JP6210201B2 - フレキシブル電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明者らは、このような事情に鑑み、機能素子を形成するための高分子フィルムと支持体との積層体として、耐熱性に優れ強靭で薄膜化が可能なポリイミドフィルムを、カップリング剤を介して無機物からなる支持体(無機層)に貼り合わせてなる積層体を提案した(特許文献1〜3)。
そこで本発明者らは、さらに改良を重ね、カップリング剤処理を行った無機基板に、部分的に不活性化処理を行い、カップリング剤の活性度の高い部分と低い部分を形成し、高分子フィルムを貼り合わせた際に、比較的剥離しにくい良接着部分と、比較的剥離しやすい易剥離部とを作り、易剥離部に電子デバイスを形成し、高分子フィルムの易剥離部/良接着部との境目に切り込みを入れて、易剥離部のみを剥離することにより、電子デバイスに与えるストレスを減じた状態にて剥離可能とする技術を提案した(特許文献4)。
さらに良接着部と易剥離部を設けることにより、高分子フィルム上に形成した電子デバイスを、高分子フィルムごと無機基板から比較的容易に剥離することができる技術の提案により、フレキシブルな電子デバイスの実現可能性は高まったと考えられる。しかしながら、かかる技術の提案においても、必ずしも全ての問題点が解決されたわけではない。
しかしながら、接着力が比較的小さくなったとしても、硬質な基板から柔軟な高分子フィルムを剥離する場合には、高分子フィルムに変形が生じ、その結果、電子デバイス部も変形するため、常に電子デバイスの破壊が生じる危険が存在して生産性が低下する、という新たな課題を本願発明者らは見出した。以下に述べるように、高分子フィルムの伸張変形と曲げ・圧縮変形は2律背反の関係にあり、両者を同時に低減させつつ高分子フィルムを無機基板から剥離することは非常に困難である。
剥離の際の剥離角度、すなわち、無機基板と剥離されるフィルムが成す角度は、大きな方が剥離しやすい。剥離の際には、高分子フィルムを引っ張る力により高分子フィルムに張力が加わり、高分子フィルムは微小な伸びを生ずる訳であるが、高分子フィルム上に形成された電子デバイスは、この微小な伸びにより容易に破壊される。一般に剥離角度が90度の場合が、剥離に要する力と、高分子フィルムに加わる引っ張り力が等しくなるため、剥離時の高分子フィルムの伸びを最小に押さえることが出来る。
一方、剥離角度が90度近傍となると、高分子フィルムには大きな曲げ応力が加わる。特に、電子デバイスが形成された高分子フィルムの表面側には強い曲げと、圧縮応力が加わり、伸長された場合と同様に電子デバイスの破壊が生ずる場合がある。
剥離角度を鋭角化することにより、電子デバイス部の曲げと圧縮応力は小さくなるが、反面、剥離力すなわち、高分子フィルムを引っ張る力の垂直成分は小さくなり、剥離に支障を来すようになる。十分な剥離力(引っ張り力の垂直成分)を得るためには引っ張り力を上げざるを得ず、その場合にはフィルムの伸長力が大となり、電子デバイスの伸びによる破壊が生じ易くなる。
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討した結果、電子デバイスを破壊することなく安全に剥離が可能な剥離方法を見出し、本発明を完成した。より好適には、高分子フィルムと無機基板との接着力が所定の範囲にある場合において、さらに安全に剥離することが可能である。
1.無機基板に高分子フィルムを接着し、次いで高分子フィルム上に電子デバイスを形成した後に該高分子フィルムを該無機基板から剥離するフレキシブル電子デバイスの製造方法において、
該剥離時における該高分子フィルムの引張歪みが0.3%以下であり、該無機基板と該高分子フィルムの剥離角度θが π/6 ラジアン(30度) 以下となる条件下にて剥離するに十分な引っ張り力をフィルムに与えて剥離を行う工程を含むことを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
2.無機基板に高分子フィルムを接着し、次いで高分子フィルム上に電子デバイスを形成した後に該高分子フィルムを該無機基板から剥離するフレキシブル電子デバイスの製造方法において、
該剥離時における該高分子フィルムの引張歪みが0.3%以下であり、該無機基板と該高分子フィルムの剥離角度θが π/6 ラジアン(30度) 以下となるようにフィルム厚さを選択することを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
3.前記高分子フィルムの厚さが12μm以上、ヤング率が6GPa以上であり、剥離時における前記無機基板と前記高分子フィルムの90度剥離法による接着強度が0.05N/cm以上、1.0N/cm未満であることを特徴とする1.又は2.に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
4.前記高分子フィルムの電子デバイス形成面に、滑材粒子による突起が実質的に存在しない事を特徴とする1.〜3.のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
5.前記高分子フィルムの、少なくとも無機基板との接着面側に表面活性化処理がなされていることを特徴とする、1.〜4.のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
6.前記高分子フィルム表面の活性化が少なくとも、プラズマ処理とUV/オゾン処理の2段階以上でのステップで行われることを特徴とする、1.〜5.のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
7.前記高分子フィルムと無機基板を貼り合わせる際の高分子フィルムの吸湿率が、1.8%以下であることを特徴とする、1.〜6.のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
8.前記高分子フィルムの、無機基板との接着面側の滑剤粒子含有率が0.12質量%以下であることを特徴とする、1.〜7.のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
高分子フィルムのバネ定数kは
k=F/ΔL F:張力、ΔL:変位
フィルムのヤング率Eは
E=f/e f:応力、e:歪み
歪みeは
e=ΔL/L L:長さ
各々代入して力Fを求めると
F=S・E・x/L=S・E・e=W・t・E・e
が得られる。ここに S:断面積=フィルム幅W×フィルム厚さt
剥離角度θが鋭角(90度未満)である場合、フィルム剥離に供される90度方向の分力Fvは
Fv=Fsinθ
である。
すなわち、高分子フィルムの伸びを所定範囲内に収めるためには、高分子フィルムと無機基板との接着力が、この数値より小さいことが必要となることが理解出来る。
本発明では予めフィルムの物性値から、剥離する際に加えることができる張力の限界値を見積もり、さらに隔離角度を極力抑えた状態にて、高分子フィルムを剥離させるに足る剥離力を得ることが出来るように、フィルムの張力と剥離角を調整して高分子フィルム表面に形成された電子デバイスへのストレスを最小限に抑えながら剥離する。
フックの法則 F=k・ΔL
k:バネ定数、
F:力
ヤング率 E=f/es
f:応力=F/S
S:フィルム断面積=単位幅W×t t:フィルム厚
を代入すれば、
es=F/S・E=F/(W・t・E) で与えられる。
剥離角度θは、好ましくはπ/12(15度)ラジアン、さらに好ましくはπ/24(7.5度)ラジアンである。 剥離角度がこの範囲を超えると、高分子フィルム上に形成された電子デバイスに圧縮歪みによる不具合が発生する確率が著しく上昇する。
本発明においては、まずフィルムに加える張力と剥離角度を調整し、それでは達成できない場合にフィルムの厚さを変えることにより、剥離の際の引っ張り歪みを所定の値以下に抑えることが好ましい。
本発明においては高分子フィルムの支持体として無機基板を用いる。無機基板とは無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス板、セラミック板、シリコンウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がなお好ましく、1.3mm以下がなお好ましい。厚さの加減については特に制限されないが、0.07mm以上、好ましくは0.15mm以上、なお好ましくは0.3mm以上が好ましく用いられる。
本発明における高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル、その他の共重合ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、その他の共重合アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、フッ素化ポリイミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェノール、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン等のフィルムを用いることが出来る。本発明において特に効果が顕著・有用であるものは耐熱性が100℃以上の高分子、所謂エンジニアリングプラスチックのフィルムである。ここに耐熱性とはガラス転移温度ないしは熱変形温度を云う。
本発明において、ヤング率の上限は特に限定されないが、現実的には15GPa程度である。ヤング率が高すぎる素材は、フィルムが脆く、割れやすくなることが多いため、フレキシブル電子デバイス用の基材としては好ましくない。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
ポリイミドフィルムのような溶液製膜法を用いて得られる高分子フィルムの場合にも同様で、例えば、ポリアミド酸溶液(ポリイミドの前駆体溶液)として、滑材(好ましくは平均粒子径0.05〜2.5μm程度)をポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%〜50質量%(好ましくは0.04〜3質量%、より好ましくは0.08〜1。2質量%)含有したポリアミド酸溶液と、滑材を含有しないか又はその含有量が少量(好ましくはポリアミド酸溶液中のポリマー固形分に対して0.02質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満)である2種のポリアミド酸溶液を用いて製造することができる。
ポリイミドフィルムの場合、例えば、i)一方のポリイミドフィルムを作製後、このポリイミドフィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布してイミド化する方法、ii)一方のポリアミド酸溶液を流延しポリアミド酸フィルムを作製後このポリアミド酸フィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布した後、イミド化する方法、iii)共押し出しによる方法、iv)滑材を含有しないか又はその含有量が少量であるポリアミド酸溶液で形成したフィルムの上に、滑材を多く含有するポリアミド酸溶液をスプレーコート、Tダイ塗工などで塗布してイミド化する方法などを例示できる。本発明では、上記i)ないし上記ii)の方法を用いることが好ましい。
本発明において無機基板と高分子フィルムとの接着手段としては、粘着剤としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの公知の接着剤、粘着剤を用いることができる。しかしながら、本発明で好ましい接着手段は、厚さが5μm以下の、極薄い、接着・粘着層による接着手段、ないしは、好ましくは実質的に接着剤・粘着剤を用いない、接着手段が好ましい。より好ましい接着手段としては、後述のシランカップリング剤を用いる方法が挙げられる。
本発明では、無機基板側に、シランカップリング剤処理、UVオゾン処理などの有機化処理、活性化処理を行い、同様に高分子フィルム側にも真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、イトロ処理、UVオゾン処理、活性ガスへの暴露処理などの活性化処理を行い、両処理面を密着させて加圧、加熱処理を行う接合方法を用いることができる。
本発明におけるシランカップリング剤は、無機基板と高分子フィルムとの間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
本発明におけるシランカップリング剤の塗布方法としては、液相での塗布方法、気相での塗布方法を用いることが出来る。
液相での塗布方法としては、シランカップリング剤をアルコールなどの溶媒で希釈した溶液を用いて、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、コンマコート法、アプリケーター法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の一般的な液体塗布方法を例示することが出来る。液相での塗布方法を用いた場合、塗布後に速やかに乾燥し、さらに100±30℃程度で数十秒〜10分程度の熱処理を行うことが好ましい。熱処理により、シランカップリング剤と被塗布面の表面とが化学反応により結合される。
シランカップリング剤を加温する環境は、加圧下、略常圧下、減圧下のいずれでも構わないが、シランカップリング剤の気化を促進する場合には略常圧下ないし減圧下が好ましい。多くのシランカップリング剤は可燃性液体であるため、密閉容器内にて、好ましくは容器内を不活性ガスで置換した後に気化作業を行うことが好ましい。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する時間は特に制限されないが、20時間以内、好ましくは60分以内、さらに好ましくは15分以内、なおさらに好ましくは1分以内である。
無機基板をシランカップリング剤に暴露する間の無機基板温度は、シランカップリング剤の種類と、求めるシランカップリング剤層の厚さにより−50℃から200℃の間の適正な温度に制御することが好ましい。
シランカップリング剤に暴露された無機基板は、好ましくは、暴露後に、70℃〜200℃、さらに好ましくは75℃〜150℃に加熱される。かかる加熱によって、無機基板表面の水酸基などと、シランカップリング剤のアルコキシ基やシラザン基が反応し、シランカップリング剤処理が完了する。加熱に要する時間は10秒以上10分程度以内である。温度が高すぎたり、時間が長すぎる場合にはカップリング剤の劣化が生じる場合がある。また短すぎると処理効果が得られない。なお、シランカップリング剤に暴露中の基板温度が既に80℃以上である場合には、事後の加熱を省略することも出来る。
本発明では、無機基板のシランカップリング剤塗布面を下向きに保持してシランカップリング剤蒸気に暴露することが好ましい。液相の塗布方法では、必然的に塗布中および塗布前後に無機基板の塗布面が上を向くため、作業環境下の浮遊異物などが無機基板表面に沈着する可能性を否定できない。しかしながら気相による塗布方法では無機基板を下向きに保持することが出来るため。環境中の異物付着を大幅に減ずることが可能となる。
なおシランカップリング剤処理前の無機基板表面を短波長UV/オゾン照射などの手段により清浄化すること、ないしは液体洗浄剤で清浄化すること等は、有意義な好ましい操作である。
本発明では、シランカップリング剤処理のみでは、無機基板と高分子フィルムの接着力が強くなり過ぎ、剥離に支障をきたす場合がある。シランカップリング剤の塗布量を減じることにより調整は可能であるが、処理斑が出やすいため、本発明ではシランカップリング剤処理の後に、UVオゾン処理などを行い、シランカップリング剤により導入される官能基の減活性化を行う手法を採用することが好ましい。
本発明において用いられる高分子フィルムには表面活性化処理を行うことが好ましい。該表面活性化処理によって、高分子フィルム表面は官能基が存在する状態(いわゆる活性化した状態)に改質され、無機基板に対する接着性が向上する。
本発明における表面活性化処理とは、乾式、ないし湿式の表面処理である。本発明の乾式処理としては、紫外線、電子線、X線などの活性エネルギー線を表面に照射する処理、コロナ処理、真空プラズマ処理、常圧プラズマ処理、火炎処理、イトロ処理等を用いることが出来る。湿式処理としては、フィルム表面を酸ないしアルカリ溶液に接触させる処理を例示できる。本発明に置いて好ましく用いられる表面活性化処理は、プラズマ処理であり、プラズマ処理と湿式の酸処理の組み合わせ、UVオゾン処理である。
かかる表面活性化処理は高分子表面を清浄化し、さらに活性な官能基を生成する。生成した官能基は、カップリング剤層と水素結合ないし化学反応により結びつき、高分子フィルム層とカップリング剤層とを接着することが可能となる。
本発明では、プラズマ処理のみでは、無機基板と高分子フィルムの接着力が強くなり過ぎ、剥離に支障をきたす場合がある。プラズマ処理における処理時間の短縮、投入パワーの低減などにより調整は可能であるが、処理斑が出やすいため、本発明ではプラズマ処理の後に、UVオゾン処理などを行いプラズマ処理効果の変成化を行う手法を採用することが好ましい。
プラズマ処理においては高分子フィルム表面をエッチングする効果も得ることが出来る。特に滑剤粒子を比較的多く含む高分子フィルムにおいては、滑剤による突起が、フィルムと無機基板との接着を阻害する場合がある。この場合、プラズマ処理によって高分子フィルム表面を薄くエッチングし、滑剤粒子の一部を露出せしめた上で、フ酸にて処理を行えば、フィルム表面近傍の滑剤粒子を除去することが可能である。
本発明では、活性化された無機基板表面と、活性化された高分子フィルム表面を重ね合わせ、加熱・加圧することにより接着を行うことができる。
加圧・加熱処理は、例えば、大気圧雰囲気下あるいは真空中で、プレス、ラミネート、ロールラミネート等を、加熱しながら行えばよい。またフレキシブルなバッグに入れた状態で加圧加熱する方法も応用できる。生産性の向上や、高い生産性によりもたらされる低加工コスト化の観点からは、大気雰囲気下でのプレスまたはロールラミネートが好ましく、特にロールを用いて行う方法(ロールラミネート等)が好ましい。
加圧加熱処理の際の温度としては、用いる高分子フィルムの耐熱温度を超えない範囲にて行う。非熱可塑性のポリイミドフィルムの場合には150℃〜400℃、さらに好ましくは250℃〜350℃での処理が好ましい。
また加圧加熱処理は、上述のように大気圧雰囲気中で行うこともできるが、全面の安定した接着強度を得る為には、真空下で行うことが好ましい。このとき真空度は、通常の油回転ポンプによる真空度で充分であり、10Torr以下程度あれば充分である。
加圧加熱処理に使用することができる装置としては、真空中でのプレスを行うには、例えば井元製作所製の「11FD」等を使用でき、真空中でのロール式のフィルムラミネーターあるいは真空にした後に薄いゴム膜によりガラス全面に一度に圧力を加えるフィルムラミネーター等の真空ラミネートを行うには、例えば名機製作所製の「MVLP」等を使用できる。
かかる吸湿された水分は、その量が多すぎると、後工程で熱が加わった際に、ブリスターの原因となる。一方で量が少なすぎると、無機基板との接着性が不安定になる場合がある。すなわち、高分子フィルムと無機基板との各々の表面における化学的反応は、高分子フィルムに内包された水分によって影響されるのである。高分子フィルムの吸湿率は1.5%如何好ましく1.2%以下が好ましい。また吸湿率の下限は0.1%、好ましくは0.2%、さらに好ましくは0.4%である。
本発明の積層体を用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いて積層体の高分子フィルム上に電子デバイスを形成し、積層体から高分子フィルムごと剥離することで、フレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
本発明における電子デバイスとは、電気配線を担う配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどを云う。
高分子フィルムを支持体から剥離する際の「きっかけ」を作る方法としては、ピンセットなどで端から捲る方法、デバイス付きの高分子フィルムの切り込み部分の1辺に粘着テープを貼着させた後にそのテープ部分から捲る方法、デバイス付きの高分子フィルムの切り込み部分の1辺を真空吸着した後にその部分から捲る方法、あるいは予め高分子フィルムの一部を無機板に接着しない、ないし高分子フィルムの一部を無機基板からはみ出させることにより掴みシロを得る方法等を採用できる。
無機基板と高分子フィルムの90度剥離における接着強度は、事前に、同条件でラミ試験を行い、さらに電子デバイス形成工程そのもの、ないし、等価な熱履歴の後に、測定されたものである。本発明は電子デバイス形成後の剥離を課題にしているため、かかる接着強度は、電子デバイス形成工程を実際に通すか、ないしは擬似的に等価なプロセスを通過させた後の接着強度を基準にしなければならない。本発明で高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを用いる場合には、アモルフェスシリコンの脱水素工程と多結晶化工程を想定した420℃30分間の加熱処理後の接着力を採用する。また高分子フィルとして熱可塑性のフィルム、たとえばPETフィルム、PENフィルムなどを用いた場合には、半導体としてアモルファスシリコンないしは有機半導体を用いることを想定し、140℃30分間の熱処理後の接着力を採用する。
本発明では剥離角度をπ/6ラジアン(30度)以下とすることが必須であり、π/12ラジアン(15度)以下とすることがより好ましく、さらにπ/24ラジアン(7.5度)以下とすることがなおさらに好ましい。剥離角度の下限が0の場合は自然剥離に相当し、この場合には電子デバイス加工工程中でブリスター発生やフィルムの剥離などのトラブルが出やすくなる。本発明の剥離角度の下限は1.0度、更に好ましくは2.0度程度である。
Fsinθ<Fv Fv:予め求めた90度剥離での無機基板/高分子フィルム接着強度
ただし、 θ≦(1/6)π、
好ましくは θ≦(1/8)π、なお好ましくは θ≦(1/12)π、
なおさらに好ましくは θ≦(1/16)π
となるように制御しながら剥離する。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。剥離するフレキシブル電子デバイスが、表示デバイスのバックプレーンである場合、あらかじめ表示デバイスのフロントプレーンを貼りつけて、無機基板上で一体化した後に両者を同時に剥がし、フレキシブルな表示デバイスを得ることも可能である。
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液についてウベローデ型の粘度管を用いて30℃で測定した。
高分子フィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて測定した。
測定対象とする高分子フィルムから、流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)がそれぞれ100mm×10mmである短冊状の試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ(登録商標);機種名AG−5000A」)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張強度および引張破断伸度を測定した。
測定対象とする高分子フィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)について、下記条件にて伸縮率を測定し、15℃の間隔(30℃〜45℃、45℃〜60℃、…)での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行って、MD方向およびTD方向で測定した全測定値の平均値を線膨張係数(CTE)として算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製「TMA4000S」
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/分
雰囲気 ; アルゴン
初荷重 ; 34.5g/mm2
高分子フィルム2枚を、異なる面同士で重ね合わせ(すなわち、同じ面同士ではなく、フィルムロールとして巻いた場合の巻き外面と巻き内面とを重ね合わせ)、重ねたポリイミドフィルムを親指と人差し指で挟み、軽く摺り合わせたときに、高分子フィルムと高分子フィルムが滑る場合を「○」又は「良好」、滑らない場合を「×」又は「不良」と評価した。なお、巻き外面同士あるいは巻き内面同士では滑らない場合もあるが、これは評価項目とはしない。
仮支持用無機基板に、所定の方法でシランカップリング剤を塗布し、次いで所定のプロセスを経て高分子フィルムをラミネートし、仮支持用無機版と高分子フィルムとの接着強度を、JIS C6481に記載の90度剥離法に従い、下記条件で測定した。なお、高分子フィルムのラミネート時にはフィルムのサイズを110mm×200mmとし、片側にポリイミドフィルムの未接着部分を設け、この部分を"つかみしろ"に用い、測定サンプルのフィルム部分にナイフで切り込みを入れ、幅が10mmとなるようにして測定した。
装置名 : 島津製作所社製「オートグラフ(登録商標)AG−IS」
測定温度 : 室温
剥離速度 : 50mm/分
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 10mm
フィルムのバネ定数「k」は、フィルムの長さを単位長さ「L」、幅を単位長さ「W」とし、フィルムのヤング率E、フィルムの厚さtから下記の式にて求めた。
k=S・E/L
ここに、Sはフィルムの引っ張り方向から見たフィルムの断面積である。
S=W・t
<フィルム限界時張力>
フィルムの伸び率が0.003(0.3%)となる張力をフィルム限界時張力とした。フィルム限界時張力Flimtはフックの法則から求めた。すなわち
Flimt=S・E・(ΔL/L)
ここに、Sはフィルムの引っ張り方向から見た断面積(単位長さ×フィルム厚さ)、Eはヤング率、Lはフィルムの引っ張り長さ、ΔLはフィルムの伸び、フィルム伸び率は(ΔL/L)である。
300mm×300mmにカットした高分子フィルムを、常圧にて乾燥窒素を満たした容量30リットルも真空乾燥機内にて150℃180分間加熱し、乾燥機から取り出して3分間以内に測定したフィルム質量を(Wd)を測定し、次いで同フィルム試料を25℃60%RHの環境に24時間放置した後の質量(Ws)を測定し、下記の計算式により算出した。
フィルム吸湿率=100×(Ws−Wd)/Wd [%]
<ポリイミドフィルムの製造>
〔製造例1〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)398質量部と、パラフェニレンジアミン(PDA)147質量部とを、4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)をシリカ(滑材)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対して0.08質量%になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液V1を得た。
上記で得られたポリアミド酸溶液V1を、スリットダイを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が25μmとなるように塗布し、105℃にて20分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅920mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
次いで得られた自己支持性ポリアミド酸フィルムを、搬送ロールの速度差により、長さ方向に1.1倍に引き延ばし、次いで、ピンテンターによって幅方向に1.05倍引き延ばし、150℃〜420℃の温度領域で段階的に昇温させて(1段目180℃×5分、2段目270℃×10分、3段目420℃×5分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF1(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF1の特性を表1に示す。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部とともに、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)とをシリカ(滑材)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.09質量%になるように加え、25℃の反応温度で36時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液V2を得た。
ポリアミド酸溶液V1に代えて、上記で得られたポリアミド酸溶液V2を用い、スリットダイを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が25μmとなるように塗布し、105℃にて20分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、ピンテンターによって、1段目150℃×4分、2段目220℃×4分、3段目495℃×8分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF2(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF2の特性を表1に示す。
〔製造例3〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
製造例2において、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)を添加しなかった以外は同様に操作し、ポリアミド酸溶液V3を得た。
上記で得られたポリアミド酸溶液V3をコンマコーターを用いて幅1050mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が5μm相当となるように塗布し、次いでポリアミド酸溶液V2をスリットダイを用いて最終膜厚がV3含めて38μmとなるように塗布し、105℃にて25分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅920mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
次いで、得られた自己支持性ポリアミド酸フィルムをピンテンターによって、1段目180℃×5分、2段目220℃×5分、3段目495℃×10分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅850mmの長尺ポリイミドフィルムF3(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF3の特性を表1に示す。なお滑り性は、ポリアミド酸V2を用いた側が○、V3側が×である。
〔製造例4〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
製造例2において、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)をポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.35質量%になるように加えた以外は同様に操作し、ポリアミド酸溶液V4を得た。
上記で得られたポリアミド酸溶液V4を、コンマコーターを用いて幅700mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が52μmとなるように塗布し、90にて20分間、105℃にて20分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅580mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
次いで、得られた自己支持性ポリアミド酸フィルムをピンテンターによって、150℃〜495℃の温度領域で段階的に昇温させて(1段目150℃×7分、2段目220℃×7分、3段目495℃×15分間)熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅480mmの長尺ポリイミドフィルムF4(200m巻き)を得た。得られたフィルムF4の特性を表1に示す。
製造例1で得られたポリイミドフィルムF1の両面に真空プラズマ処理を行い、さらに両面にUVオゾン処理を施して、表面活性化処理フィルムP1を得た。得られたフィルムP1の特性を表2に示す。
真空プラズマ処理は、平行平板型の電極を使ったRIEモード、RFプラズマによる処理であり、真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、13.54MHzの高周波電力を導入するようにし、処理時間は3分間とした。
UVオゾン処理には、 ランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置(「SKB1102N−01」)とUVランプ(「SE−1103G05」)とを用い、該UVランプから20mm程度離れた距離から5分間行った。照射時にはUV/O3洗浄改質装置内には特別な気体は入れず、UV照射は、大気雰囲気、室温で行った。なお、UVランプは185nm(不活性化処理を促進するオゾンを発生させうる短波長)と254nmの波長の輝線を出しており、このとき照度は、照度計「ORC社製UV−M03AUV(254nmの波長で測定)」にて20mW/cm2であった。
ポリイミドフィルムF1に代えて、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムA4100(東洋紡株式会社製)を用いて、表面活性化処理フィルムP5を得た。
同様にポリイミドフィルムF1に代えて、100μm厚のポリエチレンテレフタレートA5100(東洋紡株式会社製)を用いて、表面活性化処理フィルムP6を得た。
同様にポリイミドフィルムF1に代えて、12.5μm厚のポリイミドフィルム「カプトンEN」(東レ・デュポン株式会社製)を用いて、表面活性化処理フィルムP7を得た。
さらにポリイミドフィルムとUVオゾン処理時間を変えて、表面活性化処理フィルムP8〜10を得た。
得られた表面活性化処理フィルムの特性を表2に示す。
気相塗布によるシランカップリング剤処理とUVオゾン処理にて無機基板の表面活性化処理を行った。
<シランカップリング剤塗布>
ホットプレートを有する真空チャンバーを用い、以下の条件にて無機基板へのシランカップリング剤塗布を行った。シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM−903」:3−アミノプロピルトリメトキシシラン)100質量部をシャーレに満たし、ホットプレートの上に静置した。このときホットプレート温度は25℃である。次いでシランカップリング剤の液面から垂直方向に300mm離れた箇所に、白板ガラスを水平に保持し、真空チャンバーを閉じ、大気圧にて酸素濃度が0.1%以下となるまで窒素ガスを導入し、次いで窒素ガスを止め、チャンバー内を3×10-4Paまで減圧し、ホットプレート温度を120℃まで昇温し、10分間保持してシランカップリング剤蒸気への暴露を行い、その後、ホットプレート温度を下げ、同時に真空チャンバー内にクリーンな窒素ガスを静かに導入して大気圧まで戻し、ガラス板を取り出し、クリーン環境下にて100℃のホットプレートに、シランカップリング剤塗布面を上にして乗せ、約3分間熱処理を行い、表面活性化処理としてシランカップリング剤を塗布した基板G1を得た。
得られたシランカップリング剤塗布基板G1に、ランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置(「SKB1102N−01」)とUVランプ(「SE−1103G05」)とを用い、該UVランプから20mm程度離れた距離からUV照射を5分間行い、表面活性化基板G2を得た。なおUV照射時にはUV/O3洗浄改質装置内には特別な気体は入れず、UV照射は、大気雰囲気、室温で行った。なお、UVランプは185nm(不活性化処理を促進するオゾンを発生させうる短波長)と254nmの波長の輝線を出しており、このとき照度は、照度計「ORC社製UV−M03AUV(254nmの波長で測定)」にて20mW/cm2であった。
表面活性化フィルムP1と表面活性化基板G1の、活性面同士を合わせるように重ね、クライムプロダクツ社製のラミネータSE650nHを用いて、無機基板側温度100℃、ラミネート時のロール圧力5kg/cm2、ロール速度5mm/秒にて仮ラミネートした。仮ラミネート後の高分子フィルムはフィルムの自重では剥がれないが、フィルム端部を引っ掻くと簡単に剥がれる程度の接着性であった。その後、得られた仮ラミネート基板をクリーンオーブンに入れ、200℃にて30分間加熱した後、室温まで放冷して、本発明の積層体L1を得た。得られた積層体の外観品位の観察、およびフィルムと基板との90度剥離接着強度、さらにオーブンで420℃30分処理後の90度剥離接着強度等について評価した。結果を表3.に示す。なお、積層体の製作は、温度25℃±2℃、湿度55%±3%に保たれている実験室で行い、表面活性化フィルムは当該実験室に24時間以上放置した後に積層を行った。
以下、同様に表面活性化フィルムと表面活性化無機基板を替えて積層体を製作し、評価した。また、フィルムF3を用いている場合には、表裏を各々別に操作した。なお、PETフィルムについてはクリーンオーブンでの熱処理を140℃30分とし、420℃30分熱処理後の接着強度については測定していない。結果を表3.に示す。 なお表中「F3−V2」はフィルムF3のV2樹脂側を無機基板と接する側に用いたことを、「F3−V3」はフィルムF3のV3樹脂側を無機基板と接する側に用いたことを示す。
得られた積層体L1を用い、剥離実験を行った。結果を表4、表5に示す。積層体L1のバネ常数は2.45×107 [N/m]、限界歪みを0.003とした場合の限界時張力は735[N/m]である。限界歪みを0.001とした場合の限界時張力は245[N/m]である。
まず、剥離実験例T1〜T6では、剥離角度を30度 (π/6rad)固定として、フィルム張力を200N/mから300N/mまで変化させている。この場合、張力200N/mでは剥離できていない。これは張力の垂直方向の成分が接着強度に満たないためであると考えられる。
剥離実験例T7〜T11では、張力を、270N/mに固定し、剥離角を変化させている。この場合、剥離角が低い場合には、張力の垂直成分が接着強度に満たないため剥離できない。剥離角24度で剥離可能であるが、剥離角が30度を超えると、フィルム上に形成された薄膜電子デバイスのストレスが大きくなり、不具合が生じやすくなる。
剥離実験例T12〜T17では張力を上げて、剥離角を変えた場合を示す。T18〜T22には張力と角度をそれぞれ変えた場合について示す。T20が最もバランスの取れた剥離条件であると云える。
<ポリシリコンTFT>
再び、積層体L1およびL2〜L4、L7〜L14、L17〜L20を用い、以下の工程により、高分子フィルム上にボトムゲート型の薄膜トランジスタアレイを作製した。
ガスバリア層の形成 高分子フィルム側全面に反応性スパッタリング法を用いてSiONからなる250nmのガスバリア膜を形成した。次いで、プラズマCVDによりアモルファスシリコン層を形成し、420℃30分の脱水素アニール処理を行い、その後にエキシマレーザーによるアニールによりアモルファスシリコン層を多結晶化した。
次に、チャンネル部、ソース・ドレイン部となる多結晶シリコン膜をエッチング加工し、ゲート絶縁膜を形成した後、ゲートメタルとしてアルミニウム合金の製膜と加工を行い、その後ゲートメタル膜の側面部分を陽極酸化し、オフセット部を形成し、その後、ソース・ドレイン部に不純物(P、B)ドーピングを行う。その後に層間絶縁膜を形成し、コンタクトホールを開けてソース・ドレインメタル形成を行い、640×480ピクセルを有するポリシリコン薄膜トランジスタアレイを形成した。
積層体L5、L6、L15、L16を用い、以下の工程により、高分子フィルム上にボトムゲート型の薄膜トランジスタアレイを作製した。ガスバリア層の形成 高分子フィルム側全面に反応性スパッタリング法を用いてSiONからなる250nmのガスバリア膜を形成した。次いで、厚さ80nmのアルミニウム層をスパッタリング法にて形成し、フォトリソグラフ法によりゲート配線とゲート電極を形成した。次いで、スリットダイコーターを用いてエポキシ樹脂系のゲート絶縁膜(厚さ80nm)を形成した。さらにスパッタリング法にて5nmのクロム層、40nmの金層を形成し、フォトリソグラフ法にてソース電極とドレイン電極を形成した。次いでスリットダイコーターを用いて、絶縁層兼ダム層となるエポキシ樹脂を塗布し、UV−YAGレーザーによるアブレーションにて、ソース電極とドレイン電極を含む半導体層用の厚さ250nmのダム層を直径100μmの円形となるように形成し、また上部電極との接続点となるビア形成も同時に行った。次いで、インクジェット印刷法により有機半導体であるポリチオフェンをダム内に塗出、ビア部には銀ペーストを埋め込み、さらに上部電極としてアルミ配線を形成し640×480ピクセルを有する薄膜トランジスタアレイを形成した。
(1)剥離性
剥離可 「○」
剥離不可 「×」
(2)伸び(歪)
伸び(歪)≦0.1% 「◎」
0.1%<伸び(歪)≦0.2% 「○」
0.2%<伸び(歪)≦0.3% 「△」
0.3%<伸び(歪) 「×」
(3)剥離角
剥離角θ≦7.5度 「◎」
7.5度<剥離角θ≦15度 「○」
15度<剥離角θ≦30度 「△」
30度<剥離角θ 「×」
(4)TFT動作評価
剥離前と変化がない物 「○」
剥離前に比較し、不良セルが1〜5個増加した物 「△」
剥離前に比較し、不良セルが6個以上増加した物 「×」
2 ガラス基板
Claims (7)
- 無機基板に高分子フィルムを接着し、次いで高分子フィルム上に電子デバイスを形成した後に該高分子フィルムを該無機基板から剥離するフレキシブル電子デバイスの製造方法において、
該剥離時における該高分子フィルムの引張歪みが0.3%以下であり、該無機基板と該高分子フィルムの剥離角度θが π/6 ラジアン(30度)以下となる条件下にて剥離するに十分な引っ張り力をフィルムに与えて剥離を行う工程を含むことを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。 - 前記高分子フィルムの厚さが12μm以上、ヤング率が6GPa以上であり、剥離時における前記無機基板と前記高分子フィルムの90度剥離法による接着強度が0.05N/cm以上、1.0N/cm未満であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムの電子デバイス形成面に、滑材粒子による突起が存在しない事を特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムの、少なくとも無機基板との接着面側に表面活性化処理がなされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルム表面の活性化が少なくとも、プラズマ処理とUV/オゾン処理の2段階以上でのステップで行われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムと無機基板を貼り合わせる際の高分子フィルムの吸湿率が、1.8%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムの、無機基板との接着面側の滑剤粒子含有率が0.12質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
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