JP7084692B2 - 発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法に関する。
従来から、熱可塑性樹脂の発泡成形体を得る方法の一つとして、ビーズ発泡法が用いられている。この方法では、例えば、まず懸濁重合によって熱可塑性樹脂粒子を得、次いで、これに発泡剤を含浸させて発泡性熱可塑性樹脂粒子とし、乾燥、篩分けにより粒度調整する。かかる発泡性熱可塑性樹脂粒子を水蒸気等により加熱軟化させて発泡性熱可塑性樹脂粒子の粘度を降下させた状態で、含浸発泡剤を揮発させて多数の気泡を樹脂粒子内に形成させ、任意の発泡倍率まで膨張させて予備発泡粒子を得る(予備発泡工程)。得られた予備発泡粒子を金型に充填し、水蒸気等により該予備発泡粒子同士を融着させる(成形工程)ことで、発泡成形体を得るものである(例えば特許文献1、2を参照)。
しかしながら、この従来法は、非連続的な生産方法であり、また、懸濁重合を利用するため粒度分布が広い熱可塑性樹脂粒子が得られることになる。そのため、前述のように粒度調整工程を経る必要があり、工程の複雑化、それによるコストアップ、懸濁重合に伴う廃水処理による環境問題、収率の悪化といった問題があった。また、高断熱性や高難燃性能を付与して発泡成形体を高機能化したい場合、高機能化に必要な固形添加剤を添加する際に制約が多いという問題があった。
そこで、熱可塑性樹脂を押出機に投入して、発泡剤やその他の添加剤とともに溶融混練し、押出機先端に設置されたダイの小孔から発泡あるいは未発泡状態で押出し、押出機先端に接触させた回転カッター等で切断して発泡樹脂粒子あるいは未発泡の発泡性樹脂粒子を得る方法が提案されている(例えば特許文献3を参照)。この方法によれば、径が小さく、均一な粒度分布を有する熱可塑性樹脂粒子を連続的且つ経済的に製造することができる。また、添加する固形添加剤に関する制約も少なくなるという利点もある。
かかる方法のうち、未発泡の発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る方法として、ホットカット法と呼ばれる方法が知られている。この方法では、ダイの小孔から、加圧された冷却用液体中に溶融樹脂を押し出すと同時に回転カッター等で切断して粒子化と冷却固化を行い、発泡性熱可塑性樹脂粒子を得る。特許文献4では、このようなホットカット法において、発泡剤含有溶融樹脂を冷却用液体中に押し出す際に、ダイの小孔ランド部を通過する時の溶融樹脂の剪断速度と溶融粘度を特定範囲内に制御することにより、形状が真球状で粒径が揃っており、かつ機械的強度の優れた発泡成形品を製造できる発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造できることが開示されている。
特開2001-164025号公報 特開平4-91141号公報 英国特許出願公開第1062307号明細書 国際公開第2005/028173号
しかし、特許文献4に記載の方法によると、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡させた時の発泡倍率が十分に高くならず、さらに、予備発泡粒子同士を融着させて発泡成形体を得たときの発泡成形体の融着率に関しても十分なレベルに到達しない欠点があった。
本発明は、上記現状に鑑み、発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡させた時に発泡倍率が高い予備発泡粒子を与えることができ、さらに、予備発泡粒子同士を融着させて融着率の大きい発泡成形体を与えることができる、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らがこの課題を解決すべく鋭意検討したところ、ホットカット法においてダイの小孔ランド部を通過する際の発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物の剪断速度を特定範囲に制御しつつ発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造することで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイから加圧水中に押出した直後に回転カッターで切断して粒子化及び冷却固化を行なう工程を含む、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法であって、前記小孔の直径が0.5~1.0mmであり、前記ダイの小孔ランド部を通過する際の発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物の剪断速度が8000~11000sec-1であることを特徴とする、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法に関する。
本発明においては、前記小孔の開口率が90%以上であることが好ましい。また、前記剪断速度8000~11000sec-1の条件で発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する前に、剪断速度13000sec-1以上で発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を粒子化する準備工程を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂はスチレン系樹脂及び/又はポリフェニレンエーテル系樹脂であることが好ましい。
本発明によると、発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡させた時に発泡倍率が高い予備発泡粒子を与え、さらに、予備発泡粒子同士を融着させて融着率の大きい発泡成形体を与える発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造することができる。
本発明によれば、予備発泡粒子の発泡倍率が高くなる結果、最終的に製造される発泡成形体の発泡倍率も高めることができる。また、融着率が大きい発泡成形体は、優れた水蒸気バリアー性を有することができる。
また、本発明の製造方法では、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物の剪断速度の値が比較的小さいため、溶融押出中の剪断発熱が抑制され、その結果、溶融物に含まれる添加物、例えば難燃剤が、溶融押出中に熱分解されにくいという利点も得ることができる。
本発明の実施形態で使用するダイの出口付近の構成を示す断面図 図1のダイにおける小孔付近を拡大して示す断面図
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイから加圧水中に押出した直後に回転カッターで切断して粒子化及び冷却固化を行なう、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法に関する。発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物は、熱可塑性樹脂、発泡剤、および必要に応じて他の添加剤を含有する。
本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン(PS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS)、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(耐熱PS)、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体(HIPS)、N-フェニルマレイミド-スチレン-無水マレイン酸の三次元共重合体、それとASとのアロイ(IP)などのスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン3元共重合体、シクロオレフィン系(共)重合体などのポリオレフィン系樹脂およびこれらに分岐構造、架橋構造を導入してレオロジーコントロールされたポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などのエンジニアリングプラスチックなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
これら熱可塑性樹脂の中でも、比較的安価で、特殊な方法を用いずに低圧の蒸気等で成形ができ、高い緩衝性及び断熱性の効果が得られる点から、スチレン系樹脂が好ましく、耐熱性の点からPPEが好ましい。PS、AS、耐熱PS、およびIPから選ばれる少なくとも一種のスチレン系樹脂および、これらに耐熱性改善や脆性改善のための樹脂を混合したものも好ましい。
スチレン系樹脂は、スチレンまたはその誘導体(例えばα-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン等)を主要モノマーとする樹脂である。したがって、スチレン系樹脂は、スチレンまたはスチレン誘導体だけからなる単独重合体又は共重合体に限らず、スチレンまたはスチレン誘導体と他の単量体を共重合することによって得られる共重合体であってもよい。
本発明においては、スチレン系樹脂に、スチレン系樹脂と相溶性がよいPPEを混合してもよい。本発明では、スチレン系樹脂および/またはPPEを使用することが好ましい一実施形態であり、特に限定されないが、スチレン系樹脂:PPEが100:0~1:99(重量比)で使用できる。
PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチルフェニレン-4-エーテル)、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-プロピルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2-メチル-6-n-ブチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2-メチル-6-ブロムフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2-エチル-6-クロルフェニレン-1,4-エーテル)などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
本発明におけるPPEは、PPEとPSとの混合物、PPEへのスチレン系単量体のグラフト共重合物などのスチレン・フェニレンエーテル共重合体、等であってもよい。
本発明に用いられる発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等のアルコール類、炭酸ガス、窒素、水等が使用可能である。この内、脂肪族炭化水素が好適であり、中でも炭素数3~6の炭化水素がより好ましく、具体的にはノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンが特に好適である。これら発泡剤は1種類のみを単独で使用してよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
発泡剤の添加量は、目標発泡倍率により増減できるが、一般的には熱可塑性樹脂100重量部に対して2~15重量部の範囲が好ましく、3~10重量部の範囲がより好ましく、5~8重量部の範囲がさらに好ましい。発泡剤の添加量が2重量部未満では、所望の発泡倍率が得られない場合がある。一方、発泡剤の添加量が15重量部を超えると、発泡剤の熱可塑性樹脂に対する溶解圧が高くなり、押出機を高い圧力に維持する必要があるため、設備が高価になったり、安定的な製造が困難であったり、得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子から発泡剤が即座に拡散し、予備発泡工程又は成形工程での発泡倍率の制御が困難になる場合がある。
本発明の製造方法においては、発泡性改善のために、発泡助剤を適宜添加してもよい。発泡助剤としては、発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等の、大気圧下における沸点が200℃以下である溶剤が挙げられる。
また、得られる未発泡の発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡または成形する際の気泡調整のために、造核剤を添加してもよい。造核剤としては、例えば、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物などが代表的なものとして挙げられる。
さらには、難燃性改善、断熱性改善などの高機能化の目的で、難燃剤、難燃助剤、輻射抑制剤などの添加剤を添加することもできる。
本発明で用いられる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系化合物、窒素含有化合物等の非ハロゲン系難燃剤が挙げられる。これらの中でも、達成される難燃性、本発明で用いる熱可塑性樹脂の加工条件や分解温度と発泡成形体の燃焼温度の関係などを考慮して、ハロゲン系難燃剤が好ましい。本発明の製造方法によると、溶融押出中の剪断発熱が抑制されるため、溶融押出中の難燃剤の熱分解を抑制することができ、最終品である発泡成形体において難燃剤による難燃効果を確実に発現させることができる。そのため、本発明の製造方法は、難燃剤を含有する発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造するのに適している。
本発明で用いられるハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類;テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル等の臭素化フェノール誘導体、等が挙げられる。
本発明で用いられる難燃助剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチルー2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
本発明で用いられる輻射抑制剤としては、近赤外または赤外領域(例えば、800~3000nm程度の波長域)の光を反射、散乱、または吸収する特性を有する物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム系化合物、アルミン酸亜鉛等の亜鉛系化合物;ハイドロタルサイト等のマグネシウム系化合物;銀等の銀系化合物:チタン、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等のチタン系化合物;ステンレス、ニッケル、錫、銀、銅、ブロンズ、シラスバルーン、セラミックバルーン、マイクロバルーン、パールマイカ等の熱線反射剤や、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭、カーボンブラック、膨張黒鉛等の炭素粉末;硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、メルカライト、ハロトリ石、ミョウバン石、鉄ミョウバン石等の硫酸金属塩;三酸化アンチモン、酸化アンチモン、無水アンチモン酸亜鉛等のアンチモン系化合物;酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジニウム錫、等の金属酸化物;アンモニウム系、尿素系、イモニウム系、アミニウム系、シアニン系、ポリメチン系、アントラキノン系、ジチオール系、銅イオン系、フェニレンジアミン系、フタロシアニン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系、ベンゾトリアゾール系等の熱線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、グラファイト、カーボンブラック、酸化アンチモンまたは硫酸バリウムが、熱伝導率低減効果とコストのバランスが優れる点から、好ましい。
本発明の製造方法においては、必要に応じて、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を添加しても良い。
本発明の製造方法における発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物は、熱可塑性樹脂、発泡剤、および他の添加剤などの原料を押出機に供給して、押出機内で溶融混練することで製造される。上記原料は、原料ホッパーから同時に押出機に供給してもよいし、原料ホッパーとサイドフィーダーを用いて、逐次、押出機に供給してもよい。
本発明で用いられる押出機としては、一般的な押出機を使用することができ、具体的には、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機などが挙げられる。タンデム押出機としては、単軸押出機を二機連結したものや、二軸押出機に単軸押出機を連結したものなどが挙げられる。また、押出機と、スタティックミキサーやスクリューを有さない攪拌機などの第2の混練装置を併用してもよい。
本発明における発泡剤の圧入時期は特に限定されないが、原料樹脂が押出機内で溶融状態または半溶融状態となった後、できるだけ早く発泡剤を圧入することが好ましい。圧入時期が遅いほど、発泡剤が原料樹脂中に均一分散されて溶解される前に押出される可能性があり、予備発泡及び成形時に均一な気泡を有する発泡成形体が得られず、品質の劣化を招く恐れがある。
本発明においては、原料樹脂に圧入された発泡剤は、押出機先端に向かって流れていく過程で、溶解圧よりも10MPa以上高い圧力を維持することが好ましい。ここでいう「溶解圧」とは、一般的な方法、例えば、磁力支持天びん装置で測定された任意の樹脂に対する任意の温度での静的溶解圧を意味する。押出機内が局所的でも溶解圧未満あるいは溶解圧付近の圧力になる場合は、その地点で発泡剤が均一に分散または溶解されにくいため、予備発泡及び成形時に均一な気泡を有する発泡体が得られず、品質の劣化を招く恐れがある。
本発明の製造方法によれば、押出機内で熱可塑性樹脂中に発泡剤、および他の添加剤が溶解または均一分散された発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物は、押出機の先端側に取り付けられたダイがフェイス面に有する複数の小孔から、加圧水中に押し出される。押し出された直後に、前記溶融物を回転カッターで切断して、粒子化と冷却固化が行なわれる。
図1は、本発明の実施形態で使用するダイの出口付近の構成を示す断面図であり、図2は、図1のダイにおける小孔付近を拡大して示す図である。ダイ10は、フェイス面11において、溶融物の出口となる小孔12を多数有している。これら小孔12は、ダイの内部において樹脂通路13に連通しており、樹脂通路13はさらに押出機先端の出口に連通している。すなわち、押出機内で形成された溶融物は、押出機先端から、ダイ10内の樹脂通路13内を通過して、小孔12に達し、小孔12から、加圧水中に押し出される。
本発明におけるダイの小孔は直径が0.5~1.0mmである。好ましくは0.6~0.8mmである。小孔の直径を0.5mm以上とすることで高い開口率を維持し易い。また、1.0mm以下とすることで、真球度の高い樹脂粒子が得られ易い。なお、小孔の直径は図2において符号bで示している。
また、ダイのフェイス面11において小孔が形成されている小孔ランド部は、その長さ(図2中の符号a)が2~10mmが好ましく、3~7mmがさらに好ましい。小孔ランド部の長さを2mm以上とすることで、安定した押出が可能となり粒重量の変動が小さくなる。また、10mm以下とすることで、高い小孔開口率を維持し易い。小孔ランド部とは、前記直径を有する小孔が形成されている領域をいい、小孔ランド部の長さは前記直径を有する小孔の長さに相当する。
本発明における発泡性熱可塑性樹脂粒子の1個あたりの重量(粒重量)は、発泡性と、熱可塑性樹脂発泡成形体としたときの表面美麗性とのバランスがよい点から0.7mg~2.0mgが好ましく、0.8mg~1.8mgがさらに好ましい。粒重量を0.7mg以上とすることで、高発泡化が容易となる。また、2.0mg以下とすることで、表面美麗性に優れた熱可塑性樹脂発泡成形体が得られ易いため好ましい。
本発明の製造方法においては、ダイの小孔ランド部を通過する際の溶融物の剪断速度を8000~11000sec-1に制御しつつ発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する。本発明者らの検討により、前記剪断速度が8000sec-1未満であったり11000sec-1を超えると、得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡させた時の発泡倍率が十分に高くならず、また、予備発泡粒子同士を融着させて発泡成形体を得たときの発泡成形体の融着率が十分なレベルに到達しない。好ましくは、8000sec-1~10000sec-1の範囲である。
本発明において、ダイの小孔ランド部を通過する際の溶融物の剪断速度は、次の式によって算出される。
τ=4×Q/π×r (1)
τ:剪断速度(sec-1
Q:有効小孔1個当たり、1秒当たりの容積樹脂吐出量(cm/sec)
π:円周率
r:小孔半径(cm)
上記式(1)より、剪断速度は有効小孔1個当たりの容積樹脂吐出量に比例し、小孔半径の3条に反比例する。ここで、有効小孔とは、有効に樹脂を排出している小孔(すなわち、樹脂で目詰まりをしていない小孔)のことをいう。なお、有効小孔1個当たりの容積樹脂吐出量は、押出機への原料供給量とダイの小孔の孔数を勘案して容易に調節できる。
また、本発明においては、小孔の開口率を90%以上として、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を小孔から押し出すことが好ましい。開口率が90%以上であれば、粒重量や真球度のバラつきが小さくなるため好ましい。ここで、小孔の開口率とは、ダイが有する全小孔数のうち、有効小孔数の割合を意味し、有効小孔数を算出することで、開口率が算出される。尚、ここでいう、ダイが有する全小孔数は、予めピン等を埋め込み、構造上樹脂が排出しない様に閉塞させた小孔数を含まない。有効小孔数は、次の式によって算出される。
有効小孔数(個)=q/(N×n×W)
q:発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物が吐出されるときの、単位時間当たりの質量樹脂吐出量(mg/min)
N:回転カッターの回転数(rpm)
n:回転カッターの刃数(枚)
W:粒重量(mg)
小孔の開口率は次の式から算出される。
小孔開口率(%)=有効小孔数(個)/全小孔数(個)×100
本発明の製造方法においては、本発明の低剪断速度(8000~11000sec-1)よりも高い剪断速度で発泡剤含有熱可塑性溶融物を粒子化する準備工程を経た後、当該低剪断速度で発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する方法を採用することが好ましい。つまり、低剪断速度よりも高い剪断速度で発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を粒子化した後に、前記低剪断速度に変更して発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する方法が好ましい。具体的には、剪断速度13000sec-1以上で発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を粒子化した後、剪断速度を8000~11000sec-1に変更して発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造することが好ましい。剪断速度を変更する時点は、剪断速度13000sec-1以上で発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を粒子化した後であればいつでも良く、生産性の観点から、準備工程を行なう時間は短い方が好ましい。この手法によれば、初期に高い剪断速度で発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を小孔から押し出すことで小孔の開口率を高めることができ、その後、低い剪断速度で発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造を行なう時にも、その高い開口率を維持できる利点がある。
発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度を変更する手法としては、小孔1個当たりの容積樹脂吐出量を変更することで前記剪断速度を変更することができる。具体的には、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を粒子化する準備工程を実施した後に、単位時間あたりの押出機への原料供給量を減らすことで、高剪断速度から低剪断速度への変更を達成することができる。
本発明の製造方法においては、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物がダイの小孔から加圧水中に押し出された直後に、回転カッターで略球状に切断されて、液体中で球状になると同時に、冷却固化が行なわれる。これにより、発泡性熱可塑性樹脂粒子が形成される。
本発明の製造方法における加圧水の加圧条件としては特に限定されず、例えば、0.5MPa以上1.5MPa以下の圧力が好ましい。0.5MPa以上とすることで、直径の小さい粒子が得られ易く、また、1.5MPa以下とすることで、高い開口率を維持し易いため好ましい。
本発明の製造方法における加圧水の温度は40℃~90℃が好ましい。加圧水の温度が40℃より低い場合は、ダイを過度に冷却してしまい溶融樹脂で小孔出口を詰まらせる可能性がある。一方、加圧水の温度が90℃を超える場合は、溶融樹脂が加圧水中で完全に固化されず、発泡してしまう可能性がある。
加圧水中で形成された発泡剤含有熱可塑性樹脂粒子は、その後、加圧水と分離した後、乾燥させる。前記分離の際には遠心脱水機などを使用することができる。以上により、発泡性熱可塑性樹脂粒子が製造される。
以上のようにして得られる発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡工程に付すことにより、予備発泡粒子を得ることができる。この工程では、加熱水蒸気などを用いて発泡性熱可塑性樹脂粒子を軟化させると同時に該粒子内の発泡剤を揮発させて該粒子内に多数の気泡を形成させて予備発泡粒子を形成する。予備発泡工程の具体的な条件は従来公知の条件に従うことができる。この工程での予備発泡粒子の発泡倍率としては、適宜選択することができるが、本発明の製造方法によると、特許文献4に開示された製造方法と比較して比較的高い発泡倍率を達成することができる。具体的には、60倍(cc/g)以上の発泡倍率を達成することができる。
得られた予備発泡粒子を一定時間養生した後、さらに成形工程に付すことで、発泡成形体を製造することができる。この工程では、予備発泡粒子を所定形状の金型に充填し、該金型内に水蒸気を導入して該金型内で予備発泡粒子をさらに発泡させると共に、予備発泡粒子同士を融着させることで、所定形状の発泡成形体を形成する。成形工程の具体的な条件は従来公知の条件に従うことができる。本発明の製造方法によると、特許文献4に開示された製造方法と比較して比較的高い融着率を達成することができる。具体的には、80%以上、好ましくは90%以上の融着率を達成することができる。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[粒重量の測定]
0.01mgまで測定できる電子天秤を用いて、ランダムにサンプリングした発泡性熱可塑性樹脂粒子100粒の重量を測定し、以下の式で粒重量を算出した。
粒重量(mg)=[樹脂粒子100粒の重量(g)]/100
[小孔開口率の算出]
小孔開口率は、有効小孔数を前述式で算出した後、以下の式にて算出した。
小孔開口率(%)=有効小孔数(個)/全小孔数(個)×100
なお、全小孔数とは、予めピン等を埋め込み、構造上樹脂が排出しないように閉塞させた小孔を除く。
[剪断速度の算出]
発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物が小孔ランド部を通過する際の剪断速度は以下の式にて算出した。
τ=4×Q/π×r
τ:剪断速度(sec-1
Q:有効小孔1個当たり、1秒当たりの容積樹脂吐出量(cm/sec)
π:円周率
r:小孔半径(cm)
[予備発泡粒子の発泡倍率の測定]
予備発泡粒子の発泡倍率は、予備発泡粒子を容積が2000ccになるようにメスシリンダーに入れ、重量を測定し、以下の式にて算出した。
発泡倍率(cc/g)=2000cc/[予備発泡粒子の重量(g)]
[融着率の測定]
熱可塑性樹脂発泡成形体を中心で割り、その断面の全粒子数を数えた。次に、粒子が割れ、内部の気泡が確認できる粒子(破壊粒子数)の数を数え、以下の式にて算出した。
融着率(%)=破壊粒子数/全粒子数×100
(実施例1)
[発泡性熱可塑性樹脂粒子の作製]
熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、680]93.3重量部と、グラファイト[伊藤黒鉛(株)製、W-5]4重量部と、臭素系難燃剤[第一工業製薬(株)製、SR-130]2.5重量部と、安定剤[(株)ADEKA製、LA-57]0.1重量部と、安定剤[(株)ADEKA製、PEP-36]0.1重量部を、トータル供給量234.6kg/hrで口径60mmの同方向噛み合い二軸押出機[KraussMaffei Berstorff GmBH製]に供給し、二軸押出機の原料フィード部以降のシリンダ温度を165℃とし溶融混練した。二軸押出機の途中から、熱可塑性樹脂溶融物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(エスケイ産業(株)製)80重量%とイソペンタン(エスケイ産業(株)製)20重量%の混合物]を7重量部圧入した。
その後、二軸押出機の先端に接続した180℃に設定したギアポンプ、スクリーンチェンジャー、ダイバータバルブを経て、ダイバータバルブの下流に接続した直径0.65mm、ランド長5.0mmの小孔を168個有する240℃に設定したダイから、吐出量251kg/hrで、温度65℃及び0.96MPaの加圧水中に発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を押出した。その直後に、12枚の刃を有する回転カッターを用いて1362rpmの条件にて該溶融物を切断して粒子化する準備工程を行なった。
準備工程の開始から5分後に、各原料の供給比率を変更することなく吐出量を168kg/hrに変更し、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造した。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.09mgであり、製造時の小孔開口率は94%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に10804sec-1であった。
[予備発泡粒子の作製]
発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡機に投入し、0.04MPaの水蒸気を180秒間予備発泡機に導入して発泡させて予備発泡粒子を得た。該予備発泡粒子の発泡倍率は81倍であった。
[発泡成形体の作製]
得られた発泡倍率81倍の予備発泡粒子を発泡スチロール用成形機に取り付けた型内成形用金型内に充填して、0.04MPaの水蒸気を15秒間導入して型内発泡させた後、金型に50℃の温水を5秒間噴霧して冷却した。金型内の熱可塑性樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.015MPa(ゲージ圧力)になるまで金型内に熱可塑性樹脂発泡成形体を保持した後、熱可塑性樹脂発泡成形体を取り出して、長さ450mm×幅450mm×厚み50mmの直方体状の熱可塑性樹脂発泡成形体を得た。該成形体の融着率は90%であった。
(実施例2)
製造時の吐出量を168kg/hrから140kg/hrに変更し、回転カッターの回転数を1119rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.14mgであり、製造時の小孔開口率は91%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に9300sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は83倍であった。
さらに、得られた発泡倍率83倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は100%であった。
(実施例3)
製造時の吐出量を168kg/hrから130kg/hrに変更し、回転カッターの回転数を1040rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.11mgであり、製造時の小孔開口率は93%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に8414sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は82倍であった。
さらに、得られた発泡倍率82倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は95%であった。
(実施例4)
[発泡性熱可塑性樹脂粒子の作製]
熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、680]93.3重量部と、グラファイト[伊藤黒鉛(株)製、W-5]4重量部と、臭素系難燃剤[第一工業製薬(株)製、SR-130]2.5重量部と、安定剤[(株)ADEKA製、LA-57]0.1重量部と、安定剤[(株)ADEKA製、PEP-36]0.1重量部を、トータル供給量50kg/hrで口径40mmの同方向噛み合い二軸押出機(第一押出機)[(株)テクノベル製]に供給し、二軸押出機の原料フィード部以降のシリンダ温度を190℃とし溶融混練した。二軸押出機の途中から、熱可塑性樹脂溶融物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(エスケイ産業(株)製)80重量%とイソペンタン(エスケイ産業(株)製)20重量%の混合物]を4.3重量部とイソブタン(三井化学(株)製)2.2重量部を圧入し、溶融混練した。
その後、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を200℃に設定した継続管を通じて口径90mmの単軸押出機(第二押出機)[(株)日本製鋼所製]に供給し、シリンダ温度を170℃とし混練したのち、第二押出機の先端に接続した170℃に設定したギアポンプ、スクリーンチェンジャー、ダイバータバルブを経て、ダイバータバルブの下流に接続した直径0.65mm、ランド長3.0mmの小孔を54個有する240℃に設定したダイから、吐出量53.25kg/hrで、温度65℃及び水圧1.4MPaの加圧水中に発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を押出した。その直後に、6枚の刃を有する回転カッターを用いて1800rpmの条件にて該溶融物を切断して粒子化し、発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造した。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.55mgであり、小孔開口率は98%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は10559sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は86倍であった。
さらに、得られた発泡倍率86倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は95%であった。
(実施例5)
[発泡性熱可塑性樹脂粒子の作製]
熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂[PSジャパン(株)製、680]42.86重量部と、ポリフェニレンエーテル系樹脂[SABIC innovative Plastics IP BV製、NORYL PKN4752]を57.14重量部、タルク[林化成(株)製、タルカンパウダーPK-S]0.4重量部を、トータル供給量50kg/hrで口径40mmの同方向噛み合い二軸押出機(第一押出機)[(株)テクノベル製]に供給し、二軸押出機の原料フィード部以降のシリンダ温度を280℃とし溶融混練した。二軸押出機の途中から、熱可塑性樹脂溶融物100重量部に対して、混合ペンタン[ノルマルペンタン(エスケイ産業(株)製)80重量%とイソペンタン(エスケイ産業(株)製)20重量%の混合物]を4.3重量部とイソブタン(三井化学(株)製)2.2重量部を圧入し、溶融混練した。
その後、発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を270℃に設定した継続管を通じて口径90mmの単軸押出機(第二押出機)[(株)日本製鋼所製]に供給し、シリンダ温度を230℃とし混練したのち、第二押出機の先端に接続した230℃に設定したギアポンプ、スクリーンチェンジャー、ダイバータバルブを経て、ダイバータバルブの下流に接続した直径0.65mm、ランド長5.0mmの小孔を54個有する300℃に設定したダイから、吐出量53.25kg/hrで、温度85℃及び水圧1.4MPaの加圧水中に発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を押出した。その直後に、6枚の刃を有する回転カッターを用いて1780rpmの条件にて該溶融物を切断して粒子化し、型内成形用発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.57mgであり、小孔開口率は98%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は10577sec-1であった。
[予備発泡粒子の作製]
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を予備発泡機に投入し、0.26MPaの水蒸気を150秒間予備発泡機に導入して発泡させて予備発泡粒子を得た。該予備発泡粒子の発泡倍率は64倍であった。
[発泡成形体の作製]
得られた発泡倍率64倍の予備発泡粒子を発泡ポリプロピレン用成形機に取り付けた型内成形用金型内に充填して、0.35MPaの水蒸気を60秒間導入して型内発泡させた後、金型に40℃の温水を90秒間噴霧して冷却した。金型内の熱可塑性樹脂発泡成形体が金型を押す圧力が0.015MPa(ゲージ圧力)になるまで金型内に熱可塑性樹脂発泡成形体を保持した後、熱可塑性樹脂発泡成形体を取り出して、長さ400mm×幅300mm×厚み50mmの直方体状の熱可塑性樹脂発泡成形体を得た。該成形体の融着率は95%であった。
(比較例1)
吐出量の変更を行なわずに、運転開始時の吐出量251kg/hrを製造時も維持し、回転カッターの回転数を2021rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.09mgであり、製造時の小孔開口率は94%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に16040sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は75倍であった。
さらに、得られた発泡倍率75倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は60%であった。
(比較例2)
製造時の吐出量を168kg/hrから200kg/hrに変更し、回転カッターの回転数を1602rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.09mgであった。また、製造時の小孔開口率は95%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に12700sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は76倍であった。
さらに、得られた発泡倍率76倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は65%であった。
(比較例3)
製造時の吐出量を168kg/hrから120kg/hrに変更し、回転カッターの回転数を1036rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.04mgであった。また、製造時の小孔開口率は92%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に7868sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は78倍であった。
さらに、得られた発泡倍率78倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は70%であった。
(比較例4)
製造時の吐出量を168kg/hrから110kg/hrに変更し、回転カッターの回転数を1038rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡性熱可塑性樹脂粒子を得た。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子の粒重量は1.00mgであった。また、製造時の小孔開口率は88%であり、発泡剤含有熱可塑性溶融物の剪断速度は準備工程では15085sec-1、製造時に7555sec-1であった。
得られた発泡性熱可塑性樹脂粒子を用いて、実施例1と同様に予備発泡粒子を得たところ、該予備発泡粒子の発泡倍率は77倍であった。
さらに、得られた発泡倍率77倍の予備発泡粒子を用いて、実施例1と同様に、熱可塑性樹脂発泡成形体を得たところ、該成形体の融着率は60%であった。
Figure 0007084692000001
以上の結果より、実施例1~5では、比較例1~4と比較して低い水蒸気圧力であっても予備発泡粒子の発泡倍率が高く、成形体融着率も大きいことが分かる。
10 ダイ
11 フェイス面
12 小孔
13 樹脂通路
a 小孔ランド部の長さ
b 小孔の直径

Claims (2)

  1. 発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を複数の小孔を有するダイから加圧水中に押出した直後に回転カッターで切断して粒子化及び冷却固化を行なう工程を含む、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法であって、
    前記小孔の直径が0.5~1.0mmであり、
    前記ダイの小孔ランド部を通過する際の発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物の剪断速度が8000~11000sec-1であり、
    前記発泡性熱可塑性樹脂粒子の1個あたりの重量が、0.7~2.0mgであり、
    前記小孔の開口率が90%以上であり、
    熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂及び/又はポリフェニレンエーテル系樹脂であることを特徴とする、発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記剪断速度8000~11000sec-1の条件で発泡性熱可塑性樹脂粒子を製造する前に、剪断速度13000sec-1以上で発泡剤含有熱可塑性樹脂溶融物を粒子化する準備工程を含む、請求項1に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
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