以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1~図4を参照しながら説明する。なお、各図(以降の図も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りの方向であるタイヤ周方向D3である。そして、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面であり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面である。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードを有する一対のビード部11と、各ビード部11からタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部12と、一対のサイドウォール部12のタイヤ径方向D2の外端部に連接され、タイヤ径方向D2の外側表面が路面に接地するトレッド部13とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム20に装着される。
また、タイヤ1は、一対のビードの間に架け渡されるカーカス層14と、カーカス層14の内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナー層15とを備えている。カーカス層14及びインナーライナー層15は、ビード部11、サイドウォール部12、及びトレッド部13に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
トレッド部13は、路面に接地するトレッド面2aを有するトレッドゴム2と、トレッドゴム2とカーカス層14との間に配置されるベルト層16とを備えている。トレッド面2aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端2b,2bという。なお、該接地面は、タイヤ1を正規リム20にリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面2aを指す。
正規リム20は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリム20であり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には180KPaとする。
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧180KPaの対応荷重の85%とする。
トレッドゴム2は、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝3~5を備えている。主溝3~5は、タイヤ周方向D3に連続して延びている。例えば、主溝3~5は、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えている。また、例えば、主溝3~5は、接地端2b,2b間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3%以上の幅を有している。また、例えば、主溝3~5は、5mm以上の溝幅を有している。
複数の主溝3~5においては、タイヤ幅方向D1の最も外側に配置される一対の主溝3,4は、ショルダー主溝3,4といい、一対のショルダー主溝3,4間に配置される主溝5は、センター主溝5という。なお、ショルダー主溝3,4を区別する際には、各図において右側に配置されるショルダー主溝3は、第1ショルダー主溝3といい、各図において左側に配置されるショルダー主溝4は、第2ショルダー主溝4という。
本実施形態においては、主溝3~5の数は、三つである、という構成であるが、斯かる構成に限られず、例えば、二つ又は四つ以上である、という構成でもよい。即ち、本実施形態においては、センター主溝5の数は、一つである、という構成であるが、斯かる構成に限られず、例えば、ゼロ又は二つ以上である、という構成でもよい。
トレッドゴム2は、主溝3~5及び接地端2bによって区画される複数の陸部6~9を備えている。複数の陸部6~9においては、ショルダー主溝3,4及び接地端2bによって区画される陸部6,7は、ショルダー陸部6,7といい、隣接する主溝3,5(4,5)によって区画される陸部8,9は、センター陸部8,9という。即ち、ショルダー陸部6,7は、ショルダー主溝3,4よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置されており、センター陸部8,9は、隣接する主溝3,5(4,5)間に配置されている。
本実施形態においては、陸部6~9の数は、四つである、という構成であるが、斯かる構成に限られず、例えば、三つ又は五つ以上である、という構成でもよい。即ち、本実施形態においては、センター陸部8,9の数は、二つである、という構成であるが、斯かる構成に限られず、例えば、一つ又は三つ以上である、という構成でもよい。
なお、ショルダー陸部6,7を区別する際には、各図において右側に配置されるショルダー陸部6は、第1ショルダー陸部6といい、各図において左側に配置されるショルダー陸部7は、第2ショルダー陸部7という。また、センター陸部8,9を区別する際には、各図において右側に配置されるセンター陸部8は、第1センター陸部8といい、各図において左側に配置されるセンター陸部9は、第2センター陸部9という。
図2に示すように、陸部6~9は、複数の陸溝61,62,71,72,81,82,91,92(以下、「61~92」とも記載する)を備えている。そして、陸溝61~92は、タイヤ周方向D3と交差するように延びている。なお、陸溝は、タイヤ周方向D3に沿って断続的に延びる溝や、タイヤ周方向D3に沿って連続的に延びて主溝3~5よりも細い溝であってもよい。
本実施形態においては、陸部6~9のそれぞれは、二種類の形状の陸溝、具体的には、第1陸溝61,71,81,91と、第2陸溝62,72,82,92とを備えている。なお、陸部6~9のそれぞれは、一種類の形状の陸溝を備えている、という構成でもよく、また、三種類以上の形状の陸溝を備えている、という構成でもよい。
第1ショルダー陸部6の第1陸溝61においては、内端部が第1ショルダー主溝3に連接しており、外端部が接地端2bよりもタイヤ幅方向D1の内側に配置されている。また、第1ショルダー陸部6の第2陸溝62においては、内端部が第1ショルダー主溝3から離れており、外端部(図2において、図示していない)が接地端2bよりもタイヤ幅方向D1の外側に配置されている。即ち、第1ショルダー陸部6の第2陸溝62は、接地端2bまで延びている。
第2ショルダー陸部7の第1陸溝71においては、内端部が第2ショルダー主溝4に連接しており、外端部が接地端2bよりもタイヤ幅方向D1の内側に配置されている。また、第2ショルダー陸部7の第2陸溝72においては、内端部が第2ショルダー主溝4に連接しており、外端部(図2において、図示していない)が接地端2bよりもタイヤ幅方向D1の外側に配置されている。即ち、第2ショルダー陸部7の第2陸溝72は、接地端2bまで延びている。
センター陸部8,9の第1陸溝81,91においては、内端部がセンター主溝5に連接しており、外端部がショルダー主溝3,4から離れている。また、センター陸部8,9の第2陸溝82,92においては、外端部がショルダー主溝3,4に連接しており、内端部がセンター主溝5から離れている。
ところで、陸溝61~92のエッジが、地面に接したり地面から離れたりする際に、ノイズが発生する。そこで、センター陸部8,9の、単位面積当たりの陸溝81,82,91,92の長さは、ショルダー陸部6,7の、単位面積当たりの陸溝61,62,71,72の長さよりも、小さくなっている。
これにより、センター陸部8,9において、ノイズの発生源である陸溝81,82,91,92のエッジ成分を少なくすることができるため、センター陸部8,9から発生するノイズを小さくすることができる。なお、「陸部の単位面積当たりの陸溝の長さ」とは、陸部6~9(陸溝61~92を含む)の面積に対する、陸溝61~92の長さの総計の比のことである。
また、車両が直進する際に、タイヤ1の接地形状(地面に接している部分の形状)においては、接地長(地面に接している部分のタイヤ周方向D3の長さ)が、タイヤ幅方向D1の内側にいくにつれて、長くなる。具体的には、センター陸部8,9の接地長が、ショルダー陸部6,7の接地長よりも、長くなる。これにより、センター陸部8,9においては、ノイズを発生させる領域が広いことになる。
そこで、センター陸部8,9のボイド比は、ショルダー陸部6,7のボイド比よりも、小さくなっている。これにより、センター陸部8,9の剛性が大きくなるため、センター陸部8,9で発生する振動を小さくすることができる。したがって、センター陸部8,9から発生するノイズを小さくすることができる。なお、ボイド比とは、接地面積(陸部6~9(陸溝61~92を含む)の面積)に対する、溝面積(陸溝61~92の面積の総計)の比のことである。
また、センター陸部8,9は、溝幅が1.2mm以上であるスリットと呼ばれる陸溝を備えておらず、溝幅が1.2mm未満であるサイプと呼ばれる陸溝81,82,91,92のみ備えている。これにより、センター陸部8,9の剛性をさらに大きくすることができる。
なお、第1ショルダー陸部6においては、第1陸溝61は、サイプであり、第2陸溝62は、スリットである。また、第2ショルダー陸部7においては、第1陸溝71は、サイプであり、第2陸溝72の内側部分は、サイプであり、第2陸溝72の外側部分は、スリットである。
また、図3に示すように、センター陸部8,9の陸溝81,82,91,92は、屈曲部81a,82a,91a,92aを備えている。これにより、屈曲部81a,82a,91a,92aがセンター陸部8,9の剛性を低下することを抑制できるため、陸溝81,82,91,92の存在によってセンター陸部8,9の剛性が低下することを抑制することができる。
また、陸溝81,82,91,92は、屈曲部81a,82a,91a,92aよりもタイヤ幅方向D1の内側に配置される内側部81b,82b,91b,92bと、屈曲部81a,82a,91a,92aよりもタイヤ幅方向D1の外側に配置される外側部81c,82c,91c,92cとを備えている。そして、内側部81b,82b,91b,92bがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する方向は、外側部81c,82c,91c,92cがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する方向と、異なっている。
例えば、第1センター陸部8の第1陸溝81においては、内側部81bがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する方向は、図3において左上がりの方向であり、外側部81cがタイヤ幅方向D1に対して傾斜する方向は、図3において右上がりの方向である。これにより、屈曲部81a,82a,91a,92aによって、センター陸部8,9の剛性の低下を効果的に抑制することができる。
また、第1陸溝81,91の内端部が主溝5に連接されていることに対して、第1陸溝81,91の屈曲部81a,91aは、センター陸部8,9のタイヤ幅方向D1の内側領域83,93に配置されている。そして、第2陸溝82,92の外端部が主溝3,4に連接されていることに対して、第2陸溝82,92の屈曲部82a,92aは、センター陸部8,9のタイヤ幅方向D1の外側領域84,94に配置されている。
このように、陸溝81,82,91,92が主溝3~5に連接されることで、センター陸部8,9の剛性を低下させてしまうことに対して、屈曲部81a,82a,91a,92aは、陸溝81,82,91,92のうち、主溝3~5に連接される端部寄りに配置されている。これにより、屈曲部81a,82a,91a,92aによって、センター陸部8,9の剛性の低下を効果的に抑制することができる。
しかも、屈曲部81a,82a,91a,92aは、センター陸部8,9の内側領域83,93と外側領域84,94とにそれぞれ配置されている。これにより、センター陸部8,9のタイヤ幅方向D1において、剛性差が生じることを抑制することができる。
また、第1センター陸部8においては、第1陸溝81の屈曲部81aは、タイヤ周方向D3の一方(図3の下方)に向けて凸状となっており、第2陸溝82の屈曲部82aは、タイヤ周方向D3の他方(図3の上方)に向けて凸状となっている。また、第2センター陸部9においては、第1陸溝91の屈曲部91aは、タイヤ周方向D3の他方に向けて凸状となっており、第2陸溝92の屈曲部92aは、タイヤ周方向D3の一方に向けて凸状となっている。
このように、第1陸溝81,91の屈曲部81a,91aが凸状となる方向は、第2陸溝82,92の屈曲部82a,92aが凸状となる方向と、異なっている。これにより、センター陸部8,9のタイヤ周方向D3において、剛性差が生じることを抑制することができる。
なお、第1陸溝81,91と第2陸溝82,92とは、タイヤ周方向D3で重なっている。具体的には、第1陸溝81,91の外端部は、センター陸部8,9の外側領域84,94に配置されており、第2陸溝82,92の内端部は、センター陸部8,9の内側領域83,93に配置されている。
本実施形態に係るタイヤ1の基本的な構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るタイヤ1のピッチ要素について説明する。
図2に戻り、陸部6~9は、ピッチ要素がタイヤ周方向D3に配列されるトレッドパターンを備えている。具体的には、陸部6~9は、同じパターン(陸溝61~92で形成される凹凸形状)がタイヤ周方向D3で繰り返されて成るトレッドパターンを備えている。そして、ピッチ要素とは、その同じパターンの最小単位のことである。
図2(以降の図も同様)において、ピッチ要素の境界は、破線で示されている。本実施形態においては、各陸部6~9のピッチ要素の境界は、第1陸溝61,71,81,91の内端部の位置(主溝3~5と連接される位置)としている。なお、ピッチ要素の境界は、斯かる位置に限られず、例えば、同じ形状の陸溝61~92の同じ位置としてもよく、また、タイヤ周方向D3で隣接する同じ形状の陸溝61~92の、同じ位置間の中心位置としてもよい。
ところで、各陸部6~9のピッチ要素が一種類である場合には、例えば、陸溝61~92が地面に接したり地面から離れたりする周期が、同じになるため、それに起因して発生するノイズの周波数も、同じになる。これにより、ノイズが増幅されて、大きなノイズとなってしまう。
そこで、図4に示すように、各陸部6~9は、異なるピッチ長(タイヤ周方向D3の長さ)を有する複数種類のピッチ要素6a~6c,7a~7c,8a~8d,9a~9d(以下、「6a~9d」や「7a~9d,6a~6c」とも記載する)を備えている。これにより、同じ周波数のノイズのみが発生することを防止している。なお、図4において、陸溝61~92は、図示していない。
また、ピッチ要素6a~9dのピッチ長が異なることで、ピッチ要素6a~9dごとに剛性差が発生する。そして、車両が直進する際に、ショルダー陸部6,7の接地圧が、センター陸部8,9の接地圧よりも、大きくなるため、ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7c間の摩耗差、即ち、偏摩耗の発生が懸念される。
そこで、ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cの種類数は、センター陸部8,9のピッチ要素8a~8d,9a~9dの種類数よりも、少なくなっている。これにより、ショルダー陸部6,7において、ピッチ要素6a~6c,7a~7c間に剛性差が発生することを抑制することができるため、偏摩耗が発生することを抑制することができる。したがって、タイヤ1の耐偏摩耗性能(偏摩耗の発生を抑制する性能)を向上させることができる。
なお、本実施形態においては、ショルダー陸部6,7は、三種類のピッチ要素6a~6c,7a~7cを備えており、センター陸部8,9は、四種類のピッチ要素8a~8d,9a~9dを備えている。具体的には、ショルダー陸部6,7は、第1~第3ピッチ要素6a~6c,7a~7cを備えており、センター陸部8,9は、第1~第4ピッチ要素8a~8d,9a~9dを備えている。なお、陸部6~9のピッチ要素6a~9dの種類数は、特に限定されない。
そして、各第1ピッチ要素6a~9aのピッチ長は、同じであり、各第2ピッチ要素6b~9bのピッチ長は、同じであり、各第3ピッチ要素6c~9cのピッチ長は、同じであり、各第4ピッチ要素8d,9dのピッチ長は、同じである。また、ピッチ長は、第1ピッチ要素6a~9a、第2ピッチ要素6b~9b、第3ピッチ要素6c~9c、第4ピッチ要素8d,9dの順で、長くなっている。
例えば、ピッチ長の一例として、各第1ピッチ要素6a~9aのピッチ長は、30mmであり、各第2ピッチ要素6b~9bのピッチ長は、35mmであり、各第3ピッチ要素6c~9cのピッチ長は、40mmであり、各第4ピッチ要素8d,9dのピッチ長は、45mmである。なお、ピッチ長が1mm以上異なる場合には、それらのピッチ要素6a~9dは、異なるピッチ要素6a~9dとする。
また、ピッチ要素6a~9dのピッチ長が長いほど、当該ピッチ要素6a~9dの陸溝61~92間の間隔が大きくなっている。なお、ピッチ要素6a~9dのピッチ長に関わらず、当該ピッチ要素6a~9dの陸溝61~92の溝幅が同じである、という構成でもよく、また、ピッチ要素6a~9dのピッチ長が長いほど、当該ピッチ要素6a~9dの陸溝61~92の溝幅が広くなっている、という構成でもよい。
ここで、本実施形態に係るタイヤ1のピッチ要素6a~9dの特徴について説明する。
例えば、タイヤ幅方向D1で重なるピッチ要素6a~9dは、同時期に地面に接したり地面から離れたりする。したがって、それらのピッチ要素6a~9dのピッチ長が同じ場合には、同時期に発生するノイズの周波数も、同じになる。これにより、ノイズが増幅されて、大きなノイズとなってしまう。
そこで、所定の陸部6~9のピッチ要素パターンは、少なくとも一つの他の陸部7~9,6のピッチ要素パターンと異なっている。斯かる構成によれば、所定の陸部6~9の、少なくとも一つのピッチ要素6a~9dは、タイヤ幅方向D1で重なる他の陸部7~9,6のピッチ要素7a~9d,6a~6cに対して、異なるピッチ長を有することになる。
これにより、同時期に接地するピッチ要素6a~9dにおいて、異なるピッチ長が存在しているため、同時期に同じ周波数のノイズが発生することを抑制することができる。したがって、タイヤ1のノイズ抑制性能を向上させることができる。
なお、「陸部のピッチ要素パターンが同じ」とは、陸部6~9の、ピッチ要素6a~9dの種類数、該ピッチ要素6a~9dのピッチ長、該ピッチ要素6a~9dの配列(タイヤ周方向D3での並ぶ順序)、該ピッチ要素6a~9dのタイヤ周方向D3における位置の、四つ全ての構成が同じことである。以下に、陸部6~9のピッチ要素パターンが異なる構成を、具体的に説明する。
まず、センター陸部8,9のピッチ要素パターンとショルダー陸部6,7のピッチ要素パターンとの相違について説明する。
センター陸部8,9の、ピッチ要素8a~8d,9a~9dの種類数は、ショルダー陸部6,7の、ピッチ要素6a~6c,7a~7cの種類数と、異なっている、具体的には、多くなっている。したがって、センター陸部8,9は、必然的に、ショルダー陸部6,7の全てのピッチ要素6a~6c,7a~7cのピッチ長と異なるピッチ長を有するピッチ要素8d,9dを備えていることになる。
具体的には、センター陸部8,9の第4ピッチ要素8d,9dのピッチ長は、ショルダー陸部6,7の全てのピッチ要素6a~6c,7a~7cのピッチ長と、異なっている。これにより、センター陸部8,9の第4ピッチ要素8d,9dは、タイヤ幅方向D1で重なるショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cに対して、必ず異なるピッチ長を有することになる。
例えば、センター陸部8,9の所定の第4ピッチ要素(図4において、ハッチングしている第4ピッチ要素)8d,9dは、第1ショルダー陸部6の第2ピッチ要素6b,6bとタイヤ幅方向D1で重なっており、第2ショルダー陸部7の第3ピッチ要素7c,7cとタイヤ幅方向D1で重なっている。このように、センター陸部8,9のピッチ要素パターンは、ショルダー陸部6,7のピッチ要素パターンと、異なっている。
次に、第1センター陸部8のピッチ要素パターンと第2センター陸部9のピッチ要素パターンとの相違について説明する。
第1センター陸部8の、ピッチ要素8a~8dの種類数及び該ピッチ要素8a~8dのピッチ長は、第2センター陸部9の、ピッチ要素9a~9dの種類数及び該ピッチ要素9a~9dのピッチ長と、同じである。それに対して、第1センター陸部8のピッチ要素8a~8dの配列は、第2センター陸部9のピッチ要素9a~9dの配列と、異なっている。
具体的には、図4の上から下に向けて、第1センター陸部8は、第4、第3、第2、第1ピッチ要素8d,8c,8b,8aの順に配置されていることに対して、第2センター陸部9は、第1、第2、第3、第4ピッチ要素9a,9b,9c,9dの順に配置されている。これにより、第1センター陸部8の、少なくとも一つのピッチ要素8a~8dは、タイヤ幅方向D1で重なる第2センター陸部9のピッチ要素9a~9dに対して、異なるピッチ長を有することになる。
例えば、センター陸部8,9の所定のピッチ要素(図4において、ハッチングしている第4ピッチ要素)8d,9dは、他のセンター陸部9,8の、ピッチ長が異なるピッチ要素(具体的には、第1ピッチ要素)9a,8aと、タイヤ幅方向D1で重なっている。このように、第1センター陸部8のピッチ要素パターンは、第2センター陸部9のピッチ要素パターンと、異なっている。
次に、第1ショルダー陸部6のピッチ要素パターンと第2ショルダー陸部7のピッチ要素パターンとの相違について説明する。
第1ショルダー陸部6の、ピッチ要素6a~6cの種類数、該ピッチ要素6a~6cのピッチ長、及び該ピッチ要素6a~6cの配列は、第2ショルダー陸部7の、ピッチ要素7a~7cの種類数、該ピッチ要素7a~7cのピッチ長、及び該ピッチ要素7a~7cの配列と、同じである。それに対して、第1ショルダー陸部6の、所定のピッチ要素6a~6cは、第2ショルダー陸部7の、当該所定のピッチ要素6a~6cのピッチ長と同じピッチ長を有するピッチ要素7a~7cに対して、タイヤ周方向D3で位置ずれしている。
具体的には、第1及び第2ショルダー陸部6,7において、第1ピッチ要素6a,7aは、互いにタイヤ周方向D3で離れており、第2ピッチ要素6b,7bは、互いにタイヤ周方向D3で離れており、第3ピッチ要素6c,7cは、互いにタイヤ周方向D3で離れている。これにより、第1ショルダー陸部6の、少なくとも一つのピッチ要素6a~6cは、タイヤ幅方向D1で重なる第2ショルダー陸部7のピッチ要素7a~7cに対して、異なるピッチ長を有することになる。
例えば、ショルダー陸部6,7の所定のピッチ要素(図4において、ハッチングしている第3ピッチ要素)6c,7cは、他のショルダー陸部7,6の、ピッチ長が異なるピッチ要素(具体的には、第1及び第2ピッチ要素)7a,7b,6a,6bと、タイヤ幅方向D1で重なっている。このように、第1ショルダー陸部6のピッチ要素パターンは、第2ショルダー陸部7のピッチ要素パターンと、異なっている。
以上のように、本実施形態においては、全ての陸部6~9のピッチ要素パターンは、それぞれ異なっている。これにより、タイヤ1のノイズ抑制性能を効果的に向上させることができる。
また、所定の陸部6~9の全てのピッチ要素6a~9dは、タイヤ幅方向D1で重なるピッチ要素7a~9d,6a~6cの少なくとも一つに対して、異なるピッチを有する、という構成が好ましい。斯かる構成によれば、当該所定の陸部6~9においては、同時期に同じ周波数のノイズが発生することを抑制することができるため、タイヤ1のノイズ抑制性能を効果的に向上させることができる。
また、タイヤ周方向D3の所定の位置において、タイヤ幅方向D1で重なる全てのピッチ要素6a~9dは、それぞれ異なるピッチ長を有する、という構成が好ましい。斯かる構成によれば、当該タイヤ周方向D3の所定の位置においては、同じ周波数のノイズが発生することを抑制することができるため、タイヤ1のノイズ抑制性能を効果的に向上させることができる。
本実施形態においては、例えば、第1センター陸部8の所定の第4ピッチ要素(図4において、ハッチングしている第4ピッチ要素)8dが、第1ショルダー陸部6の第2ピッチ要素6bと、第2ショルダー陸部7の第3ピッチ要素7cと、第2センター陸部9の第1ピッチ要素9aと、それぞれタイヤ幅方向D1で重なっている。したがって、当該位置においてタイヤ幅方向D1で重なるピッチ要素6b,7c,8d,9aは、互いに異なるピッチ長を有している。
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、接地するトレッド面2aを有するトレッド部13を備え、前記トレッド部13は、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝3~5と、前記複数の主溝3~5及び接地端2bによって区画される複数の陸部6~9と、を備え、前記複数の陸部6~9のそれぞれは、異なるピッチ長を有する複数種類のピッチ要素6a~9dがタイヤ周方向D3に配列されるトレッドパターンを備え、第1の陸部6~9の、少なくとも一つのピッチ要素6a~9dは、タイヤ幅方向D1で重なる第2の陸部7~9,6のピッチ要素7a~9d,6a~6cに対して、異なるピッチ長を有する。
斯かる構成によれば、接地した各ピッチ要素6a~9dから、ピッチ長に応じた周波数のノイズが発生する。それに対して、第1の陸部6~9の、少なくとも一つのピッチ要素6a~9dは、タイヤ幅方向D1で重なる第2の陸部7~9,6のピッチ要素7a~9d,6a~6cに対して、異なるピッチ長を有している。これにより、同時期に同じ周波数のノイズが発生することを抑制することができるため、ノイズ抑制性能を向上させることができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記第1の陸部8,9の、少なくとも一つのピッチ要素8d,9dのピッチ長は、前記第2の陸部6,7の、全てのピッチ要素6a~6c,7a~7cのピッチ長と、異なる、という構成である。
斯かる構成によれば、第1の陸部8,9の所定のピッチ要素8d,9dのピッチ長は、タイヤ幅方向D1で重なる第2の陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cのピッチ長と、異なっている。これにより、第1の陸部8,9の、少なくとも一つのピッチ要素8a~8d、9a~9dは、タイヤ幅方向D1で重なる第2の陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cに対して、異なるピッチ長を有している。
しかも、第1の陸部8,9の所定のピッチ要素8d,9dから発生するノイズの周波数は、第2の陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cから発生するノイズの周波数と、異なることになる。これにより、同じ周波数のノイズが発生することを抑制することができるため、ノイズ抑制性能を効果的に向上させることができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記第1の陸部8の、ピッチ要素8a~8dの種類数及び該ピッチ要素8a~8dのピッチ長は、前記第2の陸部9の、ピッチ要素9a~9dの種類数及び該ピッチ要素9a~9dのピッチ長と、同じであり、前記第1の陸部8の、ピッチ要素8a~8dの配列は、前記第2の陸部9の、ピッチ要素9a~9dの配列と、異なる、という構成である。
斯かる構成によれば、第1の陸部8の、ピッチ要素8a~8dの配列は、第2の陸部9の、ピッチ要素9a~9dの配列と、異なっている。これにより、第1の陸部8の、少なくとも一つのピッチ要素8a~8dは、タイヤ幅方向D1で重なる第2の陸部9のピッチ要素9a~9dに対して、異なるピッチ長を有している。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記第1の陸部6の、ピッチ要素6a~6cの種類数、該ピッチ要素6a~6cのピッチ長、及び該ピッチ要素6a~6cの配列は、前記第2の陸部7の、ピッチ要素7a~7cの種類数、該ピッチ要素7a~7cのピッチ長、及び該ピッチ要素7a~7cの配列と、同じであり、前記第1の陸部6の、所定のピッチ要素6a~6cは、前記第2の陸部7の、当該所定のピッチ要素6a~6cのピッチ長と同じピッチ長を有するピッチ要素7a~7cに対して、タイヤ周方向D3で位置ずれしている、という構成である。
斯かる構成によれば、第1の陸部6の、所定のピッチ要素6a~6cは、第2の陸部7の、当該所定のピッチ要素6a~6cのピッチ長と同じピッチ長を有するピッチ要素7a~7cに対して、タイヤ周方向D3で位置ずれしている。これにより、第1の陸部6の、少なくとも一つのピッチ要素6a~6cは、タイヤ幅方向D1で重なる第2の陸部7のピッチ要素7a~7cに対して、異なるピッチ長を有している。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の陸部6~9は、タイヤ幅方向D1で最も外側に配置される一対のショルダー陸部6,7と、前記一対のショルダー陸部6,7の間に配置される少なくとも一つのセンター陸部8,9と、を備え、前記ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cの種類数は、前記センター陸部8,9のピッチ要素8a~8d,9a~9dの種類数よりも、少ない、という構成である。
斯かる構成によれば、ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cの種類数が、センター陸部8,9のピッチ要素8a~8d,9a~9dの種類数よりも、少なくなっている。これにより、ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7c間に生じる剛性差が大きくなることを抑制することができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の陸部6~9は、タイヤ幅方向D1で最も外側に配置される一対のショルダー陸部6,7と、前記一対のショルダー陸部6,7の間に配置される少なくとも一つのセンター陸部8,9と、を備え、前記センター陸部8,9のボイド比は、前記ショルダー陸部6,7のボイド比よりも、小さい、という構成である。
斯かる構成によれば、センター陸部8,9のボイド比は、ショルダー陸部6,7のボイド比よりも、小さくなっている。これにより、センター陸部8,9の剛性が低下することを抑制することができる。
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、全ての陸部6~9のピッチ要素パターンは、それぞれ異なっている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、少なくとも一つの陸部6~9のピッチ要素パターンが、少なくとも一つの他の陸部7~9,6のピッチ要素パターンと異なっていればよく、例えば、図5に示すように、空気入りタイヤ1は、ピッチ要素パターンが同じ陸部6,7(8,9)を備えている、という構成でもよい。
図5に係る空気入りタイヤ1においては、センター陸部8,9のピッチ要素パターンは、ショルダー陸部6,7のピッチ要素パターンと、異なっている。一方で、第1センター陸部8のピッチ要素パターンは、第2センター陸部9のピッチ要素パターンと、同じであり、第1ショルダー陸部6のピッチ要素パターンは、第2ショルダー陸部7のピッチ要素パターンと、同じである。
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ピッチ要素6a~9dの種類数が異なることによって、第1の陸部(センター陸部)8,9は、第2の陸部(ショルダー陸部)6,7の全てのピッチ要素6a~6c,7a~7cのピッチ長と異なるピッチ長を有するピッチ要素8d,9dを備えている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、ピッチ要素の種類数が同じであるものの、該ピッチ要素のピッチ長が異なることによって、第1の陸部6~9は、第2の陸部7~9,6の全てのピッチ要素のピッチ長と異なるピッチ長を有するピッチ要素を備えている、という構成でもよい。
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cの種類数は、センター陸部8,9のピッチ要素8a~8d,9a~9dの種類数よりも、少ない、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、ショルダー陸部6,7のピッチ要素6a~6c,7a~7cの種類数は、センター陸部8,9のピッチ要素8a~8d,9a~9dの種類数以上である、という構成でもよい。
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、センター陸部8,9のボイド比は、ショルダー陸部6,7のボイド比よりも、小さい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、センター陸部8,9のボイド比は、ショルダー陸部6,7のボイド比以上である、という構成でもよい。