(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の緩衝器1の主要部の軸平面による断面図である。以下の説明において、図1における上方向(上側)及び下方向(下側)を、緩衝器1における上方向(上側)及び下方向(下側)とする。なお、第1実施形態は、単筒型の減衰力調整式油圧緩衝器であるが、リザーバを備える複筒型の減衰力調整式油圧緩衝器にも適用可能である。
図1に示されるように、シリンダ2内には、ピストン3が摺動可能に嵌装される。ピストン3は、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に区画する。シリンダ上室2A及びシリンダ下室2Bには、作動流体として油液が封入される。なお、シリンダ2内には、シリンダ2内を上下方向へ移動可能なフリーピストン(図示省略)が設けられる。フリーピストンは、シリンダ2内をピストン3側(上側)のシリンダ下室2Bと底部側(下側)のガス室(図示省略)とに区画する。ガス室には、作動流体として高圧ガスが封入される。
ピストン3の軸孔3Aには、ピストンボルト7の軸部8が挿通される。ピストンボルト7の略円筒形の頭部9の上側部分には、略円筒形のソレノイドケース10の下端部がねじ結合部11によって接続される。ピストンボルト7には、共通通路13が形成される。共通通路13は、軸方向(上下方向)に沿ってピストンボルト7の先端側(下側)へ延び、上端が頭部9の底面中央に開口する有底の軸孔である。図2に示されるように、共通通路13は、共通通路13の上部に形成されて上端が開口する軸孔14と、共通通路13の下部に形成される軸孔15と、軸孔14,15間を連通する軸孔16とにより構成される。なお、共通通路13の内径(孔径)は、軸孔15が最も大きく、軸孔14、軸孔16の順に小さくなる。
図1に示されるように、ソレノイドケース10の上端部には、ピストンロッド6の下端部がねじ結合部12によって接続される。ピストンロッド6は、シリンダ2の上端部に装着されたロッドガイド(図示省略)に挿通され、上端部がシリンダ2から外部へ延出される。ピストンロッド6の下端部には、ねじ結合部12の緩みを抑止するナット18が螺合される。ピストンロッド6の下端部には、小径部19が形成される。小径部19の外周面に形成された環状溝には、ソレノイドケース10とピストンロッド6との間をシールするOリング20が装着される。
図2に示されるように、ピストン3には、上端がシリンダ上室2A側に開口する伸び側通路21(伸び側流路)と、下端がシリンダ下室2B側に開口する縮み側通路22(縮み側流路)とが設けられる。ピストン3の下端側には、伸び側通路21の作動流体の流れを制御する伸び側減衰弁101が設けられる。他方、ピストン3の上端側には、縮み側通路22の作動流体の流れを制御する縮み側減衰弁201が設けられる。
伸び側減衰弁101は、ピストン3の下端部の外側に形成された環状のシート部102と、シート部102に着座される伸び側メインバルブ103と、ナット23によってピストンボルト7に固定される伸び側背圧ケース104と、伸び側メインバルブ103の背面と伸び側背圧ケース104との間に形成される伸び側背圧室105とを備える。伸び側メインバルブ103の開弁圧力は、伸び側背圧室105内の圧力によって調整される。
伸び側メインバルブ103の内周部は、ピストン3と伸び側背圧ケース104との間に設けられた一対のリテーナ107,108間で挟持される。また、ナット23と伸び側背圧ケース104との間には、下側から順に、ワッシャ24、リテーナ25、及び複数枚のディスクからなるディスクバルブ106が設けられる。ディスクバルブ106の内周部は、伸び側背圧ケース104の内周部とリテーナ25との間で挟持される。
伸び側背圧ケース104は、底部111と、底部111の外側縁部に形成された外側筒部112と、底部111の中央を上下方向へ貫通してピストンボルト7の軸部8が挿入される挿入孔113と、挿入孔113と外側筒部112との間に形成される仕切り筒部114と、を有する。伸び側背圧ケース104の外側筒部112と仕切り筒部114との間には、上側が開口した環状溝115が形成される。環状溝115は、外円筒面116と内円筒面117とを有する。仕切り筒部114は、伸び側背圧室105を外側の第1背圧室119と内側の第2背圧室120とに区画する。なお、第1背圧室119は、環状溝115の内側、すなわち、外円筒面116と内円筒面117との間に形成される。
伸び側メインバルブ103には、環状溝115の外円筒面116に摺動可能に当接されて第1背圧室119とシリンダ下室2Bとの間をシールする外側リップ121(第1シール手段)と、環状溝115の内円筒面117(仕切り筒部114の外周面)に接離可能に当接される内側リップ122(遮断手段)と、が設けられる。内側リップ122は、内円筒面117に当接されることで、第1背圧室119から第2背圧室120への作動流体の移動を遮断し、他方、内円筒面117から離間されることで、第2背圧室120から第1背圧室119への作動流体の移動を許容する。第1実施形態において、外側リップ121と内側リップ122とは、伸び側メインバルブ103から第1背圧室119側(図2における「下側」。)へ向かって延びるパッキン(弾性シール部材)からなる。また、外側リップ121と内側リップ122とは、一体に形成されて伸び側メインバルブ103のディスクの一側面の外側縁部に固着される。
伸び側背圧ケース104の底部111には、ディスクバルブ106の外側縁部に着座する環状のシート部123が形成される。伸び側背圧ケース104とディスクバルブ106との間には、シート部123によってシリンダ下室2Bと区画された環状通路124が形成される。また、伸び側背圧ケース104の底部111には、シート部123よりも内側に設けられてチェック弁125が着座される環状のシート部126が形成される。チェック弁125は、環状通路124から第2背圧室120への作動流体の移動を遮断し、第2背圧室120から、伸び側背圧ケース104を上下(軸方向)に貫通する複数本の通路127を介して環状通路124へ移動する作動流体の流れを許容する。
なお、チェック弁125の内周部は、伸び側背圧ケース104の内周部とリテーナ129との間で挟持される。また、ディスクバルブ106のうち、シート部123が当接する薄板には、環状通路124とシリンダ下室2B(縮み行程時、すなわち、逆行程時における上流側の室)とを常時連通させるオリフィス128(伸び側背圧導入通路)が設けられる。また、第2背圧室120は、通路127、チェック弁125に設けられたオリフィス130、挿入孔113と軸部8との間に設けられた環状通路131、及び軸部8に設けられた複数本の径方向通路132を介して共通通路13(軸孔15)に連通される。
ピストン3の下端部には、環状のシート部133が形成される。シート部133は、シート部102よりも内側に設けられ、ピストン3の下面からの高さ(突出長さ)が、シート部102よりも低く形成される。ピストン3の下端部の、シート部102とシート部133との間の環状面には、伸び側通路21の下端が開口する。シート部133には、チェック弁134の外側縁部が着座される。チェック弁134は、共通通路13(軸孔15)から伸び側通路21への作動流体の移動を許容し、伸び側通路21から共通通路13(軸孔15)への作動流体の移動を遮断する。
第1実施形態において、伸び側オリフィス通路は、伸び側通路21を、ピストン3と伸び側メインバルブ103との間に形成された環状通路138、チェック弁134に形成されたオリフィス139、シート部133の内側に形成された環状通路140、ピストン3の内周部に形成された複数本の通路137、ピストン3の軸孔3Aに形成された環状通路136、径方向通路135、共通通路13(軸孔15)、径方向通路132、環状通路131、オリフィス130、及び通路127を介して、第2背圧室120に連通する。
そして、伸び行程時(順行程時)には、内側リップ122が仕切り筒部114の内円筒面117から離間されることで、伸び側オリフィス通路を介して、伸び側通路21(シリンダ上室2A)から第1背圧室119へ作動流体が導入される。他方、縮み行程時(逆行程時)には、オリフィス128(伸び側背圧導入通路)を介して第1背圧室119へシリンダ下室2Bの作動流体が導入されて内側リップ122が仕切り筒部114の内円筒面117に当接されることにより、伸び側オリフィス通路と第1背圧室119との連通が遮断される。
縮み側減衰弁201は、ピストン3の上端部の外側に形成された環状のシート部202と、シート部202に着座される縮み側メインバルブ203と、ナット23によってピストンボルト7に固定される縮み側背圧ケース204と、縮み側メインバルブ203の背面と縮み側背圧ケース204との間に形成される縮み側背圧室205とを備える。縮み側メインバルブ203の開弁圧力は、縮み側背圧室205内の圧力によって調整される。
縮み側メインバルブ203の内周部は、ピストン3と縮み側背圧ケース204との間に設けられた一対のリテーナ207,208間で挟持される。また、ピストンボルト7の頭部9と縮み側背圧ケース204との間には、上側から順に、ワッシャ27、ディスク67、リテーナ28、及び複数枚のディスクからなるディスクバルブ206が設けられる。ディスクバルブ206の内周部は、縮み側背圧ケース204の内周部とリテーナ229との間で挟持される。
縮み側背圧ケース204は、底部211と、底部211の外側縁部に形成された外側筒部212と、底部211の中央を上下方向へ貫通してピストンボルト7の軸部8が挿入される挿入孔213と、挿入孔213と外側筒部212との間に形成される仕切り筒部214と、を有する。縮み側背圧ケース204の外側筒部212と仕切り筒部214との間には、下側が開口した環状溝215が形成される。環状溝215は、外円筒面216と内円筒面217とを有する。仕切り筒部214は、縮み側背圧室205を外側の第1背圧室219と内側の第2背圧室220とに区画する。なお、第1背圧室219は、環状溝215の内側、すなわち、外円筒面216と内円筒面217との間に形成される。
縮み側メインバルブ203には、環状溝215の外円筒面216に摺動可能に当接されて第1背圧室219とシリンダ下室2Bとの間をシールする外側リップ221(第1シール手段)と、環状溝215の内円筒面217(仕切り筒部214の外周面)に接離可能に当接される内側リップ222(遮断手段)と、が設けられる。内側リップ222は、内円筒面217に当接されることで、第1背圧室219から第2背圧室220への作動流体の移動を遮断し、他方、内円筒面217から離間されることで、第2背圧室220から第1背圧室219への作動流体の移動を許容する。第1実施形態において、外側リップ221と内側リップ222とは、縮み側メインバルブ203から第1背圧室219側(図2における「上側」。)へ向かって延びるパッキン(弾性シール部材)からなる。また、外側リップ221と内側リップ222とは、一体に形成されて縮み側メインバルブ203のディスクの一側面の外側縁部に固着される。
縮み側背圧ケース204の底部211には、ディスクバルブ206の外側縁部に着座する環状のシート部223が形成される。縮み側背圧ケース204とディスクバルブ206との間には、シート部223によってシリンダ上室2Aと区画された環状通路224が形成される。また、縮み側背圧ケース204の底部211には、シート部223よりも内側に設けられてチェック弁225が着座される環状のシート部226が形成される。チェック弁225は、環状通路224から第2背圧室220への作動流体の移動を遮断し、第2背圧室220から、縮み側背圧ケース204を上下(軸方向)に貫通する複数本の通路227を介して環状通路224へ移動する作動流体の流れを許容する。
なお、チェック弁225の内周部は、縮み側背圧ケース204の内周部とリテーナ229との間で挟持される。また、ディスクバルブ206のうち、シート部223が当接する薄板には、環状通路224とシリンダ上室2A(伸び行程時、すなわち、逆行程時における上流側の室)とを常時連通させるオリフィス228(縮み側背圧導入通路)が設けられる。また、第2背圧室220は、通路227、チェック弁225に設けられたオリフィス230、挿入孔213と軸部8との間に設けられた環状通路231、軸部8に設けられた通路80、及び軸部8に設けられた複数本の径方向通路232を介して共通通路13(軸孔14)に連通される。
ピストン3の下端部には、環状のシート部233が形成される。シート部233は、シート部202よりも内側に設けられ、ピストン3の上面からの高さ(突出長さ)が、シート部202よりも低く形成される。ピストン3の上端部の、シート部202とシート部233との間の環状面には、縮み側通路22の下端が開口する。シート部233には、チェック弁234の外側縁部が着座される。チェック弁234は、共通通路13(軸孔14)から縮み側通路22への作動流体の移動を許容し、縮み側通路22から共通通路13(軸孔14)への作動流体の移動を遮断する。
第1実施形態において、縮み側オリフィス通路は、縮み側通路22を、ピストン3と縮み側メインバルブ203との間に形成された環状通路238、チェック弁234に形成されたオリフィス239、シート部233の内側に形成された環状通路240、ピストン3の内周部に形成された複数本の通路237、ピストン3の軸孔3Aに形成された環状通路236、径方向通路235、共通通路13(軸孔14)、径方向通路232、通路80、環状通路231、オリフィス230、及び通路227を介して、第2背圧室220に連通する。
そして、縮み行程時(順行程時)には、内側リップ222が仕切り筒部214の内円筒面217から離間されることで、縮み側オリフィス通路を介して、縮み側通路22(シリンダ下室2B)から第1背圧室219へ作動流体が導入される。他方、伸び行程時(逆行程時)には、オリフィス228(縮み側背圧導入通路)を介して第1背圧室219へシリンダ下室2Bの作動流体が導入されて内側リップ222が仕切り筒部214の内円筒面217に当接されることにより、縮み側オリフィス通路と第1背圧室219との連通が遮断される。
ここで、第1実施形態に係る緩衝器1は、所謂、セミアクティブサスペンションであり、伸び側背圧室105と縮み側背圧室205とを連通する共通通路13と、ピストンボルト7の共通通路13の作動流体の流れを制御するパイロット弁(減衰力調整弁)と、を備える。図2、図3を参照すると、パイロット弁は、共通通路13(軸孔14)に摺動可能に嵌装されたバルブスプール31(弁体)を有する。バルブスプール31は、中実軸からなり、ピストンボルト7とともにパイロット弁を構成する。
バルブスプール31は、軸孔14の上部、換言すると、通路232よりも上側部分に摺動可能に嵌合される基部32と、軸孔14内に位置してテーパ部33を介して基部32に連続する弁部34と、パイロット弁の閉弁時(図2参照)に軸孔15内に位置する先端部35と、弁部34と先端部35とを繋ぐ軸部36と、を有する。なお、バルブスプール31の外径は、基部32が最も大きく、弁部34、先端部35、軸部36の順に小さくなる。また、弁部34の外径は、軸孔16の内径よりも大きい。
バルブスプール31は、先端部35のばね受部37とピストンボルト7の軸孔15の底部との間に介装された弁ばね38により、ピストンボルト7に対して上方向へ付勢される。これにより、バルブスプール31の基部32の端面が、バルブスプール31の移動を制御するアクチュエータとして用いられるソレノイド51(図1参照)のロッド52に当接される(押し付けられる)。バルブスプール31の先端部35は、軸に対して垂直な平面による断面が、切欠き39(二面幅)を有する円形に形成される。ソレノイド51に対する制御電流が0Aのとき(フェイル時)、バルブスプール31が開弁方向(図3における「上方向」。)へストロークされ、先端部35が軸孔16に嵌合される。これにより、先端部35と軸孔16との間には、軸孔14,15間を連通するオリフィス40が形成される。
軸孔16の上端側(軸孔14側)の開口縁部には、バルブスプール31の弁部34が着座される環状のシート部41が形成される。弁部34の下端側(軸部36側)の外側縁部には、テーパ状に形成された着座部42が形成される。着座部42がシート部41に着座された状態、すなわち、パイロット弁の閉弁状態では、バルブスプール31は、先端部35が略円形の受圧面A(図3参照)にて軸孔15側の圧力を受け、テーパ部33が環状の受圧面B(図3参照)にて軸孔14側の圧力を受ける。
図1に示されるように、ソレノイド51は、ソレノイドケース10、ロッド52、及びコイル53を有し、ロッド52の外周面には、プランジャ54が結合される。可動鉄心とも称されるプランジャ54は、鉄系の磁性体からなり、略円筒形に形成される。プランジャ54は、コイル53に通電されることで発生した磁力により推力を発生する。ロッド52は、円筒形に形成される。ロッド52の内部(軸孔)には、ロッド52を軸方向(上下方向)に貫通するロッド内通路55が形成される。ロッド52は、上下に分割された上側のステータコア56に組み込まれたブッシュ57によって、上下方向(軸方向)へ移動可能に支持される。
上下に分割された下側のステータコア58の軸孔59の内部には、スプール背圧室60が形成される。バルブスプール31の上端とロッド52の下端とは、パイロット弁のスプール背圧室60内で当接される。スプール背圧室60は、上室側連通路を介してシリンダ上室2Aに連通される。上室側連通路は、ロッド52の先端部(下端部)に形成された切欠き61、ロッド内通路55、ステータコア56に形成されたロッド背圧室62、ステータコア56内を径方向に延びてロッド背圧室62とステータコア56の外周面とを連通させる通路63、及びソレノイドケース10の側壁に形成されたエア抜きオリフィス64によって構成される。
図2に示されるように、ピストンボルト7の頭部9とパイロットケース204との間には、上側から順に、ディスク状のスプール背圧リリーフ弁65(逆止弁)、リテーナ66、ワッシャ27、ディスク67、リテーナ28、ディスクバルブ206が設けられる。ワッシャ27の外周面は、ピストンボルト7の頭部9の環状壁部29の下部の内周面に嵌合される。ワッシャ27と環状壁部29との間、換言すると、後述する環状溝70とシリンダ上室2Aとの間は、Oリング68によって液密にシールされる。
スプール背圧リリーフ弁65は、内周部がリテーナ66とピストンボルト7の頭部9の内周部とによって挟持され、外側縁部がピストンボルト7の頭部9の下面に形成された環状のシート部71に着座される。ピストンボルト7の頭部9とワッシャ27との間には、スプール背圧リリーフ弁65を開弁させる可動域に利用される前述した環状溝70が形成される。スプール背圧リリーフ弁65は、スプール背圧室60から環状溝70への作動流体の流れを許容する逆止弁である。
スプール背圧室60は、下室側連通路を介してシリンダ下室2Bに連通される。すなわち、スプール背圧室60は、ステータコア58とピストンボルト7の頭部9との間に形成された環状通路73、ピストンボルト7の頭部9の上面に形成された環状溝74、ピストンボルト7の頭部9に形成された複数本の通路75、シート部71の内側に形成された環状通路76、スプール背圧リリーフ弁65、環状溝70、ワッシャ27の上面に形成された複数本の溝77、ワッシャ27を軸方向へ延びる(上下方向へ貫通する)複数本の通路78、ワッシャ27の下面に形成された複数本の溝79、ピストンボルト7の軸部8に形成された溝80、径方向通路232、共通通路13(軸孔14)、径方向通路235、通路237、環状通路240、オリフィス239、及び縮み側通路22を介してシリンダ下室2Bに連通される。
次に、作動流体の流れを説明する。
まず、ピストンロッド6の縮み行程時(以下「縮み行程時」という。)の作動流体の流れを説明する。縮み側メインバルブ203の開弁前には、シリンダ下室2Bの作動流体は、縮み側通路22、環状通路238、オリフィス239、環状通路240、通路237、環状通路236、径方向通路235、共通通路13(軸孔14)、径方向通路232、溝80、環状通路231、オリフィス230、及び通路227を介して第2背圧室220へ導入される。
内側リップ222(遮断手段)は、第2背圧室220へ導入された作動流体の圧力を受けて縮み側メインバルブ203の外側へ弾性変形し、縮み側背圧ケース204の仕切り筒部214の内円筒面217から離間する。これにより、第2背圧室220へ導入された作動流体は、第1背圧室219へ移動する(導入される)。さらに、第1背圧室219へ導入された作動流体は、縮み側背圧ケース204に形成された通路241、環状通路224、及びオリフィス228(縮み側背圧導入通路)を介してシリンダ上室2Aへ移動する。
縮み行程時に、パイロット弁が開弁されると(図3参照)、シリンダ下室2Bの作動流体は、縮み側メインバルブ203の開弁前には、縮み側通路22、環状通路238、オリフィス239、環状通路240、通路237、環状通路236、径方向通路235、共通通路13、径方向通路135、環状通路136、通路137、環状通路140、チェック弁134、環状通路138、及び伸び側通路21を介してシリンダ上室2Aへ移動する。ここで、パイロット弁の開弁圧力は、ソレノイド51のコイル53への通電電流を制御することで調整することができる。同時に、共通通路13から第1背圧室219及び第2背圧室220へ導入される作動流体の圧力も調整されるので、縮み側メインバルブ203の開弁圧力を制御することができる。
そして、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体は、縮み側メインバルブ203が開弁されると、縮み側通路22及び縮み側メインバルブ203を介してシリンダ上室2A(下流側の室)へ移動する。縮み側メインバルブ203の開弁時には、第2背圧室220の体積の減少を補償するため、第2背圧室220の作動流体は、通路227、オリフィス230、環状通路231、径方向通路232、共通通路13、径方向通路135、環状通路136、通路137、環状通路140、チェック弁134、環状通路138、及び伸び側通路21を介してシリンダ上室2Aへ移動する。他方、第1背圧室219の作動流体は、通路241、環状通路224、及びオリフィス228(縮み側背圧導入通路)を介してシリンダ上室2Aへ移動する。
一方、伸び側メインバルブ103は、縮み行程時(逆行程時)には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体が、オリフィス128(伸び側背圧導入通路)、環状通路124、及び通路141を介して第1背圧室119へ導入される。伸び側メインバルブ103の内側リップ122(遮断手段)は、第1背圧室119へ導入された作動流体の圧力を受けて伸び側背圧ケース104の仕切り筒部114の内円筒面117に当接し(押し付けられ)、第1背圧室119と前述した伸び側オリフィス通路との連通、換言すると、第1背圧室119と共通通路13を介したシリンダ上室2A(下流側の室)との連通を遮断する。
次に、ピストンロッド6の伸び行程時(以下「伸び行程時」という。)の作動流体の流れを説明する。伸び側メインバルブ103の開弁前には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体は、伸び側通路21、環状通路138、オリフィス139、環状通路140、通路137、環状通路136、径方向通路135、共通通路13(軸孔15)、径方向通路132、環状通路131、オリフィス130、及び通路127を介して第2背圧室120へ導入される。
伸び側メインバルブ103の内側リップ122(遮断手段)は、第2背圧室120へ導入された作動流体の圧力を受けて外側へ弾性変形し、伸び側背圧ケース104の仕切り筒部114の内円筒面117から離間する。これにより、第2背圧室120へ導入された作動流体は、第1背圧室119へ移動する(導入される)。さらに、第1背圧室119へ導入された作動流体は、伸び側背圧ケース104に形成された通路141、環状通路124、及びオリフィス128(伸び側背圧導入通路)を介してシリンダ下室2B(下流側の室)へ移動する。なお、伸び行程時には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体は、前述した上流側連通路、スプール背圧室60、及び下流側連通路を介してシリンダ下室2B(下流側の室)へ移動する。
伸び行程時に、パイロット弁が開弁されると(図3参照)、シリンダ上室2Aの作動流体は、伸び側メインバルブ103の開弁前には、伸び側通路21、環状通路138、オリフィス139、環状通路140、通路137、環状通路136、径方向通路135、共通通路13、径方向通路235、環状通路236、通路237、環状通路240、チェック弁234、環状通路238、及び縮み側通路22を介してシリンダ下室2Bへ移動する。ここで、パイロット弁の開弁圧力は、ソレノイド51のコイル53への通電電流を制御することで調整することができる。同時に、共通通路13から第1背圧室119及び第2背圧室120へ導入される作動流体の圧力も調整されるので、伸び側メインバルブ103の開弁圧力を制御することができる。
そして、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体は、伸び側メインバルブ103が開弁されると、伸び側通路21及び伸び側メインバルブ103を介してシリンダ下室2B(下流側の室)へ移動する。伸び側メインバルブ103の開弁時には、第2背圧室120の体積の減少を補償するため、第2背圧室120の作動流体は、通路127、オリフィス130、環状通路131、径方向通路132、共通通路13、径方向通路235、環状通路236、通路237、環状通路240、チェック弁234、環状通路238、及び縮み側通路22を介してシリンダ下室2Bへ移動する。他方、第1背圧室119の作動流体は、通路141、環状通路124、及びオリフィス128(伸び側背圧導入通路)を介してシリンダ下室2Bへ移動する。
一方、縮み側メインバルブ203は、伸び行程時(逆行程時)には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体が、オリフィス228(縮み側背圧導入通路)、環状通路224、及び通路241を介して第1背圧室219へ導入される。縮み側メインバルブ203の内側リップ222(遮断手段)は、第1背圧室219へ導入された作動流体の圧力を受けて縮み側背圧ケース204の仕切り筒部214の内円筒面217に当接し(押し付けられ)、第1背圧室219と前述した縮み側オリフィス通路との連通、換言すると、第1背圧室219と共通通路13を介したシリンダ下室2B(下流側の室)との連通を遮断する。
前述した従来の緩衝器では、作動流体の伸び側背圧室から共通通路への移動がチェック弁によって遮断されているため、伸び行程時における伸び側メインバルブの開弁時に、伸び側背圧室の作動流体は、流路面積が小さいオリフィス(伸び側背圧導入通路)を通じた一系統のみでシリンダ下室(下流側の室)へ排出される。このように、従来の緩衝器では、伸び側背圧室の作動流体を共通通路(パイロット下流)を通じて排出することができないため、伸び側メインバルブの開弁時における伸び側背圧室の体積補償が不十分であり、その結果、伸び側背圧室の作動流体が圧縮される。このように、従来の緩衝器では、伸び側メインバルブの開弁応答性が低下し、減衰力がオーバーシュートするおそれがある。
これに対し、第1実施形態では、伸び側背圧ケース104に形成された仕切り筒部114により、伸び側背圧室105を外側の第1背圧室119と内側の第2背圧室120とに区画し、伸び側メインバルブ103のパッキン(弾性シール部材)の外側リップ121(第1シール手段)を、伸び側背圧ケース104の外側筒部112に当接させ、且つ、外側リップ121と一体に形成された内側リップ122(遮断手段)を、伸び側背圧ケース104の仕切り筒部114に接離可能に当接させた。
そして、伸び行程時には、内側リップ122を、第2背圧室120に導入された作動流体の圧力によって外側へ弾性変形させて仕切り筒部114から離間させることにより、伸び側オリフィス通路の作動流体を第2背圧室120を介して第1背圧室119へ導入する。他方、縮み行程時には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体をオリフィス128(伸び側背圧導入通路)を介して第1背圧室119へ導入することにより、内側リップ122を仕切り筒部114に当接させて第1背圧室119と第2背圧室120との連通、延いては第1背圧室119と伸び側オリフィス通路との連通を遮断した。
これにより、伸び側メインバルブ103の開弁時には、第2背圧室120の作動流体は、共通通路13及び縮み側通路22を介してシリンダ下室2B(下流側の室)へ排出されるので、第2背圧室120の体積の減少の補償が十分であり、伸び側メインバルブ103の開弁応答性の低下が抑止され、減衰力のオーバーシュートを防ぐことができる。また、第2背圧室120から第1背圧室119へ作動流体を導入するときの内側リップ122の開弁圧力が高い場合、チェック弁125が開弁することで第2背圧室120から第1背圧室119へ作動流体が導入されるので、第1背圧室119と第2背圧室120との間に圧力損失が発生して導入圧力が低下する事態を防ぐことができる。
また、伸び側メインバルブ103の開弁時に、第1背圧室119の体積の減少によって第1背圧室110の作動流体が圧縮されても、受圧面積、すなわち、圧縮された作動流体の圧力を受ける面積が、パッキン(弾性シール部材)が受ける面積のみであるので、当該受圧面積が従来の緩衝器と比較して小さいため、伸び側メインバルブ103の開弁応答性の低下への影響を抑えることができる。なお、従来の緩衝器における受圧面積(背圧室で圧縮された作動流体の圧力を受ける面積)は、第1実施形態と比較した場合、パッキンの内側から伸び側メインバルブを挟持するリテーナの外側までの環状面の分だけ大きくなる。
また、第1実施形態では、伸び行程時に、オリフィス228(縮み側背圧導入通路)から縮み側の第1背圧室219へ導入された作動流体の圧力によって縮み側メインバルブ203の内側リップ222が縮み側背圧ケース204の仕切り筒部214に当接されることにより、第1背圧室219と第2背圧室220との連通が遮断される。これにより、シリンダ上室2A(上流側の室)からオリフィス228(縮み側背圧導入通路)を介して縮み側の第1背圧室219へ導入された作動流体が、パイロット下流に合流、すなわち、シリンダ上室2Aから伸び側通路21、共通通路13、及び縮み側通路22を介してシリンダ下室2Bへ移動する作動流体の流れに合流することによる、パイロット下流(共通通路13)内の作動流体の圧力の上昇を防ぐことが可能であり、パイロット弁の開弁圧力が高まることによる、減衰力のフェール落ち(急激な立ち上がり)を抑止することができる。
以下に、第1実施形態の作用効果を示す。
第1実施形態に係る緩衝器は、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に設けられて該シリンダ内を2室に区画するピストンと、該ピストンに連結されてシリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、ピストンに設けられた伸び側流路及び縮み側流路と、伸び側流路に設けられた伸び側メインバルブと、該伸び側メインバルブの開弁圧力を調整する伸び側背圧室が形成された有底円筒状の伸び側背圧ケースと、伸び側流路と伸び側背圧室とを連通する伸び側オリフィス通路と、伸び側背圧室に上流側の室から作動流体を導入する伸び側背圧導入通路と、縮み側流路に設けられた縮み側メインバルブと、該縮み側メインバルブの開弁圧力を調整する縮み側背圧室が形成された有底円筒状の縮み側背圧ケースと、縮み側流路と縮み側背圧室とを連通する縮み側オリフィス通路と、縮み側背圧室に上流側の室から作動流体を導入する縮み側背圧導入通路と、を備え、伸び側背圧ケース及び縮み側背圧ケースは、底部と、外側筒部と、ピストンロッドが挿入される挿入孔と、該挿入孔と外側筒部との間に形成された仕切り筒部と、から構成され、伸び側背圧室及び縮み側背圧室を、仕切り筒部により区画して第1背圧室及び第2背圧室が形成され、伸び側メインバルブ及び縮み側メインバルブ、又は伸び側背圧ケース及び縮み側背圧ケースには、第1背圧室と室との間をシールする第1シール手段と、第2背圧室から第1背圧室への作動流体の移動を許容し、第1背圧室から第2背圧室への作動流体の移動を遮断する遮断手段と、が設けられる。
第1実施形態によれば、第1背圧室から第2背圧室への作動流体の移動が遮断手段によって遮断されるので、伸び側メインバルブ及び縮み側メインバルブの開弁時には、伸び側背圧導入通路及び縮み側背圧導入通路を介して第1背圧室の体積が補償される。これにより、従来の緩衝器に対して、伸び側メインバルブ及び縮み側メインバルブが開弁時に受ける背圧の受圧面積を小さくすることが可能であり、伸び側メインバルブ及び縮み側メインバルブの閉弁圧力を低減することができる。その結果、伸び側メインバルブ及び縮み側メインバルブの開弁応答性の低下が抑止されるので、減衰力のオーバーシュートを防ぐことができる。
第1実施形態では、第1シール手段及び遮断手段を、第1背圧室側へ向かって延びる弾性シール部材によって構成したので、第1背圧室と第2背圧室とを液密にシールすることができる。また、第1シール手段は、外側筒部と当接可能な外側リップであり、遮断手段は、仕切り筒部と接離可能な内側リップであり、第1シール手段と遮断手段とは一体に形成され、弾性シール部材を伸び側メインバルブ及び縮み側メインバルブに固着したので、部品数が増加することがなく、組付性の低下を防ぐことができる。
第1実施形態では、伸び行程時に、伸び側メインバルブの内側リップが伸び側背圧ケースの仕切り筒部と離間するので、伸び側オリフィス通路を介して第1背圧室に作動流体を導入することができる。また、縮み行程時には、伸び側メインバルブの内側リップが伸び側背圧ケースの仕切り筒部と当接するので、第1背圧室と伸び側オリフィス通路との連通を遮断することができる。これにより、縮み行程時に、上流側の室の作動流体が、第1背圧室、伸び側オリフィス通路を介して下流側の室へ移動することによる、減衰力の抜けを防止することができる。
(第2実施形態)
次に、図4を参照して第2実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違部分について説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
第1実施形態では、第1背圧室119(219)と第2背圧室120(220)との間に、第2背圧室120(220)から第1背圧室119(219)への作動流体の移動を許容するチェック弁125(225)を設け、第2背圧室120(220)から第1背圧室119(219)へ作動流体を導入するときの内側リップ122(222)の開弁圧力が高い場合、チェック弁125(225)を開弁させて第2背圧室120(220)の作動流体を第1背圧室119(219)へ導入することにより、第1背圧室119(219)と第2背圧室120(220)との間に圧力損失が発生することによる、導入圧力の低下を防止するように構成した。
これに対し、第2実施形態では、第1実施形態のようなチェック弁125(225)を備えておらず、伸び行程時に、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体が、伸び側通路21、環状通路138、オリフィス139、環状通路140、通路137、環状通路136、径方向通路135、軸孔15、径方向通路132、環状通路131、オリフィス130(伸び側オリフィス通路)を介して第2背圧室120へ導入される。そして、内側リップ122が外側へ弾性変形された仕切り筒部114の内円筒面117から離間されることにより、第2背圧室120から第1背圧室119へ作動流体が導入される。
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、図5を参照して第3実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違部分について説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
第1実施形態は、パイロット弁を備えており、ソレノイド51を用いてピストンボルト7の共通通路13内の作動流体の流れを制御することにより、減衰力特性を可変させるように構成されている。
これに対し、第3実施形態は、このようなパイロット弁を備えていない。このように、第3実施形態では、ピストンボルト7を有していないので、ピストン3、伸び側背圧ケース104、及び縮み側背圧ケース204等のピストンボルト7の軸部8に取り付けられる部品は、ピストンロッド6に取り付けられる。
図5に示されるように、伸び側メインバルブ103とピストン3の内周部との間には、複数枚のディスクが積層される。該複数枚のディスクのうち、伸び側メインバルブに隣接するディスク151には、外側端部から径方向へ延びる複数本の溝152が形成される。伸び側メインバルブ103の内周部には、ディスク151の溝152に連通する溝153が形成される。そして、伸び行程時(順行程時)には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体を、伸び側通路21、環状通路138、ディスク151の溝152、及び伸び側メインバルブ103の溝153を介して第2背圧室120へ導入する伸び側オリフィス通路が形成される。
一方、縮み行程時には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体を、オリフィス128(伸び側背圧導入通路)、環状通路124、及び通路141を介して第1背圧室119へ導入することにより、内側リップ122を仕切り筒部114に当接させて第1背圧室119と第2背圧室120との連通、延いては第1背圧室119と伸び側オリフィス通路との連通が遮断される。
伸び側メインバルブ103とピストン3の内周部との間には、複数枚のディスクが積層される。該複数枚のディスクのうち、伸び側メインバルブ103に隣接するディスク151には、外側端部から径方向へ延びる複数本の溝152が形成される。伸び側メインバルブ103の内周部には、ディスク151の溝152に連通する溝153が形成される。そして、伸び行程時(順行程時)には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体を、伸び側通路21、環状通路138、ディスク151の溝152、及び伸び側メインバルブ103の溝153を介して第2背圧室120へ導入する伸び側オリフィス通路が形成される。
また、縮み行程時(逆行程時)には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体を、オリフィス128(伸び側背圧導入通路)、環状通路124、及び通路141を介して第1背圧室119へ導入することにより、内側リップ122を仕切り筒部114に当接させて第1背圧室119と第2背圧室120との連通、延いては第1背圧室119と伸び側オリフィス通路との連通が遮断される。
一方、縮み側メインバルブ203とピストン3の内周部との間には、複数枚のディスクが積層される。該複数枚のディスクのうち、縮み側メインバルブ203に隣接するディスク251には、外側端部から径方向へ延びる複数本の溝252が形成される。縮み側伸び側メインバルブ203の内周部には、ディスク251の溝252に連通する溝253が形成される。そして、縮み行程時(順行程時)には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体を、縮み側通路22、環状通路238、ディスク251の溝252、及び縮み側メインバルブ203の溝253を介して第2背圧室220へ導入する縮み側オリフィス通路が形成される。
また、伸び行程時(逆行程時)には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体を、オリフィス228(伸び側背圧導入通路)、環状通路224、及び通路241を介して第1背圧室219へ導入することにより、内側リップ222を仕切り筒部214に当接させて第1背圧室219と第2背圧室220との連通、延いては第1背圧室219と縮み側オリフィス通路との連通が遮断される。
第3実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、図6を参照して第4実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違部分について説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
第1実施形態では、外側リップ121と内側リップ122とは、伸び側メインバルブ103から第1背圧室119側へ向かって延びるパッキン(弾性シール部材)からなり、外側リップ121と内側リップ122とは、一体に形成されて伸び側メインバルブ103のディスクの一側面の外側縁部に固着されていた。また、外側リップ221と内側リップ222とは、縮み側メインバルブ203から第1背圧室219側へ向かって延びるパッキン(弾性シール部材)からなり、外側リップ221と内側リップ222とは、一体に形成されて縮み側メインバルブ203のディスクの一側面の外側縁部に固着されていた。
これに対し、第4実施形態では、伸び側メインバルブ103は、外側縁部がピストン3のシート部102に着座するディスクバルブ161と、環状のスプール162(弾性シール部材、シール部)と、が切り離されて構成される。スプール162は、伸び側背圧ケース104の第1背圧室119の内側、すなわち、環状溝115の外円筒面116と内円筒面117との間に摺動可能に嵌合される。第1背圧室119は、スプール162と伸び側背圧ケース104の底部111との間に形成される。
スプール162は、環状溝115に収容された円錐コイルばね163(ばね部材)のばね力によってディスクバルブ161の方へ付勢されることにより、スプール162のピストン3側の端面に形成された環状突部164がディスクバルブ161の外側縁部に当接される。これにより、伸び側背圧室105は、スプール162によって第1背圧室119と第2背圧室120とに区画される。
一方、縮み側メインバルブ203は、外側縁部がピストン3のシート部202に着座するディスクバルブ261と、環状のスプール262(弾性シール部材、シール部)と、が切り離されて構成される。スプール262は、縮み側背圧ケース204の第1背圧室219の内側、すなわち、環状溝215の外円筒面216と内円筒面217との間に摺動可能に嵌合される。第1背圧室219は、スプール262と縮み側背圧ケース204の底部211との間に形成される。
スプール262は、環状溝215に収容された円錐コイルばね263(ばね部)のばね力によってディスクバルブ261の方へ付勢されることにより、スプール262のピストン3側の端面に形成された環状突部264がディスクバルブ261の外側縁部に当接される。これにより、縮み側背圧室205は、スプール262によって第1背圧室219と第2背圧室220とに区画される。
そして、伸び行程時には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体は、伸び側オリフィス通路を介して第2背圧室120へ導入され、さらに、第2背圧室120へ導入された作動流体は、通路127、チェック弁125、環状通路124、及び通路141を介して第1背圧室119へ導入される。他方、縮み行程時には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体は、オリフィス128(伸び側背圧導入通路)を介して第1背圧室119へ導入され、チェック弁125は、第1背圧室119と第2背圧室120との連通、延いては第1背圧室119と伸び側オリフィス通路との連通を遮断する。
第4実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
(第5実施形態)
次に、図7を参照して第5実施形態を説明する。ここでは、第1及び第4実施形態との相違部分について説明する。なお、第1及び第4実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
第4実施形態では、スプール162は、外周面171が伸び側背圧ケース104の環状溝115の外円筒面116に摺動可能に当接され、内周面172が環状溝115の内円筒面117に摺動可能に当接される。他方、スプール262は、外周面271が縮み側背圧ケース204の環状溝215の外円筒面216に摺動可能に当接され、内周面272が環状溝215の内円筒面217に摺動可能に当接される。
これに対し、第5実施形態では、スプール162の内周部に、環状突部164側(ディスクバルブ161側)に底部173を有する環状溝174が形成される。環状溝174の底部173には、伸び側背圧ケース104の環状溝115の内円筒面117(仕切り筒部114の外周面)に接離可能に当接される内側リップ122(遮断手段)が設けられる。内側リップ122は、内円筒面117に当接されることで、第1背圧室119から第2背圧室120への作動流体の移動を遮断し、他方、内円筒面117から離間されることで、第2背圧室120から第1背圧室119への作動流体の移動を許容する。
一方、スプール262の内周部には、環状突部264側(ディスクバルブ261側)に底部273を有する環状溝274が形成される。環状溝274の底部273には、縮み側背圧ケース204の環状溝215の内円筒面217(仕切り筒部214の外周面)に接離可能に当接される内側リップ222(遮断手段)が設けられる。内側リップ222は、内円筒面217に当接されることで、第1背圧室219から第2背圧室220への作動流体の移動を遮断し、他方、内円筒面217から離間されることで、第2背圧室220から第1背圧室219への作動流体の移動を許容する。
第5実施形態によれば、前述した第1及び第4実施形態と同等の作用効果を得ることができる。