JP7095283B2 - 剥離層形成剤および、フレキシブル電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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このような事情に鑑み、機能素子を形成するための高分子フィルムと支持体との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、シランカップリング剤を介して無機物からなる支持体(無機層)に貼り合わせてなる積層体が提案されている(特許文献1~3)。
[1] 無機基板上に剥離層を介して形成された高分子層上を有する積層体の、高分子層上に電子デバイスを形成した後に、無機基板から高分子層ごと電子デバイスを剥離するフレキシブル電子デバイスの製造方法に用いられる剥離層形成剤であって、少なくとも以下に示す化学構造を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする剥離層形成剤。
(式中、Aは置換基を有していても良い1価の有機基を示す。R1、R2は炭素数1~6のアルキル基、フェニル基、それらの置換体から選択される少なくとも1種の置換基を示す。nは1または2の整数を示す。)
[2] 前記化1におけるAがアミノ基を有する有機基であることを特徴とする[1]に記載の剥離層形成剤。
[3] 無機基板の少なくとも片方の面に[1]に示す剥離層形成剤を用いて剥離層を形成する工程、
前記剥離層の上に高分子溶液または高分子前駆体溶液を塗布し加熱することにより高分子層を形成する工程、
高分子層上に電子デバイスを形成する工程、
電子デバイスを高分子層毎無機基板から剥離する工程、
を含む事を特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
かかる剥離強度の変化パターンを導く具体的な手段については、以下に詳しく説明を行うが、基本的には高分子層と無機基板との間に形成する剥離層として、化1の構造をもつシランカップリング剤を含む剥離層形成材を用いることで実現される。
化1のシランカップリング剤においては、n=0を満たすシランカップリング剤を用いると、高温熱処理後に剥離層からガスが発生しやすく、ブリスターが大量に発生し易く、表面状態が平滑な積層体を形成することが困難であった。しかし、n=1または2の整数を満たすシランカップリング剤を含む剥離層形成材を用いると、構造中のアルコキシ基が少ないために、高温熱処理時に美反応のアルコキシ基から脱アルコール反応を生じて発生するアルコール量が減少し、ブリスターの少ない、表面状態がより平滑な基板が形成できることが分かった。
シランカップリング剤は、特に限定されるものではないが、化1のシランカップリング剤の好ましい具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、(3-アミノプロピル)ジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピル)ジメチルエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられ、アミノ基をもつシランカップリング剤がより好ましい。
<剥離層の形成方法>
本発明における剥離層の形成方法としては、剥離層形成剤を塗布する液相方法や剥離層形成剤を蒸着するなどの気相方法を用いることが出来る。剥離層はは高分子層、無機基板のいずれの表面に行っても良く、両方の表面に行っても良い。が、本発明では無機基板の表面に剥離層を形成し、その後に高分子溶液ないし高分子前駆体溶液を塗布し、加熱乾燥などにより高分子層を形成する方法を好ましく用いる事ができる。
剥離層形成剤を塗布する方法としては、主成分であるシランカップリング剤と希釈溶媒であるアルコールなどの混合物である剥離層形成剤を用いて、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、コンマコート法、アプリケーター法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。剥離層形成剤を塗布する方法を用いた場合、塗布後に速やかに乾燥し、さらに100℃±30℃程度で数十秒~10分程度の熱処理を行うことが好ましい。熱処理により、剥離層形成剤と被塗布面の表面とが化学反応により結合される。
剥離層形成剤を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、剥離層形成剤の気化を促進する場合には常圧下ないし減圧下が好ましい。多くの剥離層形成剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
基材を剥離層形成剤に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内が好ましく、より好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、最も好ましくは5分以内である。
基材を剥離層形成剤に暴露する間の基材の温度は、剥離層形成剤の種類と、求める剥離層形成剤層の厚さにより-50℃~200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
なお剥離層形成剤処理前の基材表面を短波長UV/オゾン照射などの手段により清浄化したり液体洗浄剤で清浄化するのが好ましい。
本発明においては高分子層の支持体として無機基板を用いる。また、高分子層上に電子デバイスを形成して、フレキシブル電子デバイスを製造する場合においても、無機基板は高分子層材料を仮支持するために用いられる。
無機基板としては無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。厚さの下限については特に制限されないが、好ましくは0.07mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。
ただし、本発明は450℃以上の熱処理を伴うプロセスに用いられることが大前提であるため、例示された高分子層の中から実際に適用できる物は限られる。本発明に好ましく用いられる高分子層は、所謂スーパーエンジニアリングプラスチックを用いた層であり、好ましくは芳香族ポリイミド層であり、芳香族アミド層であり、芳香族アミドイミド層であり、芳香族ベンゾオキサゾール層であり、芳香族ベンゾチアゾール層であり、芳香族ベンゾイミダゾール層である。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
層の厚さ斑(%)
=100×(最大層厚-最小層厚)÷平均層厚
塗布の方法としては、例えば、スピンコート、ドクターブレード、アプリケーター、コンマコーター、スクリーン印刷法、スリットコート、リバースコート、ディップコート、カーテンコート、スリットダイコート等従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
例えば、ポリイミド系樹脂層は、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を無機基板に所定の厚さとなるように塗布し、乾燥した後に、高温熱処理して脱水閉環反応を行わせる熱イミド化法又は無水酢酸等を脱水剤とし、ピリジン等を触媒として用いる化学イミド化法を行うことによって得ることができる。
本発明の積層体を用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いて積層体の高分子層上に電子デバイスを形成し、積層体から高分子層ごと剥離することで、フレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
本発明における電子デバイスとは、電気配線を担う片面、両面、あるいは多層構造を有する配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、バイオセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどをいう。
その際に、前記積層体の高分子層に切り込みを入れて該高分子層を前記無機基板から剥離することが好ましい。
前記積層体の易剥離部の高分子層に切り込みを入れる方法としては、刃物などの切削具によって高分子層を切断する方法や、レーザーと積層体を相対的にスキャンさせることにより高分子層を切断する方法、ウォータージェットと積層体を相対的にスキャンさせることにより高分子層を切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつ高分子層を切断する方法などがあるが、特に方法は限定されるものではない。例えば、上述した方法を採用するにあたり、切削具に超音波を重畳させたり、往復動作や上下動作などを付け加えて切削性能を向上させる等の手法を適宜採用することもできる。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。剥離するフレキシブル電子デバイスが、表示デバイスのバックプレーンである場合、あらかじめ表示デバイスのフロントプレーンを貼りつけて、無機基板上で一体化した後に両者を同時に剥がし、フレキシブルな表示デバイスを得ることも可能である。
積層体の剥離強度は、90度剥離法に従って測定した。
無機基板に対して高分子層(ポリイミド層)が90度折れ曲がる側として、N=5の測定を行い平均値を測定値とした。
装置名 ; 剥離試験機…日本計測システム社、JSV-H1000
測定温度 ; 室温
剥離速度 ; 100mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 1cm
<気泡(ブリスター)数>
500℃熱処理をした積層体の中心部で3cm×3cmの領域を指定し、その領域内にある気泡数を層貼付面と反対側から目視で確認した。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N-ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部とを加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、粘調なポリアミド酸溶液V1を得た。
無機基板としてガラス基材を用い、剥離層形成剤として3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン(東京化成工業社製、以下SM2)を1質量%含むにイソプロパノール溶液を用いた。
スピンコーター(ジャパンクリエイト社製、MSC-500S)にガラス基板を設置して、回転数を2000rpmまで上げて10秒間回転させ、剥離層形成剤を塗布し、次に、110℃に加熱したホットプレートに、剥離層形成剤が塗布された無機基板を剥離層形成剤塗布面が上になるように載せ、約1分間加熱して、剥離層形成向無機基板G1を得た。
剥離層形成剤として3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン(東京化成工業社製、以下SM2)100%の原液を、チャンバーに接続した吸引瓶に満たし40℃の水浴上に静置した。吸引瓶の上方からは計装エアーを導入できる状態にして密閉することで、チャンバー内に剥離層形成剤の蒸気を導入できる状態にした。
次いで、チャンバー内にUVオゾン処理を行ったガラス基板を処理面を上にして水平に保持し、チャンバーを閉じた。次いで計装エアーを25L/minで導入し、チャンバー内を剥離層形成剤蒸気で満たした状態で3分間保持して無機基板を剥離層形成剤蒸気に暴露し、チャンバーから取り出して110℃に加熱したホットプレートに、剥離層形成剤暴露面が上になるように載せ、約1分間加熱して、剥離層形成無機基板G2を得た。
得られた剥離層形成無機基板G1の剥離層上にポリアミド酸溶液V1をアプリケーターを用いて、最終的なポリイミド層の厚さが6μmとなるように塗布し、真空乾燥機で残存溶剤率が35%以下になるまで乾燥した後に、イナートオーブンにて250℃にて7分、450℃にて7分熱処理を行い、ガラス/剥離層/ポリイミド層からなる積層体を得た。
得られた積層体の初期90度剥離力は0.18N/cmであった。
次いで得られた積層体を窒素中にて500℃にて1時間処理し、その後の90度剥離強度を測定した。結果0.15N/cmであった。また500℃処理後もブリスターはほとんど観察されなかった。
剥離層形成実基板G2を用い、ポリアミド酸溶液V1をアプリケーターを用いて、最終的なポリイミド層厚が18μmとなるように塗布し、真空乾燥機で残存溶剤率が35%以下になるまで乾燥した後に、イナートオーブンにて250℃にて10分、450℃にて10分熱処理を行い、ガラス/剥離層/ポリイミド層からなる積層体を得た。
得られた積層体の初期90度剥離力は0.15N/cmであった。
次いで得られた積層体を窒素中にて500℃にて1時間処理し、その後の90度剥離強度を測定した。結果0.08N/cmであった。また500℃処理後もブリスターはほとんど観察されなかった。
特に、LTPS(低温ポリシリコン)のような500℃近い高温での熱処理が必要な電子デバイスを作製する場合でも、電子デバイス付き高分子層を無機基板から容易に剥離できる特徴を有するため、高性能なフレキシブルディスプレイや各種センサーの作製に有効である。
Claims (2)
- ガラス基板の少なくとも片方の面に請求項1に示す剥離層形成剤を用いて剥離層を形成する工程、
前記剥離層の上にポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布し加熱することによりポリイミド層を形成する工程、
ポリイミド層上に電子デバイスを形成する工程、
電子デバイスをポリイミド層毎ガラス基板から剥離する工程、
を含む事を特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
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