JP7087288B2 - 包装用シーラントフィルム、包装材及び包装体 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、ヒートシール性を維持しつつ、加工工程での良好な滑り性及び基材接着性を有する包装材用フィルム(包装用シーラントフィルム)、その包装材用フィルムを用いた破袋性が良好な包装材及びその包装材を用いた包装体を提供することを目的とする。
また、本発明の別の態様は、上記包装材を用いたことを特徴とする包装体である。
さらに、裏面にはシリコーンガムが含まれていないため、基材を積層させた包装材の接着強度を保つことができ、包装材を用いた包装体としても良好な破袋性を得ることができる。
本発明の第一実施形態に係る包装用シーラントフィルム(以下、単に「シーラントフィルム」とも称する。)は、図1に示すように、少なくとも2層以上から成る包装用シーラントフィルム1であって、一方の面である表面4を有する層を表面層6、表面4とは反対面である裏面5を有する層を裏面層8としたとき、表面層6には、熱可塑性樹脂2に対してシリコーンガム3が0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されている。また、裏面層8には、シリコーンガム3は添加されていない。
ここで、シリコーンとは、ケイ素原子が酸素原子を介して他のケイ素原子と結合した構造に有機基が付加している高分子物質であるポリオルガノシロキサンのことである。また、上記有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等を適宜使用することが可能である。
シリコーンは分子量により性状が大きく変わり、一般に分子量が10万以上の高分子量のシリコーンはガム状になり、10万未満の低分子量のシリコーンはオイル状になる。分子量が10万未満の場合、その性状がオイル状となるため、熱可塑性樹脂2内をシリコーン成分が移動することがある。その場合、温度や経時により、シリコーン成分がブリードアウトすることで表面4の滑り性に変化が生じてしまうことがある。さらに、表面4におけるシリコーン量が多くなることで、ヒートシール性の低下を引き起こすことがある。また、裏面5におけるシリコーン量が多くなることで、後述する包装材として使用する際に必要である他基材との接着時に接着不良等の不具合が生じることがある。
さらに、シーラントフィルム1の裏面層8には、シリコーンガム3は含まれていない。上述のように、熱可塑性樹脂2は滑りにくいため、裏面5同士の滑り性は良好とはいえないが、シーラントフィルム1の巻取時や、他基材と接着させ包装材へ使用するとき、さらには、後述する包装体へと使用するときに、裏面5同士がすり合わさることはない。つまり、裏面5は、シーラントフィルム1の巻取時に表面4とすり合わされる。また、後述のように、シーラントフィルム1を包装材に使用したときには、裏面5は、基材または接着剤9と接着することとなる。そのため、裏面5にシリコーンガム3は含まれていなくとも、加工する上で適正な滑り性を得ることができる。
本実施形態に係るシーラントフィルム1は、図1に示すように表面層6と裏面層8の2層構成でもよいが、図3に示すように表面層6と裏面層8の間に中間層7を設け、3層以上の積層構成としてもよい。このとき、中間層7のシリコーンガム3の含有量は問わない。
また、シリコーンガム3は熱可塑性樹脂2に分散されており、シリコーンガム3の凝集サイズは大きくとも5μm以下であるとよい。凝集サイズが5μmを超えると、適正な滑り性が得られなかったり、ヒートシール性の悪化を生じてしまったりする。また、メヤニ(押出口部の縁にたまる押出材料の凝集物)発生の原因にもなるため、好ましくない。
熱可塑性樹脂2の材料は、適度な柔軟性を有するとともに、例えば押出機による加工適性を有する等、良好な加工性を備えることが好ましい。こうした材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及び、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーを持つポリプロピレン、上記オレフィンと酢酸ビニルを共重合して得られるエチレン酢酸ビニルコポリマーやオレフィンの側鎖を変性して得られるエチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)、あるいはエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよいし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられてもよい。
また、図3に示すように、シーラントフィルム1が3層構成の場合には、表面層6、中間層7及び裏面層8の各平均密度は、表面層6≦中間層7、表面層6≦裏面層8が成り立つとよい。さらに、表面層6、中間層7及び裏面層8の平均密度は、それぞれ、0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下、0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下、0.905g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内であるとよい。なお、ここで「主に」とは、包装用シーラントフィルム1を構成する樹脂のうち、重量割合で70%以上であることを意味する。また、平均密度は、JISK7112:1999に準拠した測定方法またはこれと比較できる測定方法により測定する。
中間層7または表面層6には、フィルム製膜時に製品幅よりも外側になる、いわゆる端部分をリサイクルして加えてもよい。これにより、材料削減によるコストダウンを図ることが可能である。ただし、裏面層8にシリコーンガム3が含まれると基材11との接着不良が生じてしまうため、端部分のリサイクル樹脂を加えることは好ましくない。なお、中間層7と裏面層8とを同じ樹脂で形成して成る2層構成でも、上述の物性効果は同等に得ることができるが、端部分のリサイクルができない点には注意が必要である。
図5に示すように、微粒子13をシーラントフィルム1に配合すると、表面4または裏面5に微粒子13の一部が突出する。このように微粒子13の突出部によりシーラントフィルム1の表面4または裏面5に凹凸を付与することで、接触面積を低減させて良好な滑り性を得ることができる。また、こうすることで、シーラントフィルム1の表面4の接触面積の増大を防ぐことができ、耐ブロッキング性も良好になる。表面層6には、平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の微粒子13が重量比で6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加されているとよい。また、裏面層8には、平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子13が重量比で1000ppm以上30000ppm以下の範囲内で添加されているとよい。さらに好ましくは、裏面層8における微粒子13の添加量は1000ppm以上10000ppm以下の範囲内である。表面層6及び裏面層8に添加する微粒子13の平均粒径が設計値よりも小さすぎたり、その添加量が少なすぎたりすると、シーラントフィルム1の巻取時に重要となる表面4と裏面5とを合わせたときの滑り性が悪化することがある。また、包装材10に関しては、包装材10の巻取時に重要となる表面4と基材11とを合わせたときの滑り性が悪化することがある。また、表面層6に添加する微粒子13の平均粒径が大きすぎたり、その添加量が多すぎたりすると、シーラントフィルム1同士を重ねて熱溶着させる際に空隙が多く形成されることによるヒートシール性の低下が懸念される。また、裏面層8に添加する微粒子13の平均粒径が大きすぎたり、その添加量が多すぎたりすると、包装材10における基材11との接着性が低下することがある。
具体的な最適な静摩擦係数の範囲は、表面4と裏面5とを合わせたときの静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であれば好適に使用可能である。より好ましくは、0.3以上0.7以下の範囲内である。静摩擦係数が0.2より小さい場合には、シーラントフィルム1が滑りすぎてしまうことによるシーラントフィルム1の蛇行や、巻きズレなどの巻取不良、ピッチ制御が必要なもの場合はピッチ不良などが発生することがある。一方、静摩擦係数が1.0より大きい場合には、滑りが悪く、ブロッキングやシワが生じるなどの巻取不良、テンション変動、酷い場合にはシーラントフィルム1の破断などが発生することがある。
また、シーラントフィルム1には、その他の各種の添加剤が含まれていてもよい。例えば、加工安定性を付与するための酸化防止剤などを適宜添加することが可能である。
本実施形態のシーラントフィルム1を作製する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。また、表面層6は、熱可塑性樹脂2にシリコーンガム3を分散させてフィルム化した後に冷却して形成すればよい。
また、裏面5には必要に応じ表面改質処理を実施することも可能である。例えば、印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いることが可能である。
図2に示すように、シーラントフィルム1の裏面5に基材11を接着させることで本発明の効果を備えた包装材10を得ることができる。このとき、上述したように、シリコーンガム3は裏面5に露出していないため、裏面5と基材11との接着強度を十分得ることができる。つまり、本実施形態に係るシーラントフィルム1を使用することで、包装材10としても、ヒートシール性及び滑り性が良好であり、且つシーラントフィルム1と基材11との接着強度が高い包装材10を得ることができる。また、裏面5と基材11とを直接接着していてもよいが、図6に示すように、接着剤9を介して裏面5と基材11とを接着していてもよい。この場合であっても、上記同様に、十分な接着強度を得ることができる。
本実施形態に係る包装材10を用いて、互いに向かい合うシーラントフィルム1同士の周縁をヒートシール等により溶着することで、上述した本発明の効果を備えた包装体12を得られる。なお、図7は、本実施形態に係る包装材10を用いて、互いに向かい合うシーラントフィルム1同士の周縁をヒートシール等により溶着して形成した包装体12の構成を模式的に示したものである。
以上、本発明の第一実施形態及びその変形例を示したが、本発明は本実施形態等に限定されるものではない。本実施形態の技術的思想を逸脱しない限り、包材としての用途を考慮し、要求されるその他の物性である剛性、強度、衝撃性等を向上する目的で、他の層や構造を任意に形成できることはいうまでもない。
(1)本実施形態に係るシーラントフィルム1は、少なくとも2層以上から成り、一方の面である表面4を有する層を表面層6、表面4とは反対面である裏面5を有する層を裏面層8としたとき、表面層6には、表面層6を構成する樹脂に対して、シリコーンガム3が0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されている。また、裏面層8には、シリコーンガム3は添加されていない。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1にヒートシール性及び加工工程における良好な滑り性を付与することができる。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の、表面4と裏面5とを合わせたときの滑り性を良好にすることができる。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の耐衝撃性及びヒートシール性を良好にしたまま、曲げ剛性や引裂き性を良好にすることができる。
このような構成であれば、裏面層8にシリコーンガム3が添加されている場合と比較して、基材11を積層させた包装材10の接着強度を高めることができる。
(5)また、本実施形態に係る包装体12は、上記の包装材10を備えている。
このような構成であれば、シーラントフィルム1と基材11との接着強度を高めた包装材10を用いているため、包装体12に良好な破袋性、気密性、包装袋を開封する際の開封性などの特性を付与することができる。
以下、本発明の第一実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
包装用シーラントフィルム1は、表面層6、中間層7、裏面層8の積層した3層構成のフィルムとした。熱可塑性樹脂2として、表面層6では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。また、中間層7及び裏面層8では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。さらに、表1、2に示すように、表面層6、中間層7及び裏面層8に、シリコーンガム3及び微粒子13を添加した。微粒子13には、アクリル架橋体微粒子を使用した。なお、比較例1-1、1-2はシリコーンガム3ではなく、滑剤として一般的なエルカ酸アミドを添加した。各層のシリコーンガム3の添加量及びエルカ酸アミドの添加量や、微粒子13の平均粒径及び添加量を様々変更し、各種実施例、比較例とした。詳細情報は表1、2にまとめている。
上記各実施例及び各比較例によって得られたシーラントフィルム1及び包装材10の性能を評価するため、シーラントフィルム1に関して、滑り性評価及びヒートシール性評価を実施し、包装材10に関して、滑り性評価及び基材接着性評価を実施した。各評価結果を表1、2に示す。
滑り性評価は、株式会社東洋精機製作所製の滑り傾斜角測定装置を用いて、傾斜角度を徐々に上げていった際の錘の滑り始める角度から静摩擦係数を算出する傾斜法により、静摩擦係数を評価した。錘は30mm幅×40mm長さ×30mm高さで重量197gの金属性ブロックを使用した。
シーラントフィルム1の保管環境が異なっていると静摩擦係数は変化してしまうため、保管環境が20℃のときの静摩擦係数及び50℃のときの静摩擦係数を測定し、さらに、両測定結果の差分を算出した。
ヒートシール性評価は、テスター産業株式会社製のヒートシーラー(型番TP-701-B)を用いてシール圧力0.2MPa、シール時間を1秒、シール幅を10mmとし、シール温度を140℃、シーラントフィルム1の表面4側の面同士を重ねてシールした。シールしたシーラントフィルム1を15mm幅×100mmに切出し、チャック間距離を50mm、引張り速度を300mm/minとして島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いてT字剥離強度を測定し、シール強度とした。シール強度が17[N/15mm]以上のものを「〇」、15[N/15mm]~17[N/15mm]のものを「△」、15[N/15mm]以下のものを「×」とした。
基材接着性評価は、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1の順に積層した包装材10に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間の接着性を評価した。まず、溶剤をつけたカッター刃で、両フィルム間の剥離を実施した。剥離ができたものに関しては、それをきっかけとし、島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いて、T字剥離を実施した。サンプルサイズは15mm幅×100mmとし、チャック間距離は10mm、引張り速度は300mm/minの条件とした。
総合判定として、上記のシーラントフィルム1に関する滑り性評価及びヒートシール性評価、並びに包装材10に関する滑り性評価及び基材接着性評価の全評価が「〇」評価であるものを「〇」とし、一つでも「△」評価があったものを「△」、一つでも「×」評価があったものを「×」と表記した。
本発明の第二実施形態に係る包装用シーラントフィルム(以下、単に「シーラントフィルム」とも称する。)は、図8に示すように、包装用シーラントフィルム1の一方の面である表面4に、シリコーンガム3が熱可塑性樹脂2に対し0.4%以上4%以下の割合(表面存在量)で含有されており、表面4とは反対面である裏面5には、シリコーンガム3が含まれていない。
本実施形態に係るシリコーンとは、上述の第一実施形態で説明したシリコーンと同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
なお、本実施形態では、シーラントフィルム1の裏面5にはシリコーンガム3は含まれていない。これは、第一実施形態で説明したように、熱可塑性樹脂2は滑りにくいため、裏面5同士の滑り性は良好とはいえないが、シーラントフィルム1の巻取時や、基材11と接着させ包装材10へ使用するとき、さらには、包装体12へと使用するときに、裏面5同士がすり合わさることはない。つまり、裏面5は、シーラントフィルム1の巻取時には表面4とすり合わされる。また、シーラントフィルム1を包装材10に使用したときには、裏面5は、基材11または接着剤9と接着することとなる。そのため、裏面5にシリコーンガム3は含まれていなくとも、加工する上で適正な滑り性を得ることができる。
以下では、本実施形態における各構成の詳細を説明する。
本実施形態に係るシーラントフィルム1は、表面4及び裏面5のシリコーンガム3の存在量が適切であれば、効果を発揮できる。このため、例えば、図10に示すように、表面4の近傍のみにシリコーンガム3が含まれていてもよいし、図11に示すように、フィルムの中ほどまでシリコーンガム3が含まれていてもよい。もちろん、第一実施形態と同様、図1に示すように2層構成とし、表面4を有する表面層6にシリコーンガム3が含まれており、裏面5を有する裏面層8にはシリコーンガム3が含まれていない構成でもよい。さらに、第一実施形態と同様、図3に示すように表面層6と裏面層8の間に中間層7を設け、3層以上の積層構成としてもよい。このとき、中間層7のシリコーンガム3の含有量は問わない。
シリコーンガム3の表面存在量の評価方法は、特に限定されるものではないが、例えば、赤外分光法やラマン分光法などの振動分光法、オージェ電子分光法やエネルギー分散型X線分光法などの電子顕微鏡観察・分析法、X線光電子分光法などの光電子分光法などを利用することができる。
本実施形態に係る熱可塑性樹脂2は、上述の第一実施形態で説明した熱可塑性樹脂2と同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
なお、第一実施形態と同様、剛性、耐衝撃性、ヒートシール性、引裂き性を考慮した場合、熱可塑性樹脂2は、主にポリエチレンまたはその誘導体で構成されているのが好ましい。また、第一実施形態と同様、シーラントフィルム1を、図3に示すように、3層構成とし、表面層6、中間層7、裏面層8の各平均密度は、表面層6≦中間層7、表面層6≦裏面層8が成り立つとよい。さらに、表面層6、中間層7及び裏面層8の平均密度は、それぞれ、0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下、0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下、0.905g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内であるとよい。なお、ここで「主に」とは、シーラントフィルム1を構成する樹脂のうち、重量割合で70%以上であることを意味する。また、平均密度は、JISK7112:1999に準拠した測定方法またはこれと比較できる測定方法により測定する。
表面4は、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸が形成されているとよい。また、裏面5は、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.2μm以上1.2μm以下の範囲内の凹凸が形成されているとよい。
なお、本実施形態で使用可能な上記有機系または無機系微粒子は、上述の第一実施形態で説明した有機系または無機系微粒子と同じものである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
本実施形態における具体的な最適な静摩擦係数の範囲は、上述の第一実施形態で説明した最適な静摩擦係数の範囲と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
また、本実施形態に係るシーラントフィルム1には、第一実施形態と同様、その他の各種の添加剤が含まれていてもよい。例えば、加工安定性を付与するための酸化防止剤などを適宜添加することが可能である。
本実施形態のシーラントフィルム1を作製する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を使用することが可能である。また、シーラントフィルム1は、熱可塑性樹脂2にシリコーンガム3を分散させてフィルム化した後に冷却して形成すればよい。つまり、本実施形態に係るシーラントフィルム1の製造方法は、上述の第一実施形態で説明したシーラントフィルム1の製造方法とほぼ同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明とは異なる部分について説明し、その他については説明を省略する。
本実施形態に係るフィルム化の方法は、上述の第一実施形態で説明したフィルム化の方法と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
なお、表面4及び裏面5の凹凸として微粒子13を添加する場合には、微粒子13を表面4または裏面5に存在させる必要があるため、溶融フィルムの冷却方法として、金属ロール同士、金属-ゴムロールで圧着する方法は好ましくない。これに対し、熱可塑性樹脂2により上記凹凸を付加する場合は、金属ロール同士、金属-ゴムロールで圧着する方法が好ましい。また、熱可塑性樹脂2により凹凸を付加する場合は、熱プレスなどによって形状を付加してももちろん問題ない。
図9に示すように、シーラントフィルム1の裏面5に基材11を接着させることで本発明の効果を備えた包装材10を得ることができる。このとき、上述したように、シリコーンガム3は裏面5に露出していないため、裏面5と基材11との接着強度を十分得ることができる。つまり、本実施形態に係るシーラントフィルム1を使用することで、包装材10としても、ヒートシール性及び滑り性が良好であり、且つシーラントフィルム1と基材11との接着強度が高い包装材10を得ることができる。また、裏面5と基材11とを直接接着していてもよいが、図6に示すように、接着剤9を介して裏面5と基材11とを接着していてもよい。この場合であっても、上記同様に、十分な接着強度を得ることができる。
また、本実施形態に係る包装材10の具体的な最適な静摩擦係数の範囲も、上述の第一実施形態で説明した包装材10の最適な静摩擦係数の範囲と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
本実施形態では、上述の第一実施形態と同様、本実施形態に係る包装材10を用いて、互いに向かい合うシーラントフィルム1同士の周縁をヒートシール等により溶着することで、上述した本発明の効果を備えた包装体12を得られる。
本実施形態に係る包装体12は、上述の第一実施形態で説明した包装体12と同じである。よって、ここでは第一実施形態でした説明については省略する。
以上、本発明の第二実施形態及びその変形例を示したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本実施形態の技術的思想を逸脱しない限り、包材としての用途を考慮し、要求されるその他の物性である剛性、強度、衝撃性等を向上する目的で、他の層や構造を任意に形成できることはいうまでもない。
(1)本実施形態に係るシーラントフィルム1は、一方の面である表面4には、シリコーンガム3が熱可塑性樹脂2に対し0.4%以上4%以下の割合で含有されており、表面4とは反対面である裏面5には、シリコーンガム3が含まれていない。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1にヒートシール性及び加工工程における良好な滑り性を付与することができる。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の、表面4と裏面5を合わせたときの静摩擦係数を低減することができる。そのため、シーラントフィルム1に良好な滑り性を付与することができる。
また、このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1同士を熱溶着させる際に発生する空隙の量を低減することができる。そのため、シーラントフィルム1に良好なヒートシール性を付与することができる。
このような構成であれば、上記数値範囲外の場合と比較して、シーラントフィルム1の耐衝撃性及びヒートシール性を良好にしたまま、曲げ剛性や引裂き性を良好にすることができる。
このような構成であれば、裏面5にシリコーンガム3が含まれている場合と比較して、基材11を積層させた包装材10の接着強度を高めることができる。
(5)また、本実施形態に係る包装体12は、上記の包装材10を備えている。
このような構成であれば、シーラントフィルム1と基材11との接着強度を高めた包装材10を用いているため、包装体12に良好な破袋性を付与することができる。
以下、本発明の第二実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
包装用シーラントフィルム1は、表面層6、中間層7、裏面層8の積層した3層構成のフィルムとした。熱可塑性樹脂2として、表面層6では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.913g/cm3、MFR3.8)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。また、中間層7及び裏面層8では直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(密度0.931g/cm3、MFR3.2)及び低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、MFR1.0)を95:5の割合でブレンドしたものを使用した。さらに、表3、4に示すように、表面層6、中間層7及び裏面層8に、シリコーンガム3及び微粒子13を添加した。微粒子13には、アクリル架橋体微粒子を使用した。なお、比較例2-1、2-2はシリコーンガム3ではなく、滑剤として一般的なエルカ酸アミドを添加した。各層のシリコーンガム3の添加量及びエルカ酸アミドの添加量や、微粒子13の平均粒径及び添加量を様々変更し、各種実施例、比較例とした。詳細情報は表3、4にまとめている。
上記各実施例及び各比較例によって得られたシーラントフィルム1、包装材10の形態を評価するため、シーラントフィルム1の表面4及び裏面5におけるシリコーンガム3の存在量測定及び凹凸観察測定を行った。測定結果を表3~5に示す。
測定装置として、日本分光株式会社製のフーリエ変換赤外分光光度計(型番FT/IR-6000)を用いた。測定には、Geプリズム、1回反射型ATR法を採用した。以下にシリコーンガム3の存在量の測定手法について説明する。
α={(Ip/Is)×x}/{1+(Ip/Is)×x} ・・・式1
このαが、シリコーンガム3の存在割合(表面存在量)となる。
測定装置として、株式会社キーエンス製のレーザーマイクロスコープ(型番VK-X200)を用いた。対物レンズの倍率を10倍にし、表面4及び裏面5の測定を行い、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)の測定を行った。測定範囲は1mm2の範囲とした。
上記各実施例及び各比較例によって得られたシーラントフィルム1及び包装材10の性能を評価するため、シーラントフィルム1に関して、滑り性評価及びヒートシール性評価を実施し、包装材10に関して、滑り性評価及び基材接着性評価を実施した。各評価結果を表3~5に示す。
滑り性評価は、株式会社東洋精機製作所製の滑り傾斜角測定装置を用いて、傾斜角度を徐々に上げていった際の錘の滑り始める角度から静摩擦係数を算出する傾斜法により、静摩擦係数を評価した。錘は30mm幅×40mm長さ×30mm高さで重量197gの金属性ブロックを使用した。
シーラントフィルム1の保管環境が異なっていると静摩擦係数は変化してしまうため、保管環境が20℃のときの静摩擦係数及び50℃のときの静摩擦係数を測定し、さらに、両測定結果の差分を算出した。
ヒートシール性評価は、テスター産業製のヒートシーラー(型番TP-701-B)を用いてシール圧力0.2MPa、シール時間を1秒、シール幅を10mmとし、シール温度を140℃、シーラントフィルム1の表面4側の面同士を重ねてシールした。シールしたシーラントフィルム1を15mm幅×100mmに切出し、チャック間距離を50mm、引張り速度を300mm/minとして島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いてT字剥離強度を測定し、シール強度とした。シール強度が17[N/15mm]以上のものを「〇」、15[N/15mm]~17[N/15mm]のものを「△」、15[N/15mm]以下のものを「×」とした。
基材接着性評価は、ナイロンフィルム/ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1の順に積層した包装材10に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム/シーラントフィルム1間の接着性を評価した。まず、溶剤をつけたカッター刃で、両フィルム間の剥離を実施した。剥離ができたものに関しては、それをきっかけとし、島津製作所株式会社製引張試験機(型番AGS-500NX)を用いて、T字剥離を実施した。サンプルサイズは15mm幅×100mmとし、チャック間距離は10mm、引張り速度は300mm/minの条件とした。
総合判定として、上記のシーラントフィルム1に関する滑り性評価及びヒートシール性評価、並びに包装材10に関する滑り性評価及び基材接着性評価の全評価が「〇」評価であるものを「〇」とし、一つでも「△」評価があったものを「△」、一つでも「×」評価があったものを「×」と表記した。
2 熱可塑性樹脂
3 シリコーンガム
4 表面
5 裏面
6 表面層
7 中間層
8 裏面層
9 接着剤
10 包装材
11 基材
12 包装体
13 微粒子
Claims (11)
- 少なくとも2層以上から成る包装用シーラントフィルムにおいて、
一方の面である表面を有する層を表面層、前記表面とは反対面である裏面を有する層を裏面層としたとき、
前記表面層には、前記表面層を構成する樹脂に対して、シリコーンガムが0.25重量%以上3重量%以下の割合で添加されており、
前記裏面層には、前記シリコーンガムは添加されておらず、
前記シリコーンガムの一部は、前記表面層の表面に露出しており、
静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であり、
前記表面層には、平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の、前記シリコーンガムとは異なる微粒子が6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記裏面層には、平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子が1000ppm以上10000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記樹脂として、重量割合で70%以上がポリエチレンまたはその誘導体で構成されるものを用い、
前記表面層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm 3 以上0.925g/cm 3 以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm 3 以上0.940g/cm 3 以下の範囲内であり、
前記シリコーンガムの凝集サイズが5μm以下であり、
前記表面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸が形成されており、
前記裏面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.2μm以上1.2μmの範囲内の凹凸が形成されていることを特徴とする包装用シーラントフィルム。 - 前記表面層に添加された前記微粒子の一部は、前記表面層が有する前記表面に露出しており、
前記裏面層に添加された前記微粒子の一部は、前記裏面層が有する前記裏面に露出していることを特徴とする請求項1に記載の包装用シーラントフィルム。 - 前記表面層に添加された前記微粒子の平均粒径は、前記裏面層に添加された前記微粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用シーラントフィルム。
- 前記表面層と前記裏面層との間に配置された中間層をさらに備え、
前記表面層、前記裏面層及び前記中間層のそれぞれは、主成分としてポリエチレン又はその誘導体を含み、
前記表面層、前記中間層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦中間層、表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下の範囲内であり、
前記中間層の平均密度は、0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルム。 - 一方の面である表面層の表面に、シリコーンガムが熱可塑性樹脂に対し0.4%以上4%以下の割合で含有されており、
前記表面層とは反対面である裏面層の裏面には、シリコーンガムが含まれておらず、
前記シリコーンガムの一部は、前記表面層の表面に露出しており、
静摩擦係数が0.2以上1.0以下の範囲内であり、
前記表面層には、平均粒径が7μm以上15μm以下の範囲内の、前記シリコーンガムとは異なる微粒子が6000ppm以上50000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記裏面層には、平均粒径が2μm以上8μm以下の範囲内の微粒子が1000ppm以上10000ppm以下の範囲内で添加されており、
前記熱可塑性樹脂として、重量割合で70%以上がポリエチレンまたはその誘導体で構成されるものを用い、
前記表面層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm 3 以上0.925g/cm 3 以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm 3 以上0.940g/cm 3 以下の範囲内であり、
前記シリコーンガムの凝集サイズが5μm以下であり、
前記表面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.6μm以上2.3μm以下の範囲内の凹凸が形成されており、
前記裏面には、算術平均粗さRa(JISB0601-2001)が0.2μm以上1.2μmの範囲内の凹凸が形成されていることを特徴とする包装用シーラントフィルム。 - 前記包装用シーラントフィルムは、少なくとも3層以上から成り、
前記表面を有する層を表面層、前記裏面を有する層を裏面層、前記表面層と前記裏面層との間に位置する層を中間層としたとき、
前記表面層、前記裏面層及び前記中間層のそれぞれは、主成分としてポリエチレン又はその誘導体を含み、
前記表面層、前記中間層及び前記裏面層の各平均密度は、
表面層≦中間層、表面層≦裏面層
の関係式を満たしており、かつ、
前記表面層の平均密度は、0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下の範囲内であり、
前記中間層の平均密度は、0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内であり、
前記裏面層の平均密度は、0.905g/cm3以上0.940g/cm3以下の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の包装用シーラントフィルム。 - 前記表面層は、前記裏面層側に位置する表面下層と、前記表面下層上に位置する表面上層とを備え、
前記表面上層のみに、前記シリコーンガムが添加されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルム。 - 前記シリコーンガムの添加量は、前記表面層が有する前記表面側から前記裏面層が有する前記裏面側に向かって減少していることを特徴とする請求項5又は6に記載の包装用シーラントフィルム。
- 前記シリコーンガムの数平均分子量は、10万以上であることを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルム。
- 請求項1から請求項9の何れか1項に記載の包装用シーラントフィルムの前記裏面に、少なくとも基材が積層されていることを特徴とする包装材。
- 請求項10に記載の包装材を備えたことを特徴とする包装体。
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