JP7100490B2 - 突起付透湿防水シートおよびその製造方法、並びに外壁構造体および施工方法 - Google Patents

突起付透湿防水シートおよびその製造方法、並びに外壁構造体および施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、外壁構造体に通気空間を確保するための突起付透湿防水シートおよびその製造方法、並びに外壁構造体および施工方法に関する。
従来から、外壁構造体における通気構法が知られている。図6に示すように、通気構法による外壁構造体50は、柱51および間柱52などからなる骨組材の室外側に構造用合板などの構造用面材53およびその上に防水性を確保するため透湿防水シート54を設置し、更に窯業系サイディングや軽量気泡コンクリートパネルなどの外壁材55と透湿防水シート54との間に通気空間が形成されるように、通気胴縁56を配置してビスまたは釘57で構造用面材53を貫通させて通気胴縁56を骨組材に固定し、該通気胴縁56上に、ねじ58により外壁材55を固定している。その後、骨組材の間に断熱材59を充填し、室内側に防湿フィルム60および内装材61を設置する。
外壁材55と透湿防水シート54との間に通気空間を設けることにより、外部から浸入した雨水を外壁下端より滴下せしめ、また雨水より発生する水蒸気あるいは室内側から浸入する水蒸気を、通気空間を上方に向かい移動する空気の流れにより排出することによって、躯体である木材の湿潤を防ぎ、乾燥状態を維持させ、結果、躯体の耐久性を向上させる。
通気空間を有する外壁を施工するには、通気胴縁の設置を含む全作業を現場で行わなければならない。また、外壁の下端部から上端部まで上下方向に連続する通気空間を有する外壁を設置するには施工に長時間がかかり、材料費、人件費を含む施工費が高くなる、という問題があった。
これに対し、断熱性を保持しつつ、漏水の侵入を防止できるとともに、結露の発生を防止できる通気性を有するうえに、施工性の良い壁体構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、壁や屋根等の内部での結露の発生を未然に防ぐために、壁や屋根等の内部の通気性を簡便に確保することができる用材として、シート基材の一面に突起が設けられたスペーサーシートが提案されている(例えば特許文献2参照)。
実開昭60-124419号公報 特開2001-279839号公報
ところで、建物においては、外壁にサッシを利用して窓等の開口部を構成するのが一般的である。この開口部には、上下の梁の間隔と対応する長さを持った縦材とこの開口部の幅方向の寸法に対応する長さを持った横材を組み合わせて構成した開口補強材が配置される。
そして、たとえば窓を構成するサッシは開口補強材によって形成された四角い空間にサッシの下枠が外装材上端を覆う位置に配置され、このサッシ枠は開口補強材に直接的に、あるいは開口補強材の外側に配置された耐力面材を介して開口補強材に間接的に固定される。
しかしながら、特許文献1に記載の壁体構造において、外壁材として37mm厚の軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)を用いて外壁を構成した場合、標準仕様の外壁に比べて張り出し(ふかし)が大きくなる。そのため、標準規格化されたサッシを取り付けるには、寸法が異なるため、特別な手間が必要となる。
例えば、サッシ枠を開口補強材に直付けせず、木材スペーサーを用い外側にふかして取り付ける。この場合、木材スペーサーを取り付ける材料、施工手間が追加で発生することとなる。また、サッシを外側にふかす分、内部の化粧額縁は幅広のものを用いる必要がある。また、別の方法としてサッシの取り付けは通常と同じであるが、開口下側にサッシとは別に外壁材を覆う水切材を設ける必要がある。
また、特許文献2に記載のスペーサーシートでは、熱可塑性樹脂に可塑剤を加え、流動性を持たせたうえで、設定した突起を構成し、その後、加熱処理を行うことにより、加熱ゲル化、その後冷却により硬化、構成させることが記載されている。そのために、80~150℃の高温で2~3分の加熱条件が必要であることが例示されている。シート状の製品を製造する場合、ロール巻き取り等により、連続的に製造することが好適であり、かつ一般的である。そのラインスピードは生産性、コストに直結する要因であり、そのため15m/分程度のスピードは実質上必要条件とされる。ここで、2~3分の加熱時間が必要となると、80~150℃で乾燥させるヒーターのラインを30~45m程度設けねばならない。これはシートのように薄く、軽い製品を製造することを考慮すると、非常に過大な設備であると言わざるを得ない。
また、特許文献2に記載の技術では、透湿防水シートに直接樹脂を載置あるいは滴下し、加熱後冷却することにより樹脂突起を形成させ、シートに接着せしめている。ここで、外壁に用いる透湿防水シートは、防水性と透湿性を兼ね備える必要があり、一般的にポリエチレン系を主成分としている。一般にポリエチレン樹脂の使用可能温度は100℃以下であり、上記のように塩化ビニル樹脂を加熱ゲル化させる工程で、80~100℃に晒すことは好ましくない。
また、熱可塑性樹脂を加熱し溶融させた状態で、直接透湿防水シートに滴下し突起を構成する方法も考えられるが、この場合、溶融状態での樹脂温度が高温であるため、ポリエチレン系を主成分とする透湿防水シートを損傷させ、防水面で不具合を起こす可能性が高い。
さらに、加熱後の冷却または透湿防水シート上に溶融樹脂を直接滴下による樹脂突起の形成が可能になったとしても、樹脂突起は透湿防水シートに直接接着している状態となっている。シートに形成させる突起は、その高さ分、通気効果を持たせることが目的であるが、建物(主として木造戸建て住宅が多い)に使用する際、例えばシートの長さ方向の継ぎ目、開口部周り、笠木当接部などシート同志を重ねあわせることが必要な部分は多々存在する。ここで、突起は少なくとも数十mm程度の間隔で設けられるが、重ねあわせ部の各々のシートに突起が存在すると、重ね合せて施工することが困難であり、また本来の突起高さによる通気空間の幅を確保できない。
これを解消するためには、重ね合せ部にて下側となる部分のシートに接着された樹脂突起を除去するか、もしくは重ね合せる部分のみ、樹脂突起のないシートを別途用意し、下側に配置する必要がある。前者の場合、接着した樹脂突起を削除する際に、接着された基材である第1のシート層を破損させることになり、これは防水機能を期待されている透湿防水シートとしての機能を果たさないこととなる。また、後者の場合、この突起付シートとは別に、突起のない透湿防水シートを予め用意しておき、重ね合せ部分に相当する部分の寸法・形状に裁断し、設置することが必要になる。この場合、現場での透湿防水シート施工の簡略化、工数削減に相反することとなり、この技術を用いる意義のかなりの部分を失うこととなる。
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、通気胴縁を使用することなく、構造用面材と外壁材との間に十分な通気空間を長期にわたって確保することができる突起付透湿防水シートおよびその製造方法、並びに外壁構造体および施工方法を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討を行い、あらかじめ樹脂突起を設けた第2のシートと第1のシート層とを貼り合わせることにより上記目的を達成できることに想到し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
透湿性および防水性を有する第1のシート層と、透湿性および耐熱性を有する第2のシート層と、が接着剤にて貼り合わせられてなり、
前記第2のシート層の、第1のシート層と貼り合わせられた側とは反対側の面に、樹脂からなる複数の突起が、互いに間隔をあけて設けられていることを特徴とする、突起付透湿防水シート。
[2]
前記第1のシート層はポリエチレン系を主成分としたシートからなり、
前記第2のシート層はポリエステル系を主成分としたシートからなる、[1]に記載の突起付透湿防水シート。
[3]
前記突起は熱可塑性樹脂からなる、[1]または[2]に記載の突起付透湿防水シート。
[4]
前記熱可塑性樹脂はポリアミド樹脂である、[3]に記載の突起付透湿防水シート。
[5]
前記突起の高さは3~5mmである、[1]~[4]のいずれかに記載の突起付透湿防水シート。
[6]
隣接する前記突起同士の間隔は50~70mmである、[1]~[5]のいずれかに記載の突起付透湿防水シート。
[7]
前記突起が千鳥状に配されている、[1]~[6]のいずれかに記載の突起付透湿防水シート。
[8]
前記接着剤が、ポリオレフィン系接着剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の突起付透湿防水シート。
[9]
透湿性および耐熱性を有する第2のシート上に、熱により溶融させた樹脂を滴下し、冷却することにより該第2のシート上に複数の突起を形成する工程と、
第2のシート層の前記突起が形成された面とは反対側の面に、透湿性および防水性を有する第1のシート層を、接着剤を用いて貼り合わせる工程と、
を有することを特徴とする、突起付透湿防水シートの製造方法。
[10]
建物の基礎に固定された柱と、
前記柱の室外側に取り付けられた構造用面材と、
前記構造用面材の室外側に配された外壁材と、
[1]~[8]のいずれかに記載の突起付透湿防水シートと、を備えた外壁構造体であって、
前記突起付透湿防水シートは、前記突起が形成された側の面を室外側に向けて前記構造用面材に直接的または間接的に取り付けられ、
前記突起付透湿防水シートの室外側に外壁材が配され、
前記外壁材は、前記突起付透湿防水シートおよび前記構造用面材を貫通するビスにより前記柱に取り付けられている、外壁構造体。
[11]
前記構造用面材と前記突起付透湿防水シートとの間に断熱材が配されている、[10]に記載の外壁構造体。
[12]
前記外壁材が、軽量気泡コンクリートパネルである、[10]または[11]に記載の外壁構造体。
[13]
建物の基礎に固定された柱と、
前記柱の室外側に取り付けられた構造用面材と、
前記構造用面材の室外側に配された外壁材と、
[1]~[8]のいずれかに記載の突起付透湿防水シートと、を備えた外壁構造体の施工方法であって、以下の工程:
前記突起付透湿防水シートを、前記突起が形成された側の面を室外側に向けて前記構造用面材に直接的または間接的に取り付ける工程;
前記突起付透湿防水シートの室外側に外壁材を配する工程;および、
前記外壁材を、前記突起付透湿防水シートおよび前記構造用面材を貫通するビスにより前記柱に取り付ける工程;を有する、外壁構造体の施工方法。
本発明によれば、通気胴縁を使用することなく、構造用面材と外壁材との間に十分な通気空間を長期にわたって確保することができる突起付透湿防水シートおよびその製造方法、並びに外壁構造体および施工方法を提供することができる。
本発明の突起付透湿防水シートの一構成例を示す断面図である。 本発明の突起付透湿防水シートの一構成例を示す平面図である。 外壁構造体の一構成例を示す分解斜視図である。 外壁構造体の一構成例を示す断面図である。 本実施形態の突起付透湿防水シートについての圧縮試験結果を示す図である。 従来の外壁構造体の一例を示す分解斜視図である。
以下、本発明を実施するための例示の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。
<突起付透湿防水シート>
図1は、本発明の突起付透湿防水シートの好適な実施形態を示す断面図であり、図2は平面図である。
本発明の突起付透湿防水シート1は、透湿性および防水性を有する第1のシート層2と、透湿性および耐熱性を有する第2のシート層3と、が接着剤にて貼り合わせられてなり、第2のシート層3の、第1のシート層2と貼り合わせられた側とは反対側の面上に、樹脂からなる複数の突起4が、間隔をあけて設けられていることを特徴とする。
このような突起付透湿防水シート1は、後述するように外壁構造体10において、突起4が形成された側の面を室外側に向けて、構造用面材14に間接的または直接的に取り付けられ、突起付透湿防水シート1の室外側に外壁材15が配されることで、突起4により構造用面材14と外壁材15との間に通気空間21を確保することができ、さらに、この通気空間21を長期にわたって維持することができる。
(第1のシート層)
透湿性および防水性を有する第1のシート層2は、水は通さないが、気体(水蒸気等)は通す性質を有するシートである。このような第1のシート層2としては、特に限定されるものではないが、例えば、面密度が60g/m~120g/mのポリオレフィン系微多孔膜、面密度が40g/m~120g/mのHDPE(高密度ポリエチレン:High Density Polyethylene)極細連続長繊維不織布が用いられる。
第1のシート層2はポリエチレン系を主成分としたシートであることが好ましい。第1のシート層2としては、耐薬品性、破断、突き刺し強度の観点から高密度ポリエチレン製極細連続長繊維不織布が好ましい。この不織布は立体構造ウエブであり、繊維の隙間があるので通気性を有するが、フラットエンボスにより平滑性にも優れ、高密度ポリエチレンという素材から疎水性であり、透湿性(通気性)と防水性を同時に兼ね備えたものである。
第1のシート層2の厚さとしては、例えば0.03~0.5mm程度であり、0.1~0.3mmが好ましい(ミツトヨ製 マイクロメーターMDC-25Mにて測定)。
第1のシート層2の目付量としては、例えば15~250g/m程度であり、50~150g/mが好ましい。
(第2のシート層)
透湿性および耐熱性を有する第2のシート層3は、透湿性(通気性)、耐熱性および樹脂接着性を有するものであれば織物、編み物でも構わないが、コスト、撥水性、含水性の観点から不織布が好ましい。
不織布としては特に限定されるものではないが、熱可塑性合成繊維不織布が好ましく、繊維径が1~30μmの繊維を用いたスパンボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水柱交絡法などによる不織布が特に好ましい。
不織布の構成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド繊維などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維などである。
第2のシート層3はポリエステル系を主成分としたシートからなることが好ましい。特に、第2のシート層3としては、スパンボンド法のポリエステル長繊維不織布が、強度、剛性、耐熱性などから好ましい。
なお、本実施形態でいう「耐熱性」とは、溶融させた樹脂を滴下して突起4を形成する際における溶融樹脂の熱、接着時の加熱など、製造工程時の熱により影響を受けない程度の耐熱性があればよい。
第2のシート層3の厚さとしては、例えば0.025~0.25mm程度であり、0.05~0.15mmが好ましい(ミツトヨ製 マイクロメーターMDC-25Mにて測定)。
第2のシート層3の目付量としては、例えば5~50g/m程度であり、10~30g/mが好ましい。
(突起)
突起4は、熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられるが、中でもポリアミド樹脂が好ましい。
突起4の高さは特に限定されるものではないが、3~5mmが好ましい。
第2のシート層3上に形成される突起4の高さが、構造用面材14(外張断熱材18)と外壁材15との間に形成される通気空間21の幅になり、この突起4の高さにより外壁構造体10内の通気性能が決定される。必要な通気性能の目安として、従来の外壁構法で通常用いられる通気構法での性能値と考えることが合理的である。表1に従来構法での通気性能と通気空間の幅を変えて測定した通気性能(有効開口面積(cm))を比較して示す。
試験体として、外壁材であるALCパネルと構造用面材である合板との間に、突起を想定したピンで形成した通気空間を有する本構法による外壁構造体、および通気横胴縁を用いた従来構法による外壁構造体を作製した。外壁構造体の寸法(mm)は幅910×高さ910とし、本構法での試験体の通気空間の幅(mm)は2.1、3.3、4.5の3種類とした。従来構法(通気横胴縁)での試験体は、通気胴縁厚15mm、横胴縁間の隙間が標準モデュールである1820mm毎に30mm隙間とする比率に合わせ、幅910mmに対し15mm隙間とした。
試験体としての外壁構造体の下部を開放し、上部よりファンを使って通気層内に空気を流動させ、そのときの圧力と通気量の関係から、有効開口面積(αA)を求めた。その関係は圧力により変わるので、圧力9.8Pa時の値を以って示すのが一般的である。
Figure 0007100490000001
表1から、通気空間の幅が2.1mmでは従来構法の性能より劣り、3.3mmで従来の性能を上回る。したがって、通気空間の幅を確保するには、設置により突起が変形することをふまえ、突起4の高さは3mm以上であることが好ましい。突起4の高さを大きくするとこの性能はさらに向上するものの、突起4を高くすることは、樹脂量の増加や製造スピードの低下を招くこととなり、その観点から、突起4の高さは5mm以下とすることが好ましい。
突起4の形状としては、構造用面材14(外張断熱材18)と外壁材15との間に通気空間21を確保できるものであれば特に限定されるものではなく、突起4の断面形状として、例えば半球形、半楕円形等が挙げられる。また突起4の平面形状としても、例えば円形、長円形、楕円形、多角形、およびこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。
突起4の平面視における大きさ(直径)としては、特に限定されるものではないが、例えば5~10mmであることが好ましい。突起4が小さすぎると、上述したような必要高さを確保することが困難である。突起4が大きすぎると、突起4を構成する熱可塑性樹脂の使用量が増大し、コスト増につながる。
隣接する突起4の間隔は50~70mmであることが好ましい。70mmを超えると、壁面の上下左右を貫通して十分な通気空間21が確保できるものの、強度が低下し、突起4が潰れる等により、構造用面材14(外張断熱材18)と外壁材15との間に通気空間21を長期間に亘って確保することが困難となる可能性がある。一方、50mm未満であると、強度は確保できるものの突起4の数が多くなり、突起4を構成する熱可塑性樹脂の使用量が増大し、コスト高につながってしまう。また間隔が小さすぎると、壁面の上下左右を貫通する十分な通気空間21が確保できない可能性もある。上記範囲とすることにより、使用樹脂量の増大を防ぎつつ、構造用面材14(外張断熱材18)と外壁材15との間に十分な通気空間21を長期にわたって確保することができる。
突起4の配置方法としては特に限定されるものではないが、図2に示すように千鳥状に配されていることが好ましい。突起4を千鳥状に配置することにより、図中横方向に隣接する2つの突起4の中央付近の上下に別の突起4が配置されるため、施工時に突起4の間に生じるシートのたるみが少なくなり、通気性能が確保される。
(接着剤)
第1のシート層2と第2のシート層3とは、接着剤により貼り合わせられている。
接着剤としては特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系接着剤が好ましい。ポリオレフィン系接着剤を構成する樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンとプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1のような1種以上のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルやアクリル酸などの極性コモノマーとの共重合体などのようなポリエチレン系樹脂、プロピレンの単独重合体、プロピレンと1種以上のα-オレフィンとの共重合体などのようなポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。中でも160~170℃の融解温度で強固に接着できることから、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
<突起付透湿防水シートの製造方法>
次に、上述したような突起付透湿防水シート1の製造方法について説明する。
本実施形態の突起付透湿防水シートの製造方法は、熱により溶融させた樹脂を第2のシート層3上に滴下、冷却することにより複数の突起4を形成する工程と、
突起4が形成された第2のシート層3と、第1のシート層2とを接着剤を用いて貼り合わせる工程と、を有する。
(1) 熱可塑性樹脂を熱融解した状態で、第2のシート層3の表面に滴下して、その後冷却することにより熱可塑性樹脂を硬化させて複数の突起4を形成する。
熱可塑性樹脂の溶融は予め加熱可能なタンクにて行う。
なお、熱可塑性樹脂はそのまま樹脂のみとして使用してもよいが、例えばコスト低減のため、必要強度を満たす範囲で発泡して使用することもできる。例えば、ポリアミド樹脂を窒素にて2~3倍に発泡する方法が挙げられる。
(2)突起4が形成された第2のシート層3と、第1のシート層2とを接着剤を用いて貼り合わせる。
突起4が形成された第2のシート層3を、第1のシート層2に接着剤を用いて接着することにより、図1および2に示すような、本実施形態のシートを製造することができる。
このような本実施の形態の方法によれば、上記した特許文献2に記載された技術の問題点を解消することができる。
具体的には、例えば、突起4を形成するのに必要な樹脂の使用量は、突起4の高さやその間隔にもよるが、例えば突起4の高さが3mm、突起4の縦横間隔が50mmと仮定すると、20g/m(シート長さ1m)程度である。更に、ライン速度を15m/分、6時間連続稼働と仮定すると、シート総長さは5400mであり、樹脂使用量は108kgとなる。この容量を有するタンクの大きさや設置の困難度は、特許文献2に記載の突起付きシートを製造するのに必要と考えられる、30~45mの乾燥ラインを設けることと比較すると、はるかに軽微である。
また、例えば第2のシート層3をポリエステル不織布とすると、その軟化温度は200℃以上であり、熱で融解させた樹脂を滴下しても、第2のシート層3は損傷を受けず実用上の問題もない。
そして本実施形態の方法では、あらかじめ突起4を形成した第2のシート層3を、接着剤により第1のシート層2と接着一体化するため、耐熱性に比較的劣る第1のシート層2が直接高温に晒されることがなく、高温に起因する問題を解消することができる。
<外壁構造体>
つぎに、上述した突起付透湿防水シート1を備えた外壁構造体の実施形態について説明する。
図3は、本実施形態の外壁構造体の一構成例を示す分解斜視図であり、図4は断面図である。
外壁構造体10は、室内側から順に内装材11、柱12および間柱13、構造用面材14、外壁材15を備えて構成されており、木造軸組壁工法に用いられる構造を採用している。
内装材11は、外壁構造体10の室内側の壁面を構成する。内装材11は、例えば柱12などの構造部材の室内側に取り付けられた石膏ボードである。
内装材11の室外側に、防湿フィルム16が配されていてもよい。
柱12は、建物の土台(図示略)に固定され立ち上がっている。また、柱12と柱12の間に間柱13が配されている。
外壁構造体10の断熱性能を確保するために、柱12と間柱13の間及び間柱13と間柱13の間に、充填断熱材17が配されてもよい。充填断熱材17としては、例えば密度が16kg/mのグラスウールや、ロックウールなどの繊維系断熱材あるいは発泡プラスチック系断熱材などを用いることができる。
構造用面材14は、梁や土台とで構成された骨組(図示略)および柱12に釘打ちで固定され、この骨組および柱12に対して室外側に設けられている。このように、骨組および柱12と構造用面材14とが一体化されることにより、構造部材としての性能を発揮する。
構造用面材14は、例えば、厚さが9mm、密度が0.55g/cmである日本農林規格に適合した構造用合板等を用いることができる。
外壁構造体10の断熱性能をより高めるために、外張断熱材18を設置することも可能である。外張断熱材18は、構造用面材14の室外側の面に設けられている。外張断熱材18としては、例えばJIS A 9521建築用断熱材に規定される断熱材を用いることができる。その中で発泡プラスチック断熱材を用いる場合、外張断熱構法としての形成が容易である。さらにその中でフェノールフォーム断熱材は断熱性能に優れるため、同じ断熱性能を求める場合、外張断熱材の厚さを薄くできるためより好適である。発泡プラスチック断熱材は、例えば釘やテープを用いて、構造用面材14の室外側に張り付けられる。
構造用面材14(外張断熱材18)の室外側に、本実施形態の突起付透湿防水シート1が取り付けられている。突起付透湿防水シート1は、突起4が形成された側の面を室外側に向けて、例えば鋲打ちなどにより、構造用面材14(外張断熱材18)に取り付けられる。
突起付透湿防水シート1の室外側に外壁材15が配されている。
外壁材15は、外壁構造体10の室外側の壁面を構成する部材である。外壁材15は、例えば建築資材として工業化住宅等に用いられる規格化された軽量気泡コンクリート(ALC)パネルである。外壁材15は、建物の構造物の一つである柱12よりも室外側(すなわち、室内側とは反対側)に、複数配置されている。隣り合って並ぶ外壁材15の各端面同士は、柱12が配置された位置において互いに接している。
外壁材15は、突起付透湿防水シート1、構造用面材14(外張断熱材18)を貫通するビス19により、柱12に取り付けられる。
外壁材15の室外側に、外部仕上げ材20(塗装材)がさらに配されていてもよい。
このような外壁構造体10では、突起付透湿防水シート1が、突起4が形成された側の面を室外側に向けて構造用面材14(外張断熱材18)に取り付けられ、突起付透湿防水シート1の室外側に外壁材15が配されることで、突起4により構造用面材14(外張断熱材18)と外壁材15との間に通気空間21を確保することができ(図4参照)、さらに、樹脂からなる突起4は十分に硬いので、この通気空間21を長期にわたって維持することができる。
<外壁構造体の施工方法>
外壁構造体10の施工方法は、以下の工程:
突起付透湿防水シート1を、突起4が形成された側の面を室外側に向けて構造用面材14に直接的または間接的に取り付ける工程;
突起付透湿防水シート1の室外側に外壁材15を配する工程;および、
外壁材15を、突起付透湿防水シート1および構造用面材14を貫通するビス19により柱12に取り付ける工程;を有する。
(1)突起付透湿防水シート1を、突起4が形成された側の面を室外側に向けて構造用面材14に直接的または間接的に取り付ける。
突起付透湿防水シート1は、例えばタッカーを用いた鋲打ちなどにより、構造用面材14(外張断熱材18)に取り付けられる。
このとき、突起付透湿防水シート1の接合部分においては、シートの端部同士を所定の幅で重ね合わせて施工される。このとき、突起4があるため、重なり部分では凹凸が生じ、構造用面材14(外張断熱材18)への取り付けが良好に行われなかったり、通気空間21の確保が困難になるおそれがある。
本実施の形態に係る突起付透湿防水シート1において、樹脂の突起4は、直接には第2のシート層3に接着されているため、取り付けの際に、突起付透湿防水シート1同士を重ね合わせて接合する部分においては、重ね合せ後、下側となる部分の突起付透湿防水シート1に設けられた突起4を除去しても、第1のシート層2に損傷を与えることはなく、防湿および防水性能は維持される。これにより、上述したような問題は解決される。
なお、本実施の形態に係る方法により形成された突起4は、例えばスクレーバーなどを用いて削ぎ落とすことができるが、第2のシート層を不織布とした場合更にその作業は容易であり、施工上の負担は極めて軽微である。
(2)突起付透湿防水シート1の室外側に外壁材15を配する。
(3)外壁材15を、突起付透湿防水シート1および構造用面材14(外張断熱材18)を貫通するビス19により柱12に取り付ける。
本実施形態の外壁構造体10では、突起付透湿防水シート1を用いることにより、通気胴縁を用いなくとも、構造用面材14(外張断熱材18)と外壁材15との間に十分な通気空間21を長期にわたって確保することができる。
また、通気胴縁を用いていないので、通気胴縁自体の材料費や、通気胴縁を取り付けるための工期および人件費などを削減することができる。
突起付透湿防水シート1を用いた場合であっても、外壁の厚みを、通気胴縁を用いた場合と同等の厚みに収めることができる。
また、上述した説明では、柱12と間柱13の間及び間柱13と間柱13の間に、充填断熱材17が配されている場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、充填断熱材17が配されていなくてもよい。この場合、柱12と間柱13の間及び間柱13と間柱13の間は空気層となる。
さらに、外壁構造体10では、外壁材15として厚さ37mmのALCパネルを用いた場合であっても、突起付透湿防水シート1の厚みは、例えば厚さ15mmの通気胴縁に比べて非常に薄いので、標準仕様の外壁に比べて外壁構造体全体としての張り出し(ふかし)を小さく抑えることができる。
したがって、この外壁構造体10にサッシを利用して窓等の開口部を構成する場合、標準規格化されたサッシを用いることができる。戸建住宅の規格化が進んだ現在において、標準規格外の部品を用いることは部品の入手や材料費の面で負担が大きく、このように標準規格化された部品を用いることのメリットは極めて大きい。このように、従来(特許文献1)のように、木材スペーサーや水切材を新たに設ける手間や材料費を削減する効果は大きい。
本実施形態の突起付透湿防水シートについて行った、突起の劣化処理後の圧縮試験について説明する。
1.シートの作製
ポリアミド樹脂を180℃に加熱することにより溶融させ、スパンボンド法のポリエステル繊維不織布からなる第2のシート層(厚さ0.08mm(ミツトヨ製 マイクロメーターMDC-25Mにて測定)、目付量18g/m)上に滴下し、その後冷却することにより、第2のシート層の表面に複数の楕円状突起(平面大きさ長軸半径10mm、短軸半径6mm、高さ3.2mm、突起間隔55~60mmの格子状配置)を形成した。
第1のシート層として高密度ポリエチレン繊維不織布としたシート(厚さ0.17mm、目付量61g/m、透湿抵抗0.12m2・s・Pa/μg、防水性17KPa)(旭・デュポン フラッシュスパンプロダクツ(株)製 タイベックハウスラップハードタイプ)を用意した。第2のシート層の突起が形成された側とは反対側の面に、ポリオレフィン系接着剤(目付量5g/m)を用いて、第1のシート層を貼り合わせることにより、突起付透湿防水シートを作製した。
2.試験方法
(1)樹脂突起の劣化処理方法
JIS A6111(透湿防水シート) 7.7 耐久性での処理方法、に準拠し、サンシャインカーボンアークランプ照射後、90℃加熱処理を行った。なお、加熱期間はJIS規定では49日であるが、より厳しい条件として約1.5倍にあたる76日間とした。
(2)圧縮試験
(1)の劣化処理を行った後にシートの突起部に加圧し、荷重と変形量を測定し、劣化処理を行っていないものと比較を行った。
試験片は突起6個を有するシートとし、万能試験機TG-5KNで突起部を圧縮し、圧縮力と変形量(突起のつぶれ量)を測定した。
3.試験結果
劣化処理あり・なしでの圧縮試験結果を図5に示す。
なお、図5では「3.7.1 ビス打ち込み時の圧縮力測定」において測定した、圧縮力における変形量を見やすくするため、当該部分を拡大表示している。
平米荷重への換算
本実験例での突起付透湿防水シートは、270個/m(働き面積)の突起を有している。
圧縮試験では、突起6個を圧縮しているため、図5での縦軸の圧縮力は、270/6=45倍を乗じ、平米(m)換算での値としている。
図5から、圧縮試験におけるビス打ち込み時の圧縮力(1.94KN/m)でのときにおいて、変形量(突起のつぶれ量)は劣化処理の有無で差異は見られず、また、その変形量は約0.2mmと極めて小さかった。
なお、建築物の外壁に用いる場合、数十年単位の環境要因に晒されるが、基材である透湿防水シートの耐久性規定に相当する劣化の環境に晒されても、施工時のビス打ちに相当する力が加わった際につぶれ量(寸法保持)は同程度であり、経年劣化がないと判断できる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明による突起付透湿防水シートを用いることで、構造用面材と外壁材との間に十分な通気空間を長期にわたって確保できるものとなり、木造家屋の外壁構造体として広く利用することができる。
1 :突起付透湿防水シート
2 :第1のシート層
3 :第2のシート層
4 :突起
10 :外壁構造体
11 :内装材
12 :柱
13 :間柱
14 :構造用面材
15 :外壁材
16 :防湿フィルム
17 :充填断熱材
18 :外張断熱材
19 :ビス
20 :外部仕上げ材
21 :通気空間

Claims (13)

  1. 透湿性および防水性を有する第1のシート層と、透湿性および耐熱性を有する第2のシート層と、が接着剤にて貼り合わせられてなり、
    前記第2のシート層の、第1のシート層と貼り合わせられた側とは反対側の面に、樹脂からなる複数の突起が、互いに間隔をあけて設けられていることを特徴とする、突起付透湿防水シート。
  2. 前記第1のシート層はポリエチレン系を主成分としたシートからなり、
    前記第2のシート層はポリエステル系を主成分としたシートからなる、請求項1に記載の突起付透湿防水シート。
  3. 前記突起は熱可塑性樹脂からなる、請求項1または2に記載の突起付透湿防水シート。
  4. 前記熱可塑性樹脂はポリアミド樹脂である、請求項3に記載の突起付透湿防水シート。
  5. 前記突起の高さは3~5mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の突起付透湿防水シート。
  6. 隣接する前記突起同士の間隔は50~70mmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の突起付透湿防水シート。
  7. 前記突起が千鳥状に配されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の突起付透湿防水シート。
  8. 前記接着剤が、ポリオレフィン系接着剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載の突起付透湿防水シート。
  9. 透湿性および耐熱性を有する第2のシート上に、熱により溶融させた樹脂を滴下し、冷却することにより該第2のシート上に複数の突起を形成する工程と、
    第2のシート層の前記突起が形成された面とは反対側の面に、透湿性および防水性を有する第1のシート層を、接着剤を用いて貼り合わせる工程と、
    を有することを特徴とする、突起付透湿防水シートの製造方法。
  10. 建物の基礎に固定された柱と、
    前記柱の室外側に取り付けられた構造用面材と、
    前記構造用面材の室外側に配された外壁材と、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の突起付透湿防水シートと、を備えた外壁構造体であって、
    前記突起付透湿防水シートは、前記突起が形成された側の面を室外側に向けて前記構造用面材に直接的または間接的に取り付けられ、
    前記突起付透湿防水シートの室外側に外壁材が配され、
    前記外壁材は、前記突起付透湿防水シートおよび前記構造用面材を貫通するビスにより前記柱に取り付けられている、外壁構造体。
  11. 前記構造用面材と前記突起付透湿防水シートとの間に断熱材が配されている、請求項10に記載の外壁構造体。
  12. 前記外壁材が、軽量気泡コンクリートパネルである、請求項10または11に記載の外壁構造体。
  13. 建物の基礎に固定された柱と、
    前記柱の室外側に取り付けられた構造用面材と、
    前記構造用面材の室外側に配された外壁材と、
    請求項1~8のいずれか1項に記載の突起付透湿防水シートと、を備えた外壁構造体の施工方法であって、以下の工程:
    前記突起付透湿防水シートを、前記突起が形成された側の面を室外側に向けて前記構造用面材に直接的または間接的に取り付ける工程;
    前記突起付透湿防水シートの室外側に外壁材を配する工程;および、
    前記外壁材を、前記突起付透湿防水シートおよび前記構造用面材を貫通するビスにより前記柱に取り付ける工程;を有する、外壁構造体の施工方法。
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