JP7469836B1 - 透湿防水建材シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い留め穴止水性を有するとともに、野地板や壁板に生じた結露を速やかに解消することにより、野地板や壁板のような木造建造物を構成する木材を腐朽させず、非透湿性防水シートを用いることなく、簡便に野地板等の全面に貼付して敷設でき、透湿性を有し湿気を通気させることができ、必要に応じ防風性を有し水滴のような液状水分を透過させない透湿防水建材シートを提供する。【解決手段】 透湿防水建材シートは、透湿性防水樹脂フィルム52cと不織布52dとからなる透湿性の不織布層52、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層52が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層14で付されている。【選択図】図1

Description

本発明は、木造建造物の屋根や壁の施工、とりわけ屋根の施工に用いられる透湿防水建材シートに関する。
木造家屋のような木造建造物において、雨水の浸入によってこれの躯体である木材を腐朽させないように、雨水の浸入を防止する防水性のアスファルト含有シートやポリオレフィン製のシートが、屋根下地及び壁下地として屋根を構成する野地板や壁板に敷設される。これらの下地シートはロール状に巻かれて保管されている。
野地板等への敷設の際、下地シートはロールから繰り出されて所望の長さに裁断される。野地板等をすべて覆うように順次ロールの繰り出しと裁断と敷設とが繰り返される。雨水の浸入を防止するのにシート間に隙間が形成されないよう、下地シートの端部同士は僅かに重ねつつ並べられる。それにより野地板の全体が隙間なく下地シートで覆われる。下地シートは、釘又はステープルのような留め具によって野地板等へ固定される。そのためこれらの下地シートには、雨水を浸入させない防水性に加えて、釘やステープルの貫通によってもその釘やステープルの留め穴から雨水を遺漏させない留め穴止水性が求められる。そのような下地シートとして、例えばアスファルトシート及び透湿防水シートが挙げられる。
アスファルトシートとして、例えば特許文献1に砂粒層とアスファルト層と基材層とアスファルト系自己粘着層と熱可塑性合成樹脂フィルム層とが積層された改質アスファルトルーフィングが記載されている。このようなアスファルトシートによれば、柔軟性及び弾性に富むアスファルトがこれを貫通している釘やステープルに密着するので高い留め穴止水性を発現する。ここで、木造家屋内における人の呼吸や暖房・風呂・調理の際に生じた水蒸気や湿気に起因して野地板や壁板に結露が発生し、木造家屋の躯体である木材を腐朽させることが知られている。アスファルトシートは高い防水性と留め穴止水性を有するものの十分な透湿性を有しないので、アスファルト含浸不織シートと野地板等との間に生じた結露が解消されない。この結露の所為で、野地板等が腐朽してしまう。
一方、特許文献2に、100~2000μmの孔を有する金属膜材と不織布とが接着剤を介して一体化している透湿防水シートである建材用シートに連続フィラメントが不規則に交差してなる立体網状体が付された建材用複合材料が記載されている。この建材用複合材料は、透湿性を有する不織布と雨水を透過せず水蒸気や湿気を透過するように孔径を一定範囲とした金属膜材とが一体化していることにより透湿性及び防水性を兼ね備えているとともに、立体網状体が建材シート材料と野地板又は瓦のような屋根材との間に通気部を形成して換気を促し、水蒸気や湿気の滞留を抑止することにより、結露に起因する野地板等の腐朽を効果的に防止している。
野地板や壁板に固定する際に使用される釘が建材用シートを貫通するとそこに穴が開く。特許文献2の建材用シート中、金属膜材は柔軟性及び弾性に乏しく、不織布は透湿性を付与するために厚さ方向に連結した多くの空隙を有している。そのため金属膜材と不織布とを接着剤で一体化しただけの建材用シートと釘との間に隙間が生じてしまう。それによりその隙間から雨水が浸入することがあるので、この建材用シートは釘穴止水性に乏しい。一方で十分な釘穴止水性を付与するのに、連通した空隙を有しなかったり、厚さを増したりした不織布を用いた建材用シートとすると、透湿性が損なわれたり低下したりする。この場合、野地板に発生した結露である水蒸気や湿気が不織布を透過し難くなって立体網状体にまで到達せず、結露に起因する野地板の不朽を防止できなくなってしまう。
またこの建材用シートに立体網状体を付した建材用複合材料は、野地板等への敷設の際、立体網状体の所為で建材用複合材料の端部同士をそのまま重ねて敷設することができない。そのため建材複合材料間に隙間が形成されないように端部同士を重ねるには、建材用複合材料の端部に存在する立体網状体をその都度、切断したり除去したりしなければならない。このことは敷設作業を煩雑化させている。
本出願人らは、特許出願(特願2022-131216:特許文献3)において、基材のシート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在し及び/又は列在しつつ窪んだ凹み部と、前記開口部同士の間で、前記シート上面から突き出た非輪状凸部及び/又は輪状凸部と、前記開口部を取り囲みつつ前記シート上面から突き出た環状凸部とから選ばれる少なくとも何れかの滑り止めの凸部を有してなる滑り止め部とを、備えた樹脂製及び/又はゴム製の非透湿性防水シートから成り、前記凸部が、変形復元性を有し、又は変形非復元性を有し、且つ、前記凹み部が、潰れない強度を有しており、前記非透湿性防水シートが、ロール状に巻き取り可能な可撓性である防水通気材について、既に特許査定となっている。
防水通気材は、非透湿性防水シートを有して成るので防水性に優れ、屋根側や外壁側からの漏水を防ぎ、また家屋内で生じた水蒸気や湿気を非透湿性防水シートの凹み部同士の空隙である通気部を通じて屋内側から屋外へ排出させて野地板や壁板に結露を生じさせず、凹み部に水が溜まらないようにして、水分を屋外へ排出させることができるというものである。
特開平11-336266号公報 特開2013-76210号公報 特願2022-131216
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高い留め穴止水性を有するとともに、野地板や壁板に生じた結露を速やかに解消することにより、野地板や壁板のような木造建造物を構成する木材を腐朽させず、非透湿性防水シートを用いることなく、簡便に野地板等の全面に貼付して敷設でき、透湿性を有し湿気を通気させることができ、必要に応じ防風性を有し水滴のような液状水分を透過させない透湿防水建材シートを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明の透湿防水建材シートは、透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔の開いた金属含有層により覆われつつ、下面側にて透湿性で粘着性ホットメルト接着剤からなる接着剤層で付されており、前記透湿性の接着剤層が、目付を50~80g/m とするホットメルト接着剤からなる層であり、前記不織布又は前記スパンボンド不織布の繊維の繊維径を50~100μmとし、かつ、防水性を水圧10kPa以上、透湿度を650m ・s・mPa/μg以下とすることにより、屋根用であることを特徴とする。
また、この透湿防水建材シートは、防風性を10s以上としつつ透湿度を190m ・s・mPa/μg以下とすることにより、さらに壁用であってもよいというものである。
この透湿防水建材シートは、前記透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層が、透湿性樹脂及び/又は透湿性ゴムを含む接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し粘着性を有する前記接着剤による透湿性の接着層の両面に、不織シートが前記透湿接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものであるというものであってもよい。
この透湿防水建材シートは、前記透湿性の接着剤層が、前記不織布層の空隙を塞ぐことなく前記下面側で露出した不織布繊維上に付着されていることが好ましい。
この透湿防水建材シートは、前記透湿性の接着剤層が、ホットメルト接着剤からなる層であることが好ましい。
この透湿防水建材シートは、前記透湿性の接着剤層が、目付を10~100g/mとする前記ホットメルト接着剤から成る層であってもよいというものである。
この透湿防水建材シートは、前記ホットメルト接着剤が、粘着性の合成ゴム系ホットメルト接着剤であることが好ましい。
この透湿防水建材シートは、例えば前記不織布層が、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、又はポリプロピレン製の前記透湿性防水樹脂フィルムと、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記不織布とからなり、又は、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、ポリビニルアセテート樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記スパンボンド不織布からなるというものである。
この透湿防水建材シートは、前記金属含有層が、アルミニウム箔層又はアルミニウム蒸着層であり、前記透湿性多孔が、開口率を1.2以上7.0%以下とし、及び/又は直径乃至空隙を平均径で0.5~4000μmとし、及び/又は開口数を5000個/m以上100万個/m以下とするものであってもよい。
本発明の透湿防水建材シートは、防水性及び/又は防風性に優れ、屋根側や外壁側からの漏水を防ぎ、また透湿性を有し、家屋内で生じた水蒸気や湿気を屋内側から屋外へ排出させて野地板や壁板に結露を生じさせない。さらに透湿防水建材シートは、接着剤層、とりわけ粘着性の接着剤層を有しているので、簡便に野地板等の全面に貼付によって敷設して透湿性を有し湿気を通気させることができるが防風性を有し液状水分特に水滴を透過させないという背反する効果を両立させつつ、野地板に貼付して敷設できるというものである。
透湿防水建材シートの設置は、野地板に透湿防水建材シートを貼付しながら敷設し、必要に応じてその上に防水通気材を敷設したり桟木を釘等で野地板へ固定したりすることにより行われ、これにより簡便かつ速やかに施工することができる。
透湿防水建材シートは、透湿性であって湿気のみを通気できるという効果と、防水性及び/又は防風性(液滴遺漏性)と、留め穴止水性であって水滴を透過させないという効果とを、夫々発現する。
単に不織布だけ透湿防水シートでは、透湿性や通気性を発現するが防水性・防風性・留め穴止水性に劣るところ、この透湿防水建材シートは、不織布の上面に透湿性多孔の開いた金属含有層が付され、不織布の下面に透湿性の接着剤層が付されて、接着剤層の量、範囲等が調節されることにより、不織布の空隙を確保して透湿性や通気性を確保したまま、防水性・防風性・留め穴止水性を確保し液状水分、特に水滴を透過させないように調整している。
この透湿防水建材シートは、透湿性・防風性・防水性、及び留め穴止水性が、透湿防水シートとしての規格(JIS A6111:2016)を満たすというものである。
この透湿防水建材シートによれば、防風性・防水性と留め穴止水性とによって屋外からの漏水を防ぐと共に、屋内の水蒸気や湿気を通過させ、屋外に排出して結露を防止するという相乗効果により、野地板等を腐朽させない。
この透湿防水建材シートは、簡便に製造でき、迅速かつ簡易に施工することができる。
本発明を適用する透湿防水建材シートの模式断面図である。 本発明を適用する透湿防水建材シートの使用方法を示す一部切欠き斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の透湿防水建材シート1は、透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔の開いた金属含有層により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層で付されているというものである。この透湿防水建材シートは、不織布層が、前記透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層が、熱溶着され、若しくは、透湿性樹脂及び/又は透湿性ゴムを含む接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し粘着性を有する前記接着剤による透湿性の接着層の両面に、不織シートが前記透湿接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものである。
より具体的に、本発明の透湿防水建材シートの一形態を図1に示す。
この一形態の透湿防水建材シート1は、スパンボンド不織層12aとそのスパンボンド不織層12aで挟まれた不織布からなる透湿性のメルトブローン不織層12bとからなるスパンボンド不織布である不織布層12が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層13で付されているものである(図1(a)参照)。
透湿防水建材シート1は、木造家屋を構成する木材、例えば野地板26に固定される屋根下地材である。透湿防水建材シート1は、可撓性を有し、長尺方向に連続して延びた巻取可能な長尺物であるというものである。
透湿防水建材シート1は、透湿性多孔の開いた金属含有層11とスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層12と透湿性の接着剤層13が順に積層されてなる例を示した(図1(a)参照)が、不織布層12がポリエステル製等スパンボンド不織布からなることが好ましい。
透湿防水建材シート1中、図1(a)に示すように、メルトブローン不織層12bの両面にスパンボンド不織層12aが積層されており、前記メルトブローン不織層は、例えば密度が0.26g/cm以上0.7g/cm以下であり、厚さが20μm以上60μm以下であり、構成する繊維が互いに融着していないものが好ましいが、融着していてもよい。一方、スパンボンド不織層12aの厚さは、特に限定されないが、不織布全体の厚みである100μm以上300μm以下の範囲内であれば、メルトブローン不織層12bの厚みに従って適宜調整して用いることができる。スパンボンド不織層12aの厚さは、例えば、好ましくは1層あたり40μm以上140μm以下の範囲である。なお、スパンボンド不織層12aの厚みは、メルトブローン不織層12bの両面で、それぞれの厚さが異なっていてもよい。また、スパンボンド不織層12aの密度は、特に制限されないが、好ましくは0.1g/cm以上0.8g/cm以下である。
透湿防水建材シート1は、図1(b)に示すように、透湿性多孔15の開いた金属含有層11と不織布からなる不織層12dと透湿性防水樹脂フィルム12c及び必要に応じて不織布からなる別な不織層12dとからなる透湿性の不織布層12と透湿性の接着剤層13が順に積層されていてもよい。
透湿防水建材シート1は、透湿性の接着剤層13が、不織布層12の空隙を塞ぐことなく下面側で露出した不織布繊維上に、目付を10~100g/m、好ましくは20~100g/m、より好ましくは30~80g/m、より一層好ましくは30~75g/m、なお一層好ましくは30~50g/mで付着されていることによって、防風性・防水性に優れ、透湿性に優れ、屋根側や外壁側からの漏水を防ぎ、また家屋内で生じた水蒸気や湿気を屋内側から屋外へ排出させて野地板や壁板に結露を生じさせず、留め穴止水性によって水を遺漏させないという効果を発現する。
透湿性の接着剤層が、粘着性のホットメルト接着剤からなる層であることが好ましく、このホットメルト接着剤は、粘着性の合成ゴム系ホットメルト接着剤が挙げられる。このようなホットメルト接着剤は、例えば主成分が合成ゴム系であるアイメルトPA-17A(株式会社大響製の商品名)が挙げられる。
この透湿防水建材シート1は、例えば透湿性樹脂を含むホットメルト接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し前記ホットメルト接着剤による粘着性を有する透湿性の接着層の両面に、不織シートが前記透湿性の接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものであり、不織布が0.1デニール以上4デニール以下で、不織布層12bが、ポリエチレンテレフタレート製、又はポリアミド(ナイロン)製、及びポリプロピレン例えば二軸延伸ポリプロピレン(OPP)製の透湿性防水樹脂フィルム12cと、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、及びポリプロピレン製から選ばれる透湿性防水樹脂フィルムと、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる不織布からなるものであってもよい。
透湿防水建材シート1中、主として接着剤層13と不織布層12とを調整することによって、透湿性を有し湿気を通気させることができるが防風性を有し液状水分特に水滴を透過させないという背反する効果を両立させることができる。接着剤層13が、不織布層12の空隙を塞ぐことなく下面側で露出した不織布繊維上に付着されつつ、目付を調整することにより、透湿防水建材シート1が湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができるようになる。
透湿防水建材シート1中、金属含有層11が、例えば、アルミニウム製であって、厚さを5μm以上30μm以下とし、金属含有層11例えばアルミニウム箔層又はアルミニウム蒸着層の表面積に対する透湿性多孔の開口面積の割合である開口率が1.2%以上7.0%以下であり、それの透湿性多孔1つあたりの孔の直径が0.5~4000μm、例えば0.5~3μm又は3μm~0.2mmであると好ましく、0.2mm以上で4mm以下好ましくは3.3mm以下であってもよく、上記開口率の範囲であれば特に限定されないが5000個/m以上100万個/m以下であることが好ましく、厚みが5.0μm以上30.0μm以下であってもよい。これらの範囲であると、透湿防水建材シート1が湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができる。直径が、この範囲を下回ると湿気や水蒸気を透過させ難くなり、一方、この範囲を上回ると液体状の水分を透過させ易くなってしまう。
透湿防水建材シート1中、不織布は、全体の目付量として特に限定されないが、例えば目付量30g/m以上120g/m以下の不織布を用いると、耐水圧が最小でも100cm w.c.であるため、不織布単体でも透湿防水シートの規格であるJIS A6111:2016に定める100cmw.c.以上の規定値を満たすことができる。より好ましくは、不織布の目付量が50g/m以上80g/m以下であると、透湿性と強度と耐水圧のバランスがよい。
透湿防水建材シート1中、スパンボンド不織層12aに用いられる繊維は1.5デニール以上4デニール以下、メルトブローン不織層12bに用いられる繊維は0.1デニール以上0.3デニール以下であるとより好ましい。
スパンボンド不織層12a及びメルトブローン不織層12bが繊維径や密度等を前記のようにしていると、湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができる。これらの範囲を下回ると、接着剤層13の未付着面積や目付等を調整したとしても、湿気や水蒸気を透過させ難くなり、一方、この範囲を上回ると液体状の水分を透過させ易くなってしまう。
透湿防水建材シート1中、メルトブローン不織層12bの両面のスパンボンド不織層12aは、同種及び同厚であってもよいし、異なる種類や異なる厚みであってもよい。
不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、及びアラミド繊維から選択される少なくとも1種の繊維を含んでもよい。
メルトブローン不織層12bの両面にスパンボンド不織層12aが積層されていればよく、スパンボンド不織層12aは複数の層となっていてもよい。具体的には、スパンボンド不織層-メルトブローン不織層-スパンボンド不織層(SMS)、スパンボンド不織層-メルトブローン不織層-メルトブローン不織層-スパンボンド不織層(SMMS)、スパンボンド不織層-メルトブローン不織層-メルトブローン不織層-メルトブローン不織層-スパンボンド不織層(SMMMS)からなる群から選択される不織布を用いることができる。より好ましくは、不織布はSMS(中間のメルトブローン不織層(M)が1層),SMMS(中間のメルトブローン不織層(M)が2層),SMMMS(中間のメルトブローン不織層(M)が3層)であると、安定した性能が得られるため好ましい。
透湿防水建材シート1中、スパンボンド不織層12aは、例えば、透湿性樹脂を含むホットメルト接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位16bを有しホットメルト接着剤による粘着性を有する透湿ホットメルト接着層の両面に、不織シートが透湿ホットメルト接着層の一部の融着部位16bで夫々融着しているものである。このスパンボンド不織布12aは、例えば、スパンボンド不織層12aに挟まれたメルトブローン不織層12bからなる積層シートであってもよい。スパンボンド不織布12aと接着剤層13とにより、メルトブローン積層された繊維と接着剤層とが水蒸気を透過する間隙を形成しつつ、ねじ釘に絡んで密着するので、透湿性と優れた釘穴止水性である留め穴止水性とさらに必要に応じて防風性とを有している。ホットメルト接着剤は、塗布量が、例えば5g/m以上75g/m以下、上限が好ましくは50g/m以下、より好ましくは30g/m以下、より一層好ましくは20g/m以下であり、下限が好ましくは5g/m以上である。
透湿防水建材シート1中、スパンボンド不織層12aは、図1(a)の部分拡大模式断面図に示されるように、無数の不織繊維16の集合体である。不織繊維16は、透湿性樹脂を含有するホットメルト接着剤をメルトブローン法によって紡糸された後、熱圧着ロールによって押し潰されて形成されている(不図示)。それにより、スパンボンド不織層12aは、繊維形状を保持している不織繊維16が不規則に重なり合ったり絡み合ったりしている線条部位16aと、不織繊維16の一部が押し潰しにより繊維形状を失って互いに融着した融着部位16bとを、有している。
透湿防水建材シート1中、不織布は、無数の微細孔を有していることが好ましい。これらの微細孔は0.1~0.3μmの平均径を有しているとより好ましい。接着剤からなるウェブの構成が上記範囲であると、nmオーダー径の水蒸気粒子を透過するが、数百μm~数mmオーダー径の雨水を透過しない。その結果、接着剤からなるウェブは、強固な接着性に加えて、透湿性及び防水性をも有することができる。
融着部位16bの不織繊維16は、熱圧着加工を経ることにより、未硬化の軟化状態で押し潰されて広がり、一部で繊維形状を失って互いに融着してシートのような形態をなしている。そのため、メルトブローン不織層12bとベース層となる底面側のスパンボンド不織層12a及び表面層となるおもて面側のスパンボンド不織層12aとの界面に存在する融着部位16bは、両スパンボンド不織層12aの繊維に面接触してそれを覆いつつ融着している。その結果スパンボンド不織層12a・メルトブローン不織層12b同士が強固に融着するので、スパンボンド不織層12aを有する透湿防水建材シート1は、JIS A6111:2016に規定された耐久性における10kPa以上の水圧に耐えうる防水性と必要に応じて防風性とを示す。
しかもホットメルト接着剤によって形成されているメルトブローン不織層12bは、透湿性樹脂を含有するので、シート状の融着部位16bを有していても透湿性を損なわない。融着部位16bは、不織布層12中に無数に点在している。それにより不織布層12の引張強度や引裂強度は、単に繊維形状を維持したまま重なり合ったり絡み合ったりしているだけの繊維の集合体に比較して遥かに高い。
線条部位16a中、不織繊維16は、カレンダー加工をしなくても、重なり合いや絡み合いによって、それらの間で微細な間隙や多孔を形成している。さらにスパンボンド不織層12a・メルトブローン不織層12bとの界面に存在する線条部位16aは、それの材料であるホットメルト接着剤の接着力によってスパンボンド不織層12a・12aの繊維に、点接触して接着している。
この線条部位16a中の間隙や多孔の幅は、10~80μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましく、10~30μmであることがより好ましい。それによりこの間隙や多孔は、例えば、100~500μmの径を有する霧雨や、500μmを超える径を有する雨滴を透過させずに防水性を発現するとともに、ナノメートルオーダーの径を有する水蒸気粒子や湯気を透過するという透湿性をも発現する。
また、透湿防水建材シート1中、図1(b)に示すようにしていると、透湿性防水樹脂フィルム12cと不織層12dと接着剤層13とにより、湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防水性と必要に応じ防風性とを発現することができる。透湿性防水樹脂フィルム12cのフィルム厚や、不織層12dの繊維径が、この範囲を下回ると、接着剤層13の未付着面積や目付等を調整したとしても、湿気や水蒸気を透過させ難くなり、一方、この範囲を上回ると液体状の水分を透過させ易くなってしまう。またこの透湿防水建材シート1は、防水性・留め穴止水性と必要に応じ防風性をも有している。
このように透湿防水建材シート1は、スパンボンド不織層12aとメルトブローン不織層12bからなる透湿性の不織布層12、又は透湿性防水樹脂フィルム12cと不織層12dとからなる透湿性の不織布層12が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層13で付されていることによって、優れた防風性と透湿性及び防水性と釘穴止水性と必要に応じ防風性とを兼ね備えているので、屋根や壁から家屋内に雨水が浸入することを確実に防ぐと同時に、家屋内の水蒸気を透過させて結露の発生を防ぐことができる。
透湿防水建材シート1を使用する際には、以下のような構成とすることにより、簡便に施工することができるようになる。
透湿防水建材シート1は、接着剤層13に離型紙14が付されており(図1(a)及び(b)参照)、ロール状に巻かれたものであると、施工現場で離型紙14を剥ぎ取りながら、透湿防水建材シート1を繰り出し、野地板26(図2参照)に簡便に貼付することができる。透湿防水建材シート1は、透湿性多孔15を塞がないように金属含有層11上に離型剤層を設けてから、ロール状に巻かれたものであると(不図示)、透湿防水建材シート1を繰り出すだけで、離型紙の剥離を必要とせずに、野地板40に簡便に貼付することができる。なお、透湿防水建材シート1は、長尺のまま所期の長さに貼付できるが、隣り合う透湿防水建材シート1の長尺方向の縁で重ねるようにして貼付される。
透湿防水建材シート1は、例えば図4に示すように、野地板26上貼付されて敷設され、釘40によって桟木21aを透湿防水建材シート1ごと野地板26に固定される。
透湿防水建材シート1は、釘40に代えて、ステープル、タッカー、針、釘、鋲、割鋲、又はフックのような打設器で打設され、ボルト及びナット、又は螺子のような螺合具で螺合され、若しくは針金、又は紐のような連結具で結合されていることによって連結されてもよい。
木造家屋20(図2参照)内で生じて野地板26を透過した水蒸気や湿気は、透湿防水建材シート1を透過して、木造家屋20内から外界へ放出される。その結果、野地板26乃至屋根材30に水蒸気や湿気が滞留しないので、野地板26における結露発生が抑止される。水蒸気や湿気の一部が結露したとしても、次第に気化し、外界へ放出される。
そのため、透湿防水建材シート1によれば、屋内乃至野地板26から屋外乃至外界への通気性がよく、結露が残存し難いので、結露水が野地板26に垂れ落ちず、野地板26への結露発生を効果的に抑止でき、野地板26を腐朽させないばかりか、桟木21aや屋根材30を腐朽させない。また、透湿防水建材シート1に桟木21aを固定するためのステープルや釘40等を腐食させない。
野地板26に固定する釘40は、透湿防水建材シート1を貫通している。釘40は、鋭く尖った先端部と、胴部と、胴部よりも拡径した頭部とを有している。透湿防水建材シート1は適切な範囲の厚さ及び伸び率を有していることによって、十分な強度と柔軟性及び弾性と兼ね備えている。それにより透湿防水建材シート1は、貫通した釘40によって穴が開いていても、釘40の胴部に密着してそれとの間に空隙を形成させない。その結果、透湿防水建材シート1は、高い防水性・留め穴止水性と必要に応じ防風性とを発現し、水分を野地板26へ浸入させない。
隣り合う透湿防水建材シート1が、長尺方向の縁で重ね合わせられているので、屋根材30から雨水が漏れたとしても透湿防水建材シート1の存在によって屋根材30側から屋内に侵入できない。また、屋内の水蒸気や湿気が透湿防水建材シート1の下面側から侵入したとしても透湿防水建材シート1の存在によって外界に放出できるので、結露させない。
さらに、透湿防水建材シート1によれば、透湿性多孔15の開いた金属含有層11と不織布層12と接着剤層13とにより、防水性・留め穴止水性及び必要に応じ防風性と透湿性とを発現し、外界から水分を野地板26へ浸入させずに屋内の湿気・水蒸気を外界に放出させる。
この透湿防水建材シート1は、屋根の施工の際に、例えば次のようにして野地板26上に敷設される。作業者は、透湿防水建材シート1を巻き取ったロールから繰り出し、野地板26を覆うようにして、軒先23側に貼付して施設する。次に、透湿防水建材シート1の長尺方向の縁で重ねながら、棟21側に順次貼付し、屋根21部分の野地板26上の全面に貼付して施設する。必要に応じて、ステープルや釘等で固定する。次いで、桟木21aを釘40で透湿防水建材シート1・野地板26に固定する。最後に屋根材で被覆して取り付け、屋根21を形成する。
この透湿防水建材シート1を用いれば、貼り付けるという簡素な操作だけで、家屋の屋根の形状に合わせて敷設できる。その結果、屋根下地材の敷設作業時間を従来よりも短縮できるとともに、作業者の負担を軽減することができる。
透湿防水建材シート1の製造方法を、説明する。
先ず、スパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層12が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層13で付されている透湿防水建材シート1(図1(a)参照)は、スパンボンド法又はメルトブロースパンボンド法によりスパンボンド不織層12a・メルトブローン不織層12b・スパンボンド不織布12aが積層したスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層12を作製し、不織布層12の上面に、透湿性多孔15の開いた金属含有層11を接着剤により接着し又は熱溶融し、一方、不織布層12の下面に接着剤を塗布(例えば、好ましくはスプレー加工)することにより、製造される。
又は、透湿性防水樹脂フィルム12cと不織層12dとからなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層で付されている透湿防水建材シート1(図1(b)参照)は、透湿性防水樹脂フィルム12cに、不織布を接着剤により接着し又は熱溶融して不織布層12を作製し、不織布層12の上面に、透湿性多孔15の開いた金属含有層11を接着剤により接着し又は熱溶融し、一方、不織布層12の下面に接着剤を塗布(例えば、好ましくはスプレー加工)することにより、製造される。
なお、金属含有層11は蒸着により付した後に、透湿性多孔15を開けてもよい。
透湿防水建材シート1が木造家屋20に敷設されている様子の一部切欠き斜視図を図2に示す。透湿防水建材シート1は、野地板26の上に一様に敷かれている屋根下地である。桟木21aが透湿防水建材シート1とともに釘40によって、野地板26に固定されている。屋根材30として、ガルバリウム鋼板(日本製鉄株式会社の登録商標)に例示される金属屋根材が桟木21aに固定されている。
屋根21は、冬季に寒冷な屋外と暖房などによって温暖な木造家屋20内とを仕切っているので、その温度差と木造家屋20内で生じた水蒸気や湿気との所為で野地板26に結露が発生し易い。しかし上述のように、防水通気材からなる透湿防水建材シート1を具備していることにより、野地板26を透過した水蒸気が透湿防水建材シート1を透過し、屋外へ排出されるので、野地板26や桟木61aに結露を生じさせない。それによりこれらの腐朽が防止されている。
しかも透湿防水建材シート1が木造家屋20内で生じた水蒸気や湿気を透過さず、かつ防風性・防水性・留め穴止水性を有するので、この水蒸気や湿気は金属屋根材である屋根材30に到達しない。その結果、透湿防水建材シート1は、野地板26の腐朽だけでなく金属製の屋根材30の腐食をも防止している。
さらに屋根20は、時として強雨に曝される。このとき雨水が複数の屋根材30の継ぎ目から浸入し、透湿防水建材シート1の上面にまで到達することがある。透湿防水建材シート1は、柔軟性及び弾性に富み、これを貫通した釘40の胴部の表面に密着して高い留め穴止水性を示すので、木造家屋20内に雨水を浸入させない。
透湿性・防水性及び必要に応じ防風性は、JIS A6111:2016に準じて測定されるもので、水密性に関わるものである。スパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層22が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層23で付されている透湿防水建材シート1(図1(a)参照)は、透湿性・防水性がJIS A6111:2016の規格に適合し、防風性にも優れている。また、透湿性防水樹脂フィルム12dと不織層12dとからなる透湿性の不織布層12が、上面側にて透湿性多孔15の開いた金属含有層11により覆われつつ、下面側にて透湿性の接着剤層13で付されている透湿防水建材シート1(図42(b)参照)も、透湿性・防水性がJIS A6111:2016の規格に適合し、防風性にも優れている。
透湿防水建材シート1について、以下に説明する。
透湿防水建材シート1は、雨水を透過しないという防水性を示すとともに、水蒸気・湿気を透過させて優れた透湿性を有しないとともに、必要に応じて優れた防風性を奏する。
透湿防水建材シート1の長さ(長尺方向の長さ)は、特に限定されないが、ロール状に巻き易く、繰り出し易く、かつ1~100m、好ましくは1~10mとし、一方、幅(長尺方向と垂直方向の長さ)は、特に限定されないが、10~1000mmとする。
なお、屋根材30は金属屋根材に限られず、例えばJIS A5423:2013に規定されるスレートであってもよいスレート屋根材であってもよい。スレート屋根材は、セメントを押し固めた後に乾燥養生することにより製造される。スレート屋根材は水分の吸収と乾燥とを繰り返すとひび割れを生じ易い。透湿防水建材シート1を屋根下地としてスレート屋根材を葺くと、木造家屋20内で生じた水蒸気や湿気が防水通気材1によってスレート屋根材にまで到達しないので、特に乾燥期(太平洋側は冬季、日本海側は夏季)にスレート屋根材に結露による吸水を生じさせない。それによりスレート屋根材の吸水・乾燥の繰返しが生じることを防止して、それのひび割れを抑止できる。
一方、透湿防水建材シート1について、屋根を施工する例について説明したが、壁を施工する際に用いることもできる。
透湿防水建材シート1は、壁板22aを覆うように固定されることにより、外壁22の下地としても使用することができる。この場合、透湿防水建材シート1上にラス22b、モルタル22c及び塗装膜22dが施工されることにより、外壁22が形成される。透湿防水建材シート1は外壁22に使用されても、屋根21の下地に使用されるのと同様に、優れた留め穴止水性と防水性とによって外壁22内に雨水を浸入させず、結露を発生させない。それにより野地板26や壁板22aのような木造家屋20の躯体である木材を、雨水浸入や結露によって腐朽させない。
透湿防水建材シート1として、例えば、nmオーダー径の水蒸気粒子を透過する一方で、数百μm~数mmオーダー径の雨水を透過しない径の孔を有するもので、樹脂製不織布からなる不織布層12からなるシートの片面に金属含有層11がアルミニウ蒸着され又はアルミニウム箔を接着剤で接着されて、透湿性多孔15が開けられ、他面に透湿性の接着剤層13を積層させた多層シートが挙げられる。透湿防水建材シート1は、JIS A6111:2016の規定を満たす透湿性、防水性、及び留め穴止水性を兼ね備えている。不織布層12からなるシートは、合成高分子系シートとして、ポリエチレンやポリ塩化ビニルのようなポリオレフィンシート;ポリウレタンシート;ポリビニルブチラールシート;熱可塑性エラストマーシート;エチレン-ビニルアセテートコポリマーやビニルアセテートホモポリマーやそれらの一部乃至全部加水分解ポリマーのようなポリビニルアセテートシート;加硫ゴムや非加硫ゴムのようなゴムシートが挙げられ、またアスファルト系シートとしてアスファルトルーフィングフェルトが挙げられる。合成高分子系シートは、JIS A6008:2002合成高分子系ルーフィングシート適合品であり、アスファルト系シートは、JIS A 6013:2005 改質アスファルトルーフィングシート適合品であることが好ましい。
不織布層12からなるシートとして、例えば、ルーフエアテックス及びスーパーエアテックスKD(フクビ化学工業株式会社製、「エアテックス」、「ルーフエアテックス」、及び「スーパーエアテックス」はフクビ化学工業株式会社の登録商標)、ラミテクトHi・S(セーレン株式会社製、「ラミテクト」はセーレン株式会社の登録商標)、タイベック(デュポン社製、「タイベック」はデュポン社の登録商標)、並びにイーストルーフシルバー(株式会社ナガイ製、「イースト」は株式会社ナガイの登録商標)のような市場で入手可能なものを挙げることができる。また透湿防水建材シート1は、金属膜材及び/又は樹脂膜と不織布とが接着・接合した積層体、好ましくはアルミニウム蒸着したポリエチレン樹脂フィルムに前記のような多孔を開けたアルミニウム箔をポリエチレン製不織布に熱融着又は接着剤で接着した積層体であってもよい。
以下、本発明を適用した実施例・参考実施例を示す。
参考実施例1)
30μm厚の多孔質ポリエチレンフィルムで被覆して積層した厚さ0.8mmで目付180g/mで繊維径を50、100及び200μmとしつつ目付を65g/mとするSMMMSのポリエチレンテレフタレート製不織布からなる不織布層12とし、1.22μmの透湿性多孔15を496,000個/mの密度で番手106で開けた蒸着アルミニウム30g/mからなる金属含有層11が不織布層12へ付され、目付を10g/mとする粘着性ホットメルト接着剤としてSBR系であるアイメルトPA-17A(株式会社大響製の商品名)からなる接着剤層13と、必要に応じてその接着剤層13を覆う剥離紙透湿防水建材シート1を作製し、ロール状に巻き取った(図1(b)参照)。
この透湿防水建材シート1をロールから繰り出し、透湿防水建材シート1を屋根や壁の長さに合わせて適宜切断し試作品を作製し、屋根や壁の施工に供した。
参考実施例2~9、実施例10~11及び参考実施例12の透湿防水建材シート1は、参考実施例1の粘着性ホットメルト接着剤の目付などを表1に示すように変えたこと以外は、参考実施例1と同様にした。得られた透湿防水建材シート1について、JIS A6111:2016に準拠し、防水性と透湿度とを測定した。その結果を纏めて表1に示す。
Figure 0007469836000002
表1から明らかな通り、繊維径が同じであっても粘着性ホットメルト接着剤の目付が多くなるほど耐水性の数値が大きくなり、また、透湿度の数値が小さくなった。一方、粘着性ホットメルト接着剤の目付が同じであっても、繊維径が太くなるほど、耐水性の数値が小さくなり、また、透湿度の数値が大きくなった。
JIS A6111:2016の透湿防水シートの項によれば、壁用透湿防水シートAは、防水性が水圧で10kPa以上であり、透湿性(透湿抵抗)が0.19(m・s・Pa/μg)=190(m・s・mPa/μg)以下で、かつ防水性が10(s)以上である。
外壁用透湿防水シートとして、JIS規格に適合するよう防水性が10Pa以上にするには、粘着性ホットメルト接着剤塗布量を30g/m以上とすることが好ましく、繊維径を50~100μm程度とすることが好ましいが、防水性は、200μmにすると低下してしまう。
また、粘着性ホットメルト接着剤を80g/m以上にすると防水性が良いが、透湿度が低くなり、JIS規格に適合しなくなってしまう。
防風性は、粘着性ホットメルト接着剤塗布量を50~100g/m以上とすることが好ましい。
一方、JIS A6111:2016の透湿防水シートの項によれば、屋根用透湿防水シートは、防水性が水圧で10kPa以上であり、透湿性(透湿抵抗)が0.65(m・s・Pa/μg)=650(m・s・mPa/μg)以下である。なお防風性は規定されない。よって、同表の通り、参考実施例1~9、実施例10~11及び参考実施例12の透湿防水建材シート1は、同規定による屋根用透湿防水シートの要件をほぼ満たす。
参考実施例13
参考実施例1の透湿性多孔の形状と粘着性ホットメルト接着剤の目付などとを表2に示すように変えたこと以外は、参考実施例1と同様にして、参考実施例13の透湿防水建材シート1を得た。透湿防水建材シート1について、JIS A6111:2016に準拠し、防水性と透湿度と防風性とを測定した。その結果を纏めて表2に示す。
Figure 0007469836000003
よって、同表の通り、参考実施例13の透湿防水建材シート1は、同規定による屋根用透湿防水シートの要件は、ほぼ満たしている。
なお、JIS A6111:2016の透湿防水シートの項によれば、外壁用透湿防水シートAは、防水性が水圧で10kPa以上であり、防風性が通過時間で10秒以上である。
本発明の透湿防水建材シートは、家屋の屋根や外壁の下地に用いられる。
1は透湿防水建材シート、11は金属含有層、12は不織布層、12aはスパンボンド不織層、12bがメルトブローン不織層、12cが透湿性防水樹脂フィルム、12dが不織層、13は接着剤層、14は離型紙、15は透湿性多孔、16は不織繊維、16aは線条部位、16bは融着部位、20は木造家屋、21は屋根、21aは桟木、22は外壁、22aは壁板、22bはラス、22cはモルタル、22dは塗装膜、23は軒先、24は棟、30は屋根材、40は釘である。

Claims (7)

  1. 透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔の開いた金属含有層により覆われつつ、下面側にて透湿性で粘着性ホットメルト接着剤からなる接着剤層で付されており、
    前記透湿性の接着剤層が、目付を50~80g/m とするホットメルト接着剤からなる層であり、
    前記不織布又は前記スパンボンド不織布の繊維の繊維径を50~100μmとし、
    かつ、防水性を水圧10kPa以上、透湿度を650m ・s・mPa/μg以下とすることにより、
    屋根用であることを特徴とする透湿防水建材シート。
  2. さらに防風性を10s以上としつつ透湿度を190m ・s・mPa/μg以下とすることにより、さらに壁用であることを特徴とする請求項1に記載の透湿防水建材シート。
  3. 前記透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層が、透湿性樹脂及び/又は透湿性ゴムを含む接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し粘着性を有する前記接着剤による透湿性の接着層の両面に、不織シートが前記透湿性の接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものであることを特徴とする請求項1に記載の透湿防水建材シート。
  4. 前記透湿性の接着剤層が、前記不織布層の空隙を塞ぐことなく前記下面側で露出した不織布繊維上に付着されていることを特徴とする請求項1に記載の透湿防水建材シート。
  5. 前記ホットメルト接着剤が、粘着性の合成ゴム系ホットメルト接着剤であることを特徴とする請求項に記載の透湿防水建材シート。
  6. 前記不織布層が、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、又はポリプロピレン製の前記透湿性防水樹脂フィルムと、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記不織布とからなり、又は、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、ポリビニルアセテート樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記スパンボンド不織布からなることを特徴とする請求項1に記載の透湿防水建材シート。
  7. 前記金属含有層が、アルミニウム箔層又はアルミニウム蒸着層であり、前記透湿性多孔が、開口率を1.2以上7.0%以下とし、及び/又は直径乃至空隙を平均径で0.5~4000μmとし、及び/又は開口数を5000個/m以上100万個/m以下とするものであることを特徴とする請求項1に記載の透湿防水建材シート。
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