(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る吐出容器を説明する。
図1に示すように、本実施形態の吐出容器1は、容器本体2と、閉塞板3と、シール材4と、蓋体5(蓋部41)と、を有する。この吐出容器1は、例えば、パスタソース、ピザソース等のソース類、ケチャップ、マヨネーズ、及び味噌などの具入り液体調味料類を含む、若干の固形物を含んだ比較的粘度の高い内容物を収容することが可能である。
有底筒状の容器本体2、有頂筒状の閉塞板3、平面視円形のシール材4および有頂筒状の蓋体5は、それぞれの中心軸が共通軸上に位置された状態で配設されている。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿った容器本体2の口部2a側を上側、容器本体2の不図示の底部側を下側という。また、容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
容器本体2は、積層剥離型容器12と、中栓部材20と、装着筒部40と、を有する。積層剥離型容器12は、内容物の減少に伴い減容変形する内容器10、および内容器10が内装された外容器11を備える。この積層剥離型容器12は、例えば、ブロー成形により形成され、外容器11の内面に内容器10の外面が剥離可能に積層された、所謂デラミ容器である。なお、ブロー成形としては、例えば、押出成形等によって二重(内外)に組み合わされた積層パリソンを形成し、この積層パリソンをブロー成形することで容器本体2を形成してもよい(押出ブロー成形)。
また、射出成形等によって外容器用のプリフォーム、および内容器用のプリフォームを各別に形成しておき、これらを二重(内外)に組み合わせて一体に二軸延伸ブロー成形することで容器本体2を形成してもよい。さらには、外容器用のプリフォームを先に二軸延伸ブロー成形して外容器11を形成した後、内容器用のプリフォームを外容器11の内部に配置し、その後、内容器用のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで容器本体2を形成してもよい。また、積層プリフォームを成形した後、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで容器本体2を形成してもよい。また、内容器10と外容器11とを個別に成形した後、これらを組み合わせてもよい。なお、これら成形方法は、一例であって、特に限定されるものではない。
なお、内容器10および外容器11は合成樹脂製とされ、内容器10が外容器11に対して独立して減容可能(例えば剥離可能)な組み合わせであれば互いに同材質でもよいし異材質でもよい。合成樹脂材料の一例としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等が挙げられる。これらの合成樹脂材料の中から、外容器11と内容器10とは剥離可能(相溶性がない)となる組み合わせで形成されることが好ましい。
容器本体2は、口部2a、肩部2b、不図示の胴部、および不図示の底部が上側から下側に向けてこの順に連設された有底筒状に形成されている。肩部2bは、上側から下側に向かうに従い漸次、拡径している。胴部は、例えば、横断面視円形状に形成されている。容器本体2を構成する外容器11はスクイズ変形可能とされ、この外容器11のスクイズ変形に伴って内容器10は減容変形する。よって、外容器11のうち少なくとも胴部に位置する部分は、径方向内側(容器内側)に向けて弾性変形可能とされている。
容器本体2の口部2aは、肩部2bの上端開口部から上方に向けて延びている。容器本体2の口部2aの外周面には、蓋体5を装着するための嵌合突起13が形成されている。積層剥離型容器12の口部12aは、内容器10の口部10aと外容器11の口部11aとが積層された構成とされている。内容器10の口部10aの上端部は、径方向外側に突出する環状に折り返され、この折り返し部分が外容器11の口部11aの上端開口縁に配置されている。そのため、外容器11の口部11aは、内容器10によって閉塞されている。
外容器11の口部11aには、外容器11と内容器10との間に、後述する外気導入流路70を経由して外気を吸入する吸気孔14が形成されている。なお、吸気孔14は、外容器11のうち、口部11a以外の胴部若しくは底部等に形成し、外気を直接吸入してもよい。また、例えば、吸気孔14を外容器11の胴部に形成した場合、不図示の空気弁(逆止弁)を外容器11の胴部に配設し、当該空気弁によって、内容器10と外容器11との間に空気を吸入可能にする一方、内容器10と外容器11との間から空気が流出するのを規制するようにしてもよい。なお、空気弁を設けずに、内容器10と外容器11との間から空気が流出するのを指先で防止しながら、容器本体2をスクイズする構成であってもよい。
中栓部材20は、積層剥離型容器12の口部12aの上端開口縁に配置された環状の中栓外周部21と、中栓外周部21の径方向内端縁に連設された有底筒状の中栓本体22と、を備える。中栓外周部21、中栓本体22は、容器軸Oと同軸に配設されている。中栓外周部21は、積層剥離型容器12の口部12aの上端開口縁よりも径方向外側に突出している。中栓本体22は、積層剥離型容器12の口部12aの上端開口縁よりも径方向内側において下方に向けて突出し、積層剥離型容器12の口部12aの内側に嵌合して、積層剥離型容器12の口部12aをシールしている。
中栓本体22の底壁部22aには、連通孔23が形成されている。連通孔23は、容器軸Oと同軸に形成されている。また、中栓本体22の底壁部22aには、連通孔23を開放可能に閉塞する吐出弁24が配置されている。吐出弁24は、中栓本体22の底壁部22aの上面における連通孔23よりも径方向外側に離反可能に当接する弁体25を有する。弁体25は、例えば平面視円形状に形成されており、容器軸Oと同軸に配置されている。弁体25は、中栓本体22の内側に嵌合する筒体部26の内周面に複数の弾性アーム27を介して連結されている。
弾性アーム27は、例えば周方向に延びるように形成されることで適度なばね性が確保されているとともに、径方向の内端部が弁体25の外周縁部に接続され、かつ径方向の外端部が筒体部26に接続されている。そして、この弾性アーム27は、内容器10の内側の内容物が中栓本体22の連通孔23を通過する際に、弁体25を上方に移動させるように弾性変形して、弁体25を中栓本体22の底壁部22aの上面から離反させるようになっている。
閉塞板3は、中栓本体22の上端開口22Aを閉塞している。閉塞板3は、例えばゴムやエラストマー等の軟材質により、有頂筒状に形成されている。なお、本実施形態の閉塞板3は、シリコンゴムから形成されているが、当該シリコンゴムに限定されるものではない。この閉塞板3は、内容物の吐出口31aが形成された閉塞板本体31と、中栓本体22の内側に嵌合する嵌合周壁部32と、嵌合周壁部32の上端と閉塞板本体31の径方向外端縁とを連結する連結部33と、を備える。嵌合周壁部32の下端は、筒体部26の上端に当接する。嵌合周壁部32の外周面には、嵌合突起32aが形成されている。嵌合突起32aは、中栓本体22の内周面に形成された嵌合溝22cにアンダーカット嵌合する。
連結部33は、板バネ部であり、図1及び図2に示す状態において、嵌合周壁部32に対し閉塞板本体31を上方に付勢する。この連結部33は、周方向の全周にわたって連続して延びている。連結部33は、容器軸Oの軸方向から見た平面視において例えば円環形状を呈していて、容器軸Oと同軸に配置されている。この連結部33は、閉塞板本体31及び嵌合周壁部32よりも薄く形成されており、閉塞板本体31が押圧されると、連結部33が弾性変形するようになっている。
閉塞板本体31は、連結部33によって、容器本体2の内側と外側に弾性変位可能な構成となっている。具体的に、閉塞板本体31は、図1に示すように、中栓本体22の上端開口縁22bよりも下側である容器本体2の内側に弾性変位可能である。また、閉塞板本体31は、図3に示すように、中栓本体22の上端開口縁22bよりも上側である容器本体2の外側に弾性変位可能である。閉塞板本体31は、容器軸Oの軸方向から見た平面視において、例えば円板形状を呈していて、容器軸Oと同軸に配置されている。
閉塞板本体31の中央には、吐出口31aが形成されている。吐出口31aは、図4に示すように、スリット状の弁が形成され、容器本体2の内圧が大気圧より高いとき外方に開放され、内圧が大気圧とほぼ等しいときに弾力作用により閉塞される。この吐出口31aは、円板形状の閉塞板本体31の頂点において3本のスリットが交差するように形成されている。3本のスリットによって形成された6つ舌部には、それぞれ突起部31bが形成されている。突起部31bは、図3に示すように、閉塞板本体31の上面に半球状に形成されている。なお、吐出口31aは、1本のスリットで形成されていてもよいし、2本のスリットが直交して形成されていてもよい。また、吐出口31aは、4本以上のスリットで形成されていてもよい。
シール材4は、図1に示すように、容器本体2に剥離(除去)可能に接着され、吐出口31aを閉塞するとともに、閉塞板3を容器本体2の内側に向けて弾性変位させる。シール材4は、例えば紙製又は合成樹脂製の薄いシート状の部材であり、その一部にガスバリア性及び遮光性を備えるアルミ箔を積層した構成(所謂、アルミシール)である。シール材4は、熱融着により、中栓本体22の上端開口縁22bに剥離可能に接着されている。このシール材4には、不図示の摘み部が延設されており、指で摘んだ摘み部を引き上げることにより、シール材4を中栓本体22の上端開口縁22bから剥がすことが可能となっている。なお、シール材4は、中栓本体22の上端開口縁22b及び/または嵌合周壁部32の上端縁に接着されていてもよい。すなわち、シール材4は、閉塞板3に接着されていてもよい。したがって、ここでいう、シール材4が剥離可能であるとは、シール材4が吐出容器1から除去可能であることを意味する。
シール材4を容器本体2に接着することで、内容物の保存性を確保することができる。一例として、積層剥離型容器12の単体、より具体的には、バリア層として内容器にEVOH層が設けられたデラミ容器の単体の酸素透過率は、0.002g/day/容器である。また、当該デラミ容器にアルミシールを接着せずに従来のキャップを装着した吐出容器の酸素透過率は、0.020g/day/容器である。そして、本実施形態のように、例えばバリア層として内容器10にEVOH層が設けられた積層剥離型容器12に蓋体5(キャップ)が付き、シール材4(アルミシール)が接着された吐出容器1の酸素透過率は、0.002~0.005g/day/容器となる。
装着筒部40は、容器本体2の口部2aに装着されている。装着筒部40は、容器本体2の口部2aの径方向外側を覆う円筒状に形成されている。装着筒部40の内周面には、第1嵌合溝43が形成されており、容器本体2の口部2aの外周面に形成された嵌合突起13がアンダーカット嵌合している。なお、装着筒部40は、容器本体2の口部2aに、例えばねじ結合されてもよい。
この装着筒部40の内周面のうち、第1嵌合溝43よりも上側には、中栓外周部21の径方向外端縁に外嵌する第2嵌合溝44が形成されている。中栓外周部21と第2嵌合溝44との間には、例えば外気を取り込む不図示の通気溝が形成されている。通気溝は、外気導入流路70に連通している。外気導入流路70は、容器本体2の口部2aの外周面と装着筒部40の内周面との間に形成され、容器軸Oに沿って延在する装着筒部40の内周補強リブによって周方向に区画されている。
装着筒部40の下端部は、容器本体2の口部2aのうち、吸気孔14より下方に位置する部分と密に嵌合している。これにより、吸気孔14と外部との、装着筒部40の下端開口部を通した連通が遮断されている。したがって、不図示の通気溝または外気導入流路70に設けられた不図示の空気弁が開かれると、外気導入流路70と吸気孔14が連通し、外気が吸気孔14を介して内容器10と外容器11との間に導入される。
蓋体5は、装着筒部40に対しヒンジ部42を介して連結された有頂筒状の蓋部41を備える。蓋部41は、装着筒部40とヒンジ部42を介して連結された周壁部50と、周壁部50の上端部に連設された天壁シール部51(押し込み部及びシール部)と、を備える。周壁部50の内周面には、装着筒部40の上端部に形成された係合凸部45が係合する係合凹部52が環状に形成されている。そして、ヒンジ部42を中心に蓋部41を回動させると、装着筒部40側の係合凸部45と蓋部41側の係合凹部52とを係合させることができる。これにより、蓋部41が容器本体2の口部2aないし閉塞板3を被覆する閉蓋状態となる。なお、図4に示すように、ヒンジ部42の両側には、一対の補助腕部42aが設けられている。一対の補助腕部42aは、ヒンジ部42による装着筒部40と蓋部41との連結を補強することにより、蓋部41の開閉動作の安定化を図っている。
天壁シール部51は、図3に示すようにシール材4の剥離により復元変位した閉塞板3を、図2に示すように容器本体2の内側に向けて押し込み、吐出口31aを開放可能に閉塞する。この天壁シール部51は、周壁部50の内側に向かって下方に窪む逆さ円錐台形状を呈しており、容器軸Oと同軸に配置されている。天壁シール部51は、閉塞板3の上面における吐出口31aの径方向外側の環状面31c(図4参照)を、全周に亘って押圧する平滑な押圧面53を有している。押圧面53は、天壁シール部51の逆さ円錐台状の下底部において、下方に突出している。
このように構成された吐出容器1において、内容物を吐出する場合には、まず蓋体5の蓋部41をヒンジ部42回りに上方に向けて回動させる。なお、容器本体2にシール材4が接着している場合には、不図示の摘み部を引き上げることにより、シール材4を容器本体2から剥がす。シール材4を剥がすと、シール材4によって容器本体2の内側に向けて弾性変位していた閉塞板3が、図3に示すように容器本体2の外側に向けて復元変位する。その後、例えば、容器本体2を傾倒または上下反転させながら外容器11を径方向内側にスクイズ変形(弾性変形)させる。これにより、内容器10が外容器11とともに径方向内側に変形して減容するので、内容器10の内圧が上昇する。
すると、先ず、中栓本体22の内容器10側に配設された吐出弁24の弁体25が、中栓本体22の底壁部22aから離反し、中栓本体22の連通孔23が開放される。中栓本体22の連通孔23が開放されると、中栓本体22の内側に内容物が流れ込み、中栓本体22の内圧が上昇する。すると、次に、中栓本体22の上端開口22Aに配設された閉塞板3の吐出口31aにおいてスリットが開き、これにより、吐出口31aと内容器10とが中栓本体22を通じて連通するので、内容器10の内側に収容された内容物が吐出口31aから外部に吐出される。
その後、外容器11のスクイズ変形を停止または解除すると、内容器10の内圧の上昇が停止または内容器10の内圧が低下し、吐出口31aのスリットが閉じる。また、吐出弁24は、弾性アーム27の付勢によって、弁体25が中栓本体22の底壁部22aに当接することで、中栓本体22の連通孔23が閉塞される。これにより、吐出口31aと内容器10との連通が遮断される。このため、内容物の吐出が停止する。
また、外容器11のスクイズ変形を解除することで、外容器11が復元変形し始めるので、外容器11と内容器10との間に負圧が生じる。すると、この負圧が吸気孔14を介して外気導入流路70に作用し、これにより、中栓外周部21と第2嵌合溝44との間の不図示の通気溝から蓋体5の内側に外気が流入する。蓋体5の内側に流入した外気は、吸気孔14を通じて内容器10と外容器11との間に流入する。その結果、外容器11が復元変形したとしても、内容器10の外面を外容器11の内面から離間させ、内容器10が減容変形したままの状態に保たれる。
吐出容器1からの内容物の吐出を終えたら、蓋体5の蓋部41をヒンジ部42回りに回動させ、装着筒部40側の係合凸部45と蓋部41側の係合凹部52とを係合させる。これにより、図2に示すように、蓋部41が閉塞板3を被覆する閉蓋状態となる。この閉蓋状態では、蓋部41の天壁シール部51が、シール材4の剥離により復元変位していた閉塞板3を、容器本体2の内側に向けて押し込んでいる。天壁シール部51の下面は、平滑な押圧面53となっており、閉塞板3の上面における吐出口31aの径方向外側を、全周に亘って押圧する。これにより、内容物が吐出口31aから閉塞板3の環状面31cよりも径方向外側に液漏れすることを防止することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る吐出容器1によれば、容器本体2に接着されたシール材4を剥離すると、図1に示すようにシール材4によって容器本体2の内側に向けて弾性変位していた閉塞板3が、図3に示すように容器本体2の外側に向けて復元変位する。閉塞板3には、内容物の吐出口31aが形成されており、閉塞板3は、シール材4の剥離によって、容器本体2の外側に向けて持ち上がる。具体的には、閉塞板3の閉塞板本体31の上面が、中栓本体22の上端開口縁22bよりも上側に持ち上がる。
蓋体5は、容器本体2の外側に向けて持ち上がった閉塞板3を、図2に示すように容器本体2の内側に向けて押し込む天壁シール部51を有しており、吐出口31aを開放可能に閉塞する。閉塞板3は、シール材4によって容器本体2の内側(具体的には、中栓本体22の上端開口縁22bよりも下側)に弾性変位(退避)していたため、シール材4を剥離してもその一部が残存したりせず、また、シール材4を熱融着する場合などであってもその影響を受けて変形することはない。このため、閉塞板3の平面度は高く、このような閉塞板3をシール面とすることにより、シール材4を剥離した後も、高いシール性を確保することができる。
天壁シール部51は、図2に示すように、閉塞板3の上面における吐出口31aの径方向外側を、全周に亘って押圧する平滑な押圧面53を有している。この構成によれば、天壁シール部51の平滑な押圧面53によって、閉塞板3の上面における吐出口31aの径方向外側が全周に亘って押圧されるため、高いシール性を確保することができる。また、閉塞板本体31は、連結部33によって弾性変位可能であるため、天壁シール部51の押圧によって平滑な押圧面53に倣うように弾性変位し、閉塞板本体31の上面と天壁シール部51の押圧面53との密着性を高めるため、より高いシール性を確保することができる。
また、閉塞板本体31に形成された吐出口31aは、スリット状の弁を備える。この構成によれば、容器本体2を手指の力で圧縮すると、その弁が押し開かれ、少量の内容物が吐出され、手指の力を緩めると、大気圧により弁が押し戻されて吐出口31aを閉じるため、容器本体2の内外の空気流通を遮断して、内容物が変質することなく長く保存することができるようになる。したがって、液切れの良い吐出容器1とすることができる。また、内容物の吐出後にスリットが閉じると、吐出口31aの外側の内容物と内側の内容物とが切り離されるため、より液切れ性が良くなる。なお、このようなスリット状の弁は、いったん使用しはじめた後に長く使用せずに保存すると、その間に弁を構成する弾性ある合成樹脂が互いに癒着し、次に使用する際に弁が円滑に開閉しなくなることがある。また、このような癒着は、材質をシリコンゴムとすると特に起こり易い。このため、閉塞板本体31の上面に突起部31bを設けることで、図2に示す閉蓋状態において、突起部31bが天壁シール部51によって容器本体2の内側に押圧されて、スリットが開いた状態にしている。これにより、スリットが閉じた状態で、内容物が乾燥し、スリットが開放不能に閉塞してしまうことを防止することができる。
容器本体2は、内容物の減少に伴い減容変形する内容器10、及び内容器10が内装され、内容器10との間に外気を吸入する吸気孔14が設けられた外容器11、を有する積層剥離型容器12を有する。この構成によれば、積層剥離型容器12を押圧して内容物を吐出させた後、積層剥離型容器12の押圧を解除すると、吐出弁24により吐出口31aから内容器10の内側に向けた内容物や外気の流入が阻止されるとともに、外容器11に設けた吸気孔14から外容器11と内容器10との間に外気を導入して内容器10を減容変形させたまま外容器11を元の形状に復元させることができるので、内容物を外気と置換させることなく吐出させ、これにより積層剥離型容器12の内部に残った内容物を空気と触れづらくしてその劣化や変質を抑制することができる。
また、積層剥離型容器12の口部12aの上端開口縁には、中栓部材20が配置され、中栓部材20は、有底筒状の中栓本体22と、中栓本体22の底壁部22aに形成され、吐出口31aと内容器10の内側とを連通させる連通孔23と、連通孔23を開放可能に閉塞する吐出弁24と、を有する。シール材4は、中栓本体22の上端開口縁22bに剥離可能に接着されているため、シール材4を剥離しても内容器10を損傷させたりすることはなくなる。
また、閉塞板3は、中栓本体22の上端開口22Aを閉塞しており、中栓本体22の内側における閉塞板3と吐出弁24との間には、内容物を貯留可能な内容物貯留空間80が形成されている。この構成によれば、中栓本体22の内側に形成された内容物貯留空間80に内容物を貯留して、内容物による充填シールを形成できるため、吐出口31aから内容器10の内側に外気が入り込むことを抑制することができる。特に、ソース、味噌、ケチャップやマヨネーズなどの若干の固形物を含んだ比較的粘度の高い内容物を収容していた場合には、仮に閉塞板3に対して容器本体2の内側に向かう何らかの力が加わったとしても、このように粘度が高い内容物が収容されているので閉塞板3を下方から支えられるため、閉塞板3が天壁シール部51から離間し難くなり、更に高いシール性を確保することができる。また、当該粘度が高い内容物は、例え容器本体2を倒立させても、吐出口31aから漏れ出難いため、この意味でも高いシール性を確保することができる。このような作用効果を奏する好ましい内容物の粘度は、例えば500mPa・s以上であり、より好ましくは1000mPa・s以上である。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る吐出容器について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
図5に示すように、第2実施形態の吐出容器1Aは、容器本体2Aと、閉塞板3Aと、シール材4と、蓋部41Aと、を有する。容器本体2Aは、単層のスクイズ容器15と、スクイズ容器15の口部15aに装着された装着筒部40Aと、装着筒部40Aの内側に嵌合した吐出部材60と、を備える。スクイズ容器15は、上述した積層剥離型容器12と同様にスクイズ変形可能とされている。
装着筒部40Aは、外嵌筒部46と、内フランジ部47と、シール筒部48と、ノズル部49と、を備える。外嵌筒部46は、スクイズ容器15の口部15aの径方向外側を覆う円筒状に形成されている。外嵌筒部46の内周面には、第1嵌合溝43が形成されており、スクイズ容器15の口部15aの外周面に形成された嵌合突起13がアンダーカット嵌合している。
内フランジ部47は、外嵌筒部46の上端部から径方向内側に向けて環状に突設されている。この内フランジ部47は、スクイズ容器15の口部15aの上端開口縁に配置されている。シール筒部48は、内フランジ部47の径方向内端縁に連設されている。このシール筒部48は、内フランジ部47の径方向内端縁から容器軸O方向に沿って下方に延在し、口部15a内に密に嵌合している。
ノズル部49は、シール筒部48の上端部に連設されている。このノズル部49は、容器軸O方向に沿って上方に延びる多段状に形成されている。ノズル部49は、下方から上方に向かうに従い漸次、段状に縮径している。このノズル部49は、容器本体2Aの口部2aを形成している。ノズル部49の上端開口縁49aには、上述したシール材4が剥離可能に接着されている。このノズル部49の内周面には、嵌合溝部49bが形成されており、吐出部材60がアンダーカット嵌合している。
吐出部材60は、その中央に、スクイズ容器15の内部に連通する開口部61が形成された円板状の基部62と、開口部61の周縁部から容器軸O方向に沿って上方に延びる立ち上がり周壁部63と、を備えている。基部62の外周面には、ノズル部49の嵌合溝部49bにアンダーカット嵌合する嵌合突起64が形成されている。立ち上がり周壁部63は、基部62から上方に向かうに従い漸次縮径している。
吐出部材60は、基部62の上面と、ノズル部49の内面との間で、有頂筒状の閉塞板3Aを挟み込むようにして保持している。閉塞板3Aは、ノズル部49の上端開口49Aを閉塞するように配置されている(図5の二点鎖線参照)。閉塞板3Aは、内容物の吐出口31aが形成された閉塞板本体31と、ノズル部49と吐出部材60との間に挟み込まれる外フランジ部34と、外フランジ部34の径方向内端縁と閉塞板本体31の径方向外端縁とを連結する連結周壁部35と、を備える。
連結周壁部35は、周方向の全周にわたって連続して延びている板バネ部である。連結部33は、容器軸Oの軸方向から見た平面視において例えば円環形状を呈していて、容器軸Oと同軸に配置されている。連結周壁部35は、外フランジ部34から容器軸O方向に沿って上方に延び、図5において二点鎖線で示す復元状態で、その上端部がノズル部49の上端開口縁49aよりも上方に配置されている。
閉塞板本体31は、連結周壁部35の上端部に連設され、容器本体2の内側と外側に弾性変位可能な構成となっている。具体的に、閉塞板本体31は、図5の実線に示すように、ノズル部49の上端開口縁49aよりも下側である容器本体2の内側に弾性変位可能である。また、閉塞板本体31は、図5の二点鎖線に示すように、ノズル部49の上端開口縁49aよりも上側である容器本体2の外側に弾性変位可能である。閉塞板本体31は、逆ドーム状(図6参照)に形成され、その中央にスリット状の吐出口31aが形成されている。
シール材4は、図5に示すように、容器本体2Aに剥離可能に接着されるとともに、閉塞板3を容器本体2Aの内側に向けて弾性変位させる。シール材4は、熱融着により、ノズル部49の上端開口縁49aに剥離可能に接着されている。このシール材4には、摘み部4aが延設されており、指で摘んだ摘み部4aを引き上げることにより、シール材4をノズル部49の上端開口縁49aから剥がすことが可能となっている。
蓋部41Aは、装着筒部40Aとヒンジ部42を介して連結された周壁部50と、周壁部50の上端部に連設された天壁部54と、を備える。天壁部54は、押し込み部55と、シール押さえ部56と、封止周壁部57(シール部)と、を備える。押し込み部55は、天壁部54の下面中央から下方に突出する略半球形状を呈しており、容器軸Oと同軸に配置されている。
押し込み部55の下端部は、ノズル部49の上端開口縁49aよりも下方に配置されており、図6に示すように、シール材4の剥離により復元変位した閉塞板3を、容器本体2Aの内側に向けて押し込むようになっている。押し込み部55の下端部は、閉塞板3の上面における吐出口31aの径方向内側に当接する。すなわち、押し込み部55は、蓋部41が閉じたときに吐出口31a(スリット)を開くものであり、吐出口31aを閉塞(シール)するものではない。
シール押さえ部56は、天壁部54の下面における押し込み部55の径方向外側に、容器軸Oと同軸に配置されている。シール押さえ部56は、天壁部54の下面から容器軸O方向に沿って下方に突出する筒形状を呈しており、図5に示すように、ノズル部49の上端開口縁49aに接着されたシール材4を上方から押さえ込むようになっている。
封止周壁部57は、天壁部54の下面におけるシール押さえ部56の径方向外側に、容器軸Oと同軸に配置されている。封止周壁部57は、天壁部54の下面から容器軸O方向に沿って下方に突出する筒形状を呈しており、図5に示すように、ノズル部49の下端部外周面に密着し、吐出口31aを閉塞(シール)するようになっている。
このように構成された吐出容器1Aにおいて、内容物を吐出する場合には、まず蓋部41Aをヒンジ部42回りに上方に向けて回動させる。なお、容器本体2Aにシール材4が接着している場合には、摘み部4aを引き上げることにより、シール材4を容器本体2Aから剥がす。シール材4を剥がすと、シール材4によって容器本体2Aの内側に向けて弾性変位していた閉塞板3Aが、容器本体2Aの外側に向けて復元変位する。その後、例えば、容器本体2Aを傾倒または上下反転させながらスクイズ変形(弾性変形)させる。
これにより、容器本体2Aの内圧が上昇し、吐出口31aのスリットが開くことで、内容物が吐出口31aから外部に吐出される。なお、容器本体2Aのスクイズ変形を停止または解除すると、容器本体2Aの内圧の上昇が停止または容器本体2Aの内圧が低下し、吐出口31aのスリットが閉じる。このため、内容物の吐出が停止する。吐出容器1Aからの内容物の吐出を終えたら、蓋体5の蓋部41Aをヒンジ部42回りに回動させ、装着筒部40A側の係合凸部45と蓋部41A側の係合凹部52とを係合させる。
そうすると、図6に示すように、蓋部41Aが閉塞板3Aを被覆する閉蓋状態となる。この閉蓋状態では、蓋部41Aの天壁部54に設けられた押し込み部55が、シール材4の剥離により復元変位していた閉塞板3Aを、容器本体2Aの内側に向けて押し込み、吐出口31aのスリットが開いた状態になる。これにより、スリットが閉じた状態で、内容物が乾燥し、スリットが開放不能に閉塞してしまうことを防止することができる。このため、いったん使用しはじめた後に長く使用せずに保存しても、その間に弁を構成する弾性ある合成樹脂が互いに癒着することなく、次に使用する際にも弁が円滑に開閉するようになる。
また、この閉蓋状態では、蓋部41Aの天壁部54に設けられた封止周壁部57が、ノズル部49の下端部外周面に当接することで、吐出口31aの径方向外側を閉塞する。これにより、内容物が吐出口31aから封止周壁部57よりも径方向外側に液漏れすることを防止することができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る吐出容器1Aによれば、容器本体2Aに接着されたシール材4を剥離すると、図5に示すようにシール材4によって容器本体2Aの内側に向けて弾性変位していた閉塞板3Aが、図6に示すように容器本体2Aの外側に向けて復元変位する。閉塞板3Aは、シール材4によって容器本体2Aの内側(具体的には、ノズル部49の上端開口縁49aよりも下側)に弾性変位(退避)していたため、シール材4を剥離してもその一部が残存したりせず、また、シール材4を熱融着する場合などであってもその影響を受けて変形することはない。このため、シール材4を剥離した後も、高いシール性を確保することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る吐出容器について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
第3実施形態の吐出容器1Bは、図7に示すように、蓋部41Bが、逆ドーム状の閉塞板本体31の径方向外端縁ないし連結周壁部35の上端部、換言すると閉塞板本体31と連結周壁部35の連設部(角部)を、径方向内側に向かって絞り込む絞り部58(押し込み部)を有する点で、上記実施形態と異なる。なお、絞り部58以外の構成は、上述した第2実施形態の構成と同じである。
絞り部58は、天壁部54の下面から容器軸O方向に沿って下方に突出しており、容器軸Oと同軸に配置されている。絞り部58の下端部は、ノズル部49の上端開口縁49aよりも上方、且つ、復元状態の閉塞板本体31の径方向外端縁ないし連結周壁部35の上端部よりも下方に配置されている。絞り部58の径方向内側の形状は、その下端部から上方に向かうに従って径方向内側に向かうように傾斜している。この絞り部58の傾斜が、閉塞板本体31の径方向外端縁ないし連結周壁部35の上端部に、径方向外側から当接可能であれば、絞り部58は筒状ないし周方向に隙間をあけた複数の突部であってもよい。
上記構成の第3実施形態によれば、絞り部58によって、逆ドーム状の閉塞板本体31の径方向外端縁ないし連結周壁部35の上端部を、径方向内側に向かって絞り込むことで、図7に示すように、シール材4の剥離により復元変位していた閉塞板3Aを、容器本体2Aの内側に向けて押し込み、吐出口31aのスリットを開いた状態にすることができる。この構成によれば、図5に示すように、押し込み部55をノズル部49の上端開口縁49aより下方まで突出させる必要がなくなるため、シール材4の押し込み量が少なくなり、搬送中にシール材4に与える負荷を低減し、シール材4の破れ等を防止できる。
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、容器本体2は、積層剥離型容器12、単層のスクイズ容器15以外に積層容器を用いることもできる。また、閉塞板3に形成された吐出口31aは、スリット以外の円形の開口であってもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。