JP7103828B2 - 粉体材料の造粒固化処理 - Google Patents

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本発明は、造粒物の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させ、造粒物同士の固着を抑制することで造粒物の一体化を防止する粉体材料の造粒固化方法に関する。
飛散しやすい燃焼灰及び製鋼ダスト等の粉体材料をリサイクルする方法として、適度な水、重金属等の有害物質の溶出を抑える薬剤、及び少量の生石灰あるいはセメント等の固化材を混合することで造粒固化する方法がある。
この様な造粒固化処理では、粉体材料はハンドリング上、問題にならない形状にすることができ、燃焼灰は施工性に優れた埋め戻し用の資材、肥料、融雪剤、若しくは土壌改良用の資材となり、製鋼ダストについては含有される金属成分を回収するための塊原料となる。
一般的に造粒固化処理においては、使用場面での施工性が重要になることから製造した造粒物は、砂利や砂のようにある程度の流動性を備えていることが求められている。一方で、造粒物の形状保持を目的に添加する生石灰やセメント等の固化材の作用もあり、養生中に堆積させた造粒物同士が固着し一体化することがある。そのため、実際の運用現場では、セメント等における初期強度の発現が接水から約24時間後であることを考慮して、造粒物がある程度の硬さになる製造の翌日に、横持ち移動も兼ねホイルローダー等の重機を用いて物理的な作用を加え、造粒物の堆積物を一度崩すことで造粒物同士の固着を防止し堆積物が一体化しないようにしている。
特開2012-076009号公報 特開2016-175030号公報
一般的に、燃焼灰や製鋼ダスト等の粉体は、発生過程で脱硫を目的とした石灰の投入処理、更には高温下に曝されるため、生石灰、無水石膏、硅酸、アルミナ及び金属酸化物等の成分が生成され含有していることが多い。
これらの成分は、接水することで一部が溶け出し、再結晶化する過程で強固な固化体を作ることがある。この反応は、セメントの硬化反応よりも急激で、造粒直後から発熱を伴いながら数時間以内に起こる。そのため、ホイルローダー等の重機を用いて堆積物を崩す工程を製造の翌日に行う従来の方法では、硬化反応の進行が速すぎるために重機作業を行う前に堆積状態で造粒物が完全に一体化してしまい、流動性のあるハンドリングの良い造粒物を製造できないという課題があった。
また、埋め戻し用の資材、肥料、融雪剤、あるいは土壌改良用の資材の中には、施用後に土壌中で徐々に崩壊し馴染んで行くことが必要で、形状のみならず、適度な崩壊性を要求されるものがあるが、従来の造粒固化処理では、粉体材料自身が有する硬化反応を制御できないために、用途に応じた硬さを備える造粒物を製造することが出来なかった。
そこで本発明の目的は、造粒物の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させるとともに、造粒物同士の固着を防止させる造粒物製造方法を提供することにある。
具体的には、上記課題は、
燃焼灰や製鋼ダスト等の自硬性を有する粉体材料を造粒固化処理する方法において、
前記粉体材料に可溶性の糖あるいはカルボン酸等の有機化合物を添加して造粒物を混合造粒する工程1と、
前記工程1のあとに、前記造粒物に対して物理的作用を加える工程2と、からなり、
前記工程1によって、前記造粒物の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させ、
前記工程2によって、さらに、前記造粒物同士の固着を防止することを特徴とする粉体材料の造粒固化方法を提供することによって解決される。
また、燃焼灰や製鋼ダスト等の自硬性を有する粉体材料を造粒固化処理する方法において、
前記粉体材料を造粒物に造粒する工程3と、
前記工程3によって、造粒された前記造粒物の表面に可溶性の糖及びカルボン酸等の有機化合物を付着させる工程4と、
前記工程4のあとに、前記造粒物に対して物理的作用を加える工程5と、からなり、
前記工程4によって、前記造粒物の表面の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させ、
前記工程5におって、さらに、造粒物同士の固着を防止することを特徴とする粉体材料の造粒固化方法を提供することによっても解決される。
本発明によれば、造粒物の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させるとともに、造粒物同士の固着を防止させる造粒物製造方法を提供することができる。
本発明の添加物にセメント用凝結遅延剤を用いた際の硬化反応に伴う発熱の経時変化を示した図である。 本発明の圧壊強度の経時変化を示した図である。 図1の添加物に廃糖蜜を用いた際の硬化反応に伴う発熱の経時変化を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面と表に基づいて詳細に説明する。但し、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
〈粉体材料〉
本発明で用いる粉体材料は、廃棄物の焼却施設等から排出される燃焼灰、バイオマスあるいは石炭等を燃料とする発電施設から排出される燃焼灰、製鉄所の転炉あるいは電気炉から排出される製鋼ダスト等で、生石灰、無水石膏、硅酸、アルミナ、金属酸化物等の成分の何れか2種類以上を含有しているものが挙げられる。
〈有機化合物〉
本発明で用いる有機化合物は、セメントの凝結を遅延する効果が認められている物質が好ましい。例えば、可溶性の糖は、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース等の糖類が挙げられる。これら可溶性の糖は、単独で含有させても良いし、2種類以上の混合物として含有させても良い。
また、精糖工程で排出される廃糖蜜等、これら可溶性の糖が成分に含まれているものであっても良い。
〈カルボン酸系有機化合物〉
本発明で用いるカルボン酸系有機化合物としては、グルコン酸、アスコルビン酸、クエン酸等が挙げられ、これらカルボン酸は、単独で含有させても良いし、2種類以上の混合物として含有させても良い。
また、セメントの凝結遅延剤として市販されているグルコン酸を含む薬剤を使用することもできる。更に、これらカルボン酸系有機化合物と可溶性の糖を組み合わせて使用することも可能である。
〈造粒硬化方法〉
本発明の造粒固化方法では、造粒物について、埋め戻し用の資材、肥料、融雪剤、あるいは土壌改良用の資材等の様に施用後に土壌中で徐々に崩壊し馴染むことが求められる場合は、粉体材料に添加する可溶性の糖あるいはカルボン酸系有機化合物の添加量を調整することで、一定時間後の造粒物の硬さ(圧壊強度)を低下させることができる。
本発明の造粒固化方法では、ドラム型やパン型の造粒機を用いる転動造粒、回転羽根で攪拌しながら造粒する高速攪拌造粒等の方法が挙げられ、特に、複数材料を混合しながら造粒できる高速攪拌造粒による方法が好ましい。
一旦造粒物とした後に、当該造粒物の表面に付着させるように可溶性の糖あるいはカルボン酸等の有機化合物を添加する手段としては、造粒機内で散水あるいは噴霧しても良く、造粒機から別の工程に移送する過程で散水あるいは噴霧しても良い。例えば、排出口側に傾斜させた回転ドラムによる移送過程で散水あるいは噴霧することが出来る。また、可溶性の糖あるいはカルボン酸等の有機化合物を適宜水で希釈することで、散水あるいは噴霧が行いやすくなる。
実施に当たっては、小型の造粒試験機等を用い、予め粉体材料に水のみを加えて造粒物を作製し、接水直後から概ね24時間以内に発熱のピークが観察されることを確認しておくことが好ましい。
この際、24時間以内に発熱のピークが見られない、あるいは24時間以降にピークが観察される場合は、本発明で示す可溶性の糖あるいはカルボン酸系有機化合物を添加しなくても、造粒固化処理の翌日に重機等による造粒堆積物の崩し作業が十分行えるためである。
さらに、小型の粒試験機等を用いて造粒試験を行い、予め可溶性の糖あるいはカルボン酸等の添加量とピークの遅延時間の関係を確認しておくことで、重機等による造粒堆積物の崩し作業の予定時間に合わせた造粒固化処理の工程が組めるようになる。
本発明では、完全に硬化する前の堆積した造粒物に物理的作用を加えるが、これは造粒物同士が完全に固着する前に、造粒物同士の接触部を切り離すことが目的となる。
したがって、堆積した造粒物に物理的作用を加える方法としては、ホイルローダー等の重機以外に、堆積ヤードに設置した物理的な衝撃、振動を加えることが出来る振動板、稼動床、切返し装置等の機械設備が使用できる。
(実施例1)
表1は、試験に対して燃焼灰、水、セメント用凝結遅延剤の添加量と割合を示した表である。また、図1は、本発明の添加物にセメント用凝結遅延剤を用いた際の硬化反応に伴う発熱の経時変化を示した図、図2は、本発明の圧壊強度の経時変化を夫々示した図である。
実験例1-3として、表1に示す配合にて、燃焼灰にグルコン酸を主成分とするセメント用凝結遅延剤(GCPケミカルズ製、商品名;リカバー)を添加し造粒物を製造した。
次に、得られた造粒物に温度計測センサーを挿入し、硬化反応に伴う発熱の経時変化を確認した。
また、比較例1として、セメント用凝結遅延剤を添加しなかった他は同様に操作して造粒物を製造し、硬化反応に伴う発熱の経時変化を確認した。
Figure 0007103828000001
その結果、図1に示すように、セメント用凝結遅延剤の添加量に応じて造粒物の発熱ピークが遅延することが分かる。つまり、硬化反応が遅延していることが分かる。
また、図2に示すように、一定時間毎に養生中の造粒物の圧壊強度を測定した結果、比較例1、及び凝結遅延剤添加量の少ない実験例1に比べて、セメント用凝結遅延剤の添加量が多い実験例2、実験例3では添加割合が多いほど圧壊強度の発現が遅れていることが分かる。
(実施例2)
表2は、試験に対して燃焼灰、水、廃糖蜜の添加量と割合を示した表である。また、図3は、図1の添加物に廃糖蜜を用いた際の硬化反応に伴う発熱の経時変化を示した図である。
実験例4-5として、高速攪拌型造粒ミキサ(商品名:ペレガイアVZ-100、株式会社北川鉄工所製)を使用し、表2に示す配合にて燃焼灰にスクロースを主成分とする廃糖蜜(日本甜菜製糖株式会社製)を添加し、造粒物を製造した。
次に、得られた造粒物に温度計測センサーを挿入し、硬化反応に伴う発熱の経時変化を確認した。
また、比較例2として、廃糖蜜を添加しなかった他は同様に操作して造粒物を製造し、硬化反応に伴う発熱の経時変化を確認した。
Figure 0007103828000002
その結果、図3に示すように、廃糖蜜の添加量に応じて造粒物の発熱ピークが遅延することが分かる。つまり、硬化反応が遅延していることが分かる。
実際に造粒処理から5.5時間経過後の養生中の比較例2の造粒物は一体化し、シャベルの先端が貫入しなかったが、実験例5の造粒物はシャベルの先端が貫入し、ハンドリングの良い状態に崩すことが出来た。
(実施例3)
表3は、試験に対して造粒配合、遅延剤希釈用の水、表面付着用凝結遅延剤を示した表、表4は、試験に対して9.5mmの篩を通過した造粒物の割合を夫々示した表である。
実験例6として、表3に示す造粒配合にて粒径3mm~10mm程度からなる造粒物を作製した後、実験例6として造粒に必要な水量の1%の水で希釈したセメント用凝結遅延剤(GCPケミカルズ製、商品名;リカバー)を造粒物の表面に噴霧した。これをφ100mm円筒形の容器に充填し24時間養生した後、脱型し、1mの高さから落下させ、9.5mm篩で篩った後の網下質量の割合を測定した。尚、セメント用凝結遅延剤を付着させないものを同様に処理し、比較例3とした。
Figure 0007103828000003
その結果、表4に示すように本発明の実験例6では、9.5mmの篩を通過した造粒物の割合が比較例3よりも高く、造粒物同士の固着が抑制されていた。
Figure 0007103828000004
以上のように、本実施形態によれば、造粒物の硬化反応を任意の時間に遅延させることが可能となり、造粒物同士の固着防止のために頻繁に行わざるを得ない重機等による造粒堆積物の崩し作業を自由な時間に設定出来るようになる。
更に、可溶性の糖あるいはカルボン酸等の有機化合物の使用量によって、造粒物の硬化反応を抑制することができ、肥料、融雪剤等の様に適度な崩壊性が必要な造粒物の製造が行いやすくなる。
また、一旦造粒物とした後に、該造粒物の表面に付着させるように可溶性の糖あるいはカルボン酸系有機化合物を添加することで、造粒物自体の強度に影響を与えることなく造粒物同士の固着を防止することができ、更に添加する可溶性の糖あるいはカルボン酸系有機化合物の使用量を抑えることが可能となる。

Claims (2)

  1. 燃焼灰や製鋼ダストの自硬性を有する粉体材料と水とを混合して造粒固化する方法において、
    前記粉体材料は、生石灰、無水石膏、珪酸、アルミナ、金属酸化物の成分を含有し、
    前記粉体材料に、前記成分と前記水とによる硬化反応を遅延させる可溶性の糖あるいはカルボン酸の有機化合物を添加して造粒物を混合造粒する工程1と、
    前記工程1のあとに、得られた造粒物を所定時間堆積させる工程2と、
    前記工程のあとに、堆積させた前記造粒物に対して物理的な衝撃や振動を加えることで前記堆積された造粒物を崩す工程3と、からなり、
    前記工程1によって、前記有機化合物が前記造粒物の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させ、
    前記工程によって、さらに、前記造粒物同士の固着を防止することを特徴とする粉体材料の造粒固化方法。
  2. 燃焼灰や製鋼ダストの自硬性を有する粉体材料と水とを混合して造粒固化する方法において、
    前記粉体材料は、生石灰、無水石膏、珪酸、アルミナ、金属酸化物の成分を含有し、
    前記粉体材料と水とを混合して造粒物に造粒する工程aと、
    前記工程aによって、造粒された前記造粒物の表面に、前記成分と前記水とによる硬化反応を遅延させる可溶性の糖あるいはカルボン酸の有機化合物を付着させる工程bと、
    前記工程bのあとに、得られた造粒物を所定時間堆積させる工程cと、
    前記工程cのあとに、堆積させた前記造粒物に対して物理的な衝撃や振動を加えることで前記堆積された造粒物を崩す工程dと、からなり、
    前記工程bによって、前記有機化合物が前記造粒物の硬化反応の進行を任意の時間に遅延させ、
    前記工程によって、さらに、前記造粒物同士の固着を防止することを特徴とする粉体材料の造粒固化方法。
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