前述したアンモニア濃度検出装置にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態のアンモニア濃度検出装置1は、図1に示すように、アンモニア素子部2、電位差検出部51、アンモニア濃度算出部52、電圧印加部61及び出力制御部6を備える。アンモニア素子部2は、酸素イオンの伝導性を有する第1固体電解質体(固体電解質体)21と、第1固体電解質体21における、酸素及びアンモニアが含まれる測定ガスGに晒される第1表面211に設けられた検出電極(アンモニア電極)22と、第1固体電解質体21における、第1表面211とは反対側の第2表面212に設けられた基準電極23とを有する。電位差検出部51は、検出電極22と基準電極23との間に生じる電位差ΔVを検出するよう構成されている。アンモニア濃度算出部52は、電位差検出部51による電位差ΔVに基づいて、測定ガスGにおけるアンモニア濃度を算出するよう構成されている。
図14に示すように、電圧印加部61は、基準電極23をマイナス側として検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加し、基準電極23から第1固体電解質体21を介して検出電極22へ酸素イオンを送り込んで、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応を促進させるために用いられる。出力制御部6は、電圧印加部61によって直流電圧Eを印加する電圧印加期間を決定し、電圧印加期間には、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度の出力を無効にする一方、電圧印加期間以外には、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度の出力を有効にするよう構成されている。
以下に、本形態のアンモニア濃度検出装置1について詳説する。
(アンモニア濃度検出装置1)
図1に示すように、本形態のアンモニア濃度検出装置1は、電位差式としての混成電位式のものである。このアンモニア濃度検出装置1においては、酸素及びアンモニアが含まれる状態の測定ガスGにおけるアンモニアの濃度を検出する。本形態の電位差検出部51は、検出電極22における、酸素の電気化学的還元反応(以下、単に還元反応という。)による還元電流とアンモニアの電気化学的酸化反応(以下、単に酸化反応という。)による酸化電流とが等しくなるときに生じる、検出電極22と基準電極23との間の電位差ΔVを検出するよう構成されている。
図6に示すように、アンモニア濃度検出装置1は、車両の内燃機関(エンジン)7の排気管71において、NOxを還元する触媒72から流出するアンモニアの濃度を検出するものである。測定ガスGは、内燃機関7から排気管71へ排気された排ガスである。排ガスの組成は、内燃機関7における燃焼状態によって変化する。内燃機関7における、空気と燃料との質量比である空燃比が、理論空燃比に比べて燃料リッチな状態にあるときには、排ガスの組成においては、未燃ガスに含まれるHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、H2(水素)等の割合が多くなる一方、NOx(窒素酸化物)の割合が少なくなる。内燃機関7における空燃比が、理論空燃比に比べて燃料リーンな状態にあるときには、排ガスの組成においては、HC、CO等の割合が少なくなる一方、NOxの割合が多くなる。また、燃料リッチな状態においては、測定ガスGに酸素(空気)がほとんど含まれず、燃料リーンな状態においては、測定ガスGに酸素(空気)がより多く含まれる。
(触媒72)
同図に示すように、排気管71には、NOxを還元するための触媒72と、触媒72へアンモニアを含む還元剤Kを供給する還元剤供給装置73とが配置されている。触媒72は、触媒担体に、NOxの還元剤Kとしてのアンモニアが付着されるものである。触媒72の触媒担体におけるアンモニアの付着量は、NOxの還元反応に伴って減少する。そして、触媒担体におけるアンモニアの付着量が少なくなったときには、還元剤供給装置73から触媒担体へ新たにアンモニアが補充される。還元剤供給装置73は、排気管71における、触媒72よりも排ガスの流れの上流側位置に配置されており、尿素水を噴射して発生するアンモニアガスを排気管71へ供給するものである。アンモニアガスは、尿素水が加水分解されて生成される。還元剤供給装置73には、尿素水のタンク731が接続されている。
本形態の内燃機関7は、軽油の自己着火を利用して燃焼運転を行うディーゼルエンジンである。また、触媒72は、NOx(窒素酸化物)をアンモニア(NH3)と化学反応させて窒素(N2)及び水(H2O)に還元する選択式還元触媒(SCR)である。
なお、図示は省略するが、排気管71における、触媒72の上流側位置には、NOのNO2への変換(酸化)、CO、HC(炭化水素)等の低減を行う酸化触媒(DOC)、微粒子を捕集するフィルタ(DPF)等が配置されていてもよい。
(マルチガスセンサ)
図6に示すように、本形態のアンモニア濃度検出装置1は、排気管71における、触媒72よりも下流側位置に配置される。なお、排気管71に配置されるのは、厳密には、アンモニア濃度検出装置1のセンサ素子10及びセンサ素子10を保持するセンサ本体である。便宜上、本形態においては、センサ本体のことをアンモニア濃度検出装置1ということがある。
本形態のアンモニア濃度検出装置1は、アンモニア濃度の検出だけでなく、酸素濃度及びNOx濃度の検出も可能なマルチガスセンサ(複合センサ)として形成されている。そして、酸素濃度は、アンモニア濃度を補正するために使用される。また、アンモニア濃度検出装置1によるアンモニア濃度及びNOx濃度は、内燃機関7の制御装置としてのエンジン制御ユニット(ECU)50によって、還元剤供給装置73から排気管71へ還元剤Kとしてのアンモニアを供給する時期を決定するために使用される。
なお、制御装置には、エンジンを制御するエンジン制御ユニット(ECU)50、アンモニア濃度検出装置1を制御するセンサ制御ユニット(SCU)5の他、種々の電子制御ユニットがある。制御装置とは、種々のコンピュータ(処理装置)のことをいう。
エンジン制御ユニット50は、アンモニア濃度検出装置1によって、測定ガスG中にNOxが存在することが検出されるときには、触媒72においてアンモニアが不足していると検知し、還元剤供給装置73から尿素水を噴射し、触媒72へアンモニアを供給するよう構成されている。一方、エンジン制御ユニット50は、アンモニア濃度検出装置1によって、測定ガスG中にアンモニアが存在することが検出されるときには、触媒72においてアンモニアが過剰に存在していると検知し、還元剤供給装置73からの尿素水の噴射を停止し、触媒72へのアンモニアの供給を停止するよう構成されている。触媒72においては、NOxを還元するためのアンモニアが過不足なく供給されることが好ましい。
(触媒出口721のアンモニア濃度とNOx濃度との関係)
エンジン制御ユニット50によるアンモニアの供給制御が行われることにより、触媒72の下流側位置(触媒出口721)及びアンモニア濃度検出装置1の配置位置に存在する測定ガスGのNOx及びアンモニアの濃度領域においては、NOxがアンモニアによって適切に還元される状態と、NOxの流出量が多くなる状態と、アンモニアの流出量が多くなる状態とが、時間を変えて生じることになる。
より具体的には、図7に示すように、エンジン制御ユニット50においては、アンモニア(NH3)濃度とNOx濃度との関係を示す濃度領域は、NOx濃度がアンモニア濃度よりも所定濃度(第1濃度差Δn1)以上高い第1濃度領域N1と、アンモニア濃度がNOx濃度よりも所定濃度(第2濃度差Δn2)以上高い第3濃度領域N3と、第1濃度領域N1と第3濃度領域N3との間の第2濃度領域N2とに区分される。この濃度領域は、アンモニア濃度検出装置1によって検出されるNOx濃度とアンモニア濃度とを比較し、測定ガスGにおいていずれの濃度が高いかを示すものである。
ここで、NOx濃度がアンモニア濃度よりも所定濃度以上高い場合とは、NOx濃度がアンモニア濃度よりも高く、かつNOx濃度とアンモニア濃度との差が第1濃度差Δn1以上である場合を示す。また、アンモニア濃度がNOx濃度よりも所定濃度以上高い場合とは、アンモニア濃度がNOx濃度よりも高く、かつアンモニア濃度とNOx濃度との差が第2濃度差Δn2以上である場合を示す。
アンモニア濃度検出装置1によって検出されるNOx濃度は、後述するNOx電極33がNOxだけでなくアンモニアも検出するために、アンモニア濃度を含むと考えられる。そのため、NOx濃度とアンモニア濃度とを比較する際におけるNOx濃度は、電流に基づいて検出された補正前NOx濃度から、電圧に基づいて検出されたアンモニア濃度を差し引いた補正後NOx濃度とすることができる。
同図において、NOx濃度が高い第1濃度領域N1においては、測定ガスG中にアンモニアが少量存在し、アンモニア濃度が高い第3濃度領域N3においては、測定ガスG中にNOxが少量存在すると仮定している。触媒72におけるNOxの還元反応がより適切に行われる場合には、第1濃度領域N1においては、アンモニアがほとんど存在せず、第3濃度領域N3においては、NOxがほとんど存在しなくなる状態が形成されると考えられる。
濃度領域の区分において、アンモニア濃度及びNOx濃度は、いずれも体積%(ppm)で表されることとする。エンジン制御ユニット50は、アンモニア濃度とNOx濃度との関係が、第2濃度領域N2内になるよう、還元剤供給装置73から触媒72へ供給する還元剤Kの量を調整するよう構成することができる。
第1濃度領域N1と第2濃度領域N2とを区分する所定濃度としての、NOx濃度とアンモニア濃度との第1濃度差Δn1は、10~50ppmとすることができる。そして、エンジン制御ユニット50は、NOx濃度がアンモニア濃度よりも10~50ppm以上高い場合に、アンモニア濃度とNOx濃度との関係が第1濃度領域N1にあると判定することができる。第1濃度差Δn1は、アンモニア濃度検出装置1の仕様、搭載環境等に応じて、適宜変更することができる。
また、第2濃度領域N2と第3濃度領域N3とを区分する所定濃度としての、アンモニア濃度とNOx濃度との第2濃度差Δn2は、50~100ppmとすることができる。そして、エンジン制御ユニット50は、アンモニア濃度がNOx濃度よりも50~100ppm以上高い場合に、アンモニア濃度とNOx濃度との関係が第3濃度領域N3にあると判定することができる。第2濃度差Δn2は、アンモニア濃度検出装置1の仕様、搭載環境等に応じて、適宜変更することができる。
図示は省略するが、アンモニア濃度検出装置1は、アンモニア濃度及びNOx濃度を検出するためのセンサ素子10と、センサ素子10を保持して排気管71に取り付けるためのハウジングと、ハウジングの先端側に取り付けられてセンサ素子10を保護する先端側カバーと、ハウジングの基端側に取り付けられてセンサ素子10の電気配線部分を保護する基端側カバーとを備える。図1及び図2に示すように、センサ素子10は、アンモニア素子部2及び後述する酸素素子部3に対して、後述するヒータ部4を積層して形成されている。
(アンモニア素子部2)
第1固体電解質体21は、板状に形成されており、所定の温度において酸素イオンを伝導させる性質を有するジルコニア材料を用いて構成されている。ジルコニア材料は、ジルコニアを主成分とする種々の材料によって構成することができる。ジルコニア材料には、イットリア(酸化イットリウム)等の希土類金属元素もしくはアルカリ土類金属元素によってジルコニアの一部を置換させた安定化ジルコニア又は部分安定化ジルコニアを用いることができる。
検出電極22は、アンモニア及び酸素に対する触媒活性を有する金(Au)、白金-金合金、白金-パラジウム合金、パラジウム-金合金等の貴金属材料を用いて構成されている。基準電極23は、酸素に対する触媒活性を有する白金(Pt)等の貴金属材料を用いて構成されている。また、検出電極22及び基準電極23は、第1固体電解質体21と焼結する際の共材となるジルコニア材料を含有していてもよい。
図1及び図2に示すように、第1固体電解質体21の、測定ガスGに晒される第1表面211は、アンモニア濃度検出装置1のセンサ素子10における最も外側の表面を形成する。そして、第1表面211に設けられた検出電極22には、測定ガスGが接触しやすい状態が形成されている。本形態の検出電極22の表面には、セラミックスの多孔質体等による保護層が設けられていない。そして、検出電極22には、測定ガスGが拡散律速されずに接触する。なお、検出電極22の表面には、測定ガスGの流速を極力低下させない保護層を設けることも可能である。
第1固体電解質体21の第2表面212及び第2表面212に設けられた基準電極23は、基準ガスAとしての大気に晒されている。第1固体電解質体21の第2表面212には、大気が導入される基準ガスダクト(大気ダクト)24が隣接して形成されている。
(電位差検出部51及び電位差ΔV)
図1に示すように、本形態の電位差検出部51は、検出電極22に混成電位が生じたときの検出電極22と基準電極23との間の電位差ΔVを検出する。検出電極22においては、検出電極22に接触する測定ガスG中にアンモニアと酸素とが存在する場合に、アンモニアの酸化反応と、酸素の還元反応とが同時に進行する。アンモニアの酸化反応は、代表的には、2NH3+3O2-→N2+3H2O+6e-によって表される。酸素の還元反応は、代表的には、O2+4e-→2O2-によって表される。そして、検出電極22における、アンモニアと酸素とによる混成電位は、検出電極22における、アンモニアの酸化反応(速度)と酸素の還元反応(速度)とが等しくなるときの電位として生じる。
図8は、検出電極22において生じる混成電位を説明するための図である。同図においては、横軸に、基準電極23に対する検出電極22の電位(電位差ΔV)をとり、縦軸に、検出電極22と基準電極23との間に流れる電流をとって、混成電位の変化の仕方を示す。また、同図においては、検出電極22においてアンモニアの酸化反応が行われる際の電位と電流の関係を示す第1ラインL1と、検出電極22において酸素の還元反応が行われる際の電位と電流の関係を示す第2ラインL2とを示す。第1ラインL1及び第2ラインL2は、いずれも右肩上がりのラインによって示す。
電位差ΔVが0(ゼロ)の場合は、検出電極22の電位が基準電極23の電位と同じであることを示す。混成電位は、アンモニアの酸化反応を示す第1ラインL1上のプラス側の電流と、酸素の還元反応を示す第2ラインL2上のマイナス側の電流とが釣り合ったときの電位となる。そして、検出電極22における混成電位は、基準電極23に対してマイナス側の電位として検出される。
また、図9に示すように、測定ガスGにおけるアンモニア濃度が高くなるときには、アンモニアの酸化反応を示す第1ラインL1の傾きθaが急になる。この場合には、第1ラインL1上のプラス側の電流と、第2ラインL2上のマイナス側の電流とが釣り合う電位が、よりマイナス側へシフトする。これにより、アンモニア濃度が高くなるほど、基準電極23に対する検出電極22の電位がマイナス側に大きくなる。言い換えれば、アンモニア濃度が高くなるほど、検出電極22と基準電極23との電位差(混成電位)ΔVが大きくなる。そのため、アンモニア濃度が高くなるほど電位差ΔVが大きくなり、電位差ΔVを検出することにより、測定ガスGにおけるアンモニア濃度を検出することが可能になる。
また、図10に示すように、測定ガスGにおける酸素濃度が高くなるときには、酸素の還元反応を示す第2ラインL2の傾きθsが急になる。この場合には、第1ラインL1上のプラス側の電流と、第2ラインL2上のマイナス側の電流とが釣り合う電位が、マイナス側におけるゼロに近い位置へシフトする。これにより、酸素濃度が高くなるほど、基準電極23に対する検出電極22のマイナス側の電位が小さくなる。言い換えれば、酸素濃度が高くなるほど、検出電極22と基準電極23との電位差(混成電位)ΔVが小さくなる。そのため、酸素濃度が高くなるほど、電位差ΔV又はアンモニア濃度を高くする補正を行うことにより、アンモニア濃度の検出精度を高めることができる。
(アンモニア濃度算出部52)
図1及び図5に示すように、本形態のアンモニア濃度算出部52は、電位差検出部51による電位差ΔVを、後述する酸素濃度算出部55による酸素濃度を用いて補正して、測定ガスGにおけるアンモニア濃度を算出する。なお、電位差ΔVはアンモニア濃度を示すため、電位差ΔVを補正することと、アンモニア濃度を補正することとは同じである。
図11は、混成電位式のアンモニア素子部2において、測定ガスGにおけるアンモニア濃度の変化に応じて検出される、電位差検出部51による検出電極22と基準電極23との間の電位差(混成電位)ΔVが、酸素濃度の影響を受けて変化することを示す。同図に示すように、電位差検出部51によって検出される電位差(混成電位)ΔVは、酸素濃度が高くなるほど小さく検出される(マイナス側のゼロに近い位置で検出される)。この理由は、図10における傾きθsによって説明したとおりである。
図12に示すように、本形態のアンモニア濃度算出部52においては、測定ガスGにおける酸素濃度をパラメータとして、電位差検出部51による電位差ΔVと、酸素濃度に応じた補正が行われた酸素補正後のアンモニア濃度C1との関係を示す関係マップM1が設定されている。この関係マップM1は、酸素濃度が所定の値にあるときの電位差ΔVと酸素補正後のアンモニア濃度C1との関係として作成されている。アンモニア濃度算出部52は、測定ガスGにおける酸素濃度及び電位差検出部51による電位差ΔVを関係マップM1に照合して、測定ガスGにおける酸素補正後のアンモニア濃度C1を算出するよう構成されている。
より具体的には、アンモニア濃度算出部52は、酸素濃度算出部55による酸素濃度と、電位差検出部51による電位差ΔVとを、関係マップM1の酸素濃度及び電位差ΔVにそれぞれ照合する。そして、関係マップM1から、電位差ΔVのときの酸素補正後のアンモニア濃度C1を読み取る。そして、アンモニア濃度算出部52は、酸素濃度が高いほど、酸素補正後のアンモニア濃度C1が高くなるように補正する。こうして、酸素補正後のアンモニア濃度C1は、酸素濃度に応じて補正された、アンモニア濃度検出装置1から出力されるアンモニア出力濃度となる。なお、関係マップM1においては、電位差ΔVを、酸素補正前のアンモニア濃度C0としてもよい。
同図においては、測定ガスG中の酸素濃度が、例えば、5[体積%]、10[体積%]、20[体積%]である場合の関係マップM1を示す。この関係マップM1を用いることにより、酸素濃度に応じたアンモニア濃度C1又は電位差ΔVの補正を容易にすることができる。電位差ΔVと酸素補正後のアンモニア濃度C1との関係マップM1は、アンモニア濃度検出装置1の試作・実験時等において求めておくことができる。
電位差検出部51及びアンモニア濃度算出部52は、アンモニア濃度検出装置1に電気接続されたセンサ制御ユニット(SCU)5内に形成されている。電位差検出部51は、検出電極22と基準電極23との電位差ΔVを測定するアンプ等を用いて形成されている。アンモニア濃度算出部52は、コンピュータ等を用いて形成されている。また、センサ制御ユニット5は、内燃機関7のエンジン制御ユニット(ECU)50に接続されており、エンジン制御ユニット50による、内燃機関7、還元剤供給装置73等の動作の制御に利用される。
(酸素素子部3)
図1に示すように、本形態のアンモニア濃度検出装置1は、マルチガスセンサを形成するために、アンモニア素子部2、電位差検出部51、アンモニア濃度算出部52等の他に、酸素素子部3、ポンピング部53、ポンプ電流検出部54、酸素濃度算出部55、NOx検出部56及びNOx濃度算出部57を備える。また、酸素素子部3には、酸素素子部3及びアンモニア素子部2を加熱するヒータ部4が積層されている。
酸素素子部3は、第2固体電解質体(他の固体電解質体)31、測定ガス室35、拡散抵抗部351、ポンプ電極32、NOx電極33及び他の基準電極34を有する。第2固体電解質体31は、第1固体電解質体21に対向して配置されている。第2固体電解質体31は、板状に形成されており、所定の温度において酸素イオンを伝導させる性質を有するジルコニア材料を用いて構成されている。このジルコニア材料は、第1固体電解質体21の場合と同様である。
なお、アンモニア濃度検出装置1がNOxを検出する機能を持たない場合には、酸素素子部3は、NOx電極33を有さず、アンモニア濃度検出装置1はNOx検出部56及びNOx濃度算出部57を備えていなくてもよい。
図1、図2及び図4に示すように、測定ガス室35は、第2固体電解質体31の第3表面311に接して形成されている。測定ガス室35は、ガス室用絶縁体36によって形成されている。ガス室用絶縁体36は、アルミナ等のセラミックス材料からなる。拡散抵抗部351は、多孔質のセラミックス層として形成されており、測定ガス室35へ拡散速度を制限して測定ガスGを導入するための部分である。
ポンプ電極32は、第3表面311における測定ガス室35内に収容されており、測定ガス室35内の測定ガスGに晒される。NOx電極33は、第3表面311における測定ガス室35内に収容されており、ポンプ電極32によって酸素濃度が調整された後の測定ガスGに晒される。他の基準電極34は、第2固体電解質体31における、第3表面311とは反対側の第4表面312に設けられている。
ポンプ電極32は、酸素に対する触媒活性を有する白金-金合金等の貴金属材料を用いて構成されている。NOx電極33は、NOx及び酸素に対する触媒活性を有する白金-ロジウム合金等の貴金属材料を用いて構成されている。他の基準電極34は、酸素に対する触媒活性を有する白金等の貴金属材料を用いて構成されている。また、ポンプ電極32、NOx電極33及び他の基準電極34は、第2固体電解質体31と焼結する際の共材となるジルコニア材料を含有していてもよい。
本形態の他の基準電極34は、第2固体電解質体31を介して、ポンプ電極32と対向する位置及びNOx電極33と対向する位置のそれぞれに設けられている。なお、他の基準電極34は、ポンプ電極32及びNOx電極33と対向する位置の全体に1つ設けられていてもよい。
図1~図3に示すように、第2固体電解質体31の第4表面312及び第4表面312に設けられた他の基準電極34は、基準ガスAとしての大気に晒されている。第1固体電解質体21と第2固体電解質体31とは、基準ガスダクト24を形成するダクト用絶縁体25を介して積層されている。ダクト用絶縁体25は、アルミナ等のセラミックス材料からなる。
基準ガスダクト24は、第1固体電解質体21の第2表面212及び基準電極23と、第2固体電解質体31の第4表面312及び他の基準電極34とに大気を接触させる状態で形成されている。基準電極23及び他の基準電極34は、基準ガスダクト24内に収容されている。基準ガスダクト24は、センサ素子10の基端から測定ガス室35に対向する位置まで形成されている。
アンモニア濃度検出装置1の基端側カバー内に導入された基準ガスAは、基準ガスダクト24の基端側の開口部から基準ガスダクト24内に導入される。本形態のセンサ素子10は、第1固体電解質体21と第2固体電解質体31との間に基準ガスダクト24を有することにより、基準電極23及び他の基準電極34の全体をまとめて大気に接触させることができる。
(ポンピング部53、ポンプ電流検出部54及び酸素濃度算出部55)
図1に示すように、ポンピング部53は、他の基準電極34をプラス側として、ポンプ電極32と他の基準電極34との間に直流電圧を印加して、測定ガス室35内の測定ガスGにおける酸素を汲み出すよう構成されている。ポンプ電極32と他の基準電極34との間に直流電圧が印加されるときには、ポンプ電極32に接触する、測定ガス室35内の測定ガスGにおける酸素が、酸素イオンとなって第2固体電解質体31を他の基準電極34に向けて通過し、基準電極23から基準ガスダクト24へと排出される。これにより、測定ガス室35内の酸素濃度が、NOxの検出に適した濃度に調整される。
ポンプ電流検出部54は、ポンプ電極32と他の基準電極34との間に流れる直流電流を検出するよう構成されている。酸素濃度算出部55は、ポンプ電流検出部54によって検出された直流電流に基づいて、測定ガスGにおける酸素濃度を算出するよう構成されている。ポンプ電流検出部54においては、ポンピング部53によって測定ガス室35内から基準ガスダクト24へ排出される酸素の量に比例した直流電流が検出される。
また、ポンピング部53は、測定ガス室35内の測定ガスGにおける酸素濃度が所定の濃度になるまで、測定ガス室35内から基準ガスダクト24へ酸素を排出する。そのため、酸素濃度算出部55は、ポンプ電流検出部54によって検出される直流電流を監視することにより、アンモニア素子部2及び酸素素子部3に到達する測定ガスGにおける酸素濃度を算出することができる。
酸素濃度算出部55によって算出される酸素濃度は、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度を補正するための酸素濃度として利用される。
(NOx検出部56及びNOx濃度算出部57)
図1に示すように、NOx検出部56は、他の基準電極34をプラス側としてNOx電極33と他の基準電極34との間に直流電圧を印加して、NOx電極33と他の基準電極34との間に流れる直流電流を検出するよう構成されている。NOx濃度算出部57は、NOx検出部56によって検出される直流電流に基づいて、測定ガスGにおける補正前NOx濃度を算出し、補正前NOx濃度からアンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度を差し引いて補正後NOx濃度を算出するよう構成されている。NOx検出部56においては、NOxだけでなくアンモニアも検出される。そのため、NOx濃度算出部57においては、アンモニアの検出量を差し引くことにより実際のNOxの検出量が得られる。
NOx濃度算出部57によるNOx濃度は、2種類あるものとする。NOx検出部56に生じる電流に基づくNOx濃度を補正前NOx濃度とする。補正前NOx濃度においては、NOx電極32において反応するアンモニアによるアンモニア濃度が含まれる。一方、NOx濃度算出部57による補正前NOx濃度からアンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度を差し引いた濃度を、補正後NOx濃度とする。補正後NOx濃度は、アンモニアによる影響が除外されたNOx濃度を示す。アンモニア濃度とNOx濃度とが比較される場合には、補正後NOx濃度が用いられる。
NOx電極33には、ポンプ電極32によって酸素濃度が調整された後の測定ガスGが接触する。そして、NOx検出部56においては、NOx電極33と他の基準電極34との間に直流電圧が印加されるときには、NOx電極33に接触する、測定ガス室35内の測定ガスGにおけるNOxが窒素と酸素に分解され、酸素が酸素イオンとなって第2固体電解質体31を他の基準電極34に向けて通過し、基準電極23から基準ガスダクト24へと排出される。また、NOx検出部56にアンモニアが到達するときには、アンモニアが酸化されて生成されたNOxも同様に窒素と酸素に分解される。そして、NOx濃度算出部57は、NOx検出部56によって検出される直流電流を監視することにより、酸素素子部3に到達する測定ガスGにおけるNOx濃度を算出し、補正前NOx濃度からアンモニア濃度を差し引いて、NOx濃度を補正後NOx濃度として算出する。
図7において、触媒出口721のアンモニア濃度とNOx濃度との関係を示す濃度領域におけるNOx濃度は、NOx濃度算出部57によって算出される補正後NOx濃度とすることができる。また、この濃度領域におけるアンモニア濃度は、アンモニア濃度算出部52によって算出されるアンモニア濃度とすることができる。
アンモニア濃度検出装置1を、アンモニア濃度だけでなく酸素濃度及びNOx濃度も検出するマルチガスセンサとしたことにより、アンモニア濃度及びNOx濃度を検出する際に、排気管71に配置するガスセンサの使用数を減らすことができる。また、NOx濃度を検出するために使用されるポンプ電極32及びポンピング部53を利用して、ポンプ電流検出部54及び酸素濃度算出部55によって酸素濃度を検出することができる。
なお、アンモニア濃度算出部52は、酸素濃度に応じたアンモニア濃度の補正を行う際には、NOx検出部56による補正前NOx濃度又は補正後NOx濃度も加味してアンモニア濃度を補正することもできる。酸素素子部3におけるNOx電極33は、NOxに対する触媒活性を有するだけでなく、アンモニアに対する触媒活性も有する。そのため、アンモニア濃度は、NOx電極33において、NOx濃度として検出することが可能である。これにより、アンモニア濃度算出部52においては、酸素濃度、検出電極22の温度及びNOx濃度に基づいて、電位差ΔVによるアンモニア濃度を補正することもできる。
ポンピング部53、ポンプ電流検出部54及びNOx検出部56は、アンプ等を用いてセンサ制御ユニット5内に形成されている。酸素濃度算出部55及びNOx濃度算出部57は、コンピュータ等を用いてセンサ制御ユニット5内に形成されている。
なお、図1においては、便宜的に、電位差検出部51、ポンピング部53、ポンプ電流検出部54及びNOx検出部56を、センサ制御ユニット5と区別して記載する。実際には、これらは、センサ制御ユニット5内に構築されている。
(ヒータ部4及び通電制御部58)
図1及び図2に示すように、第2固体電解質体31の、第1固体電解質体21が積層された側とは反対側には、酸素素子部3及びアンモニア素子部2を加熱するヒータ部4が積層されている。言い換えれば、ヒータ部4は、酸素素子部3に対してアンモニア素子部2が積層された側とは反対側に積層されている。
ヒータ部4は、通電することによって発熱する発熱体41と、発熱体41を埋設するヒータ用絶縁体42とによって形成されている。ヒータ用絶縁体42は、アルミナ等のセラミックス材料からなる。アンモニア素子部2と酸素素子部3とは、基準ガスAが導入される基準ガスダクト24を介して積層されている。基準電極23及び他の基準電極34は、基準ガスダクト24内に収容されている。
発熱体41は、発熱部と、発熱部に繋がるリード部とによって形成されており、発熱部は、各電極22,23,32,33,34に対向する位置に形成されている。発熱体41には、発熱体41に通電を行うための通電制御部58が接続されている。通電制御部58による発熱体41への通電量は、発熱体41へ印加する電圧を変化させることによって調整することができる。通電制御部58は、発熱体41に、PWM(パルス幅変調)制御等を行った電圧を印加するドライブ回路等を用いて形成されている。通電制御部58は、センサ制御ユニット5内に形成されている。
アンモニア素子部2とヒータ部4との距離は、酸素素子部3とヒータ部4との距離よりも大きい。そして、ヒータ部4によって酸素素子部3を加熱する温度に比べて、ヒータ部4によってアンモニア素子部2を加熱する温度は低い。酸素素子部3のポンプ電極32及びNOx電極33は、NOxに対する触媒活性を示す温度として、600~900℃の温度に加熱されて使用される。アンモニア素子部2の検出電極22は、アンモニアに対する触媒活性を示す温度として、400~600℃の温度に加熱されて使用される。
検出電極22の温度は、ヒータ部4の加熱によって、400~600℃の温度範囲内のいずれかの温度を目標として制御される。通電制御部58は、検出電極22の温度を目標制御温度に制御するときには、NOx電極33を、600~900℃の温度に加熱するよう構成されている。この構成により、通電制御部58によるヒータ部4の加熱制御によって、アンモニア素子部2の検出電極22及び酸素素子部3のNOx電極33のそれぞれを、アンモニアの検出及びNOxの検出に適切な温度に加熱することができる。
また、酸素素子部3とアンモニア素子部2との間に基準ガスダクト24が形成されていることにより、ヒータ部4によって酸素素子部3及びアンモニア素子部2を加熱する際に、基準ガスダクト24を断熱層として作用させることができる。これにより、酸素素子部3のポンプ電極32及びNOx電極33の温度に比べて、アンモニア素子部2の検出電極22の温度を容易に低くすることができる。また、通電制御部58による通電制御を行うことにより、酸素素子部3及びアンモニア素子部2の温度を目標とする温度に制御する。
また、通電制御部58によって、検出電極22の温度が400~600℃の温度範囲内のいずれかの温度になるよう制御することによって、酸素補正後のアンモニア濃度の検出精度を高く維持することができる。なお、測定ガスGとしての排ガスに含まれる可能性がある、NOx、CO、HC(炭化水素)等の他ガスは、検出電極22の温度が400~600℃の範囲内にあり、測定ガスG中に例えば10ppm以上のアンモニアが含まれる場合には、アンモニア濃度の検出精度にあまり影響を与えないことが確認された。
(電圧印加部61)
図1に示すように、本形態の電圧印加部61は、基準電極23をマイナス側として検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加するよう構成されている。「基準電極23をマイナス側として検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加すること」は、基準電極23の電位を検出電極22の電位よりも低くして電圧を印加することを意味する。
基準電極23をマイナス側として検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加されたときには、基準ガスAとしての大気に晒される基準電極23から検出電極22へ酸素イオンが強制的に送り出され、この酸素イオンによってアンモニアの酸化反応が促進され、電極22,23間に大きな電流が流れると考えられる。
電位差検出部51によって電位差(混成電位)ΔVが検出されるときには、検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加されておらず、検出電極22と基準電極23との間には、電位差ΔVを検出するための微小な電流が流れるのみである。一方、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加されたときには、検出電極22と基準電極23との間に大きな直流電流が流れる。そして、この直流電流により、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応を促進することができる。
電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に印加される直流電圧Eの大きさは、0.1~1[V]の範囲内に設定することが好ましい。この場合には、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応を適切に促進することができる。直流電圧Eの大きさが0.1[V]未満である場合には、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応を促進することができないおそれがある。直流電圧Eの大きさが1[V]超過である場合には、第1固体電解質体21を構成する材料の分解が促進されるおそれがあり、また、基準電極23において水の分解が生じてアンモニア素子部2の劣化が促進されるおそれがある。
(切り替え部60)
図1に示すように、アンモニア濃度検出装置1は、検出電極22に吸着したアンモニアを離脱する際に、検出電極22と基準電極23との間に、電圧印加部61を接続するための切り替え部60を備える。切り替え部60は、電圧印加部61によって直流電圧Eを印加するときには、検出電極22と基準電極23との間に電圧印加部61を接続する接続位置と、電圧印加部61によって直流電圧Eを印加しないときには、検出電極22と基準電極23との間から電圧印加部61を切り離す切離位置とに切り替え可能なスイッチング回路によって構成されている。
(他ガスの影響)
測定ガスGとしての排ガスには、酸素、アンモニア、NOxの他に、未燃ガス成分としてのCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)等が混在する場合もある。検出電極22において検出される混成電位は、アンモニア濃度及び酸素濃度によって変化するだけでなく、他ガスとしてのNOx、CO、HC等の濃度によっても変化することが確認された。ただし、この他ガスによる混成電位の変化は、測定ガスG中にアンモニアが含まれている場合には、あまり生じないことが確認された。
(出力制御部6)
図5に示すように、出力制御部6は、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加されている電圧印加期間内に算出されたアンモニア濃度を無効化するものである。出力制御部6は、電圧印加期間内におけるアンモニア濃度は正しい値を示さないとして、アンモニア出力濃度がアンモニア濃度検出装置1の出力として使用されないようにする種々の構成とすることができる。
また、出力制御部6が電圧印加期間内に算出されるアンモニア濃度の出力を無効にする構成は、アンモニア濃度算出部52によってアンモニア濃度を算出しない構成とすることができる。また、このアンモニア濃度の出力を無効にする構成は、アンモニア出力濃度としてアンモニア濃度検出装置1から出力されないようにする構成とすることもできる。また、このアンモニア濃度の出力を無効にする構成は、アンモニア濃度検出装置1から出力されるアンモニア出力濃度をゼロ(0)ppm又は一定値にする構成とすることもできる。さらに、このアンモニア濃度の出力を無効にする構成は、電圧印加期間内におけるアンモニア濃度を、エラー信号又は出力停止信号によって示す構成とすることもできる。
本形態の出力制御部6は、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が所定の高濃度以上にある状態から所定濃度低下したときに、電圧印加部61による直流電圧Eの印加を開始する。アンモニア濃度が所定の高濃度以上にある状態から所定濃度低下したときには、検出電極22に接触する測定ガスG中のアンモニア濃度は低下を開始したと判断することができる。つまり、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度の最大値はすでに検出されたと考えることができる。
また、アンモニア濃度が所定の高濃度以上にあったことにより、検出電極22にはアンモニアが吸着して残留しているとみなすことができる。このときには、測定ガスGにおけるアンモニア濃度に比べて、検出電極22に吸着しているアンモニアによるアンモニア濃度の方が高い濃度を示していると判断される。
そのため、電圧印加部61によって直流電圧Eを印加して、検出電極22に残留するアンモニアを離脱させることにより、検出電極22におけるアンモニア濃度の状態を、実際の測定ガスGにおけるアンモニア濃度の状態に迅速に近づけることができる。
(変化算出部62)
図1及び図5に示すように、アンモニア濃度検出装置1は、具体的には、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が低下するときの単位時間当たりの低下変化量を算出する変化算出部62を更に備える。アンモニア濃度が高い状態から低い状態に変化するときには、アンモニア濃度が低下する幅が大きく、単位時間当たりの低下変化量が大きくなる。
出力制御部6は、変化算出部62による単位時間当たりの低下変化量が変化基準量を超えたときを、電圧印加期間における電圧印加開始時点とするよう構成されている。そして、出力制御部6は、単位時間当たりの低下変化量が変化基準量を超えたときに、電圧印加部61による直流電圧Eの印加が必要であると判断する。これにより、測定ガスGにおけるアンモニア濃度を検出する際に、検出電極22に吸着したアンモニアを離脱させるタイミングを容易に設定することができる。
低下変化量は、アンモニア濃度が継続して算出される際に、前回算出されたアンモニア濃度から今回算出されたアンモニア濃度を差し引いた差分値を、算出のサンプリング時間によって除算した値とすることができる。また、低下変化量は、前回検出された電位差ΔVから今回検出された電位差ΔVを差し引いた差分値を、検出のサンプリング時間によって除算した値とすることもできる。また、変化基準量は、アンモニア濃度検出装置1の検出精度を考慮し、電位差ΔVの検出誤差による変動範囲を超える変化量として設定することができる。変化基準量は適宜変更することができる。
変化算出部62は、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が所定の高濃度以上にあることを条件として、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が低下するときの単位時間当たりの低下変化量を算出してもよい。この場合には、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が所定の高濃度以上でないときには、変化算出部62による算出は停止することができる。この所定の高濃度は、例えば、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が500~2000ppmのうちのいずれかの濃度とすることができる。
変化算出部62によって電圧印加開始時点が決まれば、出力制御部6は、電圧印加終了時点を適宜決定して、電圧印加期間を定めることができる。本形態の出力制御部6は、図13に示すように、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が、所定の閾値濃度未満になったときを、電圧印加期間における電圧印加終了時点とするよう構成されている。この所定の閾値濃度は、例えば、所定の高濃度よりも低く、かつアンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が200~500ppmのうちのいずれかの濃度とすることができる。
変化算出部62による単位時間当たりの低下変化量が変化基準量を超えるときは、測定ガスGにおけるアンモニア濃度が急激に低下する場合であり、アンモニア濃度が高濃度の状態から低濃度の状態に変化する場合が多いと考えられる。そして、電圧印加期間の電圧印加開始時点は、主に、アンモニア濃度が高濃度の状態から若干低下した時点として特定されることが多い。
なお、電圧印加開始時点が特定されたときのアンモニア濃度がそれほど高くない場合には、電圧印加開始時点の特定後、直ちにアンモニア濃度が所定の閾値濃度未満になることもある。この場合には、電圧印加期間が極めて短くなると考えられる。
電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加されると、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応が促進されることにより、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度は急激に低下する。そのため、低下するアンモニア濃度が所定の閾値濃度未満になったときには、直流電圧Eの印加を停止する。
図13には、測定ガスGにおけるアンモニア濃度及びアンモニア濃度算出部52によって算出されるアンモニア濃度の時間的変化を模式的に示す。同図においては、測定ガスGにおける実際のアンモニア濃度、検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加されない場合にアンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度、及び電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eが印加された場合にアンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度の時間的変化を示す。
測定ガスGにおける実際のアンモニア濃度が高くなるときには、アンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度が、実際のアンモニア濃度によく一致する。一方、測定ガスGにおける実際のアンモニア濃度が低くなるときには、電圧印加部61による直流電圧の印加がないと、アンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度が実際のアンモニア濃度に追従しにくいといった現象が生じる。この現象は、検出電極22にアンモニアが吸着された状態が維持され、検出電極22からアンモニアが離脱するまでに時間を要することに起因する。
そこで、測定ガスGにおける実際のアンモニア濃度が低くなるときに、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加すると、検出電極22におけるアンモニアが迅速に離脱される。そして、アンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度が、実際のアンモニア濃度に追従しやすくなるといった効果が得られる。同図においては、電圧印加部61によって直流電圧Eが印加される電圧印加期間も示す。
なお、アンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度は、酸素濃度による補正がある場合及び補正がない場合のいずれにおいても同様の結果が得られる。また、アンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度の代わりに、電位差検出部51によって検出された電位差ΔVを用いても、同様の結果が得られる。
図14には、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加する状態を模式的に示す。同図において、直流電圧Eが印加される前には、検出電極22にアンモニアが吸着されており、このアンモニアは、直流電圧Eの印加後に迅速に離脱される。
(出力制御部6の他の構成)
また、出力制御部6は、電圧印加開始時点からの経過時間が所定の設定時間になったときを、電圧印加期間における電圧印加終了時点とするよう構成することもできる。この場合には、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加する電圧印加期間を、決められた一定の時間とすることができ、出力制御部6による制御が簡単になる。所定の設定時間は適宜変更することができる。
また、出力制御部6は、内燃機関7における、回転速度、燃料噴射量、空燃比等の運転条件を参照して、アンモニア濃度検出装置1のセンサ素子10に到達するアンモニアの濃度を検知する構成とすることもできる。そして、出力制御部6は、測定ガスGにおけるアンモニア濃度が高くなる時期を特定し、この時期においてのみ、変化算出部62による単位時間当たりの低下変化量の算出が行われるようにすることができる。
また、出力制御部6は、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度と、NOx濃度算出部による補正後NOx濃度とを比較し、図7の濃度領域の第1~第3濃度領域N1,N2,N3のいずれの濃度領域にあるかを監視することができる。そして、アンモニア濃度と補正後NOx濃度との関係が第3濃度領域N3にある場合、言い換えれば、アンモニア濃度が補正後NOx濃度よりも高く、かつアンモニア濃度と補正後NOx濃度との差が第2濃度差Δn2以上である場合に、変化算出部62による単位時間当たりの低下変化量の算出を行うことができる。また、アンモニア濃度と補正後NOx濃度との関係が第1濃度領域N1及び第2濃度領域N2にある場合には、変化算出部62による単位時間当たりの低下変化量の算出を停止することができる。
(アンモニア濃度検出方法)
次に、アンモニア濃度検出装置1を用いたアンモニア濃度検出方法の一例を、図15~図17のフローチャートを参照して説明する。
内燃機関7の燃焼運転が開始されたときには、アンモニア濃度検出装置1、還元剤供給装置73等が動作する。アンモニア濃度検出装置1においては、電位差検出部51によって、検出電極22と基準電極23との間に生じる電位差ΔVが検出されるとともに、ポンプ電流検出部54によって、ポンプ電極32と他の基準電極34との間に流れる直流電流が検出される。
まず、濃度算出ルーチンが実行され(図15のステップS101)、アンモニア濃度算出部52によって、電位差検出部51による電位差ΔVに基づいて、測定ガスGにおけるアンモニア濃度C0が算出される(図16のステップS111)。また、酸素濃度算出部55によって、ポンプ電流検出部54による直流電流に基づいて、測定ガスGにおける酸素濃度が算出される(ステップS111)。
次いで、酸素濃度算出部55による酸素濃度に応じて、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度C0が補正される。具体的には、図12に示すように、酸素濃度及びアンモニア濃度C0が、酸素濃度をパラメータとした、アンモニア濃度C0と酸素補正後のアンモニア濃度C1との関係マップM1に照合され、関係マップM1から、アンモニア濃度C0であるときの酸素補正後のアンモニア濃度C1が読み取られる(ステップS112)。そして、酸素濃度に応じた酸素補正後のアンモニア濃度C1が、アンモニア出力濃度としてアンモニア濃度検出装置1から出力される(ステップS113)。
次いで、メインルーチンに戻って、出力制御部6において、アンモニア濃度が所定の高濃度以上であるか否かが判定される(図15のステップS102)。アンモニア濃度が所定の高濃度未満である場合には、アンモニア濃度検出装置1の制御を終了する信号があるか否かが判定された後(ステップS107)、ステップS101に戻る。アンモニア濃度が所定の高濃度以上である場合には、変化算出部62によって、アンモニア濃度が低下したか否かが判定される(ステップS103)。アンモニア濃度が低下したか否かの判定は、前回の判定時のアンモニア濃度に比べて今回の判定時のアンモニア濃度が、所定の誤差範囲を超えて低くなったか否かによって行われる。アンモニア濃度が低下していない場合には、アンモニア濃度検出装置1の制御を終了する信号があるか否かが判定された後(ステップS107)、ステップS101に戻る。
アンモニア濃度が低下したか否かの判定が行われる時間間隔は、電位差検出部51による電位差ΔV及びポンプ電流検出部54による直流電流が検出されるサンプリング時間と同じとすることができ、このサンプリング時間よりも長い時間とすることもできる。
そして、アンモニア濃度が低下していると判定されたときには、変化算出部62によって、アンモニア濃度が低下するときの単位時間当たりの低下変化量が算出される(ステップS104)。次いで、出力制御部6によって、低下変化量が変化基準量を超えているか否かが判定される(ステップS105)。低下変化量が変化基準量を超えていないときには、アンモニア濃度検出装置1の制御を終了する信号があるか否かが判定された後(ステップS107)、ステップS101に戻る。
低下変化量が変化基準量を超えたときには、出力制御部6は、電圧印加ルーチンを実行する(ステップS106)。電圧印加ルーチンにおいては、電圧印加期間における電圧印加開始時点を認定し(図17のステップS121)、電圧印加部61によって、基準電極23をマイナス側として検出電極22と基準電極23との間へ直流電圧Eの印加が開始される(ステップS122)。また、このとき、出力制御部6は、アンモニア濃度検出装置1から出力するアンモニア出力濃度を無効化する(ステップS123)。
電圧印加部61によって直流電圧Eが印加されるときには、基準電極23から第1固体電解質体21を介して検出電極22へ酸素イオンが送り込まれ、この酸素イオンによって検出電極22におけるアンモニアの酸化反応が促進される。そして、検出電極22に吸着されたアンモニアが離脱される。
次いで、濃度算出ルーチンが実行される(図17のステップS124,図16のステップS111~S113)。このとき、ステップS113における、酸素補正後のアンモニア濃度C1の出力は無効化されたままである。次いで、出力制御部6によって、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が、所定の閾値濃度未満になったか否かが判定される(ステップS125)。
そして、アンモニア濃度が所定の閾値濃度未満になるまで濃度算出ルーチンが実行され(ステップS124)、アンモニア濃度が所定の閾値濃度未満になったときには、出力制御部6は、電圧印加期間における電圧印加終了時点を認定し(ステップS126)、電圧印加部61による検出電極22と基準電極23との間への直流電圧Eの印加を停止する(ステップS127)。また、出力制御部6は、アンモニア濃度検出装置1から出力するアンモニア出力濃度を有効化する(ステップS128)。
次いで、メインルーチンに戻って、アンモニア濃度検出装置1の制御を終了する信号があるか否かが判定された後(ステップS107)、ステップS101に戻る。ステップS107において、制御を終了する信号がある場合には、アンモニア濃度検出装置1の制御を終了する。制御を終了する信号があるまでは、ステップS101~S107が繰り返し実行される。
(作用効果)
本形態のアンモニア濃度検出装置1は、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応を促進させるために、電圧印加部61によって、検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加することが可能である。そして、検出電極22にアンモニアが吸着した状態が維持されていると考えられるときには、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加することによって、検出電極22から迅速にアンモニアを離脱させることができる。そのため、検出電極22にアンモニアが残留しにくくし、アンモニア濃度検出装置1によるアンモニア濃度に検出誤差が生じにくくすることができる。
検出電極22に残留するアンモニアを積極的に離脱させることによって、アンモニア濃度検出装置1における、特にアンモニア濃度が低くなる場合の検出の応答性を向上させることができる。また、特に測定ガスGにおけるアンモニア濃度が低い状態における、アンモニア濃度の検出精度を向上させることができる。
また、電圧印加部61によって直流電圧Eが印加されるときには、アンモニア濃度算出部52によって算出される測定ガスG中のアンモニア濃度に検出誤差が生じると考えられる。そのため、出力制御部6は、電圧印加部61によって直流電圧Eを印加する電圧印加期間には、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度の出力を無効にする。これにより、検出電極22に吸着したアンモニアを離脱させるときには、アンモニア濃度検出装置1によるアンモニア濃度が、誤ってエンジン制御ユニット50等に利用されることを防止することができる。
一方、出力制御部6は、電圧印加期間以外には、アンモニア濃度算出部52によって算出されたアンモニア濃度の出力を有効にする。これにより、検出誤差が小さいアンモニア濃度をアンモニア濃度検出装置1から出力することができる。
それ故、本形態のアンモニア濃度検出装置1によれば、検出電極22にアンモニアが残留することを防止し、アンモニアの検出精度を向上させることができる。
特に、本形態のアンモニア濃度検出装置1は、アンモニア濃度を検出するために混成電位式のセンサを構成する。アンモニアは、他のガスと比べて吸着性、水親和性の高いガスである。また、アンモニアは、反応性が高く不安定なガスであり、酸素共存下において加熱すると容易に酸化されて、NOx、窒素等に変化する。このような反応性が高いアンモニアを検出するためには、検出電極22においてアンモニアと酸素との非平衡な電位を検出する混成電位式のセンサを採用することが好ましい。混成電位式のセンサを採用することにより、アンモニアの酸化反応を最小限に抑制することができる。
混成電位式のセンサにおいては、原理的に、検出電極22が低温であるとき、又はアンモニア濃度が低濃度であるときに、検出感度が高くなる。そのため、アンモニアを検出するための検出電極22は、400~600℃程度の低温部位に配置することが好ましい。一方、アンモニアは、吸着性の高いガスであるために、検出電極22に吸着しやすい性質を有する。検出電極22が低温部位に配置されているために、検出電極22からアンモニアが離脱しにくい状態になる。検出電極22にアンモニアが吸着したままの状態が維持されると、検出誤差を生じることになる。
本形態においては、検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加することによって、検出電極22に吸着されたアンモニアを強制的に離脱させる。これにより、検出電極22にアンモニアが吸着されたままの状態が維持されることを回避し、アンモニア濃度の検出精度を高めることができる。
<実施形態2>
本形態のアンモニア濃度検出装置1は、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加する電圧印加期間において、アンモニア素子部2の加熱温度を通常時としての濃度検出時よりも高くする構成を有する。
具体的には、本形態の通電制御部58は、電圧印加期間以外の期間である濃度検出時においては、検出電極22の温度が濃度検出時の目標温度になるよう、発熱体41への通電量を制御する。濃度検出時の目標温度は、400~600℃の温度範囲内のいずれかの温度として設定される。
また、本形態の通電制御部58は、電圧印加期間である電圧印加時においては、検出電極22の温度が、濃度検出時の目標温度よりも高い電圧印加時の目標温度になるよう、発熱体41への通電量を制御する。電圧印加時の目標温度は、濃度検出時の目標温度よりも例えば200~300℃高い温度とすることができる。
実施形態1の図5に示すように、通電制御部58の、濃度検出時と電圧印加時とにおける加熱目標温度の切り替えは、出力制御部6から、電圧印加期間内にあるか否かの信号を受けて行うことができる。つまり、通電制御部58は、出力制御部6から電圧印加開始時点の信号を受けたときには、加熱目標温度を濃度検出時の目標温度から電圧印加時の目標温度に切り替え、出力制御部6から電圧印終了時点の信号を受けたときには、加熱目標温度を電圧印加時の目標温度から濃度検出時の目標温度に切り替えるよう構成されている。
検出電極22の温度は、通電制御部58の発熱体41への通電量によってほぼ決まる。そのため、通電制御部58の発熱体41への通電量と、検出電極22の温度との関係が求められた関係マップを用いて、通電制御部58の通電量によって検出電極22の温度を目標温度に制御することができる。
検出電極22の温度を高くするときには、検出電極22、基準電極23及び第1固体電解質体21によるアンモニア素子部2の温度も高くなる。そして、検出電極22を含むアンモニア素子部2の温度を高くすることにより、電圧印加部61による直流電圧Eが印加されたときに、基準電極23から検出電極22への酸素イオンの供給をより促進することができる。また、アンモニア素子部2の温度を高くすることにより、電圧印加部61による直流電圧Eが検出電極22と基準電極23との間に印加されたときに、検出電極22に対するアンモニアの吸着力を低くすることもできる。これらの要因により、検出電極22におけるアンモニアの酸化反応をより効果的に促進することができる。
本形態のアンモニア濃度検出方法においては、実施形態1の図17のステップS122の直流電圧Eの印加を開始するときに、通電制御部58による検出電極22の加熱目標温度を電圧印加時の目標温度にする。また、実施形態1の図17のステップS127の直流電圧Eの印加を停止するときに、通電制御部58による検出電極22の加熱目標温度を濃度検出時の目標温度に戻す。なお、アンモニア濃度検出装置1が起動された後には、通電制御部58による検出電極22の加熱目標温度は濃度検出時の目標温度に設定されている。
本形態のアンモニア濃度検出装置1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
<実施形態3>
実施形態1のアンモニア濃度検出装置1は、内燃機関7の燃焼運転時にアンモニア濃度の検出を行う際に、アンモニア濃度が高くなった後に検出電極22に残留するアンモニアを離脱させる(除去する)構成を有する。一方、本形態のアンモニア濃度検出装置1は、内燃機関7の燃焼運転が定常状態にあるときに、検出電極22に残留するアンモニアを離脱させる構成を有する。
本形態の出力制御部6は、内燃機関7がアイドリング運転を行っているときに、電圧印加期間として、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加し、検出電極22に吸着(残留)するアンモニアを離脱させる。アイドリング運転とは、内燃機関7の始動後、アクセル操作がなされるまでの間において、内燃機関7の回転速度が所定の低回転速度にある場合のことをいう。また、電圧印加部61によって直流電圧Eが印加されるタイミングは、厳密には、内燃機関7の始動後、アンモニア濃度検出装置1におけるヒータ部4によってアンモニア素子部2が活性温度に加熱された後とする。
アイドリング運転時においては、排気管へのNOxの排出量が少なく、還元剤供給装置73から排気管71へ還元剤Kが供給されていないと考えられる。本形態のアンモニア濃度検出装置1においては、アンモニア濃度検出装置1の以前の起動時に検出電極22に残留したアンモニア、内燃機関7の停止時に検出電極22に付着したアンモニア等を離脱させる。
アイドリング運転時においては、アンモニア濃度検出装置1によって検出される、測定ガスGにおけるアンモニア濃度がエンジン制御ユニット50等にほとんど利用されない。そのため、アイドリング運転時において、検出電極22に残留したアンモニアを除去することにより、アンモニア濃度の検出が停止されることによる弊害がほとんど生じない。
また、出力制御部6は、内燃機関7がフューエルカット運転を行っているときに、電圧印加期間として、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加し、検出電極22に残留するアンモニアを離脱させることもできる。フューエルカット運転とは、内燃機関7の燃焼運転を行う際に、例えば、車両が急な下り坂を走行する場合などに、内燃機関7における燃料の噴射を一時的に停止した場合のことをいう。
フューエルカット運転が行われるときには、排気管71へ排気される排ガスが大気の状態に近くなる。そして、排ガスである測定ガスGにおけるアンモニア濃度は極めて低くなると考えられる。フューエルカット時においても、アンモニア濃度検出装置1によって検出されるアンモニア濃度はエンジン制御ユニット50等にほとんど利用されないと考えられる。そのため、フューエルカット運転時において、検出電極22に残留したアンモニアを除去することにより、アンモニア濃度の検出が停止されることによる弊害がほとんど生じない。
また、出力制御部6は、アンモニア濃度算出部52によるアンモニア濃度が所定の閾値濃度未満であるときの所定期間を電圧印加期間として、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加し、検出電極22に残留するアンモニアを離脱させることもできる。内燃機関7の燃焼運転中において、アンモニア濃度が所定の閾値濃度未満となるときには、アンモニア濃度の検出が停止されることによる弊害がほとんど生じないタイミングがあると考えられる。
また、本形態においても、実施形態2に示したように、通電制御部58及びヒータ部4によって検出電極22を加熱する、電圧印加時の目標温度は、濃度検出時の目標温度よりも高くすることができる。
本形態のアンモニア濃度検出装置1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
<実施形態4>
本形態のアンモニア濃度検出装置1においては、アンモニア濃度検出装置1の起動時に電圧印加期間が設定されている。
本形態の出力制御部6は、通電制御部58が発熱体41への通電を開始して、検出電極22が活性温度になった直後の所定期間を、電圧印加期間として、電圧印加部61によって検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eを印加し、検出電極22に吸着(残留)するアンモニアを離脱させる。検出電極22が活性温度に活性されるときには、固体電解質体及び基準電極23も活性温度に活性される。
(アンモニア濃度検出方法)
次に、本形態のアンモニア濃度検出装置1を用いたアンモニア濃度検出方法の一例を、図18のフローチャートを参照して説明する。
内燃機関7の燃焼運転が開始されたときには、アンモニア濃度検出装置1が起動され(図18のステップS201)、検出電極22の温度が電圧印加時の目標温度になるよう、通電制御部58による発熱体41への通電が開始される(ステップS202)。
次いで、所定期間が経過するまで待機することにより、検出電極22の温度が電圧印加時の目標温度になるまで待機する(ステップS203)。そして、検出電極22が活性温度に活性化される。次いで、電圧印加期間の電圧印加開始時点として、電圧印加部61によって、基準電極23をマイナス側にして検出電極22と基準電極23との間に直流電圧Eの印加が開始される(ステップS204)。また、出力制御部6によって、アンモニア濃度検出装置1から出力されるアンモニア出力濃度が無効化される(ステップS205)。
次いで、電圧印加期間としての所定期間が経過するまで直流電圧Eの印加が継続され(ステップS206)、検出電極22に吸着されたアンモニアが離脱される。次いで、所定期間の経過によって、電圧印加期間の電圧印加終了時点として、電圧印加部61による直流電圧Eの印加が停止される(ステップS207)。また、出力制御部6によって、アンモニア濃度検出装置1から出力されるアンモニア出力濃度が有効化され(ステップS208)、通電制御部58による加熱目標温度が濃度検出時の目標温度に設定される(ステップS209)。その後、通電制御部58は、検出電極22の温度が濃度検出時の目標温度になるよう発熱体41への通電量を制御し、アンモニア濃度検出装置1によるアンモニア濃度の検出が行われる。
本形態において、アンモニア濃度検出装置1が起動された直後には、アンモニア濃度検出装置1によって検出されるアンモニア濃度はエンジン制御ユニット50等にほとんど利用されないと考えられる。そのため、この起動直後において検出電極22に残留したアンモニアを除去することにより、アンモニア濃度の検出が停止されることによる弊害がほとんど生じない。
また、本形態においても、実施形態2に示したように、通電制御部58及びヒータ部4によって検出電極22を加熱する、電圧印加時の目標温度は、濃度検出時の目標温度よりも高くすることができる。
本形態のアンモニア濃度検出装置1における、その他の構成、作用効果等については、実施形態1の場合と同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の場合と同様である。
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。