以下、クレーンの制御システム及び制御方法の実施形態について説明する。図中では、X方向を蔵置レーン13の長手方向とし、Y方向を蔵置レーン13の短手方向とし、Z方向を鉛直方向とする。なお、実施形態において、符号に用いる「t」、「u」は周期を示すものとする。本開示で、「直線」とは平面視で曲率がゼロ(但し、誤差と見做せる場合も含む)の線を示し、「曲線」とは直線以外の線であり、平面視で曲率がゼロよりも大きく、屈曲あるいは湾曲した線を示すものとし、「直線」と「曲線」とを異なる線として区別するものとする。つまり、本開示で、「折れ線」とは数の線分をその端点でつなぎ合わせてできる曲線として定義する。また、本開示において「傾き」は水平面を基準とした水平面に対する傾きとコンテナ蔵置ヤード11の路面48を基準とした路面48に対する傾きとの二種類の傾きを定義する。
図1~図4に例示するように、制御システム30は、コンテナターミナル10でコンテナCを荷役する門型クレーン20に対して目標線40に基づいて走行させる制御を行うシステムである。
図1に例示するように、コンテナターミナル10は、X方向に隣接するコンテナ蔵置ヤード11と本船荷役エリア12とに区画される。コンテナ蔵置ヤード11は、多数のコンテナCが蔵置される複数の蔵置レーン13を備える。蔵置レーン13はX方向(実施形態において岸壁から船舶に向かう方向)に延在し、その長手方向がX方向に向けられて設置される。本船荷役エリア12は、岸壁に沿って敷設されるレールの上を走行する複数の岸壁クレーン14を備える。蔵置レーン13は、その長手方向がY方向に向けられて設置されてもよい。
コンテナターミナル10は、コンテナ蔵置ヤード11及び本船荷役エリア12の間でコンテナCを運搬する構内シャシ15と、コンテナ蔵置ヤード11及び外部の間でコンテナCを運搬する外来シャシ16とが走行する。また、コンテナターミナル10は、複数の門型クレーン20が、蔵置レーン13をY方向に跨いだ状態で蔵置レーン13に沿ってX方向に走行する。
コンテナターミナル10は、管理棟17が設置される。管理棟17には、上位システム18と通信機19とが設置されて、上位システム18から通信機19を介して荷役機器(14~16、20)に荷役作業の指示等が行われる。
コンテナターミナル10は、荷役機器が上位システム18からの指示により自動的に荷役可能な自動化ターミナルや、遠隔操作用コントローラ等が管理棟17に設置されて荷役機器を遠隔から操作可能なターミナルが例示できる。また、コンテナターミナル10は、荷役機器に運転者が搭乗して直接操作するターミナルも例示できる。
図2に例示するように、門型クレーン20は、吊具21と、桁部22と、構造体23と、一対の走行装置24a、24bとを有する。吊具21は、桁部22に沿ってY方向に横行可能に構成されたトロリ25から吊架したワイヤによりZ方向に昇降可能な装置である。桁部22は、トロリ25を介してこの吊具21を吊り下げ支持するとともに、Y方向に延在する部材である。構造体23は、桁部22を上部に支持する部材である。また、構造体23は、トロリ25及び脚部26a、26bを有し、平面視で、長手方向がY方向に、短手方向がX方向にそれぞれ向いている略長方形状を成している。脚部は、Z方向に延在する四本の脚体26aと、X方向に隣り合う脚体26aの下端どうしを連結する二本の水平梁26bとを有する。なお、Y方向に隣り合う脚体26aの上端どうしは、桁部22により連結される。一対の走行装置24a、24bは、平面視で桁部22の延在方向(Y方向)に離間して配置されて、構造体23の下端に取り付けられる装置である。
一対の走行装置24a、24bのそれぞれは、水平梁26bの下端に配置されて、タイヤ27a、27bと、電動モータ28a、28bとを有し、電動モータ28a、28bが水平梁26bのどちらか一方に設置されたインバータ29に電気的に接続される。タイヤ27a、27bとしては、ゴムタイヤが例示される。電動モータ(回転駆動機)28a、28bは、一対の走行装置24a、24bの各々に対応して備わるとともに、対応するタイヤ27a、27bに連結される装置である。電動モータ28a、28bは、減速機を含むものとする。インバータ29は、電動モータ28a、28bの回転速度又は回転トルクを調節する装置である。なお、走行装置24a、24bには、駆動輪であるタイヤ27a、27bの他に、電動モータ28a、28bが連結されていない受動輪が含まれる場合がある。また、走行装置24a、24bのそれぞれが複数の電動モータを有してもよい。
一対の走行装置24a、24bは、左右一対になっており、平面視で、構造体23のY方向の両端部に離間配置される。一対の走行装置24a、24bは、インバータ29により電動モータ28a、28bが左右独立して駆動することで、対応するタイヤ27a、27bが左右独立して転動する装置である。対応するタイヤ27a、27bが転動することで、門型クレーン20は構造体23の短手方向であり、蔵置レーン13の延在方向であるX方向に走行する。より詳細に、電動モータ28a、28bの回転速度又は回転トルクが等しい場合に一対の走行装置24a、24bのそれぞれの走行速度が等しくなり、門型クレーン20は向きを変えずに直進する。一方で、電動モータ28a、28bの回転速度又は回転トルクが異なる場合に一対の走行装置24a、24bに走行速度差が生じ、この走行速度差に応じて門型クレーン20は進む向きを変えて進む。本開示で、走行装置24a、24bの走行速度は走行装置24a、24bの単位時間当たりの位置の変化量を示すものとする。なお、電動モータ28a、28bを駆動する電力は、門型クレーン20に設置された図示しないバッテリ、又は発電機から供給される。あるいは、電力は、ケーブルやバスバーなどにより外部から供給される。
図3に例示するように、制御システム30は、アンテナ31a、31bと、制御装置32とを備え、制御装置32が、走行装置24a、24bの電動モータ28a、28bの駆動を制御するインバータ29、アンテナ31a、31b、及び通信機33に電気的に接続されて構成される。
各アンテナ31a、31bのそれぞれは、二つの全球測位衛星システム(GNSS)のアンテナであり、所定の周期tごとに複数の人工衛星から受信する時刻等の情報に基づき経度、緯度、及び高度からなる位置座標Pa、Pbを測位する。位置座標Pa、Pbを測位する方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK(リアルタイムキネマティックGPS)測位が例示できる。
各アンテナ31a、31bは、平面座標として経度と緯度とを取得可能な構成であればよい。各アンテナ31a、31bは、平面視で、桁部22の延在方向であるY方向に直交する方向で、構造体23の短手方向で門型クレーン20が走行する走行方向であるX方向の両端部に離間配置される。各アンテナ31a、31bは、門型クレーン20の脚体26aのZ方向中途部位や走行装置24a、24bの近傍の部位に設置してもよいが、脚体26aの上端や桁部22などの構造体23における上部に設置する方が人工衛星からの情報を受信する際の感度が向上するので望ましい。
制御装置32は、各種情報処理を行う中央処理装置(CPU)、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能な内部記憶装置、及び各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。
制御装置32は、各機能要素として位置取得部34及び走行用制御部35を有し、その走行用制御部35が内部記憶装置に予め記憶された目標線40に基づいて門型クレーン20を走行させる制御を行う。各機能要素は、プログラムとして制御装置32の内部記憶装置に記憶されて、中央処理装置により読み出されて、適宜実行される。なお、各機能要素としては、プログラムの他にそれぞれが独立して機能する電気回路も例示される。また、各機能要素のそれぞれをプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で構成し、制御装置32を複数のPLCの集合体としてもよい。
位置取得部34は、各アンテナ31a、31bが所定の周期tごとに取得した位置座標Pa、Pbが入力されて、所定の周期tごとに門型クレーン20の現在位置Ptを取得し、算出した現在位置Ptを走行用制御部35に出力する機能要素である。位置取得部34は、位置座標Pa、Pbの中点として現在位置Ptを算出することが望ましい。なお、位置取得部34は、位置座標Pa、Pb及び門型クレーン20の構造寸法に基づいて、現在位置Ptを算出する機能要素としてもよい。
現在位置Ptは、平面視で門型クレーン20が現在存在している位置(平面座標位置)を示す。現在位置Ptは、構造体23の上部に設置された各アンテナ31a、31bが取得した位置座標Pa、Pbが存在する平面(水平面に限定されない)における構造体23のY方向端部又はY方向の中央部の位置を示すことが好ましい。また、現在位置Ptは、平面視で構造体23のX方向の中心の位置を示すことが好ましく、平面視で位置座標Pa、Pbの中点の位置を示すことがより好ましい。現在位置Ptが構造体23のX方向の中心線上を示すことで、コンテナCのX方向の中心を門型クレーン20の制御の目標値とすることが可能になり、門型クレーン20の位置合わせには有利になる。なお、現在位置Ptが空間座標位置を示す場合に、その現在位置Ptの高さは構造体23の上面よりも上方の高さであることが好ましい。
走行用制御部35は、位置取得部34から出力された現在位置Ptが入力されて、内部記憶装置に予め記憶された目標線40と現在位置Ptとの走行用偏差ΔDtに基づいて、インバータ29を介して電動モータ28a、28bの回転速度Na、Nbを調節して、一対の走行装置24a、24bのそれぞれの走行速度を調節する機能要素である。走行用偏差ΔDtは、目標線40に対する現在位置Ptのずれ量を示しており、平面視で現在位置Ptを通り目標線40と直交する垂線及び目標線40の交点と現在位置Ptとの間の距離を示す。走行用偏差ΔDtは、図中のY方向左側のずれを正として、Y方向右側のずれを負とする。
図4に例示するように、目標線40は、制御装置32の内部記憶装置に予め記憶(設定)されて門型クレーン20を走行させる制御における目標値となる。目標線40は、蔵置レーン13ごとに設定されており、コンテナターミナル10において複数設定される。目標線40は、平面視で、X方向に延在し、走行中の門型クレーン20が水平面に対して傾いた場合に門型クレーン20のY方向における傾きに応じてY方向に屈曲する線で構成される。
目標線40としては、複数の線分をその端点でつなぎ合わせて構成される折れ線が例示される。なお、目標線40は、走行中の門型クレーン20に水平面に対する傾きが生じない場合に平面視でX方向に向かう直線を成す。また、本開示で、走行中の門型クレーン20に生じる水平面に対する傾きは、コンテナ蔵置ヤード11の路面48に設けられた水勾配による傾きに加えて、経時的な劣化による傾きも含むものとする。この経時的な劣化としては、門型クレーン20のタイヤ27a、27bの劣化やコンテナ蔵置ヤード11の路面48の沈下が例示される。
目標線40は、後述するようにX方向に延在して平面視で直線を成す直線目標線42を基準として、走行中の門型クレーン20のY方向における傾きに応じてその中途位置を屈曲させた線である。目標線40は、予め実験や試験により、直線目標線42を目標値として門型クレーン20を走行させた場合にその走行中に位置取得部34が取得した複数の現在位置Ptを走行順に結んだ軌跡で構成される。また、目標線40は、予めシミュレーションにより、門型クレーン20が直線目標線42を目標値として走行したと仮定した場合に位置取得部34が取得すると予測される複数の現在位置Ptを走行順に結んだ軌跡で構成されてもよい。
例えば、コンテナ蔵置ヤード11の路面がY方向右側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がY方向右側に傾いた場合に、平面視で目標線40は直線目標線42に対してY方向右側に位置し、その前後で屈曲している。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面が水平である所を走行中の門型クレーン20が傾いていない場合に、平面視で目標線40は直線目標線42と重なり、X方向に向かって真っ直ぐである。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がY方向左側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がY方向左側に傾いた場合に、平面視で目標線40は直線目標線42に対してY方向左側に位置し、その前後で屈曲している。
なお、目標線40及び直線目標線42のそれぞれはXY平面の座標情報を有すればよく、Z方向の座標情報を含まなくてもよい。目標線40及び直線目標線42がZ方向の座標情報を含む場合に、コンテナ蔵置ヤード11の路面48を高さの基準として、目標線40のZ方向の高さは各アンテナ31a、31bの高さにすることが好ましい。
目標線40は、複数の目標位置41を有し、それらの目標位置41のうちの前後で門型クレーン20のY方向の傾きが変化する位置を変曲点として折り曲げられた折れ線で構成されることが望ましい。
目標位置41は、目標線40の線上に複数配置されて、そのうちの一つが目標線40に基づいて走行する門型クレーン20の停車目標となる位置である。目標位置41は、後述するように直線目標線42における所定の距離ごとに配置された停止位置43に対応させた位置である。目標位置41は、対応する停止位置43に対して、平面視で、走行中の門型クレーン20のX方向における傾きに応じてX方向に前後した位置となり、Y方向における傾きに応じてY方向に左右した位置となる。
停止位置43は、X方向に延在して平面視で直線を成す直線目標線42の線上に配置され、直線目標線42における所定の距離ごとに配置される位置であり、コンテナ蔵置ヤード11の路面を基準とした位置である。換言すると、停止位置43は、走行装置24a、24bを基準とした位置である。停止位置43は、直線目標線42が蔵置レーン13の長手方向であるX方向に向かう真っ直ぐな線である場合に、蔵置レーン13のX方向におけるコンテナCの配列位置を示すベイごとに設定されることが好ましく、さらに、ベイにおけるX方向の中心に設定されることがより好ましい。
例えば、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がX方向前側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がX方向前側に傾いた場合に、平面視で目標位置41は対応する停止位置43に対してX方向前側に位置する。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48が水平である所を走行中の門型クレーン20が傾いていない場合に、平面視で目標位置41は停止位置43と重なる。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がX方向後側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がX方向後側に傾いた場合に、平面視で目標位置41は対応する停止位置43に対してX方向後側に位置する。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がY方向右側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がY方向右側に傾いた場合に、平面視で目標位置41は対応する停止位置43に対してY方向右側に位置する。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がY方向左側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がY方向左側に傾いた場合に、平面視で目標位置41は対応する停止位置43に対してY方向左側に位置する。
なお、目標線40がZ方向の座標情報を含む場合に、目標位置41は門型クレーン20のX方向の傾きに応じてZ方向に上下する。この場合に、目標線40は3次元の折れ線となる。
図5に例示するように、門型クレーン20の制御方法は、上位システム18からの荷役指示を通信機33が受信し、その荷役指示に基づいて門型クレーン20を走行させる方法である。この制御方法は、門型クレーン20を走行させている間は所定の周期tごとに繰り返し行われる。なお、本開示の制御方法は、スタートの時点では門型クレーン20の停車目標となる位置が設定されるものとし、その停車目標となる位置に門型クレーン20を停車させると終了するものとする。
スタートすると、各アンテナ31a、31bが位置座標Pa、Pbを取得して、位置取得部34が位置座標Pa、Pbに基づいて門型クレーン20の現在位置Ptを取得する(S110)。
次いで、走行用制御部35が、位置取得部34が取得した現在位置Ptと予め設定された目標線40とに基づいて走行用偏差ΔDtを算出する(S120)。次いで、走行用制御部35が、算出した走行用偏差ΔDtがゼロか否かを判定する(S130)。走行用偏差ΔDtがゼロと判定すると(S130:YES)、走行用制御部35が、インバータ29を介して一対の走行装置24a、24bの走行速度差を現在の走行速度差に維持して(S140)、スタートへリターンする。一方、走行用偏差ΔDtがゼロでないと判定すると(S150:NO)、走行用制御部35が、インバータ29を介して一対の走行装置24a、24bの走行速度差を走行用偏差ΔDtをゼロにする走行速度差に調節して(S150)、スタートへリターンする。
以上のように、制御システム30は、コンテナ蔵置ヤード11の路面48を基準として平面視で直線を成す直線目標線42では無く、走行中の門型クレーン20のY方向の傾きが反映されて平面視で屈曲する目標線40に基づいて門型クレーン20の走行を制御する。それ故、この制御システム30によれば、走行中の門型クレーン20の傾きが反映された目標線40を走行させる制御の目標値とすることで、位置取得部34により取得した現在位置Ptを路面基準の値に換算する演算を省くことができる。これにより、走行させる制御における演算の頻度を低くするには有利になり、演算処理に掛かる負荷を軽くすることができることに加えて演算誤差が生じる確率を低くすることができる。これに伴って、高精度且つ高速な門型クレーン20の走行制御が可能になり、門型クレーン20を目標位置に精度よく迅速に位置合わせすることができる。
また、制御システム30は、門型クレーン20の停車目標となる位置として、平面視で、対応する停止位置43に対して門型クレーン20の傾きに応じて前後左右にずれる目標位置41が設定される。それ故、走行させる制御により門型クレーン20の現在位置Ptを目標位置41に一致させて走行を停止することで、門型クレーン20の荷役作業における位置合わせには有利になる。
現在位置Ptは、一つの全球測位衛星システムのアンテナが取得した位置座標に基づいて取得されてもよく、全球測位衛星システムに加えて上位システム18と送受信可能なアンテナを用いて取得されてもよい。
図6に例示するように、制御システム30は、制御装置32が、内部記憶装置に目標線40に対する目標領域44を有し、機能要素としてその目標領域44を用いて第二の目標線45を設定する設定部36を有し、走行用制御部35が目標線40の代わりに第二の目標線45を用いてもよい。
設定部36は、予め内部記憶装置に記憶された目標線40及び目標領域44が入力されて、走行させる制御の開始地点P0から終了地点P1までの間の目標値として第二の目標線45を作成し、走行用制御部35に出力する機能要素である。
図7及び図8に例示するように、目標領域44は、平面視で、目標線40からY方向の両方向のそれぞれに所定の幅Ba、Bbで広がり、Y方向における一方の限界端44aと他方の限界端44bとに囲まれた領域である。目標領域44は、目標線40と同様に、予め実験や試験あるいはシミュレーションにより、走行中の門型クレーン20が、蔵置レーン13に蔵置されたコンテナCやその蔵置レーン13に隣接する他の蔵置レーン13を跨いで走行中の他の門型クレーン20と衝突しない領域、及び、構内シャシ15や外来シャシ16が走行する蔵置レーン13に沿った走行路に侵入しない領域として設定される。
幅Ba、Bbは、走行中の門型クレーン20の現在位置Ptが一方の限界端44aに至っても構造体23及び一対の走行装置24a、24bの衝突や侵入を回避可能な幅に設定される。なお、幅Ba、Bbは互いに異なる値に設定されてもよい。
第二の目標線45は、走行させる制御の目標値であり、目標領域44に収まる範囲で、開始地点P0から終了地点P1までの間で目標線40をなぞった経路とは異なる経路に設定される。第二の目標線45の経路長は、開始地点P0から終了地点P1までの間で目標線40をなぞった経路の経路長よりも短いことが好ましく、目標領域44に収まる範囲で開始地点P0から終了地点P1までの間の最短距離がより好ましい。第二の目標線45としては、図7のスプライン曲線、図8の近似直線、あるいは開始地点P0から終了地点P1までの間で区切られた複数の区間ごとのスプライン曲線や近似直線の連続が例示される。なお、開始地点P0としては走行させる制御を開始する地点であり、走行させる制御を行う前の門型クレーン20の現在位置が例示され、終了地点P1としては上位システム18から受信した荷役指示で指示された停車目標となる位置が例示される。
走行用制御部35は、位置取得部34から出力された現在位置Ptと、目標線40の代わりに設定部36で設定された第二の目標線45とが入力されて、その第二の目標線45と現在位置Ptとの走行用偏差ΔDtに基づいて、インバータ29を介して電動モータ28a、28bの回転速度Na、Nbを調節して、一対の走行装置24a、24bのそれぞれの走行速度を調節する機能要素である。
図9に例示するように、門型クレーン20の制御方法は、上位システム18からの荷役指示を通信機33が受信し、その荷役指示に基づいて門型クレーン20を走行させる場合に、既述した制御方法における上記のステップS110を行う前に、設定部36が第二の目標線45を設定する(S100)。並びに、上記のステップS120で、走行用制御部35が設定された第二の目標線45を用いる。
以上のように、制御システム30は、第二の目標線45を用いることで、高精度且つ高速な門型クレーン20の走行制御が可能になり、門型クレーン20を目標位置に精度よく迅速に位置合わせすることができる。
加えて、制御システム30は、走行させる制御の目標値として目標線40をなぞった経路では無く、円滑な走行が可能になる経路や停車目標とする位置により早く到着可能な経路を探索する。それ故、走行させる制御の目標値として滑らかに曲がった経路を用いることで、一対の走行装置24a、24bの速度差を緩やかに変化させるには有利になり、速度差の急激な変化に伴う門型クレーン20の揺れを抑制することができる。また、走行させる制御の目標値として目標線40をなぞった経路の経路長よりも短い経路を用いることで、門型クレーン20を停車目標とする位置により早く到着させるには有利になり、走行させる制御に要する時間を短縮することができる。
なお、制御システム30は、状況に応じて、走行させる制御の目標値として目標領域44に収まる範囲で目標線40をなぞった経路の経路長よりも長い経路長の目標線を設定してもよい。
図10及び図11に例示するように、制御システム30は、アンテナ31cを備えてもよい。また、制御装置32が、内部記憶装置に現在位置Ptが補正位置46に一致したときの基準値として門型クレーン20のY方向の傾き、すなわちX軸回りの角度の基準となる基準傾きθaを有し、機能要素としてパラメータ取得部37と補正部38とを有してもよい。この基準傾きθaは水平面に対する傾きである。
アンテナ31cは、各アンテナ31a、31bと同様に全球測位衛星システム(GNSS)のアンテナであり、所定の周期tごとに複数の人工衛星から受信する時刻等の情報に基づき経度、緯度、及び高度からなる位置座標Pcを取得する。アンテナ31cは、平面視で、アンテナ31a又はアンテナ31bに対して構造体23のX方向の他端部に離間配置される。なお、この実施形態で、各アンテナ31a、31b、31cは、全球測位衛星システムを利用して空間座標(三次元座標)として経度と緯度と高さを取得可能に構成される。
三つのアンテナ31a~31cは、門型クレーン20の構造体23の平面視における形状を略長方形と仮定した場合に、その長方形の四つの隅部のうちの三つの隅部に配置される。このように各アンテナ31a~31cが配置されることで、門型クレーン20のX方向の傾き及びY方向の傾きを取得するには有利になる。
補正位置46は、目標線40の線上に少なくとも一つ配置される。補正位置46は、一つの目標線40の線上に複数配置されることが好ましく、目標線40の線上に複数配置された目標位置41で構成されることがより好ましい。補正位置46が目標位置41で構成されることで、走行させる制御により門型クレーン20が目標位置41を通過する又は目標位置41に停止するごとに補正する制御を行うことが可能になり、補正の頻度を増やすには有利になる。
基準傾きθaは、初期値として補正位置46におけるコンテナ蔵置ヤード11の路面48の傾きのうちのY方向の傾きが設定され、現在位置Ptが補正位置46に一致したときの門型クレーン20の傾きのうちのY方向の左右の傾きを示す。本開示で、現在位置Ptが補正位置46に一致するときは、門型クレーン20が停止したときの現在位置Ptが補正位置46に加えて、門型クレーン20の走行中に現在位置Ptが補正位置46を通過するときも含む。
パラメータ取得部37は、各アンテナ31a、31cが所定の周期tごとに取得した位置座標Pa、Pcが入力されて、所定の周期tごとにパラメータとして門型クレーン20の水平面に対する傾きθtを算出し、算出した傾きθtを補正部38に出力する機能要素である。本開示で、パラメータとは門型クレーン20のY方向の傾きにより変化する値を示し、具体的に傾きθtが例示される。
補正部38は、パラメータ取得部37が取得したパラメータとして傾きθtが入力されて、入力された傾きθtと内部記憶装置に予め記憶された基準値である基準傾きθaとの補正用偏差Δθtに基づいて、目標線40を補正する機能要素である。
補正用偏差Δθtは基準傾きθaから傾きθtを減算した値であり、図中のY方向左側への傾きを正とし、Y方向右側への傾きを負とする。例えば、補正用偏差Δθtが負の場合に門型クレーン20は経年劣化を起因としたY方向右側への傾きが生じており、現在位置Ptが補正位置46に一致したときに門型クレーン20の構造体23の下方部位や走行装置24bが蔵置レーン13の側方に寄った状態となる。また、補正用偏差Δθtが正の場合に門型クレーン20は経年劣化を起因としたY方向左側への傾きが生じており、現在位置Ptが補正位置46に一致したときに門型クレーン20の構造体23の下方左側部位や走行装置24aが蔵置レーン13の側方に寄った状態となる。
補正部38は、補正用偏差Δθtが正の場合にその補正用偏差Δθtがゼロになるように平面視で目標線40をY方向左側に平行にずらして補正する。また、補正部38は、補正用偏差Δθtが負の場合にその補正用偏差Δθtがゼロになるように平面視で目標線40をY方向右側に平行にずらして補正する。
図12に例示するように、制御システム30による門型クレーン20の制御方法は、門型クレーン20の走行中に繰り返し行われる方法である。また、門型クレーン20が停止した場合にも行われる方法である。
スタートすると、各アンテナ31a、31b、31cが位置座標Pa、Pb、Pcを取得して、位置取得部34が位置座標Pa、Pbに基づいて門型クレーン20の現在位置Ptを取得する(S210)。次いで、パラメータ取得部37が位置座標Pa、Pcに基づいてパラメータとして門型クレーン20の現在のY方向の傾きθtを取得する(S220)。
次いで、補正部38が、位置取得部34が取得した現在位置Ptが補正位置46と一致するか否かを判定する(S230)。現在位置Ptが補正位置46と一致しないと判定すると(S230:NO)、スタートへリターンする。一方、現在位置Ptが補正位置46と一致すると判定すると(S230:YES)、補正部38が、パラメータ取得部37が取得したパラメータである傾きθtと予め設定された基準値である基準傾きθaとに基づいて補正用偏差Δθtを算出する(S240)。
次いで、補正部38が、算出した補正用偏差Δθtがゼロか否かを判定する(S250)。補正用偏差Δθtがゼロと判定すると(S250:YES)、スタートへリターンする。一方、一方、補正用偏差Δθtがゼロでないと判定すると(S250:NO)、補正部38が、補正用偏差Δθtをゼロにするように目標線40を補正して(S260)、スタートへリターンする。
以上のように、門型クレーン20の制御システム30は、現在の門型クレーン20の傾きθtが基準傾きθaからずれた場合に、そのずれを反映させるように目標線40を補正する。これにより、補正された目標線40を門型クレーン20の経年劣化やコンテナ蔵置ヤード11の路面48の経年劣化に対応させることができ、高精度且つ高速な門型クレーン20の走行制御が可能になり、門型クレーン20を目標位置に精度よく迅速に位置合わせすることができる。
また、制御システム30は、補正する際に基準傾きθaを補正せずに、制御システム30が有する目標線40のみを補正する。これにより、各門型クレーン20で異なる状況に応じて走行させる制御を行うことが可能になる。なお、一つの蔵置レーン13を複数の門型クレーン20が走行した際に、それらの複数の門型クレーン20の制御システム30の全てで同様の補正がなされた場合に、コンテナ蔵置ヤード11の路面が経年劣化したと見做して基準傾きθaを補正してもよい。
図13~図15に例示するように、制御システム30は、アンテナ31aの代わりに補正位置取得装置39aと補正対象体39bとを有してもよい。また、制御装置32が、内部記憶装置に現在位置Ptが補正位置46に一致したときの基準値として補正対象体39bの基準位置Qaを有し、パラメータ取得部37がパラメータとして補正対象体39bの位置座標Qtを取得し、補正部38がその位置座標Qtとその基準位置Qaとの補正用偏差ΔQtに基づいて目標線40を補正してもよい。
補正位置取得装置39aは、門型クレーン20の構造体23又は走行装置24bに設置されて、所定の周期tごとに補正位置取得装置39aから補正対象体39bまでの距離を計測する装置である。補正位置取得装置39aとしては、一次元、二次元、あるいは三次元のライダセンサが例示される。
補正対象体39bは、目標線40に沿って少なくとも一つ設置され、その設置位置として門型クレーン20の現在位置Ptが補正位置46に一致したときに補正位置取得装置39aにより計測可能な位置が例示される。補正対象体39bは、補正位置取得装置39aが所定の周期tごとに計測した複数の距離により、門型クレーン20に対して対向する側方部位(Y方向左側部位)の断面形状が特定可能なものが好ましく、その側方部位の断面形状がX方向の両端の間に少なくとも一つの角を有する形状であることがより好ましい。本開示で、門型クレーン20に対して対向する側方部位とは、補正位置取得装置39aにより距離が計測可能な部位である。また、X方向の両端の間に少なくとも一つの角を有する形状は、三角形状や階段状の形状、あるいは多角形状(但し、矩形状を除く)が例示される。なお、その角がY方向左側に向かって突出したものに限定されずに、その角がY方向右側に向かって窪んだものでもよい。このように、補正対象体39bの側方部位の水平断面形状がX方向の両端の間に少なくとも一つの角を有する形状に形成されることで、補正位置取得装置39aにより特定した断面形状からその角の平面座標を特定することが可能となり、その特定した角の平面座標を補正対象体39bの位置座標Qtが特定可能となる。
基準位置Qaは、初期値として門型クレーン20の現在位置Ptが補正位置46に一致した状態で予め補正位置取得装置39aにより計測された補正対象体39bの位置座標が設定される。なお、基準位置Qaは、補正位置46におけるコンテナ蔵置ヤード11の路面の傾きのうちのY方向の傾きに基づいて算出された算出値を用いてもよい。
パラメータ取得部37は、補正位置取得装置39aが所定の周期tごとに取得した複数の距離が入力されて、パラメータとして補正対象体39bの位置座標Qtを算出し、算出した位置座標Qtを補正部38に出力する機能要素である。本開示で、パラメータとは門型クレーン20のY方向の傾きにより変化する値を示し、具体的に補正対象体39bの位置座標Qtが例示される。
補正部38は、パラメータ取得部37が取得した位置座標Qtが入力されて、入力された位置座標Qtと内部記憶装置に予め記憶された基準値である基準位置Qaとの補正用偏差ΔQtに基づいて、目標線40を補正する機能要素である。
補正用偏差ΔQtは基準位置Qaから位置座標Qtを減算した値であり、図中のY方向左側への離間距離を正とし、Y方向右側への離間距離を負とする。例えば、補正用偏差ΔQtが負の場合に門型クレーン20は経年劣化を起因としたY方向右側への傾きが生じており、現在位置Ptが補正位置46に一致したときに門型クレーン20の構造体23の下方部位や走行装置24bが蔵置レーン13の側方に寄った状態となる。また、補正用偏差ΔQtが正の場合に門型クレーン20は経年劣化を起因としたY方向左側への傾きが生じており、現在位置Ptが補正位置46に一致したときに門型クレーン20の構造体23の下方左側部位や走行装置24aが蔵置レーン13の側方に寄った状態となる。
補正部38は、補正用偏差ΔQtが正の場合にその補正用偏差ΔQtがゼロになるように平面視で目標線40をY方向左側に平行にずらして補正する。また、補正部38は、補正用偏差ΔQtが負の場合にその補正用偏差ΔQtがゼロになるように平面視で目標線40をY方向右側に平行にずらして補正する。
この制御システム30による門型クレーン20の制御方法は、図12に例示するフロー図における傾きθtを位置座標Qtとし、補正用偏差Δθtを補正用偏差ΔQtとすればよく、同様の工程で行われる方法である。
以上のように、門型クレーン20の制御システム30は、取得された補正対象体39bの位置座標Qtが基準位置Qaからずれた場合に、そのずれを反映させるように目標線40を補正する。これにより、高精度且つ高速な門型クレーン20の走行制御が可能になり、門型クレーン20を目標位置に精度よく迅速に位置合わせすることができる。
制御システム30は、Y方向のずれを補正する方法と同様の方法により、門型クレーン20のX方向の傾きに応じて目標位置41の目標線40の線上の位置を補正するように構成されてもよい。例えば、門型クレーン20の現在位置Ptが補正位置46に一致した場合に門型クレーン20がX方向前側により傾いた場合に、平面視で目標位置41は対応する停止位置43に対してX方向前側の位置に補正される。このように、平面視で目標線40のY方向の補正とともにX方向の目標位置41の補正を行うことで、門型クレーン20の走行を停止したときの位置合わせに有利になる。
制御システム30は、パラメータ取得部37が各アンテナ31a、31cが取得した位置座標Pa、Pcに基づいて門型クレーン20の傾きθtを算出する構成としたが、この構成に限定されない。例えば、アンテナ31c及びパラメータ取得部37に代えて門型クレーン20の傾きθtを直接的に計測する傾斜計を備えてもよい。なお、傾斜計は門型クレーン20の桁部22の上に設置されることが望ましい。
図16及び図17に例示するように、制御システム30は、目標線40を作成する制御を行ってもよい。制御システム30は、制御装置32が、各機能要素として換算位置取得部50、作成用制御部51、及び、作成部52を有し、その作成用制御部51が内部記憶装置に予め記憶された直線目標線42に基づいて門型クレーン20を走行させる制御を行った後に目標線40を作成する制御を行う。
換算位置取得部50は、位置取得部34が取得した現在位置Ptとパラメータ取得部37が取得した傾きθtとが入力されて、所定の周期tごとに門型クレーン20の換算位置Rtを取得し、取得した換算位置Rtを作成用制御部51に出力する機能要素である。換算位置取得部50は、位置座標Pa、Pbの中点として現在位置Ptを算出することが望ましい。なお、位置取得部34は、位置座標Pa、Pb及び門型クレーン20の構造寸法に基づいて、現在位置Ptを算出する機能要素としてもよい。
換算位置Rtは、直線目標線42が存在する水平面である基準水平面47において、平面視で門型クレーン20が現在存在している位置(平面座標)として構造体23のY方向端部又はY方向の中央部の位置であることが好ましい。換算位置Rtは、直線目標線42及び基準水平面47の空間位置座標を既知として、基準水平面47を基準とした現在位置Ptの高さと傾きθtを用いた三角関数により算出された距離分、現在位置PtをY方向にずらした位置である。
例えば、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がY方向左側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がY方向左側に傾いた場合に、平面視で換算位置Rtは現在位置PtよりもY方向右側に位置する。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48が水平である所を走行中の門型クレーン20が傾いていない場合に、平面視で換算位置Rtは現在位置Ptと重なる。また、コンテナ蔵置ヤード11の路面48がY方向右側に向かって下方に傾いている所を走行中の門型クレーン20がY方向右側に傾いた場合に、平面視で換算位置Rtは現在位置PtよりもY方向左側に位置する。
基準水平面47は、コンテナ蔵置ヤード11において水勾配が形成されていない路面48に設定されることが望ましい。また、基準水平面47は、コンテナ蔵置ヤード11における路面48の高さの平均値を高さとする水平面に設定されてもよい。
作成用制御部51は、換算位置取得部50から出力された換算位置Rtが入力されて、内部記憶装置に予め記憶された直線目標線42と換算位置Rtとの偏差である作成用偏差Δdtに基づいて、インバータ29を介して電動モータ28a、28bの回転速度Na、Nbを調節して、一対の走行装置24a、24bのそれぞれの走行速度を調節する機能要素である。作成用偏差Δdtは直線目標線42に対する換算位置Rtのずれ量を示しており、平面視で換算位置Rtを通り直線目標線42と直交する垂線及び直線目標線42の交点と換算位置Rtとの間の距離を示す。作成用偏差Δdtは、図中のY方向左側のずれを正として、Y方向右側のずれを負とする。また、作成用制御部51は、換算位置Rtが直線目標線42の線上に配置された停止位置43と一致したときの現在位置Ptを内部記憶装置に順次記憶させる機能要素でもある。
作成部52は、作成用制御部51が内部記憶装置に記憶させた複数の現在位置Ptが入力されて、入力された複数の現在位置Ptを走行順に結んだ軌跡として目標線40を作成する機能要素である。なお、門型クレーン20が複数の蔵置レーン13に渡って走行する場合に、内部記憶装置に記憶された複数の現在位置Ptを、蔵置レーン13ごとに区分して記憶させることが望ましい。
図18及び図19に例示するように、制御システム30による門型クレーン20の制御方法は、上位システム18からの目標線40の作成指示を通信機33が受信し、その作成指示に基づいて門型クレーン20を走行させて目標線40を作成する方法である。この制御方法は、門型クレーン20を走行させている間は所定の周期tごとに繰り返し行われ、門型クレーン20の走行が終了して目標線40を作成すると終了する。なお、この制御方法は、スタートの時点では門型クレーン20を蔵置レーン13の一端から他端まで走行させる指示が設定されるものとする。
図18に例示するように、スタートすると、位置取得部34が門型クレーン20の現在位置Ptを取得する(S310)。次いで、パラメータ取得部37が門型クレーン20の傾きθtを取得する(S320)。次いで、換算位置取得部50が、取得した現在位置Pt及び傾きθtに基づいて換算位置Rtを取得する(S330)。
次いで、作成用制御部51が、取得した換算位置Rtと予め設定された直線目標線42とに基づいて作成用偏差Δdtを算出する(S340)。次いで、作成用制御部51が、算出した作成用偏差Δdtがゼロか否かを判定する(S350)。作成用偏差Δdtがゼロと判定すると(S350:YES)、作成用制御部51が、インバータ29を介して一対の走行装置24a、24bの走行速度差を現在の走行速度差に維持して(S360)、スタートへリターンする。一方、作成用偏差Δdtがゼロでないと判定すると(S350:NO)、作成用制御部51が、インバータ29を介して一対の走行装置24a、24bの走行速度差を作成用偏差Δdtをゼロにする走行速度差に調節して(S370)、図19のAへ進む。
図19に例示するように、次いで、作成用制御部51が、取得した換算位置Rtが予め設定された停止位置43と一致したか否かを判定する(S410)。換算位置Rtが停止位置43と一致しないと判定すると(S410:NO)、スタートへリターンする。一方、換算位置Rtが停止位置43に一致したと判定すると(S410:YES)、作成用制御部51が、一致したときの現在位置Ptを内部記憶装置に記憶させる(S420)。次いで、作成用制御部51が、指示された走行が終了したか否かを判定する(S430)。走行が終了していないと判定すると(S430:NO)、スタートへリターンする。一方、走行が終了したと判定すると(S430:YES)、次のステップへ進む。
作成部52が、内部記憶装置に記憶させた複数の現在位置Ptを読み込む(S440)。次いで、作成部52が、複数の現在位置Ptを所定の平面又は空間に配置する(S450)。この所定の平面又は空間は任意に設定可能であり、例えば、所定の平面として基準水平面47に平行で且つ高さが各アンテナ31a~31cのレベルに設定した平面が例示される。次いで、作成部52が、配置された複数の現在位置Ptを門型クレーン20の走行順に線分で結んで折れ線を形成して、目標線40を作成する(S460)。次いで、作成部52が、複数の現在位置Ptを目標位置41に変換する(S470)。次いで、作成部52が、作成した目標線40及び目標位置41を内部記憶装置に記憶して(S480)、終了する。
以上のように、制御システム30は、門型クレーン20を直線目標線42に基づいて走行させた場合に、その走行中に現在位置Ptが描く軌跡として目標線40を作成する。それ故、目標線40に走行中の門型クレーン20の水平面に対する傾きを反映させることができる。これにより、その目標線40を用いて高精度且つ高速な門型クレーン20の走行制御が可能になり、門型クレーン20を目標位置に精度よく迅速に位置合わせすることができる。
目標線40は、走行中に取得した複数の現在位置Ptのうち、その換算位置Rtが直線目標線42の線上に配置されたいずれかの停止位置43と一致した現在位置Ptを結んだ軌跡とすることが好ましい。ここでいう、換算位置Rtが停止位置43と一致したときの現在位置Ptは、目標位置41となる。
制御システム30は、目標線40または第二の目標線45のいずれかを用いて門型クレーン20を走行させる制御と、補正用偏差Δθtまたは補正用偏差ΔQtのいずれか一方を用いて目標線40を補正する制御と、目標線40を作成する制御との全ての制御を行うよう構成されてもよく、いずれかの制御のみを行うように構成されてもよい。同種同型の複数の門型クレーン20のそれぞれに搭載される制御システム30は、いずれか一つの制御システム30が補正する制御と作成する制御とを行うように構成されればよい。
コンテナターミナル10に設けられる全ての門型クレーン20は、それぞれに搭載された制御システム30の走行させる制御と補正する制御と作成する制御の全ての制御により制御されるように構成されてもよい。また、全ての門型クレーン20は、それぞれの制御システム30の走行させる制御と補正する制御との二つの制御により制御されるように構成され、全ての門型クレーン20のうちの一部の門型クレーン20がそれぞれの制御システム30の作成する制御により制御されるように構成されてもよい。さらに、全ての門型クレーン20がそれぞれの制御システム30の走行させる制御により制御されるように構成され、一部の門型クレーン20がそれぞれの制御システム30の補正する制御と作成する制御により制御されるように構成されてもよい。
コンテナターミナル10には、制御システム30の補正する制御と作成する制御との制御により制御される門型クレーン20を少なくとも一台設ければよく、各蔵置レーン13に一台ずつ設けられることが望ましい。なお、作制御システム30の補正する制御と作成する制御との制御により制御される門型クレーン20が、荷役時に蔵置レーン13以外の場所に待機し、作成する制御あるいは補正する制御により制御されるときにのみ、蔵置レーン13に配置されてもよい。
既述した目標線40は門型クレーン20の傾きのうち路面48の傾きにのみに応じて設定されてもよい。つまり、目標線40は、水平面において門型クレーン20の走行方向に向かう直線である直線目標線42に対して門型クレーン20が走行する路面48の傾きのうちのY方向の傾き(X軸回りの角度)に応じて屈曲する線で構成されてもよい。例えば、目標線40は路面48の勾配が既知の場合にその既知の勾配に基づいて設定されてもよい。
図20に例示するように、目標線40は複数の目標位置41を有し、それらの目標位置41のうちの前後で路面48の勾配が変化する位置を変曲点として折り曲げられた折れ線で構成される。目標線40の線上に存在する複数の目標位置41とその目標線40を作成するために用いた直線目標線42の線上に存在する複数の停止位置43とは互いに基準水平面47に対する路面48の傾きθgに関して相関する。ここで、Lを所定の目標位置41の位置座標とその目標位置41に対応する停止位置43bの位置座標とのY方向の差分とし、HをZ方向の差分とする。現在位置Ptが目標位置41となるように門型クレーン20の走行が停止された場合の傾きθgは、そのとき門型クレーン20が存在する路面48の傾きであり、下記の数式(1)で示される。なお、本実施形態において傾きθgは門型クレーン20の走行が停止したときに算出される算出値を示している。
図21に例示するように、本開示の第一実施形態の制御システム30は、走行用制御部35による目標線40と位置取得部34が取得した現在位置Ptとの走行用偏差ΔDtに基づいた門型クレーン20の走行が停止したときに、目標線40に基づいて傾きθgを算出するものである。また、この制御システム30は算出した傾きθgに基づいてトロリ25の横行させるものである。なお、本実施形態の傾きθgは、門型クレーン20の走行が停止したときの傾きであり、コンテナ蔵置ヤード11の路面48の基準水平面47に対する傾きのうちのY方向の傾き、すなわちX軸回りの角度である。
制御システム30は、制御装置32が目標線40と直線目標線42とを有し、位置取得部34および走行用制御部35に加えて、傾き算出部53とトロリ用制御部54とを備える。
本実施形態において、目標線40および直線目標線42のそれぞれはZ方向の座標情報を含む三次元位置座標の集合であり、目標線40のZ座標のレベルが各アンテナ31a、31bの高さのレベルに設定され、直線目標線42のZ座標のレベルが基準水平面47の高さのレベルに設定される。
傾き算出部53は、目標線40および直線目標線42が入力されて、傾きθgを算出し、算出した傾きθgをトロリ用制御部54に出力する機能要素である。具体的に、傾き算出部53は門型クレーン20が荷役指令により指示された目標位置41に対して停止したときに、その目標位置41とそれに対応する停止位置43との差分に基づいて、上記の数式(1)により傾きθgを算出する。
トロリ用制御部54は、上位システム18からの荷役指示に指示された目標着床面60に対応する横行位置Tuが入力されて、その横行位置Tuまでトロリ25を横行させるように図示しないトロリ用駆動装置を調節する機能要素である。本実施形態のトロリ用制御部54は横行位置Tuに加えて、目標着床面60の高さHcと傾き算出部53が算出した傾きθgが入力されて、横行位置Tuに対して傾きθgに応じてずらした位置までトロリ25を横行させる機能要素である。
横行位置Tuは路面48を基準として設定されたトロリ25の停止目標であり、荷役指示により指示された目標着床面60の中心から延びる面法線上に吊具21の中心が位置するように設定された位置である。横行位置Tuはトロリ25の桁部22における存在位置であり、位置座標ではなく、桁部22の左端部を基準として左端部からの離間距離を示す。なお、荷役指示においては横行位置Tuの代わりに目標着床面60の位置を番地で指定し、トロリ用制御部54がその番地の中心の位置座標から横行位置Tuを算出してもよい。
目標着床面60の高さHcは路面48を基準として設定された高さであり、荷役指示により指示された目標着床面60が蔵置されたコンテナCの積み段数に基づいて設定される。
図20の点線に例示するように、吊具21の中心線上が指示された横行位置Tuに重なるようにトロリ25を横行させて吊具21を降ろすと、路面48が基準水平面47に対して傾いた状況の場合に吊具21の中心と目標着床面60の中心との間にずれ量Yuが生じる。ここで、Huを路面48からトロリ25の下端までの高さとすると、ずれ量Yuは下記の数式(2)で示される。なお、高さHuは門型クレーン20の構造上の既知の値を用いる。
トロリ用制御部54は、上記の数式(2)を用いてずれ量Yuを算出し、算出したずれ量Yuを指示された横行位置Tuに加算した位置までトロリ25を横行させるようにトロリ用駆動装置を調節する制御を行う。本実施形態において、傾きθgは基準水平面47をゼロ度として左回りに増加するものとする。従って、桁部22が左肩上がりの状態の基準傾きθaはゼロ度から90度までの範囲になり、このときのずれ量Yuは正の値となる。一方、桁部22が右肩上がりの状態の傾きθgは90度から180度までの範囲となり、このときのずれ量Yuは負の値となる。
図22に例示するように、本実施形態の門型クレーン20の制御方法は、上位システム18からの荷役指示を通信機33が受信し、その荷役指示に基づいて走行用制御部35により門型クレーン20を走行させ、荷役指示で指示された目標位置41に対して門型クレーン20が停止してから開始される方法である。
走行用制御部35による門型クレーン20の走行が停止すると、傾き算出部53が傾きθgを算出する(S510)。次いで、トロリ用制御部54がずれ量Yuを算出する(S520)。次いで、トロリ用制御部54が指示された横行位置Tuに算出したずれ量Yuを加算して(S530)、この制御方法は完了する。
図20に例示するように、上記の制御方法が完了すると、制御装置32は図示しない吊具用制御部により吊具21を降ろして目標着床面60に着床させる。このように、本開示の制御方法により算出される基準水平面47に対する路面48の傾きθgに応じたずれ量Yuを吊具21またはその吊具21が吊ったコンテナCの着床の制御に用いることで、精度の高い着床を実現できる。
ずれ量Yuを考慮した着床の制御により積み上げられた全てのコンテナCは、その上端面(目標着床面60も含む)の中心位置61のそれぞれが鉛直線62の線上に並んでいる。換言すると、積み上げられた全てのコンテナCは階段状に積み上げられた状態になる。なお、目標着床面60を対象となるコンテナCの下端面に設定すると、ずれ量Yuを考慮した着床の制御により積み上げられた全てのコンテナCはその下端面の中心位置のそれぞれが鉛直線62の線上に並ぶことになる。
以上のように、本開示の制御システム30は門型クレーン20の走行が停止したときに、走行中の目標として用いた目標線40に基づいて門型クレーン20が停車した路面48の傾きθgを算出する。このように、制御システム30によれば、門型クレーン20に傾斜計を設置せずに傾きθgを得られることで、門型クレーン20の構造体23や桁部22の歪み、それらに生じる振動、あるいは電気的なノイズなどの様々な影響を排除するには有利になり、傾きθgの精度を高めることができる。
また、制御システム30は目標線40の線上に存在する目標位置41と直線目標線42の線上に存在する停止位置43との差分に基づいて傾きθgを算出する。それ故、目標位置41ごとに異なる全ての傾きθgを記憶させるマップ方式に比して、制御に要するデータ容量を低減できる。
加えて、制御システム30は算出した傾きθgに応じて荷役指示により指示された横行位置Tuをずらす。それ故、基準水平面47に対して傾いた路面48でコンテナCを荷役する場合に、傾きθgにより生じるずれ量Yuを考慮した荷役を行うことが可能になる。これにより、高精度の荷役を行うには有利になり、荷役効率を向上することができる。
図20の点線に例示するように、荷役指示から指示された目標着床面60に対して面合わせの方式でコンテナCを積み上げると、積み段数が多くなるに連れてコンテナCの中心が鉛直線62からの離間距離が長くなる。対して、本実施形態のずれ量Yuを考慮した方式でコンテナCを積み上げると、積み上げられたコンテナCの上端面の中心位置61のそれぞれが鉛直線62の線上に並ぶ。それ故、積み段数が多くなってもコンテナCの中心が鉛直線62から離間しなくなり、面合わせの方式に比して積み上げられたコンテナCの安定度を増すことができる。
図23に例示するように、本開示の第二実施形態の制御システム30は、第一実施形態に対して傾きθgの算出をより高精度にする点が異なる。本実施形態の制御システム30は、位置ずれ取得装置55を備え、傾き算出部53が走行用偏差ΔDtと位置ずれ取得装置55が取得した値とを用いて傾きθgを算出するように構成される。
位置ずれ取得装置55は、門型クレーン20の走行が停止したときに、門型クレーン20の下端部と停止位置43との平面視における位置ずれ量ΔDuを取得する装置である。位置ずれ取得装置55は、直線目標線42が配置された側の走行装置24bの平面視における中心位置と停止位置43との位置ずれ量ΔDuを取得する装置であることが望ましい。位置ずれ取得装置55としては、門型クレーン20の走行装置24bに設置されて、停止位置43に埋め込まれた磁石の磁気を読み取る磁気センサが例示される。位置ずれ取得装置55は磁気センサに限定されずに、トランスポンダで構成されてもよく、前述した補正位置取得装置39aと補正対象体39bとを応用してもよい。また、停止位置43が視覚的に判別可能に構成される場合に、停止位置43の映像から位置ずれ量ΔDuを取得する構成としてもよい。
傾き算出部53は、目標線40および直線目標線42に加えて、走行用制御部35が走行制御に用いる走行用偏差ΔDtと、位置ずれ取得装置55が取得した位置ずれ量ΔDuとが入力されて、傾きθgを算出し、算出した傾きθgをトロリ用制御部54に出力する機能要素である。具体的に、傾き算出部53は目標位置41とそれに対応する停止位置43との差分L、Hに加えて、走行用偏差ΔDtと位置ずれ量ΔDuとに基づいて、下記の数式(3)により傾きθgを算出する。
以上のように、本実施形態の制御システム30は、門型クレーン20が停止したときの門型クレーン20の上部における現在位置Ptと目標位置41との偏差である走行用偏差ΔDtと、門型クレーン20の下端部における停止位置43に対する位置ずれ量ΔDuとを用いて傾きθgを算出する。これにより、目標線40を作成してから生じる路面48の変化に対応した傾きθgを得ることができ、第一実施形態に比して傾きθgの算出精度をより高めることができる。
また、傾きθgを算出する過程において、走行用偏差ΔDtと位置ずれ量ΔDuとの差が予め設定した範囲以上に広がっていると判定した場合に、目標線40を補正するように構成するとよい。具体的に、門型クレーン20が停止したときの走行用偏差ΔDtと位置ずれ量ΔDuとが等しくなるように、目標位置41を補正する。この目標線40の補正は、上述した補正部38における補正を応用してもよい。
既述した実施形態は、目標線40が平面視で、X方向に延在し、走行中の門型クレーン20が水平面に対して傾いた場合に門型クレーン20のY方向における傾きに応じてY方向に屈曲する線で構成されても適用可能である。ただし、目標線40が路面48の傾きにのみ応じて屈曲する線で構成されると、傾きθgの算出精度を向上するには有利になる。