以下に、図面を参照しつつ各実施の形態について例示をする。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧力センサを例示する模式的斜視図である。
なお、図1においては、図を見やすくするために、絶縁部分を省略し、主に導電部分を描いている。また、図を見やすくするために、複数の検知素子50のうち一部のものを描いている。
図1に示すように、圧力センサ310は、基部(支持部)71と、センサ部72と、を備える。
センサ部72は、基部71の上に設けられる。センサ部72は、膜部(基板)64と、固定部67と、検知素子50と、を含む。
膜部64は、変形可能な膜である。膜部64は、膜面64a、64bに垂直な方向に対して可撓である、すなわち撓ませることができる。膜部64は、外部圧力が印加されたときに撓み、その上に設けられた検知素子50に歪みを生じさせる。外部圧力は、例えば、音波、超音波、押圧などによる圧力とすることができる。つまり、膜部64は、外部圧力が印加されると変形する。
膜部64は、外部圧力によって撓む部分よりも外側に連続して形成されている場合もある。本願明細書においては、膜厚がある一定の厚みで固定端よりも薄く、外部圧力によって撓む部位を、膜部64とする。
膜部64は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンなどの絶縁性材料を用いて形成することができる。また、膜部64はシリコンなどの半導体材料や、そのほかにも金属材料を用いて形成することもできる。
膜部64の厚み寸法は、例えば、200nm以上、3μm以下とすることができる。この場合、好ましくは、300nm以上、1.5μm以下とすることができる。
図1に例示をしたもののように、膜部64の平面形状が円の場合には、膜部64の直径寸法は、例えば、1μm以上、600μm以下とすることができる。この場合、好ましくは、60μm以上、600μm以下とすることができる。
固定部67は、膜部64を基部71に固定する。固定部67は、外部圧力が印加されたときであっても撓みにくいように、膜部64よりも厚み寸法を厚くする。
固定部67は、例えば、図1のように膜部64の周縁に等間隔に設けるほかに、膜部64の周辺すべてを取り囲むように設ける場合もある。
膜部64の下には、空洞部70が存在する場合もある。空洞部70は、空気や不活性ガスなどの気体で満たされている場合もあれば、液体で満たされている場合もある。
図2(a)〜図2(d)は、第1の実施形態に係る圧力センサの膜部を例示する模式的平面図である。
膜部64は、図2(a)や図2(c)のように形状等方性を有している場合もあれば、図2(b)や図2(d)のように形状異方性を有している場合もある。
図2(a)に表した矢印は、磁化固定層の磁化120aの例を表している。但し、磁化固定層の磁化120aは、これだけに限定されるわけではない。
図3は、実施形態の検知素子を例示する模式的斜視図である。
図4(a)および図4(b)は、実施形態の別の検知素子を例示する模式的斜視図である。
検知素子50は、磁性層10と、磁性層20と、磁性層10と磁性層20との間に設けられた中間層30と、を含む。中間層30は、非磁性層である。膜部64上の複数の検知素子50のそれぞれは、上記の構成をしている。磁性層10は磁化が自由に変化する第1磁性層の場合もあれば、磁化の固定された第2磁性層の場合もある。同様に磁性層20も前記第2磁性層の場合もあれば前記第1磁性層の場合もある。
検知素子50の磁性層10は、第1配線57(図1参照)と接続されている。検知素子50の磁性層20は、第2配線58(図1参照)と接続されている。電流は、磁性層10から磁性層20、又は磁性層20から磁性層10に向かう方向に流れる。
第1配線57及び第2配線58は、固定部67の上、または、固定部67の内部を通って、膜部64の外方に向けて延びている。
検知素子50は、図3や図4(b)のように形状異方性を有しているほかに、図4(a)のように形状等方性を有している場合もある。図では等方性を有する素子の形状の例として正方形を、形状異方性を有する素子の形状の例として長方形を採用している。後説明でも等方性を有する、異方性を有する素子の例としてこれらの形状を採用する。
磁性層10と磁性層20の厚み寸法は、例えば、1nm以上、20nm以下とすることができる。この場合、磁性層10と磁性層20の厚み寸法は、2nm以上、6nm以下とすることがより好ましい。
以下、本実施形態に係る圧力センサに用いられる検知素子の例について説明する。
図5(a)〜図5(d)は、実施形態に係る圧力センサに用いられる検知素子を例示する模式的斜視図である。
以下において、「材料A/材料B」の記載は、材料Aの層の上に、材料Bの層が設けられている状態を示す。
図5(a)は、実施形態に用いられる検知素子を例示する模式的斜視図である。
図5(a)に表したように、実施形態に用いられる検知素子50Aは、順に並べられた、下部電極E1と、下地層150と、ピニング層160と、第2磁化固定層22と、磁気結合層23と、第1磁化固定層21と、中間層30と、磁化自由層11と、キャップ層170と、上部電極E2と、を含む。
この例では、磁化自由層11は、第1磁性層10に対応し、第1磁化固定層21は、第2磁性層20に対応する。検知素子50Aは、ボトムスピンバルブ型である。
下地層150には、例えば、Ta/Ruが用いられる。このTa層の厚さ(Z軸方向の長さ)は、例えば、3nmである。このRu層の厚さは、例えば、2nmである。
ピニング層160には、例えば、7nmの厚さのIrMn層が用いられる。第2磁化固定層22には、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。磁気結合層23には、例えば、0.9nmの厚さのRu層が用いられる。
第1磁化固定層21には、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。中間層30には、例えば、1.6nmの厚さのMgO層が用いられる。磁化自由層11には、例えば、4nmの厚さのCo40Fe40B20が用いられる。
キャップ層170には、例えばTa/Ruが用いられる。このTa層の厚さは、例えば、1nmである。このRu層の厚さは、例えば、5nmである。
下部電極E1及び上部電極E2には、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、及び、金(Au)の少なくともいずれかが用いられる。下部電極E1及び上部電極E2として、このような電気抵抗が比較的小さい材料を用いることで、検知素子50Aに効率的に電流を流すことができる。
下部電極E1は、下部電極E1用の下地層(図示せず)と、キャップ層(図示せず)と、の間に、Al、Al−Cu、Cu、Ag、及び、Auの少なくともいずれかの層が設けられた構造を有しても良い。例えば、下部電極E1には、タンタル(Ta)/銅(Cu)/タンタル(Ta)などが用いられる。下部電極E1用の下地層としてTaを用いることで、例えば、膜部64と下部電極E1との密着性を向上することができる。下部電極E1用の下地層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いても良い。
下部電極E1用のキャップ層としてTaを用いることで、そのキャップ層の下の銅(Cu)などの酸化を防ぐことができる。下部電極E1用のキャップ層として、チタン(Ti)、または、窒化チタン(TiN)などを用いても良い。
下地層150には、バッファ層(図示せず)とシード層(図示せず)との積層構造を用いることができる。このバッファ層は、例えば、下部電極E1や膜部64の表面の荒れを緩和し、バッファ層の上に積層される層の結晶性を改善する。バッファ層として、例えば、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びクロム(Cr)よりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。バッファ層として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。
バッファ層の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましい。バッファ層の厚さは、1nm以上5nm以下がより好ましい。バッファ層の厚さが薄すぎると、バッファ効果が失われる。バッファ層の厚さが厚すぎると、検知素子50の厚さが過度に厚くなる。バッファ層の上にシード層が形成され、そのシード層がバッファ効果を有することができる。バッファ層は省略しても良い。バッファ層には、例えば、3nmの厚さのTa層が用いられる。
図示しないシード層は、シード層の上に積層される層の結晶配向を制御する。シード層は、シード層の上に積層される層の結晶粒径を制御する。シード層として、fcc構造(face-centered cubic structure:面心立方格子構造)、hcp構造(hexagonal close-packed structure:六方最密格子構造)またはbcc構造(body-centered cubic structure:体心立方格子構造)の金属等が用いられる。
シード層として、hcp構造のルテニウム(Ru)、または、fcc構造のNiFe、または、fcc構造のCuを用いることにより、例えば、シード層の上のスピンバルブ膜の結晶配向をfcc(111)配向にすることができる。シード層には、例えば、2nmの厚さのCu層、または、2nmの厚さのRu層が用いられる。シード層の上に形成される層の結晶配向性を高める場合には、シード層の厚さは、1nm以上5nm以下が好ましい。シード層の厚さは、1nm以上3nm以下がより好ましい。これにより、結晶配向を向上させるシード層としての機能が十分に発揮される。一方、例えば、シード層の上に形成される層を結晶配向させる必要がない場合(例えば、アモルファスの磁化自由層を形成する場合など)には、シード層は省略しても良い。シード層としては、例えば、2nmの厚さのRu層が用いられる。
ピニング層160は、ピニング層160の上に形成される強磁性層に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して磁化を固定する。図5(a)に示した例では、ピニング層160の上に形成される第2磁化固定層22の強磁性層に、一方向異方性(unidirectional anisotropy)を付与して磁化を固定する。ピニング層160には、例えば、反強磁性層が用いられる。ピニング層160には、例えば、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn及びRu−Rh−Mnよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。十分な強さの一方向異方性を付与するために、ピニング層160の厚さが適切に設定する。
ピニング層160に接する強磁性層の磁化の固定を行うためには、磁場印加中での熱処理が行われる。熱処理時に印加されている磁場の方向にピニング層160に接する強磁性層の磁化が固定される。アニール温度は、例えば、ピニング層160に用いられる反強磁性材料のブロッキング温度以上とする。また、Mnを含む反強磁性層を用いる場合、ピニング層以外の層にMnが拡散してMR変化率を低減する場合がある。よって、Mnの拡散が起こる温度以下に設定することが望ましい。例えば200度(℃)以上、500度(℃)以下とすることができる。好ましくは、250度(℃)以上、400度(℃)以下とすることができる。
ピニング層160としてPt−MnまたはPd−Pt−Mnが用いられる場合には、ピニング層160の厚さは、8nm以上20nm以下が好ましい。ピニング層160の厚さは、10nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層150としてIrMnを用いる場合には、ピニング層160としてPtMnを用いる場合よりも薄いピニング層160で、一方向異方性を付与することができる。この場合には、ピニング層160の厚さは、4nm以上18nm以下が好ましい。ピニング層160の厚さは、5nm以上15nm以下がより好ましい。ピニング層160には、例えば、7nmの厚さのIr22Mn78層が用いられる。Ir22Mn78層を用いる場合、磁界中熱処理条件として、10kOeの磁場印加中で320°―1Hの熱処理を行うことができる。Pt50Mn50層を用いる場合、磁界中熱処理条件として、10kOeの磁場印加中で320°―10Hの熱処理を行うことができる。
第2磁化固定層22には、例えば、CoxFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、NixFe100−x合金(xは0at.%以上100at.%以下)、または、これらに非磁性元素を添加した材料が用いられる。第2磁化固定層22として、例えば、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくともいずれかが用いられる。第2磁化固定層22として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金を用いても良い。
第2磁化固定層22の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下が好ましい。これにより、例えば、ピニング層160による一方向異方性磁界の強度をより強くすることができる。例えば、第2磁化固定層22の上に形成される磁気結合層23を介して、第2磁化固定層22と第1磁化固定層21との間の反強磁性結合磁界の強度をより強くすることができる。第2磁化固定層22の磁気膜厚(飽和磁化Bsと厚さtとの積(Bs・t))は、第1磁化固定層21の磁気膜厚と実質的に等しいことが好ましい。
薄膜でのCo40Fe40B20の飽和磁化は、約1.9T(テスラ)である。例えば、第1磁化固定層21として、3nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いる場合には、第1磁化固定層21の磁気膜厚は、1.9T×3nmであり、5.7Tnmとなる。一方、Co75Fe25の飽和磁化は、約2.1Tである。上記と等しい磁気膜厚が得られる第2磁化固定層22の厚さは、5.7Tnm/2.1Tであり、2.7nmとなる。この場合、第2磁化固定層22には、約2.7nmの厚さのCo75Fe25を用いることが好ましい。第2磁化固定層22として、例えば、2.5nmの厚さのCo75Fe25層が用いられる。
検知素子50Aにおいては、第2磁化固定層22と磁気結合層23と第1磁化固定層21とのシンセティックピン構造が用いられている。その代わりに、1層の磁化固定層からなるシングルピン構造を用いても良い。シングルピン構造を用いる場合には、磁化固定層として、例えば、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。シングルピン構造の磁化固定層に用いる強磁性層として、後述する第1磁化固定層21と同じ材料を用いても良い。
磁気結合層23は、第2磁化固定層22と第1磁化固定層21との間に反強磁性結合を生じさせる。磁気結合層23は、シンセティックピン構造を形成する。磁気結合層23として、例えば、Ruが用いられる。磁気結合層23の厚さは、0.8nm以上1nm以下であることが好ましい。第2磁化固定層22と第1磁化固定層21との間に十分な反強磁性結合を生じさせる材料であれば、磁気結合層23としてRu以外の材料を用いても良い。磁気結合層23の厚さは、RKKY(Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida)結合のセカンドピーク(2ndピーク)に対応する0.8nm以上1nm以下の厚さに設定することができる。さらに、磁気結合層23の厚さは、RKKY結合のファーストピーク(1stピーク)に対応する0.3nm以上0.6nm以下の厚さに設定しても良い。磁気結合層23として、例えば、0.9nmの厚さのRuが用いられる。これにより、高信頼性の結合がより安定して得られる。
第1磁化固定層21(第2磁性層20)に用いられる磁性層は、MR効果に直接的に寄与する。第1磁化固定層21として、例えば、Co−Fe−B合金が用いられる。具体的には、第1磁化固定層21として、(CoxFe100−x)100−yBy合金(xは0at.%以上100at.%以下、yは0at.%以上30at.%以下)を用いることもできる。第1磁化固定層21として、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いた場合には、例えば、検知素子50Aのサイズが小さい場合においても、結晶粒に起因した素子間のばらつきを抑えることができる。
第1磁化固定層21(第2磁性層20)の上に形成される層(例えばトンネル絶縁層(図示せず))を平坦化することができる。トンネル絶縁層の平坦化により、トンネル絶縁層の欠陥密度を減らすことができる。これにより、より低い面積抵抗でより大きいMR変化率が得られる。例えば、トンネル絶縁層の材料としてMgOを用いる場合には、(CoxFe100−x)100−yByのアモルファス合金を用いることで、トンネル絶縁層の上に形成されるMgO層の(100)配向性を強めることができる。MgO層の(100)配向性をより高くすることで、より大きいMR変化率が得られる。(CoxFe100−x)100−yBy合金は、アニール時にMgO層の(100)面をテンプレートとして結晶化する。このため、MgOと(CoxFe100−x)100−yBy合金との良好な結晶整合が得られる。良好な結晶整合を得ることで、より大きいMR変化率が得られる。
第1磁化固定層21(第2磁性層20)として、Co−Fe−B合金以外に、例えば、Fe−Co合金を用いても良い。
第1磁化固定層21(第2磁性層20)がより厚いと、より大きなMR変化率が得られる。より大きな固定磁界を得るためには、第1磁化固定層21は薄いほうが好ましい。MR変化率と固定磁界との間には、第1磁化固定層21の厚さにおいてトレードオフの関係が存在する。第1磁化固定層21としてCo−Fe−B合金を用いる場合には、第1磁化固定層21の厚さは、1.5nm以上5nm以下が好ましい。第1磁化固定層21の厚さは、2.0nm以上4nm以下がより好ましい。
第1磁化固定層21(第2磁性層20)には、上述した材料の他に、fcc構造のCo90Fe10合金、または、hcp構造のCo、または、hcp構造のCo合金が用いられる。第1磁化固定層21として、Co、Fe及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つが用いられる。第1磁化固定層21として、これらの材料から選択された少なくとも1つの材料を含む合金が用いられる。第1磁化固定層21として、bcc構造のFeCo合金材料、50at.%以上のコバルト組成を含むCo合金、または、50at.%以上のNi組成の材料を用いることで、例えば、より大きなMR変化率が得られる。第1磁化固定層21として、Co2MnGe、Co2FeGe、Co2MnSi、Co2FeSi、Co2MnAl、Co2FeAl、Co2MnGa0.5Ge0.5、及び、Co2FeGa0.5Ge0.5などのホイスラー磁性合金層を用いることもできる。例えば、第1磁化固定層21として、3nmの厚さのCo40Fe40B20層が用いられる。
中間層30は、第1磁化固定層21と磁化自由層11との磁気的な結合を分断する。中間層30には、金属または絶縁体または半導体が用いられる。この金属としては、例えば、Cu、AuまたはAg等が用いられる。中間層30として金属を用いる場合、中間層30の厚さは、例えば、1nm以上7nm以下程度である。この絶縁体または半導体としては、例えば、マグネシウム酸化物(Mg−O等)、アルミ酸化物(Al2O3等)、チタン酸化物(Ti−O等)、亜鉛酸化物(Zn−O等)、または、酸化ガリウム(Ga−O)などが用いられる。中間層30として絶縁体または半導体を用いる場合は、中間層30の厚さは、例えば0.6nm以上2.5nm以下程度である。
磁化自由層11(第1磁性層10)の材料は、例えば、Fe、Co及びNiの少なくともいずれか、または、これらの少なくとも1種を含む合金とすることができる。また、これらの材料に添加元素を加えた材料とすることもできる。
また、これらの金属、合金に、添加元素や極薄層として、B,Al,Si,Mg,C,Ti,V,Cr,Mn、Cu,Zn,Ga,Zr,Hfなどを添加することもできる。
また、結晶磁性層だけではなく、アモルファス磁性層を用いることも可能である。
また、酸化物や窒化物の磁性層を用いることも可能である。
磁化自由層11(第1磁性層10)は、磁歪定数の絶対値が大きい材料から形成される。この場合、磁歪定数の絶対値は、材料の種類や添加元素などによって、変化させることができる。また、磁性材料そのものではなく、その磁性層に隣接して形成した非磁性層の材料、構成によっても大きく磁歪を変化させることが可能である。磁歪定数の絶対値は、例えば、10−2よりも大きいものとすることができる。この場合、磁歪定数の絶対値は、例えば、10−5よりも大きいものとすることがより好ましい。
磁歪定数の絶対値を大きくすれば、応力の変化に応じた磁化方向の変化量を大きくすることができる。
磁化自由層11(第1磁性層10)とには、正の符号の磁歪定数を有する材料を用いてもよいし、負の符号の磁歪定数を有する材料を用いてもよい。
磁化自由層11(第1磁性層10)には、Fe、Co及びNiよりなる群から選択される少なくとも一つの元素とホウ素(B)とを含む合金を用いることができる。例えば、磁化自由層11(第1磁性層10)には、Co−Fe−B合金、Fe−B合金、または、Fe−Co−Si−B合金などを用いることができる。例えば、磁化自由層11(第1磁性層10)には、4nmの厚さのCo40Fe40B20層を用いることができる。
磁化自由層(第1磁性層)の材料は、例えば、FeCo合金、NiFe合金などとすることができる。あるいは、第1磁性層と第2磁性層の材料は、例えば、Fe−Co−Si合金、Fe−Co−Si−B合金、λs>100ppmを示すTb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、M2は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti,Cr,Mn,Co,Cu,Nb,Mo,W,Ta、M4は、Ce,Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er)、Ni、Al−Feやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)とすることもできる。
磁化自由層11(第1磁性層10)は、多層構造を有しても良い。磁化自由層11(第1磁性層10)は、例えば、2層構造を有しても良い。中間層30としてMgOのトンネル絶縁層を用いる場合には、中間層30に接する界面には、Co−Fe−B合金の層を設けることが好ましい。これにより、高い磁気抵抗効果が得られる。この場合、中間層30の上にはCo−Fe−B合金の層を設け、その上にはFe−Co−Si−B合金、λsが大きいFe−Ga合金、Fe−Co−Ga合金、Tb−M−Fe合金(Mは、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つ。)、Tb−M1−Fe−M2合金(M1は、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho及びErよりなる群から選択された少なくとも1つ。M2は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つ。)、Fe−M3−M4−B合金(M3は、Ti、Cr、Mn、Co、Cu、Nb、Mo、W及びTaよりなる群から選択された少なくとも1つ。M4は、Ce、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy及びErよりなる群から選択された少なくとも1つ。)、Ni、Fe−Alやフェライト(Fe3O4、(FeCo)3O4)など)を形成することができる。例えば、磁化自由層11には、Co40Fe40B20/Fe80Ga20が用いられる。このCo40Fe40B20の厚さは、例えば、2nmである。このFe80Ga20の厚さは、例えば、4nmである。λsは、例えば、100ppmよりも大きい。
キャップ層170は、キャップ層170の下に設けられる層を保護する。キャップ層170には、例えば、複数の金属層が用いられる。キャップ層170には、例えば、Ta層とRu層との2層構造(Ta/Ru)が用いられる。このTa層の厚さは、例えば1nmであり、このRu層の厚さは、例えば5nmである。キャップ層170として、Ta層やRu層の代わりに他の金属層を設けても良い。キャップ層170の構成は、任意である。キャップ層170には、例えば、非磁性材料を用いることができる。キャップ層170の下に設けられる層を保護可能なものであれば、キャップ層170として、他の材料を用いても良い。
図5(b)は、実施形態に用いられる別の検知素子を例示する模式的斜視図である。 図5(b)に表したように、実施形態に係る圧力センサに用いられる検知素子50Bは、順に並んだ、下部電極E1と、下地層150と、磁化自由層11と、中間層30と、第1磁化固定層21と、磁気結合層23と、第2磁化固定層22と、ピニング層160と、キャップ層170と、上部電極E2と、を含む。
この例では、磁化自由層11は第1磁性層10に対応し、第1磁化固定層21は第2磁性層20に対応する。検知素子50Bは、トップスピンバルブ型である。検知素子50Bに含まれる層のそれぞれには、例えば、検知素子50Aに関して説明した材料を用いることができる。
図5(c)は、実施形態に用いられる別の検知素子を例示する模式的斜視図である。 図5(c)に表したように、実施形態に係る圧力センサに用いられる検知素子50Cは、順に並んだ、下部電極E1と、下地層150と、下部ピニング層161と、下部第2磁化固定層22aと、下部磁気結合層23aと、下部第1磁化固定層21aと、下部中間層31と、磁化自由層11と、上部中間層32と、上部第1磁化固定層21bと、上部磁気結合層23bと、上部第2磁化固定層22bと、上部ピニング層162と、キャップ層170と、上部電極E2と、を含む。
磁化自由層11が第1磁性層10に対応し、下部第1磁化固定層21aまたは上部第1磁化固定層21bの少なくともいずれかが、第2磁性層20に対応する。既に説明した検知素子50A及び検知素子50Bにおいては、磁化自由層の一方の面側に磁化固定層が配置されている。検知素子50Cにおいては、2つの磁化固定層の間に磁化自由層が配置されている。検知素子50Cは、デュアルスピンバルブ型である。検知素子50Cに含まれる層のそれぞれには、例えば、検知素子50Aに関して説明した材料を用いることができる。
図5(d)は、実施形態に用いられる別の検知素子を例示する模式的斜視図である。 図5(d)に表したように、実施形態に係る圧力センサに用いられる検知素子50Dは、順に並んだ、下部電極E1と、下地層150と、ピニング層160と、磁化固定層24と、中間層30と、磁化自由層11と、キャップ層170と、上部電極E2と、を含む。
磁化自由層11が第1磁性層10に対応し、磁化固定層24が第2磁性層20に対応する。既に説明した検知素子50A及び検知素子50Bにおいては、第2磁化固定層22と磁気結合層23と第1磁化固定層21を用いた構造が適用されている。検知素子50Dにおいては、単一の磁化固定層24を用いたシングルピン構造が適用されている。検知素子50Dに含まれる層のそれぞれには、例えば、検知素子50Aに関して説明した材料を用いることができる。
図6は、実施形態に用いられる別の検知素子を例示する模式的斜視図である。
図6に例示したように、検知素子50Eにおいては、絶縁層91が設けられる。すなわち、下部電極E1と上部電極E2との間に、互いに離間する2つの絶縁層(絶縁部分)91が設けられ、それらの間に、検知素子50Aが配置される。検知素子50Aは、下部電極E1と上部電極E2との間に配置されている。積層体は、検知素子50Aの場合には、下地層150と、ピニング層160と、第2磁化固定層22と、磁気結合層23と、第1磁化固定層21と、中間層30と、磁化自由層11と、キャップ層170と、を含む。すなわち、検知素子50Aの側壁に対向して、絶縁層91が設けられる。
絶縁層91には、例えば、アルミニウム酸化物(例えば、Al2O3)、または、シリコン酸化物(例えば、SiO2)などを用いることができる。絶縁層91により、積層体(この例では検知素子50A)の周囲におけるリーク電流を抑制することができる。上記の絶縁層91は、検知素子50A〜50Dのいずれにも適用できる。
検知素子50においては、強磁性体が有する「逆磁歪効果」と、検知素子50で発現する「MR効果」と、が利用される。「逆磁歪効果」は、磁化自由層に用いられる強磁性層において得られる。「MR効果」は、第1磁性層と中間層と第2磁性層との積層膜において発現する。
「逆磁歪効果」は、強磁性体の磁化が強磁性体に生じた歪によって変化する現象である。すなわち、検知素子50に応力が印加されると、磁化自由層である第1磁性層の磁化方向が変化する。その結果、第1磁性層の磁化と第2磁性層の磁化との間の相対角度が変化する。「MR効果」は、磁性体を有する積層膜において、外部磁界が印加されたときに、磁性体の磁化の変化によって積層膜の電気抵抗の値が変化する現象である。MR効果は、例えば、GMR(Giant magneto resistance)効果、または、TMR(Tunneling magneto resistance)効果などを含む。検知素子50に電流を流すことで、磁化の向きの相対角度の変化を抵抗変化として読み取ることで、MR効果は発現する。例えば、検知素子50に加わる応力に基づいて、検知素子50の磁化自由層である第1磁性層の磁化の向きと、第2磁性層の磁化の向きと、の相対角度が変化する。このとき、逆磁歪効果によりMR効果が発現する。低抵抗状態の抵抗をRとし、MR効果によって変化する電気抵抗の変化量をΔRとしたときに、ΔR/Rを「MR変化率」という。
磁化自由層に用いられる強磁性材料が正の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が小さくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が大きくなるように、磁化の方向が変化する。磁化自由層に用いられる強磁性材料が負の磁歪定数を有する場合は、磁化の方向と引張歪の方向との角度が大きくなり、磁化の方向と圧縮歪の方向との角度が小さくなるように、磁化の方向が変化する。
磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との積層体の材料の組み合わせが正の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層と磁化固定層の相対角度が小さい場合に電気抵抗が減少する。磁化自由層と中間層と参照層(例えば磁化固定層)との積層体の材料の組み合わせが負の磁気抵抗効果を有する場合は、磁化自由層と磁化固定層の相対角度が小さい場合に電気抵抗が増大する。
図7(a)および図7(b)は、検知素子が形状等方性を有する場合を例示する模式的平面図である。
図7(a)は、第1の実施形態に係る圧力センサ310の膜部64上での検知素子50の配置例を例示する模式的平面図である。
図7(a)では、膜面64の形状例として図2(a)に示した円形を採用する。また、固定部67の形状として、膜部64のすべてを取り囲むような例を採用する。複数の検知素子50は、膜部64と固定部67との間の境界65(膜部64の端部64c:図1参照)に沿って配置されている。言い換えれば、複数の検知素子50は、空洞部70の周縁部70a(図1参照)に沿って配置されている。図7(a)では、検知素子50は境界65に沿って均等に配置されているが、検知素子50の配置は均等でなくても良い。
検知素子50の面積は、膜部64よりも十分に小さい。検知素子50の一辺の長さは、0.5μm以上、20μm以下とすることができる。
図7(b)は、膜部64と固定部67との間の境界65と、検知素子50と、の位置関係を例示する模式的平面図である。
検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、検知素子50の一軸(この例では一辺)50aと、の間のなす角度が複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。図7(a)および図7(b)に表した例では、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、検知素子50の一軸50aと、の間のなす角度は、平行(0度あるいは180度)である。図7(a)および図7(b)に表したとおり、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、検知素子50の一軸50aと、の間のなす角度の差が5度以内に収まる検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。
図7(a)および図7(b)に表した矢印は、磁化固定層の磁化120aの例を表している。検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、磁化120aと、の間のなす角度205は、複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まる。図7(a)および図7(b)に表した例では、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、磁化120aと、の間のなす角度205は、90度である。図7(a)および図7(b)に表したとおり、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、磁化120aと、の間のなす角度205の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。但し、磁化固定層の磁化120aは、これだけに限定されるわけではない。
ここで、膜部64に圧力が印加された場合、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと平行方向に歪が発生するとみなせる。
図8(a)および図8(b)は、検知素子が形状異方性を有する場合を例示する模式的平面図である。
図8(a)は、第1の実施形態に係る圧力センサ310の膜部64上での検知素子50の配置例を例示する模式的平面図である。
図8(a)では、膜面64の形状例として図2(a)に示した円形を採用する。また、固定部67の形状として、膜部64のすべてを取り囲むような例を採用する。複数の検知素子50は、膜部64と固定部67との間の境界65に沿って配置されている。図8(a)では、検知素子50は境界65に沿って均等に配置されているが、検知素子50の配置は均等でなくても良い。
図8(b)は、膜部64と固定部67との間の境界65と、検知素子50と、の位置関係を例示する模式的平面図である。
検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、検知素子50の長軸50bと、の間のなす角度206が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。図8(a)および図8(b)に表したとおり、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、検知素子50の長軸50bと、の間のなす角度206の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。
図8(a)および図8(b)に表した矢印は、磁化固定層の磁化120aの例を表している。検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、磁化120aと、の間のなす角度205は、複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まる。図8(a)および図8(b)に表したとおり、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、磁化120aと、の間のなす角度205の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。但し、磁化固定層の磁化120aは、これだけに限定されるわけではない。
ここで、膜部64に圧力が印加された場合、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと平行方向に歪が発生するとみなせる。
図9(a)および図9(b)は、検知素子が形状等方性を有する場合を例示する模式的平面図である。
図9(a)および図9(b)では、膜面64の形状例として図2(a)に示した円形を採用する。また、固定部67の形状として、膜部64のすべてを取り囲むような例を採用する。
図9(a)は、第1の実施形態に係る圧力センサ310の膜部64上での検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eを例示する模式的平面図である。簡単のため図中の素子50の数は減らして書いてある。また、図9(a)では素子50を重心68に対して対称に配置してあるが、対称でなくてもよい。検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の一軸50aと、の間のなす角度が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。図9(a)および図9(b)に表した例では、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の一軸50aと、の間のなす角度は、平行(0度あるいは180度)である。図9(a)および図9(b)に表したとおり、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の一軸50aと、の間のなす角度の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。
ここで、膜部64に圧力が印加された場合、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと平行方向に歪が発生するとみなせる。
図9(b)は、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の磁化固着層の磁化120aと、の間のなす角度207を例示する模式的平面図である。
検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、磁化固着層の磁化120aと、の間のなす角度207が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。図9(a)および図9(b)に表した例では、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、磁化固定層の磁化120aと、の間のなす角度207は、90度である。図9(a)および図9(b)に表したとおり、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、磁化固着層の磁化120aと、の間のなす角度207の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つに限られず、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上とすることができる。
ここで、膜部64に圧力が印加された場合、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと平行方向に歪が発生するとみなせる。
図10(a)および図10(b)は、検知素子が形状異方性を有する場合を例示する模式的平面図である。
図10(a)および図10(b)では、膜面64の形状として図2(a)に示した円形を採用する。また、固定部67の形状として、膜部64のすべてを取り囲むような例を採用する。
図10(a)は、第1の実施形態に係る圧力センサ310の膜部64上での検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eを例示する模式的平面図である。簡単のため図中の素子50の数は減らして書いてある。また、図10(a)では素子50を重心68に対して対称に配置してあるが、対称でなくてもよい。検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の長軸50bと、の間のなす角度208が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。図10(a)および図10(b)に表したように、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の長軸50bと、の間のなす角度208の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。
ここで、膜部64に圧力が印加された場合、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと平行方向に歪が発生するとみなせる。
図10(b)は、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、検知素子50の磁化固着層の磁化120aと、の間のなす角度207を例示する模式的平面図である。
検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、磁化固着層の磁化120aと、の間のなす角度207が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。図10(a)および図10(b)に表したように、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと、磁化固着層の磁化120aと、の間のなす角度207の差が5度以内に収まる複数の検知素子50の数は、膜部64の重心に対して対称関係の位置にある2つの素子に限定されるものではなく、対称関係の位置ではない2つ以上の素子とすることができる。例えば、膜部64の円周方向に並んだ3つ以上の素子とすることができる。
ここで、膜部64に圧力が印加された場合、検知素子50の重心53と膜部64の重心68とを結ぶ線50eと平行方向に歪が発生するとみなせる。
検知素子50が形状等方性を有する場合、検知素子50は、図7(a)および図7(b)に関して前述した配置方法および図9(a)および図9(b)に関して前述した配置方法のいずれかに記載された配置方法で膜面64に配置される。
検知素子50が形状異方性を有する場合、検知素子50は、図8(a)および図8(b)に関して前述した配置方法および図10(a)および図10(b)に関して前述した配置方法のいずれかに記載された配置方法で膜面64に配置される。
なお、後述するように、図7(a)〜図10(b)に示したような膜部64に対する複数の検知素子50の配置において、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間のなす角度は、膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収めることができる。
図11(a)〜図11(c)は、実施形態の圧力センサの作用を例示する模式図である。
図11(a)は、膜部64を含む部分の模式的断面図である。図11(b)および図11(c)は、圧力センサ310の信号処理を例示する模式図である。なお、図11(b)は、複数の検知素子50が電気的に直列接続された場合の模式図である。図11(c)は、複数の検知素子50が電気的に並列接続された場合の模式図である。
まず、図11(a)に示すように、外部圧力80が印加されると、膜部64は外部圧力80を受けて撓む。例えば、膜部64が外方に向けて凸状になるように撓む。膜部64が外方に向けて凸状になるように撓むと、検知素子50に応力81が加わる。図11(a)に示すものの場合には、検知素子50に引っ張り応力が加わる。膜部64が凹状になるように撓むと、検知素子50に圧縮応力が加わる。
検知素子50に応力81が加わると、前述の逆磁歪効果とMR効果により、検知素子50の電気抵抗が応力81に応じて変化する。
図11(b)に示すように、複数の検知素子50が直列接続された場合、信号の変化量として素子数Nに応じて、信号電圧がN倍の信号50sgが処理回路113に送られる。このとき、熱ノイズ、ショットキーノイズは素子数Nに対して√N倍になる。つまり、SN比(signal-noise ratio:SNR)は、素子数Nの検知素子50を用いることにより、√N倍増大することになる。素子数Nを増やすことで、膜部64のサイズ(ダイアフラムサイズ)を大きくすることなく、SN比を改善することができる。
図7(a)〜図10(b)に示したような膜部64に対する複数の検知素子50の配置を用いることによって、検知素子50に加わる歪の方向と、第2磁性層20の磁化120aの方向と、を複数の検知素子50で同様とすることができる。また、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間のなす角度を、複数の検知素子で同様とすることができる。これにより、膜部64上の複数の検知素子50において、同様なMR効果による電気抵抗の変化を得ることができる。そのため、図7(a)に表したように、膜部64と固定部67との間の境界65に沿って数多くの検知素子50を配置することができる。そのため、それぞれの信号50sg'を単純に加算することが可能となる。図7(a)〜図10(b)に示したような膜部64に対する複数検知素子50の配置を用いることによって、検知素子50に加わる歪の方向と、第2磁性層20の磁化120aの方向と、を複数の検知素子50で同様とすることができる。そのため、電気的に直列接続された複数の検知素子50からの信号50sgに特別な処理を施す必要はない。これにより、素子数Nを増やし、圧力センサ310の感度の向上を図ることができる。
図12(a)〜図14(c)は、応力に対する磁化の変化を例示する模式的平面図である。
図12(a)〜図14(c)は、応力に対する磁化自由層の磁化の変化と、応力に対する磁化固定層の磁化の変化と、を例示する模式的平面図である。
図12(a)〜図12(c)は、形状に異方性を持たない検知素子内の磁化の変化を表す模式的平面図である。図13(a)〜図14(c)は、形状に異方性を持つ検知素子内の磁化の変化を表す模式的平面図である。図12(a)〜図14(c)の様な検知素子50の製造方法については後述する。
図12(a)、図13(a)および図14(a)は、検知素子50に応力が加わっていない場合の検知素子50内の磁化を表す。図12(b)、図13(b)および図14(b)は、検知素子50に引っ張りの応力81が加わった場合の検知素子50内の磁化を表す。図12(c)、図13(c)および図14(c)は、検知素子50に圧縮の応力82が加わった場合の検知素子50内の磁化を表す。
応力が加わっていない場合において、磁化自由層(例えば第1磁性層10)の磁化110aと、磁化固定層(例えば第2磁性層20)の磁化120aと、の間の関係は、磁化自由層および磁化固定層の材料を選択や磁化自由層の着磁の方向の設定により平行、反平行どちらの場合も選択可能である。図12(a)および図13(a)では、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の関係が反平行の場合を例にとり説明する。
図12(b)に表したように、引っ張りの応力81が加わっている場合には、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の相対角度が、図12(a)の場合の相対角度に比べて小さくなっている。これにより、MR効果で電気抵抗が減少する。
一方、図12(c)に表したように、圧縮の応力82が加わっている場合には、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の相対角度が、図12(a)の場合の相対角度から変化していない。そのため、MR効果による電気抵抗の変化は発生しない。
図12(a)〜図12(c)に表したように、磁化固定層の磁化120aは、検知素子50の一軸50aと垂直である。これは、膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まっている。つまり、膜部64上の複数の検知素子50のそれぞれの磁化固定層の磁化120aは、その検知素子50の一軸50aと垂直から5度以内である。言い換えれば、膜部64上の複数の検知素子50のそれぞれの磁化固定層の磁化120aは、その検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと平行から5度以内である。検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、磁化固定層の磁化120aと、の間のなす角度は、膜部64上の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まっている。膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つの磁化固定層の磁化120aは、互いに異なる向きを有する。つまり、膜部64上の複数の検知素子50のうちのいずれかの検知素子(第1検知素子)の磁化固定層の磁化120aの向きは、膜部64上の複数の検知素子50のうちのいずれかの検知素子であって第1検知素子とは異なる検知素子(第2検知素子)の磁化固定層の磁化120aの向きとは異なる。
これによれば、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間のなす角度は、膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まっている。これにより、膜部64上の複数の検知素子50のにおいて、同様なMR効果による電気抵抗の変化を得ることができる。そのため、図7(a)に表したように、膜部64と固定部67との間の境界65に沿って数多くの検知素子50を配置することができる。これにより、素子数Nを増やし、圧力センサ310の感度の向上を図ることができる。
検知素子50が形状に異方性を持つ場合には、磁化方向にも異方性が存在する。応力が加わっていない場合において、磁化自由層の磁化110aは、長軸50bに沿った方向を向いている。図13(a)〜図13(c)では、磁化固定層の磁化120aも長軸50bに沿った方向に固定されている。
図13(b)に表したように、引っ張りの応力81が加わる場合には、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の相対角度が、図13(a)の場合の相対角度から変化する。そのため、MR効果による電気抵抗の変化が発生する。これは、図13(c)に表したように、圧縮の応力82が加わる場合においても同様である。
図8(a)および図8(b)に関して前述したように、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、長軸50bと、の間のなす角度206が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。前述したように、磁化固定層の磁化120aは、長軸50bに沿った方向に固定されている。そのため、膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つの磁化固定層の磁化120aは、互いに異なる向きを有する。
これによれば、膜部64上の複数の検知素子50において、同様なMR効果による電気抵抗の変化を得ることができる。そのため、図8(a)に表したように、膜部64と固定部67との間の境界65に沿って数多くの検知素子50を配置することができる。これにより、素子数Nを増やし、圧力センサ310の感度の向上を図ることができる。
図14(a)〜図14(c)の場合には、図13(a)〜図13(c)の場合とは異なり、磁化固定層の磁化120aは、長軸50bに沿った方向には向いていない。
図14(b)に表したように、引っ張りの応力81が加わる場合には、応力が加わっていない場合(図14(a)の場合)に比べ、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aの磁化と、の間の相対角度が減少している。
これに対して、図14(c)に表したように、圧縮の応力82が加わる場合には、応力が加わっていない場合(図14(a)の場合)に比べ、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aの磁化と、の間の相対角度が増大している。図14に表した検知素子50の場合には、応力が圧縮から引っ張りに変化するに従い、検知素子50の抵抗が小さくなる。
図8(a)および図8(b)に関して前述したように、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、長軸50bと、の間のなす角度206が膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つで差5度以内に収まるように、複数の検知素子50は配置される。そのため、膜部64上の複数の検知素子50のうちの少なくとも2つの磁化固定層の磁化120aは、互いに異なる向きを有する。
これによれば、膜部64上の複数の検知素子50において、同様なMR効果による電気抵抗の変化を得ることができる。そのため、図8(a)に表したように、膜部64と固定部67との間の境界65に沿って数多くの検知素子50を配置することができる。これにより、素子数Nを増やし、圧力センサ310の感度の向上を図ることができる。
(第2の実施形態)
次に、圧力センサ310の製造方法について例示する。
図15は、第2の実施形態に係る圧力センサの製造方法を例示するフローチャート図である。
図16(a)〜図16(e)は、圧力センサの製造方法を例示する模式的工程図である。
なお、図16(a)〜図16(e)においては、図を見やすくするために、各要素の形状や大きさを、図1のものから適宜変更して示している。また、膜部64の形状には、図2(a)の様な円形の物を採用する。
図16(d)は、空洞部70を基板裏面から形成する製造方法である。この方法を用いる場合は、回路部を別チップで形成し、実装工程において圧力センサと回路部とをワンパッケージ化するSiP(System in Package)構成をとる。
図16(e)は、空洞部70を基板上部から形成する製造方法である。この方法を用いる場合は、基板下部にCMOS回路などを有するSoC(System on Chip)構成をとる。
図15および図16(a)に示すように、膜部64となる膜64fmを形成する(ステップS101)。基部71の上に膜部64となる膜64fmを形成する。基部71には、例えば、シリコン基板が用いられる。膜64fmには、例えば、シリコン酸化膜が用いられる。膜部64を基部71に固定する固定部67を形成する場合には、この工程で、膜64fmを加工して、固定部67を形成してもよい。膜面64a、64bの形状として、図16(a)〜図16(e)では図2(a)の様な円形を採用する。
図15および図16(b)に示すように、第1配線57を形成する(ステップS103)。例えば、図16(b)に示すように、膜64fm(または、膜部64)の上に、導電膜を形成し、この導電膜を所定の形状に加工して第1配線57を形成する。
なお、図16(b)においては、図を見やすくするために、複数の第1配線57のうち一部のものを描いている。
図15および図16(c)に示すように、検知素子50を形成する(ステップS105)。例えば、図16(c)に示すように、第1配線57のパッド部57a(図16(b)参照)の上に、検知素子50を形成する。検知素子50を構成する要素となる膜を順に成膜して積層膜を形成する。そして、この積層膜を所定の形状に加工して、検知素子50を形成する。
図15および図16(d)に示すように、第2配線58を形成する(ステップS107)。例えば、図16(d)および図16(e)に示すように、検知素子50を覆うように、図示しない絶縁膜を形成し、この絶縁膜の一部を除去して検知素子50の上面を露出させる。この上に導電膜を形成し、所定の形状に加工して第2配線58を形成する。
なお、ステップS101〜ステップS107の少なくとも一部は、技術的に可能な範囲で、同時に実施されてもよく、また、順序が入れ替わってもよい。
次に、図15および図16(e)に示すように、空洞部70、膜部64、固定部67を形成する(ステップS109)。例えば、図16(d)および図16(e)に示すように、基部71の裏面(下面)側からのエッチング加工を行い空洞部70を形成する。空洞部70が形成されていない部分が非空洞部となり、膜部64と固定部67が形成されることになる。
エッチング加工は、例えば、深堀りRIE法(Deep reactive ion etching process)やボッシュプロセス(Bosch process)などを用いて行うことができる。
その後、図12(a)〜図14(c)で示した検知素子50を作成するため、アニールによる磁化固定層の磁化120aの固着を行う(ステップS111)。
以下に、その方法を説明する。
図17(a)〜図17(d)は、図12(a)〜図12(c)に表した検知素子の製造方法を例示する模式的工程図である。
図17(a)〜図17(d)は、図15に表したステップS105のプロセスの模式的工程図である。
膜面64a、64bの形状には、図2(a)の様な円形を採用する。
図17(a)は、検知素子50を構成する要素となる膜を順に成膜した積層膜50c上のマスク51の形状の模式的平面図である。
形状に異方性の無い正方形のマスク51を、検知素子50の作成後の膜部64と固定部67との境界65付近に作成する。これにより、エッチング加工により形状に異方性を持たない検知素子50を境界65付近に形成する。
図17(b)は、アニールによる磁化固着中の圧力センサ310の模式的断面図である。
図17(b)中の外部圧力85のように、ダイヤフラムの膜面64a、64bにダイヤフラムの空洞部70側から、又は反対側から外部圧力85を加えることで、膜面64a、64bに静的な歪を生じさせる。図17(b)のように、ダイヤフラムの空洞部70側から外部圧力85を加えた場合、膜部64と固定部67の境界65付近に形成された検知素子50には圧縮の応力86が生じる。
図17(c)は、アニール中の検知素子50の磁化自由層の磁化110aと、アニール中の検知素子の磁化固定層の磁化120aと、を示した模式的平面図である。
アニール中は、前述のようにダイヤフラムに静的な歪が生じている。そのため、磁化自由層の磁化110aおよび磁化固着前の磁化固定層の磁化120aは、ともに逆磁歪効果により変化する。応力86の方向に対して、磁化が平行または垂直のどちらの方向を向くかは磁性層の材料を選択することで選択可能である。図17(c)では、圧縮の応力86に対して磁化が垂直な方向を向く場合を採用する。
図17(d)は、磁化固着後、応力86を取り去った後の磁化自由層の磁化110aと、応力86を取り去った後の磁化固定層の磁化120aと、を示した模式的平面図である。
磁化固定層の磁化120aは、アニール中に逆磁歪効果により向けられていた方向に固着されている。一方、応力86が取り去られることで、逆磁歪効果が消え、磁化自由層の磁化110aは、磁化固定層の磁化120aに対して反平行な方向を向いている。応力が加わっていない場合において、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の関係は、材料を選択することや、アニール後に外部磁界を加えることにより平行、反平行どちらの場合も選択可能である。図12(a)および図13(a)と同様、図17(d)および図18(b)でも反平行の場合を採用する。
図18(a)および図18(b)は、図13(a)〜図13(c)に表した検知素子の製造方法を例示する模式的工程図である。
図18(a)および図18(b)は、図15に表したステップS105のプロセスの模式的工程図である。
膜面64a、64bの形状には、図2(a)の様な円形を採用する。
図18(a)は、検知素子50を構成する要素となる膜を順に成膜した積層膜50c上のマスク52の形状の平面図である。
形状に異方性を持つ長方形のマスク52を膜部64と固定部67との間の境界65付近に作成する。このとき、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、長軸50bと、の間のなす角度206が膜部64上の複数のマスク52の少なくとも2つで差5度以内に収まるように、マスク52は作成される。マスク52作成後、エッチング加工により、形状に異方性を持つ検知素子50を境界65付近に形成する。
図18(b)は、図18(a)で示した方法で検知素子50を形成した場合において、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、を示した模式的平面図である。
前述のように、検知素子50が形状に異方性を持つ場合、磁性層の磁化は検知素子50の長軸50bに沿った方向を向く。そのため、磁化自由層の磁化110aと磁化固定層の磁化120aとは、長軸50bに沿って反平行な方向を向いている。
だたし、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の向きは、検知素子50の形成段階では決定されない。そのため、それぞれの磁性層の磁化が図18(b)とは反対になる可能性もある。
図18(b)の様な状態の検知素子50にアニールを行い磁化の固着を行うことで、図13(a)〜図13(c)に表した検知素子50の作成が可能になる。
アニール後に、応力が加わっていない場合において、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の関係は、材料を選択することや、アニール後に外部磁界を加えることにより平行、反平行どちらの場合も選択可能である。
図19(a)〜図19(d)は、図14(a)〜図14(c)に表した検知素子の製造方法を例示する模式的工程図である。
図19(a)〜図19(d)は、図15に表したステップS105のプロセスの模式的工程図である。
膜面64a、64bの形状には、図2(a)の様な円形を採用する。
図19(a)は、検知素子50を構成する要素となる膜を順に成膜した積層膜50c上のマスク52の形状の模式的平面図である。
形状に異方性を持つ長方形のマスク52を膜部64と固定部67との間の境界65付近に作成する、このとき、検知素子50の重心53と境界65とを最短距離で結ぶ線50dと、長軸50bと、の間のなす角度206が膜部64上の複数のマスク52の少なくとも2つで差5度以内に収まるように、マスク52は作成される。マスク52作成後、エッチング加工により、形状に異方性を持つ検知素子50を境界65付近に形成する。
図19(b)は、アニールによる磁化固着中の圧力センサ310の模式的断面図である。
図19(b)中の外部圧力85のように、ダイヤフラムの膜面64a、64bにダイヤフラムの空洞部70側から、又は反対側から外部圧力85を加えることで、膜面64a、64bに静的な歪を生じさせる。図19(b)のように、ダイヤフラムの空洞部70側から外部圧力85を加えた場合、膜部64と固定部67との境界65付近に形成された検知素子50には圧縮の応力86が生じる。
図19(c)は、アニール中の検知素子50の磁化自由層の磁化110aと、アニール中の検知素子50の磁化固定層の磁化120aと、を示した模式的平面図である。
アニール中は、前述のようにダイヤフラムに静的な歪が生じている。そのため、磁化自由層の磁化110aおよび磁化固着前の磁化固定層の磁化120aは、ともに逆磁歪効果により変化する。応力86の方向に対して、磁化が平行または垂直どちらの方向を向くかは磁性層の材料を選択することや、アニール後に外部磁界を加えることで選択可能である。図17(c)では、圧縮の応力86に対して垂直な方向を向く場合を採用する。
図19(d)は、磁化固着後、応力86を取り去った後の磁化自由層の磁化110aと、応力86を取り去った後の磁化固定層の磁化120aと、を示した模式的平面図である。
磁化固定層の磁化120aは、アニール中に逆磁歪効果により向けられていた方向に固着されている。一方、応力86が取り去られることで、逆磁歪効果が消え、磁化自由層の磁化110aは、磁気異方性により検知素子50の長軸50bに沿った方向を向いている。
図20は、図14(a)〜図14(c)に示した検知素子に加わる応力と、電気抵抗と、の関係を例示するグラフ図である。
図20は、図19(a)〜図19(d)に関して前述したプロセスにより作成された検知素子50に、圧縮および引っ張りのそれぞれの応力が加わった場合の電気抵抗の変化を示すグラフ図である。
磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、が平行な場合と反平行な場合とのどちらの場合で電気抵抗が低くなるかは、検知素子50の第1磁性層10と第2磁性層20と中間層30との素材を選択することで選択可能である。図20では、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、が反平行で電気抵抗が高くなる場合を採用する。
図14(b)のように、検知素子50に引っ張りの応力81が加わった場合、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の相対角度200bは、応力81が加わっていない場合の相対角度200cよりも小さくなり、MR効果により電気抵抗が低くなる。
一方、図14(c)のように、検知素子50に圧縮の応力82が加わった場合、磁化自由層の磁化110aと、磁化固定層の磁化120aと、の間の相対角度200bはゼロになり、応力82が加わっていない場合の相対角度200cよりも大きくなるため、MR効果により電気抵抗が高くなる。
このように、図19(a)〜図19(d)に関して前述したプロセスにより作成された検知素子50は、図20に示すように、加えられる応力の向きが圧縮から引っ張りに変化するにしたがって、電気抵抗の値が高くなる。
(第3の実施形態)
次に、図17(b)や図19(b)の様に、ダイヤフラムに応力を加えた状態でアニールを行うための装置について例示する。
図21は、第3の実施形態に係る圧力センサの製造装置を例示する模式的断面図である。
図21は、圧力センサに対して減圧吸引による外部圧力制御を行うための装置を例示する模式的断面図である。
図21に表した圧力センサの製造装置400は、第1ジグ410と、第2ジグ420と、第3ジグ430と、円筒管460と、真空ポンプ(圧力差発生装置)470と、を備える。
図21に示すように、図15に表したステップS105のプロセスまで進んだ基板401であって、圧力センサ310が作成された基板401を第1ジグ410で固定する。さらに、第1ジグ410の上に第2ジグ420を取り付けることで、空間440(第1空間)を形成する。第1ジグ410の下に第3ジグ430を取り付けることで、空間450(第2空間)を形成する。
第3ジグ430には、真空ポンプ470を取り付けるための円筒管460が備え付けられている。真空ポンプ470を動作させ空間450の気体(例えば、空気)を吸引したのち、円筒管460と真空ポンプ470との連結部460aを封止することで、空間440と空間450との間に真空度の差を生じさせ、外部圧力85を発生させる。
図22は、第3の実施形態に係る圧力センサの別の製造装置を例示する模式的断面図である。
図22は、圧力センサに対して増圧吐出による外部圧力制御を行うための装置を例示する模式的断面図である。
図22に表した圧力センサの製造装置400aは、第1ジグ410と、第2ジグ420と、第3ジグ430と、円筒管460と、例えばボンベなどの容器480と、を備える。 図22に示すように、図13に表したステップS105のプロセスまで進んだ基板401であって、圧力センサ310が作成された基板401を第1ジグ410で固定する。さらに、第1ジグ410の上に第2ジグ420を取り付けることで、空間440(第1空間)を形成する。第1ジグ410の下に第3ジグ430を取り付けることで、空間450(第2空間)を形成する。
第3ジグ430には、容器480を取り付けるための円筒管460が備え付けられている。容器480(圧力差発生装置。例えば、高圧ボンベ)を動作させ空間450へ気体(例えば、空気)を吐出したのち、円筒管460と容器480との連結部460aを封止することで、空間440と空間450との間に圧力の差を生じさせ、外部圧力85を発生させる。なお、Ar、Xe、Kr、N2などの不活性ガスを空間450に入れて陽圧にして円筒管460と容器480との連結部460aを封止してもよい。
図21の製造装置400および図22の製造装置400aにおいて、膜部64の破壊を防ぐため、外部圧力85の大きさは30キロパスカル(KPa)以下とする。
連結部460aを封止した製造装置400をアニール用のアニール装置に入れアニールを行うことで、圧力センサ310の膜面64a、64bに静的な歪を生じさせた状態でのアニールが可能になる。なお、製造装置400に直接ヒーターをつけてアニール装置としてもよい。
上述した図21および図22の製造装置では、空間450を減圧もしくは加圧した状態で封止した例について説明したが、空間440と空間450の圧力差を制御できれば、ポンプによる吸引や容器480による吐出を連続して行ったまま、熱処理を行ってもよい。
アニール温度はピニング層160に用いられる反強磁性材料のブロッキング温度以上とすることが望ましい。また、Mnを含む反強磁性層を用いる場合、Mnの拡散が起こる温度以下に設定することが望ましい。例えば200度(℃)以上、500度(℃)以下とすることができる。この場合、好ましくは、250度(℃)以上、400度(℃)以下とすることができる。
ピニング層160に接する強磁性層の磁化の固定を行うためには、磁場印加中での熱処理が行われる。熱処理時に印加されている磁場の方向にピニング層160に接する強磁性層の磁化が固定される。アニール温度は、例えば、ピニング層に用いられる反強磁性材料のブロッキング温度以上とする。また、Mnを含む反強磁性層を用いる場合、Mnの拡散が起こる温度以下に設定することが望ましい。例えば200度(℃)以上、500度(℃)以下とすることができる。好ましくは、250度(℃)以上、400度(℃)以下とすることができる。
(第4の実施形態)
図23は、第4の実施形態に係るマイクロフォンを例示する模式的平面図である。
図23に示すように、マイクロフォン510は、前述した各実施形態に係る任意の圧力センサ310や、それらの変形に係る圧力センサを有する。以下においては、一例として、圧力センサ310を有するマイクロフォン510について例示をする。
マイクロフォン510は、携帯情報端末520の端部に組み込まれている。マイクロフォン510に設けられた圧力センサ310の膜部64は、例えば、携帯情報端末520の表示部521が設けられた面に対して実質的に平行とすることができる。なお、膜部64の配置は例示をしたものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
マイクロフォン510は、圧力センサ310などを備えているので、広域の周波数に対して高感度とすることができる。
なお、マイクロフォン510が携帯情報端末520に組み込まれている場合を例示したがこれに限定されるわけではない。マイクロフォン510は、例えば、ICレコーダーやピンマイクロフォンなどにも組み込むことができる。
(第5の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた音響マイクに係る。
図24は、第5の実施形態に係る音響マイクを例示する模式的断面図である。
実施形態に係る音響マイク530は、プリント基板531と、カバー533と、圧力センサ310と、を含む。プリント基板531は、例えばアンプなどの回路を含む。カバー533には、アコースティックホール535が設けられる。音539は、アコースティックホール535を通って、カバー533の内部に進入する。
圧力センサ310として、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
音響マイク530は、音圧に対して感応する。高感度な圧力センサ310を用いることにより、高感度な音響マイク530が得られる。例えば、圧力センサ310をプリント基板531の上に搭載し、電気信号線を設ける。圧力センサ310を覆うように、プリント基板531の上にカバー533を設ける。
実施形態によれば、高感度な音響マイクを提供することができる。
(第6の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いた血圧センサに係る。
図25(a)及び図25(b)は、第6の実施形態に係る血圧センサを例示する模式図である。
図25(a)は、ヒトの動脈血管の上の皮膚を例示する模式的平面図である。図25(b)は、図25(a)のH1−H2線断面図である。
実施形態においては、圧力センサ310は、血圧センサ540として応用される。この圧力センサ310には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。
これにより、小さいサイズの圧力センサで高感度な圧力検知が可能となる。圧力センサ310を動脈血管541の上の皮膚543に押し当てることで、血圧センサ540は、連続的に血圧測定を行うことができる。
本実施形態によれば、高感度な血圧センサを提供することができる。
(第7の実施形態)
実施形態は、上記の各実施形態の圧力センサを用いたタッチパネルに係る。
図26は、第7の実施形態に係るタッチパネルを例示する模式的平面図である。
実施形態においては、圧力センサ310が、タッチパネル550として用いられる。この圧力センサ310には、上記の各実施形態に関して説明した圧力センサのいずれか、及び、その変形が用いられる。タッチパネル550においては、圧力センサ310が、ディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに搭載される。
例えば、タッチパネル550は、複数の第1配線551と、複数の第2配線552と、複数の圧力センサ310と、制御部553と、を含む。
この例では、複数の第1配線551は、Y軸方向に沿って並ぶ。複数の第1配線551のそれぞれは、X軸方向に沿って延びる。複数の第2配線552は、X軸方向に沿って並ぶ。複数の第2配線552のそれぞれは、Y軸方向に沿って延びる。
複数の圧力センサ310のそれぞれは、複数の第1配線551と複数の第2配線552とのそれぞれの交差部に設けられる。圧力センサ310の1つは、検出のための検出要素310eの1つとなる。ここで、交差部は、第1配線551と第2配線552とが交差する位置及びその周辺の領域を含む。
複数の圧力センサ310のそれぞれの一端310aは、複数の第1配線551のそれぞれと接続される。複数の圧力センサ310のそれぞれの他端310bは、複数の第2配線552のそれぞれと接続される。
制御部553は、複数の第1配線551と複数の第2配線552とに接続される。
例えば、制御部553は、複数の第1配線551に接続された第1配線用回路553aと、複数の第2配線552に接続された第2配線用回路553bと、第1配線用回路553aと第2配線用回路553bとに接続された制御回路555と、を含む。
圧力センサ310は、小型で高感度な圧力センシングが可能である。そのため、高精細なタッチパネルを実現することが可能である。
上記の各実施形態に係る圧力センサは、上記の応用の他に、気圧センサ、または、タイヤの空気圧センサなどのように、様々な圧力センサデバイスに応用することができる。
実施形態によれば、高感度の圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ、タッチパネル、圧力センサの製造方法、および圧力センサの製造装置を提供することができる。
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルに含まれる膜部、検知素子、第1磁性層、第2磁性層および中間層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
その他、本発明の実施の形態として上述した圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての圧力センサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。