特許法第30条第2項適用 (1)日刊電波新聞(平成29年6月16日発行),第4頁,出版社:株式会社電波新聞社 (2)ウェブサイト「http://www.t-p-s.co.jp/overview_e_devices/」(平成29年6月30日掲載)
本発明の実施形態について、第1実施形態と第2実施形態を例に挙げ、各図面を参照しながら以下に説明する。なお、各実施形態に係るコンタクトの説明に関して、上下、左右および前後の各方向(互いに直交する方向である)は、各図に示す通りである。
1.第1実施形態
[コンタクトの全体構成]
まず第1実施形態について説明する。図1および図2は、それぞれ異なる方向から見たコンタクトXの外観斜視図であり、図3は、コンタクトXの上下方向中央の面で切断した場合の下方視点による断面図である。またコンタクトXについて、図3に示すA-A´断面の矢視図を図4に、図3に示すB-B´断面の矢視図を図5にそれぞれ示す。また図6には、ハウジング部1の一部を除去した状態におけるコンタクトXの斜視図を示す。
コンタクトXは、一枚の導電性の板材を折り曲げ加工することにより、ハウジング部1、板バネ部2(図3参照)、および突出部3が一体的に形成された突出部付勢型のコンタクトである。なお本実施形態では、当該導電性の板材として、金属板材(例えばステンレス(SUS301など)を材質とする板材)が採用されている。ハウジング部1、板バネ部2、および突出部3を一連の金属板材により一体的に形成することにより、コンタクトXの製造工程においてこれら各部同士の接着は不要となり、接着不良等が回避されるとともに、コンタクトXを効率良く形成することが可能である。コンタクトXは、携帯型通信端末等へ搭載され得るように非常に小型化されており、左右方向の寸法は4mm程度であり、板材は0.1mm程度となっている。
図1におけるコンタクトXの設置状態を標準として、その各部構成について、各図を参照しながら説明する。図1、図2において、ハウジング部1は、底面に当たる下壁部11と、これに連接する後壁部12、前壁部13、右壁部14と、下壁部11に対向する上壁部15とを有し、板バネ部2を収容する略直方体状の筐体に形成されている。但し、当該筐体においては、前壁部13の右側に設けられた開口部SPの他、各図に示すとおりの開口部分が各所に設けられている。なお前壁部13は、前側前壁部13aの後側に後側前壁部13bが密着して形成されている。また右壁部14は、前上側右壁部14aU、前下側右壁部14aD、後上側前壁部14bU、および後下側前壁部14bDを含む。
前記ハウジング部1の各壁部の名称は、板バネ部2から見てどの方向に配置されているかを概ね表している。即ち、下壁部11は下側の壁となるよう配置されており、後壁部12は後側の壁となるよう配置されており、前壁部13は前側の壁となるよう配置されており、右壁部14は右側の壁となるよう配置されており、上壁部15は上側の壁となるよう配置されている。
後壁部12は、下壁部11の後側の縁から延出した部分が、当該縁において上側へ直角に折り曲げられた形態となっている。前側前壁部13aは、下壁部11の前側の縁から延出した部分(開口部SPに相当する部分を除く)が、当該縁において上側へ直角に折り曲げられた形態となっている。上壁部15は、後壁部12の上側の縁から延出した部分が、当該縁において前側に直角に折り曲げられた形態となっている。後側前壁部13bは、上壁部15の前側の縁から延出した部分(開口部SPに相当する部分を除く)が、当該縁において下側へ直角に折り曲げられた形態となっている。
前上側右壁部14aUは、上壁部15の右前側から延出した部分が、下側へ直角に折り曲げられた形態となっている。前下側右壁部14aDは、下壁部11の右前側から延出した部分が、上側へ直角に折り曲げられた形態となっている。後上側右壁部14bUは、上壁部15の右後側から延出した部分が、下側へ直角に折り曲げられた形態となっている。後下側右壁部14bDは、下壁部11の右後側から延出した部分が、上側へ直角に折り曲げられた形態となっている。前上側右壁部14aUの下側の縁と前下側右壁部14aDの上側の縁は、僅かな隙間を設けて上下方向に対向している。後上側右壁部14bUの下側の縁と後下側右壁部14bDの上側の縁は、僅かな隙間を設けて上下方向に対向している。
なお、前側前壁部13aの左右方向中央部の下寄りの位置には、孔部13a1が設けられ、後側前壁部13bにおける孔部13a1に対応する位置には、爪部13b1が設けられている。爪部13b1は、後側前壁部13bの当該位置に下側の辺を除いた矩形状の切り込み(略「コ」の字状の切り込み)が設けられ、当該下側の辺に相当する位置を回転軸として少しだけ前方へ回転するように折り曲げて形成されたものである。前壁部13において、爪部13b1は孔部13a1内に位置し、爪部13b1の上側の縁(左右に伸びる縁)は、孔部13a1の上側の縁(左右に伸びる縁)に対向して接している。
前壁部13の右側に形成された開口部SPは、前壁部13の右側の縁(上下に伸びている)と、下壁部の前側の縁(左右に伸びている)と、前下側右壁部14aDの前側の縁(上下に伸びている)と、前上側右壁部14aUの前側の縁(上下に伸びている)と、上壁部15の前側の縁(左右に伸びている)とに囲まれており、ハウジング部1を前方に開口させている。前壁部13の表面と開口部SPは、略同一平面上に位置している。
板バネ部2は、後壁部12の右端から延出するように形成されている。板バネ部2は、図3に示すように各箇所で曲げられた帯状(幅方向が上下方向に一致する)となっており、端部には突出部3が連接している。
板バネ部2は、後壁部12に連接した一端から前方に向けて、左右に蛇行しながら伸びている。すなわち板バネ部2は、後壁部12の右端から伸びており、ハウジング部1の内側において、幅方向に見て蛇行するように形成されている。より具体的に説明すると、板バネ部2は後壁部12の右端から順に、下側ターン部21、後側直進部22、上側ターン部23、前側直進部24が連接して形成されている。
下側ターン部21は、幅方向に見て、後壁部12の右端から前寄りに略半円を描いてUターンするように曲げられた部分である。後側直進部22は、幅方向に見て、下側ターン部21の端部から左方へ直進した部分である。上側ターン部23は、幅方向に見て、後側直進部22の端部から前寄りに略半円を描いてUターンするように曲げられた部分である。前側直進部24は、幅方向に見て、上側ターン部23の端部から右方へ直進した部分である。
前側直進部24は、前壁部13の直ぐ後方に配置されている。そして前側直進部24の右方には、突出部3が連接している。突出部3は、ハウジング部1に設けた開口部SPから前方へ突出するように形成されており、接続対象との接触が予定される部分である。
前記突出部3は、図20の展開図に示すように、矩形状の先端接触部31と、この矩形の左右各辺に連接する左方側壁部32L、右方側壁部32Rと、前記矩形の上下辺に連接する上ガイド壁部32U、下ガイド壁部32Dとから成るもので、曲げ加工により前側に凸であるドーム状に形成されたものである。前記矩形状の先端接触部31の左右辺の寸法は0.5mm、であり、上下辺の寸法は0.6mmとなっており、左右の側壁32L、32Rは接触先端部31との連接部分の寸法が0.1mm狭くなっている。これにより各ガイド壁部32U、32Dの曲げ曲率を大きくすることが出来る。
前記先端接触部31は、突出部3の突出方向である前方の先端近傍の部分であり、コンタクトXの前方に位置する接続対象に接触可能である。右方側壁部32Rは、先端接触部31の右側から、右方へ膨らむように湾曲しながら後寄りへ伸びている。右方側壁部32Rの後端は開口部SPよりも僅かに後側に位置し、先端はフリーの状態とされている。左方側壁部32Lは、先端接触部31の左側から、左方へ膨らむように湾曲しながら後寄りへ伸びている。左方側壁部32Lの後端は、板バネ部2における前側直進部24の右端に連接している。
従って、左方側壁部32L、先端接触部31及び右方側壁部32Rは連接して逆U字状の突出部3を形成している。また、先端突出部31は図4に示すように横断面が凸状であって、上側が弧状の先端部上ガイド面31-1、下側が弧状の先端部下ガイド面31-2となっている。
図1において、上ガイド壁部32Uは、先端接触部31の上側から、前記先端部上ガイド面31-1の弧状軌跡に沿って上方へ膨らむように湾曲した上湾曲ガイド部32U-1を経て後寄りへ伸びている。上ガイド壁部32Uの後端は、開口部SPよりも後方へ至るまで伸びており、図4に示すように、後端近傍において上側へ少し膨らむ上側凸部41Uが設けられている。
図2において、下ガイド壁部32Dは、先端接触部31の下側から、前記先端部下ガイド面31-2の弧状軌跡に沿って下方へ膨らむように湾曲した下湾曲ガイド部32D-1を経て後寄りへ伸びている。下ガイド壁部32Dの後端は、開口部SPよりも後方へ至るまで伸びており、図4に示すように、後端近傍において下側へ少し膨らむように下側凸部41Dが設けられている。なお、上下のガイド壁部32U、32D、左右の側壁部32L、32Rおよび先端接触部31の表面は、一連の曲面(前側に凸である曲面)として形成されている。
また、図3において、板バネ部2における前側直進部24のやや右寄りの部分には、当該前側直進部24の動きをガイドする上側ガイド部42Uおよび下側ガイド部42Dが連接している。前記上側ガイド部42Uは、図5および図6に示すように、前側直進部24の上側の縁から上方へ延出した部分が、当該縁において後方へ折り曲げられて形成されている。また、前記下側ガイド部42Dは、前側直進部24の下側の縁から下方へ延出した部分が、当該縁において後方へ折り曲げられて形成されている。
上記のように突出部3は、前側寄りの部分が開口部SPから前方へ突出しており、初期状態(突出部3が後方へ押されていない状態を指す。以下同様。)においてその突出量は最大となっている。また突出部3は、板バネ部2によって前方に付勢されている。突出部3が接続対象により後方へ押されると、突出部3はその分、板バネ部2の付勢に抗してハウジング部1の内側に向けて移動する。接続対象によって先端接触部31が後方へ押された状態では、板バネ部2の付勢によって先端接触部31は接続対象に密着し、双方の安定的な接触状態が得られる。
なお、後側直進部22から前側直進部24までの部分は、上下方向(幅方向)に見て略U字状となったU字状部を形成している。このU字状部は、前側直進部24とその後側で並行する後側直進部22とが左側の端部同士で繋がって略U字状となっている。板バネ部2は、このようなU字状部を含む蛇行した形状となっているため、例えば片持ち梁等の形状とした場合に比べて安定した弾性を有し、適正な接触力が発揮される突出部3の移動範囲(ワーキングエリア)を広く取ることできる。
また図3に示すように、後側前壁部13bの右端部分は、後方に向けて折り曲げられた支持部(支持片)13b2となっている。初期状態において、前側直進部24は、板バネ部2の弾性力によって支持部13b2の右側縁を前方へ押す格好となっている。言い換えれば、支持部13b2は初期状態において、前側直進部24を板バネ部2の付勢に抗して支持している。支持部13b2の折り曲げの深さ(折り曲げ角度)を大きくするほど、支持部13b2の右側縁は後方へ移動するため、初期状態における突出部3の位置は後方となり、支持部13b2が前側直進部24から受ける荷重は大きくなる。この原理を利用して、例えばコンタクトXの製造時における支持部13b2の折り曲げの深さを変えることにより、初期状態における突出部3の突出量、または初期状態において支持部13b2が前側直進部24から受ける荷重を調整することが可能である。
またハウジング部1は、板バネ部2を収容し、外部からの物体衝突や異物付着等から保護する役割を果たす。板バネ部2の右端(右側ターン部21)は、後上側前壁部14bUおよび後下側前壁部14bDよりも左側に収まっており、物体衝突等から効果的に保護される。板バネ部2の左端(左側ターン部23)は、ハウジング部1の左側の開口部端面より外側には出ておらず、物体衝突等から効果的に保護される。当該保護をより十分とするべく、ハウジング部1は、板バネ部2の左側にも壁部を有するようにしても良い。コンタクトXは、以上に説明した構成を有しており、先端接触部31に接触した接続対象を被接続対象へ電気的に接続するための部品として機能する。
[コンタクトの使用形態]
次に、コンタクトXの使用形態について説明する。コンタクトXは、例えばスマートフォン(携帯型通信機器)などの電気機器内に設けられ、回路基板等の部品同士を電気的に接続することが可能である。以下、コンタクトXの使用形態の一例として、スマートフォンSFに内蔵される基板BD(被接続対象の一形態)にコンタクトXが取付固定され、コンタクトXがスマートフォンSFのフレームFR(接続対象の一形態)を基板BDに電気的に接続する例を挙げて説明する。
図7は、コンタクトXを基板BDに取付固定した各例を示す。コンタクトXは、下壁部11、上壁部15、および後壁部12の何れにおいても外面側に平坦な領域が設けられており、これらの領域が基板BDへの実装面として機能する。例えば下壁部11においては、図2に示す3箇所の領域(S1、S2およびS3)が実装面として機能する。このような実装面は、例えば半田付け等によって基板BDの表面に接着固定され、基板BD側の回路パターン等と電気的に接続させることが可能である。
図7(A)は、下壁部11が基板BDに接続固定された例を、図7(B)は、上壁部15が基板BDに接続固定された例を、図7(C)は、後壁部12が基板BDに接続固定された例を、それぞれ示している。このようにコンタクトXは、状況に応じて各種の形態で基板BDに取付可能であり、汎用性の高い部品となっている。
図8は、コンタクトXを実装したスマートフォンSFの概略的な構成図であり、図9は、図8に示したC-C´断面の矢視図である。図8においては簡略化のため、フレームFR、基板BD、およびコンタクトX以外の構成要素については表示を省略している。
コンタクトXは、基板BDの表面(図9における上側の面)における短手方向両端近傍において、突出部3が基板BDの短手方向の縁よりも外側へ突出するように実装(取付固定)されている。また、フレームFRはスマートフォンSFの全周に亘る側壁を形成しており、フレームFRの内側に基板BDが嵌合されている。このように基板BDを嵌合させることにより、コンタクトXの突出部3にフレームFRへ接続させることが可能である。
突出部3はフレームFRの内壁に押された状態となっている。板バネ部2の作用により、突出部3とフレームFRの内壁との間には適度な接触力が生じており、双方の安定した接触が得られている。フレームFRは例えばアンテナとして機能させることができ、この場合はコンタクトXの作用により、基板BD上の回路が当該アンテナに電気的に接続される。
また、コンタクトXを用いて基板BD上の回路をフレームFRに電気的に接続させる形態(以下、「本実施例」とする。)では、図9に破線で示す領域(基板BDの下側)にもスペースを確保することが可能である。そのため本実施例では、基板BDの下面に回路部品等をより十分に配置することができ、例えば図16および図17に示す形態(以下、「比較例」とする。)に比べ、基板BDへの部品実装の点で有利である。
ここで上記の比較例について説明する。なお図16は、比較例に係るスマートフォンの概略的な構成図であり、図17は、図16に示したD-D´断面の矢視図である。比較例では、基板BDx(本実施例での基板BDに相当)とフレームFRx(本実施例でのフレームFRに相当)とを、金属性のねじSCを用いて接続している。比較例においても、基板BDxをフレームFRxに電気的に接続させることは可能であるが、基板BDxにねじ用の穴が必要となり、図17に破線で示す領域(当該穴の近傍)に回路部品等を配置することが出来ない。すなわち比較例では基板BDxにこのようなデッドスペースが生じるが、本実施例ではこのようなデッドスペースが生じない分、基板BDへの部品実装の点で有利である。
また比較例では、フレームFRxにねじ止め用のタップ穴を形成する必要がある。一方で本実施例では、このようなタップ穴は不要であるため、その分だけフレームFRの制作費用を抑えることが可能である。更に比較例では、ねじSCの調達コスト、ねじ止めの作業コスト、およびねじSCの緩みによる接続不良を防止するための対応コスト等が必要となる。本実施例では、このようなコストが不要であり、基本的にはコンタクトXを実装した基板BDをフレームFR内へ嵌合させれば良いため、スマートフォンSFの製造コストや品質管理コスト等を抑えることが可能である。
また図10に示すように、コンタクトXを基板BDの裏面(図10における下側の面)に実装しておき、基板BDをフレームFRへ電気的に接続させることも可能である。この場合には、基板BDの表面にスペースをより十分に確保することができ、基板BDの上面への部品実装の点で非常に有利となる。
次に、コンタクトXを実装した基板BDをフレームFR内へ嵌合させる工程について、図11を参照しながら説明する。なお図11に示すように、フレームFRの上部内側は面取りがなされており、これにより傾斜面FR1が形成されている。傾斜面FR1は、基板BDの表面と平行な面に対して45°程度の傾斜をもつように形成されている。
図11(A-1)~(A-3)は、コンタクトXが上面に実装された基板BDを、フレームFR内へ嵌合させる工程の様子を示している。この工程においてフレームFRは、側方接近形態によりコンタクトXに接続されることになる。図11(A-1)に示す嵌合前の状況では、突出部3は未だフレームFRに押されておらず、突出部3が最も突出した初期状態となっている。また、下ガイド壁部32Dが傾斜面FR1の最上部近傍に位置している。
この状態から基板BDを移動させてフレームFR内への嵌合を進める際には、図11(A-2)に示すように、下ガイド壁部32Dは傾斜面FR1上をスライドする格好となり、突出部3は傾斜面FR1から後方への力を受けて後退する。この状況において、下ガイド壁部32Dの傾斜面FR1に接する箇所は湾曲しているため、下ガイド壁部32Dは傾斜面FR1をスムーズにスライドすることができ、傾斜面FR1が傷つくことも抑えられる。最終的には図11(A-3)に示すように、基板BDがフレームFRの奥にまで押し込まれて完全に嵌合し、先端接触部31がフレームFRの内壁FR2に接触する。
また図11(B-1)~(B-3)は、コンタクトXが下面に実装された基板BDを、フレームFR内へ嵌合させる工程の様子を示している。この工程においてもフレームFRは、側方接近形態によりコンタクトXに接続されることになる。図11(B-1)に示す嵌合前の状況では、突出部3は未だフレームFRに押されておらず、突出部3が最も突出した初期状態となっている。また、上ガイド壁部32Uが傾斜面FR1の最上部近傍に位置している。
この状態から基板BDを移動させてフレームFR内への嵌合を進める際には、図11(B-2)に示すように、上ガイド壁部32Uは傾斜面FR1上をスライドする格好となり、突出部3は傾斜面FR1から後方への力を受けて後退する。この状況において、上ガイド壁部32Uの傾斜面FR1に接する箇所は湾曲しているため、上ガイド壁部32Uは傾斜面FR1をスムーズにスライドすることができ、傾斜面FR1が傷つくことも抑えられる。最終的には図11(B-3)に示すように、基板BDがフレームFRの奥にまで押し込まれて完全に嵌合し、先端接触部31がフレームFRの内壁FR2に接触する。
上述したとおりコンタクトXは、下ガイド壁部32Dや上ガイド壁部32Uが湾曲して丸みを帯びているため、突出部3の側方(突出部3の突出方向と直交する方向)から傾斜面FR1に押されるようにして、突出部3を適切に後退させることが可能である。なおコンタクトXは、左方側壁部32Lおよび右方側壁部32Rが先端接触部31と一連の逆U字状接触部になっているため、上述した下ガイド壁部32Dや上ガイド壁部32Uと同様の機能を発揮することが可能である。すなわちコンタクトXは、左方側壁部32L右方側壁部32Rが左側または右側から傾斜面FR1に押されるようにして、突出部3を適切に後退させることも可能である。
またコンタクトXにおいては、突出部3の各側壁部及びガイド壁部が湾曲しているため、上述したような傾斜面に押される場合に限らず、突出部3の側方から各種形状の接続対象に押される場合にも、突出部3を適切に後退させることが可能である。そのためコンタクトXは、種々の接続対象に対応可能な汎用性の高い部品となっている。この点について、図12の例を参照しながら具体的に説明する。
図12は、コンタクトXを実装した基板BDに直方体形状の接続対象Obを種々の形態で接近させ、接続対象Obを基板BDへ電気的に接続させる工程の様子を示している。
図12(A)は、接続対象ObをコンタクトXの下側から突出部3に接触させる様子を示している。この場合は、まず接続対象Obの角部分(本図において点線で囲まれた部分)が下ガイド壁部32Dに当接する。しかし下ガイド壁部32Dが湾曲しているために、この角部分が下ガイド壁部32Dに引っ掛かることはなく、接続対象Obは突出部3をスムーズに押し退けながら進むことが出来る。
即ち、下ガイド壁部32Dは、図20に示すように左右側壁部32L,32Rの板幅より狭い先端接触部31の下側辺から延出されており、そのつけ根部分が先端接触部31の弧状の下ガイド面31-2の軌跡に沿って屈曲されて下湾曲ガイド部32D-1を形成している。図2から明らかなように下壁部11と側壁部32L,32Rの側面との間隔より先端接触部31の下側辺と下壁部11との間隔を広くした分だけ、下湾曲ガイド部32D-1の湾曲寸法を多くとることが出来る。
このため、先端接触部31の下ガイド面31-2と下湾曲ガイド部32D-1とにより形成される弧状部分は、断面が弧状に形成された側壁部32L,32Rの下側弧状部分より外方に広がっている(図2参照)。
従って、接続対象Obの角部分が側壁部32L,32Rの側面部分に当接する位置関係にあっても、角部分はまず前記側面部分より下側(外側)に位置する下湾曲ガイド部32D-1に当接するので、その湾曲面に沿って下ガイド面31-2に移動し、スムーズに先端接触部31の先端部分に接触することになる。
つまり、下湾曲ガイド部32D-1に加わった角部分の当接外力は当該下湾曲ガイド部32D-1の接線方向と、法線方向とに分解される。この法線方向の分力は突出部3を押し込む力と幅方向へ位置づれする力に分けることが出来る。このうち、幅方向へ位置づれさせる力は、後述する上ガイド壁部32Uの作用により吸収、緩和されるので、当該突出部が幅方向に大きく変位することがなく、当該接触部3を押し込む力によって接触部3がハウジング1内に後退する。これにより、接続対象Obが先端接触部31の頂点部分に位置し、前記バネ部2の弾性力により安定的に接触接続することが出来る。この点において、従来の突出部付勢型コンタクトとは大きく異なる。
なお、前記角部分が下湾曲ガイド部32D-1に当接した際には、突出部3を押し上げる力(幅方向に変位させる力)が作用する。この場合、上ガイド壁部32Uは上側凸部41Uが図4に示すように上壁部15内面に弾性的に圧接しているので、その上ガイド壁部32Uの弾性力により前記突出部3の上方向への変位を吸収、緩和し、突出部3、左右側壁部32L,32R等の変形を防止する。上ガイド壁部32Uが上壁部15内面に弾性的に圧接していないと前記突出部3にかかる上方向の力により、当該接触部3等は位置づれ、変形を起こすことになる。
換言すれば、上下のガイド壁部32U,32Dは、接続対象Obを前記先端接触部31にスムーズに案内する役割と、前記先端接触部31に加わる外力に対する緩衝材の役割を担っている。また、合せて導電路の役割を持たせることが出来る。
図12(B)は、接続対象ObをコンタクトXの上側から突出部3に接触させる様子を示している。この場合は、まず接続対象Obの角部分(本図において点線で囲まれた部分)が上ガイド壁部32Uに当接する。しかし上ガイド壁部32Uが湾曲しているために、この角部分が上ガイド壁部32Uに引っ掛かることはなく、接続対象Obは突出部3をスムーズに押し退けながら進むことが出来る。
上記の場合においては、上ガイド壁32Uが前記下ガイド壁32Dと同様の役割を果たすことになるが、説明は省略する。
図12(C)は、接続対象ObをコンタクトXの右側から突出部3に接触させる様子を示している。この場合は、まず接続対象Obの角部分(本図において点線で囲まれた部分)が右方側壁部32Rに当接する。しかし右方側壁部32Rが湾曲しているために、この角部分が右方側壁部32Rに引っ掛かることはなく、接続対象Obは突出部3をスムーズに押し退けながら進むことが出来る。
図12(D)は、接続対象ObをコンタクトXの左側から突出部3に接触させる様子を示している。この場合は、まず接続対象Obの角部分(本図において点線で囲まれた部分)が左方側壁部32Lに当接する。しかし左方側壁部32Lが湾曲しているために、この角部分が左方側壁部32Lに引っ掛かることはなく、接続対象Obは突出部3をスムーズに押し退けながら進むことが出来る。
上記のように、突出部3の側方の各方向(上下左右)の何れから接続対象Obを突出部3へ接近させても、接続対象Obは突出部3に引っ掛かることなく、突出部3をスムーズに押し退けるように進みことが出来る。そして最終的には、突出部3の先端接触部31を接続対象Obへ接触させることが可能である。なお、図12(E)に示すように、接続対象Obを前方から突出部3へ接近させるようにしても、突出部3の先端接触部31を接続対象Obへ接触させることが可能である。
[開き防止用フック機構]
先述したとおり、前側前壁部13aには孔部13a1が設けられ、後側前壁部13bには爪部13b1が設けられている(図1等を参照)。更に前壁部13において、爪部13b1は孔部13a1内に位置し、爪部13b1の上側の縁は、孔部13a1の上側の縁に対向して接している。爪部13b1は、外力によるハウジング部1の開き(変形による不具合)を防止するためのフック機構として機能する。この点について、図13を参照しながら詳細に説明する。
図13は、フレームFRを下方から突出部3に接近させる状況(図11(A-1)~(A-3)と同様の状況)を示す斜視図である。図13に点線矢印で示すようにフレームFRが上方へ移動すると、突出部3は、後退しながらも上方への力をフレームFRから受けることになる。この力に起因して、図13に着色矢印で示すように、上壁部15が上向きの力(ハウジング部1が開く方向の力)を受けることになる。
しかしこのような状況となっても、本実施形態では爪部13b1が孔部13a1に引っ掛かることにより、前側前壁部13aと後側前壁部13bにおける上下の位置ずれ(上壁部15と下壁部11が離れる方向への位置ずれ)が抑制され、ハウジング部1の開き(変形による不具合)は防止される。このように前側前壁部13aと後側前壁部13bは、上下の位置ずれが抑制されるように、一方に設けた突起(後側前壁部13bに設けた爪部13b1)が他方に(前側前壁部13a)に引っ掛かるように形成されている。なお、このような突起は、前側前壁部13aと後側前壁部13bの何れに設けるようにしても良い。
ハウジング部1は、前壁部13を有して板バネ部2を前後上下から覆うように、金属板材の所定部分(前側前壁部13a、下壁部11、後壁部12、上壁部15、および後側前壁部13bが順に連接した部分)が筒状をなすように折れ曲がって形成されている。また前壁部13は、当該所定部分の一端側にある前側前壁部13aと、当該所定部分の他端側にある後側前壁部13bが、前後に重なって形成されている。更に前側前壁部13aと後側前壁部13bは、上下の位置ずれが抑制されるように、一方に設けた突起(爪部13b1)が他方に引っ掛かるように形成されている。そのため、外力によるハウジング部1の開きを極力防止することが可能となっている。
[ガイド部の役割]
また先述したとおり、コンタクトXには、ハウジング部1の内壁に接触する上側凸部41U、下側凸部41Dを有する上ガイド壁部32U、下ガイド壁部32Dが設けられている上に、少し左方向に離間して1対の上側ガイド部42U、下側ガイド部42Dが設けられている(図4~図6を参照)。これらの凸部、ガイドは、板バネ部2および突出部3の位置ずれ(上下方向へ回転するような動き)を抑える役割を果たす。
より具体的に説明すると、突出部3が接続対象等に押されて後退する際、上ガイド壁部32Uの上側凸部41Uおよび上側ガイド部42Uは、上壁部15の内側をスライドし、下ガイド壁部32Dの下側凸部41Dおよび下側ガイド部42Dは、下壁部11の内側をスライドする。なお、上壁部15の内側および下壁部11の内側は、ハウジング部1の内壁に該当する。そのため例えば図13に示すように、突出部3がフレームFRから上方への力を受けながら後退する場合であっても、各ガイド壁部(32U、32D)、各ガイド部(42U、42D)がハウジング部1の内壁と接触していることにより、板バネ部2および突出部3の位置ずれが抑制される。
なお、突出部3がフレームFR等から下方への力を受けながら後退する場合であっても、同様の原理により、板バネ部2および突出部3の位置ずれが抑制される。このように位置ずれが抑制されることにより、コンタクトXの動作を安定させるとともに、コンタクトXの品質劣化を抑えることが可能である。
また、上側、下側凸部(41U、41D)がハウジング部1へ接することにより、突出部3に接する接続対象とハウジング部1に接する被接続対象との間の電気長を短くすることが可能となっている。この点について図14を参照しながら以下に説明する。
図14(a)は下壁部11を基板BDに固定した状態を示し、図14(b)は上壁部15を基板BDに固定した状態を示し、図14(c)は後壁部12を基板BDに固定した状態を示している。また図14における太線は、接続対象の接触が予定される突出部3から基板BDまでの電流経路を示している。
本図に示すようにコンタクトXは、下壁部11、上壁部15、および後壁部12のいずれを基板BDに固定していても、上ガイド壁部32U或いは下ガイド壁部32Dを介することにより、当該電流経路が非常に短くなっている。例えば後壁部12を基板BDに固定した状態について、図18に太線で示すように電流経路が板バネ部2を介する場合に比べ、本実施形態の場合は電流経路が十分に短くなる(図14(c)を参照)。このように電流経路が短くなる(換言すれば、短絡導電路が形成される)と、その分だけ電気抵抗を抑えることが容易であるとともに、高周波信号の伝送等において有利となる。
また図1、図2および図4に示すように、突出部3が前方から押された際に下壁部11における下ガイド壁部32Dの下側凸部41Dがスライドする箇所には、上方への浅い窪み11aが設けられている。そのため、下ガイド壁部32Dの下側凸部41Dを下壁部11へより確実に接触させ、双方の電気的接触を安定させることが可能である。更に、突出部3が前方から押された際に上壁部15における上ガイド壁部32Uの上側凸部41Uがスライドする箇所には、下方への浅い窪み15aが設けられている。そのため、上方1ガイド壁部32Uの上側凸部41Uを上壁部15へより確実に接触させ、双方の電気的接触を安定させることが可能である。
これらの窪み(11a、15a)は上下方向にほぼ重なるように対向しており、ハウジング部1の上下方向の内壁の間隔を狭めている。この間隔は、各凸部41Dおよび41Uの先端同士の距離(上下方向の距離)よりも、僅かに小さくなっている。またこれらの窪み(11a、15a)は、板材への簡易なプレス加工等によって形成可能である。
なお図4に示すように、突出部3が前方から殆ど押されていない初期状態近傍においては、当該凸部41Dおよび41Uは、各窪み(11a、15a)よりも前側に位置している。この状態では、当該各凸部の先端は、ハウジング部1の内壁に軽く圧接しているだけである。そして突出部3が前方から所定量押されると、これらの凸部は各窪み(11a、15a)に挟まれた位置へ突入する。この状態では、各ガイド壁部(32U、32D)の弾性力を用いて、当該各凸部41D,41Uの先端はハウジング部1の内壁との間に所定の接触力を生じ、当該内壁へ圧着している。
ここで仮に、初期状態近傍においても上記各凸部41D、41Uが各窪み(11a、15a)に挟まれた位置にあるとすると、例えば突出部3を後方へ押圧して十分に移動させた後に押圧を解除した場合、初期状態近傍では板バネ部2の弾性力がゼロ或いは非常に弱いため、上記各凸部と各窪み(11a、15a)との摩擦により、突出部3が初期状態へ戻らない虞がある。この点、本実施形態では、初期状態近傍においては当該摩擦は殆ど発生しないため、突出部3をより確実に初期状態へ戻すことが可能である。なお本実施形態の初期状態近傍においては、上側、下側の凸部(41U、41D)とハウジング部1の内壁との当たりが軽くなっているが、各ガイド壁部32U,32Dがあることで、突出部3等の位置づれを抑制し、元の状態に復元させる復元力を付与している。上側、下側のガイド部(42U、42D)はハウジング部1の内壁と接触しているので、板バネ部2および突出部3の位置ずれ防止を助長する。
[耐衝撃性について]
コンタクトXは、ハウジング部1の構成に工夫が施されており、耐衝撃性においても優れた特性を有する。先述したとおり、前上側右壁部14aUの下側の縁と前下側右壁部14aDの上側の縁は、僅かな隙間を設けて上下方向に対向しており、後上側右壁部14bUの下側の縁と後下側右壁部14bDの上側の縁は、僅かな隙間を設けて上下方向に対向している。そのため、例えば上壁部15に上方から異物が衝突した場合であっても、各右壁部(14aU、14aD、14bU、14bD)がその力を受け止め、ハウジング部1の潰れを防ぐように機能する。
また図15に示すように、下壁部11の前側縁の一部αに、後側前壁部13bの下側縁の一部βを接触または近接して配置しておけば、上方から上壁部15に加わる衝撃を後側前壁部13bが受け止める格好となり、上述したようなハウジング部1の潰れをより十分に防ぐことが可能である。更に、前壁部13は前側前壁部13aと後側前壁部13bの二重構造となっているため、例えば前壁部13に前方から異物が衝突した場合であっても、前壁部13の撓みは生じ難くなっている。
[右壁部の他の構成例]
図19は、コンタクトXにおける右壁部14の他の構成例に関する構成図である。なお図19における下側の図は前側の右壁部RW1近傍の拡大図であり、ここではその構成を理解容易とするため、前側の右壁部RW1の前側半分を切断除去して表示している。図19に示す右壁部14は、図1等に示す前上側右壁部14aUの代わりに前右側右壁部14cUが、前下側右壁部14aDの代わりに前左側右壁部14cDが、後上側右壁部14bUの代わりに後右側右壁部14dUが、後下側右壁部14bDの代わりに後左側右壁部14dDが、それぞれ設けられている。なお、前右側右壁部14cUおよび後右側右壁部14dUは、上壁部15に連接しており、前左側右壁部14cDおよび後左側右壁部14dDは、下壁部11に連接している。
前右側右壁部14cUと前左側右壁部14cDは、左右に重なって、前側の右壁部RW1を形成している。前右側右壁部14cUは、前左側右壁部14cDの右側に密着している。また、後右側右壁部14dUと後左側右壁部14dDは、左右に重なって、後側の右壁部RW2を形成している。後右側右壁部14dUは、後左側右壁部14dDの右側に密着している。
前側の右壁部RW1において、前右側右壁部14cUには、左方へ切り曲げられて形成された切り曲げ片14cU1が形成され、前左側右壁部14cDには、左方へ切り曲げられて形成された切り曲げ片14cD1が形成されている。これらの切り曲げ片14cU1、14cD1(下側に設けた前後方向に伸びる軸を中心に、上側部分を左向きへ少し回転させるように曲げて形成された片)は、左右方向にほぼ重なる位置に形成されている。これにより、前右側右壁部14cUから左方に突出した切り曲げ片14cU1の上端部と、前左側右壁部14cDに形成された窪み(切り曲げ片14cD1を曲げることにより形成された窪み)の上側の縁とが、上下方向へ対向する(図19に示す位置Hの部分を参照)。
このようにして前側の右壁部RW1においては、前右側右壁部14cUと前左側右壁部14dUは、上壁部15と下壁部11が離れる方向への位置ずれが抑制されるように、切り曲げ片14cU1が前左側右壁部14dUに引っ掛かるように(一方に設けた突起が他方に引っ掛かるように)形成されている。そのため、外力によるハウジング部1の開き(変形による不具合)を極力防止することが可能となっている。なお、このような構成は、後側の右壁部RW2においても設けられており、ここでも前側の右壁部RW1と同等の効果を得ることが可能である。
[その他]
以上に説明したとおり本実施形態に係るコンタクトXは、導電性の板材を用いて前方へ突出するように形成された後退可能な突出部3と、突出部3を前方へ付勢する板バネ部2と、を備え、突出部3の先端接触部31に接触した接続対象を被接続対象へ電気的に接続する。また突出部3は、4方向の側方向それぞれに板材表面が露出する複数のガイド壁部(32U、32D)、左右壁部(32L、32R)が、先端接触部31近傍からそれぞれ分岐して後寄りへ伸びている。
そのためコンタクトXは、突出部付勢型であって、突出部の側壁が多くの側方向(本実施形態では、上下左右の4方向)をカバーするようにしながらも、製造コストや軽量化等において有利となっている。
すなわち各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)は、先端接触部31近傍からそれぞれ分岐して後寄りへ伸びる形態であるため、それぞれ導電性板材の曲げ加工によって容易に形成可能である。また、各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)の全体又は一部を絞り加工に準じた方法によって形成する場合であっても、それぞれの側壁部は分離しているため、平板にドーム状の窪みを設けるように絞り加工を施す場合等に比べて、板厚減少等の問題は生じ難い。例えば本実施形態の場合、先端接触部31を丸みのある形状とするために、突出部3の前側先端近傍を絞り加工に準じた方法で形成しながらも、各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)については曲げ加工によって形成することが出来る。そのため本実施形態では、比較的高精度な絞り加工を要せず、絞り加工に適した金属板材等を採用するために材料選択の自由度は殆んど制限されない。
また本実施形態では、あらゆる側方向をカバーするように側壁を設ける(突出部をドーム状とする)ような場合に比べて、必要な4方向だけをカバーするように効率良くガイド壁、側壁が設けられるため、その分だけガイド壁、側壁の量が減少するため軽量化等の点で有利である。更に本実施形態では、各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)は先端接触部31近傍からそれぞれ分岐して伸びているため、ガイド壁部、側壁部ごとに独立して形状を調節すること等が容易である。なお本実施形態では、4方向の側方向それぞれに露出する複数の側壁部を有しているが、3方向あるいは5方向以上の側方向それぞれに露出する複数の側壁部を有するようにしても良い。
なお、図20に示す先端接触部31の展開図において、右側壁部32Rを省略したT字型としても、前方接近形態、側方接近形態として用いることが出来る。同様に、前記T字型において上、下ガイド壁部32U、32Dの一方については湾曲ガイド部だけとしても良い。この場合は、湾曲ガイド部だけが設けられている方向から接触対象を側方接近させる形態で使用することになる。
更に各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)は、先端接触部31近傍から側方向外向きへ膨らみながら、後寄りへ伸びている。つまり各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)の位置は、前側へ進むにつれて徐々に側方向内向きへ寄るようになっている。そのため図12を参照しながら説明したとおり、側方接近形態において接続対象が各側壁部に引っ掛かる事態を防ぎ、接続対象をスムーズに先端接触部31の前へ導くことが可能である。特に本実施形態においては、各ガイド壁部、各側壁部(32U、32D、32L、32R)および先端接触部31の表面は、前側に凸である一連の曲面として形成されているため、側方接近形態において接続対象を極めてスムーズに先端接触部31の前へ導くことが可能である。
また本実施形態に係るコンタクトXは、一枚の導電性板材を折り曲げて形成したコンタクトであって、前壁部13、後壁部12、上壁部15及び下壁部11を有するハウジング部1と、前壁部13の開口から突出し、接触対象物(接続対象)に接触する上下方向に見て前側に凸である弧状(本実施形態の場合は、概ね円弧状)の突出部3と、突出部3からの導電路の少なくとも一部を成す部材であって、突出部3に自由端側が連接され突出部3を接触対象物側に付勢する、少なくとも一つの曲げ部を形成した板バネ部2とを備える。更に突出部3は、上下の側方向それぞれに上、下ガイド壁部(上ガイド壁部32Uと下ガイド壁部32D)が分岐して、側方向外向きへ膨らみながら後寄りへ伸びている。また、上、下ガイド壁部それぞれの自由端部は、ハウジング部1の上壁部15及び下壁部11それぞれの内面に弾性的に摺接して、短絡導電路を形成している。
当該構成によりコンタクトXは、突出部付勢型であって上下左右の各側方向について側方接近形態での接続に対応可能でありながらも、側方接近形態において接続対象が各側壁へ引っ掛かり難く、電気長を短くする導電路を安定的に形成することが可能となっている。また本実施形態では、突出部3の表面、および前記側壁片部それぞれの表面が、前側に凸である一連の曲面として形成されている。そのため、側方接近形態において、接続対象を極めてスムーズに突出部3の前側端部の前へ導くことが可能となっている。
以上に説明したコンタクトXは、一枚の導電性板材を折り曲げて形成したコンタクトであって、ハウジングと、当該ハウジングの開口から突出し、接続対象に接触する突出部と、前記ハウジング内に収容され、前記突出部からの導電路の少なくとも一部を成す部材であって、その自由端側が前記突出部に連接され当該突出部を前記突出方向に付勢するバネ部と、を備えたコンタクトにおいて、前記突出部は、その幅方向それぞれにガイド側壁部が分岐して、幅方向外向きへ膨らみながら前記突出方向とは逆方向へ伸びており、前記一方のガイド側壁部は少なくとも自由端部が前記ハウジングの壁部内面に弾性的に摺接している構成となっている。
本構成によれば、導電性板材を折り曲げて形成される折曲式突出部付勢型のコンタクトでありながら、突出部の幅方向についても側方接近形態による接続が可能となるので、使用形態について汎用性が大きく向上する。なお、他の部品が誤って前記突出部の側方に当たっても、前記ガイド側壁部により保護されるので、変形や損傷に強いコンタクトとすることが出来る。
更に、前記ガイド側壁部の少なくとも一方は、前記ハウジングの壁内面に弾性的に摺接しているので、このガイド側壁部を電気長の短い導電路として用いることが出来る。
また上記構成としてより具体的には、前記突出部の表面、および前記ガイド側壁部それぞれの表面が、前側に凸である一連の曲面として形成されている構成としてもよい。本構成によれば、側方接近形態において、接続対象を極めてスムーズに突出部の前側端部の前へ導くことが可能となる。
また上記構成としてより具体的には、前記突出部の一端が、前記板バネ部に連接している構成としてもよい。本構成によれば、突出部と板バネ部を一連の金属板材により効率良く形成することが可能となる。
また上記構成としてより具体的には、前記突出方向が前方であり、前記ハウジングの前壁部、後壁部、上壁部、および下壁部は、前記導電性板材の所定部が筒状をなすように折れ曲がって形成されており、前記前壁部は、前記所定部の一端側にある前側前壁部と、前記所定部の他端側にある後側前壁部が、前後に重なって形成されており、前記前側前壁部と前記後側前壁部は、前記上壁部と前記下壁部が離れる方向への位置ずれが抑制されるように、一方に設けた突起が他方に引っ掛かるように形成された構成としてもよい。本構成によれば、外力によるハウジング部の開き(変形による不具合)を極力防止することが可能となる。
また上記構成としてより具体的には、前記ハウジングは、左側または右側の壁である特定壁部を有し、前記特定壁部は、前記導電性板材の上壁部に連接する第1特定壁部と、前記導電性板材の下壁部に連接する第2特定壁部が、左右に重なって形成されており、第1特定壁部と第2特定壁部は、前記上壁部と前記下壁部が離れる方向への位置ずれが抑制されるように、一方に設けた突起が他方に引っ掛かるように形成された構成としてもよい。本構成によれば、外力によるハウジング部の開き(変形による不具合)を極力防止することが可能となる。
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点をおき、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。また、第1実施形態と同等の趣旨の要素については、同じ符号を付して説明することがある。
図21および図22は、それぞれ異なる方向から見た第2実施形態に係るコンタクトYの外観斜視図であり、図23は、コンタクトYの上下方向中央の面で切断した場合の下方視点による断面図である。またコンタクトYについて、図23に示すA-A´断面の矢視図を図24に示す。
コンタクトYは、第1実施形態に係るコンタクトXと比べて、具体的な形状や寸法等について上記各図に示すとおりの相違点があるが、全体的に見て概ね同等の構成形態となっている。コンタクトYにおけるハウジング部1は、左右方向の寸法が7.5mm程度、上下方向の寸法が3mm程度、前後方向の寸法が3.8mm程度となっている。初期状態において突出部3の前方への突出量は2.1mm程度であり、このときのコンタクトYの前後方向寸法は5.9mm程度である。
またコンタクトYにおいては図23に示すように、板バネ部2の後側直進部22は、下側ターン部21から上側ターン23へ向けて斜め左前方向へ伸びている。コンタクトYは、カーオーディオやカーナビゲーションシステムといった車載用の各種電子機器に好適に使用される他、電気的接続が要求される種々の用途に使用可能である。
コンタクトYの右壁部14は、右側右壁部14aおよび左側右壁部14bによって構成されている。右側右壁部14aは、上壁部15の右端の前寄り位置に連接しており、左側右壁部14bは、下壁部11の右端の前寄り位置に連接している。右側右壁部14aと左側右壁部14bは、左右に重なって、右壁部14を形成している。右側右壁部14aは、左側右壁部14bの右側に密着している。
右側右壁部14aには、左方へ切り曲げられて形成された切り曲げ片14a1が形成され、左側右壁部14bには、左方へ切り曲げられて形成された切り曲げ片14b1が形成されている。これらの切り曲げ片14a1、14b1(下側に設けた前後方向に伸びる軸を中心に、上側部分を左向きへ少し回転させるように曲げて形成された片)は、左右方向にほぼ重なる位置に形成されている。これにより、右側右壁部14aから左方に突出した切り曲げ片14a1の上端部と、左側右壁部14bに形成された窪み(切り曲げ片14b1を曲げることにより形成された窪み)の上側の縁とが、上下方向へ対向する。
このようにして右壁部14においては、右側右壁部14aと左側右壁部14bは、上壁部15と下壁部11が離れる方向への位置ずれが抑制されるように、切り曲げ片14a1が左側右壁部14bに引っ掛かるように(一方に設けた突起が他方に引っ掛かるように)形成されている。そのため、外力によるハウジング部1の開き(変形による不具合)を極力防止することが可能となっている。
また図24に示すように、突出部3が前方から押された際に、下壁部11における下ガイド壁部32Dの下側凸部41Dがスライドする箇所には、下壁部11の一部が切り曲げられて形成された下壁傾斜部11xが設けられている。また、突出部3が前方から押された際に、上壁部15における上ガイド壁部32Uの上側凸部41Uがスライドする箇所には、上壁部15の一部が切り曲げられて形成された上壁傾斜部15xが設けられている。これらの傾斜部(11x、15x)は、後方(突出部3の突出方向とは逆方向)へ進むほどハウジング部1の内側へ向かうように傾斜しており、各傾斜部(11x、15x)の後端同士の距離D1は、傾斜を設けていないハウジング部1の幅方向(上下方向)寸法D2よりも小さくなっている。
下壁傾斜部11xは、左右に伸びる辺に比べて前後に伸びる辺が長い矩形状(但し、左右に伸びる前側の辺を除く)の切り込みが下壁部11に設けられ、当該前側の辺を軸として後側部分を少しだけ上方へ回転させるように曲げて形成した片状部である。下壁傾斜部11xは、前側(根元側)から後方へ、当該回転の角度の分だけ上向きに傾斜して伸びており、後方へ進むほどハウジング部1の内側へ向かうように傾斜している。主に下ガイド壁部32Dが板バネとして機能することにより、下側凸部41Dは下壁傾斜部11xに弾性的に摺接する。また、下壁傾斜部11xの傾斜により、突出部3が後退するほど下ガイド壁部32Dがより大きく弾性変形し、下ガイド壁部32Dの弾性力が高まることによって、下側凸部41Dは下壁傾斜部11xへより強く接触する。
上壁傾斜部15xは、左右に伸びる辺に比べて前後に伸びる辺が長い矩形状(但し、左右に伸びる前側の辺を除く)の切り込みが上壁部15に設けられ、当該前側の辺を軸として後側部分を少しだけ下方へ回転させるように曲げて形成した片状部である。上壁傾斜部15xは、前側(根元側)から後方へ、当該回転の角度の分だけ下向きに傾斜して伸びており、後方へ進むほどハウジング部1の内側へ向かうように傾斜している。主に上ガイド壁部32Uが板バネとして機能することにより、上側凸部41Uは上壁傾斜部15xに弾性的に摺接する。また、上壁傾斜部15xの傾斜により、突出部3が後退するほど上ガイド壁部32Uがより大きく弾性変形し、上ガイド壁部32Uの弾性力が高まることによって、上側凸部41Uは上壁傾斜部15xへより強く接触する。
上記のとおり、下側凸部41Dが下壁傾斜部11xへ弾性的に摺接し、上側凸部41Uが上壁傾斜部15xへ弾性的に摺接することにより、それぞれにおける凸部(41D、41U)と傾斜部(11x、15x)の接触をより確実なものとし、電気的接触をより安定させることが可能である。また更に、各傾斜部(11x、15x)を上記のとおり傾斜させたことにより、コンタクトYのワーキングエリア(適正な動作範囲)を広く取ることが可能となっている。この点について、図25を参照しながらより詳細に説明する。
図25に示すグラフは、コンタクトYのサンプルを用いて、突出部3を移動させたときの接触力P(接続対象と先端接触部31の間の接触力に相当する)および接触抵抗Q(接続対象と被接続対象の間の接触抵抗に相当する)を測定した結果を示している。当該グラフにおいて、横軸は先端接触部31の後壁部12からの距離(換言すれば、各時点でのコンタクトYの前後方向寸法)を示し、縦軸は接触力Pおよび接触抵抗Qを示している。
接触力Pの測定の際には、コンタクトYの後壁部12を固定するとともに、前後方向へ可動としたプッシャー(試験用ジグ)を先端接触部31の前側に設置し、プッシャーを前後方向へ移動させて先端接触部31を押すようにした。また、プッシャーが先端接触部31から受ける力をロードセル(荷重測定機)を用いて測定できるようにし、この測定の結果を接触力Pとみなすことにした。
図25に示すグラフP1は、プッシャーを後方へ移動させ、突出部3を初期状態(後退していない状態)から所定の最終状態(十分に後退した状態)まで移動させたときの接触力Pを示している。またグラフP2は、プッシャーを前方へ移動させ、突出部3を最終状態から初期状態まで移動させたときの接触力Pを示している。なお図25に示す一点鎖線は、各凸部(41D、41U)とハウジング部1との間の摩擦が無いと仮定した場合の接触力Pのグラフに相当する。突出部3の位置が初期状態に近いほど、グラフP1とP2の何れも、図25に示す一点鎖線との差は小さくなっている。
また接触抵抗Qの測定の際には、後壁部12に固定した基板と先端接触部31に接触させた基板(前後方向へ可動とした)とを設けておき、先端接触部31に接触させた基板を移動させながら両基板間の抵抗値の測定した結果を、接触抵抗Qとみなすことにした。図25に示すグラフQは、基板を移動させることによって、突出部3を最終状態から初期状態まで移動させたときの接触抵抗Qを示している。接触抵抗Qは、基本的に接触力Pが所定の基準値(本実施形態では約0.2N)を超えているときに概ね一定の値(本実施形態では約20mΩ)となり、コンタクトYの正常な機能(接続対象と被接続対象を適切に接続する機能)が発揮される。
なお、接触抵抗Qが当該一定の値に安定する動作範囲(突出部3の突出量の範囲)が、コンタクトYの当該機能が良好に発揮されるワーキングエリアであり、本実施形態に係るコンタクトYの場合は、図25に示す領域W1がワーキングエリアとなっている。ここで、コンタクトYにおいて各傾斜部(11x、15x)を設けずに、上壁部15と下壁部11の内面の距離がD1で一定(図24を参照)であると仮定すると、突出部3を最終状態から初期状態まで移動させたときの接触力Pは、概ね、図25にグラフP2´で示すとおりとなる。
この仮定の状況においては、各ガイド壁部(32D、32U)の弾性力を利用して各凸部(41D、41U)とハウジング部1を安定的に接触させることは可能であるが、突出部3が前方へ進んでも上壁部15と下壁部11の内面の距離は一定であるため、各凸部(41D、41U)とハウジング部1の間の摩擦は殆んど変化しない。そのため、グラフP2´の場合は、グラフの傾きは図25に示す一点鎖線の傾きとほぼ同じであり、グラフP2に比べて接触力Pが早く減少している。
グラフP2´で示すように接触力Pが比較的早く減少すると、その分だけ早く、接触力Pが先述した基準値を下回ることになり、ワーキングエリアは図25に示す領域W2となる。このワーキングエリアW2は、本実施形態のワーキングエリアW1に比べて、図25に白抜き矢印Wpで示す分だけ減少している。以上の説明から明らかなように、本実施形態は各傾斜部(11x、15x)を設けることによって、各ガイド壁部(32U、32D)をハウジング部1へ適切に接触させるとともに、比較的広いワーキングエリアを確保することが可能となっている。
なお、各傾斜部(11x、15x)の傾斜の角度を大きくするほど、図25に示すグラフP1およびP2と一点鎖線との差(ずれ量)は大きくなる。この点も考慮して当該傾斜の角度は、製品仕様などに応じて適切に設定されることが望ましい。なお本実施形態のように、ハウジング部1の一部を曲げて各傾斜部(11x、15x)を設ける場合は、この切り曲げにおける曲げの角度を変えることにより、当該傾斜の角度を容易に調節することが可能である。但し各傾斜部(11x、15x)は、例えばプレス加工によってハウジング部1の一部を凹ませる手法等、他の手法により設けることも可能である。
また図21や図22等に示すように、下壁部11の右寄り部分には、前後方向に伸びた形状の下側係合孔11yが設けられ、上壁部15の右寄り部分には、前後方向に伸びた形状の上側係合孔15yが設けられている。これらの係合孔(11y、15y)は、コンタクトYの上下方向中央の面を基準として対称に配置され、同じ形状・寸法に形成されている。
一方でコンタクトYには、下側係合部33Dおよび上側係合部33Uが、突出部3から伸びて設けられている。より具体的には、右方側壁部32Rの後端の下寄り部分から下側係合部33Dが伸びており、右方側壁部32Rの後端の上寄り部分から上側係合部33Uが伸びている。下側係合部33Dは下方へ突出した突起を有しており、この突起は、ハウジング部1の内側から下側係合孔11yに嵌め込まれている。上側係合部33Uは上方へ突出した突起を有しており、この突起は、ハウジング部1の内側から上側係合孔15yに嵌め込まれている。
突出部3が前後方向へ移動する際、これに伴って、下側係合部33Dの突起は下側係合孔11yの内側を前後方向へ移動し、上側係合部33Uの突起は上側係合孔15yを前後方向へ移動する。本実施形態では、突出部3が真後方向に力を受けて後退する際に、下側係合部33Dの突起が下側係合孔11yの縁に接触することはなく、上側係合部33Uの突起が上側係合孔15yの縁に接触することもないため、当該接触による摩擦は生じない。但し、このような接触が生じるようになっていても構わない。
一方で、図26に示すように接続対象Obが着色矢印で示す方向へ移動して突出部3を押す状況では、突出部3は後向きに押されると同時に、左向きにも押されることになる。このとき、突出部3が僅かに左方へ動かされると、下側係合部33Dの突起が下側係合孔11yの左側の縁へ当たるとともに、上側係合部33Uの突起が上側係合孔15yの左側の縁へ当たることにより、突出部3が更に左方へ変位することは抑えられる。これにより、突出部3が左方へ大きく変位することは抑えられ、コンタクトYにおける座屈(特に、板バネ部2の座屈)等の発生を抑えることが可能である。
また、突出部3が僅かに右方へ動かされると、下側係合部33Dの突起が下側係合孔11yの右側の縁へ当たるとともに、上側係合部33Uの突起が上側係合孔15yの右側の縁へ当たることにより、突出部3が更に右方へ変位することは抑えられ、この場合にもコンタクトYにおける座屈等の発生を抑えることが可能である。
なお、突出部3は図23等に示す形状の板バネ部2により支持されているため、突出部3が後方へ押されて後退する際の各係合部(33D、33U)の突起の軌跡は、図26に破線矢印で示すように、正確には真後方向から少し左側へ傾斜するように進む弧状の軌跡となる。この点を考慮して、各係合孔(11y、15y)の形状(特に左側の縁の形状)を当該軌跡と同程度に傾斜して伸びる形状としている。これにより、突出部3が左向きに押され続けながら後向きに押される場合であっても、各係合部(33D、33U)の突起が各係合孔(11y、15y)の左側の縁をスライドするようにしながら突出部3を適切に後退させ、突出部3が左方へ大きく変位することは防止される。また、各係合孔(11y、15y)をこのように傾斜して伸びる形状とした場合は、前後に真直ぐ伸びる形状とする場合に比べて上記軌跡により近い形状とすることができるため、各係合孔(11y、15y)をよりコンパクトに形成することが容易である。なお、上記の軌跡が弧状であることに鑑み、各係合孔(11y、15y)の形状を当該軌跡に合わせた弧状に形成しても良い。このようにすれば、各係合孔(11y、15y)を上記軌跡に更に近い形状とすることができ、各係合孔(11y、15y)をより一層コンパクトに形成することが容易となる。
また本実施形態では、各係合孔(11y、15y)の右側の縁についても当該軌跡と同程度に傾斜させている。そのため、突出部3が右向きに押され続けながら後向きに押される場合であっても、各係合部(33D、33U)の突起が各係合孔(11y、15y)の右側の縁をスライドするようにしながら突出部3を適切に後退させ、突出部3が右方へ大きく変位することは防止される。
またコンタクトYにおいては、第1実施形態の場合と同様に支持部(支持片)13b2が設けられており、支持部13b2の折り曲げの深さを変えることにより、初期状態における突出部3の突出量などを調整することが可能である。そしてコンタクトYは、この突出量が少なくとも最大未満となるように調整された状態において、各係合部(33D、33U)の突起と各係合孔(11y、15y)の前側の縁とが接触しないように形成されている。
例えば上側係合孔15yについては、図27に示すように、上側係合部33Uの突起と上側係合孔15yの前側の縁との間に隙間γが生じるようになっており、これら双方は接触しない。仮に、上側係合部33Uの突起と上側係合孔15yの前側の縁とが接触すると、突出部3の突出量を更に大きくすることはできない。しかし本実施形態では、このような事態は回避されるため、突出部3の突出量の調整が妨げられることはない。
以上に説明したとおり、コンタクトYおいては、突出部3側(板バネ部2よりも突出部3の側)に各係合部(33D、33U)が設けられ、各係合部(33D、33U)がハウジング部1側(板バネ部2よりもハウジング部1の側)の部位と係合することにより、前方(突出部3の突出方向)と直交する少なくとも一方向(ここでは左右方向)への突出部3の変位が抑制される。そのため、コンタクトYにおける座屈等の発生を抑えることが可能である。また、左右方向への突出部3の変位が抑制されることにより、下側凸部41Dと下壁傾斜部11xの左右方向への相対的な位置ずれ、および、上側凸部41Uと上壁傾斜部15xの左右方向への相対的な位置ずれを極力防ぎ、それぞれにおける凸部(41D、41U)と傾斜部(11x、15x)の接触をより安定させることが可能である。
またコンタクトYおいては、幅方向(上下方向)への突起を有する各係合部(33D、33U)が、突出部3の板バネ部2に連接した側の反対側から伸びて設けられ、前記突起がハウジング部1側の部位と係合する。また各係合部(33D、33U)の突起は、ハウジング部1に設けた各係合孔(11y、15y)に嵌め込まれており、当該孔の縁と係合するようになっている。このように、各係合部(33D、33U)の突起がハウジング部1に設けた孔の縁に引っ掛かる構造を採用したことで、コンタクトYの左右方向の変位を簡易な構成で効果的に抑制することが可能である。
なお、前方と直交する方向への突出部3の変位を抑える仕組みとしては、上述した形態の仕組みの代わりに、他の形態のものを採用しても良い。他の形態の仕組みを採用したコンタクトの一例(コンタクトY1)について、以下に説明する。
図28および図29は、それぞれ異なる方向から見たコンタクトY1の外観斜視図であり、図30は、コンタクトY1の上下方向中央の面で切断した場合の上方視点による断面図である。また図31は、上下方向中央の面で切断したコンタクトY1についての外観斜視図である。
これらの図に示すように、コンタクトY1においては、各係合孔(11y、15y)の形成が省略された代わりに、左側右壁部14bの前端の下寄り部分には下側係合片14xDが設けられ、左側右壁部14bの前端の上寄り部分には上側係合片14xUが設けられている。これらの係合片(14xD、14xU)は、コンタクトYの上下方向中央の面を基準として対称に配置され、同じ形状・寸法に形成されている。各係合片(14xD、14xU)は、左側右壁部14bの前端から左方へ少し伸びており、その左端から更に略後方へ伸びている。この略後方へ伸びた部分は、正確には真後方向から少し左側へ傾斜した方向へ伸びている。この傾斜の角度は、コンタクトYにおける各係合孔(11y、15y)の左側の縁の傾斜と同等に設定されている。
一方でコンタクトY1には、下側係合部34Dおよび上側係合部34Uが、突出部3から伸びて設けられている。より具体的には、右方側壁部32Rの後端の下寄り部分から下側係合部34Dが伸びており、右方側壁部32Rの後端の上寄り部分から上側係合部34Uが伸びている。
下側係合部34Dは、下側係合片14xDの上側のスペースに及んでおり、その先端近傍には下方へ突出した突起を有している。この下側係合部34Dの突起は下側係合片14xDの右側に配置されており、当該突起と下側係合片14xDの間には僅かな隙間が設けられている。上側係合部34Dは、上側係合片14xUの下側のスペースに及んでおり、その先端近傍には下方へ突出した突起を有している。この上側係合部34Dの突起は上側係合片14xUの右側に配置されており、当該突起と上側係合片14xUの間には僅かな隙間が設けられている。
コンタクトY1においては、各係合片(14xD、14xU)の略後方へ伸びた部分が、コンタクトYにおける各係合孔(11y、15y)の左側の縁と同様の役割を果たす。すなわち、突出部3が左向きに押され続けながら後向きに押される場合であっても、各係合部(34D、34U)の突起が各係合片(14xD、14xU)の略後方へ伸びた部分をスライドするようにしながら突出部3を適切に後退させ、突出部3が左方へ大きく変位することは防止される。
3.その他
本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。