A.第1実施形態:
A-1.静電チャック100の構成:
図1は、第1実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、第1実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、第1実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置されたセラミックス板10およびベース部材20を備える。セラミックス板10とベース部材20とは、セラミックス板10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。
セラミックス板10は、略円板状部材であり、セラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。より詳細には、セラミックス板10は、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されている。セラミックス板10における内側部IPの厚さ(Z軸方向における厚さであり、以下同様)は、外周部OPに形成された切り欠きの分だけ、外周部OPの厚さより厚くなっている。すなわち、セラミックス板10の外周部OPと内側部IPとの境界の位置で、セラミックス板10の厚さが変化している。
セラミックス板10の内側部IPの直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、セラミックス板10の外周部OPの直径は例えば60mm~510mm程度(通常は210mm~360mm程度)である(ただし、外周部OPの直径は内側部IPの直径より大きい)。また、セラミックス板10の内側部IPの厚さは例えば1mm~10mm程度であり、セラミックス板10の外周部OPの厚さは例えば0.5mm~9.5mm程度である(ただし、外周部OPの厚さは内側部IPの厚さより薄い)。
セラミックス板10の上面S1の内、内側部IPにおける上面(以下、「吸着面」ともいう)S11は、Z軸方向に略直交する略円形の表面である。吸着面S11は、対象物(例えばウェハW)を保持する吸着面として機能する。吸着面S11は、特許請求の範囲における第1の表面に相当する。
セラミックス板10の吸着面S11における外縁付近には、連続的な壁状の凸部(以下、「壁状凸部」という)12が形成されている。壁状凸部12は、シールバンドとも呼ばれる。図3に示すように、Z軸方向視での壁状凸部12の形状は、セラミックス板10の吸着面S11の中心P0を中心とした略円環状である。また、図2に示すように、壁状凸部12の断面(Z軸に平行で、かつ、上記中心P0を通る断面)の形状は、略矩形である。壁状凸部12の高さは、例えば、10μm~20μm程度である。また、壁状凸部12の幅(Z軸方向視での壁状凸部12の延伸方向に直交する方向の大きさ)は、例えば、0.5mm~5.0mm程度である。
また、セラミックス板10の吸着面S11における壁状凸部12より内側の領域には、複数の独立した柱状の凸部(以下、「柱状凸部」という)14が形成されている。図3に示すように、Z軸方向視での各柱状凸部14の形状は、略円形である。また、Z軸方向視で、複数の柱状凸部14は、略均等間隔で配置されている。また、図2に示すように、各柱状凸部14の断面(Z軸に平行な断面)の形状は、略矩形である。柱状凸部14の高さは、凸部12の高さと略同一であり、例えば、10μm~20μm程度である。また、柱状凸部14の幅(Z軸方向視での柱状凸部14の最大径)は、例えば、0.5mm~1.5mm程度である。なお、セラミックス板10の吸着面S11における壁状凸部12より内側の領域の内、柱状凸部14が形成されていない部分は、凹部16となっている。
ウェハWは、セラミックス板10の吸着面S11における壁状凸部12と複数の柱状凸部14とに支持される。ウェハWが壁状凸部12および複数の柱状凸部14に支持された状態では、ウェハWの表面(下面)と、セラミックス板10の吸着面S11(より詳細には吸着面S11の凹部16)との間に、空間が存在することとなる。後述すように、この空間には、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)が供給される。壁状凸部12および柱状凸部14は、特許請求の範囲における凸部に相当する。
セラミックス板10の上面S1の内、外周部OPにおける上面(以下、「外周上面」ともいう)S12は、Z軸方向に略直交する略円環状の表面である。セラミックス板10の外周上面S12には、例えば、静電チャック100を固定するための治具(不図示)が係合する。
図2に示すように、セラミックス板10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス板10の吸着面S11に吸着固定される。
また、セラミックス板10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)を含む抵抗発熱体により構成されたヒータ電極50が配置されている。ヒータ電極50に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ電極50が発熱することによってセラミックス板10が温められ、セラミックス板10の吸着面S11に保持されたウェハWが温められる。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
ベース部材20は、例えばセラミックス板10の外周部OPと同径の、または、セラミックス板10の外周部OPより径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。
ベース部材20は、セラミックス板10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着層30によって、セラミックス板10に接合されている。接着層30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着層30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着層30を介したベース部材20とセラミックス板10との間の伝熱(熱引き)によりセラミックス板10が冷却され、セラミックス板10の吸着面S11に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
また、図2に示すように、静電チャック100は、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱性を高めてウェハWの温度分布の制御性をさらに高めるため、セラミックス板10の吸着面S11とウェハWの表面との間に存在する空間に不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)を供給する構成を備えている。すなわち、静電チャック100には、ベース部材20の下面S4から接着層30の上面にわたって上下方向に延びる第1のガス流路孔131と、第1のガス流路孔131に連通すると共にセラミックス板10の吸着面S11に開口する第2のガス流路孔132とが形成されている。また、セラミックス板10の内部には、第2のガス流路孔132と連通すると共に面方向に環状に延びる横流路133が形成されており、セラミックス板10の下面S2には、第2のガス流路孔132に連通する凹部134が形成されている。凹部134には、通気性を有する充填部材(通気性プラグ)160が充填されている。ヘリウムガス源(図示しない)から供給されたヘリウムガスが、第1のガス流路孔131内に流入すると、流入したヘリウムガスは、第1のガス流路孔131から凹部134内に充填された通気性を有する充填部材160の内部を通過してセラミックス板10内部の第2のガス流路孔132内に流入し、横流路133を介して面方向に流れつつ、吸着面S11に形成されたガス噴出孔から噴出する。このようにして、吸着面S11とウェハWの表面との間に存在する空間に、ヘリウムガスが供給される。
A-2.静電チャック100の製造方法:
本実施形態の静電チャック100を新たに製造する製造方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、チャック電極40やヒータ電極50等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビアの形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、セラミックス焼成体を作製する。
次に、セラミックス焼成体の平面状の表面(吸着面S11)に、壁状凸部12および複数の柱状凸部14に対応する部分を遮蔽するマスクを配置し、例えばセラミックス等の粒体を投射するショットブラストを行うことにより、壁状凸部12および複数の柱状凸部14を形成する。その後、例えばシート状の接着層30を用いて、セラミックス板10とベース部材20とを接合する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック100が製造される。
A-3.静電チャック100の再生・製造方法:
静電チャック100が繰り返し使用されると、セラミックス板10の吸着面S11に、ウェハWの洗浄液残滓等の汚染物質が付着したり、微細な凹凸が形成されたりする。以下、セラミックス板10の吸着面S11における、汚染物質が付着したり微細な凹凸が形成されたりした層を、変質層TLという。セラミックス板10の吸着面S11にある程度の厚さの変質層TLが形成されると、ウェハWを吸着する吸着力が低下したり、壁状凸部12とウェハWとの間の密着性が低下して不活性ガスが漏洩したりする。そのため、そのような場合には、変質層TLを取り除くことによって静電チャック100を再生して製造する処理が実行される。
図4は、第1実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の流れを示すフローチャートである。また、図5および図6は、第1実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の概要を示す説明図である。図5のA欄には、静電チャック100のセラミックス板10の上面S1(吸着面S11および外周上面S12)に変質層TLが形成された状態が示されている。
はじめに、壁状凸部12の頂面および複数の柱状凸部14の頂面を遮蔽する複数の遮蔽部210を有するマスク200を、セラミックス板10の吸着面S11に配置する(S110)。図5のB欄に示すように、セラミックス板10の吸着面S11に配置されるマスク200は、複数の遮蔽部210と、複数の遮蔽部210の上側に位置する補助遮蔽部220とが、2枚の離型フィルム(上側離型フィルム230および下側離型フィルム240)により挟持された構成である。セラミックス板10の吸着面S11へのマスク200の配置の際には、まず、セラミックス板10の吸着面S11に接着剤を塗布する。次に、マスク200の複数の遮蔽部210の位置を、吸着面S11の壁状凸部12および複数の柱状凸部14の位置に合わせた状態で、マスク200をセラミックス板10の吸着面S11に配置する。そして、下側離型フィルム240を剥がす。なお、下側離型フィルム240は、パターンの中心を通る線で切断されており、該線を挟んで半分ずつ浮かして剥がすことができるようになっている。次に、マスク200の複数の遮蔽部210が、吸着面S11の壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面に接着されるように、マスク200の上からローラーで押さえつける。次に、上側離型フィルム230を剥がす。最後に、補助遮蔽部220をエアーにより飛ばす。なお、補助遮蔽部220は、極めて薄く、後述のショットブラスが開始されると飛び散ってしまうため、この時点で完全に除去できていなくてもよい。以上の手順により、吸着面S11の壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面に遮蔽部210が接着された状態(すなわち、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面がマスクされた状態)が形成される。なお、第1実施形態では、マスク200の各遮蔽部210の大きさ(幅)は、対応する壁状凸部12または柱状凸部14の頂面の大きさ(幅)より大きい。より具体的には、壁状凸部12を遮蔽する遮蔽部210については、遮蔽部210の幅(Z軸方向視での遮蔽部210の延伸方向に直交する方向の大きさ)は、壁状凸部12の幅より、例えば100μm程度大きい。また、柱状凸部14を遮蔽する遮蔽部210については、遮蔽部210の幅(Z軸方向視での遮蔽部210の最大径)は、柱状凸部14の幅より、例えば100μm程度大きい。S110の工程は、特許請求の範囲におけるマスク工程に相当する。
次に、マスク200の遮蔽部210が配置されたセラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行う(S120)。図5のC欄には、ショットブラスト装置BDにより、セラミックス板10の吸着面S11に向けてブラスト材BMが投射されている様子が示されている。ショットブラストにおけるブラスト材BM(投射材)としては、例えば、炭化ケイ素等のセラミックスの粒体(粒径:10μm~100μm程度)を用いることができる。このショットブラストにより、吸着面S11の内、遮蔽部210に覆われていない凹部16の表面(凹部16の底面および側面)が研削され、凹部16の表面に形成された変質層TLが取り除かれる。このショットブラストによる凹部16の底面の研削深さは、例えば、5μm~15μm程度である。なお、このショットブラストの際には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12が保護カバーPCにより覆われる。また、ショットブラスト完了後、セラミックス板10の吸着面S11をイオン交換水により洗い流すことにより、マスク200の遮蔽部210が除去される。S120の工程は、特許請求の範囲におけるショットブラスト工程に相当する。
次に、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12に対して、平面研磨およびマシニング加工を行う(S130)。図6のD欄には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12に対して、グラインダGRを用いた平面研磨およびマシニング装置MDを用いたマシニング加工が行われている様子が示されている。この平面研磨およびマシニング加工により、セラミックス板10の外周上面S12に形成された変質層TLが取り除かれる。
次に、セラミックス板10の吸着面S11に対して鏡面研磨を行う(S140)。図6のE欄には、セラミックス板10の吸着面S11に対して、研磨液PSを供給しつつ研磨パッドPPを用いて鏡面研磨が行われている様子が示されている。この鏡面研磨により、壁状凸部12および各柱状凸部14の頂面が研削され、壁状凸部12および各柱状凸部14の頂面に形成された変質層TLが取り除かれる。この鏡面研磨による壁状凸部12および各柱状凸部14の頂面の研削深さは、S120のショットブラストによる凹部16の底面の研削深さと略同一であり、例えば、5μm~15μm程度である。なお、鏡面研磨の際には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12が保護カバーPCにより覆われる。S140の工程は、特許請求の範囲における鏡面研磨工程に相当する。また、S110とS120とS140とを合わせた工程は、特許請求の範囲における再生工程に相当する。
以上の工程により、セラミックス板10の吸着面S11に存在していた変質層TLが取り除かれ、かつ、吸着面S11に壁状凸部12および複数の柱状凸部14が形成された静電チャック100が、再生・製造される。
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の静電チャック100は、壁状凸部12および複数の柱状凸部14が形成された吸着面S11を有するセラミックス板10と、セラミックス板10の内部に配置され、静電引力を発生させるチャック電極40とを備え、セラミックス板10の吸着面S11上に対象物(例えばウェハW)を保持する装置である。また、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法は、セラミックス板10の吸着面S11に、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面を遮蔽する複数の遮蔽部210を有するマスク200を配置するマスク工程(S110)と、マスク200が配置されたセラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行うことにより、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の間の凹部16の表面を研削するショットブラスト工程(S120)と、ショットブラスト工程の後に、セラミックス板10の吸着面S11に対して鏡面研磨を行うことにより、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面を研削する鏡面研磨工程(S140)とを備える再生工程(S110,S120,S140)を有する。
このように、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、ショットブラスト工程(S120)を行う際に、セラミックス板10の吸着面S11における壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面が、マスク200の遮蔽部210により遮蔽されている。そのため、ショットブラスト工程(S120)では、吸着面S11における凹部16の表面は研削されて変質層TLが除去されるが、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面は研削されない。また、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、ショットブラスト工程(S120)の後に、鏡面研磨工程(S140)が行われる。鏡面研磨工程(S140)では、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面は研削されて変質層TLが除去されるが、凹部16の表面は研削されない。従って、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14を完全に除去することなく、吸着面S11の表面(壁状凸部12の頂面、複数の柱状凸部14の頂面、および、凹部16の表面)に形成された変質層TLを除去することができるため、誘電体層の厚さ(チャック電極40から吸着面S11までの距離)が過度に薄くなって静電チャック100の耐電圧特性が低下することを抑制することができる。また、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、吸着面S11における凹部16の表面に対してはショットブラストが行われる一方、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面に対しては、ショットブラストは行われず、鏡面研磨が行われる。従って、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが不均一に低くなって不活性ガスが滞留する空間の容積が面方向(吸着面S11に略平行な方向)において不均一になることを抑制することができ、その結果、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱特性の均一性が低下してウェハWの温度分布の制御性が低下することを抑制することができる。このように、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、静電チャック100の耐電圧特性が低下することを抑制しつつ、かつ、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱特性の均一性が低下してウェハWの温度分布の制御性が低下することを抑制しつつ、セラミックス板10の吸着面S11に形成された変質層TLが除去された静電チャック100を再生・製造することができる。
また、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、ショットブラスト工程(S120)における凹部16の底面の研削深さと、鏡面研磨工程(S140)における壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面の研削深さとは、略同一である。そのため、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、該方法の実行に伴う壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さの変化を効果的に抑制することができる。従って、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが不均一に低くなって不活性ガスが滞留する空間の容積が面方向において不均一になることを効果的に抑制することができ、その結果、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱特性の均一性が低下してウェハWの温度分布の制御性が低下することを効果的に抑制することができる。また、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが高くなってウェハWを吸着する吸着力が低下することを抑制することができる。
また、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、マスク200の各遮蔽部210の大きさは、対応する壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面より大きい。そのため、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、マスク工程(S110)において、マスク200の各遮蔽部210と壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面との位置ずれを抑制することができる。従って、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、ショットブラスト工程(S120)において壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面が研削されて壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが不均一に低くなることを効果的に抑制することができ、その結果、不活性ガスが滞留する空間の容積が面方向において不均一になってウェハWの温度分布の制御性が低下することを効果的に抑制することができる。
B.第2実施形態:
図7は、第2実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の流れを示すフローチャートである。また、図8および図9は、第2実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法の概要を示す説明図である。以下では、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法の各工程の内、上述した第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法の工程と同様の内容の工程については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
第2実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法では、はじめに、セラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行う(S102)。図8のA欄には、ショットブラスト装置BDにより、セラミックス板10の吸着面S11に向けてブラスト材BMが投射されている様子が示されている。S102のショットブラストにおけるブラスト材BM(投射材)としては、第1実施形態におけるS120のショットブラストに使用されたものと同様のものを用いることができる。このショットブラストによる研削深さは、例えば、5μm~10μm程度である。このショットブラストにより、吸着面S11全面(柱状凸部14、壁状凸部12および凹部16の表面)が研削され、吸着面S11に形成された変質層TLが取り除かれる。ただし、柱状凸部14および壁状凸部12の頂面には、ブラストによる破砕層(比較的粗い表面の層)が形成される。なお、このショットブラストの際には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12が保護カバーPCにより覆われる。S102の工程は、特許請求の範囲におけるマスク前ショットブラスト工程に相当する。
次に、第1実施形態におけるS110と同様に、壁状凸部12の頂面および複数の柱状凸部14の頂面を遮蔽する複数の遮蔽部210を有するマスク200を、セラミックス板10の吸着面S11に配置する(S110)。図8のB欄には、セラミックス板10の吸着面S11にマスク200が配置された様子が示されている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、マスク200の各遮蔽部210の大きさ(幅)は、対応する壁状凸部12または柱状凸部14の頂面の大きさ(幅)より大きい。S110の工程は、特許請求の範囲におけるマスク工程に相当する。
次に、第1実施形態におけるS120と同様に、マスク200の遮蔽部210が配置されたセラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行う(S120)。図8のC欄には、ショットブラスト装置BDにより、セラミックス板10の吸着面S11に向けてブラスト材BMが投射されている様子が示されている。このショットブラストによる凹部16の底面の研削深さは、例えば、5μm~15μm程度である。このショットブラストにより、吸着面S11の内、遮蔽部210に覆われていない凹部16の表面(凹部16の底面および側面)が研削される。その結果、柱状凸部14および壁状凸部12の高さが高くなる。なお、このショットブラストの際には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12が保護カバーPCにより覆われる。また、ショットブラスト完了後、セラミックス板10の吸着面S11をイオン交換水により洗い流すことにより、マスク200の遮蔽部210が除去される。S120の工程は、特許請求の範囲におけるショットブラスト工程に相当する。
次に、第1実施形態におけるS130と同様に、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12に対して、平面研磨およびマシニング加工を行う(S130)。図9のD欄には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12に対して、グラインダGRを用いた平面研磨およびマシニング装置MDを用いたマシニング加工が行われている様子が示されている。この平面研磨およびマシニング加工により、セラミックス板10の外周上面S12に形成された変質層TLが取り除かれる。
次に、第1実施形態におけるS140と同様に、セラミックス板10の吸着面S11に対して鏡面研磨を行う(S140)。図9のE欄には、セラミックス板10の吸着面S11に対して、研磨液PSを供給しつつ研磨パッドPPを用いて鏡面研磨が行われている様子が示されている。この鏡面研磨による壁状凸部12および各柱状凸部14の頂面の研削高さは、S120のショットブラストによる凹部16の底面の研削深さと略同一であり、例えば、5μm~15μm程度である。この鏡面研磨により、壁状凸部12および各柱状凸部14の頂面が研削される。その結果、壁状凸部12および各柱状凸部14の頂面に形成された破砕層が取り除かれると共に、S120のショットブラストによって高くなった柱状凸部14および壁状凸部12の高さが元の高さと略同一に戻る。なお、鏡面研磨の際には、セラミックス板10の外周部OPの外周上面S12が保護カバーPCにより覆われる。S140の工程は、特許請求の範囲における鏡面研磨工程に相当する。また、S102とS110とS120とS140とを合わせた工程は、特許請求の範囲における再生工程に相当する。
以上の工程により、セラミックス板10の吸着面S11に存在していた変質層TLが取り除かれ、かつ、吸着面S11に壁状凸部12および複数の柱状凸部14が形成された静電チャック100が、再生・製造される。
以上説明したように、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法は、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法と同様に、セラミックス板10の吸着面S11に、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面を遮蔽する複数の遮蔽部210を有するマスク200を配置するマスク工程(S110)と、マスク200が配置されたセラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行うことにより、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の間の凹部16の表面を研削するショットブラスト工程(S120)と、ショットブラスト工程の後に、セラミックス板10の吸着面S11に対して鏡面研磨を行うことにより、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面を研削する鏡面研磨工程(S140)とを備える再生工程(S110,S120,S140)を有する。
また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、再生工程が、さらに、S110のマスク工程の前に、セラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行うマスク前ショットブラスト工程(S102)を備える。
このように、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、S110のマスク工程の前に、セラミックス板10の吸着面S11に対してショットブラストを行うマスク前ショットブラスト工程(S102)が行われる。そのため、マスク前ショットブラスト工程(S102)により、セラミックス板10の吸着面S11に形成された変質層TLを確実に除去することができる。また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法と同様に、ショットブラスト工程(S120)を行う際に、セラミックス板10の吸着面S11における壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面が、マスク200の遮蔽部210により遮蔽されている。そのため、ショットブラスト工程(S120)では、吸着面S11における凹部16の表面は研削されるが、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面は研削されない。また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法と同様に、ショットブラスト工程(S120)の後に、鏡面研磨工程(S140)が行われる。鏡面研磨工程(S140)では、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面は研削されるが、凹部16の表面は研削されない。従って、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14を完全に除去することなく、吸着面S11の表面(壁状凸部12の頂面、複数の柱状凸部14の頂面、および、凹部16の表面)に形成された変質層TLを除去することができるため、誘電体層の厚さ(チャック電極40から吸着面S11までの距離)が過度に薄くなって静電チャック100の耐電圧特性が低下することを抑制することができる。また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、マスク前ショットブラスト工程(S102)およびマスク工程(S110)の実行後には、吸着面S11における凹部16の表面に対してはショットブラストが行われる一方、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面に対しては、ショットブラストは行われず、鏡面研磨が行われる。従って、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが不均一に低くなって不活性ガスが滞留する空間の容積が面方向(吸着面S11に略平行な方向)において不均一になることを抑制することができ、その結果、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱特性の均一性が低下してウェハWの温度分布の制御性が低下することを抑制することができる。このように、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、静電チャック100の耐電圧特性が低下することを抑制しつつ、かつ、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱特性の均一性が低下してウェハWの温度分布の制御性が低下することを抑制しつつ、セラミックス板10の吸着面S11に形成された変質層TLが確実に除去された静電チャック100を再生・製造することができる。
また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法と同様に、ショットブラスト工程(S120)における凹部16の底面の研削深さと、鏡面研磨工程(S140)における壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面の研削深さとは、略同一である。そのため、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、該方法の実行に伴う壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さの変化を効果的に抑制することができる。従って、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが不均一に低くなって不活性ガスが滞留する空間の容積が面方向において不均一になることを効果的に抑制することができ、その結果、セラミックス板10とウェハWとの間の伝熱特性の均一性が低下してウェハWの温度分布の制御性が低下することを効果的に抑制することができる。また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが高くなってウェハWを吸着する吸着力が低下することを抑制することができる。
また、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、第1実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法と同様に、マスク200の各遮蔽部210の大きさは、対応する壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面より大きい。そのため、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、マスク工程(S110)において、マスク200の各遮蔽部210と壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面との位置ずれを抑制することができる。従って、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法によれば、ショットブラスト工程(S120)において壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面が研削されて壁状凸部12および複数の柱状凸部14の高さが不均一に低くなることを効果的に抑制することができ、その結果、不活性ガスが滞留する空間の容積が面方向において不均一になってウェハWの温度分布の制御性が低下することを効果的に抑制することができる。なお、第2実施形態の静電チャック100を再生して製造する方法では、マスク工程(S110)の前に実行されるマスク前ショットブラスト工程(S102)により、セラミックス板10の吸着面S11に形成された変質層TLを除去することができるため、マスク200の各遮蔽部210の大きさを、対応する壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面より大きくしても、それによって変質層TLの除去が阻害されることはない。
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態における静電チャック100を再生して製造する方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、マスク200の各遮蔽部210の大きさは、対応する壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面より大きいとしているが、マスク200の各遮蔽部210の大きさは、対応する壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面と同じ大きさであるとしてもよい。また、マスク200の各遮蔽部210の大きさは、対応する壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面より小さいとしてもよい。このようにすれば、ショットブラスト工程(S120)において、凹部16の側面を良好に研削することができ、セラミックス板10の吸着面S11における変質層TLをより確実に除去することができる。
また、上記実施形態では、ショットブラスト工程(S120)における凹部16の底面の研削深さと、鏡面研磨工程(S140)における壁状凸部12および複数の柱状凸部14の頂面の研削深さとは、略同一であるとしているが、両者が互いに異なるとしてもよい。
また、上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、セラミックス板10が、外周に沿って上側に切り欠きが形成された部分である外周部OPと、外周部OPの内側に位置する内側部IPとから構成されているが、セラミックス板10に切り欠きが形成されておらず、セラミックス板10のZ軸方向の厚さが全体にわたって一様であるとしてもよい。また、上記実施形態では、セラミックス板10の吸着面S11に、壁状凸部12と柱状凸部14とが形成されているが、壁状凸部12と柱状凸部14とのいずれか一方が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、セラミックス板10の内部に1つのチャック電極40が設けられた単極方式が採用されているが、セラミックス板10の内部に一対のチャック電極40が設けられた双極方式が採用されてもよい。また、上記実施形態の静電チャック100における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。