JP7102746B2 - 液体試料の蛍光x線分析法 - Google Patents
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Description
だからと言って1気圧下での測定を行おうとしても、被測定試料中の軽元素から発生する長波長のX線は、空気によって吸収される為、高価なヘリウム雰囲気中で測定を行う必要がある。さらに、液体試料へのX線照射による気泡発生や、試料溶解に使用する酸による影響によっても測定誤差を生じる場合がある。この結果、定量値の再現性が得られ難い場合がある。
る所定元素を濃縮することが可能な媒体へ当該液体試料を滴下した後、XRFを用いて測定を行うという、前処理操作方法が記載されている。この方法では、被測定対象の液体試料へ、当該液体試料中に含有されない元素を内部標準成分として添加して混合溶液とし、所定元素と当該内部標準元素との濃度比を求める。そして、当該濃度比と被測定対象の液体試料の密度とから、測定対象の溶液中に含有される所定元素の濃度(体積分率)を求める定量分析方法が記載されている。
例えば、被測定対象である液体試料をろ紙上に滴下し乾燥させた後、当該ろ紙にXRFを適用して所定元素を分析する、ろ紙滴下法がある。当該ろ紙滴下法によれば、液体試料をろ紙上において濃縮出来ることに加え、当該ろ紙を固体試料と同様の条件で測定することが可能である。この為、上述した気泡発生や、酸による影響等の課題を回避することが出来る。
しかしながら、当該ろ紙滴下法では、液体試料のろ紙への拡散面積が一定とならないことや、分析試料面(ろ紙)の凹凸が、分析結果に影響を及ぼすことがある。さらに、液体試料を乾燥する為にろ紙へ熱を加えると、当該ろ紙の収縮による測定面のゆがみが生じる等、分析結果の再現性に課題があった。
ここで、X線を液体試料に直接照射しない方法として、ろ紙滴下法の適用が考えられる
。しかしながら、液体試料におけるろ紙への拡散面積の不均一が、分析結果の再現性に影響を及ぼす。さらに、ろ紙中の液体試料を乾燥する為に当該ろ紙へ熱を加えると、当該ろ紙の収縮により測定面のゆがみが生じる等により、分析結果の再現性に課題があった。そこで、ろ紙を固定する試料保持具の適用が考えられた(特許文献3、4参照)。
さらに、ろ紙への液体試料の滴下量が過剰であると、液体試料乾燥時に塩の析出を招く場合がある為、予め、液体試料の濃度の定量化(滴下濃度の上限設定)が求められるものである。
液体試料中に含有される所定成分の濃度を定量分析する方法であって、
前記液体試料をろ紙へ含浸させた後、前記ろ紙へ荷重をかけながら、蛍光X線分析法によって前記所定成分の濃度を定量分析することを特徴とする液体試料の蛍光X線分析法である。
第2の発明は、
前記荷重をかける為の重しが、円柱形状を有していることを特徴とする第1の発明に記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第3の発明は、
前記ろ紙と前記重しとを密着させることにより、前記ろ紙へ均等な荷重をかけることを特徴とする第2の発明に記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第4の発明は、
前記ろ紙にかける荷重が2.5g/cm2以上であることを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第5の発明は、
前記荷重をかける為の重しが、前記ろ紙において液体試料を含浸させた部分の直上が中空である中空円柱形状を有していることを特徴とする第1の発明に記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第6の発明は、
前記ろ紙にかける荷重が6.9g/cm2以上であることを特徴とする第5の発明に記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第7の発明は、
前記重しが、フッ素樹脂製であることを特徴とする第2、第3、第5、第6の発明のいずれかに記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第8発明は、
前記フッ素樹脂が、PTFE、PFA、PCTFE、PVDF、PVF、ETFE、ECTFEの中から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする第7の発明に記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
第9の発明は、
前記ろ紙に含浸された前記所定成分の濃度が150μg/cm2未満であり、前記所定成分が金属元素を含有していることを特徴とする第1から第8の発明のいずれかに発明に記載の液体試料の蛍光X線分析法である。
被測定対象の液体試料中に含有される所定成分は、実用的にはNa(Z=11)以上の原子番号を持つ元素であれば良い。例えば近年、盛んに技術開発が進行している光学材料、電池材料等を考えると、当該所定元素として例えば、Coや希土類元素等の金属元素が挙げられる。
勿論、本発明は、被測定溶液中に含有される所定元素は、それぞれのXRFを用いた測定強度が同じような挙動でばらつきかつ、十分な測定感度が得られるものであれば、Coや希土類元素以外の元素が所定元素であっても適用可能である。
内部標準成分としては、前記被測定対象の液体試料中に含有されない元素を選択する。例えば所定元素としてCoを含有する液体試料に対する内部標準元素であれば、例えばY(イットリウム)を選択することが出来る。勿論Y以外の元素を内部標準元素として測定することも可能である。
前記所定元素と内部標準元素とを含む混合溶液の調製の際、重量として精確に量り取られた被測定対象の液体試料へ、当該液体試料中に含有されない元素を内部標準元素として含む内部標準溶液を、重量として精確に量り取って混合し、撹拌して混合溶液を得るという重量法により調製することが好ましい。
ここで、内部標準溶液は、内部標準元素を重量として精確に量り取り、一定重量の純水に混合して得られたものである。
この結果、当該混合溶液を得るまでの操作において、液体容量の測定操作を行うことなく、液体重量の秤量操作を行なうものとなり、高精度且つ迅速に定量分析を行う観点から好ましい。
媒体であるろ紙への液体試料を滴下する量は、数十μL程度の少量しか滴下することが出来ないので、一般的にマイクロピペットを使用して液体試料の一定容量を分取することとなる。しかしながら、作業者のマイクロピペットの操作習熟度が未熟な場合には、分取誤差が大きくなり、結果として精確な測定が行えない可能性がある。
ろ紙への混合溶液の滴下が完了したら、当該ろ紙を乾燥させる。乾燥方法としては、自然乾燥、ドライヤーを用いた乾燥等でも可能であるが、迅速且つ均一な乾燥を行う観点からは、電子レンジを用いた乾燥が好ましい。
ろ紙の乾燥が完了したら、当該ろ紙をXRF測定装置へ装填する。
ここで、混合溶液のXRF測定装置への装填について、図2、3を参照しながら説明する。
但し、図2はXRF測定装置おけるX線管、試料ホルダ付近の断面の模式図であり、図3は当該試料ホルダと、そこに設置される部材の模式図である。
図2に示すように、XRF測定装置には、X線管10、試料ホルダ20、X線検出器30が設けられている。
ここで試料ホルダ20について、(1)枠体、マスクおよびろ紙、(2)重し、の順に説明する。
図3(A)に示すように、枠体21は例えば筒状を有し、当該枠体の底部には支持部22があり、当該支持部は穴部23を有する。そして、枠体21内に設置されるマスク24は、平面ワッシャー状の円形金属平板であって、穴部25を有する。材質はアルミニウムや真鍮であり、厚みは1mm程度である。
当該観点から、一般的に(試料ホルダ20の穴部23の径)≧(マスク24の穴部25の径)である。
図2に示すように、本発明においては、当該ろ紙26のX線管10に相対しない側に、円柱形状の重し28が設置されている。当該円柱形状の重し28の斜視図を図3(D)に示す。そして、当該円柱形状の重し28は円柱形状を有し、枠体21の内部に収まる外径を有している。
尚、本発明において円柱形状とは、当該円柱の上面と下面とが同径であるものの他、上面と下面との径が若干異なる略円柱形状も含む概念である。
また、重しの異なる態様として図3(E)に、円柱形状の積層型重し41の斜視図を示す。
当該円柱形状の積層型重し41は、1枚以上のディスク形状の重し42の適宜枚を積層したものである。ディスク形状の重し42の積層枚数を増減することで、円柱形状の積層型重し41の重量を増減することが出来る。
一方、ろ紙26が収縮する際の応力に打ち勝って、ろ紙26の変形を抑止する観点およびろ紙26へ均等な荷重をかける観点から、重しは、ろ紙26のX線管10に相対しない側の全面を覆うことの出来る断面積を有していることが好ましい。
以上説明した重しの構成は、測定の定量性を担保する観点において優れるものである。
この結果、例えば、微弱なX2を測定する場合等には、当該バックグウラウンドのX線が僅かであっても、測定を妨害する可能性が考えられる。
直上が中空である中空円柱形状とする態様として、バックグウラウンドのX線発生を回避するという態様が考えられる。
そこで、当該態様に係る重しであって一体型のものの斜視図を図3(F)に、分割型のものの斜視図を図3(G)に示す。
以上説明した中空部を有する重しの構成は、微弱なX線を測定する観点において優れるものである。
ポリスチレン製試験管へ、所定元素としてCoを含有する被測定溶液1.0mLを、精密天秤を用いて0.1mgの桁まで精確に量り取った。
内部標準元素としてYを選択し、前記ポリスチレン製試験管へ、Y濃度が8g/Lの内部標準溶液3mLを、精密天秤を用いて0.1mgの桁まで精確に量り取った。
さらに、前記ポリスチレン製試験管を密栓し、攪拌して混合溶液を得た。
当該3枚のろ紙を10秒間以上放置した後に、電子レンジ(600W)へ装填し、2分間の加熱を行って乾燥させて、実施例1に係る分析サンプル1~3を得た。
また、同一試料を10回繰り返しXRF測定した結果、XRFの繰り返し測定精度は変動係数(RSD)が0.13%と良好であった。
一方、後述する、ろ紙への荷重を実施しなかった比較例1において、RSDの平均値が0.851%であったことから、ろ紙への荷重によって、XRFの繰り返し測定値の変動が大きく減少したことが理解出来る。
尚、実施例1においてRSDの値が0.401%と、最も小さかった分析サンプル2は、ろ紙の反りが少なかった分析サンプルである。
実施例1に係るろ紙(分析サンプル1~3)においては、青色の部分が、混合溶液の滴下点から外側へ向かって均一に分布しており、前記混合溶液がろ紙上に均一に拡がっていることが確認された。
上述したように実施例1において、実施例1においてRSDの値が0.40%と、最も小さかった分析サンプル2は、ろ紙の反りが少なかったものであった。そこで、測定面におけるろ紙の平滑性を保つ為、PTFEの重しの重量を増加した。
具体的には、ろ紙にかかる荷重を8.6g/cm2であって、均等な荷重とすることで、ろ紙の平滑性を保つこととした。この為、径50mmを有し40mmの厚みを有し、中空の物ではないPTFEを載置した。さらに、ろ紙と重しとの密着性が密着に留意した重しを使用した。
上述した以外は実施例1と同様にして、混合溶液中のCo濃度を測定した。測定した結果を表2に示す。表2の結果より、XRFの繰り返し測定精度の値は、RSDの平均値が0.379であった。即ち、XRFの繰り返し測定値におけるバラつきをさらに抑制出来ることが判明した。
また、実施例2に係るろ紙(分析サンプル1~3)においては、青色の部分が、混合溶液の滴下点から外側へ向かって均一に分布しており、前記混合溶液がろ紙上に均一に拡がっていることが確認された。
ろ紙へ混合溶液を滴下した後の乾燥操作、および、XRF測定の際に重しを載せない他は、実施例1、2と同様にして、混合溶液中のCo濃度を測定した。測定した結果を表3に示す。表3の結果より、XRFの繰り返し測定精度の値は、RSDの平均値が0.851%となり、実施例1、2と比較して、XRFの繰り返し測定値におけるバラつきが大きいことが判明した。
そして、ろ紙への荷重を実施しなかった比較例1に係るろ紙(分析サンプル1~3)においては、青色の部分が、混合溶液の滴下点から外側へ向かって均一に分布しておらず、厚み方向にもムラがあることが確認された。
20:試料ホルダ
21:枠体
22:支持部
23:穴部
24:マスク穴部
25:穴部
26:ろ紙
27:円周
28:円柱形状の重し
30:X線検出器
41:円柱形状の積層型重し
42:ディスク形状の重し
43:中空円柱形状の重し
44:中空部
45:中空円柱形状の積層型重し
46:中空ディスク形状の重し
X1:一次X線
X2:蛍光X線
Claims (5)
- 液体試料中に含有されるNa以上の原子番号を有する元素である所定成分の濃度を、蛍光X線分析法により定量分析する方法であって、
前記液体試料へ内部標準成分として前記所定成分と異なる元素の既知量を添加してろ紙へ含浸させた後、
前記蛍光X線分析法に用いるX線管に相対しない側の前記ろ紙の全面を覆う、PTFE、PFA、PCTFE、PVDF、PVF、ETFE、ECTFEの中から選択されるいずれか1種以上のフッ素樹脂製の重しにより、前記ろ紙へ荷重をかけながら、蛍光X線分析法によって前記所定成分と前記内部標準成分との蛍光X線強度を測定し、前記所定成分と前記内部標準成分とのX線強度比を算出して、前記所定成分の濃度を定量分析することを特徴とする液体試料の蛍光X線分析法。 - 前記荷重をかける為の重しが、円柱形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体試料の蛍光X線分析法。
- 前記ろ紙と前記重しとを密着させることにより、前記ろ紙へ均等な荷重をかけることを特徴とする請求項1または2に記載の液体試料の蛍光X線分析法。
- 前記ろ紙にかける荷重が2.5g/cm2以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体試料の蛍光X線分析法。
- 前記ろ紙に含浸された前記液体試料の滴下量が150μg/cm2未満であり、前記所定成分が金属元素を含有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体試料の蛍光X線分析法。
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