JP7103179B2 - 発泡断熱紙容器 - Google Patents

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Description

本発明は、発泡断熱紙容器に関する。
ファーストフード店、列車内、自動販売機等において、コーヒー等の温飲料やスープ等の温食品を購入者に提供するための容器として、断熱性容器が広く使用されている。従来より、このような断熱性容器として、発泡断熱紙容器が知られている。発泡断熱紙容器は紙を基材とし、断熱性を実現するのに必要なだけの厚みの熱可塑性樹脂層を備えるため、全体が発泡ポリスチレンからなる容器に比べて環境負荷が低く、また印刷性にも優れるという利点を有する。
発泡断熱紙容器の断熱性や加工性を向上するために、特許文献1には、パルプ濃度20~35重量%で高濃度叩解したパルプを含有し、2ロールサイズプレスコーターあるいはゲートロールコーターによって表面処理を施される紙基材の少なくとも片面に発泡熱可塑性樹脂層を積層した、断熱紙製容器用シートの製造方法が開示されている。
特許文献2には、カレンダーサイズプレスによって処理を施された面の王研式平滑度が58~120s/10ml、且つ坪量あたりの透気抵抗度が0.88~1.31s/g/mである紙基材の、前記面に熱可塑性樹脂層を積層した発泡断熱紙製容器用シートの製造方法が開示されている。
特許5673289号公報 特許5903972号公報
特許文献1、2の発明によれば、発泡断熱紙容器用シートの熱可塑性樹脂層の発泡をより均一化し、断熱性の高い発泡断熱紙容器を得ることができる。
しかしながら、一般に手で保持して使用される発泡断熱紙容器においては、断熱性だけでなく、手触りや持ち心地も重要である。特許文献1、2の発明には、手触りや持ち心地の改良という観点がない。
発泡断熱紙容器の発泡樹脂層は、適度な柔らかさを備え、把持による圧によって凹むことができなければ、発泡樹脂層特有の手触りの良さを発揮できない。一方、発泡樹脂層があまりに凹みすぎれば、把持する指に発泡断熱紙容器の中身の温度が直接伝わってしまい、持ちづらい発泡断熱紙容器となってしまう。
以上を踏まえて、本発明は、柔らかさと、把持する指に中身の熱を伝えづらい性質とを兼ね備え、良好な触り心地を有する発泡断熱紙容器を提供することを課題とする。
本発明者らは、触り心地との相関性を有する発泡断熱紙容器の特性について鋭意検討した。その結果、発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーおよび圧縮回復性を所定の範囲内にすることができれば、当該発泡断熱紙容器の手触りを良好にすることができることを見出した。
本発明は、以下のような構成を有している。
(1)外側から順に、熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層、紙基材層および熱可塑性樹脂層を備える胴部材と、底板部材とからなる発泡断熱紙容器であって、圧縮回復性が55~90%であり、圧縮エネルギーが0.10~0.95N・m/mであることを特徴とする発泡断熱紙容器。
(2)最外層の表面粗さが5~75μmであることを特徴とする前記(1)の発泡断熱紙容器。
(3)前記紙基材層を構成する紙基材の主成分がセルロースパルプであり、前記紙基材層と前記発泡樹脂層との間に水溶性樹脂層が設けられており、前記紙基材の坪量あたりの透気抵抗度が0.35~1.92s/g/mであることを特徴とする前記(1)または(2)の発泡断熱紙容器。
(4)前記紙基材は、炭素数が24、26および28からなる群より選択される少なくとも1種の炭素数である一価の直鎖アルコールと、炭素数が24、26および28からなる群より選択される少なくとも1種の炭素数である直鎖脂肪酸とを、合計で200~2500ppm含有することを特徴とする前記(3)の発泡断熱紙容器。
(5)前記セルロースパルプに占めるアカシア材パルプの割合が10質量%以上であることを特徴とする前記(3)または(4)の発泡断熱紙容器。
(6)前記紙基材が多層材であることを特徴とする前記(3)~(5)のいずれかの発泡断熱紙容器。
(7)前記発泡樹脂層を構成する樹脂がポリエチレンであることを特徴とする前記(1)~(6)のいずれかの発泡断熱紙容器。
本発明に係る発泡断熱紙容器は、柔らかさと、把持する指に中身の熱を伝えづらい性質とを兼ね備え、良好な触り心地を有する。
本実施形態に係る発泡断熱紙容器の模式的な断面図である。 図1のAで示された部分の拡大断面図である。 本実施形態に係る発泡断熱紙容器用シートの模式的な断面図である。 本実施形態に係る発泡断熱紙容器用紙基材の模式的な断面図である。 本実施形態に係る発泡断熱紙容器用紙基材の模式的な断面図であり、特に紙基材を詳細に表したものである。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1は、発泡断熱紙容器8の一例の模式的な断面図である。図2は、図1のAで示された部分の拡大断面図である。図2に示すように、発泡断熱紙容器8は、発泡断熱紙容器用紙基材3と、発泡樹脂層9と、蒸散抑止層10とを備えている。
図3は、発泡断熱紙容器用シート5の一例の模式的な断面図である。発泡断熱紙容器用シート5は、紙基材1の片面に水溶性樹脂層2を有する発泡断熱紙容器用紙基材3と、水溶性樹脂層2上に積層された熱可塑性樹脂層4とを有している。熱可塑性樹脂層4は、加熱処理によって発泡して、発泡樹脂層9となる。
図4は、発泡断熱紙容器用紙基材3の一例の模式的な断面図である。発泡断熱紙容器用紙基材3は、紙基材1の両面に水溶性樹脂層2を有している。一方の水溶性樹脂層2上に熱可塑性樹脂層4を積層することによって、発泡断熱紙容器用シート5が形成される。
発泡断熱紙容器8は、発泡断熱紙容器用シート5を胴部材6や底板部材7に用いて紙容器を成形し、当該紙容器を加熱することにより製造される。
前記紙容器を加熱することによって、紙基材1や水溶性樹脂層2中に含まれる水分が気化し、水蒸気となって水溶性樹脂層2を透過し、加熱された熱可塑性樹脂層4中に浸透し、熱可塑性樹脂を発泡させて、熱可塑性樹脂層4を発泡樹脂層9へと変える。その結果、前記紙容器は断熱性を有した発泡断熱紙容器8となる。
以下、本実施形態を構成する各部材について説明する。
[紙基材]
(パルプの種別)
紙基材1はセルロースパルプを主成分としている。ここで主成分とは、紙基材1を構成する成分のうち50質量%以上を占める成分をいう。
紙基材1を構成可能なパルプには、例えば、木材系パルプとして針葉樹材の晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹材の晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)等の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の機械パルプが挙げられ、非木材パルプとしては、麻パルプ等が該当する。これらのパルプは、1種単独、または2種以上を組み合わせて使用することができる。紙基材1を構成するパルプとしては、品質やコストの面から、LKPであるアカシア材やユーカリ材、NKPであるラジアータパイン材等の木材系パルプが適している。
(直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸との合計含有量)
紙基材1は、セルロースパルプ由来の直鎖アルコールと直鎖脂肪酸とを含有する。植物内においては、一般に酢酸を出発物質としてアルコールや脂肪酸が合成されるため、合成されたアルコールや脂肪酸の炭素数は偶数となる。紙基材1に含有される直鎖アルコールと直鎖脂肪酸とは、ガスクロマトグラフィー等により測定することができる。
紙基材1は、炭素数24、26、及び28からなる群より選択される少なくとも1種の炭素数の一価の直鎖アルコール(以下、直鎖アルコール(A)という場合がある。)と、炭素数24、26、及び28からなる群より選択される少なくとも1種の炭素数の直鎖脂肪酸(以下、直鎖脂肪酸(B)という場合がある。)とを合計で200~2500ppm含有することが好ましく、350~2000ppm含有することがより好ましい。
直鎖アルコール(A)と直鎖脂肪酸(B)の合計含有量が紙基材1の質量に対して200ppm以上であると、水蒸気の噴出を効果的に抑制でき、均一で密な発泡樹脂層9を得ることができる。この抑制効果は、直鎖アルコール(A)と直鎖脂肪酸(B)が繊維間に分布することで蒸散速度を緩やかにすることにより発揮されているのではないかと推測される。
一方、直鎖アルコール(A)と直鎖脂肪酸(B)の合計含有量が紙基材1の質量に対して2500ppm以下であると、チリ(直鎖アルコールや直鎖脂肪酸が固まったことで現れる、黒色や茶色または透明の斑点)の発生を抑制できる等の利点がある。
紙基材1を構成するパルプの10質量%以上がアカシア材パルプであると、紙基材1の透気抵抗度を後記する所定の範囲に制御し、紙基材1から発生する水蒸気の透過量を紙基材1全体で均一化することが容易になるため、好ましい。紙基材1から発生する水蒸気の透過量をより均一化する観点から、紙基材1を構成するパルプの17質量%以上がアカシア材パルプであることがより好ましい。アカシア材は、上記の直鎖アルコール(A)と直鎖脂肪酸(B)を多く含有する樹種の一つである。
(カナダ標準ろ水度)
紙基材1を構成するパルプのJIS P 8121:2012に準じて測定したろ水度(カナダ標準ろ水度)は、300~600mlに調整することが好ましく、300~450mlに調整することがより好ましい。
2種類以上のパルプを使用する場合には、別々に叩解したパルプを混合して上記範囲にしてもよいし、予め混合したパルプを叩解して上記範囲に調整してもよい。
ろ水度が300ml以上であると、抄紙工程における脱水に長時間を要さず、操業性が向上する。一方、ろ水度が600ml以下であると、紙力が低下するおそれがない。
(填料)
紙基材1(または後記するパルプ層11)には製紙分野で一般に使用される填料を配合可能である。例えば、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、デラミネーテッドカオリン、水和ケイ素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、若しくは、水酸化亜鉛等の等の無機顔料や尿素・ホルマリン樹脂微粒子、若しくは微小中空粒子などの有機顔料等、その目的に応じ配合する。紙基材1に填料を配合しないことも可能である。紙基材1に填料を配合しなければ、紙基材1中の水分で熱可塑性樹脂層4を発泡させる際、発泡性が向上する。
(内添助剤)
紙基材1(パルプ層11)を抄紙する際に、各種内添助剤を適宜添加することが可能である。内添助剤の例として、サイズ剤、歩留まり剤、ろ水向上剤、嵩高材、紙力向上剤、カチオン化澱粉等の各種澱粉類、硫酸バンド、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等が挙げられる。紙基材1(パルプ層11)は、内添助剤としてカチオン化澱粉を含んでいることが好ましい。
(多層材)
紙基材1は、パルプ層11と澱粉層12とを交互に重ねた多層材であることが好ましい。多層材を紙基材1とすると、紙基材1の地合いを均一化できるため、加熱時に紙基材1から発生する水蒸気の透過量が、紙基材1全体でより均一となり、熱可塑性樹脂層4の過発泡が抑えられ、発泡樹脂層9の発泡形態がより均一となる。
(澱粉層)
澱粉層12は、パルプ層11とパルプ層11との間を強固に接着するものである。澱粉層12に使用する澱粉は、特に限定されないが、カチオン化澱粉が好ましい。
澱粉層12の形成量は、0.5~2.0g/mが好ましい。澱粉層12の形成量が0.5g/m以上であると、パルプ層11とパルプ層11の接着力を高めて、層間強度を向上させることができる。また、澱粉層12の形成量が2.0g/m以下であると、加熱時にパルプ層11から発生する水蒸気の透過を過剰に妨げることがなく、熱可塑性樹脂層4が十分に発泡し、分厚い発泡樹脂層9が得られるため、発泡断熱紙容器8の断熱性が向上する。
多層材のパルプ層11の層数は、図5で例示した5層に限定されず、増減が可能である。
(抄紙)
紙基材1(パルプ層11)の抄紙方法および抄紙機の型式としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、ギャップフォーマー等の公知の抄紙方法および抄紙機が選択可能である。中でもインレットを複数持つ多層抄きが可能な形式が好ましい。また、抄紙時のpHは酸性領域(酸性抄紙)、疑似中性領域(疑似中性抄紙)、中性領域(中性抄紙)、アルカリ性領域(アルカリ性抄紙)のいずれでもよい。
(澱粉層の形成方法)
澱粉層12は、塗布法、転写法、含浸法、噴霧法等の種々の公知の方法で、公知の装置を用いて形成することができる。例えば、澱粉層12はワイヤー上でパルプ層11の表面に噴霧することで均一な澱粉層を形成することができる。
(紙基材の透気抵抗度)
本発明者等は、検討の結果、紙基材1の坪量あたりの透気抵抗度が0.35~1.92s/g/mであると、紙基材1から発生する水蒸気の透過を熱可塑性樹脂の発泡に過不足ない範囲に制御できることを見出した。紙基材1の坪量あたりの透気抵抗度が0.35s/g/m以上であると、水蒸気の透過が好適に制御されるため、熱可塑性樹脂層4の部分的な過発泡が発生せず、発泡断熱紙容器8の美麗性が向上する。一方、紙基材1の坪量あたりの透気抵抗度が1.92s/g/m以下であると、水蒸気の透過を過剰に妨げないため、熱可塑性樹脂層が十分に発泡し、発泡断熱紙容器8の断熱性が向上する。
このように、坪量あたりの透気抵抗度を上記範囲内に調製すると、紙基材1で水蒸気の透過を制御できるため、紙基材1を水溶性樹脂層2で厚く被膜せずとも、発泡断熱紙容器8の美麗性を向上させる事が可能になる。
紙基材1の坪量あたりの透気抵抗度は、より良好な美麗性を得る観点から0.40s/g/m以上とするのが好ましく、0.45s/g/m以上とするのがより好ましい。
紙基材1の坪量あたりの透気抵抗度は、より良好な断熱性を得る観点から1.85s/g/m以下とするのが好ましく、1.80s/g/m以下とするのがより好ましい。
紙基材1の坪量あたりの透気抵抗度は、水溶性樹脂層2を塗工する前の紙基材1について測定することも、発泡断熱紙容器用紙基材3から水溶性樹脂層2を除いて得た紙基材1について測定することも可能である。
透気抵抗度はJIS P 8117:2009の王研式試験機法に準じて測定する。
[水溶性樹脂]
水溶性樹脂は水に溶解する樹脂であり、水溶液として紙基材1の表面に塗工され、被膜(水溶性樹脂層2)を形成する。水溶性樹脂は、造膜性を有する水溶性高分子であれば特に限定されないが、加工適性の観点から、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉、ポリアクリルアミド類が好ましく、中でもPVAが好ましい。本実施形態における水溶性樹脂としては、これらを単独、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
(ポリビニルアルコール)
ポリビニルアルコール(PVA)は、化学式[-CHCH(OH)-][-CHCH(OCOCH)-]で表される。前記化学式において、nはけん化部分を示し、mは未けん化部分を示す。
PVAの平均重合度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定した場合には、300~4000が好ましく、500~3000がより好ましく、1000~2000がさらに好ましい。平均重合度を300以上とすると成膜性が向上し、4000以下とすると水への溶解性が向上する。平均重合度は、PVAの製造工程中の酢酸ビニルモノマーの重合において酢酸ビニルモノマーをどれだけ結合するかによって調節できる。
本実施形態では、変性PVAまたは未変性PVAを用いることが可能であり、部分けん化PVAまたは完全けん化PVA(本実施形態では、けん化度90モル%以上のものをいう)を用いることが可能である。
未変性PVAとは、水酸基(OH基)や酢酸基(OCOCH基)以外の官能基を導入していないPVAを指す。変性PVAとは、カルボキシル基やカルボニル基、スルホン酸基等の官能基を導入したPVAを指す。
PVAのけん化度(モル%)は{n/(n+m)}×100で表され、PVAの製造工程中のポリ酢酸ビニル樹脂のけん化において、酢酸基をどれだけ水酸基に置換するかによって調節可能であり、JIS K 6726:1994に準じて測定できる。けん化度が80モル%以上であると、PVAの水溶性が高まり、成膜性が向上するため、好ましい。
(ポリビニルアルコール以外の好適な水溶性樹脂)
水溶性樹脂として使用できる澱粉類としては、未変性の澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉等が挙げられる。ポリアクリルアミド(PAM)類としては、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、ノニオン性ポリアクリルアミド等が挙げられる。
[水溶性樹脂層]
紙基材1上に強固に密着した水溶性樹脂層2は、水蒸気の透過量を制御して、水蒸気の透過量を紙基材1全体で均一化することができる。その結果、熱可塑性樹脂層4の発泡状態を均一化し、発泡断熱紙容器8の断熱性を向上させることができる。
水溶性樹脂層2は、水溶性樹脂を主成分とする層であるが、必要に応じて、発明の効果を妨げない範囲で適宜他の樹脂成分を含有させてもよい。
(水溶性樹脂層の形成方法)
図4のように、本実施形態の発泡断熱紙容器用紙基材3は、紙基材1の両面に、水溶性樹脂層2を形成することにより製造される。なお、水溶性樹脂層2は、紙基材1の片面のみに設けても良い。
水溶性樹脂層2の形成方法については特に制限されないが、水溶性樹脂の塗工量や紙基材1への浸透厚さを均一化する観点から、ブレードコーターまたはロッドコーターを用いて水溶性樹脂を塗工する方法が好ましい。
ブレードコーターとは、紙基材1の表面に供給された塗工液を鋼鉄製のブレード(板刃)で掻き落とし、必要量を塗工する装置である。
ブレードコーターは、紙基材1に対して斜めに傾けて近接して配置された、紙基材1を横断する長さのブレードでもって、紙基材1と前記ブレードとの隙間を通過できない余分な塗工液を削り落とすことで、塗工液を高速かつ平滑に塗工する。
塗工量はブレードの押し付け圧や角度等によって調整可能である。
ロッドコーターとは、紙基材1の表面に供給された塗工液を平滑なロッド、ピアノ線やステンレス線等を密に巻いたロッド、表面に溝を多数有するロッド等を用いて掻き落とし、必要量を塗工する装置である。
ロッドコーターは、紙基材1に対して近接して配置された紙基材1を横断する長さのロッドでもって、紙基材1と前記ロッドとの隙間を通過できない余分な塗工液を削り落とすことで塗工液を高速かつ平滑に塗工する。ロッドコーターをバーコーターとも呼称する。
塗工量はロッドに巻いたピアノ線やステンレス線等の直径を変更することで調整可能である。
ブレードコーターまたはロッドコーターを用いると、高濃度の塗工液を使用した場合でも、紙基材1上に均一化された水溶性樹脂層2を薄く形成することができる。
高濃度の塗工液は、溶液粘度が高いため紙基材1に浸透し難く、水溶性樹脂の紙基材1への浸透厚さを減少させ、かつ、水溶性樹脂層2中の水溶性樹脂濃度を増加させることができる。そのため、ブレードコーターまたはロッドコーターを用いれば、水溶性樹脂の塗工量が少量であっても、効果的に紙基材1から発生する水蒸気の透過量を制御できる。
塗工液の溶剤としては、通常、水が用いられ、必要に応じて水に可溶のアルコール等の有機溶剤を混合して用いてもよい。塗工液には、界面活性剤、消泡剤、染料、顔料、サイズ剤、耐水化剤、紙力増強剤、分散剤、可塑剤等の各種公知の助剤を併用してもよい。
塗工層の乾燥方法は、公知の方法から適宜選択すればよい。また、水溶性樹脂層2の形成後、必要に応じて平滑化処理を行うことができる。
(水溶性樹脂層の形成量)
水溶性樹脂層2の片面あたりの形成量は、固形分で0.03~6.00g/mであることが好ましい。特に水溶性樹脂としてPVAを使用した場合は0.05~0.50g/mであることが好ましく、0.06~0.10g/mであることがより好ましい。澱粉を使用した場合は0.80~6.00g/mであることが好ましく、1.50~3.00g/mであることがより好ましい。PAMを使用した場合は0.03~0.70g/mであることが好ましく、0.05~0.60g/mであることがより好ましい。
水溶性樹脂層2の片面あたりの形成量が、各水溶性樹脂の好ましい形成量の上限値以下であると、抄紙工程または乾燥工程における設備汚れが減少し、ひいては発泡断熱紙容器8への汚れの混入を防ぐことができる。また、紙基材1から発生する水蒸気を十分に透過させ、発泡樹脂層を厚くし、断熱性の高い発泡断熱紙容器8を得ることができる。
一方、水溶性樹脂層2の片面あたりの形成量が、各水溶性樹脂の好ましい形成量の下限値以上であると、紙基材1から発生した水蒸気の透過量を発泡断熱紙容器用紙基材3全体で均一化できる。水蒸気の透過量の均一化により、熱可塑性樹脂層4の過発泡を防止することで、表面の美麗性の高い発泡断熱紙容器8を得ることができる。水溶性樹脂層2の形成量とは平均形成量を表し、乾燥前後の重量変化、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などで確認できる。
(水溶性樹脂の紙基材への浸透厚さ)
水溶性樹脂を含有する塗工液を紙基材1の表面に塗工すると、塗工液は紙基材1の内部に向けて浸透する。その後、塗工液は乾燥によって固化し、水溶性樹脂層2となる。本実施形態では、紙基材1に浸透して固化した水溶性樹脂も水溶性樹脂層2の一部とみなす。
水溶性樹脂の紙基材1への浸透厚さは5~180μmであることが好ましい。特に水溶性樹脂としてPVAを使用した場合は5~35μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましく、15~25μmであることがさらに好ましい。澱粉を使用した場合は60~180μmであることが好ましく、65~170μmであることがより好ましく、70~160μmであることがさらに好ましい。PAMを使用した場合は5~70μmであることが好ましく、8~50μmであることがより好ましく、15~30μmであることがさらに好ましい。
水溶性樹脂の紙基材1への浸透厚さが、各水溶性樹脂の好ましい浸透厚さの上記下限値以上であると、水蒸気の透過量が均一化されることで熱可塑性樹脂層4の発泡が均一化されるため、発泡断熱紙容器8の美麗性が向上する。一方、水溶性樹脂の紙基材1への浸透厚さが、各水溶性樹脂の好ましい浸透厚さの上記上限値以下であると、水溶性樹脂層2が水蒸気の透過を過剰に妨げることがなく、熱可塑性樹脂層4が十分に発泡し、発泡断熱紙容器8の断熱性が向上する。
水溶性樹脂の紙基材1への浸透厚さは、ブレード等の圧力、角度、ブレード等-紙間の隙間寸法、塗工液の粘度等によって調整できる。水溶性樹脂の紙基材1への浸透厚さは、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等を用いて断面の拡大写真から測定することができる。
[発泡断熱紙容器用紙基材の性質]
(坪量)
発泡断熱紙容器用紙基材3の坪量は、好ましくは100~400g/mであり、より好ましくは200~400g/mであり、さらに好ましくは220~400g/mであり、特に好ましくは260~350g/mである。
坪量が100g/m以上であると、紙基材1等の含有する水分によって、熱可塑性樹脂層4が十分に発泡するようになるので、得られた発泡断熱紙容器8を手で把持したときに熱さを感じづらい。一方、坪量が400g/m以下であると、発泡断熱紙容器8の剛性が大きくなりすぎず、成形加工適性が向上する傾向にある。
(密度)
発泡断熱紙容器用紙基材3の密度は、0.60~1.05g/cmであることが好ましい。密度が0.60g/cm以上であると、発泡断熱紙容器8に必要な紙力が得られ易い。一方、密度が1.05g/cm以下であると、熱可塑性樹脂層4を発泡させる際に水蒸気が発泡断熱紙容器用紙基材3を十分に透過するため、熱可塑性樹脂層4の発泡性が向上し、得られた発泡断熱紙容器8を手で把持したときに熱さを感じづらい。
(紙厚)
発泡断熱紙容器用紙基材3の紙厚は、好ましくは130~430μmであり、より好ましくは230~430μmであり、さらに好ましくは250~430μmである。
紙厚が130μm以上であると、紙基材1等の含有する水分によって、熱可塑性樹脂層4が十分に発泡するようになるので、得られた発泡断熱紙容器8を手で把持したときに熱さを感じづらい。一方、紙厚が430μm以下であると、発泡断熱紙容器8の剛性が大きくなりすぎず、成形加工適性が向上する傾向にある。
(発泡断熱紙容器用紙基材の透気抵抗度)
発泡断熱紙容器用紙基材3の坪量あたりの透気抵抗度は1.0~6.0s/g/mであることが好ましい。発泡断熱紙容器用紙基材3の坪量あたりの透気抵抗度は、紙基材1の透気抵抗度を増減させるか、紙基材1に積層する水溶性樹脂層2の形成量を増減させることによって調整することができる。
坪量あたりの透気抵抗度が1.0s/g/m以上であると、水蒸気の透過量が適度に抑制されることで、熱可塑性樹脂層4の発泡が均一化されるため、発泡断熱紙容器8の美麗性が向上する。一方、坪量あたりの透気抵抗度が6.0s/g/m以下であると、水蒸気の透過を過剰に妨げず、熱可塑性樹脂層4を十分に発泡させることが可能になり、発泡断熱紙容器8の断熱性が向上する。
坪量あたりの透気抵抗度は、より良好な美麗性を得る観点から1.2s/g/m以上であることがより好ましく、1.5s/g/m以上であることがさらに好ましい。坪量あたりの透気抵抗度は、より良好な断熱性を得る観点から4.7s/g/m以下であることがより好ましく、4.5s/g/m以下であることがさらに好ましい。
透気抵抗度はJIS P 8117:2009の王研式試験機法に準じて測定される。
(水分量)
発泡断熱紙容器用紙基材3中の水分量は、好ましくは4.5~8.0%であり、より好ましくは5.0~7.5%である。この水分量の別の表記として、好ましくは13.5g/m~24.0g/mであり、より好ましくは15.0g/m~22.5g/mであると表すことも可能であり、この表記は前記の%表記と同じ水分量を示している。
発泡断熱紙容器用紙基材3中の水分量が4.5%以上であると、十分な発泡樹脂層9の厚みを得られる。また、8.0%以下であると、過発泡となり難く、美麗性が損なわれ難い。
発泡断熱紙容器用紙基材3中の水分量は、例えば、発泡断熱紙容器用紙基材3を紙容器に成形し発泡させるまでに保管する保管環境の相対湿度を増減させること等により制御することができる。
[発泡断熱紙容器用シート]
図3のように、本実施形態の発泡断熱紙容器用シート5は、紙基材1の両面に水溶性樹脂層2を有する発泡断熱紙容器用紙基材3と、発泡断熱紙容器用紙基材3の片面の水溶性樹脂層2上に積層された熱可塑性樹脂層4とを有する。なお、前述の通り、水溶性樹脂層2は、紙基材1の片面のみに設けても良い。
発泡断熱紙容器用シート5を加熱処理すると、紙基材1と水溶性樹脂層2に含まれる水分が蒸発し、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層4が発泡樹脂層9となる。
以下、発泡断熱紙容器用シート5について説明するが、既に説明した構成要素については説明を省略する。
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層4には、水溶性樹脂層2上に形成可能で、かつ水分で発泡させることが可能なものであれば、結晶性樹脂と非結晶性樹脂のいずれの熱可塑性樹脂も使用できる。
結晶性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。非結晶性樹脂の例としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等が挙げられる。また、環境負荷低減を目的に、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等の生分解性樹脂も使用可能である。
これらの熱可塑性樹脂は、単一の樹脂を単層で使用してもよいし、複数の樹脂を混合して使用してもよいし、複層で使用してもよい。上記の熱可塑性樹脂の中では、押し出しラミネート性および発泡性に優れることからポリエチレンが好ましい。
熱可塑性樹脂層4の厚さについては特に限定されないが、断熱性や加工性の観点から、厚さが30~80μmであることが好ましい。
(蒸散抑止層)
さらに、図2のように、発泡断熱紙容器用シート5上に、熱可塑性樹脂層4よりも融点の高い高融点熱可塑性樹脂や金属からなる蒸散抑止層10を設けても良い。蒸散抑止層10は前記物質を複数積層させても良い。
紙基材1の熱可塑性樹脂層4のない面に蒸散抑止層10を積層すると、熱可塑性樹脂層4の発泡時に、紙基材1の熱可塑性樹脂層4のない面から水蒸気が蒸散してしまうことを抑制できる。水蒸気の蒸散が抑制されると、紙基材1から発生する水蒸気の多くが熱可塑性樹脂層4に向かうようになるため、熱可塑性樹脂層4の発泡性を向上させることができる。
蒸散抑止層10が胴部材6および底板部材7の少なくとも一方の内壁面側に存在すると、容器に充填した液体等が紙基材1中へ浸透することを抑制できるため好ましい。 蒸散抑止層10に使用する熱可塑性樹脂の融点は、紙基材1等中の水分を加熱蒸発させる際に溶融しない温度であればよいが、例えば125℃以上が好ましい。
熱可塑性樹脂層4に使用する熱可塑性樹脂と蒸散抑止層10に使用する熱可塑性樹脂の融点の差は5℃以上あることが好ましい。
なお、複数の種類の樹脂を積層した場合の融点の差とは、熱可塑性樹脂層4に使用した樹脂のうち最も高い融点を有する樹脂と、蒸散抑止層10に使用した樹脂のうち最も低い融点を有する樹脂との融点の差を指す。
[熱可塑性樹脂層の形成方法]
熱可塑性樹脂層4および蒸散抑止層10は、押し出しラミネート法、ウェットラミネート法等の各種公知の方法を適宜使用して紙基材1上に積層すればよいが、熱可塑性樹脂層が単層の場合は、押し出しラミネート法の使用が好ましい。押し出しラミネート法の操業条件は、一般に溶融温度は200~370℃程度、積層速度は30~300m/分程度である。
また、蒸散抑止層10に複数の層を設ける場合は、発泡断熱紙基材と蒸散抑止層の密着性や生産効率の観点から、いわゆる共押し出しラミネート法が好ましい。
[発泡断熱紙容器の成形]
発泡断熱紙容器用シートは、例えば以下のように容器状に成形される。
まず、発泡断熱紙容器用シート5の所定箇所に各種絵柄やバーコード等の印刷を施した後、所定の形状に打ち抜くことで、胴部材ブランクおよび底板部材ブランクを用意する。
なお、発泡断熱紙容器8に望む断熱性の程度によっては、胴部材ブランクと底板部材ブランクのどちらか一方だけを発泡断熱紙容器用シート5から作成してもよい。
胴部材ブランクと底板部材ブランクに用いる熱可塑性樹脂は、同種でも異種でもよいが、同種であれば胴部材6と底板部材7とが同温度で同時に発泡するため、加熱温度・時間等の加熱条件の管理が容易くなる。このようにして得られた胴部材ブランクと底板部材ブランクとを組み立て、一般のカップ成形機で成形し紙容器とする。
[加熱処理による発泡]
前記紙容器に対して、熱風、電熱、電子線など任意の手段で加熱処理を行い、胴部材ブランクや底板部材ブランクの紙基材1等に含まれる水分を気化させ、発生した水蒸気によって熱可塑性樹脂層4が発泡し、発泡樹脂層9となることで、発泡断熱紙容器8が得られる。加熱温度・時間は特に制限されないが、加熱温度は熱可塑性樹脂4の熱可塑性樹脂の融点よりも5℃~10℃程度高く、蒸散抑止層10の熱可塑性樹脂の融点よりも低いことが好ましい。
一般に、加熱温度は100~200℃程度、加熱時間は1~6分間程度である。
このように発泡された発泡樹脂層9の厚さとしては800~1500μmが好ましい。
発泡樹脂層9の厚さが800μm以上であると十分な断熱性が得られる。一方、発泡樹脂層9の厚さが1500μm以下であると美麗性が向上する。発泡断熱紙容器8は、ホットコーヒーなどの充填用の発泡断熱紙容器、熱湯を注入するインスタント食品用の発泡断熱紙容器等として使用することができる。
[発泡断熱紙容器の性質]
発泡断熱紙容器においては、手で把持した際の手触り、持ち心地も重要である。発泡断熱紙容器の発泡樹脂層があまりに柔らかいと、把持による圧力で凹みすぎてしまい、内容物の熱さが肌に伝わって持ちづらくなってしまう。一方、発泡樹脂層があまりに固いと、発泡樹脂層特有の弾力性のある手触りが失われてしまう。
本発明者らは、検討の末、発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーと圧縮回復性とが所定の範囲内にあると、当該発泡断熱紙容器の柔らかさと凹みづらさの両立による良好な手触りが得られることを見出した。以下に発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーと圧縮回復性とについて詳細を述べる。
(圧縮エネルギー)
圧縮エネルギーとは、測定対象に印加した荷重と、当該荷重によって測定対象に発生した凹みの深さとの積分を表す値であり、圧縮エネルギーの値が大きいほど、測定対象は圧縮されやすく、柔らかいと評価できる。発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは、例えば発泡樹脂層の発泡の程度、換言すれば発泡セルの大きさを増減させることによって制御できる。発泡樹脂層の発泡セルが大きく、空気を多く含むほど、発泡断熱紙容器の柔らかさは増し、圧縮エネルギーは増大する傾向にある。
発泡断熱紙容器8のKES-FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定した圧縮エネルギーは、0.10~0.95N・m/mであり、0.25~0.75N・m/mであることが好ましい。測定は、まず、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)において、発泡断熱紙容器の底をカッター等で切り取り、円錐台状の側面に母線に沿って切れ目を1箇所入れ、扇形に開く。扇形状のサンプルを発泡面が上になるように2cmの加圧板と受圧板間に設置し、速度50秒/mmで加圧板を下降させることにより行う。
圧縮エネルギーが0.10N・m/mを下回る発泡断熱紙容器8は固すぎ、発泡特有の手触りを失っており、手触りに劣る。一方、圧縮エネルギーが0.95N・m/mを上回る発泡断熱紙容器8は柔らかすぎ、手で把持された際に凹み過ぎるため、内容物の温度を手に伝えやすい。
(圧縮回復性)
圧縮回復性とは、測定対象の加圧による凹みからの回復性を示す値であり、圧縮回復性の値が100%に近いほど、圧縮後の回復性が良いと評価できる。発泡断熱紙容器の圧縮回復性は、例えば発泡樹脂層の発泡の程度、換言すれば発泡セルの大きさを増減させることによって制御できる。発泡樹脂層の発泡セルが大きく、空気を多く含むほど、発泡断熱紙容器の柔らかさは増し、圧縮回復性は低下する傾向にある。
発泡断熱紙容器8のKES-FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて測定した圧縮回復性は、55~90%であり、67~85%であることが好ましい。測定は、まず、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)において、発泡断熱紙容器の底をカッター等で切り取り、円錐台状の側面に母線に沿って切れ目を1箇所入れ、扇形に開く。扇形状のサンプルを発泡面が上になるように2cmの加圧板と受圧板間にサンプルを設置し、速度50秒/mmで加圧板を下降させることにより行う。
圧縮回復性が55%を下回る発泡断熱紙容器8は、圧縮からの回復力に欠け、手で把持された際に凹み過ぎるため、内容物の温度を手に伝えやすい。一方、圧縮回復性が90%を上回る発泡断熱紙容器8は、圧によって凹まなすぎるため、発泡独特の感触を失っており、手触りに劣る。
(表面粗さ)
発泡断熱紙容器8の最外層の高精細形状測定システムKS-1100(KEYENCE)を用いて測定した表面粗さは、5~75μmであることが好ましく、15~60μmであることがより好ましい。
ここでいう表面粗さとは、最外層の表面の平均面に対して各点の高さの差をとり、その絶対値の平均を表した算術平均高さである。なお、平均面は評価点の平均高さを示す。測定は、まず、ISO25178に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)において、発泡断熱紙容器の底をカッター等で切り取り、円錐台状の側面に母線に沿って切れ目を1箇所入れ、扇形に開く。扇形状のサンプルを発泡面が上になるように測定台に設置し、移動速度7500μm、測定ピッチ10μmで1cmの試験片の最外層側の表面の高さを測定することにより行った。
表面粗さが5μmを下回る発泡断熱紙容器8は、その表面が滑りやすくなり、把持性に劣るものとなりやすい。一方、表面粗さが75μmを上回る発泡断熱紙容器8の表面はザラついた感触となり、手触りに劣る。
以下に、発泡断熱紙容器用紙基材について実施した測定方法を示す。
パルプのろ水度は、JIS P8121:2012に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量は、JIS P8124:2011に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の密度は、JIS P8118:1998に準じて測定した。
発泡断熱紙容器用紙基材の坪量あたりの透気抵抗度は、JIS P8117:2009に記載の王研式試験機法に準じて測定した。
以下に、発泡断熱紙容器について実施した測定方法を示す。
発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーおよび圧縮回復性は、KES-FB3-AUTO-A自動化圧縮試験機(カトーテック株式会社製)を用いて、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)において、2cmの加圧板と受圧板間にサンプルを設置し、速度50秒/mmで加圧板を下降させることにより測定した。
表面粗さとして、発泡樹脂層の表面の平均面に対して各点の高さの差をとり、その絶対値の平均(算術平均高さ)を測定した。測定は、高精細形状測定システムKS-1100(KEYENCE)を用いて、ISO25178に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)において、移動速度7500μm、測定ピッチ10μmで1cmの試験片の表面の高さを測定することにより行った。
[実施例1]
(発泡断熱紙容器用紙基材)
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ40部と、同じく広葉樹パルプであるユーカリ材パルプ60部とをろ水度430mlになるように混合叩解し、パルプスラリーを得た。このパルプスラリー100%に対して、固形分換算でカチオン化澱粉0.5質量%、ポリアクリルアミド系紙力増強剤(PAM系紙力増強剤)0.1質量%、アルキルケテンダイマー系サイズ剤0.30質量%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂(PAE系湿潤紙力増強剤)0.1質量%を添加して紙料スラリーを調製し、5層抄きの長網抄紙機で抄紙した。各層間にカチオン化澱粉を塗工量1.0g/mでスプレー塗布され、パルプ層が5層となる紙基材を得た。
次いで、得られた紙基材の両面に、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)(日本酢ビ・ポバール株式会社製、製品名:JM17、けん化度96.5モル%)をロッドコーターにより片面あたり固形分で0.08g/m(両面で0.16g/m)となるように塗工、乾燥して、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
実施例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.86g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数85、水分量18.9g/m、坪量あたりの透気抵抗度2.85s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は755ppmであった。
(発泡断熱紙容器用シート)
発泡断熱紙容器用紙基材の一方の面に、厚さ40μmとなるように高融点の熱可塑性樹脂(中密度ポリエチレン、密度940kg/m、融点133℃)を溶融温度360℃、積層速度50m/分で押し出した。その後、クーリングロールとニップロール(JISA硬度:70)を用いて、線圧2kgf/cmで押圧・圧着し、高融点熱可塑性樹脂層を形成した。
次いで、発泡断熱紙容器用紙基材の他方の面に、厚さ50μmとなるように熱可塑性樹脂(低密度ポリエチレン、密度918kg/m、融点103℃)を溶融温度360℃、積層速度50m/分で押し出した。その後、クーリングロールとニップロール(JISA硬度:70)を用いて、線圧2kgf/cmで押圧・圧着し、熱可塑性樹脂層を形成して、発泡断熱紙容器用シートを得た。
(発泡断熱紙容器)
発泡断熱紙容器シートAからなる胴部材と一方の面に高融点熱可塑性樹脂層のみを設けた発泡断熱紙容器用シートからなる底部材から、上部直径100mm、下部直径95mm、高さ110mmの容器を胴部材の熱可塑性樹脂層が外側となるように円筒形容器を作成した。次に、乾燥機で円筒形容器を温度120℃で6分間加熱し、熱可塑性樹脂層を発泡させ、円筒形の発泡断熱紙容器Aを得た。
発泡断熱紙容器Aの圧縮エネルギーは0.24N・m/m、圧縮回復性は78%、表面粗さは25μmであった。
[実施例2]
PVAの塗工量が片面あたり固形分で0.10g/m(両面で0.20g/m)となるようにした以外は実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは19.0μmであった。
実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.90g/cm、王研式平滑度101秒、地合い指数64、水分量23.0g/m、坪量あたりの透気抵抗度5.70s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は800ppmであった。
実施例2の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.72N・m/m、圧縮回復性は68%、表面粗さは55μmであった。
[実施例3]
PVAの塗工量が片面あたり固形分で0.12g/m(両面で0.24g/m)となるようにした以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは19.0μmであった。
実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.87g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数92、水分量18.0g/m、坪量あたりの透気抵抗度4.60s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は731ppmであった。
実施例3の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.15N・m/m、圧縮回復性は85%、表面粗さは11μmであった。
[実施例4]
PVAの塗工量が片面あたり固形分で0.15g/m(両面で0.30g/m)となるようにした以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは19.5μmであった。
実施例4の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.87g/cm、王研式平滑度81秒、地合い指数80、水分量21.0g/m、坪量あたりの透気抵抗度5.80s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は844ppmであった。
実施例4の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.18N・m/m、圧縮回復性は75%、表面粗さは12μmであった。
[実施例5]
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ20部と、同じく広葉樹パルプであるユーカリ材パルプ80部とを混合叩解し、パルプスラリーを得たこと以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
実施例5の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.87g/cm、王研式平滑度75秒、地合い指数80、水分量18.0g/m、坪量あたりの透気抵抗度1.65s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は314ppmであった。
実施例5の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.33N・m/m、圧縮回復性は73%、表面粗さは33μmであった。
[実施例6]
ブレードコーターによりPVAを片面あたり固形分で0.06g/m(両面で0.12g/m)となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
実施例6の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.86g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数90、水分量13.5g/m、坪量あたりの透気抵抗度2.40s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は816ppmであった。
実施例6の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.12N・m/m、圧縮回復性は82%、表面粗さは10μmであった。
[実施例7]
ブレードコーターによりPVAを片面あたり固形分で0.06g/m(両面で0.12g/m)となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
実施例7の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.86g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数90、水分量17.7g/m、坪量あたりの透気抵抗度2.44s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は747ppmであった。
実施例7の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.21N・m/m、圧縮回復性は80%、表面粗さは18μmであった。
[実施例8]
PVAの代わりに、澱粉を片面あたり固形分で1.50g/m(両面で3.00g/m)となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは80.0μmであった。
実施例8の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.86g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数89、水分量17.8g/m、坪量あたりの透気抵抗度1.70s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は795ppmであった。
実施例8の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.29N・m/m、圧縮回復性は78%、表面粗さは28μmであった。
[実施例9]
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ80部と、針葉樹パルプであるラジアータパイン材パルプ20部とを混合叩解し、パルプスラリーを得た。また、PVAの代わりに、澱粉を、片面あたり固形分で1.50g/m(両面で3.00g/m)となるように塗工した。このパルプの種別と澱粉の塗工の違い以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは80.0μmであった。
実施例9の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.90g/cm、王研式平滑度78秒、地合い指数78、水分量17.8g/m、坪量あたりの透気抵抗度3.15s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は1871ppmであった。
実施例9の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.65N・m/m、圧縮回復性は70%、表面粗さは44μmであった。
[実施例10]
PVAの代わりに、澱粉を、ブレードコーターにより片面あたり固形分で1.00g/m(両面で2.00g/m)となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは50.0μmであった。
実施例10の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.87g/cm、王研式平滑度85秒、地合い指数63、水分量18.0g/m、坪量あたりの透気抵抗度1.50s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は763ppmであった。
実施例10の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.40N・m/m、圧縮回復性は72%、表面粗さは37μmであった。
[実施例11]
PVAの代わりに、澱粉を、ブレードコーターにより片面あたり固形分で1.10g/m(両面で2.20g/m)となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、澱粉の紙基材への浸透厚さは60.0μmであった。
実施例11の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.86g/cm、王研式平滑度79秒、地合い指数80、水分量17.5g/m、坪量あたりの透気抵抗度1.65s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は722ppmであった。
実施例11の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.20N・m/m、圧縮回復性は70%、表面粗さは25μmであった。
[比較例1]
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ10部と、同じく広葉樹パルプであるユーカリ材パルプ90部とを混合叩解し、パルプスラリーを得た。また、PVAを、ブレードコーターにより片面あたり固形分で0.04g/m(両面で0.08g/m)となるように塗工した。このパルプの種別とPVAの塗工の違い以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは16.0μmであった。
比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.89g/cm、王研式平滑度92秒、地合い指数90、水分量22.5g/m、坪量あたりの透気抵抗度0.75s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は189ppmであった。
比較例1の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.98N・m/m、圧縮回復性は53%、表面粗さは79μmであった。
[比較例2]
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ5部と、同じく広葉樹パルプであるユーカリ材パルプ95部とを混合叩解し、パルプスラリーを得た。また、PVAを、片面あたり固形分で0.60g/m(両面で1.20g/m)となるように塗工した。このパルプの種別とPVAの塗工の違い以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは23.0μmであった。
比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.91g/cm、王研式平滑度88秒、地合い指数85、水分量17.6g/m、坪量あたりの透気抵抗度6.85s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は135ppmであった。
比較例2の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.09N・m/m、圧縮回復性は75%、表面粗さは15μmであった。
[比較例3]
広葉樹パルプであるユーカリ材パルプを叩解し、パルプスラリーを得た。また、PVAの替わりに水を塗工し、乾燥した(水溶性樹脂の塗工量および水溶性樹脂の紙基材への浸透厚さはいずれも計測できないので、表1において「-」で表記した)。このパルプの種別と水溶性樹脂の違い以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.87g/cm、王研式平滑度89秒、地合い指数90、水分量23.1g/m、坪量あたりの透気抵抗度0.55s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は100ppmであった。
比較例3の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは1.05N・m/m、圧縮回復性は53%、表面粗さは80μmであった。
[比較例4]
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ10部と、同じく広葉樹パルプであるユーカリ材パルプ60部と、針葉樹パルプであるラジアータパイン材パルプ30部とを混合叩解し、パルプスラリーを得た以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
比較例4の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.89g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数70、水分量18.9g/m、坪量あたりの透気抵抗度2.85s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は2639ppmであった。
比較例4の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは0.99N・m/m、圧縮回復性は58%、表面粗さは82μmであった。
[比較例5]
広葉樹パルプであるアカシア材パルプ5部と、同じく広葉樹パルプであるユーカリ材パルプ95部とを混合叩解し、パルプスラリーを得た以外は、実施例1と同様にして、発泡断熱紙容器用紙基材を得た。なお、PVAの紙基材への浸透厚さは18.5μmであった。
比較例5の発泡断熱紙容器用紙基材は、坪量300g/m、密度0.88g/cm、王研式平滑度80秒、地合い指数70、水分量18.9g/m、坪量あたりの透気抵抗度2.85s/g/mであり、直鎖アルコール及び直鎖脂肪酸の合計含有量は121ppmであった。
比較例5の発泡断熱紙容器用紙基材を用いて実施例1と同様に作成した発泡断熱紙容器の圧縮エネルギーは1.10N・m/m、圧縮回復性は50%、表面粗さは90μmであった。
[評価方法]
以上のようにして得られた発泡断熱紙容器用シートについて、以下の評価を行った。実施例、比較例の評価結果は表1に記載の通りであった。
(断熱性)
得られた発泡断熱紙容器用シートから、A4サイズのサンプルを切り出した。熱可塑性樹脂層が外側となるようにして、円筒を作製した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、円筒の外側の熱可塑性樹脂層を発泡させた。
得られた発泡断熱紙の発泡前後の厚さから、発泡倍率を算出し、以下の基準で評価した。なお、◎、○、△が合格であり、×が不合格である。
◎:発泡倍率21倍以上で、断熱性が十分である。
○:発泡倍率19倍以上、21倍未満で、断熱性が十分である。
△:発泡倍率15倍以上、19倍未満で、断熱性がある。
×:発泡倍率15倍未満で、断熱性が不十分である。
(美麗性)
得られた発泡断熱紙容器用シートから、辺100mmの正方形の試験片を切り出した。その後、熱風を使用して、加熱温度120℃、加熱時間6分間で、熱可塑性樹脂層を発泡させた。発泡後の熱可塑性樹脂層の表面を目視で観察し、以下の基準で美麗性を評価した。なお、◎、○、△が合格であり、×が不合格である。
◎:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく均質で、表面は概ね平坦である。
○:過発泡が見られず、形成された発泡セルは小さく表面も概ね平坦であるが、発泡セルの大きさにばらつきが見られる。
△:形成された発泡セルがやや大きく、大きさにばらつきも見られるが、表面の凹凸は小さく過発泡は見られない。
×:過発泡の発生などにより、表面に大きな凹凸がある。
(触り心地官能評価)
発泡断熱紙容器に90℃のお湯を入れ、3分後、容器外壁面を手で触り次の基準で評価した。なお、◎、○、△が合格であり、×が不合格である。
◎:あまり熱くなく、手で容器を十分に保持することができ、使用するに特に適した弾力と滑らかさを有している。
○:やや熱いが、手で容器を保持し続けることができ、使用するに適した弾力と滑らかさを有している。
△:熱く、手で容器を十分に保持することはやや難しいが可能であり、使用するに支障のない弾力と滑らかさを有している。
×:かなり熱く、手で容器を保持することが難しく、使用するに不適である。
Figure 0007103179000001
表1から分かるように、実施例1~11の発泡断熱容器は、断熱性、美麗性、触り心地官能評価のいずれの性能においても優れていた。
比較例1、3、5の発泡断熱紙容器は、圧縮エネルギーが高すぎ、かつ圧縮回復性が低すぎたため、触り心地において劣っていた。比較例2の発泡断熱紙容器は、圧縮回復性は所定の範囲内にあるものの、圧縮エネルギーが低すぎたため、触り心地において劣っていた。比較例4の発泡断熱紙容器は、圧縮回復性は所定の範囲内にあるものの、圧縮エネルギーが高すぎたため、触り心地において劣っていた。
1 紙基材
2 水溶性樹脂層
3 発泡断熱紙容器用紙基材
4 熱可塑性樹脂層
5 発泡断熱紙容器用シート
6 胴部材
7 底板部材
8 発泡断熱紙容器
9 発泡樹脂層
10 蒸散抑止層
11 パルプ層
12 澱粉層

Claims (6)

  1. 外側から順に、熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層、紙基材および熱可塑性樹脂層を備える胴部材と、
    底板部材とからなる発泡断熱紙容器であって、
    圧縮回復性が55~90%であり、
    圧縮エネルギーが0.10~0.95N・m/mであり、
    前記紙基材と前記発泡樹脂層との間に水溶性樹脂層が設けられており、前記紙基材と前記水溶性樹脂層とを有する発泡断熱紙容器用紙基材は、炭素数が24、26および28からなる群より選択される少なくとも1種の炭素数である一価の直鎖アルコールと、炭素数が24、26および28からなる群より選択される少なくとも1種の炭素数である直鎖脂肪酸とを、合計で314~1871ppm含有する
    ことを特徴とする発泡断熱紙容器。
  2. 最外層の表面粗さが5~75μmであることを特徴とする請求項1に記載の発泡断熱紙容器。
  3. 前記紙基材を構成するパルプの主成分がセルロースパルプであり
    記紙基材の坪量あたりの透気抵抗度が0.35~1.92s/g/mである
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発泡断熱紙容器。
  4. 前記紙基材を構成するパルプの10質量%以上がアカシア材パルプであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器。
  5. 前記紙基材が多層材であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器。
  6. 前記発泡樹脂層を構成する樹脂がポリエチレンであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡断熱紙容器。
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