以下、図面を参照して本発明のインクジェット印刷装置の第1の実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、図1は、後述する支持部材40がフラットベッドユニット3内に収容された状態を示す図である。また、以下に示す実施形態の説明では、図1に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置1における上下左右前後方向とする。
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、図1に示すように、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、シャトルユニット4と、乾燥ユニット50と、前処理ユニット6と、気流発生ユニット60とを備えている。
シャトルベースユニット2は、シャトルユニット4、乾燥ユニット50および前処理ユニット6を支持するとともに、前後方向(副走査方向)にシャトルユニット4、乾燥ユニット50および前処理ユニット6を移動させるものである。シャトルベースユニット2は、具体的には、架台部11と、副走査駆動モータ12(図6参照)とを備えている。
架台部11は、矩形枠状に形成されたものであり、シャトルユニット4、乾燥ユニット50および前処理ユニット6を支持するものである。架台部11の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド13A,13Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド13A,13Bは、シャトルユニット4、乾燥ユニット50および前処理ユニット6を前後方向に移動するようにガイドするものである。副走査駆動モータ12は、シャトルユニット4、乾燥ユニット50および前処理ユニット6を前後方向に移動させるものである。
フラットベッドユニット3は、上述した多孔質材からなる建材や化粧パネルなどの印刷媒体15を支持するものである。なお、多孔質材からなる建材としては、たとえばアルミ焼結材がある。アルミ焼結材は、アルミニウムの粉末を焼結により板状に成形したものである。ただし、多孔質を有する印刷媒体15としてはアルミ焼結材に限らず、その他の基材でもよい。また、本実施形態においては、フラットベッドユニット3が、本発明のテーブルに相当するものである。
フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の架台部11の内側に形成された直方体形状の凹部内に配置されている。フラットベッドユニット3は、印刷媒体15が載置される水平面である媒体載置面3aを有している。フラットベッドユニット3は、図示省略した油圧駆動機構などを有し、これにより媒体載置面3aの高さを調整できるように構成されている。
また、フラットベッドユニット3内には、後述する支持部材40が収容されており、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aには、支持部材40がフラットベッドユニット3から突出する際に通過する通過孔3bが形成されている。通過孔3bは、支持部材40の形状に応じて形成されており、本実施形態では前後方向に延びる矩形状に形成されている。
本実施形態の支持部材40は、水平方向に延びる直方体形状で形成された押上部41を複数備えたものである。複数の押上部41は、その延伸方向が、気流発生ユニット60によって発生する気流の方向に平行となるように設けられている。そして、複数の押上部41は、印刷動作の際には、図2上図に示すように、フラットベッドユニット3内に収容されている。一方、後述する印刷媒体15の乾燥動作および気流発生動作の際には、図2下図に示すように上方に移動し、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aから突出する。フラットベッドユニット3内には、押上部41を上下方向(鉛直方向)に移動させる支持部材昇降機構30が設けられている。支持部材昇降機構30は、所定のアクチュエータを有するものである。
このように支持部材昇降機構30によって押上部41をフラットベッドユニット3の媒体載置面3aから突出させることによって、押上部41上に載置された印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成することができ、気流発生ユニット60において発生した気流を流すことができる。
一方、印刷動作を行う際には、上述したように支持部材昇降機構30によって押上部41を下方に向けて移動し、押上部41をフラットベッドユニット3内に収容する。これにより印刷媒体15をフラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に直接載置することができるので、印刷媒体15の平坦性(水平性)を確保することができ、印刷画像の画質を担保することができる。
押上部41と押上部41間の空間との関係については、押上部41と印刷媒体15とが接触する部分の面積が、印刷媒体15の下面全体の面積より小さく、2/3以下であることが好ましい。より好ましくは1/2以下であり、さらに好ましくは1/3以下である。本実施形態の支持部材40の場合、図2に示すように、押上部41の延伸方向に直交する方向の幅をL1とし、押上部41間の空間の延伸方向に直交する方向の幅をL2とした場合、L1≦2×L2であることが好ましく、より好ましくはL1≦L2であり、さらに好ましくはL1≦L2/2である。
シャトルユニット4は、印刷媒体15に対して印刷処理を施すものである。図3は、シャトルユニット4の概略構成を示す図である。なお、図3においては、フラットベッドユニット3上に後述する整流部材43が設置され、支持部材40の押上部41上に印刷媒体15が設置された状態を示している。
シャトルユニット4は、図3に示すように、筐体21と、主走査駆動ガイド22と、主走査駆動モータ23(図6参照)と、ヘッド昇降ガイド24と、ヘッド昇降モータ25(図6参照)と、ヘッドユニット26とを備えている。
筐体21は、ヘッドユニット26などの各部を収納するものである。筐体21は、フラットベッドユニット3を左右方向に跨ぐような門型に形成されている。筐体21は、シャトルベースユニット2の架台部11に支持され、副走査駆動ガイド13A,13Bに沿って移動可能に構成されている。
主走査駆動ガイド22は、ヘッドユニット26を左右方向(主走査方向)に移動するようにガイドするものである。主走査駆動ガイド22は、左右方向に延びる長尺状の部材によって形成されている。ヘッドユニット26は、主走査駆動モータ23によって左右方向に移動する。
ヘッド昇降ガイド24は、ヘッドユニット26を上下方向に移動するようガイドするものである。ヘッド昇降ガイド24は、上下方向に細長い形状の部材から形成されている。ヘッド昇降ガイド24は、ヘッドユニット26とともに主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動可能に構成されている。ヘッドユニット26は、ヘッド昇降モータ25によって上下方向に昇降する。
ヘッドユニット26は、上述したように主走査駆動ガイド22に沿って左右方向に移動しながら、印刷媒体15にインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。ヘッドユニット26は、図3に示すように、4つのインクジェットヘッド31を有している。
図4は、インクジェットヘッド31の外観を示す斜視図である。インクジェットヘッド31は、図4に示すように、ノズルプレート35と、ノズルガード36とを備えている。ノズルプレート35は、インクを吐出するノズル37が、前後方向に複数配列されたノズル列を有するものである。
ノズルガード36は、ノズルプレート35のインク吐出面35aを保護するものであり、ノズルプレート35のノズル列に対応する部分に開口38を有し、ノズル列のインク吐出面35aに対して設けられるものである。ノズルガード36の開口38は、前後方向に細長い矩形状に形成され、全ノズル37が露出するように形成されている。
4つのインクジェットヘッド31は、左右方向に並列して配置されている。4つのインクジェットヘッド31は、それぞれ異なる色(たとえばシアン、ブラック、マゼンダおよびイエロー)のインクを吐出するものである。
図1に戻り、前処理ユニット6は、多孔質からなる印刷媒体15に対して前処理液を塗布して前処理を行うものであり、本実施形態においては、乾燥ユニット50の前方に設けられている。印刷媒体15に対して前処理を塗布する構成としては、たとえばシャトルユニット4内に設けられたヘッドユニット26および主走査駆動ガイド22などと同様の構成を設け、ヘッドユニット26にインクを供給する代わりに、前処理液を供給することによって、印刷媒体15に対して前処理を吐出するようにすればよい。または、前処理液が塗布された刷毛またはブレードを左右方向(主走査方向)に移動させることによって、印刷媒体15上に前処理液を塗布する構成としてもよい。
そして、前処理ユニット6は、シャトルベースユニット2の架台部11に支持され、副走査駆動ガイド13A,13Bに沿って移動可能に構成されている。前処理ユニット6は、副走査方向への移動によって、その下方の印刷媒体15上の所定範囲に前処理液を順次塗布するものである。
乾燥ユニット50は、多孔質材からなる印刷媒体15に吸収された液体(本実施形態においては前処理液およびインク)を蒸発させて乾燥させるものであり、本実施形態においては、シャトルユニット4と前処理ユニット6との間に設けられている。本実施形態の乾燥ユニット50は、左右方向(主走査方向)に延設されたヒータを備えたものである。
そして、乾燥ユニット50は、シャトルベースユニット2の架台部11に支持され、副走査駆動ガイド13A,13Bに沿って移動可能に構成されている。乾燥ユニット50は、副走査方向への移動によってその下方を順次加熱し、印刷媒体15に含まれる液体を順次蒸発させて乾燥させるものである。乾燥ユニット50としては、ファンおよびヒータなどの加熱手段などを有し、印刷媒体15に向けて温風を吹き付けるものでもよいし、赤外光源を有し、赤外線を印刷媒体15に対して照射するものでもよい。
また、架台部11の前側の端部の枠上には、気流発生ユニット60が設置されている。気流発生ユニット60は、シャトルベースユニット2の前側から後側に向けて流れる気流を発生させることによって、上述した押上部41間に形成された空間42(図3参照)に気流を発生させるものである。具体的には、気流発生ユニット60は、1または複数のファンを備えたものであり、そのファンを駆動することによって気流を発生させるものである。また、気流発生ユニット60は、ファンだけでなくヒータなどの加熱手段も設け、温風を発生させることが好ましい。これにより、印刷媒体15の乾燥効率を向上させることができる。
また、本実施形態においては、気流発生ユニット60において発生した気流が、押上部41間の空間42に効率良く流れ込むようにするため、図3および図5に示すように、複数の押上部41からなる支持部材40の左右方向の両側に、直方体の部材からなる整流部材43を配置する。なお、図5は、押上部41および整流部材43を上方から見た図である。整流部材43は、フラットベッドユニット3上に着脱可能に構成するようにしてもよし、フラットベッドユニット3に固定して設けるようにしてもよい。
なお、気流発生ユニット60において発生した気流を、支持部材40の空間42内にさらに効率よく流すため、押上部41の後端側に吸気孔を有する吸気ユニット(図示省略)を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、押上部41の延伸方向が、前後方向(副走査方向)に一致するように支持部材40をフラットベッドユニット3に設けるようにしたが、これに限らない。たとえば気流発生ユニット60を架台部11の左側または右側の端部の枠上に設置し、シャトルベースユニット2の左側から右側または右側から左側に向けて流れる気流を発生させるようにし、押上部41の延伸方向が、左右方向(主走査方向)に一致するように支持部材40をフラットベッドユニット3に設けるようにしてもよい。要するに、気流発生ユニット60が発生する気流の方向と押上部41の延伸方向とが一致していればよい。
図6は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系を示すブロック図である。インクジェット印刷装置1は、装置全体を制御する制御部5を備えている。制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えたコンピュータから構成されるものである。制御部5は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって図6に示す各部を制御するものである。
また、図6に示すようにインクジェット印刷装置1は、操作パネル61を備えている。操作パネル61は、たとえばタッチパネルなどから構成されるものであり、操作メニューなどの種々の情報を表示するとともに、ユーザによる種々の設定入力を受け付けるものである。具体的には、操作パネル61は、印刷濃度などといった印刷処理に関する設定入力を受け付けるとともに、上述した乾燥ユニット50の加熱温度の設定入力や気流発生ユニット60の風量や風速の設定入力を受け付けるものである。制御部5は、操作パネル61において設定入力された情報に基づいて、各部を制御する。
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1の動作について、図7A~図7Eを参照しながら説明する。なお、図7A~図7Eは、図1に示すインクジェット印刷装置1を左側から見た図である。
まず、図7Aに示すように、押上部41がフラットベッドユニット3から突出した状態において、押上部41上に印刷媒体15が載置される。次いで、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図7Bに示すように、前処理ユニット6を前方向(図7Bに示す矢印方向)に移動させるとともに、前処理ユニット6を動作させ、印刷媒体15に前処理液を塗布して前処理を行う。
そして、前処理ユニット6によって印刷媒体15に前処理液が塗布された後、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図7Cに示すように、乾燥ユニット50を前方向(図7Cに示す矢印方向)に移動させる。
また、このとき制御部5は、乾燥ユニット50を移動させながら、乾燥ユニット50を動作させることによって、印刷媒体15上を前方向に沿って順次加熱し、印刷媒体15に含まれた前処理液を蒸発させて乾燥させる。また、制御部5は、乾燥ユニット50の乾燥動作と同時に気流発生ユニット60を動作させることによって押上部41間の空間42内に気流を発生させる。この気流の発生により、印刷媒体15の裏側(下側)から蒸発した気体をスムーズに排気することができ、印刷媒体15の乾燥を促進させることができる。
そして、制御部5は、乾燥ユニット50が乾燥動作終了位置(図7Cの前端)まで移動した際には、乾燥ユニット50と気流発生ユニット60の動作を停止させ、支持部材昇降機構30を制御して押上部41を下方に移動させてフラットベッドユニット3内に収容する。これにより、図7Dに示すように、印刷媒体15をフラットベッドユニット3の媒体載置面3aに直接載置する。そして、その後、印刷媒体15とヘッドユニット26との間の距離を調整する。具体的には、フラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に載置された印刷媒体15とシャトルユニット4内のインクジェットヘッド31との間の距離Z(図7D参照)が1.5mm±0.5mmとなるように調整する。なお、印刷媒体15とヘッドユニット26との間の距離の調整は、ヘッドユニット26を上下方向に移動させることによって行うようにしてもよいし、フラットベッドユニット3を上下方向に移動させることによって行うようにしてもよい。
次いで、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図7Dに示すようにシャトルユニット4を前方向(図7Dに示す矢印方向)に移動させながら印刷処理を行う。具体的には、制御部5は、シャトルユニット4を印刷媒体15上の印刷開始位置まで移動させる。そして、主走査駆動モータ23を制御してヘッドユニット26を主走査方向に移動させながら、入力された印刷ジョブに基づいて、インクジェットヘッド31を制御してノズル37からインクを吐出させることによって、1パス分の印刷を行う。
1パス分の印刷が終了した後、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を次のパスの印刷位置まで前方向に移動させる。制御部5は、この1パス分の印刷とシャトルユニット4の移動とを交互に繰り返すことにより、印刷媒体15に画像を形成する。
そして、1枚分の印刷が終了した時点において、シャトルユニット4は、図7Eに示すように、再び初期位置に配置される。その後、制御部5は、支持部材昇降機構30を制御して押上部41を上方に移動させてフラットベッドユニット3から再び突出させる。次に、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図7Eに示すように、乾燥ユニット50を後方向(図7Eに示す矢印方向)に移動させる。
また、このとき制御部5は、乾燥ユニット50を移動させながら、乾燥ユニット50を動作させることによって、印刷媒体15上を後方向に沿って順次加熱し、印刷媒体15に付着したインクを乾燥させる。また、制御部5は、乾燥ユニット50の乾燥動作と同時に気流発生ユニット60を動作させることによって押上部41間の空間42内に気流を発生させる。この気流の発生により、印刷媒体15の裏側(下側)から蒸発した気体をスムーズに排気することができ、印刷媒体15の乾燥を促進させることができる。
そして、制御部5は、乾燥ユニット50が、図7Eに示す後端の初期位置に配置された際、上述した乾燥動作および気流発生動作を停止させる。次いで、制御部5は、前処理ユニット6を、図7Aに示す後端の初期位置に配置した後、一連の処理を終了する。
なお、上記説明では、後処理は行っていないが、印刷媒体15の種類またはインクの種類などによっては印刷後に後処理を行うようにしてもよい。その場合、印刷後の印刷媒体15に対して後処理液を塗布した後、押上部41をフラットベッドユニット3から突出させた状態で、上述した乾燥動作および気流発生動作を行わせることが好ましい。
印刷媒体15に後処理液を塗布する後処理ユニットについては、たとえば前処理ユニット6に前処理液の代わりに後処理液を供給することによって兼用するようにしてもよいし、前処理ユニット6と同様の構成の後処理ユニットを別途設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、押上部41として、前後方向(副走査方向)に延びる直方体形状の部材を用いるようにしたが、これに限らず、たとえば上下方向(鉛直方向)に延びる円柱形状を有する押上部をフラットベッドユニット3の媒体載置面3aから自動的に出し入れするようにしてもよい。図8は、上述した上下方向に延びる円柱形状を有する押上部49を上方から見た図である。図8に示すように、円柱形状の押上部49は、フラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に一様に配置することが好ましい。また、円柱形状の複数の押上部49は、気流発生ユニット60の気流吹き出し方向(本実施形態では前後方向)の垂直方向(本実施形態では左右方向)に沿って、互いに間隔を空けて気流が通過するように配置することが好ましい。これにより気流発生ユニット60において発生した気流を押上部49間に効率よく流すことができるとともに、印刷媒体15の平坦性を確保することができる。
また、上記実施形態においては、フラットベッドユニット3から押上部41を突出させることによって、印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成するようにしたが、押上部41に限らず、たとえば印刷媒体15の縁を掴んで上方に持ち上げる構成や印刷媒体15を吸引して持ち上げる構成などを設けることによって、印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成するようにしてもよい。要するに、印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成することができる構成であれば、如何なる構成でもよい。
また、上記実施形態のような押上部41を設けることなく、フラットベッドユニット3の媒体載置面3a自体に凹凸面(溝)を形成することによって、押上部41が突出した状態と同様の構成となるようにし、これにより印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、気流発生ユニット60としてファンを用い、ファンによって発生した風を吹き付けることによって気流を発生するようにしたが、気流発生ユニットとしては、このような構成に限らない。たとえば上述したような押上部41をフラットベッドユニット3から自動的に出し入れする構成において、図9に示すように、押上部41間に吸気孔3cを設けるとともに、その吸気孔3cに対して、フラットベッドユニット3内に設けられた吸気管47を接続する。そして、吸気管47に接続された吸引ポンプ48によって空気を吸引することによって、吸気孔3cから空気を吸引し、これにより押上部41間の空間に気流を発生させるようにしてもよい。このように吸引によって気流を発生させることによって、上記実施形態のように吹き付けによって気流を発生させる場合と比較すると風が周辺に及ぼす影響を小さくすることができる。
また、上記実施形態においては、フラットベッドユニット3内に押上部41を収容し、その押上部41を自動的に突出させることによって印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成するようにしたが、これに限らず、フラットベッドユニット3上に別途形成された支持部材を載置し、その支持部材上に印刷媒体15を載置することによって、フラットベッドユニット3と印刷媒体15との間に空間を形成するようにしてもよい。
図10は、上述したフラットベッドユニット3上に載置される支持部材44の一例を示す図である。具体的には、支持部材44は、図10に示すように、所定の厚さを有する板状の部材であって、水平方向について一方向に延びる直方体形状を有する複数の凸部45と、凸部45間に形成された凹部46とを備えたものである。支持部材44の大きさ(外周)は、想定される印刷媒体15の大きさよりも大きく、この支持部材44上に印刷媒体15が載置されることによって、凹部46により空間が形成される。
凸部45と凹部46(空間)との関係については、支持部材44と印刷媒体15とが接触する部分の面積が、印刷媒体15の下面全体の面積より小さく、2/3以下であることが好ましい。より好ましくは1/2以下であり、さらに好ましくは1/3以下である。図10に示す支持部材44の場合、凸部45の延伸方向に直交する方向の幅をL3とし、凹部46の延伸方向に直交する方向の幅をL4とした場合、L3≦2×L4であることが好ましく、より好ましくはL3≦L4であり、さらに好ましくはL3≦L4/2である。
支持部材44は、凸部45の延伸方向が、前後方向(副走査方向)に一致するようにフラットベッドユニット3上に配置される。本実施形態においては、凸部45を前後方向(副走査方向)に延びる直方体形状で形成するようにしたので、気流発生ユニット60において発生した気流を、支持部材44の凹部46内に効率よく流すことができ、支持部材44上に載置された印刷媒体15の乾燥効率を向上させることができる。
また、支持部材44をフラットベッドユニット3上に載置するだけで、印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に簡易に空間を形成することができる。また、支持部材44をフラットベッドユニット3上から取り外せば、フラットベッドユニット3上に印刷媒体15を直接載置することができるので、印刷媒体15の平坦性を確保することができる。
また、上記実施形態においては、印刷媒体15に含まれる前処理液および後処理液を乾燥させる際に乾燥ユニット50による乾燥動作および気流発生ユニット60による気流発生動作を行うようにしたが、印刷媒体15に含まれる前処理液および後処理液の量は、印刷媒体15の厚さや多孔質の大きさによって異なる場合がある。
そこで、たとえば制御部5において、印刷媒体15の種類の情報と、乾燥ユニット50および気流発生ユニット60の制御条件とを対応付けたテーブルを設定しておき、設定入力された印刷媒体の種類の情報に基づいて、乾燥ユニット50および気流発生ユニット60の制御条件を決定するようにしてもよい。これにより、印刷媒体の厚さや多孔質の大きさなどが異なる場合でも適切に乾燥させることができる。
印刷媒体15の種類の情報としては、印刷媒体15の製品情報でもよいし、厚さを示す情報や多孔質の大きさを示す情報でもよい。印刷媒体15の種類の情報は、操作パネル61において設定入力するようにしてもよいし、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブを出力するプリンタドライバ(コンピュータ)において設定入力するようにしてもよい。また、印刷媒体15の厚さとしては、たとえば厚さについて、薄い、中間、厚いのように3段階に分類して制御すればよく、3mm未満と、3mm以上5mm未満と、5mm以上との3段階について制御条件を変更するようにすればよい。
また、乾燥ユニット50の制御条件としては加熱温度があるが、乾燥ユニット50としてファンを用いる場合には、風量および風速を含めるようにしてもよい。また、気流発生ユニット60の制御条件としては、風量および風速があるが、気流発生ユニット60として温風を発生するものを用いる場合には、その温度も含めるようにしてもよい。
また、印刷処理の後にインクを乾燥させるために乾燥動作および気流発生動作を行う場合には、印刷処理に要する総インク吐出量と、乾燥ユニット50および気流発生ユニット60の制御条件とを対応付けたテーブルを設定しておき、総インク吐出量に基づいて、乾燥ユニット50および気流発生ユニット60の制御条件を決定するようにしてもよい。なお、総インク吐出量が多いほど風量および風速は大きく設定され、温度も高く設定される。
総インク吐出量は、操作パネル61において設定入力するようにしてもよいし、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブを出力するプリンタドライバ(コンピュータ)において設定入力するようにしてもよい。または、印刷ジョブに含まれる印刷対象の画像データのデータ量から算出するようにしてもよい。
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、印刷媒体15(フラットベッドユニット3)に対してシャトルユニット4を移動させて副走査方向への走査を行うようにしたが、これに限らず、シャトルユニット4を固定して印刷媒体15(フラットベッドユニット3)を移動させるようにしてもよいし、シャトルユニット4と印刷媒体15(フラットベッドユニット3)との両方を移動させるようにしてもよい。
また、上記実施形態において、印刷媒体15の厚さに応じて、印刷媒体15の上下方向の位置を調整するようにしてもよい。具体的には、たとえば印刷媒体15の厚さが厚い場合には、押上部41,49を下げて印刷媒体15の位置を下げ、印刷媒体15の厚さが薄い場合には、押上部41,49を上げて印刷媒体15の位置を上げることによって、印刷媒体15と乾燥ユニット50との間隔を一定距離に維持することができ、乾燥効率を維持することができる。なお、印刷媒体15の位置を調整する方法としては、押上部41,49の昇降に限らず、フラットベッドユニット3を上下方向に昇降させるようにしてもよい。また、フラットベッドユニット3の高さ調整によって印刷媒体15の位置を大まかに調整した後、押上部41,49を昇降させることによって微調整を行うようにしてもよい。また、印刷媒体15と乾燥ユニット50との距離を一定に維持する方法としては、乾燥ユニット50を所定のアクチュエータからなる調整機構を用いて昇降させるようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態のインクジェット印刷装置10について詳細に説明する。図11は、第2の実施形態のインクジェット印刷装置10の概略構成図である。第2の実施形態のインクジェット印刷装置10は、図1に示した第1の実施形態の気流発生ユニット60を設けたインクジェット印刷装置10に対して、印刷媒体15の前処理液塗布後の乾燥をさらに早めるために吸引機能を有し、また印刷時に印刷媒体15がずれないように位置決めできる位置決め部材を設けたもので、気流発生ユニット70の取り付け位置や構成が異なるものである。位置決め部材は、印刷媒体15の媒体載置面3a内(水平面内)における位置を決める部材である。なお、第1の実施形態のインクジェット印刷装置10と同様の構成については、同じ符号で示し、その説明を省略する。以下、第2の実施形態のインクジェット印刷装置10について、第1の実施形態のインクジェット印刷装置1と異なる点を中心に詳細に説明する。
本実施形態のインクジェット印刷装置10は、上述した円柱形状の押上部49と位置決め部材80(図12参照)とを有し、押上部49および位置決め部材80は、フラットベッドユニット3内に収容可能に構成されている。図11は、押上部49および位置決め部材80が、フラットベッドユニット3内に収容された状態を示す図である。
図11に示すように、フラットベッドユニット3の表面には、押上部49がフラットベッドユニット3から突出する際に通過する第1の通過孔3dと、位置決め部材80がフラットベッドユニット3から突出する際に通過する第2の通過孔3eとが形成されている。第1の通過孔3dは、押上部49の形状に応じて形成されており、本実施形態では円形で形成されている。第2の通過孔3eは、位置決め部材80の形状に応じて形成されており、本実施形態では矩形状とL字型形状で形成されている。
複数の押上部49は、上記第1の実施形態と同様に、印刷動作の際には、図12上図に示すように、フラットベッドユニット3内に収容されている。一方、後述する印刷媒体15の乾燥動作および気流発生動作の際には、図12下図に示すように上方に移動し、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aから突出する。フラットベッドユニット3内には、押上部49を上下方向(鉛直方向)に移動させる支持部材昇降機構30が設けられている。支持部材昇降機構30は、所定のアクチュエータを有するものである。
このように支持部材昇降機構30によって押上部49をフラットベッドユニット3の媒体載置面3aから突出させることによって、押上部49上に載置された印刷媒体15とフラットベッドユニット3との間に空間を形成することができ、気流発生ユニット70において発生した気流を流すことができる。一方、印刷動作を行う際には、上述したように支持部材昇降機構30によって押上部49を下方に向けて移動し、押上部49をフラットベッドユニット3内に収容する。これにより印刷媒体15をフラットベッドユニット3の媒体載置面3a上に直接載置することができるので、印刷媒体15の平坦性(水平性)を確保することができ、印刷画像の画質を担保することができる。
また、位置決め部材80としては、水平方向の断面が矩形状の直方体形状の位置決め部材80と、水平方向の断面がL字型であって上下方向に延びる壁状の位置決め部材80とを備えている。L字型の位置決め部材80は、図11において第2の通過孔3eで示されるように、フラットベッドユニット3の前端の右隅に設けられている。また、直方体形状の位置決め部材80は、後述する気流発生ユニット70の上側排気口70aや下側排気口70bに対向する位置であって、フラッドベッドユニット3の副走査方向に延びる辺縁に複数設けられるともに、フラッドベッドユニット3の前端の主走査方向に延びる辺縁に複数設けられている。また、位置決め部材80は、乾燥動作において、印刷媒体15の上面または下面、もしくは上面および下面の両面に発生した水蒸気を気流で除去するため、フラッドベッドユニット3の媒体載置面3aの全面を気流が通過するように配置されている。本実施形態においては、直方体形状の位置決め部材80は、L字型の位置決め部材80の水平方向の延伸方向に沿って前後方向および左右方向に配列されている。より具体的には、図11において第2の通過孔3eで示されるように、前後方向に4つの直方体形状の位置決め部材80が配置され、左右方向に2つの直方体の位置決め部材80が配置されている。
気流発生ユニット70は、上側排気口70aおよび下側排気口70bからたとえば放射状または一方向に気流を吹き出しながら、副走査方向(前後方向)に移動し、上述したようにフラッドベッドユニット3上の前後方向および左右方向に複数配列された位置決め部材80によって効率良く吸引されるよう構成されている。なお、位置決め部材80の数については、気流発生ユニット70において発生した気流の吸引を行い、かつ印刷媒体15の位置決めを行うため、1つの気流発生ユニット70に対して、少なくとも2以上の位置決め部材80を設けることが好ましい。また、本実施形態においては、気流発生ユニット70を副走査方向に移動させるようにしたが、このように移動させるのではなく、複数の気流発生ユニット70を副走査方向に並べて配置し、それぞれ気流発生ユニット70から放射状または一方向に気流を吹き出すようにしてもよい。また、1つの気流発生ユニット70を固定して設け、フラッドベッドユニット3の媒体載置面3aの全面に向けて広く放射線状に気流を吹き出すようにしてもよい。
また、フラットベッドユニット3内には、位置決め部材80を上下方向(鉛直方向)に移動させる位置決め部材昇降機構90(図12参照)が設けられている。位置決め部材昇降機構90は、所定のアクチュエータを有するものである。
複数の位置決め部材80は、印刷動作の際には、図12上図に示すように、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aから予め設定された高さまで突出する。この高さについては、図13に示すように、位置決め部材80の上面の媒体載置面3aからの高さH2が、媒体載置面3aに載置された印刷媒体15の厚さH1以下となるように設定される。位置決め部材80の高さを上述したように設定することによって、印刷媒体15を位置決め部材80に当接させることにより、印刷媒体15の媒体載置面3a内における位置決めを行うことができるとともに、印刷動作の際に印刷媒体15の上方まで移動したシャトルユニット4(ヘッドユニット26)が、位置決め部材80に衝突するのを防止することができる。
一方、複数の位置決め部材80は、印刷媒体15の前処理液およびインクの乾燥動作および気流発生動作の際には、図12下図に示すように印刷動作時よりもさらに上方に移動し、図13に示すように、位置決め部材80の上面が、押上部49上に載置された印刷媒体15の上面よりも高い位置H3まで移動する。そして、各位置決め部材80の印刷媒体15側の内面には、図12に示すように吸引口81が形成されている。位置決め部材80はこの吸引口81から気流を吸引する。印刷媒体15の乾燥動作および気流発生動作の際に、上述した位置まで位置決め部材80を上昇させて吸引動作を行うことによって、気流発生ユニット70によって印刷媒体15の上側および下側で発生した気流を効率的に吸引することができ、乾燥効率を向上させることができる。すなわち、気流発生ユニット70から放射状に吹き出した気流を、気流発生ユニット70に対向する位置に設けられた位置決め部材80によって吸引して集めることによって、印刷媒体15の上側および下側を流れる気流をより速やかに流すことができ、これにより印刷媒体15の乾燥効率を向上させることができる。また、印刷媒体15の上側および下側を流れる気流の流速分布を制御することができるので、印刷媒体15の乾燥ムラを防止することができる。
また、位置決め部材80に対して、気流発生ユニット70から吹き出した気流(後述する内部循環時に発生した気流および外部排出時に発生した気流の両方)の吸引機能を持たせることによって、位置決めするための部材と吸引機能の機構とを別々に設ける必要がなく、装置を小型化できるとともに、コストの削減を図ることができる。
なお、吸引口81については、必ずしも全ての位置決め部材80に設ける必要はなく、少なくとも気流発生ユニット70に対向する位置に配置される位置決め部材80に設けるようにすればよい。すなわち、本実施形態の場合、左右方向に並ぶ2つの位置決め部材80には吸引口81を設けなくてもよい。
また、本実施形態においては、図12に示すように、各位置決め部材80について、2つの長方形の吸引口81を上下方向に並べて形成するようにしたが、吸引口81の形状および数については、これに限らず、1または3つ以上の吸引口81を形成するようにしてもよいし、円形または楕円形の吸引口81を設けるようにしてもよい。
シャトルユニット4、乾燥ユニット50および前処理ユニット6の構成については、上記第1の実施形態と同様である。
また、本実施形態のインクジェット印刷装置10においては、図11に示すように、シャトルベースユニット2の架台部11の左側面に副走査駆動ガイド13Cが設けられている。副走査駆動ガイド13Cは、気流発生ユニット70を前後方向に移動するようにガイドするものである。本実施形態の気流発生ユニット70は、副走査駆動ガイド13Cが設けられた架台部11の左側面に設置され、副走査駆動モータ12によって、乾燥ユニット50とともに前後方向に移動する。
そして、本実施形態の気流発生ユニット70は、シャトルベースユニット2の左から右に向けて流れる気流を発生させることによって、上述した押上部49によって支持された印刷媒体15の上側と下側に気流を発生させるものである。具体的には、気流発生ユニット70は、1または複数のファンを備えたものであり、そのファンを駆動することによって気流を発生させる。また、本実施形態の気流発生ユニット70は、図11に示すように、上側排気口70aと下側排気口70bとを備えている。図14は、図11に示すインクジェット印刷装置10の矢印A-A方向断面図であって、押上部49および位置決め部材80がフラットベッドユニット3から突出し、印刷媒体15が設置された状態を示す図である。
図14に示すように、気流発生ユニット70は、乾燥ユニット50の底面近傍の位置であって、上側排気口70aが、想定される印刷媒体15の上面よりも上側に位置し、下側排気口70bが、想定される印刷媒体15の下面よりも下側に位置するように構成されている。上側排気口70aから排出された気流を印刷媒体15の上側に流し、下側排気口70bから排出された気流を印刷媒体15の下側に流すことによって、印刷媒体15の両面に効率的に気流を発生させることができ、これにより印刷媒体15の乾燥をより促進することができる。
なお、印刷媒体15の両面においてより効率的に気流を発生させるため、印刷媒体15の種類に応じて、気流発生ユニット70を鉛直方向に昇降させたり、または、印刷媒体15の厚さに応じて、上側排気口70aと下側排気口70bとの間隔を変更可能に構成するようにしてもよい。
また、気流発生ユニット70は、必ずしも2つの排気口を有してなくてもよく、1つの排気口から排出された気流を印刷媒体15の両面に流すようにしてもよい。また、気流発生ユニット70によって発生する気流の風速は、7m/s~9m/sであることが好ましい。風速を7m/s以上とすることによって乾燥を促進させることができ、9m/s以下とすることによって乾燥ユニット50の熱を効率的に循環させることができる。
そして、気流発生ユニット70から排出された気流は、印刷媒体15の上側および下側を経由して、位置決め部材80の吸引口81によって吸引される。
シャトルベースユニット2の架台部11内には、吸気管85、第1のフィルタ82、第2のフィルタ83、ファン部84、通気管86、排気管87および循環管88が設けられており、これらによって循環排気機構が構成されている。そして、ファン部84が動作することによって位置決め部材80の吸引口81から気流気体が吸引され、吸引された気流は、第1のフィルタ82および第2のフィルタを経由して、循環管88によって気流発生ユニット70に戻されるか(内部循環)、もしくは排気管87によって装置外部に排出される(外部排出)。
吸気管85は、その一端が位置決め部材80内部において吸引口81に接続され、その他端が第1のフィルタ82に接続され、位置決め部材80の吸引口81から吸引された気流を第1のフィルタ82に供給する。
第1のフィルタ82は、供給された気流から水分を除去するフィルタであり、たとえばシリカゲルゼオライトフィルタから構成される。なお、第1のフィルタ82としては、これに限らず、水分を除去できるものであればよく、その他の公知なフィルタを用いることができる。第1のフィルタ82によって水分が除去された気流は、通気管86を経由して第2のフィルタ83に供給される。
第2のフィルタ83は、供給された気流から臭い除去するフィルタであり、たとえば活性炭フィルタから構成される。なお、第2のフィルタ83としては、これに限らず、臭いを除去できるものであればよく、その他の公知なフィルタを用いることができる。第2のフィルタ83によって臭いが除去された気流は、通気管86を経由してファン部84に供給される。
なお、第2のフィルタ83に供給される気流の水分量が多い場合、第2のフィルタ83の性能や耐久性に影響を及ぼすおそれがあるため、本実施形態のように水分除去のための第1のフィルタ82の後段に臭気除去のための第2のフィルタ83を設けることが好ましいが、必ずしもこの順番でなくてもよく、第2のフィルタ83の後段に第1のフィルタ82を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態においては、2つのフィルタを設けるようにしたが、これに限らず、いずれか一方のフィルタのみを設けるようにしてもよいし、たとえば臭気除去のためのフィルタを複数種類設けたりしてもよい。
ファン部84は、ファンと、供給された気流の排気を循環管88側と排気管87側とに切り替える切替部とを備えている。ファン部84は、制御部5による制御によって、ファンを動作させることによって位置決め部材80の吸引口81からの吸引動作を行うとともに、切替部を動作させて循環管88側への排気と排気管87側への排気とを切り替える。
切替部によって循環管88側への排気に切り替えられた場合には、ファン部84に供給された気流は、気流発生ユニット70に供給され、気流発生ユニット70の上側排気口70aおよび下側排気口70bから再び排気され、位置決め部材80の吸引口81から吸引される。これにより、装置内を気流が内部循環する。一方、切替部によって排気管87側への排気に切り替えられた場合には、ファン部84に供給された気流は、装置の外部に排出される。
循環管88側への排気と排気管87側への排気との切り替えについては、たとえば印刷媒体15に塗布される前処理液の量が多かったり、インク量が多い場合には、循環する気流の水分量が多くなり、上述した第1のフィルタ82を気流が一回通過しただけでは除去しきれず、印刷媒体15の乾燥時間が長くなる可能性がある。そこで、このような場合には、ファン部84は、気流を装置内で内部循環させ、第1のフィルタ82を気流が複数回通過するようにする。これにより、印刷媒体15の乾燥をより促進することができる。逆に、前処理液およびインク量がそれほど多くない場合には、第1のフィルタ82を何度も通過させる必要はないので、ファン部84は、気流を排気管87側に排気して外部排出する。
また、印刷媒体15に塗布される前処理液およびインクの量または種類によっては、塗布直後、フラッドベッドユニット3の周辺や印刷媒体15そのものの臭いが強い場合があり、上述した第2のフィルタ83だけでは除去しきれず、装置周辺の臭気が強くなり、作業環境が悪化する場合がある。そこで、このような場合には、ファン部84は、気流を装置内で内部循環させることなく、排気管87側に排気して外部排出することによって臭気を拡散させ、臭気の濃度を下げることによって作業環境を改善させる。逆に、前処理液およびインク量の臭いが強くない場合には、ファン部84は、循環管88に排気して循環させる。これにより温風の使用効率を上げることができる。
ファン部84における上述した排気の切り替えについては、ユーザがその切替え指示を設定入力してもよいし、自動的に切り替えるようにしてもよい。ファン部84における排気の切り替えを自動的に行う場合には、たとえば制御部5が、前処理液の量または印刷処理に要する総インク吐出量の情報を取得し、予め設定されたプロファイルまたはテーブルなどを用いて、その量に応じて自動的に切り替えるようにすればよい。または、制御部5が、前処理液の種類またはインクの種類の情報を取得し、予め設定されたプロファイルまたはテーブルなどを用いて、その種類に応じて自動的に切り替えるようにすればよい。前処理液の量または種類、もしくは総インク吐出量またはインクの種類の情報については、ユーザが設定入力してもよいし、印刷ジョブに含め、制御部5が印刷ジョブから取得するようにしてもよい。
また、装置内を循環する気流の水分量を直接計測し、その計測結果に基づいて、循環管88側への排気(内部循環)と排気管87側への排気(外部排出)とを切り替えるようにしてもよい。具体的には、第1のフィルタ82と第2のフィルタ83との間または第2のフィルタ83とファン部84との間などに気流の水分量を計測する計測部を設け、制御部5が、計測部によって計測された水分量が予め設定された閾値未満である場合には、排気管87側への排気とし、水分量が閾値以上である場合には、循環管88側への排気とするようしてもよい。また、制御部5が気流の水分量をリアルタイムに監視し、水分量が閾値以上から閾値未満となった場合に、循環管88側への排気から排気管87側への排気に切り替えるようにしてもよい。
本実施形態のインクジェット印刷装置10の制御系については、本実施形態に特有の動作の制御系以外については、上記第1の実施形態のインクジェット印刷装置1と同様である。
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置10の動作について、図15A~図15Eを参照しながら説明する。なお、図15A~図15Eは、図1に示すインクジェット印刷装置10を左側から見た図である。
まず、図15Aに示すように、押上部49および位置決め部材80がフラットベッドユニット3から突出した状態において、押上部49上に印刷媒体15が載置される。この際、印刷媒体15の1つの角が、L字型の位置決め部材80に当接し、上記角を成す印刷媒体15の2辺が直方体形状の位置決め部材80に当接するように載置することによって、印刷媒体15の位置決めを行うことが好ましいが、前処理の際には、印刷媒体15と位置決め部材80との間に多少の空隙を設けるようにしてもよい。
次いで、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図15Bに示すように、前処理ユニット6を前方向(図15Bに示す矢印方向)に移動させるとともに、前処理ユニット6を動作させ、印刷媒体15に前処理液を塗布して前処理を行う。
そして、前処理ユニット6によって印刷媒体15に前処理液が塗布された後、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図15Cに示すように、乾燥ユニット50および気流発生ユニット70を前方向(図15Cに示す矢印方向)に移動させる。
また、このとき制御部5は、乾燥ユニット50を移動させながら、乾燥ユニット50を動作させることによって、印刷媒体15上を前方向に沿って順次加熱し、印刷媒体15に含まれた前処理液を蒸発させて乾燥させる。また、制御部5は、乾燥ユニット50の乾燥動作と同時に気流発生ユニット70を動作させることによって印刷媒体15の上側および下側に気流を発生させる。さらに、制御部5は、気流発生ユニット70による気流発生と同時に、ファン部84を動作させることによって、位置決め部材80の吸引口81からの吸引動作を行う。
本実施形態のインクジェット印刷装置10は、気流発生ユニット70による気流の発生および位置決め部材80による吸引により、印刷媒体15の表面の前処理液の乾燥を促進させるとともに、印刷媒体15の裏側(下側)から蒸発した気体をスムーズに排気することができ、印刷媒体15の乾燥をより促進させることができる。
また、本実施形態のインクジェット印刷装置10は、位置決め部材80の吸引口81によって吸引した気流を第1のフィルタ82を通過させることにより、気流から水分を除去することができ、さらに乾燥を促進することができる。また、金属部品の錆を防止することができる。
また、本実施形態のインクジェット印刷装置10は、位置決め部材80の吸引口81によって吸引した気流を第2のフィルタ83を通過させることにより、気流から不快な臭いを除去することができる。これにより、装置の周囲に臭気が広がらないようにすることができ、作業者の作業環境を改善することができる。
そして、制御部5は、乾燥ユニット50および気流発生ユニット70が乾燥動作終了位置(図15Cの前端)まで移動した際には、乾燥ユニット50、気流発生ユニット70およびファン部84の動作を停止させる。そして、制御部5は、支持部材昇降機構30を制御して押上部49を下方に移動させてフラットベッドユニット3内に収容する。これにより、図15Dに示すように、印刷媒体15をフラットベッドユニット3の媒体載置面3aに直接載置する。
また、制御部5は、位置決め部材昇降機構90を制御して位置決め部材80を下方に移動させ、位置決め部材80の上面が、印刷媒体15の上面以下の位置であって、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aよりも高い位置となるようにする。そして、ユーザによって、印刷媒体15の位置決めが再度行われる。すなわち、ユーザは、印刷媒体15の1つの角をL字型の位置決め部材80に当接させ、上記角を成す印刷媒体15の2辺を、直方体形状の位置決め部材80に当接させる。このように印刷媒体15の位置決めを行うことによって、印刷媒体15に印刷される画像の位置精度を確保することができる。
そして、その後、印刷媒体15とヘッドユニット26との間の距離を調整する。具体的には、フラットベッドユニット3の媒体載置面3aに載置された印刷媒体15とシャトルユニット4内のインクジェットヘッド31との間の距離Z(図15D参照)が1.5mm±0.5mmとなるように調整する。なお、印刷媒体15とヘッドユニット26との間の距離の調整は、ヘッドユニット26を上下方向に移動させることによって行うようにしてもよいし、フラットベッドユニット3を上下方向に移動させることによって行うようにしてもよい。
次いで、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図15Dに示すようにシャトルユニット4を前方向(図15Dに示す矢印方向)に移動させながら印刷処理を行う。具体的には、制御部5は、シャトルユニット4を印刷媒体15上の印刷開始位置まで移動させる。そして、主走査駆動モータ23を制御してヘッドユニット26を主走査方向に移動させながら、入力された印刷ジョブに基づいて、インクジェットヘッド31を制御してノズル37からインクを吐出させることによって、1パス分の印刷を行う。
1パス分の印刷が終了した後、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御してシャトルユニット4を次のパスの印刷位置まで前方向に移動させる。制御部5は、この1パス分の印刷とシャトルユニット4の移動とを交互に繰り返すことにより、印刷媒体15に画像を形成する。
そして、1枚分の印刷が終了した時点において、シャトルユニット4は、図15Eに示すように、再び初期位置に配置される。その後、制御部5は、支持部材昇降機構30を制御して押上部49を上方に移動させ、位置決め部材昇降機構90を制御して位置決め部材80を上方に移動させ、押上部49および位置決め部材80をフラットベッドユニット3から再び突出させる。
次に、制御部5は、副走査駆動モータ12を制御して、図15Eに示すように、乾燥ユニット50および気流発生ユニット70を後方向(図15Eに示す矢印方向)に移動させる。
また、このとき制御部5は、乾燥ユニット50を移動させながら、乾燥ユニット50を動作させることによって、印刷媒体15上を前方向に沿って順次加熱し、印刷媒体15に付着したインクを乾燥させる。また、制御部5は、乾燥ユニット50の乾燥動作と同時に気流発生ユニット70を動作させることによって印刷媒体15の上側および下側に気流を発生させる。さらに、制御部5は、気流発生ユニット70による気流発生と同時に、ファン部84を動作させることによって、位置決め部材80の吸引口81からの吸引を行う。
本実施形態のインクジェット印刷装置10は、気流発生ユニット70による気流の発生および位置決め部材80による吸引により、印刷媒体15の表面のインクの乾燥を促進させるとともに、印刷媒体15の裏側(下側)から蒸発した気体をスムーズに排気することができ、印刷媒体15の乾燥をより促進させることができる。
また、本実施形態のインクジェット印刷装置10は、位置決め部材80の吸引口81によって吸引した気流を第1のフィルタ82および第2のフィルタ83を通過させることにより、気流から水分および臭いを除去する。
そして、制御部5は、乾燥ユニット50および気流発生ユニット70が、図15Eに示す後端の初期位置に配置された際、上述した乾燥動作、気流発生動作および吸引動作を停止させる。次いで、制御部5は、前処理ユニット6を、図15Aに示す後端の初期位置に配置した後、一連の処理を終了する。
なお、上記説明では、後処理は行っていないが、印刷媒体15の種類またはインクの種類などによっては印刷後に後処理を行うようにしてもよい。その場合、印刷後の印刷媒体15に対して後処理液を塗布した後、押上部49および位置決め部材80をフラットベッドユニット3から突出させた状態で、上述した乾燥動作、気流発生動作および吸引動作を行わせることが好ましい。
また、上記第2の実施形態のインクジェット印刷装置10においては、6つの直方体形状の位置決め部材80を上下方向に移動させるようにしたが、印刷媒体15の大きさに応じて、上下方向に移動させる位置決め部材80を選択するようにしてもよい。たとえば比較的大きな印刷媒体15を用いる場合には、上記第2の実施形態のように6つの全ての直方体形状の位置決め部材80を上下方向に移動させるようにし、比較的小さな印刷媒体15を用いる場合には、たとえば前後方向に並ぶ4つの直方体形状の位置決め部材80のうち、L字型の位置決め部材80に近い2つの位置決め部材80のみを上下方向に移動させるようにしてもよい。すなわち、印刷媒体15の大きさが比較的小さい場合には、6つの直方体形状の位置決め部材80のうち、L字型の位置決め部材80に近い一部の直方体形状の位置決め部材80のみを上下方向に移動させるようにしてもよい。
具体的には、印刷媒体15の大きさと上下方向に移動させる位置決め部材80とを対応付けたテーブルなどを制御部5に予め設定し、制御部5が、入力された印刷媒体15の大きさの情報に基づいてテーブルを参照し、位置決め部材昇降機構90を制御して上下方向に移動させる位置決め部材80を選択するようにすればよい。
印刷媒体15の大きさの情報については、ユーザが操作パネル61によって設定入力してもよいし、印刷ジョブに含まれる情報を取得するようにしてもよい。または、光学センサなどを用いてフラットベッドユニット3上に載置された印刷媒体15の大きさを検出するようにしてもよい。
なお、位置決め部材80については、上記第2の実施形態の位置決め部材80のようにブロック状に分割するようにしてもよいし、全て一体化した形状としてもよい。
また、上記第1および第2の実施形態のインクジェット印刷装置1,10において、気流発生ユニット60,70から温風を発生可能に構成する場合には、たとえば前処理液の量または種類もしくは総インク吐出量またはインクの種類に応じて、温風と冷風と切り替えるようにしてもよい。すなわち制御部5が、前処理液の量または総インク吐出量が少ない場合には冷風とし、多い場合には温風に切り替えるようにしてもよい。または、制御部5が、揮発しやすい前処理液またはインクを用いる場合には冷風とし、揮発しにくい前処理液またはインクを用いる場合には温風に切り替えるようにしてもよい。このように冷風と温風を切り替えることによって、消費電力を削減することができる。なお、前処理液の量または種類もしくは総インク吐出量またはインクの種類の情報の取得方法については、上述した方法と同様である。
本発明のインクジェット印刷装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
本発明のインクジェット印刷装置においては、テーブル上に、印刷媒体のテーブル側の面とテーブルとの間に空間を形成する支持部材を設けることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置において、支持部材は、鉛直方向に延びる円柱形状または水平方向に延びる直方体形状を有することができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置において、支持部材は、円柱形状とすることができ、かつその円柱形状の複数の支持部材は、気流発生ユニットの気流吹き出し方向の垂直方向に沿って、互いに間隔を空けて気流が通過するように配置することができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、支持部材を鉛直方向に昇降させる昇降機構を備えることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、支持部材を昇降させる支持部材昇降機構を備えることができ、支持部材昇降機構は、気流発生ユニットの気流発生動作の際には支持部材を鉛直方向上方に持ち上げて空間を形成し、印刷を行う際には支持部材を鉛直方向下方に下げることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、印刷媒体の厚さに応じて、印刷媒体および乾燥ユニットの少なくとも一方の位置を調整する調整機構を備えることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置において、気流発生ユニットは、上記空間の気体を吸引することによって気流を発生させることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、乾燥ユニットによる乾燥動作と気流発生ユニットによる気流発生動作とを同時に行うよう制御する制御部を備えることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、印刷媒体の種類に応じて、乾燥ユニットおよび気流発生ユニットの少なくとも一方を制御する制御部を備えることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、印刷媒体の載置面内における印刷媒体の位置決めをする位置決め部材を設けることができ、その位置決め部材は、気流発生ユニットによって発生した気流を吸引する吸引機能を有することができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、位置決め部材を昇降させる位置決め部材昇降機構を設けることができ、位置決め部材昇降機構は、気流発生ユニットの気流発生動作の際には位置決め部材を鉛直方向上方に移動させ、印刷を行う際には位置決め部材を鉛直方向下方に移動させることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、位置決め部材の吸引機能によって吸引された気流が通過し、その気流に含まれる水分または臭いを除去するフィルタを備えることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、印刷媒体に塗布される液体の量または種類に応じて、上記フィルタを通過した気流の内部循環と外部排出とを切り替える切替部を備えることができる。
また、本発明のインクジェット印刷装置においては、上記フィルタとして、気流に含まれる水分を除去するものを用い、上記フィルタを通過した気流の水分量に応じて、上記フィルタを通過した気流の内部循環と外部排出とを切り替える切替部を備えることができる。