以下図面を参照して、電流検出器を有するモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施するための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本開示の実施形態によるモータ駆動装置を示すブロック図である。ここでは、一例として、モータ駆動装置1によりモータ2を駆動する場合について説明する。ここで、モータ2が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。なお、モータ2の種類は本実施形態を特に限定するものではなく、直流モータであっても交流モータであってもよい。また、モータ2の個数についても本実施形態を特に限定するものではない。図1では、説明を簡明にするために、電流検出器12及びADコンバータ13を有する電流検出回路40を1つとしたが、モータ2の種類や制御方法などに応じて複数設けられてもよい。例えば、モータ2が三相交流モータである場合は、三相のうちの二相または三相全てに電流検出回路40が設けられる。例えば、モータ2が単相交流モータである場合は、各相に電流検出回路40が設けられる。例えば、モータ2が直流モータである場合は、例えば正極側の電源線上に電流検出回路40が設けられる。
モータ2を駆動する一実施形態によるモータ駆動装置1は、電力変換部11と、電流検出器12と、ADコンバータ13と、フィードバック電流値生成部14と、電流制御部15と、補正指令部16と、発振限界検出部17と、応答時間推定部18とを備える。電流検出器12とADコンバータ13とで電流検出回路40が構成される。また、フィードバック電流値生成部14、電流制御部15、補正指令部16、発振限界検出部17、及び応答時間推定部18は、モータ制御部50内に設けられる。モータ制御部50は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、この場合、モータ駆動装置1内の演算処理装置にこのソフトウェアプログラムを動作させて各部の機能が実現される。またあるいは、モータ制御部50の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路を、例えば既存のモータ駆動装置に取り付けることによって、モータ制御部50の機能を実現してもよい。
電力変換部11は、モータ制御部50からの指令に基づき制御され、モータ2に駆動電流を供給する。モータ2が交流モータである場合は、電力変換部11は、例えば交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換する整流器とこの直流電力を交流電力に変換して交流の駆動電力をモータ2に供給するインバータとで構成される。あるいは例えば、電力変換部11は、バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換して交流の駆動電力をモータ2に供給するインバータとして構成される。また、モータ2が直流モータである場合は、例えば、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換して直流の駆動電流をモータ2に供給する整流器や、バッテリから印加される直流電圧を適切な直流電圧に変換して直流の駆動電流をモータ2に供給するDCDCコンバータとして構成される。なお、ここで定義した電力変換部11の構成はあくまでも一例であって、例えば、電源やバッテリなどの用語を含めて電力変換部11の構成を定義してもよい。
電流検出器12は、電力変換部11からモータ2へ流れる電流を検出する。電流検出器12の電流検出方式としては、例えばシャント抵抗を用いたものやホール素子を用いたものなどがある。電流検出器12によって検出された電流に関するアナログ信号は、ADコンバータ13に入力される。
ADコンバータ13は、電流検出器12が検出した電流に関するアナログ信号をディジタルデータに変換して出力する。ADコンバータ13では、電流検出器12によって検出された電流に関する連続的なアナログ信号の振幅値を離散的な周期(サンプリング周期)で切り出すサンプリング処理、離散的な周期で切り出された振幅値を離散的な振幅値に近似する量子化処理、及び、離散的な振幅値を「0」と「1」の2値で表す符号に変換する符号化処理が行われる。ADコンバータ13のアナログディジタル変換方式としては、例えば逐次比較型及びΔΣ変調型がある。ADコンバータ13から出力された電流に関するディジタルデータは、モータ制御部50内のフィードバック電流値生成部14に入力される。
フィードバック電流値生成部14は、ADコンバータ13が出力したディジタルデータに基づいて、モータ制御のためのフィードバック電流値を生成する。フィードバック電流値生成部14は、ADコンバータ13が出力したディジタルデータをサンプリングするサンプリング部31と、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータをフィードバック電流値に換算して出力する換算部32とを有する。
フィードバック電流値生成部14で生成されたフィードバック電流値は、電流制御部15に入力される。電流制御部15は、モータ制御部50によるモータ駆動のための制御ループとして、フィードバック電流値に基づくデータを用いて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御する電流制御ループを有し、モータ2の速度、トルク、または回転子の位置を制御するための指令を生成する。より詳しくは、モータ制御部50では、モータ2の動作プログラムに従って、速度検出器(図示せず)によって検出されたモータ2の速度(速度フィードバック)とモータ2に対する所定の速度指令とに基づいて電流指令が作成され、電流制御部15は、電流指令とフィードバック電流値生成部14から入力されたフィードバック電流値とに基づいて、モータ2の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するための指令を生成する。なお、モータ制御部50については、例えば、位置指令作成部、速度指令部、トルク指令作成部、及びスイッチング指令作成部などの用語を含めてモータ制御部50の構成を規定してもよい。
モータ制御部50内の電流制御部15からの指令に基づき、電力変換部11は、その電力変換動作が制御されてモータ2に駆動電流を供給する。これにより、モータ2は、電力変換部11から供給される駆動電流に基づいて、速度、トルク、または回転子の位置が制御されることになる。
特に、本実施形態では、モータ2に対する運転モードには、通常モード及び発振限界検出モードの2モードがある。通常モードは、モータ2を駆動制御するための本来の運転モードである。一方、発振限界検出モードは、電流制御部15の電流制御ループの発振限界の検出及びフィードバック電流値に対する補正量の決定が行われるモードであり、通常モードの前に設けられる。通常モードにおいては、電流制御部15には、補正指令部16による補正指令によりフィードバック電流値生成部14において補正されたフィードバック電流値が入力される。よって、電流制御部15は、通常の運転モードにおいては、モータ2の動作プログラムに従って生成された「所定の電流指令」とフィードバック電流値生成部14から出力された「補正済のフィードバック電流値」とに基づいて、電力変換部11の電力変換動作を制御するための指令を生成する。一方、発振限界検出モードにおいては、電流制御部15には、フィードバック電流値生成部14からそのまま出力された「補正されていないフィードバック電流値」が入力される。発振限界検出モードにおいては、電流制御部15は、「電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流が一定となるようする電流指令」とフィードバック電流値生成部14から出力された「補正無しのフィードバック電流値」とに基づいて、電力変換部11の電力変換動作を制御するための指令を生成する。
補正指令部16は、電流制御部15の電流制御ループの発振限界の比例ゲインに応じて、フィードバック電流値生成部14に対し、フィードバック電流値の補正を指令する。補正指令部16によるフィードバック電流値生成部14に対する補正指令は、通常モードにおいて行われるが、補正指令部16で用いられるフィードバック電流値に対する補正量の決定は、発振限界検出モードにおいて行われる。補正指令部16による補正指令処理の詳細については後述する。
発振限界検出部17は、発振限界検出モードにおいて、電流制御部15の電流制御ループの発振限界に対応する比例ゲインを検出する。発振限界検出部17により検出された電流制御ループの発振限界の比例ゲインに関するデータは、補正量指令部16及び応答時間推定部18に入力される。なお、発振限界検出部17は、モータ2に対する通常モードにおいては動作しない。発振限界検出部17によるお発振限界検出処理の詳細については後述する。
応答時間推定部18は、電流制御部15の電流制御ループの発振限界の比例ゲインに応じて、電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間を推定する。電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間は、電流検出器12及びADコンバータ13からなる電流検出回路40の応答性を表すものであり、電流検出回路40は、応答時間が短いほど応答性が良いといえる。なお、電流検出回路40の応答性は、応答時間に代えて応答速度で表すことができる。電流検出回路40の応答速度は、電流検出器12が検出した電流がADコンバータ13によってディジタルデータに符号化されて出力されるまでの、電流検出回路40の処理速度として規定される。この規定に従えば、電流検出回路40は、応答速度が速いほど応答性が良いといえる。応答時間推定部18は、電流制御部15の電流制御ループの発振限界の比例ゲインが大きいほど、応答時間が短い(応答速度が速い)と推定する。応答時間推定部18による応答時間推定処理の詳細については後述する。
続いて、電力変換部からモータに流れる実電流と電流検出回路による検出電流との関係について説明する。
図2は、電力変換部からモータに流れる実電流と電流検出回路による検出電流との関係を説明する図であって、(A)は、電力変換部からモータに流れる実電流の波形を例示する図であり、(B)は(A)に示した実電流の波形のうち点線で囲まれた部分を拡大した図であり、(C)は(B)に示した実電流の波形のうち点線で囲まれた部分を拡大して電流検出回路による検出電流との関係を模式的に示した図である。
電流検出回路40の応答性(検出速度)の違いにより、同一の実電流に対して電流検出回路40から出力される検出電流に相違が生じる。電流検出回路40内の電流検出器12は、例えばシャント抵抗を用いたものの方がホール素子を用いたものよりも応答時間が短い(応答速度が速い)。また、電流検出器12及びその後段のADコンバータ13を含む電流検出回路40を構成する部品の個体差(部品由来のばらつき)や電流検出回路40が古い機種であるか新しい機種であるかといった性能の相違などによっても、応答時間(応答速度)も変わってくる。図2(C)に示すように、同一の実電流の波形に対し、応答時間が長い電流検出回路40から出力される検出電流の波形(図中、一点破線で示す。)は、応答時間が短い電流検出回路40の波形(図中、破線で示す。)に比べ、時間的に遅れたものになる。このように電流検出回路40の応答性(検出速度)に違いがあると、電流検出回路40の後段に設けられるフィードバック電流値生成部14内のサンプリング部31が、電流検出回路40内のADコンバータ13が出力したディジタルデータに対し同一のタイミング(時刻t0)でサンプリング動作を実行したとき、サンプリング部31によってサンプリングされるディジタルデータの電流値は、電流検出回路40の応答性(検出速度)の違いに応じて異なったものとなる。そこで、モータ2に対する通常モードにおいては、補正指令部16は、電流検出回路40の応答性(検出速度)の相違に依存せずにモータの制御性を維持するために、同一の実電流に対してはフィードバック電流値生成部14から同一のディジタルデータのフィードバック電流値が安定して電流制御部15に入力されるよう、フィードバック電流値生成部14に対してフィードバック電流指令値を補正する指令を行う。
続いて、発振限界検出部17による発振限界検出処理及び応答時間推定部18による応答時間推定処理について説明する。
図3は、一般的なフィードバック制御システムを示すブロック図である。図3に示すように、一般的なフィードバック制御システムでは、伝達関数G(s)で表される制御要素前向き要素)の出力Xが、伝達関数H(s)で表されるフィードバック要素によってフィードバックされ、基準入力Uと出力Xとの偏差がゼロになるように制御される制御ループが構成される。フィードバック要素H(s)の遅れ時間が大きくなるほど、入出力の位相差が大きくなり、制御ループの安定性は下がり、発振し易くなる。また、制御要素G(s)の比例ゲインを大きくしていくと、制御ループの応答時間は徐々に短くなる(応答速度は徐々に速くなる)ものの、オーバーシュート・アンダーシュートが大きくなるので出力Xは振動的になっていく。制御要素G(s)の比例ゲインをさらに大きくしていくと、ある大きさところで出力Xは発振してしまう。このように発振する直前の比例ゲインの大きさを、本明細書では「発振限界の比例ゲイン」と称する。フィードバック要素H(s)の応答速度が遅いほど、発振限界の比例ゲインが小さくなる。よって、発振限界の比例ゲインを測定(検出)すれば、制御ループの応答時間(応答速度)を推定することができる。
本実施形態におけるモータ駆動装置1も、モータに流れる電流を制御するフィードバック制御システムである。つまり、電流検出回路40がフィードバック要素H(s)に対応し、電流制御部15の電流制御ループ(より正確には、電流制御部15の電流制御ループ及び電力変換部11を含む部分)が制御要素G(s)に対応する。フィードバック要素H(s)である電流検出回路40の応答速度が遅いほど、発振限界の比例ゲインが小さくなる。本実施形態では、発振限界検出部17により、電流制御部15の電流制御ループにおける発振限界の比例ゲインを検出(測定)し、応答時間推定部18により、電流制御ループの応答時間(応答速度)を推定する。なお、電流検出回路40の電流検出精度そのものが悪い場合においても、フィードバック電流値生成部14が出力する電流の振動が大きくなるが、本実施形態では、電流検出回路40の応答時間(応答速度)に起因する振動にのみ着目する。一般に、電流検出回路40の電流検出精度そのものが悪い場合における電流検出精度に起因する振動の大きさよりも、比例ゲインが発振限界を超えたことにより発生する振動(すなわち発振)の大きさは非常に大きい。したがって、比例ゲインを徐々に大きくしていったときにおいて、発振する直前の比例ゲインの大きさを観測することは十分可能であるので、電流検出回路40の電流検出精度については特に考慮しなくてもよい。
発振限界の比例ゲインを検出する発振限界検出部17は、図1に示すように、電流制御部15に対して電流制御ループの比例ゲインを指令するゲイン指令部21と、電流制御部15に対して電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流が一定となるように指令する電流指令部22と、電流制御部15に対し電流指令部22が駆動電流が一定となるように指令しかつゲイン指令部21が指令する比例ゲインを所定の刻み幅で徐々に上げていったときの、フィードバック電流値生成部14により生成されるフィードバック電流値を比例ゲインごとに観測する観測部23と、観測部23により観測されたフィードバック電流値の変動幅が所定の範囲より大きくなったか否かを判定する判定部24と、判定部24によりフィードバック電流値の変動幅が所定の範囲より大きくなったと判定されたときに指令されていた比例ゲインの直前に指令された比例ゲインを、発振限界の比例ゲインとして確定する確定部25とを有する。発振限界検出部17による発振限界検出処理は、通常モードの前に設けられる発振限界検出モードにおいて実行される。例えば、モータ駆動装置1で実際の運用(通常モード)にてモータ2を駆動する前に、モータ駆動装置1を発振限界検出モードにて駆動して発振限界検出部17による発振限界検出処理を実行すればよい。なお、発振限界検出部17内の電流指令部22は、発振限界モードにおいて動作するものであり、通常モードにおいて電流制御部15に供給される電流指令を生成する電流指令部とは異なるものである。
図4は、電流制御ループの比例ゲインを説明する図であって、(A)は発振限界検出部内の電流指令部が指令する電流指令を示し、(B)は電流制御ループの比例ゲインが発振限界よりも小さい場合におけるフィードバック電流値を示し、(C)は電流制御ループの比例ゲインが発振限界よりも大きい場合におけるフィードバック電流値を示す。
発振限界検出部17内の電流指令部22は、発振限界検出モードにおいて、図4(A)に示すように、電流制御部15に対して電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流が一定となるような電流指令IINSを出力する。電流指令部22により指令される電流制御ループの比例ゲインが発振限界よりも小さい場合、図4(B)に示すように、観測部23により観測されるフィードバック電流値は振動幅が小さい。電流指令部22により指令される電流制御ループの比例ゲインを徐々に上げていき、発振限界を超えると、図4(C)に示すように観測部23により観測されるフィードバック電流値は急激に大きくなり、「発振」が発生する。
本実施形態では、電流指令部22は、電流制御部15に対し電流指令部22が駆動電流が一定となるように指令し(図4(A))、ゲイン指令部21は、電流制御部15に対して、電流制御ループの比例ゲインを、所定の刻み幅で徐々に上げていく指令を行う。観測部23は、電流指令部22による電流指令一定の下、ゲイン指令部21が指令する比例ゲインを所定の刻み幅で徐々に上げていったときの、フィードバック電流値生成部14により生成されるフィードバック電流値IFBを比例ゲインごとに観測する。判定部24は、観測部23により観測されたフィードバック電流値IFBの変動幅が、下限閾値Ith1と上限閾値Ith2とで定まる所定の範囲より大きくなったか否かを判定する(図4(B)及び図4(C))。確定部25は、判定部24によりフィードバック電流値IFBの変動幅が上記所定の範囲より大きくなったと判定されたときに指令されていた比例ゲインの直前に指令された比例ゲインを、発振限界の比例ゲインとして確定する。応答時間推定部18は、確定部25により確定された発振限界の比例ゲインに応じて、電流検出回路40の応答時間(電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間)を推定する。発振限界の比例ゲインが大きいほど、推定される電流検出回路40の応答時間は短くなり(応答速度は速くなり)、発振限界の比例ゲインが小さいほど、推定される電流検出回路40の応答時間は長くなる(応答速度は遅くなる)。なお、ゲイン指令部21により上げられる電流制御ループの比例ゲインの刻み幅が小さいほど、判定部24による判定精度が向上し、したがって応答時間推定部18による推定精度も向上する。判定部24により発振の発生の有無の判定に用いられる下限閾値Ith1と上限閾値Ith2については、電流制御ループの比例ゲインを徐々に上げていくとフィードバック電流値IFBの変動幅は徐々に大きくなるが、ある比例ゲインにて変動幅が急激に大きくなり発振状態になることから、フィードバック電流値IFBを挟むように適当な大きさに設定すればよい。
続いて、フィードバック電流生成部14に対する補正指令部16による補正指令処理について、サンプリング部31によるサンプリング動作の調整内容を指令する場合(第1形態)と換算部32による換算内容を指令する場合(第2形態)に分けてより詳細に説明する。第1形態及び第2形態による補正指令部16は、モータ2に対する通常モードにおいて動作するものであるが、補正指令部16で用いられる補正量については発振限界検出モードにおいて発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインに基づいて決定される。
上述のように、発振限界の比例ゲインが大きいほど、電流検出回路40の応答時間は短くなり(応答速度は速くなり)、発振限界の比例ゲインが小さいほど、電流検出回路40の応答時間は長くなる(応答速度は遅くなる)。つまり、電流検出回路40の応答時間(応答速度)の相違は、発振限界の比例ゲインの相違に起因するものである。図2を参照して説明したように、電流検出回路40の応答時間(応答速度)に違いがあると、フィードバック電流値生成部14内のサンプリング部31が電流検出回路40内のADコンバータ13が出力したディジタルデータに対し同一のタイミングでサンプリング動作を実行したとき、サンプリング部31によってサンプリングされるディジタルデータの電流値は、電流検出回路40の応答時間(応答速度)の違いに応じて異なったものとなる。換言すれば、サンプリング部31によってサンプリングされるディジタルデータの電流値は、発振限界の比例ゲインの違いに応じて異なったものとなる。
第1形態による補正指令部16は、フィードバック電流値生成部14に対するフィードバック電流値の補正指令として、サンプリング部31に対し、発振限界の比例ゲインに応じて、ADコンバータ13が出力したディジタルデータに対して実行されるサンプリング部31によるサンプリング動作の調整内容を指令する。より具体的には、第1形態による補正指令部16は、通常モードにおいて電流検出回路40の応答時間(応答速度)の相違に依存せずにモータの制御性を維持するために、サンプリング部31が所定の標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングにてサンプリングしたときと同じディジタルデータがフィードバック電流値生成部14から出力されるよう、サンプリング部31に対し、発振限界の比例ゲインに応じて、ADコンバータ13が出力したディジタルデータをサンプリングするタイミングを変更する指令を行う。
図5は、応答時間が標準応答時間よりも長い電流検出回路の後段に設けられたフィードバック電流値生成部に対する第1形態による補正指令部の動作を説明する図である。第1形態による補正指令部16は、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも小さい場合(すなわち電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間が所定の標準応答時間よりも長い場合)、サンプリング部31に対し、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングにてサンプリングしたときと同じディジタルデータがフィードバック電流値生成部14から出力されるよう、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングよりもサンプリングのタイミングを遅らせる指令を行う。ここで、標準比例ゲインは、電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間について予め設定された標準応答時間に対応するものであり、例えば、通常モードにおいて電流検出回路40の応答時間(応答速度)の相違に依存せずにモータの制御性を維持するために予め規定されるものである。例えば、通常モードでモータ駆動装置1を動作させる前に、実験により、電流制御ループの比例ゲインをある値に設定してモータ駆動装置1を動作させ、モータ2へ流れる実電流と電流検出回路40により検出された検出電流の波形を比較して応答時間を測定し、このときの比例ゲイン及び応答時間を「標準比例ゲイン」及び「標準応答時間」として設定すればよい。この補正指令は、例えば、応答時間が標準応答時間よりも長い(応答速度が遅い)電流検出回路40について、標準応答時間を有する電流検出回路と同じディジタルデータが出力されるように調整する場合が対応する。すなわち、応答時間が短い電流検出回路における応答時間及び比例ゲインが上記「標準応答時間」及び「標準比例ゲイン」に対応し、応答時間が長い電流検出回路40が第1形態による補正指令部16による補正対象に対応する。例えば図5に示すように、補正指令部16により、補正対象である応答時間が長い電流検出回路40内のADコンバータ13から出力されたディジタルデータに対するサンプリング部31のサンプリングタイミングを、元々の時刻t1から標準応答時間を有する電流検出回路におけるADコンバータのサンプリングタイミングである時刻t2まで遅らせる。これにより、同一の実電流の値(図5ではI1)に対し、補正対象である応答時間が長い電流検出回路40の後段に設けられたフィードバック電流値生成部14からは、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングにてサンプリングしたときと同じディジタルデータの電流値I1が出力されるようにする。
図6は、応答時間が標準応答時間よりも短い電流検出回路の後段に設けられたフィードバック電流値生成部に対する第1形態による補正指令部の動作を説明する図である。第1形態による補正指令部16は、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも大きい場合(すなわち電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間が所定の標準応答時間よりも短い場合)、サンプリング部31に対し、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングにてサンプリングしたときと同じディジタルデータがフィードバック電流値生成部14から出力されるよう、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングよりもサンプリングのタイミングを早める指令を行う。この補正指令は、例えば、応答時間が標準応答時間よりも短い(応答速度が速い)電流検出回路40について、標準応答時間を有する電流検出回路と同じディジタルデータが出力されるように調整する場合が対応する。すなわち、応答時間が長い電流検出回路における応答時間及び比例ゲインが上記「標準応答時間」及び「標準比例ゲイン」に対応し、応答時間が短い電流検出回路40が第1形態による補正指令部16による補正対象に対応する。例えば図6に示すように、補正指令部16により、補正対象である応答時間が短い電流検出回路40内のADコンバータ13から出力されたディジタルデータに対するサンプリング部31のサンプリングタイミングを、元々の時刻t3から標準応答時間を有する電流検出回路におけるADコンバータのサンプリングタイミングである時刻t4まで早める。これにより、同一の実電流の値(図5ではI1)に対し、補正対象である応答時間が長い電流検出回路40の後段に設けられたフィードバック電流値生成部14からは、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングにてサンプリングしたときと同じディジタルデータの電流値I1が出力されるようにする。
図7は、第1形態による補正指令部で用いられる検出タイミング補正量を例示する図である。一例として、電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間についての標準応答時間を3.0μsとし、これに対する電流制御部15の電流制御ループについての発振限界の標準比例ゲインを10000とした場合を示す。発振限界検出モードにおいて発振限界検出部17が検出した電流制御ループの発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも小さい場合は、電流検出回路40の応答時間が長い(応答速度が遅い)ので、第1形態による補正指令部16は、サンプリング部31に対し、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングよりもサンプリングのタイミングを遅らせるために、当初のサンプリングタイミング時刻に時間的補正量として検出タイミング補正量を加算する。例えば、発振限界検出モードにおいて発振限界検出部17が検出した電流制御ループの発振限界の比例ゲインが8000の場合は、サンプリング部31のサンプリングタイミングを1.0μs(マイクロ秒)遅らせる。また、発振限界検出モードにおいて発振限界検出部17が検出した電流制御ループの発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも大きい場合は、電流検出回路40の応答時間が短い(応答速度が速い)ので、第1形態による補正指令部16は、サンプリング部31に対し、標準比例ゲインに対応して設定されたタイミングよりもサンプリングのタイミングを早めるために、当初のサンプリングタイミング時刻から検出タイミング補正量を減算する。例えば、発振限界検出モードにおいて発振限界検出部17が検出した電流制御ループの発振限界の比例ゲインが11000の場合は、サンプリング部31のサンプリングタイミングを0.5μs早める。なお、図7に記載した数値はあくまでも一例である。
第2形態による補正指令部16は、通常モードにおいて電流検出回路40の応答時間(応答速度)の相違に依存せずにモータの制御性を維持するために、フィードバック電流値生成部14に対するフィードバック電流値の補正指令として、換算部32に対し、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるよう、発振限界の比例ゲインに応じて、ADコンバータ13が出力したディジタルデータに対して実行される換算部32による換算内容を指令する。換算部32は、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータをフィードバック電流値に換算して出力するものである。第2形態による補正指令部16の補正指令により、換算部32は、その換算処理中において、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値に対して、発振限界の比例ゲインに応じた電流値に相当する補正量を、サンプリング部31によるサンプリング時点におけるADコンバータ13から出力される電流の増加または減少に応じて加算または減算する。
なお、サンプリング部31によるサンプリング時点におけるADコンバータ13から出力される電流が増加中であるか減少中であるかの判定は、例えば、所定時間期間中におけるADコンバータ13から出力される電流の増加率及び減少率の計算結果に基づいて行ってもよい。また例えば、ADコンバータ13から出力される電流が増加中のみまたは減少中のみ、サンプリング部31によるサンプリング及び補正指令部16の補正指令を行うようにしてもよい。また例えば、サンプリング部31によるサンプリングが電流の増加中あるいは減少中のどちらで行われるか予め決まっている場合に、サンプリング部31によるサンプリングが行われる電流の増加中または減少中のどちらかで補正指令部16の補正指令を行うようにしてもよい。
図8は、応答時間が標準応答時間よりも長い電流検出回路の後段に設けられたフィードバック電流値生成部に対する第2形態による補正指令部の動作を説明する図である。第2形態による補正指令部16は、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも小さい場合(すなわち電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間が所定の標準応答時間よりも長い場合)において、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流が増加しているときは、換算部32に対し、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにするために、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値に発振限界の比例ゲインに応じた補正量を加算した値を出力するよう指令する。また、第2形態による補正指令部16は、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも小さい場合において、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流が減少しているときは、換算部32に対し、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにするために、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値から発振限界の比例ゲインに応じた補正量を減算した値を出力するよう指令する。この補正指令は、例えば、応答時間が標準応答時間よりも長い(応答速度が遅い)電流検出回路40について、標準応答時間を有する電流検出回路と同じディジタルデータが出力されるように調整する場合が対応する。すなわち、応答時間が短い電流検出回路における応答時間及び比例ゲインが上記「標準応答時間」及び「標準比例ゲイン」に対応し、応答時間が長い電流検出回路40が第2形態による補正指令部16による補正対象に対応する。
例えば図8に示すように、サンプリング部31によるサンプリング時点t1ではADコンバータ13から出力される電流は増加中であるので、補正指令部16により、補正対象である応答時間が長い電流検出回路40内のADコンバータ13から出力されたディジタルデータについてサンプリング部31が時刻t1にてサンプリングしたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値I1に、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインに応じた補正量を加算する。これにより、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値I2がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにする。また例えば、サンプリング部31によるサンプリング時点t2ではADコンバータ13から出力される電流は減少中であるので、補正指令部16により、補正対象である応答時間が長い電流検出回路40内のADコンバータ13から出力されたディジタルデータについてサンプリング部31が時刻t2にてサンプリングしたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値I4から、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインに応じた補正量を減算する。これにより、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値I3がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにする。
図9は、応答時間が標準応答時間よりも短い電流検出回路の後段に設けられたフィードバック電流値生成部に対する第2形態による補正指令部の動作を説明する図である。第2形態による補正指令部16は、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも大きい場合(すなわち電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間が所定の標準応答時間よりも短い場合)において、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流が増加しているときは、換算部32に対し、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるよう、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値から、発振限界の比例ゲインに応じた補正量を減算した値を出力するよう指令する。また、第2形態による補正指令部16は、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも大きい場合において、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流が減少しているときは、換算部32に対し、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるよう、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値に、発振限界の比例ゲインに応じた補正量を加算した値を出力するよう指令する。この補正指令は、例えば、応答時間が標準応答時間よりも短い(応答速度が速い)電流検出回路40について、標準応答時間を有する電流検出回路と同じディジタルデータが出力されるように調整する場合が対応する。すなわち、応答時間が長い電流検出回路における応答時間及び比例ゲインが上記「標準応答時間」及び「標準比例ゲイン」に対応し、応答時間が短い電流検出回路40が第2形態による補正指令部16による補正対象に対応する。
例えば図9に示すように、サンプリング部31によるサンプリング時点t3ではADコンバータ13から出力される電流は増加中であるので、補正指令部16により、補正対象である応答時間が短い電流検出回路40内のADコンバータ13から出力されたディジタルデータについてサンプリング部31が時刻t3にてサンプリングしたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値I6から、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインに応じた補正量を減算する。これにより、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値I5がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにする。また例えば、サンプリング部31によるサンプリング時点t4ではADコンバータ13から出力される電流は減少中であるので、補正指令部16により、補正対象である応答時間が短い電流検出回路40内のADコンバータ13から出力されたディジタルデータについてサンプリング部31が時刻t4にてサンプリングしたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値I8に、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインに応じた補正量を加算する。これにより、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値I7がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにする。
図10は、第2形態による補正指令部で用いられる電流値補正量の大きさを例示する図である。一例として、電流検出器12が電流を検出してからADコンバータ13が当該電流のディジタルデータを出力するまでの応答時間についての標準応答時間を3.0μsとし、これに対する電流制御部15の電流制御ループについての発振限界の標準比例ゲインを10000とした場合を示す。第2形態による補正指令部16の補正指令により、換算部32は、その換算処理中において、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値に対して、発振限界の比例ゲインに応じた電流値補正量を、サンプリング部31によるサンプリング時点におけるADコンバータ13から出力される電流の増加または減少に応じて加算または減算する。発振限界の比例ゲインに応じた電流値補正量の大きさは、発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインから離れた値になるほど、大きくなる。例えば、発振限界検出モードにおいて発振限界検出部17が検出した電流制御ループの発振限界の比例ゲインが8000の場合は電流値補正量の大きさは4A(アンペア)、発振限界の比例ゲインが9000の場合は電流値補正量の大きさは2A、発振限界の比例ゲインが11000の場合は電流値補正量の大きさは2A、発振限界の比例ゲインが12000の場合は電流値補正量の大きさは4Aである。また、発振限界の比例ゲインが10000の場合は電流値補正量の大きさは0Aである。発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも小さい場合は、第2形態による補正指令部16は、換算部32に対し、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流の増加中は、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値に発振限界の比例ゲインに応じた大きさを有する補正量を加算した値を出力するよう指令し、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流の減少中は、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値から発振限界の比例ゲインに応じた大きさを有する補正量を減算した値を出力するよう指令することで、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにする。また、発振限界検出部17により検出された発振限界の比例ゲインが標準比例ゲインよりも大きい場合は、第2形態による補正指令部16は、換算部32に対し、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流の増加中は、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値から発振限界の比例ゲインに応じた大きさを有する補正量を減算した値を出力するよう指令し、サンプリング部31によるサンプリング時点でADコンバータ13から出力される電流の減少中は、サンプリング部31によりサンプリングされたディジタルデータに基づいて換算されるフィードバック電流値に発振限界の比例ゲインに応じた大きさを有する補正量を加算した値を出力するよう指令することで、電流制御部15が所定の標準比例ゲインにて電力変換部11からモータ2に供給される駆動電流を制御したときと同じフィードバック電流値がフィードバック電流値生成部14から出力されるようにする。なお、図10に記載した数値はあくまでも一例である。
以上説明したように、本実施形態によるモータ駆動装置によれば、モータ駆動装置に複数設置される電流検出回路間や交換前後の電流検出回路間において、電流検出からディジタルデータ出力までの応答性(応答時間、応答速度)に差があったとしても、補正指令部により、補正対象の電流検出回路の後段に設けられたフィードバック電流値生成部に対して補正指令が行われるので、各電流検出回路から出力されるディジタルデータ化された電流検出値のバラツキを抑制することができる。本実施形態によるモータ駆動装置のモータ制御部内の電流制御部では、各電流検出回路から出力されるバラツキが抑制されたディジタルデータ化された電流検出値を用いて電流制御を行うので、電流検出器及びADコンバータを有する電流検出回路の応答性の相違に依存せずにモータの制御性を維持することができる。
また、本実施形態によるモータ駆動装置においては、モータ駆動装置に用いられる電流検出回路の交換に際し、交換前後において応答時間(応答速度)の互換性を重視した電流検出回路の調整も容易である。例えば、モータ駆動装置内の各種回路(例えば電流制御部や電力変換回路など)は従前のままとし、電流検出回路のみをコスト、大きさ、耐熱性、あるいは耐湿性などの点で優れ、かつ応答時間が短い(応答速度が速い)最新のものに交換する場合において、補正指令部により、同一の実電流に対して応答時間が長い(応答速度が遅い)従前の電流検出回路と同じディジタルデータ化された電流値が出力されるよう、電流検出回路の後段に設けられたフィードバック電流値生成部に対して補正指令が行われるので、交換前後における電流検出回路の応答時間(応答速度)の互換性を維持し、ひいてはモータの制御性を維持することができる。