JP6981012B2 - デバイス形成用仮支持基板およびデバイスの製造方法 - Google Patents

デバイス形成用仮支持基板およびデバイスの製造方法 Download PDF

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本発明は、フレキシブルな電子デバイスを製造するために用いる仮支持基板に関するものであり、リユースに優れ、仮支持基板からの電子デバイスの剥離が容易である仮支持基板に関するものであり、仮支持基板を用いたフレキシブル電子デバイスの製法に関するものである。
近年、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子など機能素子の軽量化、小型・薄型化、フレキシビリティ化を目的として、高分子フィルム上にこれらの素子を形成する技術開発が活発に行われている。すなわち、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料としては、従来、耐熱性を有し且つ情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得るセラミックが用いられていたが、セラミックはフレキシブルではなく薄型化もしにくいので、適用可能な分野が限定されるという欠点があったため、最近は高分子フィルムが基板として用いられている。
半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子を高分子フィルム表面に形成するにあたっては、高分子フィルムの特性であるフレキシビリティを利用した、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスにて加工することが理想とされている。しかしながら、半導体産業、MEMS産業、ディスプレイ産業等の業界では、これまでウエハベースまたはガラス基板ベース等のリジッドな平面基板を対象としたプロセス技術が構築されてきた。そこで、既存インフラを利用して機能素子を高分子フィルム上に形成するために、高分子フィルムを、例えばガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属板などの無機物からなるリジッドな支持体に貼り合わせ、その上に所望の素子を形成した後に支持体から剥離するというプロセスが用いられている。
ところで、高分子フィルムと無機物からなる支持体とを貼り合わせた積層体に所望の機能素子を形成するプロセスにおいては、該積層体は高温に曝されることが多い。例えば、ポリシリコンや酸化物半導体などの機能素子の形成においては200〜500℃程度の温度域での工程が必要である。また、低温ポリシリコン薄膜トランジスタの作製においては脱水素化のために450℃程度の加熱が必要になる場合があり、水素化アモルファスシリコン薄膜の作製においては200〜300℃程度の温度がフィルムに加わる場合がある。したがって、積層体を構成する高分子フィルムには耐熱性が求められるが、現実問題としてかかる高温域にて実用に耐える高分子フィルムは限られている。また、支持体への高分子フィルムの貼り合わせには一般に粘着剤や接着剤を用いることが考えられるが、その際の高分子フィルムと支持体との接合面(すなわち貼り合せ用の接着剤や粘着剤)にも耐熱性が求められる。しかし、通常の貼り合せ用の接着剤や粘着剤は十分な耐熱性を有していないため、機能素子の形成温度が高い場合には接着剤や粘着剤による貼り合わせは適用できない。
高分子フィルムを無機基板に貼り付ける耐熱接着手段がないため、かかる用途においては、高分子溶液または高分子の前駆体溶液を無機基板上に塗布して支持体上で乾燥・硬化させてフィルム化し、当該用途に使用する技術が知られている。例えば、特許文献1にはガラス基板にパリレン層を形成しその上に高分子溶液を塗布乾燥してフィルム化し、フィルム状にデバイス形成の後にガラス基板から剥離する方法が開示されている。しかしながら、かかる手段により得られる高分子フィルムは、脆く裂けやすいため、高分子フィルム表面に形成された機能素子は支持体から剥離する際に破壊してしまう場合が多い。特に支持体から大面積のフィルムを剥離するのは極めて難しく、およそ工業的に成り立つ歩留まりを得ることはできない。
このような事情に鑑み、機能素子を形成するための高分子フィルムと支持体との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、シランカップリング剤を介して無機物からなる支持体(無機層)に貼り合わせてなる積層体が提案されている(特許文献2〜4)。
ところで、高分子フィルムは元来、柔軟な素材であり、多少の伸縮や曲げ伸ばしを行ってもよい。一方で、高分子フィルム上に形成された機能素子は、多くの場合、無機物からなる導電体、半導体を所定のパターンにて組み合わせた微細な構造を有しており、微小な伸縮や曲げ伸ばしといったストレスによって、その構造は破壊され、電子デバイスとしての特性は損なわれてしまう。かかるストレスは、無機基板から高分子フィルムを機能素子ごと剥離するときに生じやすい。そのため、特許文献1〜4に記載の積層体では、高分子フィルムを支持体から剥離する際に機能素子の構造が破壊されるおそれがある。
特許4834758号公報 特開2010−283262号公報 特開2011−11455号公報 特開2011−245675号公報
近年、デバイスの性能向上を目的として加工プロセス中にて420℃以上、好ましくは460℃以上、なお好ましくは505℃以上、なおさらに好ましくは530℃以上の高温が用いられる場合がある。一般に真空薄膜はプロセス温度が高い方が膜質が良いとされ、また薄膜物性の改善に高温アニールが行われることは一般的である。しかしながら、ガラス基板では大きな問題にならないこれらの温度は、有機物である高分子フィルムに取っては大きな問題となる。
高分子フィルム、好ましくはポリイミドフィルム自身の耐熱性は言わずもがなであるが、本発明が特に注目する問題点は高分子フィルムと無機基板との接着性である。
高分子前駆体の場合は、耐熱性の観点からはポリイミドの前駆体やポリベンザゾールの前駆体が代表例となるが、これらの前駆体から高分子への転移は比較的高温での化学反応となる場合が多い。また先の特許文献4に開示されたフィルムをラミネートする場合は、同様にポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンザソールなどのフィルムが代表例となるが、該技術は表面処理にて活性化された高分子フィルム表面と無機基板表面との固体表面間での化学結合を意図したものである。いずれも常温では生じにくい反応を高温度域にて行わせて、高分子層と無機基板との積層体を得ている。
いずれも場合においても、高分子層と無機基板表面との化学反応は、温度が高いほど生じやすいことは容易に類推できる。
結果として、かかる温度以上のプロセス温度を有する工程では、高分子層と無機基板間の化学結合部位の増加、あるいは化学結合強度の増加が生じ、高分子フィルムと無機基板との接着強度が上がってしまう。この現象は接着面では良い効果とも云えるが、最終的に無機基板から高分子層を高分子フィルムとして剥離してフレキシブルデバイスを製造する立場からは、高分子フィルムの剥離時に高分子フィルムに大きなテンションが加わり、高分子フィルムの伸張、ないし剥離角に於けるデバイスへの曲げ変形等により、デバイスが破損するリスクが高くなるという問題になる。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の材料を用いて、無機基板表面の少なくとも片面の一部に特定の薄膜を形成することにより、高温での高分子と無機基板との化学反応を抑制し、高いプロセス温度に曝された場合においても接着強度が大きく変化しないことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
[1] 一辺が少なくとも350mm以上の長方形、または、直径が150mm以上の円形である無機基板の少なくとも片面の一部に薄膜が連続又は不連続に形成されたデバイス形成用仮支持基板であり、
前記薄膜がモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜であり、
前記薄膜表面の表面粗度Raが10nm以下であることを特長とするデバイス形成用仮支持基板。
[2] 前記[1]に記載のデバイス形成用仮支持基板の薄膜形成面に、高分子材料の前駆体溶液を塗布、乾燥することにより高分子層を形成し、次いで前記高分子層の上に420℃以上のプロセス温度を含む加工工程にて電子デバイスを形成し、電子デバイスを高分子層ごと仮支持基板から剥離することを特長とするデバイスの製造方法。
[3] 前記[2]に記載のデバイスの製造方法において、仮支持基板の薄膜形成面にシランカップリング剤処理を行うことを特長とするデバイスの製造方法。
[4] 前記[1]に記載のデバイス形成用仮支持基板の薄膜形成面に、高分子材料の前駆体からなるフィルムラミネートすることにより高分子層を形成し、次いで前記高分子層の上に420℃以上のプロセス温度を含む加工工程にて電子デバイスを形成し、電子デバイスを高分子層ごと仮支持基板から剥離することを特長とするデバイスの製造方法。
[5] 前記[4]に記載のデバイスの製造方法において、仮支持基板の薄膜形成面にシランカップリング剤処理を行うことを特長とするデバイスの製造方法。
[6] 前記[1]に記載のデバイス形成用仮支持基板の薄膜形成面に、高分子フィルムをラミネートすることにより高分子層を形成し、高分子層の上に420℃以上のプロセス温度を含む加工工程にて電子デバイスを形成し、電子デバイスを高分子層ごと仮支持基板から剥離することを特長とするデバイスの製造方法。
[7] 前記[6]に記載のデバイスの製造方法において、仮支持基板の薄膜形成面にシランカップリング剤処理を行うことを特長とするデバイスの製造方法。
[8] 前記高分子がポリイミド樹脂であることを特長とする請求項2から7に記載のデバイスの製造方法。
またさらに本発明は以下の構成を含む事が好ましい。
[9] 前記高分子が有機珪素化合物を含む高分子である事を特長とする[2]から[7]に記載のデバイスの製造方法。
[10] 前記電子デバイスを形成する加工工程の温度が450℃以上であることを特長とする[2]から[9]のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
[11] 前記電子デバイスを形成する加工工程の温度が470℃以上であることを特長とする[2]から[9]のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
[12] 前記電子デバイスを形成する加工工程の温度が490℃以上であることを特長とする[2]から[9]のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
[13] 前記電子デバイスを形成する加工工程の温度が510℃以上であることを特長とする[2]から[9]のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
[13] 前記電子デバイスを形成する加工工程の温度が525℃以上であることを特長とする[2]から[9]のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
本発明によれば、無機基板にモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜を形成することにより、高分子前駆体の塗布が均一に行え、好ましくはシランカップリング剤の均質な塗布が可能となり、高分子層をフィルムとして無機基板から剥離する際に、安定に、かつ一定の低い力で剥離することが可能となる。モリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜表面は不動態を形成しており、シランカップリング剤塗布の際には、液体であるシランカップリング剤、およびシランカップリング剤の溶剤として用いられる比較的低沸点のアルコール系溶剤との濡れが良く、均質なシランカップリング剤皮膜の形成が可能である。一方で、縮合反応を生じたシランカップリング剤層との間の相互作用が小さく、低く安定した接着強度を維持することが出来る。モリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の表面に形成される不動態膜は、シランカップリング剤の縮合時のシラノール反応とほとんど相互作用を生じない。この状態は室温から500℃前後の高温まで安定して維持される。
さらに、本発明によれば、薄膜を所定のパターンとすることで、高分子層が形成された面は、高分子フィルムに切り込みを入れると、高分子層を高分子フィルムとして無機基板から容易に分離できる領域である易剥離部と容易に分離できない領域である良好接着部とを作り分けることができ、易剥離部周辺に沿って切り込みを入れて、易剥離部の高分子フィルム上に形成された機能素子部分を高分子フィルムと一体で無機基板から剥離することが可能となる。
本発明において、高耐熱性を有する高分子を用いれば、耐熱性に劣る接着剤や粘着剤を用いることなく無機基板に高分子層をフィルムとして形成可能であり、例えば420℃以上といった高温が必要な場合であっても高分子フィルム上に機能素子を形成することができる。一般に半導体、誘電体等は、高温で形成した方が膜質の良い薄膜が得られるため、より高性能な電子デバイスの形成が期待できる。
従って、本発明の高分子フィルム積層基板を用いれば、誘電体素子、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子、発光素子、光電変換素子、圧電変換素子、熱電変換素子等の電子デバイスが高分子フィルム上に形成したフレキシブル電子デバイスの製造に有用である。
本発明のデバイス形成用仮支持基板は、少なくとも片面の一部に薄膜が連続又は不連続に形成された無機基板である。
<無機基板>
本発明における無機基板は、一辺が少なくとも350mm以上の長方形、または、直径が150mm以上の円形である無機基板である。なお、ここに円形には、加工工程中で向きを合わせるため、周上にオリエンテーション・フラットと呼ばれる直線部、またはノッチとよばれる切り欠きを設けたものも含まれる。
無機基板としては無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
前記ガラス板としては、石英ガラス、高ケイ酸ガラス(96%シリカ)、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標))、ホウケイ酸ガラス(無アルカリ)、ホウケイ酸ガラス(マイクロシート)、アルミノケイ酸塩ガラス等が含まれる。これらの中でも、線膨張係数が5ppm/K以下のものが望ましく、市販品であれば、液晶用ガラスであるコーニング社製の「コーニング(登録商標)7059」や「コーニング(登録商標)1737」、「EAGLE」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA10」、SCHOTT社製の「AF32」などが望ましい。
前記半導体ウエハとしては、特に限定されないが、シリコンウエハ、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、アルミニウム−ガリウム−インジウム、窒素−リン−ヒ素−アンチモン、SiC、InP(インジウム燐)、InGaAs、GaInNAs、LT、LN、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛)などのウエハが挙げられる。本発明で好ましく用いられるウエハはシリコンウエハであり、特に好ましくは8インチ以上のサイズの鏡面研磨シリコンウエハである。
前記金属としては、Fe、Ni、Auといった単一元素金属や、インコネル、モネル、ニモニック、炭素銅、Fe−Ni系インバー合金、スーパーインバー合金、といった合金等が含まれる。また、これら金属に、他の金属層、セラミック層を付加してなる多層金属板も含まれる。この場合、付加層との全体の線膨張係数(CTE)が低ければ、主金属層にCu、Alなども用いられる。付加金属層として使用される金属としては、高分子層との密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等の特性を有するものであれば限定されるものではないが、Cr、Ni、TiN、Mo含有Cuなどが好適な例として挙げられる。
前記無機基板の平面部分は、充分に平坦である事が望ましい。具体的には、表面粗さのP−V値が10nm以下、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。これより粗いと、高分子層と無機基板との接着強度が不充分となる場合がある。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。厚さの下限については特に制限されないが、好ましくは0.07mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。
前記無機基板の面積は、高分子層積層基板やフレキシブル電子デバイスの生産効率・コストの観点より、大面積であることが好ましい。具体的には、1700cm2以上であることが好ましく、3000cm2以上であることがより好ましく、5000cm2以上であることがさらに好ましい。
<薄膜>
本発明においては、無機基板の少なくとも片面の一部に薄膜が連続又は不連続に形成されている。以下の例示は無機基板の片面側にのみ薄膜を形成する形態を前提に説明するが、無機基板の両面に薄膜を形成する形態も本発明の範囲内である。
本発明における薄膜はモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜である。本発明では少なくとも最表面が純度85%以上、好ましくは純度92%以上、更に好ましくは純度98%以上のモリブデンないしタングステンの薄膜を用いる事が好ましい。また、例外としてモリブデンとタングステンからなる合金を用いる事も出来る。この場合モリブデンとタングステンの合金比はモリブデン:タングステン=1:99〜99:1(元素比)まで幅広く用いる事ができる。
また薄膜の厚さは3nm以上5μm以下が好ましく、さらに12nm以上3μm以下が好ましく、さらに36nm以上1.2μm以下であることが好ましい。
薄膜を形成する手法については、特に制限されず、成膜源の種類、特性に応じて、蒸着、スパッタリング、反応性スパッタリング、イオンビームスパッタリング、CVD等の公知の薄膜形成手段を用いることができる。
本発明では、モリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属薄膜を形成後に酸素プラズマ処理、陽極酸化処理、大気圧プラズマ処理などで表面の不導体層を強化することもできる。
本発明においては、薄膜形成された無機基板に高分子層を形成する前にシランカップリング剤層を形成することが好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤とは、無機基板と高分子層との間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を意味する。
カップリング剤は、特に限定されるものではないが、アミノ基あるいはエポキシ基を持ったシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
本発明で用いることのできるシランカップリング剤としては、前記のほかに、n−プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ドデシルリクロロシラン、ドデシルトリメトキシラン、エチルトリクロロシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシフェニルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロメチルシラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロプロピルシラン、トリクロロテトラデシルシラン、トリメトキシプロピルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリクロロ−2−シアノエチルシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなどを使用することもできる。
本発明では、1つの分子中に1個のケイ素原子を有するシランカップリング剤が特に好ましく、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
本発明で用いることのできるカップリング剤としては、前記のシランカップリング剤以外のカップリング剤も用いることができる、例えば、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプトプロピオン酸ブチル、3−(ジメトキシメチルシリル)−1−プロパンチオール、4−(6−メルカプトヘキサロイル)ベンジルアルコール、11−アミノ−1−ウンデセンチオール、11−メルカプトウンデシルホスホン酸、11−メルカプトウンデシルトリフルオロ酢酸、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、11−メルカプトウンデシルトリ(エチレングリコール)、(1−メルカプトウンデイック−11−イル)テトラ(エチレングリコール)、1−(メチルカルボキシ)ウンデック−11−イル)ヘキサ(エチレングリコール)、ヒドロキシウンデシルジスルフィド、カルボキシウンデシルジスルフィド、ヒドロキシヘキサドデシルジスルフィド、カルボキシヘキサデシルジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−ブタンジチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール、3−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、1−ヘプタンチオール、1−ヘキサデカンチオール、ヘキシルメルカプタン、イソアミルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸−3−メトキシブチル、2−メチル−1−ブタンチオール、1−オクタデカンチオール、1−オクタンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ペンタンチオール、1−プロパンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−(12−メルカプトドデシル)イミダゾール、1−(11−メルカプトウンデシル)イミダゾール、1−(10−メルカプトデシル)イミダゾール、1−(16−メルカプトヘキサデシル)イミダゾール、1−(17−メルカプトヘプタデシル)イミダゾール、1−(15−メルカプト)ドデカン酸、1−(11−メルカプト)ウンデカン酸、1−(10−メルカプト)デカン酸などを使用することもできる。
<シランカップリング剤層の形成方法>
シランカップリング剤層の形成方法としては、シランカップリング剤溶液を塗布する方法や蒸着法などを用いることが出来る。
シランカップリング剤溶液を塗布する方法としては、シランカップリング剤をアルコールなどの溶媒で希釈した溶液を用いて、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、コンマコート法、アプリケーター法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。シランカップリング剤溶液を塗布する方法を用いた場合、塗布後に速やかに乾燥し、さらに100±30℃程度で数十秒〜10分程度の熱処理を行うことが好ましい。熱処理により、シランカップリング剤と被塗布面の表面とが化学反応により結合される。
また、シランカップリング剤層を蒸着法によって形成することもでき、具体的には、基板をシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤に暴露して形成する。シランカップリング剤の蒸気は、液体状態のシランカップリング剤を40℃〜シランカップリング剤の沸点程度までの温度に加温することによって得ることが出来る。シランカップリング剤の沸点は、化学構造によって異なるが、概ね100〜250℃の範囲である。ただし200℃以上の加熱は、シランカップリング剤の有機基側の副反応を招く恐れがあるため好ましくない。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内が好ましく、より好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、最も好ましくは1分以内である。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する間の無機基板の温度は、シランカップリング剤の種類と、求めるシランカップリング剤層の厚さにより−50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
シランカップリング剤に暴露された無機基板は、好ましくは、暴露後に、70℃〜200℃、さらに好ましくは75℃〜150℃に加熱される。かかる加熱によって、無機基板表面の水酸基などと、シランカップリング剤のアルコキシ基やシラザン基が反応し、シランカップリング剤処理が完了する。加熱に要する時間は10秒以上10分以内である。暴露後の加熱温度が高すぎたり、暴露後の加熱時間が長すぎる場合にはシランカップリング剤の劣化が生じる場合がある。また暴露後の加熱時間が短すぎると処理効果が得られない。なお、シランカップリング剤に暴露中の基板温度が既に80℃以上である場合には、暴露後の加熱を省略することも出来る。
本発明では、蒸着法を用いて、無機基板のシランカップリング剤層を形成させたい面を下向きに保持してシランカップリング剤蒸気に暴露することが好ましい。シランカップリング剤溶液を塗布する方法では、必然的に塗布中および塗布前後に無機基板の塗布面が上を向くため、作業環境下の浮遊異物などが無機基板表面に沈着する可能性を否定できない。しかしながら蒸着法では無機基板のシランカップリング剤層を形成させたい面を下向きに保持することが出来るため、環境中の異物が無機基板の表面(あるいは薄膜表面)やシランカップリング剤層の表面に付着する可能性が低くなる。
なおシランカップリング剤処理前の無機基板表面を短波長UV/オゾン照射などの手段により清浄化したり液体洗浄剤で清浄化するのが好ましい。
シランカップリング剤層の膜厚は、無機基板、高分子層等と比較しても極めて薄く、機械設計的な観点からは無視される程度の厚さであり、原理的には最低限、単分子層オーダーの厚さがあれば十分である。一般には400nm未満であり、200nm以下が好ましく、さらに実用上は100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。ただし、計算上5nm以下の領域になるとシランカップリング剤層が均一な塗膜としてではなく、クラスター状に存在するおそれがある。なお、シランカップリング剤層の膜厚は、エリプソメトリー法または塗布時のシランカップリング剤溶液の濃度と塗布量から計算して求めることができる。
<高分子層>
本発明では、薄膜及びシランカップリング剤層が形成された無機基板の上に、高分子層を形成する。
本発明は420℃以上の熱処理を伴うプロセスに用いられることが大前提であるため、実際に適用できる物は限られる。本発明に好ましく用いられる高分子層は、所謂スーパーエンジニアリングプラスチックからなる層であり、好ましくは芳香族ポリイミドであり、芳香族アミドであり、芳香族アミドイミドであり、芳香族ベンゾオキサゾールであり、芳香族ベンゾチアゾールであり、芳香族ベンゾイミダゾールである。また本発明では有機珪素化合物を含むポリイミド前駆体から得られるシリカハイブリッドポリイミドを用いる事もできる。
高分子層は、無機板の薄膜層の上に、高分子の前駆体溶液を塗布し、乾燥硬化することにより形成することができる。
また、高分子層は、無機板の薄膜層の上に、高分子の溶液を塗布し、乾燥硬化することにより形成することができる。
また、高分子層は、無機基板の薄膜層上に、高分子前駆体からなるフィルムをラミネートすることによって形成することができる。
また、高分子層は無機基板の薄膜層上に、高分子フィルムをラミネートすることによって形成することができる。
かかる手法は、薄膜層上にシランカップリング剤層がある場合も同様である。
以下にポリイミド系樹脂についての詳細を説明する。一般にポリイミド系樹脂は、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、支持体に塗布乾燥してグリーンフィルム(以下では「ポリアミド酸フィルム」ともいう)となし、さらに支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって、フィルムとして得られる。
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、芳香族ジアミン類の中では、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類がより好ましい。ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
上述したベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類以外の芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン(ビスアニリン)、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、および前記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
前記脂肪族ジアミン類としては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン等が挙げられる。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸無水物類、脂環族テトラカルボン酸無水物類が好ましく、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環族テトラカルボン酸類がより好ましい。これらが酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環族テトラカルボン酸類としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸等の脂環族テトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の無水物構造を有する二無水物(例えば、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等)が好適である。なお、脂環族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類としては、特に限定されないが、ピロメリット酸残基(すなわちピロメリット酸由来の構造を有するもの)であることが好ましく、その酸無水物であることがより好ましい。このような芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'−オキシジフタル酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸無水物等が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
無機板の薄膜層ないしシランカップリング剤層の上に、高分子の前駆体溶液を塗布し、乾燥硬化することにより形成する手法は、ポリイミド、ポリベンザゾールの場合に好ましく適用できる。例えば、ポリイミド系樹脂の場合は、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を無機基板に所定の厚さとなるように塗布し、乾燥した後に、高温熱処理して脱水閉環反応を行わせる熱イミド化法又は無水酢酸等を脱水剤とし、ピリジン等を触媒として用いる化学イミド化法を行うことによって得ることができる。
無機板の薄膜層ないしシランカップリング剤層の上に、高分子の溶液を塗布し、乾燥硬化する手法は、溶剤可溶型のポリイミドなどに好ましく適用できる。ビフェニルテトラカルボン酸無水物とパラフェニレンジアミンから得られるポリイミドはある種の溶剤に溶解することから、この手法を好ましく用いる事ができる。
高分子の溶液や高分子前駆体溶液の塗布は、例えば、スピンコート、ドクターブレード、アプリケーター、コンマコーター、スクリーン印刷法、スリットコート、リバースコート、ディップコート、カーテンコート、スリットダイコート等従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
無機基板の薄膜層ないしシランカップリング剤層上に、高分子前駆体からなるフィルムをラミネートする手法はポリイミドに好ましく適用できる。すなわち、ポリイミド前駆体溶液を、直接無機基板に塗布するのではなく、他の高分子フィルムないし、ステンレスベルト、ステンレスロールなどの仮支持体に前駆体溶液を塗布し、仮支持体の上である程度、乾燥して前駆体フィルムを得て、得られた前駆体フィルムを無機板の薄膜層ないしシランカップリング剤層上にラミネートし、次いで追乾燥、加熱硬化、化学イミド化などを経て高分子層を得る。
また、高分子層は無機基板の上に、高分子フィルムをラミネートすることによって形成することができる。この手法は、表面をアルカリ処理、プラズマ処理などで活性化した高分子フィルムに好ましく適用でき、さらに薄膜上にシランカップリング剤層を形成した無機基板との組み合わせがさらに好ましい。
本発明における高分子層の厚さは3μm以上が好ましく、より好ましくは11μm以上であり、さらに好ましくは24μm以上であり、より一層好ましくは45μm以上である。高分子層の厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには250μm以下であることが好ましく、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは90μm以下である。
本発明における高分子層は、ガラス転移温度が250℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは350℃以上であり、あるいは500℃以下の領域においてガラス転移点が観測されないことが好ましい。本発明におけるガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。
本発明における高分子層の30℃から500℃の間の平均のCTEは、好ましくは、−5ppm/℃〜+20ppm/℃であり、より好ましくは−5ppm/℃〜+15ppm/℃であり、さらに好ましくは1ppm/℃〜+10ppm/℃である。CTEが前記範囲であると、一般的な支持体(無機基板)との線膨張係数の差を小さく保つことができ、熱を加えるプロセスに供しても高分子層と無機基板とが剥がれることを回避できる。
本発明における高分子層の引張破断強度は、60MPa以上が好ましく、より好ましくは120MP以上であり、さらに好ましくは240MPa以上である。引張破断強度の上限は特に制限されないが、事実上1000MPa程度未満である。なお、前記高分子層の引張破断強度とは、高分子層の流れ方向(MD方向)の引張破断強度及び幅方向(TD方向)の引張破断強度の平均値を指す。
本発明における高分子層の厚さ斑は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは4%以下である。厚さ斑が20%を超えると、狭小部へ適用し難くなる傾向がある。なお、高分子層の厚さ斑は、例えば接触式の膜厚計にて被測定高分子層(フィルム)から無作為に10点程度の位置を抽出して厚さを測定し、下記式に基づき求めることができる。
高分子層(フィルム)の厚さ斑(%)
=100×(最大厚−最小厚)÷平均厚
高分子層においては、ハンドリング性および生産性を確保する為、高分子層中に粒子径が10〜1000nm程度の滑材(粒子)を、0.03〜3質量%程度、添加・含有させて、高分子層表面に微細な凹凸を付与して滑り性を確保してもよい。
<接着強度>
高分子層が積層された面は、高分子層に切り込みを入れると高分子層をシランカップリング剤層ごと無機基板から容易に分離できる領域である易剥離部と容易に分離できない領域である良好接着部とからなる。易剥離部と良好接着部とからなるようにするには薄膜に対して後述のパターン化を行うのが好ましい。パターン化を行った場合、薄膜のある部分が易剥離部、薄膜が無い部分が良好接着部となる。
良好接着部における無機基板と高分子層との接着強度は、易剥離部における無機基板と高分子層との接着強度の2倍以上であり、3倍以上であることが好ましく、さらに好ましくは5倍以上である。また、当該強度比は前記倍数以上で且つ100倍以下であることが好ましく、より好ましくは50倍以下である。なお、接着強度の測定方法については後述する。
良好接着部における無機基板と高分子層との接着強度は、易剥離部における無機基板と高分子層との接着強度の2倍未満であると、高分子層を無機基板から剥離する際に、良好接着部と易剥離部との接着強度差を利用してデバイス形成部を低ストレスにて剥離する事が困難となり、フレキシブル電子デバイスの収率を低下させてしまうおそれがある。逆に良好接着部と易剥離部との接着強度差が大きすぎると、易剥離部が無機基板から剥離したり、易剥離部にウキ、ブリスター(塗膜の膨れ)等が発生する原因となる場合がある。
良好接着部の接着強度が0.8N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.5N/cm以上、さらに好ましくは2.4N/cm以上、最も好ましくは3.2N/cm以上である。
また易剥離部の接着強度は、0.5N/cm以下であることが必須であり、より好ましくは0.38N/cm未満であり、さらに好ましくは0.28N/cm未満、さらに好ましくは0.18N/cm未満であり、なおさらに好ましくは0.08N/cm未満である。また、易剥離部の接着強度は0.003N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.006N/cm以上である。易剥離部の接着強度が所定の範囲に満たないと、プロセス中に高分子層や無機基板側に生じるストレスなどの影響により、易剥離部が無機基板から剥離したり、易剥離部にウキ、ブリスター等が発生する原因となる場合がある。
なお本発明においては、先に述べた易剥離部の接着強度が、好ましくは500℃ 10分間の熱処理を行った後においても十分に低い状態を維持するが好ましい。かかる条件を満足することにより、実際の加工プロセス中にて420℃以上、好ましくは460℃以上、なお好ましくは505℃以上の高温が用いられる場合についても、良好な易剥離性を維持できる。
<薄膜のパターン化>
薄膜は連続的に無機基板の全面に形成されていてもよいが、薄膜はパターン的に形成されているのが好ましい。本発明においては、薄膜が形成されていない部分が、良好接着部となる。すなわち、無機基板のリサイクルの際に無機基板上にシランカップリング剤層を介して高分子層が残存している部分である。好ましくは、薄膜は良好接着部が易剥離部を取り囲むようになっているのが好ましいので、薄膜は易剥離部を取り囲むようにパターン形成されていることが好ましい。薄膜層のパターン化手段については一般的なマスキング法、あるいは前面に薄膜を形成した後にレジストを用いてのエッチング法、リフトオフ法など一般的な手段で可能である。
パターン形状は、積層するデバイスの種類等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されず、必要なデバイスの形状が平面上に単独ないし多面状にタイリングされているパターンとすればよい。
以上のような薄膜、シランカップリング剤、高分子層の各々単独、あるいは組み合わせてパターン化処理を行うことによって、積層体において無機基板と高分子層との間の剥離強度が異なる良好接着部と易剥離部を有することとなり、高分子層に切り込みを入れて剥離することによってデバイスを搭載した高分子層を無機基板から容易に分離することが可能になる。
<フレキシブル電子デバイスの製造方法>
本発明において得られる積層体を用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いて積層体の高分子層上に電子デバイスを形成し、積層体から高分子層ごと剥離することで、フレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
本発明における電子デバイスとは、電気配線を担う配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどをいう。
本発明におけるデバイス構造体の製造方法においては、上述した方法で作製された積層体の高分子層上にデバイスを形成した後、前記積層体の易剥離部の高分子層に切り込みを入れて該高分子層を前記無機基板から剥離する。
前記積層体の易剥離部の高分子層に切り込みを入れる方法としては、刃物などの切削具によって高分子層を切断する方法や、レーザーと積層体を相対的にスキャンさせることにより高分子層を切断する方法、ウォータージェットと積層体を相対的にスキャンさせることにより高分子層を切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつ高分子層を切断する方法などがあるが、特に方法は限定されるものではない。例えば、上述した方法を採用するにあたり、切削具に超音波を重畳させたり、往復動作や上下動作などを付け加えて切削性能を向上させる等の手法を適宜採用することもできる。
デバイス付きの高分子層を無機基板から剥離する方法としては、特に制限されないが、ピンセットなどで端から捲る方法、高分子層の切り込み部分の1辺に粘着テープを貼着させた後にそのテープ部分から捲る方法、高分子層の切り込み部分の1辺を真空吸着した後にその部分から捲る方法等が採用できる。なお、剥離の際に、高分子層の切り込み部分に曲率が小さい曲がりが生じると、その部分のデバイスに応力が加わることになりデバイスを破壊するおそれがあるため、極力曲率の大きな状態で剥がすことが望ましい。例えば、曲率の大きなロールに巻き取りながら捲るか、あるいは曲率の大きなロールが剥離部分に位置するような構成の機械を使って捲ることが望ましい。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。剥離するフレキシブル電子デバイスが、表示デバイスのバックプレーンである場合、あらかじめ表示デバイスのフロントプレーンを貼りつけて、無機基板上で一体化した後に両者を同時に剥がし、フレキシブルな表示デバイスを得ることも可能である。
<仮支持基板のリユース>
本発明における高分子層積層基板においては、電子デバイスを剥離した後、高分子層積層基板から残存する高分子層を完全に除去し、簡便な洗浄処理等を行う事により、無機基板を再利用することができる。これは、易剥離部における薄膜とシランカップリング剤層との接着力が均一で安定しており、高分子層の剥離がスムースに行えるために、無機基板側に剥離残渣がほとんど残らないことによる。このことは高分子層を剥離する際の剥離面が、薄膜表面(薄膜とシランカップリング剤層との界面)になるためと考えられる。このため、高分子層を剥離した後では、無機基板に薄膜が形成された状態(以下、この状態の無機基板を薄膜積層無機基板という)を維持している。
高分子層に切り込みを入れて無機基板から剥離した場合、剥離を行っていない領域では高分子層が無機基板上に残存することとなる。無機基板上に残存した高分子層については、レーザー剥離やアルカリ薬液処理等の適切な処方によって除去する必要がある。
薄膜をパターン状に形成した場合、高分子層が剥離されなかった箇所については、高分子層の除去を行うと、シランカップリング剤層が露出することになる。しかし、前記除去によって、高分子層のみならずシランカップリング剤層の有機部分についても相当量が除去されているため、シランカップリング剤の無機成分、すなわちケイ酸ガラス成分を主体とした成分のみが無機基板上に残存することとなる。従って、良好接着部の領域(薄膜が形成されていなかった領域)では、高分子層の除去後であっても無機基板表面と近い性状の表面となる。
したがって、薄膜積層無機基板は、最初にシランカップリング剤層を形成したときと同様に再度シランカップリング剤層を形成して、シランカップリング剤層の上に高分子層を積層することが可能であり、リサイクル性の高い薄膜積層無機基板として、薄膜表面にシランカップリング剤層を形成し、シランカップリング剤層上に高分子層を積層し、高分子層上に電子デバイスを形成した後に高分子層に切り込みを入れて、高分子層を無機基板から剥離する、という一連のサイクルを繰り返して電子デバイスを作成することが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例における物性の評価方法は下記の通りである。
<ポリアミド酸溶液の還元粘度>
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液についてウベローデ型の粘度管を用いて30℃で測定した。
<ガラス転移温度>
DSC示差熱分析装置を用いて、室温から500℃までの範囲での構造変化に起因する吸放熱の有無から高分子層のガラス転移温度を求めた。いずれの高分子層においてもガラス転移温度は観察されなかった。
<シランカップリング剤層の厚さ>
シランカップリング剤層(SC層)の厚さ(nm)は、別途、洗浄したSiウエハ上に各実施例、比較例と同様の方法でシランカップリング剤を塗布乾燥させて得たサンプルを作製し、このSiウエハ上に形成したシランカップリング剤層の膜厚について、エリプソメトリー法にて、分光エリプソメータ(Photal社製「FE−5000」)を用いて下記の条件で測定した。
反射角度範囲 ; 45°から80°
波長範囲 ; 250nmから800nm
波長分解能 ; 1.25nm
スポット径 ; 1mm
tanΨ ; 測定精度±0.01
cosΔ ; 測定精度±0.01
測定 ; 方式回転検光子法
偏向子角度 ; 45°
入射角度 ; 70°固定
検光子 ; 11.25°刻みで0〜360°
波長 ; 250nm〜800nm
非線形最小2乗法によるフィッティングで膜厚を算出した。このとき、モデルとしては、Air/薄膜/Siのモデルで、
n=C3/λ4+C2/λ2+C1
k=C6/λ4+C5/λ2+C4
の式で波長依存C1〜C6を求めた。
<薄膜層の表面粗さ>
薄膜層表面の表面粗さRa値の計測は、表面物性評価機能付走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「SPA300/nanonavi」)を用いて行った。計測はDFMモードで行い、カンチレバーはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「DF3」又は「DF20」を使用し、スキャナーはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製「FS−20A」を使用し、走査範囲は10μm四方とし、測定分解能は512×512ピクセルとした。計測像について装置付属のソフトウエアで二次傾き補正を行った後、測定に伴うノイズが含まれる場合には適宜その他の平坦化処理(例えばフラット処理)を使用し、装置付属のソフトウエアでRa値を算出した。任意の3箇所について計測を行ってRa値を求め、それらの平均値を採用した。
<接着強度>
積層体の無機基板と高分子層(ポリイミドフィルム)との接着強度(180度剥離強度)は、JIS C6471に記載の180度剥離法に従い、下記条件で測定した。
装置名 : 島津製作所社製「オートグラフ(登録商標)AG−IS」
測定温度 : 室温
剥離速度 : 50mm/分
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 10mm
なお、測定は、積層体作製直後と、イナートオーブン中にて500℃10分間の熱処理後について行った。
<高分子層の引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度>
接着強度測定試験において剥離して得られた高分子フィルム(高分子層)を試験片として、引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ(登録商標);機種名AG−5000A」)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
<高分子層の厚さ>
接着強度測定試験において剥離して得られた高分子フィルム(高分子層)を試験片として、厚さをマイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて測定した。
<高分子層の線膨張係数(CTE)>
接着強度測定試験において剥離して得られた高分子フィルム(高分子層)から、さらに必要な試験片を切り出し、下記条件にて伸縮率を測定し、15℃の間隔(30℃〜45℃、45℃〜60℃、…)での伸縮率/温度を測定し、この測定を500℃まで行って、MD方向およびTD方向で測定した全測定値の平均値を線膨張係数(CTE)として算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製「TMA4000S」
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 500℃
昇温速度 ; 5℃/分
雰囲気 ; アルゴン
初荷重 ; 34.5g/mm2
<ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液の製造>
〔製造例1〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)398質量部と、パラフェニレンジアミン(PDA)147質量部とを、4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液W1を得た。
〔製造例2〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部とともに、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液W2を得た。
得られたポリアミド酸溶液(ポリイミド前駆体溶液)の特性を表1に示す。
Figure 0006981012
<金属薄膜の形成例1>
無機基板を超純粋を用いて超音波洗浄し、HEPAフィルターを通じた乾燥空気により十分に乾燥させた。次いで乾燥させた無機基板を、ガス導入機構とシャッターのあるマグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内にセットし、50mm×80mmの開口部を複数有し、開口部間12mmをとしたアルミニウム製マスクにて無機基板表面をマスキングし、チャンバー内に5mTorrとなるようにアルゴンガスを導入し、金属モリブデンターゲットを用い、DC電力印加によるスパッタリングを10秒間行い、無機基板表面にモリブデン薄膜を形成した。
なお、事前に同条件下にて600秒間のスパッタリングを行い得られたアルミニウム薄膜の膜厚を触針式の段差計にて測定したところ、582nmであった。スパッタリング時間と堆積速度との関係はほぼ直線的であることが知られているため、比例計算により10秒間にて得られたモリブデン薄膜の厚さは9.7nmと見積もった。
<金属薄膜の形成例2>
無機基板を超純粋を用いて超音波洗浄し、HEPAフィルターを通じた乾燥空気により十分に乾燥させた。次いで乾燥させた無機基板を、ガス導入機構とシャッターのあるマグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内にセットし、50mm×80mmの開口部を複数有し、開口部間12mmをとしたアルミニウム製マスクにて無機基板表面をマスキングし、チャンバー内に5mTorrとなるようにアルゴンガスを導入し、金属タングステンターゲットを用い、DC電力印加スパッタリングを30秒間行い、無機基板表面にタングステン薄膜を形成した。
なお、事前に同条件下にて3600秒間のスパッタリングを行い、得られた薄膜の膜厚を触針式の段差計にて測定したところ、407nmであった。スパッタリング時間と堆積速度との関係はほぼ直線的であることが知られているため、比例計算により30秒間にて得られたタングステン薄膜の厚さは3.4nmと見積もった。
<金属薄膜の形成例3>
無機基板を超純粋を用いて超音波洗浄し、HEPAフィルターを通じた乾燥空気により十分に乾燥させた。次いで乾燥させた無機基板を、ガス導入機構とシャッターのあるマグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内にセットし、50mm×80mmの開口部を複数有し、開口部間12mmをとしたアルミニウム製マスクにて無機基板表面をマスキングし、チャンバー内に5mTorrとなるようにアルゴンガスを導入し、金属タングステンターゲットの上に金属モリブデンチップを乗せた状態にてを用い、DC電力印加スパッタリングを30秒間行い、無機基板表面にモリブデンとタングステンの合金薄膜を形成した。
なお、事前に同条件下にて3600秒間のスパッタリングを行い、得られた薄膜の膜厚を触針式の段差計にて測定したところ、523nmであった。スパッタリング時間と堆積速度との関係はほぼ直線的であることが知られているため、比例計算により30秒間にて得られたタングステン薄膜の厚さは4.4nmと見積もった。また蛍光X線で求めたモリブデンとタングステンの合金の比率はモリブデン:タングステン=14:86(元素比)であった。
<無機基板へのシランカップリング剤層形成>
<塗布例1(スピンコート法)>
シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−903」)をイソプロピルアルコールによって0.5質量%に希釈したシランカップリング剤希釈液を調製した。前記無機基板をジャパンクリエイト社製スピンコーターに設置して、イソプロピルアルコール70mlを回転中央部に滴下して500rpmにて液の振り切りと乾燥を行い、引き続き、前記シランカップリング剤希釈液約35mlを回転中央部に滴下して、まず500rpmにて10秒間回転させ、次いで回転数を1500rpmまで上げて20秒間回転させ、シランカップリング剤希釈液を振り切った。次に、クリーンベンチ内に載置されている100℃に加熱したホットプレートに、シランカップリング剤が塗布された前記無機基板をシランカップリング剤塗布面が上になるように載せ、約3分間加熱して、シランカップリング剤スピンコート塗布基板とした。
<塗布例2(気相塗布法)>
ホットプレートを有する真空チャンバーを用い、以下の条件にて無機基板へのシランカップリング剤塗布を行った。
シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM−903」:3−アミノプロピルトリメトキシシラン)100質量部をシャーレに満たし、ホットプレートの上に静置した。このときホットプレート温度は25℃である。次いでシランカップリング剤の液面から垂直方向に300mm離れた箇所に、無機基板を薄膜面を下にして水平に保持し、真空チャンバーを閉じ、大気圧にて酸素濃度が0.1体積%以下となるまで窒素ガスを導入した。次いで窒素ガスの導入を止め、チャンバー内を3×10-4Paまで減圧し、ホットプレート温度を120℃まで昇温し、10分間保持してシランカップリング剤蒸気への暴露を行った。その後、ホットプレート温度を下げ、同時に真空チャンバー内にクリーンな窒素ガスを静かに導入して大気圧まで戻し、ガラス板を取り出し、クリーン環境下にて100℃のホットプレートに、シランカップリング剤塗布面を上にして載せ、約3分間熱処理を行い、シランカップリング剤気相塗布基板を得た。
<実施例1>
<積層体の作製と初期特性の評価>
無機基板として、8インチの単結晶シリコンウェハを用い、モリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜層の形成例1によるモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜層を形成し、さらにモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜層側にスピンコート法によりシランカップリング剤処理を行った。
次いでポリアミド酸溶液W1をバーコーターにてウェハの薄膜形成面に所定の乾燥厚さとなるように塗布し、防爆仕様のドライオーブンにて120℃10分間乾燥し、次いで窒素置換したイナート炉にて220℃にて10分間熱処理し、次いで10℃/分の昇温速度にて450℃まで温度を上げ、5分間保持した後、室温まで自然乾燥してポリアミド酸をポリイミドに転化させ、ポリイミド/無機基板からなる積層体を得た。
得られた積層体におけるポリイミド層の接着強度を積層体作製直後と、イナートオーブン中にて500℃10分間の熱処理後について行った。結果を表2に示す。ここに易剥離部はモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜層が形成されている部分、良好接着部はマスキングによりモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜層が形成されていない部分である。
以下、実施例1と同様に、無機基板、薄膜形成法、ポリイミドフィルム、シランカップリング剤塗布方法、ポリイミドフィルムのプラズマ処理有無などの条件を適宜変更して積層体を作製し、特性を評価した。結果を表2、表3、表4に示す。
<ポリイミド前駆体フィルムの製造>
ポリアミド酸溶液W2を、スリットダイを用いて厚さ125μm(厚さ斑の絶対値 4μm)、幅1050mmの長尺ポリエチレンテレフタレートフィルムの平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が20μmとなるように塗布し、120℃にて15分間乾燥し、その後、セパレーターフィルムとして厚み20μm(厚さ斑の絶対値:2μm)の長尺ポリエチレンテレフタレートフィルムの平滑面(無滑材面)をポリイミド前駆体フィルム上に重ねるようにして偏心が150μmとなるように装着された内径の真円度が99.90%であり、外径の真円度が99.90%である巻き芯を用い、巻き取りテンション120Nの条件でロール状に巻きとり、ポリイミド前駆体フィルムロール(GF1)を得た。
実施例1におけるポリアミド酸溶液W1のコーティングに替えて、ポリイミド前駆体フィルムロールGF2から、所定量を巻きだし、セパレーターフィルムを剥離した後、ロールラミネータにて無機基板にラミネートとした。次いで窒素置換したイナート炉にて220℃にて10分間熱処理し、次いで10℃/分の昇温速度にて450℃まで温度を上げ、5分間保持した後、室温まで自然乾燥してポリアミド酸をポリイミドに転化させ、ポリイミド/無機基板からなる積層体を得た。
得られた積層体におけるポリイミド層の接着強度を積層体作製直後と、イナートオーブン中にて500℃10分間の熱処理後について行った。以下同様に評価した結果を表2、表3、表4に示す。
<ポリイミドフィルムの製造例>
ポリイミド前駆体フィルムロール(GF2)からフィルムを巻きだし、セパレーターフィルムと、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、ポリイミド前駆体フィルム部分をピンテンターに導き、端部をピンにて固定した後、220℃にて5分間、500℃にて5分間の熱処理を行い、ポリイミドフィルムPF2を得た。得られたポリイミドフィルムを真空プラズマ装置に装填し、窒素プラズマ処理にて表面活性化を行った。次いでシランカップリング剤処理した薄膜付き無機基板のシランカップリング剤層に100℃のロールラミネーターにて仮ラミを行い、次いで200℃のドライオーブンにて10分間追加熱を行いポリイミド/無機基板からなる積層体を得た。以下同様に評価した結果を表2、表3、表4に示す。
Figure 0006981012
Figure 0006981012
Figure 0006981012
なお、表中「ガラス」は、370mm×470mm、厚さ1.1mmのソーダガラス、「ウェハ」は8インチ、厚さ0.7mmののシリコン単結晶ウェハを用いた。未研磨ウェハは8インチ、厚さ0.7mmの単結晶シリコンウェハの未研磨品を用いた。
本発明の薄膜上に形成された高分子フィルムは500℃熱処理後も低い接着強度を示し、良好に剥離可能であることが解る。またさらに、本発明の薄膜上から得られたフィルムは、薄膜がない部分(良好接着部)から得られたフィルムに比較して、引っ張り破断強度が大きく、また伸び率も高いことが解る。
<応用例1>
実施例8にて得られた積層体を用い、以下の工程により、ポリイミドフィルム上にボトムゲート型構造を有する薄膜トランジスタレイを、易剥離部上に作製した。
積層体のポリイミドフィルム側全面に反応性スパッタリング法を用いてSiONからなる100nmのガスバリア膜を形成した。次いで、厚さ80nmのアルミニウム層をスパッタリング法にて形成し、フォトリソグラフ法によりゲート配線とゲート電極を形成した。続いて、スリットダイコーターを用いてエポキシ樹脂系のゲート絶縁膜(厚さ80nm)を形成した。さらに、スパッタリング法にて5nmのCr層、40nmの金層を形成し、フォトリソグラフ法にてソース電極とドレイン電極を形成した。加えて、スリットダイコーターを用いて、絶縁層兼ダム層となるエポキシ樹脂を塗布し、UV−YAGレーザーによるアブレーションにて、ソース電極とドレイン電極を含む半導体層用の厚さ250nmのダム層を直径100μmの円形となるように形成し、また上部電極との接続点となるビア形成も同時に行った。そして、インクジェット印刷法により有機半導体であるポリチオフェンをダム内に塗出、ビア部には銀ペーストを埋め込み、さらに上部電極としてアルミ配線を形成し640×480ピクセルを有する薄膜トランジスタレイを形成した。
得られた薄膜トランジスタレイをバックプレーンとし、フロントプレーンに電気泳動表示媒体を重ねることにより、ディスプレイ素子とし、トランジスタの収率と表示性能を、各ピクセルのON/OFFにて判定した。その結果、いずれの積層体を用いて作製された薄膜トランジスタレイでは、いずれも表示性能は良好であった。
また、薄膜トランジスタレイにフロントプレーンを重ねた後に、薄膜パターン外周の0.5mm程度内側に沿ってUV−YAGレーザーにて高分子層部を焼き切り、切れ目の端部から薄いカミソリ上の刃を用いてすくい上げるように剥離を行い、フレキシブル電気泳動型ディスプレイを得た。得られた電気泳動型ディスプレイは良好な表示特性を示し、5mmφの丸棒に巻き付けても性能劣化は見られなかった。
<応用例2>
応用例1にてフレキシブル電気泳動ディスプレイデバイスを剥離した後に、無機基板を10%の水酸化ナトリウム水溶液に室温にて20時間浸積した。その後、水洗を行い、さらに液晶基板用ガラス洗浄装置にてクリーニング洗浄を行い、乾燥後にUVオゾン洗浄を3分間行った。以後、前記<無機基板へのシランカップリング剤層形成>の工程に戻り、それ以降の工程については最初に積層体を作製したときと同様の作製法を行うことにより積層体を得た。得られた積層体の品位は良好で、十分にリサイクル使用が可能な状態であった。
<応用例3>
実施例7にて得られた積層体を、開口部を有するステンレス製の枠を被せてスパッタリング装置内の基板ホルダーに固定した。基板ホルダーと積層体の支持体とを密着するように固定して、基板ホルダー内に冷媒を流すことによって、積層体の温度を設定できるようにし、積層体の温度を2℃に設定した。まず、積層体のポリイミドフィルム表面にプラズマ処理を施した。プラズマ処理条件は、アルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧1×10-3Torrの条件とし、処理時の温度は2℃、処理時間は2分間とした。次いで、周波数13.56MHz、出力450W、ガス圧3×10-3Torrの条件で、ニッケル−クロム(Cr10質量%)合金のターゲットを用いて、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、1nm/秒のレートで厚さ11nmのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成した。次いで、積層体の温度を2℃に設定し、スパッタリングを行った。そして、10nm/秒のレートで銅を蒸着させ、厚さ0.22μmの銅薄膜を形成した。このようにして、各積層体から下地金属薄膜形成フィルム付きの積層板を得た。なお、銅およびNiCr層の厚さは蛍光X線法によって確認した。
次に、各フィルムからの下地金属薄膜形成フィルム付きの積層板をCu製の枠に固定し、硫酸銅めっき浴を用い、電解めっき液(硫酸銅80g/l、硫酸210g/l、HCl、光沢剤少量)に浸漬し、電気を1.5A/dm2流すことにより、厚さ4μmの厚付け銅メッキ層(厚付け層)を形成した。引き続き120℃で10分間熱処理して乾燥し、積層体の高分子層面に銅箔層を形成した。
<応用例4>
実施例10にて得られた積層体を用い、以下の工程により、ポリイミドフィルム上に真空蒸着法を用いてタングステン膜(膜厚75nm)を形成し、さらに大気にふれることなく、絶縁膜として酸化シリコン膜(膜厚150nm)を積層形成した。次いで、プラズマCVD法で下地絶縁膜となる酸化窒化シリコン膜(膜厚100nm)を形成し、さらに大気にふれることなく、アモルファスシリコン膜(膜厚54nm)を積層形成した。
次いでアモルファスシリコン膜の水素元素を除去し結晶化を促進し、ポリシリコン膜を形成する為に510℃の熱処理を10分間行った。
得られたポリシリコン膜の易剥離部にある部分を用いてTFT素子を作製した。まず、ポリシリコン薄膜をパターニングを行って所定の形状のシリコン領域を形成し、適宜、ゲート絶縁膜の形成、ゲート電極の形成、活性領域へのドーピングによるソース領域またはドレイン領域の形成、層間絶縁膜の形成、ソース電極およびドレイン電極の形成、活性化処理を行い、ポリシリコンを用いたPチャンネルTFTのアレイを作製した。
TFTアレイ外周の0.5mm程度内側に沿ってUV−YAGレーザーにて高分子層部を焼き切り、切れ目の端部から薄いカミソリ上の刃を用いてすくい上げるように剥離を行い、フレキシブルなTFTアレイを得た。剥離は極微力で可能であり、TFTにダメージを与えること無く剥離することが可能であった。得られたフレキシブルTFTアレイは3mmφの丸棒に巻き付けても性能劣化は見られず、良好な特性を維持した。
得られた各銅箔層に対して、フォトレジスト(シプレー社製「FR−200」)を塗布乾燥した後に、ガラスフォトマスクでオフコンタクト露光し、さらに1.2質量%KOH水溶液にて現像した。次に、HClおよび過酸化水素を含む塩化第二銅のエッチングラインで、40℃、2kgf/cm2のスプレー圧でエッチングし、ライン/スペース=20μm/20μmのライン列をテストパターンとして形成した。次いで、0.5μm厚に無電解スズメッキを施した後、125℃で1時間のアニール処理を行い、配線パターンを得た。
得られた配線パターンを光学顕微鏡で観察し、またテストパターンを用いて断線/短絡の有無をチェックした。結果、いずれも配線パターンには、断線、短絡は無く、パターン形状も良好であった。次いで、応用例1と同様の手法にてガラス板から高分子層を剥離し、フレキシブル配線基板とした。得られたフレキシブル配線板の屈曲性は良好であった。
本発明の高分子層積層基板の易剥離部は、ポリイミドフィルム上に電子デバイスを形成した後に、電子デバイスが載置されたポリイミドフィルムを無機基板から容易に、非常に低い負荷にて剥離することが可能である。また良好接着部は、デバイス製造の種々の工程中にも、安定してフィルムと無機基板を接着しているため、工程中に剥がれる等の問題が生じない。前記剥離を行った無機基板をリサイクルしても、電子デバイスが載置されたポリイミドフィルムを無機基板からリサイクル前と同様に容易に剥離することが可能であり、特にフレキシブルな電子デバイスの製造に有用であり、産業界への寄与は大きい。

Claims (8)

  1. 一辺が少なくとも350mm以上の長方形、または、直径が150mm以上の円形である無機基板の少なくとも片面の一部に薄膜が連続又は不連続に形成されたデバイス形成用仮支持基板であり、
    前記薄膜がモリブデンまたはタングステンから選択される少なくとも一種の金属の薄膜であり、
    前記薄膜の最表面が純度85%以上のモリブデンないしタングステンであり、
    前記薄膜表面の表面粗度Raが10nm以下であることを特長とするデバイス形成用仮支持基板。
  2. 請求項1に記載のデバイス形成用仮支持基板の薄膜形成面に、高分子材料の前駆体溶液を塗布、乾燥することにより高分子層を形成し、次いで前記高分子層の上に420℃以上のプロセス温度を含む加工工程にて電子デバイスを形成し、電子デバイスを高分子層ごと仮支持基板から剥離することを特長とするデバイスの製造方法。
  3. 請求項2に記載のデバイスの製造方法において、仮支持基板の薄膜形成面にシランカップリング剤処理を行うことを特長とするデバイスの製造方法。
  4. 請求項1に記載のデバイス形成用仮支持基板の薄膜形成面に、高分子材料の前駆体からなるフィルムラミネートすることにより高分子層を形成し、次いで前記高分子層の上に420℃以上のプロセス温度を含む加工工程にて電子デバイスを形成し、電子デバイスを高分子層ごと仮支持基板から剥離することを特長とするデバイスの製造方法。
  5. 請求項4に記載のデバイスの製造方法において、仮支持基板の薄膜形成面にシランカップリング剤処理を行うことを特長とするデバイスの製造方法。
  6. 請求項1に記載のデバイス形成用仮支持基板の薄膜形成面に、高分子フィルムをラミネートすることにより高分子層を形成し、高分子層の上に420℃以上のプロセス温度を含む加工工程にて電子デバイスを形成し、電子デバイスを高分子層ごと仮支持基板から剥離することを特長とするデバイスの製造方法。
  7. 請求項6に記載のデバイスの製造方法において、仮支持基板の薄膜形成面にシランカップリング剤処理を行うことを特長とするデバイスの製造方法。
  8. 前記高分子がポリイミド樹脂であることを特長とする請求項2から7のいずれかに記載のデバイスの製造方法。
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