVを出力することができる。これは、アナログ回路により構成したフィルタ13のほうが、デジタル回路により構成したフィルタ13よりも、通過帯域の下限領域(すなわち400Hz近傍の領域)におけるフィルタリング特性がなだらかになりやすいためだと考えられる。
また、電話機1において、音声処理器10は、調整器15更に備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、受話側のユーザの様子に応じて、送話側のユーザ(例えばコールセンタのオペレータ)は、受話側のユーザの意図とは関係なく、且つ、受話側のユーザに気付かれることなく、アンプのゲインを調整することができる。すなわち、合成音声信号における明瞭化の度合いを調整することができる。したがって、このように構成された電話機1は、受話側のユーザの自尊心を傷付けたりする虞なしに、
受話側のユーザに応じて明瞭化の度合いを調整した合成音声信号SSVを出力することができる。
また、電話機1において、フィルタ13は、前記低周波成分と、前記高周波成分とを除去するように構成されていることが好ましい。
本願の発明者は、音声信号の明瞭化に寄与する周波数帯域がおよそ400Hz以上7kHz以下であることを見出した。このように構成された電話機1によれば、アンプ14は、音声信号の明瞭化に寄与する周波数帯域に含まれる第1音声信号SV1’を増幅する。したがって、受話側のユーザが利用する電話機の出力可能な音声の帯域がどのように設定されている場合(前記高周波成分の音声を出力可能な場合)であっても、明瞭化に寄与しない(又は寄与しにくい)前記高周波成分を無用に増幅することがない。
また、電話機1において、ポートP21は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックであり、ポートP11及びポートP12の各々は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックである、ことが好ましい。
広く普及している電話機において、送受話器と本体とは、両端にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルを用いて接続される場合が多い。このように構成された電話機1によれば、広く普及しているケーブルを用いて送受話器20、音声処理器10、及び本体30を接続することができる。したがって、このように構成された電話機1は、コストの増大を抑制することができる。
なお、電話機1が備えている音声処理器10も本発明の一態様である。
音声処理器10は、1次のホルマント成分が増幅されず、且つ、所定のホルマント成分(例えば2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分)が増幅された合成音声信号を出力することができる。したがって、音声処理器10は、既存の電話機の送受話器と本体との間に介在させることによって、受話側のユーザが明瞭と感じられる合成音声信号を、受話側の電話機に依存することなく、出力することができる。
また、音声処理器10において、音声信号SV及び合成音声信号SSVの各々は、アナログ信号である、ことが好ましい。
このように構成された音声処理器10は、据え置き型の電話機として広く普及している既存の電話機を買い換えることなく第8の態様に係る音声処理器を利用することができる。したがって、本音声処理器を導入しようとするユーザや企業などは、音声処理器10を導入する場合のコストを抑制することができる。
また、音声処理器10において、位相補正器12、フィルタ13、アンプ14、及び加算合成器16の各々は、アナログ回路により構成されている、ことが好ましい。
これにより、音声処理器10を容易に構成することができ、且つ、音声処理器を小型化することができる。また、フィルタ13をデジタル回路により構成した場合と比較して、このように構成された音声処理器10は、受話側のユーザがより明瞭と感じられる合成音声信号を出力することができる。
また、音声処理器10において、ポートP21は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックであり、ポートP11及びポートP12の各々は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックである、ことが好ましい。
電話機において、送受話器と本体とは、両端にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルを用いて接続される場合が多い。このように構成された音声処理器10であれば、広く普及しているケーブルを用いて、音声処理器10を送受話器20及び本体30の間に介在させることができる。したがって、このように構成された音声処理器10は、既存の電話機を買い換えることなく本音声処理器を利用することができる。したがって、本音声処理器を導入しようとするユーザや企業などは、音声処理器10を導入する場合のコストを更に抑制することができる。
また、電話機1は、電話回線による情報交換に於いて発生する受話側のユーザの環境により発生する言語伝達誤り等の不具合を送話側のユーザで聴き取り易い音声信号処理機能により明瞭化することにより、受話側の電話器に依存することなく正確な情報伝達を可能にする。
また、電話機1によれば、(1)高齢化などによる難聴障害者と快適な会話が可能となる、(2)国内、海外問わずすべての電話回線に採用が可能である、(3)装置設置時の大掛かりな工事など不要で低価格導入が可能である、といった更なる効果を奏する。
〔第1の変形例〕
電話機1の第1の変形例である電話機1Aについて、図4を参照して説明する。図4は、電話機1Aのブロック図である。
電話機1Aは、電話機1をベースにして、音声処理器10を音声処理器50に置換することによって得られる。第1の変形例では、音声処理器50についてのみ簡単に説明する。
図4に示すように、音声処理器50は、ポートP11と、ポートP12と、第1音声処理器50aと、第2音声処理器50bとを備えている。
第1音声処理器50a及び第2音声処理器50bの各々を構成する各部は、音声処理器10を構成する各部と同一に構成されている。すなわち、第1音声処理器50aは、分岐部51a、位相補正器52a、フィルタ53a、アンプ54a、調整器55a、及び加算合成器56aを備えている。分岐部51a、位相補正器52a、フィルタ53a、アンプ54a、調整器55a、及び加算合成器56aの各々は、それぞれ、分岐部11、位相補正器12、フィルタ13、アンプ14、調整器15、及び加算合成器16に対応している。また、分岐部51b、位相補正器52b、フィルタ53b、アンプ54b、調整器55b、及び加算合成器56bの各々は、それぞれ、分岐部11、位相補正器12、フィルタ13、アンプ14、調整器15、及び加算合成器16に対応している。したがって、第1の変形例では、分岐部51a、位相補正器52a、フィルタ53a、アンプ54a、調整器55a、加算合成器56a、分岐部51b、位相補正器52b、フィルタ53b、アンプ54b、調整器55b、及び加算合成器56bに関する詳しい説明を省略する。
なお、第1音声処理器50aは、音声処理器10と同じ向きになるようにポートP11とポートP12との間に配置されている。すなわち、分岐部51aは、ポートP11のマイクロフォン21に対応する端子に接続されており、加算合成器56aは、ポートP12の所定の端子に接続されている。一方、第2音声処理器50bは、音声処理器10と逆向きになるようにポートP11とポートP12との間に配置されている。すなわち、加算合成器56bは、ポートP11のスピーカー22に対応する端子に接続されており、分岐部51bは、ポートP12の所定の端子に接続されている。
このように、電話機1Aは、マイクロフォン21と本体30との間に介在する第1音声処理器50aのみでなく、スピーカー22と本体30との間に介在する第2音声処理器50bを備えていてもよい。電話機1Aによれば、スピーカー22から聞こえる音声(すなわち受話側のユーザが発する音声)が不明瞭で聞き取りにくいと送話側のユーザが感じた場合に、送話側のユーザは、調整器55bを構成するスイッチを操作することによって、スピーカー22から聞こえる音声における明瞭化の度合いを調整することができる。
また、電話機1Aが備えている音声処理器50も本発明の一態様である。また、電話機1Aは、筐体の内部に音声処理器50を収容するように構成されていてもよい。
〔第2の変形例〕
図1に示した電話機1の第2の変形例である電話機1Bについて、図5を参照して説明する。図5は、電話機1Bのブロック図である。
電話機1Bは、電話機1が備えている音声処理器10に加えて、極性切替え器61と、アンプ62と、選択部63と、アンプ64と、回路分離器65と、調節器66と、極性切替え器67と、を備えている。なお、<電話機の構成>において説明済であるため、音声処理器10の構成及び音声処理器10が実施する音声処理については、説明を省略する。
極性切替え器61及びアンプ62は、送受話器20と音声処理器10との間にこの順番で配置されている。図5には各ポートを図示していないものの、極性切替え器61及びアンプ62は、送受話器20のポートP21と、音声処理器10のポートP11とを接続するケーブル41(図1及び図2参照)の途中に配置されている。
選択部63、アンプ64、回路分離器65、調節器66、及び極性切替え器67は、音声処理器10と本体30との間にこの順番で配置されている。図5には各ポートを図示していないものの、選択部63、アンプ64、回路分離器65、調節器66、及び極性切替え器67は、音声処理器10のポートP12と、本体30のポートP31とを接続するケーブル42(図1及び図2参照)の途中に配置されている。
電話機1の項に記載したように、マイクロフォン21を駆動するための直流電圧の極性は、メーカーあるいは機種ごとに異なっている場合が多い。極性切替え器61は、音声処理器10を導入しようとしている電話機1が備えているマイクロフォン21の直流電圧の極性と整合するように、音声処理器10側の極性を整合させる切替え器である。極性切替え器61の設定は、音声処理器10を電話機1に導入する場合に初期設定として実施する。
アンプ62は、音声信号SVを増幅する。なお、アンプ62は、増幅後の音声信号SVの強度があらかじめ設定した閾値を超えないようにゲインを自動調整する機能を備えている。上記閾値は、増幅後の音声信号SVが表す音声に歪みなどが発生しない範囲内において適宜定めることができる。
なお、アンプ62の後段には、音声信号SVを2つに分岐する分岐部が配置されている。この分岐部は、音声処理器10を構成する分岐部11とはべつの分岐部である。分岐部により分岐された2つの配線のうち、一方の配線には音声処理器10が接続されている。一方、分岐部により分岐された2つの配線のうち、他方の配線の端部は、開放されている。
選択部63は、音声信号SVに対して音声処理を施すか否かを選択する。本実施形態において、選択部63は、2つの端子を有する一方のポートと、1つの端子を有する他方のポートとを備えたスイッチである。一方のポートの2つの端子の各々には、分岐部により分岐された2つの配線の各々が接続されている。他方のポートの端子には、アンプ64が接続されている。選択部63は、他方のポートの端子に対して、一方のポートの2つの端子の何れかを選択して接続する。このように構成された選択部63は、アンプ64に供給する音声信号として、合成音声信号SSV及び音声信号SVの何れかを選択する。図5において、選択部63は、アンプ64が接続されている他方のポートの端子に対して音声処理器10を接続している。
アンプ64は、選択部63から供給された合成音声信号SSV及び音声信号SVの何れかを増幅する。なお、アンプ64は、増幅後の合成音声信号SSV及び音声信号SVの何れかの強度があらかじめ設定した閾値を超えないようにゲインを自動調整する機能を備えている。上記閾値は、増幅後の音声信号SVが表す音声に歪みなどが発生しない範囲内において適宜定めることができる。なお、アンプ64は、省略することもできる。
本体30のポートP31(図1及び図2参照)のうちマイクロフォン21が接続される側には、上述したように、マイクロフォン21を駆動するための直流電圧が印加されている。回路分離器65は、ポートP31のうちマイクロフォン21が接続される側と、音声処理器10とを交流的に結合する変圧器により構成されている。
調節器66は、本体30へ供給する合成音声信号SSVの強度を適正値に設定する。
極性切替え器67は、極性切替え器61と同様に構成されている。極性切替え器67の設定は、音声処理器10を電話機1に導入する場合に初期設定として実施する。
電話機1Bによれば、停電などの不測の事態により音声処理部(特にアンプ14)に電力が供給されなくなった場合であっても、制御部が選択部63を制御することによって、合成音声信号SSVではなく音声信号SVを本体30に供給することができる。したがって、電話機1Bによれば、受話側の電話機との通信が途切れることがない。
〔第3の変形例〕
図1に示した電話機1の第3の変形例であって、図4に示した電話機1Aの変形例でもある電話機1Cについて、図6を参照して説明する。図6は、電話機1Cのブロック図である。
図6に示すように、電話機1Cが備えている音声処理器70は、電話機1Aが備えている音声処理器50と同様に、第1音声処理器50aと、第2音声処理器50bとを備えている。第1音声処理器50a及び第2音声処理器50bについては、第1の変形例で説明したので説明を省略する。
電話機1Cは、電話機1Aが備えている第1音声処理器50a及び第2音声処理器50bに加えて、極性切替え器71aと、アンプ72aと、選択部73aと、アンプ74aと、回路分離器75aと、調節器76aと、極性切替え器77aと、極性切替え器71bと、アンプ72bと、選択部73bと、アンプ74bと、音量調節器75bと、スピーカー駆動部76bと、を備えている。
極性切替え器71a、アンプ72a、選択部73a、アンプ74a、回路分離器75a、調節器76a、及び極性切替え器77aの各々は、それぞれ、電話機1Bが備えている極性切替え器61、アンプ62、選択部63、アンプ64、回路分離器65、調節器66、及び極性切替え器67に対応する。したがって、ここでは、これらの説明を省略する。
極性切替え器71b及びアンプ72bは、本体30と第2音声処理器50bとの間にこの順番で配置されている。図6には各ポートを図示していないものの、極性切替え器71b及びアンプ72bは、本体30のポートP31と、音声処理器50のポートP12とを接続するケーブル42(図4参照)の途中に配置されている。
選択部73b、アンプ74b、音量調節器75b、及びスピーカー駆動部76は、第2音声処理器50bと送受話器20との間にこの順番で配置されている。図6には各ポートを図示していないものの、選択部73b、アンプ74b、音量調節器75b、及びスピーカー駆動部76は、音声処理器50のポートP11と、送受話器20のポートP21とを接続するケーブル41(図4参照の途中に配置されている。
第2の変形例において上述したように、本体30から送受話器20へ供給される、マイクロフォン21を駆動するための直流電圧の極性は、メーカーあるいは機種ごとに異なっている場合が多い。そこで、極性切替え器71bは、極性切替え器61と同様に構成されている。
アンプ72bは、受話側のユーザが発した音声を表す音声信号を増幅する。アンプ72bは、アンプ62と同様に構成されている。
選択部73bは、受話側のユーザが発した音声を表す音声信号に対して音声処理を施すか否かを選択する。選択部73bは、選択部63と同様に構成されている。
アンプ74bは、選択部73bから供給される音声信号であって、第2音声処理器50bにより音声処理を施されたあとの合成音声信号、及び、受話側のユーザが発した音声を表す音声信号の何れかを増幅する。
音量調節器75bは、アンプ74bにより増幅された合成音声信号又は受話側のユーザが発した音声の強度を最適レベルに設定する。音量調節器75bは、アンプの一態様である。
スピーカー駆動部76は、スピーカー22を電力駆動する。スピーカー駆動部76は、アンプの一態様である。
電話機1Cによれば、受話側のユーザが発した音声を、送話側のユーザが聞き取る場合であって、受話側のユーザが発した音声が不明瞭だと送話側のユーザが感じた場合に、送話側のユーザが明瞭と感じられるように、受話側のユーザが発した音声に音声処理を施すことができる。したがって、電話機1Cは、送話側のユーザが明瞭と感じられる音声信号を、受話側の電話機に依存することなく、スピーカー22に出力することができる。すなわち、会話情報を明瞭な状態で受話側のユーザへ伝達する事が可能となるだけでなく、受話側のユーザの音声も明瞭に聴き取る事が可能になる。
〔本発明の一態様の別の表現〕
本発明の一態様は、以下のように表現することもできる。
本発明の第1の態様に係る電話機は、送話器及び受話器を備えた送受話器と、本体と、音声処理器とを備えている。第1の態様に係る電話機において、前記音声処理器は、前記送受話器に接続される第1ポートと、前記送話器から前記第1ポートに供給された音声信号を第1音声信号及び第2音声信号に分岐する分岐部と、前記第1音声信号から周波数が400Hz未満の成分である低周波成分を除去するフィルタと、前記フィルタを通過した前記第1音声信号を増幅するアンプと、前記アンプを通過した前記第1音声信号の位相と合うように、前記第2音声信号の位相を補正する位相補正器と、前記アンプを通過した前記第1音声信号と、前記位相補正器を通過した前記第2音声信号と、を加算合成することによって合成音声信号を生成する加算合成器と、前記合成音声信号を前記本体に供給する第2ポートと、を備えている。
上記の構成によれば、1次のホルマント成分が増幅されず、且つ、所定のホルマント成分(例えば2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分)が増幅された合成音声信号を出力することができる。したがって、第1の態様に係る電話機は、受話側のユーザが明瞭と感じられる合成音声信号を、受話側の電話機に依存することなく、出力することができる。
本発明の第2の態様に係る電話機においては、第1の態様に係る電話機の構成に加えて、前記送話器は、アナログ信号である前記音声信号を前記第1ポートに供給し、前記第2ポートは、アナログ信号である前記合成音声信号を前記本体に供給する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、送受話器と本体とを接続する構成として、既存の据え置き型の電話機として広く普及している電話機と同様の構成を採用することができる。したがって、第2の態様に係る電話機は、コストを抑制することができる。
本発明の第3の態様に係る電話機においては、第2の態様に係る電話機の構成に加えて、前記フィルタ、前記アンプ、前記位相補正器、及び前記加算合成器の各々は、アナログ回路により構成されている、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、音声処理器を容易に構成することができ、且つ、音声処理器を小型化することができる。また、フィルタをデジタル回路により構成した場合と比較して、第3の態様に係る電話機は、受話側のユーザがより明瞭と感じられる合成音声信号を出力することができる。
本発明の第4の態様に係る電話機においては、第1の態様~第3の態様の何れかに係る電話機の構成に加えて、前記音声処理器は、前記アンプのゲインを調整する調整器を更に備えている、構成が採用されている。
上記の構成によれば、受話側のユーザの様子に応じて、送話側のユーザ(例えばコールセンタのオペレータ)は、受話側のユーザの意図とは関係なく、且つ、受話側のユーザに気付かれることなく、アンプのゲインを調整することができる。すなわち、合成音声信号における明瞭化の度合いを調整することができる。
本発明の第5の態様に係る電話機においては、第1の態様~第4の態様の何れかに係る電話機の構成に加えて、前記フィルタは、前記分岐部を通過した前記第1音声信号から、前記低周波成分と、周波数が7kHzを超える成分である高周波成分と、を除去する、構成が採用されている。
本願の発明者は、音声信号の明瞭化に寄与する周波数帯域がおよそ400Hz以上7kHz以下であることを見出した。上記の構成によれば、アンプは、音声信号の明瞭化に寄与する周波数帯域に含まれる第1音声信号を増幅するので、明瞭化に寄与しない(又は寄与しにくい)高周波成分を無用に増幅することがない。
本発明の第6の態様に係る電話機においては、第1の態様~第5の態様の何れかに係る電話機の構成に加えて、前記送受話器のポートは、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックであり、前記第1ポート及び前記第2ポートの各々は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックである、構成が採用されている。
電話機において、送受話器と本体とは、両端にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルを用いて接続される場合が多い。上記の構成によれば、広く普及しているケーブルを用いて送受話器、音声処理器、及び本体を接続することができる。したがって、第6の態様に係る電話機は、コストの増大を抑制することができる。
本発明の第7の態様に係る音声処理器は、電話機の送受話器に接続される第1ポートと、前記送話器から前記第1ポートに供給された音声信号を第1音声信号及び第2音声信号に分岐する分岐部と、前記第1音声信号から周波数が400Hz未満の成分である低周波成分を除去するフィルタと、前記フィルタを通過した前記第1音声信号を増幅するアンプと、前記アンプを通過した前記第1音声信号の位相と合うように、前記第2音声信号の位相を補正する位相補正器と、前記アンプを通過した前記第1音声信号と、前記位相補正器を通過した前記第2音声信号と、を加算合成することによって合成音声信号を生成する加算合成器と、前記電話機の本体に接続され、且つ、前記合成音声信号を前記本体に供給する第2ポートと、を備えている。
上記の構成によれば、1次のホルマント成分が増幅されず、且つ、所定のホルマント成分(例えば2次のホルマント成分、3次のホルマント成分、及び4次のホルマント成分)が増幅された合成音声信号を出力することができる。したがって、第7の態様に係る音声処理器は、電話機の送受話器と本体との間に介在することによって、受話側のユーザが明瞭と感じられる合成音声信号を、受話側の電話機に依存することなく、出力することができる。
本発明の第8の態様に係る音声処理器においては、第7の態様に係る音声処理器の構成に加えて、前記音声信号及び前記合成音声信号の各々は、アナログ信号である、構成が採用されている。
上記の構成によれば、据え置き型の電話機として広く普及している既存の電話機を買い換えることなく第8の態様に係る音声処理器を利用することができる。したがって、本音声処理器を導入しようとする企業は、本音声処理器を導入する場合のコストを抑制することができる。
本発明の第9の態様に係る音声処理器においては、第8の態様に係る音声処理器の構成に加えて、前記フィルタ、前記アンプ、前記位相補正器、及び前記加算合成器の各々は、アナログ回路により構成されている、構成が採用されている。
上記の構成によれば、音声処理器を容易に構成することができ、且つ、音声処理器を小型化することができる。また、フィルタをデジタル回路により構成した場合と比較して、第9の態様に係る音声処理器は、受話側のユーザがより明瞭と感じられる合成音声信号を出力することができる。
本発明の態様10に係る音声処理器においては、第7の態様~第9の態様の何れかに係る音声処理器の構成に加えて、前記送受話器のポートは、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックであり、前記第1ポート及び前記第2ポートの各々は、RJ-9規格に準拠したモジュラージャックである、構成が採用されている。
電話機において、送受話器と本体とは、両端にRJ-9規格に準拠したモジュラープラグが設けられたケーブルを用いて接続される場合が多い。上記の構成によれば、広く普及しているケーブルを用いて、第10の態様に係る音声処理器を送受話器及び本体の間に介在させることができる。したがって、第10の態様に係る音声処理器は、既存の電話機を買い換えることなく本音声処理器を利用することができる。したがって、本音声処理器を導入しようとする企業は、本音声処理器を導入する場合のコストを更に抑制することができる。
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、発明を実施するための形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。