以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るセンサを示す概略断面図である。図2は、実施の形態1に係るセンサを示す概略平面図である。図1および図2を参照して、実施の形態1に係るセンサ100について説明する。
図1および図2に示すように、実施の形態1に係るセンサ100は、いわゆるMEMS型センサである。センサ100は、膜部2および支持体3を含む基板1と、複数の磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4とを備える。
膜部2は、支持体3に支持される。膜部2は、圧力・慣性・音などの外力によって変形可能に設けられている。膜部2の厚さは、支持体3の厚さよりも薄くなっている。膜部2は、基板1の裏面側に空洞部4が設けられることにより形成される。ここで空洞部は、基板の内壁に囲まれた空間を指す。基板1において空洞部4が設けられた領域に膜部2となる。基板1において空洞部4が設けられていない領域が支持体3となる。
膜部2は、支持体3と一体に構成されていてもよいし、支持体3と別体に構成されていてもよい。膜部2は、支持体3と同じ材料で構成されていてもよいし、支持体3と異なる材料で構成されていてもよい。支持体3は、たとえば、シリコン基板によって構成されている。膜部2は、たとえば、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、または窒化シリコン等によって構成されている。
膜部2は、略矩形形状を有する。膜部2は、外縁の一部に第1辺部を含んでいる。具体的には、膜部2は、外縁を構成する複数の辺部21、22、23、24を含んでいる。辺部21は、上記第1辺部に相当する。
辺部21および辺部24は、互いに対向するように配置されている。辺部22および辺部23は互いに対向しつつ、辺部21および辺部24を接続する。
膜部2には、少なくとも辺部21に沿う部分を含むようにスリット部30が形成されている。これにより、膜部2は、辺部21が部分的に支持体3に接続された接続部25を含む。
具体的には、スリット部30が複数の辺部21、22、23、24の各々に沿う部分を含むように設けられることにより、膜部2は、複数の辺部21、22、23、24の各々が支持体3に部分的に接続された複数の接続部25を含む。
複数の接続部25の各々は、複数の辺部21、22、23、24の各々の中央部に位置する。複数の接続部25の各々は、膜部2の外縁に沿う方向の一方側に一端25a、および膜部2の外縁に沿う方向の他方側に他端25bを有する。なお、膜部2の外縁に沿う方向の一方側とは、膜部2の周方向における一方側であり、膜部2の外縁に沿う方向の他方側とは、膜部2の周方向における他方側である。
スリット部30は、複数の辺部21、22、23、24の各々において、接続部25の一端25aから一方側に向けて延びる第1スリット部31と、接続部25の他端25bから他方側に向けて延びる第2スリット部32とを含む。
膜部2の周方向において互いに隣り合う接続部25のうち一方の接続部側に配置された第1スリット部31と、他方の接続部25側に配置された第2スリット部32とが連結されている。
複数の接続部25の各々には、磁気抵抗素子部が配置されている。具体的には、磁気抵抗素子部R1は、辺部21側における接続部25に配置されている。磁気抵抗素子部R2は、辺部22側における接続部25に配置されている。磁気抵抗素子部R3は、辺部23側における接続部25に配置されている。磁気抵抗素子部R4は、辺部24側における接続部25に配置されている。
磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々は、複数の単位素子10によって構成されている。単位素子10は、後述するように磁気抵抗素子である。複数の単位素子10の各々は、ディスク形状を有する。これにより、複数の単位素子10の各々に含まれるフリー層46(図3参照)もディスク形状を有する。
磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々において、複数の単位素子10は、たとえば行列状に配置されている。また、複数の単位素子10は、直列に接続されている。具体的には、隣り合う単位素子10において、上部電極層49(図3参照)と、下部電極層40(図3参照)とが交互に接続されていることが好ましい。
なお、図2においては、磁気抵抗素子部に含まれる複数の単位素子10の個数が8個である場合を図示しているが、単位素子10の個数は、8個に限定されず、単数であってもよいし、2つ以上であってもよい。
複数の単位素子10は、接続部25において膜部2が外力によって変形した際に作用する応力の絶対値が大きい箇所に配置されるものほど、ディスク径が小さくなるように設けられている。対応する辺部に沿う方向において、接続部25の中央側に位置する単位素子10のディスク径は、接続部25の両端側に位置する単位素子10のディスク径よりも小さい。
なお、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々において、複数の単位素子10のディスク径は、全て同じであってもよい。
磁気抵抗素子部R1、R2が直列に接続されることにより、第1ハーフブリッジ回路Hf1が構成されている。磁気抵抗素子部R3、R4が直列に接続されることにより、第2ハーフブリッジ回路Hf2が構成されている。
第1ハーフブリッジ回路Hf1および第2ハーフブリッジ回路Hf2が並列に接続されることにより、フルブリッジ回路が構成される。
具体的には、磁気抵抗素子部R1の一方側は、電源電圧Vinを印加するための電極部P1に接続されている。磁気抵抗素子部R1の他方側は、出力電圧V+を取り出すための電極部P2に接続されている。
磁気抵抗素子部R2の一方側は、出力電圧V+を取り出すための電極部P2に接続されている。磁気抵抗素子部R2の他方側は、グランド電極としての電極部P4に接続されている。
磁気抵抗素子部R3の一方側は、電源電圧Vinを印加するための電極部P1に接続されている。磁気抵抗素子部R3の他方側は、出力電圧V-を取り出すための電極部P3に接続されている。
磁気抵抗素子部R4の一方側は、出力電圧V-を取り出すための電極部P3に接続されている。磁気抵抗素子部R4の他方側は、グランド電極としての電極部P4に接続されている。
磁気抵抗素子部R1および磁気抵抗素子部R2は、正出力性を有する。磁気抵抗素子部R3および磁気抵抗素子部R4は、負出力性を有する。
電極部P1と電極部P4との間に電源電圧Vinを印加すると、電極部P2および電極部P3からは、膜部2に作用する外力の大きさに応じて出力電圧V+,V-が取り出される。出力電圧V+,V-は、差動増幅器(不図示)を介して差動増幅される。
なお、図2においては、上記電極部P1、P2、P3、P4を支持体3の外部に図示したが、上記電極部P1、P2、P3、P4は、支持体3に形成されていてもよい。
図3は、実施の形態1に係るセンサに具備される磁気抵抗素子部を構成する単位素子の積層構造を示す概略断面図である。図3を参照して、単位素子10の積層構造について説明する。
単位素子10は、下部電極層40、ピニング層41、ピン層42、磁気結合層43、第2磁性層としてのリファレンス層44、中間層としてのトンネルバリア層45、第1磁性層としてのフリー層46、分離層47、バイアス層48、および上部電極層49を含む。
下部電極層40は、ピニング層41の結晶を適切に成長させるシード層として機能する。下部電極層40としては、たとえば、RuとTaとの積層膜を採用することができる。なお、下部電極層40は、他の金属や合金からなる単一の金属膜、および複数種の上記金属膜が積層されたものを採用することができる。
ピニング層41は、下部電極層40上に設けられている。ピニング層41は、反強磁性層によって構成されている。ピニング層41としては、たとえば、IrMnを採用することができる。なお、ピニング層41は、PtMn等のMnを含む合金であってもよい。
ピン層42は、ピニング層41上に設けられている。ピン層42は、強磁性層によって構成されている。ピン層42としては、たとえば、CoFeを採用することができる。なお、ピン層42は、CoFeB等であってもよい。ピン層42の磁化は、ピニング層41から作用する交換結合磁界によって所定の面内方向に固定される。
磁気結合層43は、ピン層42上に設けられている。磁気結合層43は、ピン層42とリファレンス層44との間に配置されており、ピン層42とリファレンス層44との間に反強磁性結合を生じさせる。
磁気結合層43は、非磁性層によって構成されている。磁気結合層43としては、たとえば、Ruを採用することができる。
リファレンス層44は、磁気結合層43上に設けられている。リファレンス層44は、強磁性層によって構成されている。リファレンス層44としては、たとえば、CoFeBを採用することができる。なお、リファレンス層44は、CoFe等であってもよい。
上述のピン層42、磁気結合層43、およびリファレンス層44は、SAF構造を形成している。これにより、リファレンス層44の磁化方向を強固に固定することができる。
トンネルバリア層45は、リファレンス層44上に設けられている。トンネルバリア層45は、リファレンス層44とフリー層46との間に配置されている。トンネルバリア層45は、絶縁層によって構成されている。トンネルバリア層45としては、たとえば、MgOを採用することができる。
フリー層46は、トンネルバリア層45上に設けられている。フリー層46は、強磁性層によって構成されている。フリー層46としては、たとえば、CoFeBとFeBとの積層を採用することができる。FeBは、磁歪定数が大きく、かつ、アモルファスであり結晶磁気異方性が小さい。なお、FeBの結晶化を抑制するために、CoFeBとFeBとの間、およびFeBと分離層47との間には、CoFeTa等の強磁性アモルファス層を設けてもよい。
分離層47は、フリー層46上に設けられている。分離層47は、フリー層46とバイアス層48との間に配置されている。分離層47としては、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yoshida)結合を示すCu、Ru、Rh、Ir、V、Cr、Nb、Mo、Ta、W、Rr等を採用することができる。これらは、分離層47の膜厚に応じて正の磁気結合(強磁性、平行)、負の磁気結合(反強磁性、反平行)を使い分けることができる。その他、Au、Ag、Pt、Pd、Ti、Zr、Hfを用いた場合は主に正の磁気結合が得られる。負の磁気結合を用いる場合は、Ru、Rh、Irを用いることができる。
バイアス層48は、分離層47上に設けられている。バイアス層48は、フリー層46にバイアス磁界を印加するバイアス印加部として機能する。バイアス層48は、強磁性層と反強磁性層との積層を採用することができる。バイアス層48としては、たとえば、CoFeBとIrMnとの積層を採用することができる。CoFeBとIrMnとは、この順で分離層47側から積層されている。
バイアス層48は、強磁性層と反強磁性層とによって発現される交換結合磁界をバイアス磁界としてフリー層46に印加する。バイアス磁界の強度は、リファレンス層44からの層間交換結合強度よりも大きい。
また、フリー層に印加されているバイアス磁界の方向と、リファレンス層44の磁化方向(リファレンス層44において固定された磁化の方向)とが異なる向きとなるように、リファレンス層側の反強磁性層と、バイアス層48側の反強磁性層のブロッキング温度が異なっている。これにより、プロセス上安定して、センサ100を製造することができるとともに、センサ100の信頼性が良好となる。
リファレンス層側の反強磁性層と、バイアス層48側の反強磁性層とが同じ材料で構成される場合には、たとえば、リファレンス層側の反強磁性層を、バイアス層48側の反強磁性層よりも厚くすることで、リファレンス層側の反強磁性層のブロッキング温度を、バイアス層48側の反強磁性層のブロッキング温度よりも高くすることができる。
なお、一例として、PtMnのブロッキング温度が310℃であり、IrMnのブロッキング温度は、255℃である。リファレンス層側の反強磁性層をPtMnとし、バイアス層側の反強磁性層をIrMnとしてもよい。
上部電極層49は、バイアス層48上に設けられている。上部電極層49としては、たとえば、RuとTaとの積層膜を採用することができる。なお、上部電極層49は、他の金属や合金からなる単一の金属膜、および複数種の上記金属膜が積層されたものを採用することができる。
以上のように、実施の形態1に係る単位素子10が、フリー層46の下方側にリファレンス層44を配置するBottom-pinned型のTMR素子である場合を例示して説明したが、これに限定されず、フリー層46上方側にリファレンス層44を配置するTop-pinned型のTMR素子であってもよい。また、単位素子10は、TMR素子に限定されない。なお、フリー層46にバイアス磁界を印加する方法として、バイアス層48および分離層47を用いる場合を例示したが、これに限定されない。バイアス層48および分離層47を省略し、外部磁石等を用いてもよい。
図4は、実施の形態1に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形した状態を示す斜視図である。図4を参照して、実施の形態1に係るセンサ100において膜部2が変形した状態について説明する。
図4に示すように、膜部2の中心に応力が印加されて、膜部2が撓み変形する場合には、応力は複数の接続部25に集中する。たとえば、上述の膜部2において、複数の辺部21、22、23、24の長さは600μmであり、膜部2の厚さは1μmである。また、各辺部に沿う第1スリット部31および第2スリット部32の長さは、250μmである。当該第1スリット部31および第2スリット部32の長さ方向に直交する第1スリット部31および第2スリット部32の幅は、15μmである。この場合において、空洞部4側(膜部2の裏面側)から膜部2に略1Paの圧力が印加された場合をシミュレーションし、FEMによる応力分布を解析した場合には、複数の接続部25の各々に、最大65KPa程度の圧縮応力が作用する。
一方、ここでは図示していないが、比較例としてスリット部30が全く形成されていないセンサを準備し、同様の条件でシミュレーションした場合には、複数の辺部21、22、23、24の中央部に作用する圧縮応力は、最大45KPaとなる。
このように、実施の形態1においては、スリット部を形成しない上記比較例と比較して、約1.4倍の応力を接続部25に作用させることができる。このため、接続部25に磁気抵抗素子部を配置することにより、磁気抵抗素子部に作用する応力を大きくすることができる。この結果、単位素子10において、フリー層46に印加するバイアス磁界強度を大きくすることができ、これにより、バイアス強度の制御性を向上できるとともに、外乱磁界への耐性を向上させることができる。
さらに、実施の形態1においては、図5および図6に示すように、変形前後におけるフリー層の磁化の向きと、固定されたリファレンス層の磁化方向との角度を調整することにより、検知精度を向上させることができる。
図5は、実施の形態1に係るセンサにおいて、フリー層に印加されているバイアス磁界の方向と、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。なお、上述のように、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々は、複数の単位素子10を含んでいるが、図5においては、便宜上、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々において、1つの単位素子10におけるフリー層46に印加されているバイアス磁界の磁化方向と、リファレンス層44の磁化方向を図示している。
各単位素子10において、黒線で示す矢印AR2が、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向を示しており、白抜きで示す矢印AR1がリファレンス層44の磁化方向を示している。なお、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のそれぞれにおいて、各単位素子10のフリー層に印加されているバイアス磁界の方向は同じ向きであり、各単位素子10のリファレンス層の磁化方向も同じ向きである。
図5に示すように、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加されるバイアス磁界の方向と、リファレンス層44の磁化方向との相対的な角度は90度±5度となっている。
具体的には、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向に対して反時計回りに45度±5度で交差する。磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のいずれに含まれる単位素子10おいて、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に対して時計回りに45度±5度で交差する。
なお、バイアス磁界によって、フリー層46の磁化は、印加されるバイアス磁界の方向を向く。すなわち、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、バイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向と、リファレンス層44の磁化方向との相対的な角度は90度±5度となっている。
図6は、実施の形態1に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形することにより発生する応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図6においても、便宜上、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々において、1つの単位素子10における応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向を図示している。
各単位素子10において、黒線で示す矢印AR3が、応力誘起磁気異方性の向きを示しており、白抜きで示す矢印AR1がリファレンス層44の磁化方向を示している。また、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向を破線の矢印で示し、膜部2が変形していない非変形状態における単位素子10の外縁を破線の円で示している。
図6に示すように、膜部2が変形して、複数の辺部21、22、23、24の各々において、接続部25(より特定的には、接続部25のうち膜部2の外縁側に位置する部分)に黒塗りの矢印に示すように圧縮力が作用した場合には、膜部2の変形によってフリー層46の応力誘起磁気異方性が発現する。これにより、フリー層46の磁化の方向は、応力誘起磁気異方性の向きとなる。一方で、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向、およびリファレンス層44の磁化方向は変更されない。
上記圧縮力が作用した場合には、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向との相対的な角度は、45度±5度である。
具体的には、辺部21、24側においては、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部21における接続部25の一端25aから他端25bに向かう方向を向く。一方で、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
辺部22、23側においては、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方で、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向は、上記辺部21に直交する方向に対して時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
なお、辺部21、24側においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45±5度回転させた方向を向く。辺部22、23側においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。
ここで、上述のようにフリー層46は、ディスク形状を有し、磁気渦構造となっている。磁気渦構造のフリー層46は、単位素子10の歪量がゼロの場合、面内での磁化方向は点対称であり、その中心に面直方向に磁化を持つ。すなわち、面直方向にバイアスした場合と等価と考えることができる。
上述のように、リファレンス層44の磁化固定方向は、磁気抵抗素子が引張または圧縮された場合に発現する応力誘起異方性磁界の方向に対する相対角度が45度±5度となるように設定されている。
一般的に、単位素子10をディスク形状とし、これに応力を作用させて単位素子10が楕円形状となった場合においては、逆磁歪効果だけでは、応力誘起異方性磁界の方向が、楕円形状の長軸方向の一方側に向くか他方側に向くかを一意に決定することが困難となる。
さらに、フリー層/トンネルバリア層/リファレンス層の積層構造では、一般的なトンアネルバリア層の膜厚の場合、フリー層にはリファレンス層の磁化方向と平行方向に揃えようとする弱い層間交換結合力が働く。当該層間交換結合力によって応力誘起異方性磁界の方向が支配される場合には、磁気抵抗素子の歪みの正負に対する出力特性が偶関数となってしまう。
このため、実施の形態1においては、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の強度を、フリー層とリファレンス層の間で作用する層間交換結合磁界の強度よりも大きくすることで磁気抵抗素子への歪印加時に、フリー層の磁化方向を一意に決定し、かつ、リファレンス層の磁化方向に対して90度±5度の方向にフリー層46をバイアスしている。この結果、ブリッジ回路において、奇数関数の出力特性が得られる。
なお、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度、およびフリー層46の応力誘起磁気異方性の向きとバイアス磁界の方向との相対的な角度が±5度の範囲を有する場合を例示したが、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度を90度とし、フリー層46の応力誘起磁気異方性の向きとバイアス磁界の方向との相対的な角度を45度とすることにより、さらに良好な出力特性が得られる。
図7は、実施の形態1に係るセンサにおいて、膜部2に入力される圧力と、フルブリッジ回路の出力との関係を示す図である。なお、図7においては、磁気抵抗素子部を構成する複数の単位素子10のディスク径を一定とした場合において、ディスク径を変更させた場合のフルブリッジ回路の出力特性を示している。
なお、ディスク径を変更させることで、磁気渦による面直方向にバイアスした場合と等価な感度制御のための実効的なバイアス磁界の強度を調整することができる。具体的には、ディスク径が大きくすることでバイアス磁界の強度を小さくすることができ、ディスク径を小さくすることでバイアス磁界の強度を大きくすることができる。
図7においては、ディスク径を変更することで、磁気渦によるバイアス磁界の強度が0.5mT、1mT、2mT、5mT、10mTと変更されており、各バイアス磁界の強度でのフルブリッジ回路の出力特性が図示されている。
上述のように、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、リファレンス層44の磁化方向、および応力誘起磁気異方性の向きを上述の関係とすることにより、図7に示すように、ブリッジ回路は、奇数関数の出力特性を有している。
また、ディスク径を大きくすることで磁気渦によるバイアス磁界の強度を小さくした単位素子を用いた場合には、ブリッジ回路から大きな出力が得られており、ディスク径を小さくすることで磁気渦によるバイアス磁界の強度を大きくした単位素子を用いた場合には、ブリッジ回路から小さな出力が得られる。
このように、単位素子10のディスク径を変更することにより、感度を調整することができる。さらに、ディスク径は、製造過程においてエッチングにより単位素子10ごとに調整することができる。このため、面内において、単位素子10のディスク径を調整することで、同一膜部2内に、異なる感度を有する複数の単位素子10を配置することが可能となる。
ここで、実施の形態1においては、接続部25において、膜部2の外縁に沿って中央側から両外側に向かうにつれて、応力の絶対値がやや小さくなる。このような応力の絶対値の不均衡を補償するために、接続部25の中央側に位置する単位素子10のディスク径は、接続部25の両端側に位置する単位素子10のディスク径よりも小さくなっている。
スリット部30の形成により面積が小さくなった接続部25において、膜部2が変形した際に作用する応力の絶対値に応じてディスク径を適宜調整し直列に接続することで、良好な応答性を維持しつつ、接続部25の面積当たりの抵抗を増加させることができる。これにより、低消費電流化が可能となる。また、磁気抵抗素子部の抵抗値を既存のものと同じ値とする場合には、センサ100の小型化が可能となる。
また、上述のように単位素子10のディスク径を適宜調整することで、同じ設置面積であっても単位素子10の接続数を増加させることができるため、信頼性設計、冗長設計等も行なうことができる。これにより、高信頼性を得ることもできる。
以上のように、フリー層46のアスペクト比の高い単位素子を、膜部2のうち、外力による応力が大きい箇所に形成することにより、感度および出力の調整と外部磁界の影響を、独立して調整可能であり、高感度および高出力と外乱磁界耐性を両立させることができる。
(製造方法)
図8から図15は、実施の形態1に係るセンサの製造工程の第1工程から第8工程を示す図である。図8から図15を参照して、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法について説明する。
実施の形態1に係るセンサ100を製造する場合には、図8に示すように、第1工程において、基板61を準備する。基板61は、たとえばシリコン基板である。なお、膜部が形成される側となるシリコン基板の表面には、たとえば、酸化シリコン、窒化シリコン等の絶縁性層もしくはポリシリコンが形成されていてもよい。
続いて、基板61の表面にドライエッチングを行いトレンチ部(不図示)を形成し、めっき法やスパッタ法によりトレンチ部にCu等によって構成される配線部を形成する。次に、トレンチ部の開口から外側に隆起する余剰の導電部を学機械研磨法(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって研磨する。
次に、図9に示すように、第2工程において、基板61上に、下部電極膜63、TMR積層膜64、および上部電極膜65を積層する。具体的には、下部電極膜63、ピニング膜、ピン膜、磁気結合膜、リファレンス膜、トンネルバリア膜、フリー膜、分離膜、バイアス膜、および上部電極膜65を積層する。
下部電極膜63、ピニング膜、ピン膜、磁気結合膜、リファレンス膜、トンネルバリア膜、フリー膜、分離膜、バイアス膜、および上部電極膜は、パターニング後に、下部電極層40、ピニング層41、ピン層42、磁気結合層43、リファレンス層44、トンネルバリア層45、フリー層46、分離層47、バイアス層48、および上部電極層49となる。
下部電極膜63としては、たとえばRu/Taを成膜する。下部電極膜63の上層のピン膜/ピニング膜(強磁性膜/反強磁性膜)としては、たとえばCoFe/IrMnを成膜する。この積層膜は、後述する磁界中アニールにより交換結合が生じ、ピン層として機能する。なお、ピンニング膜としてIrMnを成膜してもよい。
ピン膜(強磁性膜)の上層の磁気結合膜(非磁性膜)としては、たとえばRuを成膜し、非磁性膜の上層のリファレンス膜(下部強磁性膜)としては、たとえばCoFeBを成膜する。リファレンス膜/磁気結合膜/ピン膜(下部強磁性膜/非磁性膜/強磁性膜)は、SAF構造を構成している。
トンネルバリア膜としては、たとえばMgOを成膜し、トンネルバリア膜上のフリー膜(上部強磁性膜)としては、たとえば、FeB/CoFeBを成膜する。FeBは、磁歪定数が大きく、かつ、アモルファスであり結晶磁気異方性が小さい。
分離膜としては、Cuを成膜する。なお、分離膜としては、上述のようにCuに限定されず、正の磁気結合、負の磁気結合に応じて適宜選択することができる。
バイアス膜(反強磁性膜/強磁性膜)としては、IrMn/CoFeBを製膜する。バイアス膜における反強磁成膜のブロッキング温度は、リファレンス膜側の反強磁性膜のブロッキング温度と異なることが好ましい。これにより、後述するように、リファレンス層の磁化方向と、バイアス層によるバイアス磁界方向とを異なるようにすることができる。
バイアス膜における反強磁成膜と、リファレンス膜における反強磁性膜を同じ材料で形成する場合には、リファレンス膜における反強磁性膜をバイアス膜における反強磁成膜よりも厚くする。なお、上部電極膜65としては、たとえばTa/Ruを成膜する。
続いて、下部電極膜63、TMR積層膜64、および上部電極膜65が形成された基板61を磁界中でアニールする。
次に、図10に示すように、第3工程において、フォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、TMR積層膜64、および上部電極膜65を所望の形状にパターニングする。
続いて、図11に示すように、第4工程において、フォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、下部電極膜63の一部を除去し、配線パターンを形成する。これにより、複数の単位素子10が形成される。複数の単位素子10は、ディスク状にパターニングされている。複数の単位素子10のディスク径は、上述のように膜部2に作用する応力に応じて調整される。複数の単位素子10の一部は、下部電極膜63によって構成される配線パターンによって電気的に接続される。
次に、図12に示すように、第5工程において、複数の単位素子10を覆うように基板61上に、絶縁膜66で覆う。絶縁膜66としては、たとえばSiO2を採用することができる。
続いて、図13に示すように、第6工程において、フォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、絶縁膜66の一部を除去し、コンタクトホールを形成する。次に、フォトリソグラフィおよびリフトオフにより、上記コンタクトホールに金属配線51、52、53を形成する。金属配線51、52、53としては、Cuを用いることができる。
続いて、図14に示すように、第7工程において、金属配線51、52、53を覆うように絶縁膜66上にパッシベーション膜67を成膜する。パッシベーション膜67としては、たとえばSiO2を採用することができる。
次に、フォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、パッシベーション膜67の一部を除去し、開口部を形成する。続いて、フォトリソグラフィおよびリフトオフにより、上記開口部に、電極部P1、P2、P3、P4に接続するための接続配線54、55等を形成する。
次に、リファレンス層の磁化方向を固定する。ここでは、上述の図5に示すように、後工程で形成するスリット部30の形状、スリット部30によって形成される接続部25に作用する応力の方向、およびフルブリッジ回路の構成に応じて磁化方向を決定する。
リファレンス層の磁化方向を固定する方法としては、電磁石もしくは永久磁石により磁界を印加しながらレーザ照射により局所加熱する方法、電磁石もしくは永久磁石により磁界を印加しながら素子の近傍に配置したヒーター用配線に通電加熱する方法、あるいは局所的に磁界印加できる冶具を配置した状態で熱処理する方法等がある。
続いて、バイアス磁界の方向を決定する。具体的には、上述のリファレンス層の磁化方向を固定する方法とほぼ同様の方法を行なう。この際、各単位素子10を加熱する温度は、リファレンス層の磁化方向が変化しない温度とする。
次に、図15に示すように、第8工程において、ドライエッチングを用いて、単位素子10が形成されている側とは反対側に位置する基板61の主面側から基板61の一部を除去し、空洞部4を形成する。このように空洞部4が形成されることで、変形可能な膜部2が形成される。続いて、膜部2の一部をドライエッチングし、所定の位置に所望の形状を有するスリット部30を形成する。
このような製造工程を経て、上述のように、複数の磁気抵抗素子により構成されたフルブリッジ回路を含み、感度を向上させることができる実施の形態1に係るセンサ100が製造される。
なお、上述の製造方法においては、金属配線51、52、53によって複数の単位素子10の上端側が電気的に接続される場合を例示して説明したが、上部電極によって複数の単位素子10の上端側が電気的に接続されてもよい。この場合には、第2工程において、基板61上に、下部電極膜63からバイアス膜までを積層され、第5工程において、金属配線51、52、53に代えて上部電極層49が形成される。
(実施の形態2)
図16は、実施の形態2に係るセンサを示す概略平面図である。図16を参照して、実施の形態2に係るセンサ100Aについて説明する。
図16に示すように、実施の形態2に係るセンサ100Aは、実施の形態1に係るセンサ100と比較した場合に、スリット部30の構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
図16に示すように、スリット部30は、実施の形態1と比較して、膜部2の外縁に沿った複数の接続部25の各々に対応する辺部に交差する方向に延びるように設けられた複数の一対の延在部33、34をさらに含む。
複数の一対の延在部33、34の各々は、対応する複数の辺部21、22、23、24の各々から膜部2の内側に向けて延在する。複数の一対の延在部33、34の各々は、対応する複数の辺部21、22、23、24に直交する方向に延在する。
具体的には、辺部21側に設けられた一対の延在部33、34は、辺部21に直交する方向に延在する。辺部22側に設けられた一対の延在部33、34は、辺部22に直交する方向に延在する。辺部23側に設けられた一対の延在部33、34は、辺部23に直交する方向に向けて延在する。辺部24側に設けられた一対の延在部33、34は、辺部24に直交する方向に延在する。
複数の接続部25の各々は、一対の延在部33、34の間を延びるように設けられた張出部26を含む。複数の磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々は、少なくとも張出部26のうち膜部2の外縁側に位置する部分に設けられている。
図17は、実施の形態2に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形した状態を示す斜視図である。図17を参照して、実施の形態2に係るセンサ100Aにおいて膜部2が変形した状態について説明する。
図17に示すように、膜部2に応力が印加されて、膜部2が撓み変形する場合には、応力は複数の接続部25に集中する。接続部25において張出部26は、膜部2の外縁から一対の延在部33、34の間を延びるように設けられている。このため、膜部2が変形した場合には、張出部26のうち膜部2の外縁側(接続部25の根元側)に応力をさらに集中させることができる。
実施の形態1同様に、複数の辺部21、22、23、24の長さを600μmとし、膜部2の厚さを1μmとする。また、各辺部に沿う第1スリット部31および第2スリット部32の長さを250μmとする。第1スリット部31および第2スリット部32の長さ方向に直交する第1スリット部31および第2スリット部32の幅を15μmとする。さらに、対応する辺部に直交する一対の延在部33、34の長さを125μmとする。一対の延在部33、34の長さ方向に直交する一対の延在部33、34の幅を15μmとする。
この場合において、空洞部4側(膜部2の裏面側)から膜部2に略1Paの圧力が印加された場合をシミュレーションし、FEMによる応力分布を解析した場合には、接続部25の先端側(張出部26における一対の延在部33、34の先端側)には、最大で42Kpa程度の引張応力が作用し、接続部25の根元側には、最大で130KPa程度の圧縮応力が作用する。
このように、実施の形態2においては、実施の形態1と比較して、接続部25の根元側に応力をさらに集中させることができる。この結果、単位素子10において、フリー層46に印加する感度制御のためのバイアス磁界強度を大きくすることができ、これにより、感度制御のためのバイアス強度の制御性を向上できるとともに、外乱磁界への耐性を向上させることができる。
なお、実施の形態2に係るセンサ100Aにおいても、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、リファレンス層44の磁化方向、および応力誘起磁気異方性の向きの関係は、実施の形態1と同様である。
実施の形態2に係るセンサ100Aは、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。この場合において、実施の形態1の第8工程に準拠した工程において、第1スリット部31、第2スリット部32および一対の延在部33、34が形成されるように、膜部2の一部をドライエッチングする。
(実施の形態3)
図18は、実施の形態3に係るセンサを示す概略平面図である。図18を参照して、実施の形態3に係るセンサ100Bについて説明する。
図18に示すように、実施の形態3に係るセンサ100Bは、実施の形態1に係るセンサ100と比較した場合に、スリット部30の構成が相違する。
スリット部30は、実施の形態1と比較して、第1スリット部31、第2スリット部32が形成されておらず、複数の一対の延在部33、34のみを含む。この場合においても、スリット部30が複数の辺部21、22、23、24の各々に沿う部分を含むように設けられることにより、膜部2は、複数の辺部21、22、23、24の各々が支持体3に部分的に接続された複数の接続部25を含む。
膜部2は、4つの角部を有する矩形形状を有し、一対の延在部33、34は、対応する所定の角部から、膜部2の周方向の一方側において当該所定の角部の隣りに位置する角部に向けて延びるように設けられている。
一対の延在部33、34のうち一方の延在部33は、対応する辺部に沿って延在する。一対の延在部33、34のうち他方の延在部34は、一方の延在部33よりも膜部2の内側で、一方の延在部33と平行となるように設けられている。
接続部25は、所定の角部から延在する一方の延在部33と、膜部2の周方向の一方側において当該所定の角部の隣りに位置する角部との間に設けられている。接続部25は、上記隣りに位置する角部に設けられた一対の延在部33、34との間を延びる張出部26を含む。磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4の各々は、対応する張出部26において、膜部2の外縁側に位置する部分に設けられている。
また、接続部25は、所定の角部から延在する一方の延在部33と、上記隣に位置する角部に儲けられた一対の延在部33、34のうち他方の延在部34との間に設けられた部分27とを含む。
対応する辺部に沿った一方の延在部33と他方の延在部34の長さはほぼ同じ長さである。対応する辺部に沿った一対の延在部33、34の長さは、当該対応する辺部に沿った辺部の長さの50%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
このような長さ関係とすることにより、膜部2が変形した場合に、張出部26において膜部2の外縁側に位置する部分に応力を集中させ、磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4に作用する応力を大きくすることができる。この結果、単位素子10において、フリー層46に印加する感度制御のためのバイアス磁界強度を大きくすることができ、これにより、感度制御のためのバイアス強度の制御性を向上できるとともに、外乱磁界への耐性を向上させることができる。
なお、実施の形態3に係るセンサ100Bにおいても、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、リファレンス層44の磁化方向、および応力誘起磁気異方性の向きの関係は、実施の形態1と同様である。
実施の形態3に係るセンサ100Bは、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。この場合において、実施の形態1の第3工程において、膜部2のうち複数の角部となる領域に複数の単位素子10が形成されるように、TMR積層膜64、および上部電極膜65をパターニングする。また、実施の形態1の第8工程に準拠した工程において、膜部2において複数の角部の各々から各辺部に沿って一対の延在部33、34が形成されるように、膜部2の一部をドライエッチングする。
(実施の形態4)
図19は、実施の形態4に係るセンサを示す概略平面図である。図19を参照して、実施の形態4に係るセンサ100Cについて説明する。
図19に示すように、実施の形態4に係るセンサ100Cは、実施の形態3に係るセンサ100Bと比較した場合に、スリット部30の構成が相違する。
実施の形態4においては、スリット部30を構成する複数の一対の延在部33、34において、一方の延在部33の長さは、他方の延在部34の長さよりも長く、一方の延在部33は、所定の角部の隣りに位置する角部に設けられた一対の延在部33、34のうち他方の延在部34に接続されている。
これにより、接続部25は、一対の延在部33、34の間を延びるように設けられた張出部26によって構成されている。
図20は、実施の形態4に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形した状態を示す斜視図である。図20を参照して、実施の形態4に係るセンサ100Cにおいて膜部2が変形した状態について説明する。
図20に示すように、膜部2の中心に応力が印加されて、膜部2が撓み変形する場合には、応力は複数の張出部26に集中する。実施の形態4においては、接続部25が張出部26のみによって構成されることにより、膜部2が変形した場合には、実施の形態3と比較して、張出部26のうち膜部2の外縁側(接続部25の根元側)に応力をさらに集中させることができる。
実施の形態1同様に、複数の辺部21、22、23、24の長さを600μmとし、膜部2の厚さを1μmとする。さらに、対応する辺部に直交する一対の延在部33、34のうち一方の延在部33の長さを535μmとし、他方の延在部34の長さを470μmとする。また、一対の延在部33、34の長さ方向に直交する、一方の延在部33の幅および他方の延在部34の幅を、15μmとする。
この場合において、空洞部4側(膜部2の裏面側)から膜部2に略1Paの圧力が印加された場合をシミュレーションし、FEMによる応力分布を解析した場合には、接続部25の先端側(張出部26における一対の延在部33、34の先端側)には、1.1Mpa程度の引張応力が作用し、接続部25の根元側には、1.4MPa程度の圧縮応力が作用する。
このように、実施の形態4においては、実施の形態1と比較して、接続部25の根元側に10倍以上の応力を集中させることができる。この結果、単位素子10において、フリー層46に印加する感度制御のためのバイアス磁界強度をさらに大きくすることができる。これにより、感度制御のためのバイアス強度の制御性をさらに向上できるとともに、外乱磁界への耐性をさらに向上させることができる。
なお、実施の形態4に係るセンサ100Cにおいても、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、リファレンス層44の磁化方向、および応力誘起磁気異方性の向きの関係は、実施の形態1と同様である。
実施の形態4に係るセンサ100Cは、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。この場合において、実施の形態1の第3工程において、膜部2のうち複数の角部となる領域に複数の単位素子10が形成されるように、TMR積層膜64、および上部電極膜65をパターニングする。また、実施の形態1の第8工程に準拠した工程において、複数の角部の各々に形成される一対の延在部33、34において、対応する辺部に沿う一方の延在部33が、所定の角部の隣りに位置する角部に設けられた一対の延在部33、34のうち他方の延在部34に接続されるように、膜部2の一部をドライエッチングする。
(実施の形態5)
図21は、実施の形態5に係るセンサを示す概略平面図である。図21を参照して、実施の形態5に係るセンサ100Dについて説明する。
図21に示すように、実施の形態5に係るセンサ100Dは、実施の形態2に係るセンサ100Aと比較した場合に、複数の磁気抵抗素子部が、複数の第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4と、複数の第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8とを含むように構成されている点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
複数の張出部26の各々に、第1磁気抵抗素子部と第2磁気抵抗素子部が設けられている。具体的には、辺部21側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R1と第2磁気抵抗素子部R5とが設けられている。辺部22側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R2と、第2磁気抵抗素子部R6とが設けられている。辺部23側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R3と、第2磁気抵抗素子部R7とが設けられている。辺部24側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R4と、第2磁気抵抗素子部R8とが設けられている。
複数の張出部26の各々において、第1磁気抵抗素子部は、張出部26のうち膜部の前記外縁側に位置する部分(張出部26の根元側)に設けられている。第2磁気抵抗素子部は、張出部26のうち一対の延在部33、34の先端側(張出部26の先端側)に位置する部分に設けられている。
図22は、実施の形態5に係るセンサを模式的に示す回路図である。図21および図22に示すように、複数の第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4によって第1フルブリッジ回路が構成され、複数の第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8によって第2フルブリッジ回路が構成されている。第1フルブリッジ回路と第2フルブリッジ回路とは並列で接続されている。第2フルブリッジ回路は、第1フルブリッジ回路が有する出力特性とは正負反対の出力特性を有する。
図23は、実施の形態5に係るセンサにおいて外力によって変形した膜部の一部を示す模式断面図である。図23は、図21に示すXXIII-XXIII線に沿った断面図であり、張出部26に対応する部分の断面図である。図23を参照して、変形時に膜部2に作用する応力について説明する。
図23に示すように、空洞部4側(膜部2の裏面側)から膜部2に圧力が印加された場合には、第1磁気抵抗素子部R1が配置された張出部26の根元側において圧縮応力が作用し、第2磁気抵抗素子部R5が配置された張出部26の先端側において引張応力が作用する。
また、圧縮応力は、当該張出部26の延在方向において、張出部26の中央側から張出部26の根元側に向かうにつれてその絶対値の大きさが大きくなる。一方、引張応力は、張出部26の中央側から張出部26の先端側に向かうにつれてその絶対値が大きくなる。
このような応力の絶対値の不均衡による出力特性の不均衡を補償するために、第1磁気抵抗素子部R1および第2磁気抵抗素子部R5に含まれる複数の単位素子10は、張出部26において膜部2が変形した際に作用する応力の絶対値が大きい箇所に配置されるものほど、ディスク径が小さくなるように設けられている。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1においては、張出部26の中央側から張出部26の根元側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなる。第2磁気抵抗素子部R5においては、張出部26の中央側から張出部26の先端側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなる。
第1磁気抵抗素子部R2、R3、R4においても、第1磁気抵抗素子部R1同様に、張出部26の中央側から張出部26の根元側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなっている。また、第2磁気抵抗素子部R6、R7、R8においても、第2磁気抵抗素子部R5同様に、張出部26の中央側から張出部26の先端側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなる。
また、上述の図17で示したように、張出部26の根元側に作用する圧縮応力の絶対値は、張出部26の先端側に作用する引張応力の絶対値よりも大きい。このため、張出部26の根元側と、張出部26の先端側との間において、応力の絶対値の不均衡を補償するように、複数の単位素子10が設けられていてもよい。
具体的には、張出部26の根元側に設けられる第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4に含まれる単位素子10の個数は、張出部26の先端側に設けられる第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8に含まれる単位素子の個数よりも少なくてもよい。
また、張出部26の根元側に設けられる第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4に含まれる複数の単位素子10の平均サイズは、張出部26の先端側に設けられる第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8に含まれる複数の単位素子10の平均サイズよりも小さくてもよい。
なお、上記においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8の各々において、複数の単位素子10が異なる大きさを有する場合を例示して説明したが、複数の単位素子10のディスク径は、全て同じであってもよい。
図24は、実施の形態5に係るセンサにおいて、フリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の磁化方向と、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。なお、図24においては、便宜上、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8の各々において、1つの単位素子10におけるフリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層の磁化方向を図示している。
第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のそれぞれにおいて、各単位素子10のフリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は同じ向きであり、各単位素子10のリファレンス層の磁化方向も同じ向きである。第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のそれぞれにおいては、黒線で示す矢印AR2が、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向を示しており、白抜きで示す矢印AR1がリファレンス層44の磁化方向を示している。
第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のそれぞれにおいて、各単位素子10のフリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は同じ向きであり、各単位素子10のリファレンス層の磁化方向も同じ向きである。第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のそれぞれにおいては、黒線で示す矢印AR5が、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向を示しており、白抜きで示す矢印AR4がリファレンス層44の磁化方向を示している。
図24に示すように、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層44の磁化方向との相対的な角度は90度±5度となっている。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向に対して反時計回りに45度±5度で交差する。磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のいずれに含まれる単位素子10おいて、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に対して時計回りに45度±5度で交差する。
なお、面内方向のバイアス磁界によって、フリー層46の磁化は、印加される面内方向のバイアス磁界の方向を向く。すなわち、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度も、90度±5度となっている。
図25は、実施の形態5に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形することにより発生する応力誘起磁気異方性の向きとリファレンス層の磁化方向とを示す図である。図25においても、便宜上、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8の各々において、1つの単位素子10における応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向を図示している。
第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のそれぞれにおいて、黒線で示す矢印AR3が、応力誘起磁気異方性の向きを示しており、白抜きで示す矢印AR1がリファレンス層44の磁化方向を示している。
第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のそれぞれにおいて、黒線で示す矢印AR6が、応力誘起磁気異方性の向きを示しており、白抜きで示す矢印AR4がリファレンス層44の磁化方向を示している。
また、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向を破線の矢印で示し、膜部2が変形していない非変形状態における単位素子10の外縁を破線の円で示している。
図25に示すように、膜部2が変形した場合には、上述のように圧縮応力、および引張応力が作用することにより、フリー層46の応力誘起磁気異方性が発現する。これにより、フリー層46の磁化の方向は、応力誘起磁気異方性の向きとなる。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、およびリファレンス層44の磁化方向は変更されない。
上記圧縮応力、および引張応力のいずれが作用した場合であっても、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は、45度±5度となる。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R4(辺部21、24側)において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、接続部25の一端25a(図21参照)から他端25b(図21参照)に向かう方向を向く。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
第1磁気抵抗素子部R2、R3(辺部22、23側)において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、上記辺部21に直交する方向に対して時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
なお、第1磁気抵抗素子部R1、R4(辺部21、24側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。第1磁気抵抗素子部R2、R3(辺部22、23側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R5、R8(辺部21、24側)において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
第2磁気抵抗素子部R6、R7(辺部22、23側)において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部21における接続部25の一端25aから他端25bに向かう方向を向く。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
なお、第2磁気抵抗素子部R5、R8(辺部21、24側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。第2磁気抵抗素子部R6、R7(辺部22、23側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の強度を、フリー層46とリファレンス層44との間で作用する交換結合磁界の強度よりも大きくし、かつ、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、フリー層46の応力誘起磁気異方性の向き、およびリファレンス層44の磁化方向を上述のような角度関係とすることにより、上述同様に、第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路のそれぞれで、奇数関数の出力特性が得られる。
このように構成される場合であっても、実施の形態5に係るセンサ100Dは、実施の形態2同様に、感度制御のためのバイアス強度の制御性を向上できるとともに、外乱磁界への耐性を向上させることができる。
さらに、圧縮応力が作用する複数の張出部26の根元側に配置された第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4によって第1ブリッジ回路を構成し、引張応力が作用する複数の張出部26の先端側に配置された第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8によって第2ブリッジ回路を構成し、第1ブリッジ回路と第2ブリッジ回路とが正負反対の出力特性を有する。これにより、実施の形態5に係るセンサ100Dにおいては、2倍の感度が得られる。この結果、シグナルを増加させることができ、SNRを高めることができる。
実施の形態5に係るセンサ100Dは、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。この場合において、実施の形態1の第3工程に準拠した工程において、膜部2のうち張出部26となる部分の根元側に第1磁気抵抗素子部を構成する複数の単位素子が形成され、張出部26となる部分の先端側に第2磁気抵抗素子部を構成する複数の単位素子が形成されるように、TMR積層膜64、および上部電極膜65をパターニングする。また、実施の形態1の第8工程に準拠した工程において、第1スリット部31、第2スリット部32および一対の延在部33、34が形成されるように、膜部2の一部をドライエッチングする。
(実施の形態6)
図26は、実施の形態6に係るセンサを示す概略平面図である。図26を参照して、実施の形態6に係るセンサ100Eについて説明する。
図26に示すように、実施の形態6に係るセンサ100Eは、実施の形態4に係るセンサ100Cと比較した場合に、複数の磁気抵抗素子部が、複数の第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4と、複数の第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8とを含むように構成されている点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
複数の張出部26の各々に、第1磁気抵抗素子部と第2磁気抵抗素子部が設けられている。具体的には、辺部21側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R1と第2磁気抵抗素子部R5とが設けられている。辺部22側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R2と、第2磁気抵抗素子部R6とが設けられている。辺部23側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R3と、第2磁気抵抗素子部R7とが設けられている。辺部24側の張出部26に、第1磁気抵抗素子部R4と、第2磁気抵抗素子部R8とが設けられている。
複数の張出部26の各々において、第1磁気抵抗素子部は、張出部26のうち膜部の前記外縁側に位置する部分に設けられている。第2磁気抵抗素子部は、張出部26のうち一対の延在部33、34の先端側に位置する部分に設けられている。
複数の第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4によって第1フルブリッジ回路が構成され、複数の第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8によって第2フルブリッジ回路が構成されている。第1フルブリッジ回路と第2フルブリッジ回路とは並列で接続されている。第2フルブリッジ回路は、第1フルブリッジ回路が有する出力特性とは正負反対の出力特性を有する。
図27は、実施の形態6に係るセンサにおいて外力によって変形した膜部の一部を示す模式断面図である。図27は、図26に示すXXVII-XXVII線に沿った断面図であり、張出部26に対応する部分の断面図である。図27を参照して、変形時に膜部2に作用する応力について説明する。
図27に示すように、空洞部4側(膜部2の裏面側)から膜部2に圧力が印加された場合には、第1磁気抵抗素子部R1が配置された張出部26の根元側において圧縮応力が作用し、第2磁気抵抗素子部R5が配置された張出部26の先端側において引張応力が作用する。
また、圧縮応力は、当該張出部26の延在方向において、張出部26の中央側から張出部26の根元側に向かうにつれてその絶対値の大きさが大きくなる。一方、引張応力は、張出部26の中央側から張出部26の先端側に向かうにつれてその絶対値が大きくなる。
第1磁気抵抗素子部R1および第2磁気抵抗素子部R5に含まれる複数の単位素子10は、張出部26において膜部2が変形した際に作用する応力の絶対値が大きい箇所に配置されるものほど、ディスク径が小さくなるように設けられている。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1においては、張出部26の中央側から張出部26の根元側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなる。第2磁気抵抗素子部R5においては、張出部26の中央側から張出部26の先端側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなる。
第1磁気抵抗素子部R2、R3、R4においても、第1磁気抵抗素子部R1同様に、張出部26の中央側から張出部26の根元側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなっている。また、第2磁気抵抗素子部R6、R7、R8においても、第2磁気抵抗素子部R5同様に、張出部26の中央側から張出部26の先端側に向かうにつれて、単位素子10のディスク径は小さくなる。
また、上述の図20で示したように、張出部26の根元側に作用する圧縮応力の絶対値は、張出部26の先端側に作用する引張応力の絶対値よりも大きい。このため、実施の形態6においても、実施の形態5同様に、張出部26の根元側と、張出部26の先端側との間において、応力の絶対値の不均衡による出力特性の不均衡を補償するように、複数の単位素子10が設けられていてもよい。
なお、上記においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8の各々において、複数の単位素子10が異なる大きさを有する場合を例示して説明したが、複数の単位素子10のディスク径は、全て同じであってもよい。
図28は、実施の形態6に係るセンサにおいて、フリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図29は、実施の形態6に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形することにより発生する応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。
図28および図29においても、上述同様の理由により、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8の各々において、1つの単位素子10におけるリファレンス層の磁化方向と、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、あるいは、応力誘起磁気異方性の向きとを示している。
図28においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のそれぞれにおいて、黒線で示す矢印AR2が、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向を示しており、白抜きで示す矢印AR1がリファレンス層44の磁化方向を示している。
第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のそれぞれにおいて、黒線で示す矢印AR5が、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向を示しており、白抜きで示す矢印AR4がリファレンス層44の磁化方向を示している。
図29においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のそれぞれにおいて、黒線で示す矢印AR3が、応力誘起磁気異方性の向きを示しており、白抜きで示す矢印AR1がリファレンス層44の磁化方向を示している。また、膜部2が変形していない非変形状態における単位素子10のフリー層の磁化方向および非変形状態における単位素子10の外縁を破線で示している。
第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のそれぞれにおいて、黒線で示す矢印AR6が、応力誘起磁気異方性の向きを示しており、白抜きで示す矢印AR4がリファレンス層44の磁化方向を示している。また、膜部2が変形していない非変形状態における単位素子10のフリー層の磁化方向および非変形状態における単位素子10の外縁を破線で示している。
なお、以降における図30から図35においては、上述同様に1つの単位素子10におけるリファレンス層の磁化方向と、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、あるいは、応力誘起磁気異方性の向きとを示しているため、その説明については省略する。
図28、および図29に示すように、実施の形態6においても、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8において、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、リファレンス層44の磁化方向、および応力誘起磁気異方性の向きは、実施の形態5で説明した向きと同様である。また、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の強度は、フリー層46とリファレンス層44との間で作用する交換結合磁界の強度よりも大きくなっている。これにより、実施の形態6においても、上述同様に、第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路のそれぞれで、奇数関数の出力特性が得られる。
このように構成される場合であっても、実施の形態6に係るセンサ100Eは、実施の形態4同様に、感度制御のためのバイアス強度の制御性を向上できるとともに、外乱磁界への耐性を向上させることができる。
さらに、圧縮応力が作用する複数の張出部26の根元側に配置された第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4によって第1ブリッジ回路を構成し、引張応力が作用する複数の張出部26の先端側に配置された第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8によって第2ブリッジ回路を構成することで、2倍の感度が得られる。このため、シグナルを増加させることができ、SNRを高めることができる。
また、実施の形態6に係るスリット部30は、実施の形態4に係るスリット部と同様の形状であり、この場合には、実施の形態1と比較して、接続部25の根元部に作用する圧縮応力を効果的に高めることができる。また、接続部25の先端側(張出部26の先端側)においても、引張応力を相当程度大きく作用させることができる。この結果、実施の形態6に係るセンサ100Eにおいては、検知精度をさらに高めることができる。
実施の形態6に係るセンサ100Dは、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。この場合において、実施の形態1の第3工程に準拠した工程において、膜部2のうち張出部26となる部分の根元側に第1磁気抵抗素子部を構成する複数の単位素子が形成され、張出部26となる部分の先端側に第2磁気抵抗素子部を構成する複数の単位素子が形成されるように、TMR積層膜64、および上部電極膜65をパターニングする。また、実施の形態1の第8工程に準拠した工程において、複数の角部の各々に形成される一対の延在部33、34において、対応する辺部に沿う一方の延在部33が、所定の角部の隣りに位置する角部に設けられた一対の延在部33、34のうち他方の延在部34に接続されるように、膜部2の一部をドライエッチングする。
(実施の形態7)
図30は、実施の形態7に係るセンサにおいて、フリー層に印加されているバイアス磁界の方向と、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図31は、実施の形態7に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形することにより発生する応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図30および図31を参照して、実施の形態7に係るセンサ100Fについて説明する。
図30および図31に示すように、実施の形態7に係るセンサ100Fは、実施の形態6に係るセンサ100Eと比較した場合に、リファレンス層44の磁化方向が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
図30に示すように、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層44の磁化方向との相対的な角度は135度±5度となっている。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向に対して反時計回りに45度±5度で交差する。磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4のいずれに含まれる単位素子10おいて、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に対して直交する方向であり、かつ、膜部2の中央部から辺部21に向かう方向である。
なお、面内方向のバイアス磁界によって、フリー層46の磁化は、印加される面内方向のバイアス磁界の方向を向く。すなわち、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度も、135度±5度となっている。
図31に示すように、膜部2が変形した場合には、上述のように圧縮応力、および引張応力が作用することにより、フリー層46の応力誘起磁気異方性が発現する。これにより、フリー層46の磁化の方向は、応力誘起磁気異方性の向きとなる。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、およびリファレンス層44の磁化方向は変更されない。
上記圧縮応力、および引張応力のいずれが作用した場合であっても、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は、45度±5度となる。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R4(辺部21、24側)において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部23から辺部22に向かう方向である。一方で、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
第1磁気抵抗素子部R2、R3(辺部22、23側)において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方で、面内方向のフリー層46に印加されているバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
なお、第1磁気抵抗素子部R1、R4(辺部21、24側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに90度±5度回転させた方向を向く。第1磁気抵抗素子部R2、R3(辺部22、23側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに180度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R5、R8(辺部21、24側)において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
第2磁気抵抗素子部R6、R7(辺部22、23側)において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部21における接続部25の一端25aから他端25bに向かう方向を向く。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。すなわち、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は45度±5度となる。
なお、第2磁気抵抗素子部R5、R8(辺部21、24側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに180度回転させた方向を向く。第2磁気抵抗素子部R6、R7(辺部22、23側)においては、リファレンス層44の磁化方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに90度±5度回転させた方向を向く。
フリー層46に印加されるバイアス磁界の強度を、フリー層46とリファレンス層44との間で作用する交換結合磁界の強度よりも大きくし、かつ、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、フリー層46の応力誘起磁気異方性の向き、およびリファレンス層44の磁化方向を上述のような角度関係とすることにより、第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路のそれぞれで、奇数関数の出力特性が得られる。
なお、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度、およびフリー層46の応力誘起磁気異方性の向きとバイアス磁界の方向との相対的な角度が±5度の範囲を有する場合を例示したが、フリー層46に印加されているバイアス磁界の方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度を135度とし、フリー層46の応力誘起磁気異方性の向きとバイアス磁界の方向との相対的な角度を45度とすることにより、さらに良好な出力特性が得られる。
このように構成される場合であっても、実施の形態7に係るセンサ100Fは、実施の形態6とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態8)
図32は、実施の形態8に係るセンサにおいて、フリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図33は、実施の形態8に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形することにより発生する応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図32および図33を参照して、実施の形態8に係るセンサ100Gについて説明する。
図32および図33に示すように、実施の形態8に係るセンサ100Gは、実施の形態6に係るセンサ100Eと比較した場合に、リファレンス層44の磁化方向が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
図32に示すように、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層44の磁化方向との相対的な角度は90度±5度となっている。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R8に含まれる単位素子10において、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。一方、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第1磁気抵抗素子部R2、および第2磁気抵抗素子部R6において、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して反時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。一方、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。
第1磁気抵抗素子部R3、および第2磁気抵抗素子部R7に含まれる単位素子10において、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。一方、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
なお、面内方向のバイアス磁界によって、フリー層46の磁化は、印加される面内方向のバイアス磁界の方向を向く。すなわち、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度も、90度±5度となっている。
図33に示すように、膜部2が変形した場合には、上述のように圧縮応力、および引張応力が作用することにより、フリー層46の応力誘起磁気異方性が発現する。これにより、フリー層46の磁化の方向は、応力誘起磁気異方性の向きとなる。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、およびリファレンス層44の磁化方向は変更されない。
上記圧縮応力、および引張応力のいずれが作用した場合であっても、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は、45度±5度となる。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R4において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部23から辺部22に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第1磁気抵抗素子部R2において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第1磁気抵抗素子部R3において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、膜部2の中央側から辺部21に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R5、R8において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R6において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部22から辺部23に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45±5度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R7において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部23から辺部22に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
この場合においても、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の強度を、フリー層46とリファレンス層44との間で作用する交換結合磁界の強度よりも大きくし、かつ、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、フリー層46の応力誘起磁気異方性の向き、およびリファレンス層44の磁化方向を上述のような角度関係とすることにより、第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路のそれぞれで、奇数関数の出力特性が得られる。
このように構成される場合であっても、実施の形態8に係るセンサ100Gは、実施の形態6とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態9)
図34は、実施の形態9に係るセンサにおいて、フリー層に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図35は、実施の形態9に係るセンサにおいて膜部が外力によって変形することにより発生する応力誘起磁気異方性の向きと、リファレンス層の磁化方向とを示す図である。図34および図35を参照して、実施の形態9に係るセンサ100Hについて説明する。
図34に示すように、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、第1磁気抵抗素子部R1、R2、R3、R4、および第2磁気抵抗素子部R5、R6、R7、R8のいずれに含まれる単位素子10おいて、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の方向と、リファレンス層44の磁化方向との相対的な角度は90度±5度となっている。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R4、および第2磁気抵抗素子部R6、R7に含まれる単位素子10において、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。一方、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第1磁気抵抗素子部R2、R3および第2磁気抵抗素子部R5、R8において、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して反時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。一方、リファレンス層44の磁化方向は、辺部21に平行な方向(より特定的には辺部23から辺部22に向かう方向)に対して時計回りに135度±5度回転させた方向を向く。
なお、面内方向のバイアス磁界によって、フリー層46の磁化は、印加される面内方向のバイアス磁界の方向を向く。すなわち、膜部2に外部応力がかかっていない状態においては、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向とリファレンス層44の磁化方向との相対的な角度も、90度±5度となっている。
図35に示すように、膜部2が変形した場合には、上述のように圧縮応力、および引張応力が作用することにより、フリー層46の応力誘起磁気異方性が発現する。これにより、フリー層46の磁化の方向は、応力誘起磁気異方性の向きとなる。一方で、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向、およびリファレンス層44の磁化方向は変更されない。
上記圧縮応力、および引張応力のいずれが作用した場合であっても、フリー層46における応力誘起磁気異方性の向きと、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向との相対的な角度は、45度±5度となる。
具体的には、第1磁気抵抗素子部R1、R4において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部23から辺部22に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第1磁気抵抗素子部R2、R3において、上記圧縮応力が作用する張出部26の根元側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R5、R8において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に直交する方向であり、辺部21から辺部24に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
第2磁気抵抗素子部R6、R7において、上記引張応力が作用する張出部26の先端側では、応力誘起磁気異方性の向きは、辺部21に平行であり、辺部23から辺部22に向かう方向である。一方、フリー層46に印加されている面内方向のバイアス磁界の方向は、応力誘起磁気異方性の向きを反時計回りに45度±5度回転させた方向を向く。
この場合においても、フリー層46に印加される面内方向のバイアス磁界の強度を、フリー層46とリファレンス層44との間で作用する交換結合磁界の強度よりも大きくし、かつ、面内方向のバイアス磁界によってフリー層46の磁化が向く方向、フリー層46の応力誘起磁気異方性の向き、およびリファレンス層44の磁化方向を上述のような角度関係とすることにより、第1ブリッジ回路および第2ブリッジ回路のそれぞれで、奇数関数の出力特性が得られる。
このように構成される場合であっても、実施の形態8に係るセンサ100Gは、実施の形態6とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態10)
図36は、実施の形態10に係るセンサを示す概略断面図である。図36を参照して、実施の形態10に係るセンサ100Iについて説明する。
図36に示すように、実施の形態10に係るセンサ100Iは、実施の形態1に係るセンサ100と比較した場合に、膜部2がさらにエッチングされている点が主として相違する。
より詳細的には、基板1の構成が相違しており、基板1の支持体3は、第1部分3a、第2部分3b、第3部分3cを含む。第2部材3bは、第1部材3a上に配置されており、膜部2を支持する。第2部分3bは、第1部材3bと異なる材料で構成されている。第3部分3cは、支持体3の厚さ方向において、第1部分3aに対して第2部材3bが位置する側とは反対側に配置されている。
たとえば、第1部材3aは、シリコン酸化膜等の絶縁層によって構成されており、第1部材3bおよび第3部材3cは、シリコン、ポリシリコン等によって構成されている。
膜部2は、第2部分3bよりも厚さが薄くなる部分を含むように設けられている。たとえば、膜部2は、全体的に第2部分3bよりも厚さが薄くなってもよい。また、図36の一点鎖線で示すように、上記接続部25における膜部の膜厚が、膜部2の中央部の膜厚よりも厚くなるように設けられていてもよい。
後述するように膜部2を形成する際には、基板1の裏面側(単位素子10が形成されている側とは反対側に位置する基板61の主面側)からエッチングを行なう。上述のように、第2部分3bと第1部分3aとを異なる材料とし、材料によるエッチングレートの差(選択比)を利用することにより、膜部2にエッチング面が到達した付近でエッチングを止めることができる。ただし、実際には選択比は有限の値を取り、膜部2のオーバーエッチングが発生するほか、エッチングレートの面内分布の影響により、膜部の膜厚には面内分布が生じる。たとえば、ローディング効果が働いて、膜部2の中央部は、上記接続部25における膜部2よりも薄くなる傾向がある。
膜部2の膜厚に面内分布が生じる場合には、この結果、外力入力時の磁気抵抗素子への印加応力にばらつきが生じ、感度・線形性にばらつきが生じることがある。一方で、膜部2の膜厚を減少させると、感度は増加し、線形性は低下する。この特性を利用し、膜部2の形成後に基板1の裏面側から追加のエッチングすることにより感度の調整を行うことができる。
図37から図39は、実施の形態10に係るセンサの製造工程において、パッシベーション膜を形成する工程、ならびに、膜部を形成する工程の第1工程、および第2工程を示す図である。図37から図39を参照して、実施の形態10に係るセンサ100Iの製造方法について説明する。
実施の形態10に係るセンサ100Iは、基本的に実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。実施の形態10に係るセンサ100Iを製造するに際して、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法とほぼ同様に、第6工程までを実施する。なお、基板61としては、図37に示すように、上述の第1部分3aとなる第1層部611、第2部分3bとなる第2層部612、第3部分3cとなる第3層部613を含むものを用いる。
次に、図37に示すように、金属配線51、53等に接続される電極54、55を絶縁膜66上に形成し、当該電極54、55および絶縁膜66を覆うようにパッシベーション膜67を形成する。なお、電極54、55は、たとえばフォトリソグラフィ法を用いて、絶縁膜66上に形成する。また、パッシベーション膜67は、フォトリソグラフィおよびドライエッチングを用いて、電極54、55が露出するように形成される。続いて、実施の形態1と同様に、リファレンス層の磁化方向を固定する。
次に、図38に示すように、膜部2を形成する工程の第1工程において、実施の形態1の第8工程と同様に、ドライエッチングを用いて、単位素子10が形成されている側とは反対側に位置する基板61の主面側から基板61の一部を除去する。この際、膜部2となる第2層612が第1層613から露出するように基板61をエッチングする。
続いて、図39に示すように、膜部2を形成する工程の第2工程において、第2層612をさらにドライエッチングし、第2部分3bよりも厚さが薄くなる部分を含むように膜部2を形成する。たとえば、接続部25における膜部の膜厚が、膜部2の中央部の膜厚よりも厚くなるように膜部2を形成する。以上のような工程を経ることにより、実施の形態10に係るセンサ100Iを製造することができる。
なお、実施の形態10のように、膜部2が薄くなっている構成は、実施の形態2から9におけるセンサに適用することができる。
(実施の形態11)
図40は、実施の形態11に係るセンサを示す断面図である。図40を参照して、実施の形態11に係るセンサ100Jについて説明する。
図40に示すように、実施の形態11に係るセンサ100Jは、実施の形態1に係るセンサ100と比較して、パッシベーション膜67が薄くなる部分を含むように設けられている点が主として相違する。
具体的的には、実施の形態11に係るセンサ100Jは、磁気抵抗素子部を覆う保護膜としてのパッシベーション膜67を備え、当該パッシベーション膜67は、膜部2に対応する領域において膜厚が部分的に異なっている。
実施の形態10における膜部2の膜厚と同様に、パッシベーション膜67の膜厚を減少させると、感度は増加し、線形性は低下する。この特性を利用し、膜部2に対応する領域において膜厚が部分的に異なるようにパッシベーション膜67を形成することにより、センサ100Jの感度を調整することができる。
図41は、実施の形態11に係るセンサを製造する工程において、パッシベーション膜を薄くする工程を示す図である。図41を参照して、実施の形態11に係るセンサ100Jの製造方法について説明する。
実施の形態11に係るセンサ100Jは、基本的に実施の形態1に係るセンサ100の製造方法に準拠して製造される。実施の形態11に係るセンサ100Jを製造するに際して、実施の形態1に係るセンサ100の製造方法とほぼ同様に、第8工程までを実施する。なお、基板61としては、図41に示すように、上述の第1部分3aとなる第1層部611、第2部分3bとなる第2層部612、第3部分3cとなる第3層部613を含むものを用いてもよい。
図41は、実施の形態11に係るセンサを製造する工程において、パッシベーション膜を薄くする工程を示す図である。
続いて、図41に示すように、パッシベーション膜67を薄くする工程において、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等によって、パッシベーション膜67を薄くする。たとえば、膜部2に対応する領域において膜厚が部分的に異なるようにパッシベーション膜67を形成する。以上のような工程を経ることにより、実施の形態11に係るセンサ100Jを製造することができる。
なお、実施の形態11のように、パッシベーション膜67が薄くなっている構成は、実施の形態2から9におけるセンサに適用することができる。
(実施の形態12)
図42は、実施の形態12に係る歪み検知センサを示す図である。図42を参照して、実施の形態12に係る歪み検知センサ150について説明する。
実施の形態12に係る歪み検知センサ150は、実施の形態1に係るセンサ100と、ベース部110と、カバー部120と、を備える。
ベース部110は、板状形状を有し、互いに表裏関係にある第1主面110aと第2主面110bとを有する。ベース部110には、貫通孔111が設けられている。ベース部110としては、たとえば、ガラスエポキシ基板などの樹脂とガラス繊維とを組み合わせた材料で構成される基板、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、または、アルミナなどからなるセラミックス材料で構成される基板等を採用することができる。
センサ100は、第1主面110a上に配置されている。センサ100は、空洞部4が貫通孔111に連通するとともに、膜部2が貫通孔111に対向するように配置されている。
カバー部120は、第1主面110a側においてセンサ100から距離を持って当該センサ100を覆うように設けられている。カバー部120は、センサ100とカバー部120との間の空間を密閉するために、第1主面110aと隙間無く接合されている。
カバー部120は、金属材料または樹脂材料で構成されている。カバー部120は、上記材料で構成された部材を切削加工またはプレス加工することにより成形されてもよいし、モールド成形によって成形されてもよい。
以上の構成を有する歪み検知センサ150においては、センサ100の内側の空間(センサ100と第1主面110aとの間の空間)と、センサ100外側の空間(センサ100とカバー部120との間の空間)とが分離される。貫通孔111を通った音波等によって膜部2に外力が印加された場合には、膜部2が変形し、膜部2上に配置された単位素子10に応力が作用する。センサ100からは、単位素子10の変形量に応じた電圧が出力される。このように、上記歪み検知センサ150にあっては、上記出力を測定することで、歪みを高感度で検知することができる。
(実施の形態13)
図43および図44は、実施の形態13に係る歪検知センサの製造工程の第1例および第2例を示す図である。図43および図44を参照して、実施の形態13に係る歪検知センサ150Aについて説明する。
実施の形態13に係る歪検知センサ150Aは、実施の形態12に係る歪検知センサ150と比較した場合に、膜部2が薄くされている点が主として相違する。歪センサ150Aに備えられているセンサは、上述の実施の形態10と同様の構成であるが、膜部2を薄くする工程が相違する。具体的には、実施の形態10では、センサ100を製造する際に膜部2をさらに薄くするが、実施の形態13では、センサ100を用いて歪検知センサ150Aを製造する工程で膜部2をさらに薄くする点が主として相違する。
図43に示すように、歪検知センサ150Aの製造工程の第1例においては、センサ100をベース部110に搭載し、第1主面110a側からカバー部120でセンサ100を覆った後に、膜部2を薄くする。具体的には、ベース部110に設けられた貫通孔111を介して、当該貫通孔111に対向する膜部2に対して、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等を行なう。これにより、センサ100をパッケージに搭載した後に、センサ100の感度および/または出力を調整することができる。
図44に示すように、歪検知センサ150Aの製造工程の第2例においては、センサ100をベース部110に搭載した後に、膜部2を薄くする。具体的には、ベース部110に設けられた貫通孔111を介して、当該貫通孔111に対向する膜部2に対して、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等を行なう。続いて、第1主面110a側からカバー部120で、膜部2が薄くなったセンサ100を覆う。
(実施の形態14)
図45から図47は、実施の形態14に係る歪検知センサの製造工程の第1例から第3例を示す図である。図45から図47を参照して、実施の形態14に係る歪検知センサ150Bについて説明する。
図45に示すように、実施の形態14に係る歪検知センサ150Bは、実施の形態12に係る歪検知センサ150と比較した場合に、パッシベーション膜67が薄くされている点が主として相違する。歪センサ150Bに備えられているセンサは、上述の実施の形態11と同様の構成であるが、パッシベーション膜67を薄くする工程が相違する。具体的には、実施の形態11では、センサ100を製造する際にパッシベーション膜67をさらに薄くするが、実施の形態14では、センサ100を用いて歪検知センサ150Bを製造する工程でパッシベーション膜67をさらに薄くする点が主として相違する。
図45に示すように、歪検知センサ150Bの製造工程の第1例においては、センサ100をベース部110に搭載し、第1主面110a側からカバー部120でセンサ100を覆った後に、パッシベーション膜67を薄くする。この際、カバー部120は、ヒンジ機構123によって開口部122を開閉可能に設けられた蓋部121を含む。パッシベーション膜67を薄くする際には、蓋部121を開け、開口部122を介して、パッシベーション膜67に対して、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等を行なう。
図46に示すように、歪検知センサ150Bの製造工程の第2例においても、センサ100をベース部110に搭載し、第1主面110a側からカバー部120でセンサ100を覆った後に、パッシベーション膜67を薄くする。第2例においては、カバー部120は、上方に向けて開口する開口部122が設けられた本体部125Bと、当該開口部122を閉塞するための蓋部121とを有する。この場合には、センサ100が開口部122を介して露出し、かつ、当該センサ100の周囲を囲むように本体部125Bをベース部110上に配置することが好ましい。
パッシベーション膜67を薄くする際には、本体部125Bから蓋部121を取り外された状態で、開口部122を介して、パッシベーション膜67に対して、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等を行なう。
図47に示すように、歪検知センサ150Bの製造工程の第3例においては、センサ100をベース部110に搭載した後に、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等によって、パッシベーション膜67を薄くする。
(実施の形態15)
図48および図49は、実施の形態15に係る歪検知センサの製造工程の第1例および第2例を示す図である。図48および図49を参照して、実施の形態15に係る歪検知センサ150Cについて説明する。
実施の形態15に係る歪検知センサ150Cは、図48に示すように、実施の形態12に係る歪検知センサ100と比較した場合に、ベース部110には貫通孔111が設けられておらず、カバー部120側に開口部122が設けられている点、および、パッシベーション膜67が薄くされている点が主として相違する。開口部122は、センサ100に対向するカバー部120の天井部に設けられており、膜部2に対応する位置に設けられている。
なお、歪検知センサ150Cに備えられているセンサは、上述の実施の形態11と同様の構成であるが、実施の形態15では、パッシベーション膜67を薄くする工程が相違する。具体的には、実施の形態11では、センサ100を製造する際にパッシベーション膜67をさらに薄くするが、実施の形態15では、センサ100を用いて歪検知センサ150Bを製造する工程でパッシベーション膜67をさらに薄くする点が主として相違する。
図48に示すように、歪検知センサ150Cの製造工程の第1例においては、センサ100をベース部110に搭載し、第1主面110a側からカバー部120でセンサ100を覆った後に、パッシベーション膜67を薄くする。この際、カバー部120の天井部に設けられた開口部122を介して、パッシベーション膜67に対して、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等を行なう。
図49に示すように、歪検知センサ150Cの製造工程の第2例においては、センサ100をベース部110に搭載した後に、反応性イオンエッチング等のドライエッチング、イオンミリング等によって、パッシベーション膜67を薄くする。
図50は、実施の形態16に係る圧力センサを示す図である。図50を参照して、実施の形態16に係る圧力センサ200について説明する。なお、図50においては、ベース部210に応力が作用し、ベース部210が撓んだ状態を示している。
図50に示すように、実施の形態16に係る圧力センサ200は、実施の形態1に係るセンサ100と、ベース部210と、封止部220と、を備える。
ベース部210は、板状形状を有する。センサ100は、ベース部210上に配置されている。センサ100は、封止部220によってベース部210上に封止されている。
ベース部210に応力(圧力)が作用し、ベース部210が歪んだ場合には、ベース部210上に配置されたセンサ100にも圧力が作用する。これにより、膜部2が変形し、膜部2上に配置された単位素子10に応力が作用する。センサ100からは、単位素子10の変形に応じた電圧が出力される。このように、圧力センサ200にあっては、上記出力を測定することで、ベース部210に印加された圧力を高感度で検知することができる。
(実施の形態17)
図51は、実施の形態17に係るマイクロフォンを備えた携帯情報端末を示す図である。図51を参照して、実施の形態17に係るマイクロフォン300について説明する。
図51に示すように、実施の形態1に係るセンサ100を備えたマイクロフォン300は、携帯情報端末400に組み込まれている。マイクロフォン300に設けられたセンサ100の膜部2は、携帯情報端末400の表示部410が設けられた面に対して実質的に平行となっている。なお、センサ100の配置は、適宜変更することができる。
上記マイクロフォン300においては、センサ100を備えることで、高感度に広い周波数帯域で音を検知することができる。
なお、マイクロフォン300は、携帯情報端末400以外にも、ICレコーダーやピンマイクロフォンなどにも組み込まれてもよい。
上述した実施の形態10から12においては、歪み検知センサ150、圧力センサ200、およびマイクロフォン300が、実施の形態1に係るセンサ100を備える場合を例示して説明したが、これに限定されず、上記実施の形態1から実施の形態9に係るセンサのいずれかを備えていればよい。
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。