本発明の自動分析装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる自動分析装置の概略図である。
図1において自動分析装置は、反応ディスク1に円周状に複数個配置された反応容器2の中に試料と試薬を各々分注して反応させ、この反応溶液を測定する装置である。
反応ディスク1の近くには、分析対象となる試料が収容された試料容器3を1個以上搭載した試料ラック4を搬送する試料搬送機構5が配置されている。
反応ディスク1と試料搬送機構5の間には、回転及び上下動可能な試料分注機構6が配置されている。
試料分注機構6は試料プローブ7を有しており、分注量を操作する機構である試料シリンジ8に接続している。試料プローブ7を試料容器3に収容された試料中に挿入し、試料シリンジ8を作動させて試料を吸引する。試料を吸引した試料プローブ7は回転移動して反応容器2へと試料を吐出することで試料の分注を行う。試料プローブ7の稼動範囲には試料プローブ7の洗浄を行う洗浄槽9が配置されている。
試薬ディスク10の中には複数の試薬容器11を複数個円周状に設置可能である。試薬ディスク10と、図示されていない試薬ディスクを回転させるためのモーター等の駆動機構が、試薬容器移動機構である。
この試薬ディスク10は試薬吸引口(図示なし)が設けられたカバーによって覆われており、試薬容器11を保冷しながら保管する。反応ディスク1と試薬ディスク10の間には、回転及び上下動可能な試薬分注機構12、13が設置されている。試薬分注機構12、13は試薬プローブ14、15を有しており、分注量を操作する試薬シリンジ16に接続している。
試薬プローブ14、15を試薬吸引口から試薬ディスク10にアクセスして、試薬ディスク10に設置された試薬容器11の中に収容された試薬中に挿入し、試薬シリンジ16を作動させて試薬を吸引する。試薬を吸引した試薬プローブ14,15は、回転移動して反応容器2へと試薬を吐出することで試薬の分注を行う。試薬プローブ14,15の稼動範囲には、試薬プローブ14、15の洗浄を行う洗浄槽17,18が配置されている。
反応容器2内の反応溶液を攪拌するための攪拌機構19、20は、回転及び上下動が可能であり、稼動範囲内には攪拌機構19、20を洗浄するための洗浄槽21、22が配置されている。
また、反応ディスク1の周辺には、反応容器2内の反応溶液を介して得られる光源23からの透過光を測光することで反応溶液の吸光度を測定する分光光度計24や、分析に使用した反応容器を洗浄する洗浄機構25等が配置されていて、洗浄機構25には洗浄用ポンプ26が接続されている。
コンピュータ27は、自動分析装置内の上述した各機構の動作を制御すると共に、得られた吸光度から分析対象となる試料中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。コンピュータ27は、記憶部27Aと制御部27Bを備える。記憶部27Aは、半導体メモリ又はハードディスク等の記憶媒体である。制御部27Bはコントローラである。
以上が自動分析装置の一般的な構成である。
上述のような自動分析装置による分析対象試料の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
まず、試料搬送機構5によって反応ディスク1近くに搬送された試料ラック4の上に搭載された試料容器3内の試料を、試料分注機構6の試料プローブ7により反応ディスク1上の反応容器2へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク10上の試薬容器11から試薬分注機構12、13により先に試料を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、撹拌機構19、20で反応容器2内の試料と試薬との反応溶液の撹拌を行う。
その後、光源23から発された光を反応溶液の入った反応容器2に透過させ、透過光の
光度を分光光度計24により測定する。分光光度計24により測定された吸光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介してコンピュータ27に送信する。そしてコンピュータ27にて分析対象試料の所定の成分濃度の演算処理を行い、得られた測定結果を表示部(不図示)等にて表示させる。光源23、分光光度計24、A/Dコンバータ(不図示)は分析機構である。
次に、試薬ディスク10に新規に搭載された試薬容器11を初めてシステムに登録する際、期待した液量があるかどうかを確認するための液面検知、即ち試薬登録について説明する。
図2は従来の、圧力検知を用いた液面検知機構の構成図の一例である。試薬シリンジ16は、駆動機構28とプランジャ29を有し、バルブ30を通してポンプ31に接続されている。試薬シリンジ16は制御部27Bによって制御され、試薬を吸引吐出する。試薬シリンジ16と試薬プローブ14は、分注流路33を介して接続されている。圧力センサ34は、プランジャ29と試薬プローブ14の間に配置されている。なお、試薬プローブ14について説明しているが、試薬プローブ15においても同様の構成である。
圧力センサ34はAD変換器36と接続されている。AD変換器36は、制御部27Bから出力される試薬プローブ14下降終了の信号をトリガーとして、圧力センサ34から出力されるアナログ電圧データをデジタル変換する。
データ抽出部37は、AD変換器36から圧力波形のデジタルデータを受け取り、異常判定部38に引き渡す。異常判定部38は、圧力データを解析し試薬プローブ14が試薬を吸引出来ているか否かを判定する。圧力センサ34、AD変換器36、データ抽出部37、異常判定部38は、試薬液面検知機構である。
なお、制御部27Bはモーター42を制御して試薬プローブ上下駆動機構43を動作させ、試薬プローブ14を上下動させることができる。
試薬を吸引する前に、制御部27Bは、バルブ30を開いて分注流路33と試薬プローブ14の内部をポンプ31から供給されるシステム液39で満たす。次に制御部27Bは、試薬プローブ14の先端が空中にある状態で、駆動機構28によりプランジャ29を下降動作させ、分節空気40を吸引する。
次に制御部27Bは、試薬プローブ14を試薬プローブ上下駆動機構43により試薬容器11の中に下降させ、その先端が試薬に浸かった状態でプランジャ29を所定量下降して試薬をプローブ内に吸引する。これにより、吸引液41として当該試薬が試薬プローブ14内に吸引される。
図3は図2で示した分注機構が試薬ディスク10に新規に搭載された試薬容器11を初めて試薬ディスクに投入する際、即ち試薬登録を行う際に、所定の液量があるかどうかを確認するための液面検知動作の従来のフローチャートである。
図3においては試薬プローブ14の動作フローを例に説明するが、試薬プローブ15の動作フローも同様である。
ステップS31では、試薬容器がセットされた試薬ディスク10が試薬吸引位置へ試薬容器を回転移動する。同時に試薬プローブ14は試薬分注機構12によって試薬吸引位置に移動する。
試薬容器11には試薬充填量情報が記録されたRFIDタグやバーコードが張り付けられている。自動分析装置は、図示されていないRFIDタグやバーコードの読取機構を備えていて、試薬登録時にこれらの記憶媒体から試薬充填量情報を読み取ることができる。
ステップS32では試薬プローブ14は、所定の高さから試薬プローブ上下駆動機構43により試薬吸引位置の試薬容器11内へ下降する。この時の試薬プローブ14の下降は、試薬液面の揺れが静定するのを待つために、試薬ディスク停止後に一定時間(一動作周期時間)待機するか、または試薬プローブの下降速度を分析動作時の下降速度よりも遅くして行われる。以降の説明では、試薬プローブ下降速度を遅くする方式を従来法として説明する。尚、従来法では下降速度を遅らせているため、試薬吸引のタイミングを分析動作時と同様にすると一の動作周期内で試薬登録を終了することができず、自動分析装置がスタンバイ状態の時にしか試薬登録を実行することができない。
ステップS33において、試薬プローブ14は規定位置まで下降した後に停止し、試薬シリンジ16を動作させて規定量の試薬を吸引する。試薬プローブが下降する規定位置、即ち試薬プローブ下降量は、前記試薬容器のRFIDタグやバーコードから読み取られた試薬充填量から算出される液面高さと、充填量誤差、装置間差を考慮した余剰突っ込み量から算出される。また、分析動作中に試薬空吸いが起こるリスクをさけるため、試薬登録時の試薬プローブが下降する規定位置は分析動作中の規定位置よりも高く、即ち試薬プローブの下降量が分析動作中の試薬プローブの下降量よりも少なくなるように設定している。
ステップS34では、試薬プローブ14の吸引中圧力変動データを解析し、下降した試薬プローブが試薬を吸引できたか否かにより、試薬の有無を判定する。吸引できたか否かの判定は、マハラノビス距離、線形判別など、統計学的手法によって実施される。ステップS34において、試薬が吸引された場合、即ち試薬容器11内に試薬があると判
定された場合、ステップS35へ進む。
ステップS35では試薬プローブ14は試薬プローブ上下駆動機構43により上限点に上昇する。
ステップS36では、試薬の充填量に応じた試薬のテスト可能回数および試薬の残量を記憶部27Aに登録する。
ステップS34において、試薬が吸引されない場合、即ち試薬容器11内に試薬が規定量充填されていないと判定された場合は、ステップS37に進み、充填量不足としてアラームを発生するなどの異常処理が行われる。
図4は従来の、静電容量検知を用いた液面検知機構の構成図の一例である。プローブ、シリンジといった基本的な構成は図2と同じである。また、制御部27Bが試薬プローブ上下駆動機構43を制御し、試薬プローブ14を上下動させることができることも図2と同様である。
試薬プローブ14には静電容量検出部44が接続されている。静電容量検出部44は試薬プローブ14の静電容量を出力できる。静電容量検出部44は例えば、制御部27Bが試薬プローブ14を液面へ下降開始させる信号をトリガーとして、静電容量値を出力する。
静電容量検出部44と異常判定部45は、試薬液面検知機構である。
図5は図4で示した分注機構が、試薬登録を行う際に所定の液量が試薬容器にあるかどうかを確認するための液面検知動作の従来のフローチャートである。
ステップS51は図3のS31と同様である。
ステップS52では、試薬プローブ14は、静電容量検出部に静電容量値を出力させた状態で下降し、試薬プローブ先端が液面に触れて静電容量が閾値を超えるまで、試薬プローブ上下駆動機構43により下降を続ける。
ステップS53では、試薬プローブ14の下降動作中に静電容量検出部44の出力する静電容量変化が閾値を上回ると、即ち液面信号が検知されると、制御部27Bが停止信号を出力し、下降動作が停止する。
従来法では試薬プローブの下降中に静電容量を継続してモニターしており、誤検知を防止のために液面が静定した後に試薬プローブの下降を開始するか、試薬プローブの下降速度を遅らせていた。そのため、一動作周期内で試薬登録を終了することができず自動分析装置がスタンバイ状態の時にしか試薬登録を実行することができなかった。
ステップS54では、試薬プローブ14の下降動作停止から所定の時間経過後、制御部27Bによる静電容量値の再確認、即ち試薬プローブが液面に到達しているかの判定が実施され、判定結果が試薬プローブ14の停止高さと共に異常判定部45に出力される。なお、本説明では試薬液面の泡等による誤検知を避ける為に所定の時間後に再確認、即ち液面到達の判定を行うとしているが、試薬プローブ下降動作の停止と同時に再確認、即ち液面到達の判定を行ってもよい。
異常判定部45で、試薬プローブ14が液面に触れていると判定され、かつ試薬プローブ14が停止している高さ、即ち試薬液面の高さが前記試薬容器のRFIDタグやバーコードから読み取られた試薬充填量から算出される液面高さの規定範囲内であると判定された場合は、液有及び異常下降無として、ステップS55に進む。
ステップS55では試薬プローブ14を試薬プローブ上下駆動機構43により上限点まで上昇させる。
ステップS56ではステップS53での試薬プローブ14の下降動作量から試薬液面高さを求めて試薬のテスト可能回数を記憶部27Aに登録する。
ステップS54において、異常判定部45で試薬プローブ14が液面に触れていないと判定された場合、または試薬プローブ14が停止している高さ、即ち試薬液面の高さが前記試薬容器のRFIDタグやバーコードから読み取られた試薬充填量から算出される液面高さの規定範囲内でないと判定された場合は、液なしまたは異常下降ありとしてステップS57に進み、アラームを発生する等の異常処理を行う。
(実施例1)
次に、本発明における試薬の液面検知について説明する。本発明における試薬登録時の液面検知は、自動分析装置の分析動作の一の動作周期中に行うことが可能である。試薬登録とは、ユーザーが新しい試薬容器を試薬ディスク内に投入する際、その後の分析動作で正確な試薬分注を行うために、試薬容器内の充填量を確認し、試薬プローブが試薬液面に接触するまでに必要な下降量を算出し、試薬の残量を記憶部に登録する作業である。
図6は、本発明における圧力検知を用いた液面検知機構の構成図である。
図2との違いは制御部27BとAD変換機の間にタイミング検出部35が接続されている点である。タイミング検出部35は、制御部27Bを監視し、試薬シリンジ16の動作終了タイミングと動作開始からの経過時間を取得する機能を有している。タイミング検出部35は、試薬シリンジ16が停止した後、AD変換器36に対してデジタル変換を実施するよう指示する。AD変換器36は、その指示に応じて、圧力センサ34から出力されるアナログ電圧データをデジタル変換する。圧力センサ34、AD変換器36、データ抽出部37、異常判定部38は、試薬液面検知機構である。また、制御部27Bは試薬プローブ上下駆動機構43を制御し、所定のタイミングで試薬プローブ14を上下動させることができる。
図7は図6で示した分注機構が試薬登録時の液面検知を実施する際のフローチャートである。本発明における液面検知方式では、試薬吸引タイミングの制御によって試薬登録時の液面検知所要時間を短縮し、分析動作時と同じ単位動作周期内で実施可能としている。
ステップS71は従来法における図3のステップS31と同様である。
ステップS72は従来法における図3のステップS32と異なり、試薬プローブ14は試薬プローブ上下駆動機構43により分析動作中と同じ速度で下降する。なお、試薬プローブ14の下降速度は一動作周期時間内で試薬登録が終了できる条件、即ち下記のステップS73で試薬吸引が完了できる条件であれば、任意に設定することができる。
ステップS73では従来法図3のステップS33と同様に試薬シリンジ16を作動させて試薬を吸引する。
試薬プローブ14が下降する規定位置、即ち試薬プローブ14の下降量は図3と同様である。即ち、試薬容器のRFIDタグやバーコードから読み取られた試薬充填量から算出される液面高さと、充填量誤差、装置間差を考慮した余剰突っ込み量から算出される。
また、分析動作中に試薬プローブによる試薬の空吸いが起こるリスクをさけるため、試薬登録時の試薬プローブが下降する規定位置は、分析動作の開始サイクルで試薬プローブが下降する規定位置よりも高く、すなわち試薬プローブ下降量は分析動作中の下降量よりも少なく設定している。いいかえると、試薬登録時に算出された液面高さに対して試薬プローブが下降する際の余剰突っ込み量は、分析動作時に算出された液面高さに対して試薬プローブが下降する余剰突込み量よりも少なく設定されている。
従来法と異なる点は、試薬シリンジ16が動作可能なタイミングを、分析動作中に試薬シリンジ16が動作可能なタイミングと同じにしているという点である。液面検知動作時に吸引する試薬は、分析の必要がないため、分析動作中の試薬分注のための最小の試薬吸引量よりも少ない試薬吸引量に設定可能である。液面検知動作時に吸引する試薬量は試薬液性、試薬プローブ流路長、流路径、シリンジ動作の加減速パターンによって異なる。一方、試薬吸引量が多いほど試薬吸引有無の誤判別率は低下する傾向を持つ。この判別方式において、正常に吸引できたか否かの判断は、吸引時の圧力データを統計学的手法で解析することで行われる。この時に用いられる判別パラメータは、前記の試薬液性、試薬プローブ流路長、流路径、シリンジ動作の加減速パターンといった条件を網羅した圧力データから算出され、自動分析装置のコンピューター27の記憶部27Aにあらかじめ格納させておく。
液面検知、すなわち試薬有無を検知するための試薬吸引時間を最短にするための試薬吸引量は、前記判別パラメータを用いて収集データを判別した時、あらゆる条件で誤判別がない試薬吸引量の最小値を求めることで得られる。なお、試薬吸引量を試薬の種類によって異なる量に設定できるように、即ち試薬の種類によって試薬吸引量を可変にできるようにしてもよい。
図6に示した構成ではタイミング検出部35が試薬プローブ下降動作終了後から試薬吸引動作開始までの時間を監視しており、試薬シリンジ16に割り当てられている動作時間内の任意のタイミングで試薬シリンジ16に吸引動作を開始させることができる。
従って、試薬シリンジ16の動作時間内の前半では液面静定の時間を確保するために待機させ、後半で液面検知のための試薬吸引を行うといった動作が可能となる。即ち、試薬液面が静定するまで、試薬吸引動作を開始するタイミングを遅くするように制御することができる。これにより、一の単位動作周期時間内で、正確な試薬液面の検知を行うことが可能となる。
液面静定時間を最長に確保するため、単位動作周期内で試薬シリンジ16に割り当てられる動作時間の終了時間、即ち試薬プローブが上限点に上昇を開始するタイミングにあわせて液面検知のための試薬吸引が終了するように制御するのが望ましい。
なお、ステップS72で説明したように、試薬プローブの下降動作は、液面検知のための試薬吸引を開始する前に試薬プローブが試薬有無を検知するための所定の高さに到達するように制御すればよい。
ステップS74、S75、S76は従来法図3のステップS34、S35,S36と同様である。
ステップS74において、試薬容器11内の所定の高さに試薬が無いと判定された場合はステップS77に進み、充填量不足としてアラームを発生させるなどの異常処理が行われる。
本方式は、前記のとおり分析動作中と同じ動作周期内で行うため、異常処理を行った場合でもステップS78においてステップS75と同様のタイミングで試薬プローブを上限点に上昇させ、ステップS71の試薬ディスク、プローブ回転動作に戻ることができる。
本方式では、分析動作中と同じ動作周期内で液面検知を行うことができるため、異常処理後のリトライ動作のスケジューリングが容易に設計できる。リトライ動作の際は、ステップS72における試薬プローブ14の下降量を、一回目のステップS32における下降量より増やしても良い。即ち、S74の規定位置を、一回目のステップよりも低くしてもよい。ただし、分析動作の開始時に試薬プローブ14が下降する規定位置よりは低くしないこととする。もしくは、リトライ動作により検出された試薬液面を基準にして、分析開始時の試薬プローブが下降する余剰突込み量を追加してプローブ下降量を設定してもよい。
また、このリトライ動作は、異常処理が行われた次の動作サイクルで実行しても良いし、次のサイクルで他の動作を実行してから、それ以降の動作サイクルで実行してもよい。
このリトライ動作で試薬が規定量充填されていると確認された場合には、試薬プローブ下降量の増加分、即ち低下した試薬プローブの規定位置の高さから試薬残量および測定可能回数を計算して記憶部27Aに登録する。
リトライ動作でも試薬ボトル11内に試薬が確認できなかった場合は、図示していないがS77において充填量不足としてアラームを出して、当該試薬容器の登録を中止する。リトライ動作を許容する回数は、ユーザーが指定することができる。
後述する実施例2に対する利点は、吸引時の圧力変動をデータとして判定するため、試薬プローブが試薬容器のキャップなどに接触していても、誤検知しない点である。
分析動作中において、ラック4に搭載された試料容器3内の試料は、試料搬送機構5によって反応ディスク1近くの試料分注位置に搬送される。搬送後、試料は試料プローブ7により反応ディスク1上の反応容器2へと分注される。
試薬登録を分析動作に割り込ませた場合、この時点で当該試料の分注動作はストップし、試料容器3は試料搬送機構5上に待機する。従来方式では、分注済みの試料に対して必要な試薬を全て分注したあと、試薬登録動作を開始した。試薬登録動作終了まで、試料容器3は試料搬送機構5で待機し続けるため、時間経過とともに試料中の水分が蒸発し、試料は濃縮される。濃縮された試料溶液内ではたんぱく質の凝集など様々な変化が起こり、正常な分析結果が得られなくなる恐れがある。そのため、試薬登録動作は迅速に終了する必要があり、分析動作と同じ動作周期内で迅速に試薬登録を行うことが出来る本発明は非常に有効である。
(実施例2)
図8は、本発明における静電容量検知を用いた液面検知方式の構成図である。
図4との違いは、制御部27Aとモーター42の間にタイミング検出部35が接続されている点である。タイミング検出部35は、制御部27Bを監視し、静電容量検出部44からの出力のモニターを開始するタイミング、異常判定部に異常判定を行わせるタイミングと動作開始からの経過時間とを取得する機能を有している。静電容量検出部44と異常判定部45は、試薬液面検知機構である。
制御部27Bは試薬プローブ上下駆動機構43を制御し、所定のタイミングで試薬プローブ14を上下動させることができる。
図9は上記図10で示した分注機構が試薬登録時の液面検知を実施する際のフローチャートである。
また、ステップS81、S83、S84、S85、S86、S87の説明は、対応する図5のステップS51、S52、S53、S54、S55、S56と同じである。図5と異なる点は試薬プローブ上下駆動機構43による試薬プローブ14の下降動作が二段階に分かれていることである。
ステップS82では試薬プローブを例えば試薬液面上5mmの高さまで下降させ、所定の時間を経過後にステップS83で静電容量値をモニターしながら試薬プローブ14を液面まで下降させる。ステップS82における液面上からの高さは、試薬ディスク半径、回転速度、回転量、試薬液性によって最適値が異なる。
本実施例では静電容量値のモニターを試薬プローブの下降動作2にあわせて開始しているが、下降動作1の開始とともにモニターを開始してもよいし、所定の高さまで試薬プローブを下降させて静止した後に、モニターを開始してもよい。
なお、本実施例では下降動作のステップを二段階にしたが、液面静定後に試薬プローブが想定される試薬液面高さに到達するように制御すればよく、試薬プローブの下降開始時間を遅らせる、試薬プローブの下降速度を遅くする、または試薬プローブ下降動作を三回以上に分けるような制御も可能である。
本実施例では、試薬容器から反応容器に試薬を分注する試薬分注のための動作周期で試薬プローブを下降させる場合に比べて、試薬吸引動作が不要な為に、より遅いタイミングで試薬プローブが液面を検知して停止し、その後液面到達を判定するように制御することができる。これにより、一の単位動作周期時間内で、正確な試薬液面の検知を行うことが可能となる。
液面静定時間を最長に確保するため、単位動作周期内で試薬シリンジ16に割り当てられる動作時間の終了時間、即ち試薬プローブが上限点に上昇を開始するタイミングにあわせて液面到達の判定を行うように制御するのが望ましい。なお、試薬の種類(液性)によって、試薬液面検知機構による液面到達を判定するタイミングを変更して設定できるように、すなわち液面到達を判定するタイミングを可変とすることもできる。
S85で所定の高さに試薬がないと判定されて異常処理おこなった後に、ステップS89で試薬プローブを上昇させて、次以降の動作周期でリトライ動作を行える点は、実施例1と同様である。本実施例においてもリトライ動作が可能であり、リトライ動作の場合の下降動作は、最初の下降動作と同じでも良く、最初の下降動作よりも遅く想定される液面高さに到達するようにしてもよい。分析動作中と同じ動作周期内で液面検知を行うことができるため、リトライ動作のスケジューリングが容易に設計できる点は実施例1と同様である。
実施例1と比較した時の利点は、試薬プローブ下降前後の静電容量の変化で判定を行うため、実施例1のように統計学的手法による解析よりも短い時間で判定結果が出力できる点である。
図10は、従来法の図2、図3と、実施例1の図6、図7における液面検知動作タイミングを比較した図である。
自動分析装置の一の分析動作周期としては、図7のステップS71の試薬ディスク、プローブ回転動作時間、ステップS75の試薬プローブ上限点上昇動作時間を含むが、図10においては、従来法と比較するために、試薬ディスク回転が停止してから、試薬プローブが上限点異動を開始するまで、すなわち試薬プローブの下降および試薬吸引が可能な時間に注目している。試薬吸引が可能な時間は、試薬シリンジの動作が割り当てられている時間である。
図10の試薬プローブ下降時間は、図3、図7におけるステップS32、S72、液面検知時間は、ステップS33、S73に相当する。
前記のように、圧力検知方式を用いた液面検知動作では、試薬登録時の試薬プローブの下降量を分析動作中の試薬プローブの下降量よりも少なく、すなわち試薬登録時の試薬プローブが下降する際の余剰突っ込み量を、分析動作時の試薬プローブの余剰突っ込み量よりも少なくしている。従って試薬液面の揺れが液面検知結果に与える影響は、分析動作中よりも大きくなる。
従って、従来法では試薬ディスク回転停止後の試薬容器内の液面の揺れによる影響を軽減する為に、試薬プローブの下降速度を分析動作中の試薬プローブの下降速度よりも遅く設定している。そのため、分析動作時と同様の試薬吸引のシリンジ動作割り当て時間を設けると、単位動作周期内で試薬登録を完了させることができなかった。
図10における最短液面静定時間は、液面検知が可能となるまでの最短の時間であり、液面の揺れ高さ等のパラメータによりで定義される。
本実施例における分析動作中の試薬登録のための液面検知方式では、プローブの下降動作は分析動作中と同じであり、液面が静定するまでの時間を、試薬吸引動作のタイミングを遅らせることで確保している。すなわち、試薬容器が試薬ディスクに搭載されて最初に行う試薬液面の有無の検知を行う動作周期内で、試薬有無を検知するための試薬吸引動作を開始するタイミングと、試薬容器から反応容器に試薬を分注する試薬分注動作を行う動作周期内で、試薬プローブが試薬容器から試薬を分注するために試薬吸引を開始するタイミングとを比較すると、試薬有無を検知するための試薬吸引動作を開始するタイミングが遅いように制御部27Bが制御している。
分析動作中の試薬吸引動作は様々な試薬、分析項目に対応するため、想定されうる最大分注量が実施可能な時間を確保しておく必要がある。一方、試薬登録時に吸引される試薬は分析に使用されない。そこで、液面検知動作時に吸引する試薬は、分析動作中の試薬分注のための最小の試薬吸引量よりも少ない試薬吸引量に設定することが可能である。例えば、様々な試薬で誤判定の起きない最小吸引量に設定することができる。なお、試薬有無を検知するための吸引量を、試薬種類毎に異なる値に設定できるように、即ち試薬の種類によって試薬の有無を検知するための試薬吸引量を可変にできるようにしてもよい。
図10においては、液面検知のための試薬吸引の終了時間と、試薬吸引が可能な時間の終了時間、即ち試薬プローブ14が上限点上昇を開始する時間をあわせている例を示している。
なお、試薬プローブの下降動作は、試薬登録時の液面有無の検知のための試薬吸引を開始する前に終了していればよく、試薬プローブの下降開始時間を遅らせる、試薬プローブの下降速度を遅くする、または試薬プローブ下降動作を二段以上にするような制御も可能である。
図11は、従来法の図4、図5と、実施例2の図8、図9における液面検知動作タイミングを比較した図である。
図11は静電容量変化を検知する手法であるため、液面有無の判断に試薬吸引は行わないが、タイミングを比較する為に、図10と同じように試薬ディスク回転が停止してから、試薬プローブが上限点異動を開始するまで、すなわち試薬プローブの下降およびシリンジの駆動による試薬吸引動作が可能なタイミングを記載している。
従来の静電容量変化検知方式では、静電容量値は下降動作中にモニターされ続ける。従来法においては、正確に液量を検知するため、最短液面静定時間後に、即ち所定の時間を経過後に、試薬プローブを下降開始させていた。そのために、単位動作周期時間内に試薬登録を完了することができなかった。なお、従来においても試薬プローブの下降速度を上げることで液面検知動作を単位動作周期内に収めることは可能であるが、その場合はモーターの動作パターンを別に設ける必要がある。動作パターンの登録数に制限がある場合は他の動作を削る必要があるなど、動作設計を行う上で障害となった。
一方、本実施例2では、タイミング検出器35を設けることにより、最短液面静定時間前に試薬プローブ下降1を開始し、一度プローブの上下動を停止させ、最短液面静定時間後、即ち所定の時間を経過後に試薬プローブ下降2を開始し、試薬プローブ下降2の間のみ静電容量変化をモニターして判定する方式とした。
下降動作を二段階にすることで分析動作中の液面検知動作を分析動作の単位動作周期内に収めることが容易となった。
なお、前述のように本実施例では下降動作のステップを二段階にしたが、最短液面静定時間後に試薬プローブが想定される試薬液面高さに到達するように制御すればよく、試薬プローブの下降開始時間を遅らせる、試薬プローブの下降速度を遅くする、または試薬プローブ下降動作を三段階以上にするように制御してもよい。
また、実施例1のように予め試薬プローブを所定の位置まで下降させておき、所定の時間経過後に静電容量のモニターを開始するようにしてもよい。
図11では、試薬プローブの高さが前記試薬容器のRFIDタグやバーコードから読み取られた試薬充填量から算出される液面高さになる時間と、シリンジの動作による試薬吸引可能な時間の終了タイミング、即ち試薬プローブ14が上限点上昇を行うタイミングをあわせるように制御しているが、最短液面静定時間の経過後、即ち所定の時間を経過後に所定の液面高さに到達するように制御すればよい。また、液面を検知して試薬プローブの動作を停止するタイミングにあわせて静電容量の確認、即ち液面到達の判定をしてもよいし、液面到達による試薬プローブの停止から所定の時間を経過したタイミングで液面到達の判定を行ってもよい。
ここで、試薬容器から反応容器に試薬を分注するための試薬吸引動作を行う動作周期内で液面検知機構により静電容量検知による液面到達を判定するタイミングと、試薬容器が試薬ディスクに搭載されて最初に行う試薬液面検知を行う動作周期内で液面検知機構による静電容量検知による液面到達を判定するタイミングを比較すると、試薬容器が試薬ディスクに搭載されて最初に行う試薬液面検知で液面到達を判定するタイミングが遅いように、制御部27Bが制御している。
図12は、本発明の実施例1と2の試薬液面検知動作と、試薬分注のための試薬吸引を行う単位動作周期についてのタイムチャートを比較した図である。
本発明における一の動作周期は、(a)試薬プローブ、試薬ディスク回転タイミング、(b)試薬プローブ下降、試薬プローブ吸引タイミング(c)試薬プローブ上限点上昇タイミング、からなる。
このうち、(a)試薬プローブ、試薬ディスク回転タイミング、(c)試薬プローブ上限点上昇タイミング、は、試薬液面検知のための単位動作周期内と、試薬分注ための単位動作周期内で共通である。(b)で示された試薬プローブ下降、試薬プローブ吸引タイミング内における制御が、図10、図11において詳しく説明されたものである。
試薬分注のための試薬吸引のための動作周期における、試薬プローブ下降タイミングを(d)、試薬プローブ吸引タイミングを(e)に示す。試薬プローブの下降動作は、試薬プローブの上限点上昇タイミングまで可能であることを、(d)の試薬プローブ下降タイミングに破線で示している。
従来の試薬分注のための試薬吸引動作周期では、試薬プローブの下降が終了するタイミングにあわせて試薬プローブによる試薬吸引動作を開始している。この場合、(f)に示すように、実際に試薬プローブによる吸引動作が終了するタイミングは、試薬の種類や分注量等により異なっている。(f)における実線は、所定の量の試薬吸引が終了したタイミングを例示しており、破線は試薬プローブによる試薬吸引動作が可能なタイミングであることを示している。試薬吸引動作が可能なタイミングとは、試薬シリンジの動作が割り当てられているタイミングである。
一方、本発明の実施例1による試薬登録のための試薬有無の検知を行う場合は、(g)に示すように、試薬プローブの上限点上昇タイミングの始まりにあわせて液面検知のための試薬吸引が終了するように制御している。ここで、液面が静定した後に試薬有無を検知するための試薬吸引を開始できれば、試薬吸引が終了するタイミングは自由に変更することができる。(g)における実線は液面有無検知のために試薬プローブが動作しているタイミングの例示であり、破線は試薬プローブが動作可能なタイミングの例示である。
ここで、試薬分注のための動作周期において試薬プローブが試薬吸引を開始するタイミングと、試薬登録のための動作周期において試薬プローブが試薬吸引を開始するタイミングを比較すると、試薬登録のために試薬有無を検知するための動作周期において試薬プローブが試薬吸引を開始するタイミングが遅くなっている。
なお、本図では記載していないが、試薬登録のための液面有無を検知するための動作周期では、試薬の吸引動作が可能な範囲で、試薬プローブ下降の開始又は/及び終了するタイミングを遅らせてもよい。
また、試薬分注のための試薬吸引を行う動作周期においても、試薬プローブの上限点上昇時間の始まるタイミングにあわせて試薬吸引が終了するように制御してもよい。図示してしないが、この場合は試薬の種類や分注量によって、試薬分注のための試薬吸引を開始するタイミングが異なることになる。
従来の試薬分注のための動作周期における静電容量変化による液面検知では、(h)に示すように液面検知のためのモニターは、試薬プローブの下降開始タイミングと共に開始している。液面検知により試薬プローブの下降を停止させ、液面到達を判定した後に、試薬吸引動作のためにさらに所定の高さ試薬プローブを下降させ、試薬吸引動作を行っている。
本発明の実施例2では、(i)に示すように試薬登録のための静電容量変化による液面検知の出力、モニターの開始を所定の時間まで遅くし、試薬プローブ上限点上昇時間の始まるタイミングにあわせて液面到達の判定を行っている。
すなわち、試薬分注のための動作周期における液面到達検知の判定タイミングよりも、試薬登録時の試薬液面検知のための動作周期における液面到達検知の判定タイミングが遅くなっている。
図11では、試薬プローブの2回目の下降開始と共に液面モニターを開始する例を示しているが、液面が静定した後に試薬プローブが液面に到達するか、液面検知のモニターが開始されるかのいずれかを制御すればよく、所定の高さまでプローブを下降させ、所定時間を経過した後に液面検知モニターを開始してもよいし、試薬プローブの下降速度を遅くして液面到達のタイミングを遅くしてもよい。いずれにしても、最短液面静定時間が経過した後に、液面到達検知の判定を行うように制御すればよい。
図13は、本発明の実施形態の自動分析装置にかかる試薬容器11の断面概略図である。試薬容器11には試薬容器蓋46が取り付けられており、その下部に液揺れを抑制するための筒状のチムニー47を入れた構成が主流である。本発明においては液揺れが落ち着いてから液面検知を行うものであり、試薬容器蓋46を取り外して使用する試薬容器やチムニー47無しの試薬容器に対しても正確に液面検知を行うことが可能となる。