JP7083030B2 - 液晶パネル及び画像表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶パネル及び画像表示装置に関する。
画像表示装置の前面板、特に、タッチパネルディスプレイの前面板等の高い耐久性が求められる光学フィルム用途には、従来、化学強化ガラス等のガラスが主に用いられていた。近年、樹脂フィルムの各種機能性(軽量性、靱性(割れにくさ)及び薄膜加工性(薄くできる)等)が注目され、ガラス代替材料としての樹脂フィルムの使用による光学フィルムの機能性の向上が期待されている。
ガラス代替材料の樹脂フィルムとして、例えば、特許文献1には、面内に複屈折を有する透明基材の一方の面上に、樹脂板が設けられた樹脂積層板であって、この面内に複屈折を有する透明基材が8000nm以上のリタデーションを有する樹脂積層板が記載されている。
特開2017-129868号公報
タッチパネルの前面板及びタッチパネルディスプレイの前面板、並びに偏光板を構成する保護フィルム等に用いられる光学フィルムとして、上記樹脂積層板を用いた場合、前面板への外部からの衝撃によって、液晶セルなどのディスプレイ内部材が破壊され、機能が損なわれることがあった。特に、軽量化のため、液晶セルに使用されるガラス基板の薄層(薄型)化が進んでおり、この薄型化に伴い破壊頻度が増加している問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ガラス代替材料として機能する光学フィルムを有し、かつ、衝撃吸収性に優れる液晶パネル及び画像表示装置を提供することを課題とする。
本発明者が上記課題に鑑み鋭意検討した結果、液晶セルとこの液晶セルを挟む2つの偏光板を有する液晶パネルであって、この2つの偏光板のうち視認側に位置するフロント側偏光板の衝撃吸収層が特定の貯蔵弾性率を有し、さらに、2つの偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率が特定の関係を満たすことにより、液晶パネルの衝撃吸収性を高められることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)
フロント側偏光板及びリア側偏光板を有する液晶パネルであって、
上記フロント側偏光板が、樹脂フィルムと該樹脂フィルムの少なくとも片面に配された衝撃吸収層とを有する光学フィルムと、該光学フィルムが有する上記樹脂フィルムの、上記衝撃吸収層が配された面とは反対側の面に、ハードコート層とを有する偏光板であり、
上記リア側偏光板が、樹脂フィルムと該樹脂フィルムの少なくとも片面に配された衝撃吸収層とを有する光学フィルムを有する偏光板であり、
上記フロント側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’が1GPaを超え、かつ、上記E’と、上記リア側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’との関係が下記式を満たす、液晶パネル。
E’-E’>0
(2)
上記フロント側偏光板の衝撃吸収層の膜厚が10μm~80μmである、(1)に記載の液晶パネル。
(3)
上記リア側偏光板の衝撃吸収層の膜厚が10μm~80μmである、(1)又は(2)に記載の液晶パネル。
(4)
タッチセンサーを備える、(1)~(3)のいずれか1つに記載の液晶パネル。
(5)
(1)~(4)のいずれか1つに記載の液晶パネルを有する画像表示装置。
本発明において、「フロント側」及び「リア側」とは、液晶パネルが液晶表示装置に組み込まれた状態における、液晶セルとの相対的な位置関係を示すものである。すなわち、「フロント側偏光板」とは、液晶セルを挟む2つの偏光板のうち、液晶パネルが液晶表示装置に組み込まれた際に視認側に位置する偏光板であり、「リア側偏光板」とは、液晶セルを挟む2つの偏光板のうち、液晶パネルが液晶表示装置に組み込まれた際に視認側とは反対側(反視認側)に位置する偏光板である。例えば、直下型方式のバックライトを備える液晶表示装置においては、反視認側とは、液晶表示装置に組み込まれた際のバックライト側である。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基、連結基、繰り返し構造等(以下、置換基等という。)が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環は更に縮環して縮合環を形成していてもよい。
本明細書において、ある基の炭素数を規定する場合、この炭素数は、基全体の炭素数を意味する。つまり、この基が更に置換基を有する形態である場合、この置換基を含めた全体の炭素数を意味する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方の意味で用いられる。また、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方の意味で用いられる。「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの一方又は両方の意味で用いられる。
本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体と共重合体の一方又は両方の意味で用いられる。
本明細書に記載の各成分は、この成分を、一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、各成分の含有量は、構造の異なる二種以上を併用する場合には、それらの合計含有量を意味する。
本明細書において、衝撃吸収層における固形分及びハードコート層における固形分とは、溶媒以外の成分である。すなわち、溶媒を含有する組成物を用いて塗布、乾燥して層を形成した際に、層中に残存する成分を意味する。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、特段の断りがない限り、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムはG3000HXL+G2000HXLを用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。溶離液としては、THF(テトラヒドロフラン)、クロロホルム、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、m-クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬(株)製)から選定することができ、溶解するものであればTHFを用いることとする。
本明細書において、各層の厚み及び引張変形モードでの弾性率は、実施例記載の方法により測定されるものである。
本発明の液晶パネルを構成する光学フィルムは、タッチパネルの前面板又はタッチパネルディスプレイ(タッチセンサー機能を備える画像表示装置)の前面板として用いたり、偏光板を構成する保護フィルム(偏光板保護フィルムとも称す。)として用いたりすることにより、液晶セルなどのディスプレイ内部材の破壊を効果的に抑制することができる。また、液晶パネルを構成する光学フィルムは、偏光フィルム、位相差フィルム及び液晶表示用の輝度向上フィルム等の光学フィルムとしても好適に用いることができる。
本発明の液晶パネルは、ガラス代替材料として機能する光学フィルムを有し、かつ、衝撃吸収性に優れる。また、本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを有し、優れた衝撃吸収性を示すことができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムの構成の一実施形態を示す縦断面図である。 ハードコート層を有する、本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムの構成の一実施形態を示す縦断面図である。 試験例1に用いた模擬液晶パネルを、基台を含めて模式的に示す断面図である。
本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムの好ましい実施形態について説明する。
[光学フィルム]
本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムの好ましい実施形態を図1に示す。図1に示す光学フィルム4Aは、樹脂フィルム1Aと、この樹脂フィルム1Aの片面に配された衝撃吸収層2Aとを有する光学フィルムである。上記光学フィルムは上記構成を有することにより、外部からの衝撃を受けてもディスプレイ内部材の損傷を防ぎ、その機能を維持することができる。
樹脂フィルム及び衝撃吸収層は単層であっても、複層であってもよい。
(光学フィルムの膜厚)
上記光学フィルムの膜厚は、衝撃吸収性の点から、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。上限値は200μm以下であることが実際的である。
(面内方向のレターデーション)
光学フィルムの波長550nmにおける面内方向のレターデーションは、干渉ムラを低減する点から、6000nmより小さいこと、すなわち6000nm未満であることが好ましく、1000nm以下がより好ましく、500nm以下が更に好ましく、50nm以下が更により好ましい。
ここで、光学フィルムの面内方向の位相差(レターデーション)は、光学フィルムに直線偏光を入射して、光学フィルムを通過した光を、進相軸及び遅相軸に沿った2つの直線偏光に分解した際に、進相軸での屈折率Nxと遅相軸での屈折率Ny及び光学フィルムの厚さd(単位:nm)とから下記式(A)により示されるR(単位:nm)として定義される。
R=d×(Nx-Ny) (A)
本明細書において、波長550nmにおける面内方向のレターデーションは、KOBRA 21ADH(王子計測機器社製)を用いて波長550nmの光を測定対象のフィルム又は層の法線方向に入射させて測定される。測定波長の選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。なお、面内方向のレターデーションは、AxoScan(AXOMETRICS社)を用いて測定することもできる。
以下、本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムを構成するフィルム及び層の成分及び調製について、詳細を説明する。
(1)樹脂フィルム
(樹脂フィルムの材料)
本発明に用いられる樹脂フィルムの材料は特に限定されない。
樹脂フィルムとしては、例えば、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)系樹脂フィルム等のセルロースエステル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、及び、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体の樹脂フィルムを挙げることができる。上記樹脂フィルムは、アクリル系樹脂フィルム、セルロースエステル系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタラート系樹脂フィルム及びポリカーボネート系樹脂フィルムのうちの少なくとも1種フィルムが好ましく、透湿性の点から、セルロースエステル系樹脂フィルムがより好ましく、セルロースアセテートが更に好ましい。
尚、アクリル系樹脂フィルムとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのうちの少なくとも1種以上の化合物から形成される重合体又は共重合体の樹脂フィルムをいう。アクリル系樹脂フィルムの例としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)フィルムが挙げられる。
樹脂の重量平均分子量は、引張弾性率を高める点から、10,000~1,000,000が好ましく、100,000~1,000,000がより好ましい。
(樹脂フィルムの構成)
また、樹脂フィルムの構成も限定されず、単層でも、2層以上からなる積層フィルムであってもよく、2層以上の積層フィルムが好ましい。積層フィルムの積層数は、2~10層が好ましく、2~5層がより好ましく、2層又は3層が更に好ましい。3層以上の場合、外層と外層以外の層(コア層等)とは、異なる組成のフィルムが好ましい。また、外層同士は、同じ組成のフィルムが好ましい。
具体的には、TAC-a/TAC-b/TAC-a、アクリル-a/PC/アクリル-a及びPET-a/PET-b/PET-aの積層構造を有するフィルム、並びに、ポリカーボネート系樹脂単層のフィルムが挙げられる。ここで、同じ符号(a又はb)を付けたフィルム同士(例えば、TAC-a同士)は、同じ組成のフィルムを示す。
(添加剤)
樹脂フィルムは、上述の樹脂(材料)の他に添加剤を適宜含有してもよい。添加剤としては、後述のハードコート層で記載する、無機粒子、マット粒子、紫外線吸収剤、含フッ素化合物、表面調整剤及びレベリング剤等が挙げられる。
後述の溶融製膜法では、上記添加剤と樹脂とを混合溶融した樹脂溶融物として、また、後述の溶液製膜法では、溶媒(後述のハードコートにおける記載を適用できる。)と樹脂と上記添加剤とを混合したドープ液として、樹脂フィルムの形成に用いることができる。
(引張弾性率)
樹脂フィルムの引張弾性率は、例えば、樹脂フィルムを構成する樹脂の種類により変えることができ、一般に、樹脂の分子量及び結晶化度の少なくとも一方を高めることにより引張弾性率は高まる傾向がある。また、樹脂フィルムは、延伸により延伸方向の引張弾性率を高めることができる。樹脂フィルムが多層からなる場合にも、樹脂フィルムとしての引張弾性率を意味する。
樹脂フィルムの25℃における引張弾性率は、2.0GPa以上が好ましく、2.5GPa以上がより好ましく、3.0GPa以上が更に好ましく、3.5GPa以上が特に好ましく、4.0GPa以上が最も好ましい。上限値は、特に制限はないが、12.0GPa以下が実際的である。
樹脂フィルムの「引張弾性率」は、JIS K7127に記載の方法に従って、以下の方法により試験し、算出することができる。
測定方向に15cmの長さで、幅1cmの樹脂フィルムを測定用試料として切り出す。切り出した測定用試料を、引張試験機(東洋精機社製、商品名「ストログラフ-R2」)に、測定方向のチャック間隔が10cmとなるように設置し、測定温度25℃の条件下、延伸速度10mm/分でチャック間隔が広がるように延伸し、応力-ひずみ曲線を得る。規定された2点のひずみε=0.0005及びε=0.0025の間の曲線の線形回帰により、25℃における引張弾性率を算出する。
なお、樹脂フィルムが異方性を有する場合は、樹脂フィルムの厚み方向に垂直な面において、配向度の最も大きい配向方向を長辺とする測定用試料の引張弾性率と、この配向方向と直行する方向を長辺とする測定用試料の引張弾性率との平均を、樹脂フィルムの引張弾性率とする。
(膜厚)
樹脂フィルムの膜厚は、衝撃吸収性の点から、80μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、140μm以上がさらに好ましい。上限値に特に制限はないが、190μm以下が好ましい。なお、樹脂フィルムが上記の様に2層以上の積層フィルムである場合には、樹脂フィルムの膜厚は、積層フィルムでの膜厚を意味する。
上記光学フィルムの作製前後で、樹脂フィルムの厚みはほとんど変化しない。
(易接着層)
また、本発明に用いられる樹脂フィルムは、易接着層を有していてもよい。易接着層は、特開2015-224267号公報の段落0098~0133に記載された偏光子側易接着層及び偏光子側易接着層の製造方法の内容を、本発明にあわせて本明細書に組み込むことができる。
この場合、易接着層は、上記光学フィルムにおける樹脂フィルムを構成する層とする。
(樹脂フィルムの製膜方法)
樹脂フィルムは、いずれの方法で製膜してもよく、例えば溶融製膜法及び溶液製膜法が挙げられる。
<溶融製膜法、平滑化>
樹脂フィルムを溶融製膜法で製膜する場合、樹脂を押出機で溶融する溶融工程と、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す工程と、フィルム状に成形する工程とを含むことが好ましい。樹脂の材料によっては、溶融工程の後に溶融樹脂のろ過工程を設けてもよく、シート状に押し出す際に冷却してもよい。
以下、具体的な溶膜製膜法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[樹脂フィルムの形成方法]
上記樹脂フィルムの製造方法は、樹脂を押出機で溶融する溶融工程と、溶融した樹脂をフィルターが設置されたろ過装置に通してろ過するろ過工程と、ろ過した樹脂をダイからシート状に押し出し、冷却ドラムの上に密着させることにより冷却固化して未延伸の樹脂フィルムを成形するフィルム成形工程と、未延伸の樹脂フィルムを、1軸又は2軸延伸する延伸工程とを有する。
このような構成により、樹脂フィルムを製造することができる。溶融した樹脂のろ過工程で使用されるフィルターの孔径が1μm以下であると、異物を十分に取り除くことができる。その結果、得られる樹脂フィルムのフィルム幅方向の表面粗さを制御することができる。
具体的には、樹脂フィルムの形成方法は下記工程を含むことができる。
<溶融工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、樹脂を押出機で溶融する溶融工程を含む。
樹脂、又は樹脂と添加剤の混合物を含水率200ppm以下に乾燥した後、一軸(単軸)あるいは二軸の押出機に導入し溶融させることが好ましい。この時、樹脂の分解を抑制するために、窒素中あるいは真空中で溶融することも好ましい。詳細な条件は、特許第4962661号の<0051>~<0052>(US2013/0100378号公報の<0085>~<0086>)を援用して、これらの公報に従い実施でき、これらの公報に記載された内容は本明細書に組み込まれる。
押出機は、一軸混練押出機が好ましい。
更に、溶融樹脂(メルト)の送り出し精度を上げるためギアポンプを使用することも好ましい。
<ろ過工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、溶融した樹脂をフィルターが設置されたろ過装置に通してろ過するろ過工程を含み、ろ過工程で使用されるフィルターの孔径は1μm以下が好ましい。
このような孔径の範囲のフィルターを有するろ過装置は、ろ過工程において1セットのみ設置してもよく、2セット以上設置してもよい。
<フィルム成形工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、ろ過した樹脂をダイからシート状に押し出し、冷却ドラムの上に密着させることにより冷却固化して未延伸の樹脂フィルムを成形するフィルム成形工程を含む。
溶融(及び混練)し、ろ過した樹脂(樹脂を含むメルト)をダイからシート状に押し出す際、単層で押出しても、多層で押出してもよい。多層で押出す場合は、例えば、紫外線吸収剤を含む層と含まない層とを積層してもよく、より好ましくは紫外線吸収剤を含む層を内層にした3層構成が、紫外線による偏光子の劣化を抑え、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できる点で好ましい。
樹脂フィルムが多層で押出されて製造される場合、全層の厚みに対する、得られる樹脂フィルムの好ましい内層の厚みは、50%以上99%以下が好ましく、より好ましくは60%以上99%以下、更に好ましくは70%以上99%以下である。このような積層は、フィードブロックダイ及びマルチマニホールドダイ等を用いることで実施できる。
特開2009-269301号公報の<0059>に従い、ダイからシート状に押し出した樹脂(樹脂を含むメルト)を冷却ドラム(キャスティングドラム)上に押出し、冷却固化し、未延伸の樹脂フィルム(原反)を得ることが好ましい。
上記樹脂フィルムの製造方法は、ダイから押し出される樹脂の温度が280℃以上320℃以下であることが好ましく、285℃以上310℃以下であることがより好ましい。溶融工程でダイから押し出される樹脂の温度が280℃以上であることが、原料樹脂の溶融残りを減少させて異物の発生を抑制することができる点で好ましい。溶融工程でダイから押し出される樹脂の温度が320℃以下であることが、樹脂の分解を減少させて異物の発生を抑制することができる点で好ましい。
ダイから押し出される樹脂の温度は、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により樹脂の表面を非接触で測定することができる。
上記樹脂フィルムの製造方法は、フィルム成形工程において、樹脂を冷却ドラムの上に密着させる際に静電印加電極を用いることが好ましい。これにより、フィルム面が荒れないように樹脂を強く冷却ドラムの上に密着させることができる。
上記樹脂フィルムの製造方法は、冷却ドラムの上に密着させる際(ダイから押出された溶融樹脂が冷却ドラムと最初に接触する点)の樹脂の温度は280℃以上が好ましい。これにより、樹脂の電気伝導性が高まり、静電印加により冷却ドラムに強く密着させることができ、フィルム面の荒れを抑制できる。
冷却ドラムの上に密着させる際の樹脂の温度は、放射温度計(林電工製、型番:RT61-2、放射率0.95で使用)により、樹脂の表面を非接触で測定することができる。
<延伸工程>
上記樹脂フィルムの製造方法は、未延伸の樹脂フィルムを、1軸又は2軸延伸する延伸工程を含む。
縦延伸工程(フィルムの搬送方向と同じ方向に延伸する工程)では、樹脂フィルムが予熱された後、樹脂フィルムが加熱された状態で、周速差のある(すなわち、搬送速度の異なる)ローラー群で搬送方向に延伸される。
縦延伸工程における予熱温度は樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、Tg-40℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg-20℃以上Tg+40℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+30℃以下が更に好ましい。また、縦延伸工程における延伸温度は、Tg以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg+2℃以上Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+5℃以上Tg+30℃以下が更に好ましい。縦方向の延伸倍率は1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.1倍以上2倍以下が更に好ましい。
樹脂フィルムは、縦延伸工程に加えて、又は縦延伸工程に代えて、横延伸工程(フィルムの搬送方向に対して垂直な方向に延伸する工程)により、幅方向に横延伸される。横延伸工程では例えばテンターを好適に用いることができ、このテンターによって樹脂フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に延伸する。この横延伸によって、光学フィルムにおける樹脂フィルムの引張弾性率を高めることができる。
横延伸は、テンターを用いて実施するのが好ましく、好ましい延伸温度は樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、Tg以上Tg+60℃以下が好ましく、より好ましくはTg+2℃以上Tg+40℃以下、更に好ましくはTg+4℃以上Tg+30℃以下である。延伸倍率は1.0倍以上5.0倍以下が好ましく、1.1倍以上4.0倍以下が更に好ましい。横延伸の後に縦及び横のいずれか、又は両方に樹脂フィルムを緩和させることも好ましい。
また、厚みの幅方向及び長手方向の場所による変動をいずれも10%以下にすることが好ましく、8%以下にすることがより好ましく、6%以下にすることが更に好ましく、4%以下にすることが特に好ましく、2%以下にすることが最も好ましい。
尚、ここで、厚みの変動は、以下の通り求めることができる。
延伸された樹脂フィルムを10m(メートル)サンプリングし、フィルム幅方向の両端部20%ずつを除き、フィルム中心部から幅方向、長手方向に等間隔でそれぞれ50点サンプリングし、厚みを測定する。
幅方向の厚みの、平均値ThTD-av、最大値ThTD-max及び最小値ThTD-minを求め、
(ThTD-max-ThTD-min)÷ThTD-av×100 [%]
により幅方向の厚みの変動を算出する。
また、長手方向の厚みの、平均値ThMD-av、最大値ThMD-max及び最小値ThMD-minを求め、
(ThMD-max-ThMD-min)÷ThMD-av×100 [%]
により長手方向の厚みの変動を算出する。
上記延伸工程により、樹脂フィルムの厚み精度の向上を図ることができる。
延伸後の樹脂フィルムは、巻取工程でロール状に巻き取ることができる。その際、樹脂フィルムの巻取りテンションは、0.02kg/mm以下とすることが好ましい。
その他詳細な条件については、溶融製膜は特開2015-224267号公報の<0134>~<0148>に記載された内容、延伸工程は特開2007-137028号公報に記載された内容を、本発明にあわせて本明細書に組み込むことができる。
<溶液製膜法、平滑化>
樹脂フィルムを溶液製膜法で製膜する場合、ドープ液を流延バンド上に流延し、流延膜を形成する工程と、流延膜を乾燥する工程と、流延膜を延伸する工程とを含むことが好ましい。具体的には、特許第4889335号に記載の方法によって製膜するのが好ましい。
本発明では、以下の方法を採用することが好ましい。
例えば、特開平11-123732号公報に記載の、流延膜の乾燥速度を乾量基準の含有溶媒量で300質量%/min(=5質量%/s)以下とし、緩やかな乾燥を行う方法が挙げられる。また、特開2003-276037号公報に記載の、中間層であるコア層の両表面にスキン層(外層)を有する多層構造の流延膜の共流延法において、コア層を形成するドープ液の粘度を高めて流延膜の強度を確保するとともに外層を形成するドープの粘度を低くする方法が挙げられる。更に、流延膜を急乾燥して流延膜表面に膜を形成し、形成された膜のレベリング効果により面状を平滑化する方法、及び、流延膜を延伸する方法なども好ましく挙げられる。
本発明に用いられる樹脂フィルムは、本発明の効果を奏する限り、その構成は特に限定されない。例えば、膜厚を特定の値以上とする際、樹脂フィルムは、上述のように1枚の樹脂フィルムで構成されていても、2枚の樹脂フィルムを接着層により貼り合せてなる、第一の樹脂フィルム/接着層/第二の樹脂フィルムがこの順に積層された樹脂フィルムで構成されていてもよい。
以下、2枚の樹脂フィルムを接着層により貼り合せてなる樹脂フィルムについて説明する。
(2枚の樹脂フィルムを接着層により貼り合せてなる樹脂フィルム)
接着層により貼り合せる2枚の樹脂フィルムは、同一のフィルムであることが、光学フィルムが曲がりにくい点から好ましい。
ここで「同一のフィルム」とは、樹脂フィルムを構成する樹脂の材料が同じ(例えば、いずれもTACフィルム)であることを意味する。なかでも、樹脂の分子量が同じであることが好ましく、樹脂の分子量及び結晶化度が同じであることがより好ましく、樹脂の分子量、結晶化度及び延伸率が同じであることが更に好ましい。また、上記に加えて、2枚の樹脂フィルムの厚みが同じであることもより好ましい。
なお、「同じ」とは、完全同一に限定されず、実質的に同一であることを含む。具体的には、同一の製造方法(膜厚、延伸等が同じになるような条件)で作製したものであり、この条件で生じる誤差が含まれる。
すなわち、接着層により貼り合せる2枚の樹脂フィルムの引張弾性率の差は小さいことが好ましく、具体的には、4.0GPa以下が好ましく、3.0GPa以下がより好ましく、2.0GPa以下が更に好ましく、1.0GPa以下が特に好ましい。
(樹脂フィルムの厚み)
2枚の樹脂フィルムの厚みは、製造適性の点から、各々独立に、40~160μmが好ましく、50~160μmがより好ましく、80~160μmが更に好ましく、100~160μmが特に好ましい。
(接着層)
上記接着層とは、樹脂フィルム同士を貼り合わせる役割を果たす層であり、2枚の樹脂フィルムを接着する機能を有する限り特に制限されない。
接着層は、乾燥及び反応の少なくともいずれかにより接着性を発現する成分(接着剤)を含む組成物を用いて形成することが好ましい。例えば、硬化反応により接着性を発現する成分を含む組成物(以下、「硬化性組成物」と称す。)を用いて形成される接着層は、かかる硬化性組成物を硬化させてなる硬化層である。
接着剤としては、樹脂を用いることができる。一態様では、接着層は、この層の50質量%以上、好ましくは70質量%以上を樹脂が占める層であることができる。樹脂としては、単一の樹脂を用いても、複数の樹脂の混合物を用いてもよい。樹脂の混合物を用いる場合、上記の樹脂が占める割合は、樹脂の混合物が占める割合をいう。樹脂の混合物としては、例えば、ある樹脂と、この樹脂の一部を変性した構造を有する樹脂との混合物、及び、ある樹脂を構成する重合性化合物とは異なる重合性化合物を反応させて得られた樹脂との混合物等を挙げることができる。
接着剤としては、任意の適切な性質、形態及び接着機構を有する接着剤を用いることができる。具体例として、水溶性接着剤、紫外線硬化型接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、サポーテッドフィルム接着剤、熱可塑型接着剤、熱溶融型(ホットメルト)接着剤、熱固化接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤、重合型接着剤、溶剤型接着剤及び溶剤活性接着剤等が挙げられ、水溶性接着剤及び紫外線硬化型接着剤が好ましい。これらの中でも、透明性、接着性、作業性、製品の品質及び経済性に優れる点で、水溶性接着剤が好ましく用いられる。
水溶性接着剤は、たんぱく質、澱粉及び合成樹脂等の天然又は合成された水溶性成分を含むことができる。合成樹脂としては、例えば、レゾール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル樹脂及びセルロース誘導体が挙げられる。これらの中でも、樹脂フィルムを貼り合わせる際の接着性に優れる点で、ポリビニルアルコール樹脂又はセルロース誘導体を含有する水溶性接着剤が好ましい。すなわち、接着層は、ポリビニルアルコール樹脂又はセルロース誘導体を含むことが好ましい。
ここで、セルロース誘導体とは、セルロースを変性したものを意味する。セルロース誘導体に特に制限はなく、公知のセルロース誘導体を使用することができる。例えば、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)等を用いることができる。
樹脂の重量平均分子量は、引張弾性率を高める点から、1,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましい。上限値に特に制限はないが、1,000,000以下が実際的である。
接着剤を含む組成物に任意に含まれる成分としては、例えば、架橋剤(ホウ酸及びSafelink SPM-01(商品名、日本合成化学社製)等)及び耐久性改良剤(ヨウ化カリウム等)が挙げられる。
(引張弾性率)
接着層の引張弾性率は、例えば、接着層を構成する樹脂の種類により変えることができ、一般に、樹脂の分子量及び結晶化度の少なくともいずれかを高めることにより引張弾性率は高まる傾向がある。また、接着層が架橋性基を持つ場合には、架橋剤などの添加によって接着層の架橋度を向上させることにより引張弾性率を高めることができる。更に、接着層に重合性化合物が含まれる場合は、重合性基を有する化合物の重合性基当量(この化合物の分子量を、この化合物に含まれる重合性基の総数で除した値)の低減、接着層の重合率の向上、接着層への高弾性物質(例えば無機粒子等)の添加、及び、剛直な分子構造(例えばアダマンタン骨格)を含む化合物の添加等により高まる傾向がある。
接着層の25℃における引張弾性率は、2.0GPa以上が好ましく、2.5GPa以上がより好ましく、3.0GPa以上が更に好ましく、3.5GPa以上が更により好ましく、4.0GPa以上が更により一層好ましく、4.5GPa以上が特に好ましく、5.0GPa以上が最も好ましい。上限値は、特に制限はないが、12.0GPa以下が実際的である。
なお、接着層の弾性率は、接着層形成用液を用いて作製される接着層の試料を用いて、上記樹脂フィルムの引張弾性率と同様の方法により試験し、算出することができる。
(接着層の厚み)
接着層の厚みは、2枚の樹脂フィルムを接着する点から10nm以上が好ましく、更に干渉ムラも低減する観点から10nm~10μmがより好ましく、10nm~5μmが更に好ましく、10nm~1μmが更により好ましい。
接着層は、例えば、接着剤を含有する塗布液を樹脂フィルムの少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。塗布液の調製方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。塗布液としては、例えば、市販の溶液又は分散液を用いてもよく、市販の溶液又は分散液に更に溶剤を添加して用いてもよく、固形分を各種溶剤に溶解又は分散して用いてもよい。
一態様では、接着層は、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる硬化層が挙げられる。接着層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー硬化性成分として、カチオン重合性化合物、例えばエポキシ系化合物、より具体的には、特開2004-245925号公報に記載されるような、分子内に芳香環を有しないエポキシ系化合物を含むものが好ましい。このようなエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを代表例とする芳香族エポキシ系化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物を核水添し、それをグリシジルエーテル化して得られる水素化エポキシ系化合物、脂環式環に結合するエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する脂環式エポキシ系化合物、及び、脂肪族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルを代表例とする脂肪族エポキシ系化合物等を挙げることができる。また、接着層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物は、エポキシ系化合物を代表例とするカチオン重合性化合物に加えて、重合開始剤、例えば活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物の重合を開始させるための光カチオン重合開始剤、及び、光照射により塩基を発生する光塩基発生剤を含むこともできる。更に、加熱によって重合を開始させる熱カチオン重合開始剤、その他、光増感剤などの各種添加剤が含まれていてもよい。
(樹脂フィルムと接着層の引張弾性率の差)
貼り合せる2枚の樹脂フィルムの25℃における引張弾性率と、接着層の25℃における引張弾性率との差は、各々独立に、4.0GPa以下が好ましく、3.5GPa以下がより好ましく、3.0GPa以下が更に好ましく、2.5GPa以下が更により好ましく、2.0GPa以下が更により一層好ましく、1.5GPa以下が特に好ましく、1.0GPa以下が最も好ましい。
上記光学フィルムは、2枚の樹脂フィルムを接着層により貼り合せてなる樹脂フィルムを有する場合、接着層を有する面とは反対側の面(他方の表面)にも接着層を有していてもよい。例えば、他方の表面に接着層を介して公知の偏光板保護フィルムを設けることもできる。樹脂フィルムの両面に接着層を設ける場合、それぞれの接着層を形成するための組成物は同じであっても異なっていてもよく、生産性の観点からは、両面とも同じ組成物から形成された接着層を有することが好ましい。
接着層を付与される面には、接着層付与前に、ケン化処理、コロナ放電処理及びプラズマ処理等の少なくともいずれかの表面処理を施してもよい。
ケン化処理としては、例えば、セルロースエステル系樹脂フィルムを、アルカリ鹸化処理することにより、ポリビニルアルコールのような偏光子の材料との密着性を高めることができる。
ケン化の方法については、特開2007-86748号公報の段落番号<0211>及び段落番号<0212>に記載されている方法を用いることができる。
例えば、セルロースエステル系樹脂フィルムに対するアルカリケン化処理は、フィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液及び水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。水酸化イオンの濃度は0.1~5.0モル/Lが好ましく、0.5~4.0モル/Lが更に好ましい。アルカリ溶液温度は、室温(25℃)~90℃が好ましく、40~70℃が更に好ましい。
アルカリケン化処理の代わりに、特開平6-94915号公報又は特開平6-118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。
接着剤を用いて樹脂フィルム同士を貼合する方法は、公知の方法を用いることができる。
例えば、水平方向又は鉛直方向に移動する帯状の長尺の第一の樹脂フィルム又は第二の樹脂フィルムの一方の面に、第二の樹脂フィルム又は第一の樹脂フィルムを同じ移動速度で接近させ、上記第一の樹脂フィルムと第二の樹脂フィルムとの間に位置するように、接着剤層となる接着剤を塗布し、ピンチロールで圧力をかけて二枚の樹脂フィルムを貼り合わせることができる。ここで、塗布される接着剤は、接着剤層を構成する材料を塗布できるように溶媒で希釈したものであってもよい。その場合、接着剤層中の溶媒を乾燥させ、二枚の樹脂フィルムの接着が完了する。この際の乾燥温度は、接着剤層中の溶媒種及び、二枚の樹脂フィルムの樹脂種及び厚みによるが、例えば接着剤層中の溶媒が水である場合、30~85℃であることが好ましく、更に好ましくは45~80℃である。
また、二枚の樹脂フィルムの、いずれか一方又は両方に接着剤層となる接着剤を塗布し、乾燥処理を施して接着剤層中に含まれる溶媒を除去し、樹脂フィルム上に接着剤層を形成した後、水平方向又は鉛直方向に移動する帯状の長尺の接着剤層を形成した樹脂フィルムの、接着剤層が形成された面に、もう一方の樹脂フィルムを同じ移動速度で接近させ、上記接着剤層を形成した二枚の樹脂フィルムの間に、接着剤層を膨潤させる溶媒を塗布し、ピンチロールで圧力をかけて二枚の樹脂フィルムを貼り合わせることができる。この場合、溶媒を乾燥させ、二枚の樹脂フィルムの接着が完了する。この際の乾燥温度は、溶媒種及び、二枚の樹脂フィルムの樹脂種及び厚みによるが、例えば溶媒が水である場合、30~85℃であることが好ましく、更に好ましくは45~80℃である。
(2)衝撃吸収層
本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも片面に衝撃吸収層を有する。衝撃吸収層は、外部から受ける衝撃を吸収する層である。例えば、上記光学フィルムをタッチパネルディスプレイの前面板として使用する場合に、ディスプレイ内部材の破損を防ぐことができる。
本発明の液晶パネルにおいて、リア側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’は、好ましくは4GPa(4.0×10MPa)以下であり、より好ましくは2GPa(2.0×10MPa)以下であり、さらに好ましく1.5GPa(1.50×10MPa)以下である。衝撃吸収性をより向上させる観点から、好ましくは1GPa(1.00×10MPa)以下であり、より好ましくは700MPa(7.0×10MPa)以下であり、さらに好ましくは100MPa(1.0×10MPa)以下であり、特に好ましくは50MPa(5.0×10MPa)以下である。貯蔵弾性率E’を上記の好ましい範囲とすることにより、衝撃による応力を分散し、所望の衝撃吸収性を発現することができる。貯蔵弾性率E’の下限は特に指定はないが、1MPa以上が実際的である。
本発明の液晶パネルにおいて、フロント側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’は、1GPa(1.00×10MPa)を超える。好ましくは1GPa(1.00×10MPa)超え4GPa(4.0×10MPa)以下であり、より好ましくは1GPa(1.00×10MPa)超え3GPa(3.0×10MPa)以下であり、さらに好ましくは1.2GPa(1.20×10MPa)超え2GPa(2.0×10MPa)以下である。貯蔵弾性率E’を上記の好ましい範囲とすることにより、衝撃による応力を分散しつつ、液晶パネルの変形を抑えることができ、より優れた衝撃吸収性を発現することができる。
本発明の液晶パネルにおいて、リア側偏光板の衝撃吸収層とフロント側偏光板の衝撃吸収層はそれぞれ異なるものであって、各衝撃吸収層の25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’が、下記式の関係を満たす。
E’(フロント側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’)-E’(リア側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’)>0
上記フロント側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’から上記リア側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’を引いた差であるE’-E’は、衝撃吸収性をより向上させる観点から、400MPa(4.0×10MPa)以上が好ましく、1.1GPa(1.10×10MPa)以上がより好ましい。また、上限値は、4.0GPa以下が好ましく、2.0GPa(2.0×10MPa)以下がより好ましい。
本発明の液晶パネルにおいて、フロント側偏光板に用いられる衝撃吸収層の25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率は1GPa(1.00×10MPa)を超え、リア側偏光板に用いられる衝撃吸収層の25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’は1GPa(1.00×10MPa)以下であることが好ましい。
衝撃吸収層は、25℃において、周波数10-1~1015Hz(1.0×10-1~1.0×1015Hz)の範囲にtanδの極大値を有することが好ましく、10~1015Hz(1.0×10~1.0×1015Hz)の範囲に極大値を有することがより好ましく、10~1015Hz(1.0×10~1.0×1015Hz)の範囲に極大値を有することが更に好ましく、10~1010Hz(1.0×10~1.0×1010Hz)の範囲に極大値を有することが特に好ましい。この場合、25℃において、周波数10-1~1015Hzの範囲にtanδの極大値を少なくとも1つ有していればよく、周波数10-1~1015Hzの範囲にtanδの極大値を2つ以上有していてもよい。また、周波数10-1~1015Hzの範囲外の周波数の範囲に更にtanδの極大値を有していてもよく、この極大値が衝撃吸収層のtanδの最大値であってもよい。
本発明の液晶パネルにおいて、フロント側偏光板の衝撃吸収層の25℃における、上記好ましい周波数の範囲におけるtanδの極大値は、0.1以上であることが好ましく、衝撃吸収性をより向上させる観点から、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。上記好ましい下限値以上とすることにより、衝撃吸収層が変形することで衝撃による応力がより分散し、より優れた衝撃吸収性が得られると考えられる。フロント側偏光板の衝撃吸収層の上記tanδの上限値に特に制限はないが、4.0以下であることが実際的である。
一方で、本発明の液晶パネルにおけるリア側偏光板のように、上記光学フィルムが液晶パネルのリア側偏光板に使用される場合、リア側偏光板の衝撃吸収層の25℃におけるtanδは、10-1~10Hz(1.0×10-1~1.0×10Hz)の範囲において、3.0以下とすることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.3以下であることが更に好ましい。リア側偏光板の衝撃吸収層の上記tanδの下限値に特に制限はないが、0.1以上であることが実際的である。
[動的粘弾性測定による貯蔵弾性率の測定及びtanδの算出]
本発明では、動的粘弾性測定装置を用いた引張変形モードにより、上記の25℃、周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’を求める。また、衝撃吸収層の25℃における周波数とtanδの関係についても同様に、動的粘弾性測定装置を用いた引張変形モードにより周波数-tanδのグラフを作成し、tanδの極大値及び極大値を示す周波数を求める。
具体的には、下記に記載の方法による。
<試料作製方法>
後述する衝撃吸収層形成用組成物等の、衝撃吸収素材(衝撃吸収層材料又は衝撃吸収層構成材料とも称す)を溶剤に溶解、又は溶融させて得られた塗布液を、剥離処理が施された剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)シートの剥離処理面に、乾燥後の厚みが40μmになるよう塗布、乾燥させた後、剥離PETシートから衝撃吸収層を剥離し衝撃吸収層の試験片を作製する。
<測定方法>
動的粘弾性測定装置((株)アイティー計測制御社製、商品名:DVA-225)を用いて、あらかじめ温度25℃、相対湿度60%雰囲気下で2時間以上調湿した上記試験片について、「ステップ昇温・周波数分散」モードにおいて下記条件において測定を行った後、「マスターカーブ」編集にて25℃における周波数に対する、tanδ、貯蔵弾性率及び損失弾性率のマスターカーブを得る。得られたマスターカーブからtanδの極大値及び極大値を示す周波数を求める。
試料:5mm×50mm
試験モード:引張変形モード
つかみ間距離:20mm
設定歪み:0.10%
測定温度:-100℃~40℃
昇温条件:2℃/min
(衝撃吸収層構成材料)
25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’が上述の特定の値または関係を満たす、衝撃吸収層を構成する衝撃吸収層構成材料としては、上記光学フィルムをタッチパネルの前面板又はタッチパネルディスプレイの前面板として用いたり、偏光板保護フィルムとして用いた場合に、表示内容の視認性を確保できる透明性を有し、かつ外部からの衝撃に由来するディスプレイ内部材の破損を防ぐことができるものであれば、樹脂から構成されていてもよいし、エラストマー(油展ゴムを含む)から構成されていてもよい。
本発明の液晶パネルを構成するフロント側偏光板の衝撃吸収層及びリア側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’及びtanδは、衝撃吸収層構成材料の種類、後述の添加剤、配合比等を調製することにより、所望の値を有するように調製することができる。
上記樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂((メタ)アクリル樹脂とも称し、(メタ)アクリル酸エステル樹脂等を意味する。)、並びにこれらの樹脂の変性樹脂等が挙げられる。ウレタン樹脂としては、ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂等が挙げられる。
上記樹脂のなかでも、(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
上記エラストマーとしては、共役ジエンのブロック(共)重合体及びその水素添加物、(メタ)アクリル系ブロック(共)重合体(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステルをブロック単位として有する(共)重合体を意味する。)、スチレン系ブロック(共)重合体及びその水素添加物(芳香族ビニル化合物のポリマー(好ましくはポリスチレン)をブロック単位として有する(共)重合体及びその水素添加物であって、例えば、芳香族ビニル化合物のポリマーと共役ジエンを含むポリマーとのブロック共重合体及び芳香族ビニル化合物のポリマーと共役ジエンを含むポリマーとのブロック共重合体の水素添加物)、エチレン-α-オレフィン系共重合体、極性基変性オレフィン系共重合体、極性基変性オレフィン系共重合体と金属イオン及び金属化合物のうちの少なくとも1種とよりなるエラストマー、アクロルニトリル-ブタジエン系ゴム等のニトリル系ゴム、ブチルゴム、アクリル系ゴム、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPAE)及びジエン系エラストマー(1,2-ポリブタジエン等)などの熱可塑性エラストマー、シリコーン系エラストマー、並びに、フッ素系エラストマーなどを挙げることができる。
ただし、上記共役ジエンのブロック(共)重合体は、ポリスチレンブロックを含むことはない。
上記エラストマーとしては、(メタ)アクリル系ブロック(共)重合体又はスチレン系ブロック(共)重合体及びその水素添加物が好ましい。(メタ)アクリル系ブロック(共)重合体としては、ポリメタクリル酸メチルとポリn-ブチルアクリレートとのブロック共重合体(「PMMA-PnBAブロック共重合体」とも呼ぶ)等が好ましく挙げられる。スチレン系ブロック(共)重合体及びその水素添加物としては、イソプレン及びブタジエンの少なくとも一方を含むポリマーとポリスチレンとのブロック共重合体並びにその水素添加物等が好ましく挙げられる。上記イソプレン及びブタジエンの少なくとも一方を含むポリマーは、イソプレン及びブタジエン以外の構成成分として、例えば、ブテンを含んでいてもよい。
なかでも、上記エラストマーは、(メタ)アクリル系ブロック(共)重合体又はスチレン系ブロック(共)重合体の水素添加物がより好ましく、PMMA-PnBAブロック共重合体、又は、イソプレン及びブタジエンの少なくとも一方を含むポリマーとポリスチレンとのブロック共重合体の水素添加物がさらに好ましい。
衝撃吸収層が含み得る上記の樹脂又はエラストマーは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、クラリティLA1114、クラリティLA2140E、クラリティLA2250、クラリティLA2330、クラリティLA4285、ハイブラー5127、ハイブラー7311F、セプトン2104及びセプトン2063(いずれもクラレ社製、商品名)などが挙げられる。
衝撃吸収層は上記の樹脂及びエラストマーのうちの少なくとも一種を用いて構成されることが好ましい。
上記の樹脂又はエラストマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性と上記貯蔵弾性率とのバランスの観点から、10,000~1,000,000が好ましく、50,000~500,000がより好ましい。
これらの樹脂又はエラストマーは、衝撃吸収層を構成する場合、これらの樹脂又はエラストマー(重合体)のみを構成材料とする(衝撃吸収層を構成する固形分中の含有量を100質量%とする)こともできる。
また、後記のように、上記の樹脂又はエラストマーに加え、各種添加剤を用いて衝撃吸収層を構成する場合、衝撃吸収層における上記の貯蔵弾性率を考慮すると、衝撃吸収層を構成する固形分中、上記の樹脂又はエラストマーの含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、上記の樹脂又はエラストマーの含有量に特に制限はないが、例えば、99.9質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましい。
上記の樹脂又はエラストマーと共に後記重合性基含有化合物及び重合開始剤を用いて衝撃吸収層を形成する場合、及び、上記の樹脂又はエラストマーを用いずに後記重合性基含有化合物及び重合開始剤を用いて衝撃吸収層を形成する場合の、これらの構成材料(樹脂、エラストマー、重合性基含有化合物及び重合開始剤)の全固形分中における含有量は、上記の樹脂又はエラストマーの含有量の記載を適用することができる。
また、上記の樹脂又はエラストマーに加え、軟化剤、可塑剤、滑剤、架橋剤、架橋助剤、光増感剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、難燃剤、防菌剤、防かび剤、耐候剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、造核剤、顔料、染料、有機フィラー、無機フィラー、シランカップリング剤及びチタンカップリング剤等の添加剤、重合性基含有化合物、重合開始剤又は上記の樹脂又はエラストマー以外の重合体(以下、その他の重合体とも称す。)を含有する組成物を構成材料として用い、衝撃吸収層を形成することもできる。即ち、衝撃吸収層は、樹脂組成物又はエラストマー組成物を用いて形成されてもよい。
以下、衝撃吸収層の形成に用いられる組成物を、衝撃吸収層形成用組成物と称す。
衝撃吸収層に添加される無機フィラーは、特に限定されないが、例えば、シリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子、マイカ及びタルクを使用することができ、これらは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。衝撃吸収層への分散性の点から、シリカ粒子が好ましい。
無機フィラーの表面は、衝撃吸収層を構成する樹脂との親和性を高めるため、無機フィラーに結合又は吸着し得る官能基を有する表面修飾剤で処理されてもよい。このような表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム及びジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤、並びに、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が挙げられる。
無機フィラーの含有量は、衝撃吸収層における上記の貯蔵弾性率とtanδとのバランスを考慮すると、衝撃吸収層を構成する固形分中、1~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、5~15質量%が更に好ましい。無機フィラーのサイズ(平均一次粒径)は、10nm~100nmが好ましく、更に好ましくは15~60nmである。無機フィラーの平均一次粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。無機フィラーの粒径が上記の好ましい下限値以上であると、貯蔵弾性率の向上効果が得られ、上記の好ましい上限値以下であるとヘイズ上昇の原因となる場合がない。無機フィラーの形状は、板状、球形及び非球形のいずれであってもよい。
無機フィラーの具体的な例としては、ELECOM V-8802(日揮触媒化成(株)製、平均一次粒径12nmの球形シリカ微粒子)、ELECOM V-8803(日揮触媒化成(株)製、異形シリカ微粒子)、MIBK-ST(日産化学工業(株)製、平均一次粒径10~20nmの球形シリカ微粒子)、MEK-AC-2140Z(日産化学工業(株)製、平均一次粒径10~20nmの球形シリカ微粒子)、MEK-AC-4130(日産化学工業(株)製、平均一次粒径40~50nmの球形シリカ微粒子)、MIBK-SD-L(日産化学工業(株)製、平均一次粒径40~50nmの球形シリカ微粒子)及びMEK-AC-5140Z(日産化学工業(株)製、平均一次粒径70~100nmの球形シリカ微粒子)等が挙げられる。
衝撃吸収層に添加される粘着付与剤は、特に限定されないが、例えば、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、石油化学樹脂、水添石油化学樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂及びアルキルフェノール樹脂を使用することができる。これらの粘着付与剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
粘着付与剤の含有量は、衝撃吸収層における上記の貯蔵弾性率とtanδとのバランスを考慮すると、衝撃吸収層を構成する固形分中、1~80質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましい。
粘着付与剤の具体的な例としては、スーパーエステルA75、同A115及び同A125(以上、いずれも荒川化学工業社製のロジンエステル樹脂)、ペトロタック60、同70、同90、同100、同100V及び同90HM(以上、いずれも東ソー社製の石油化学樹脂)、YSポリスターT30、同T80、同T100、同T115、同T130、同T145及び同T160(以上、いずれもヤスハラケミカル社製のテルペンフェノール樹脂)、並びに、YSレジンPX800、同PX1000、同PX1150及び同PX1250(以上、いずれもヤスハラケミカル社製のテルペン樹脂)等が挙げられる。
衝撃吸収層に添加される軟化剤は、特に限定されないが、例えば、ナフテン系、パラフィン系及び芳香族系などの鉱物油系、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、梛子油、落花生油、木ろう、パインオイル及びオリーブ油などの植物油系、合成系などの各種ゴム用、並びに、樹脂用軟化剤のうちの少なくとも1種を使用することができる。上記の軟化剤の数平均分子量は、ブリードアウトが抑えられる点から、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、べたつき感が抑えられる点から、1000以下が好ましく、800以下がより好ましい。
軟化剤の含有量は、衝撃吸収層における上記の貯蔵弾性率とtanδとのバランスを考慮すると、衝撃吸収層を構成する固形分中、70質量%以下が好ましく、10質量%以上50質量%以下がより好ましい。
軟化剤の具体的な例としては、モレスコホワイトP-40、同P-55、同P-60、同P-70、同P-80、同P-100、同P-120、同P-150、同P-200、同P-260及び同P-350P(以上、いずれもMORESCO社製のパラフィン系オイル)、ダイアナプロセスオイルNS-24、同NS-100、同NM-26、同NM-68、同NM-150、同NM-280、同NP-24、同NU-80及び同NF-90(以上、いずれも出光興産社製のナフテン系オイル)並びにダイアナプロセスオイルAC-12、同AC-460、同AE-24、同AE-50、同AE-200、同AH-16及び同AH-58(以上、いずれも出光興産社製の芳香族系オイル)等が挙げられる。
衝撃吸収層の形成に用いられる樹脂組成物又はエラストマー組成物等の衝撃吸収層形成用組成物に含まれ得る重合性基含有化合物としては、重合性基含有ポリマー、重合性基含有オリゴマー及び重合性基含有モノマーのいずれであってもよく、重合性基を有するエラストマー(ゴムを含む)であってもよい。具体的には、アートキュアRA331MB及び同RA341(以上、いずれも根上工業社製、商品名)、クラプレンUC-102M及び同203M(以上、いずれもクラレ社製、商品名)、セルムエラストマーSH3400M(アドバンストソフトマテリアルズ社製、商品名)等の市販品、並びに、後述のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物が挙げられる。
衝撃吸収層の形成に用いられる樹脂組成物又はエラストマー組成物に、重合性基含有化合物が含まれる場合、この組成物は更に重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤の具体例としては、後述の重合開始剤が挙げられる。
なお、衝撃吸収層は、上記の樹脂又はエラストマーを含有せず、重合性基含有化合物及び重合開始剤を少なくとも有する衝撃吸収層形成用組成物を用いて形成されることも好ましい。なかでも、重合性基としてラジカル重合性基を有するポリイソプレン等のゴムと重合開始剤とを有する組成物を用いて、硬化させて得られる衝撃吸収層が好ましく挙げられる。
(衝撃吸収層の厚み)
衝撃吸収層の厚みは、衝撃吸収性をより向上させる観点から1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上80μm以下がより好ましく、10μm以上80μm以下が更に好ましい。
上記衝撃吸収層の厚みは、フロント側偏光板の衝撃吸収層及びリア側偏光板の衝撃吸収層のいずれにも好ましく適用される。
本発明の液晶パネルにおいては、フロント側偏光板の衝撃吸収層及びリア側偏光板の衝撃吸収層の少なくとも一方の衝撃吸収層の厚みが、上記好ましい範囲を満たすことが好ましく、両方の衝撃吸収層の厚みが、上記好ましい範囲を満たすことがより好ましい。
なかでも、本発明の液晶パネルにおけるリア側偏光板の衝撃吸収層の厚みは、衝撃吸収性をより向上させる観点から、10μm越え80μm未満であることが更に好ましく、20μm以上60μm以下であることが特に好ましい。上記好ましい範囲内とすることにより、衝撃吸収層の衝撃吸収性を発現しつつ液晶パネルの変形を抑えることで、より優れた衝撃吸収性が得られると考えられる。
(衝撃吸収層の形成方法)
衝撃吸収層の形成方法には特に限定はなく、例えば、コーティング法、キャスト法(無溶剤キャスト法及び溶剤キャスト法)、プレス法、押出法、射出成形法、注型法及びインフレーション法等が挙げられる。詳細には、上記衝撃吸収層構成材料を溶媒に溶解若しくは分散させた液状物、又は上記衝撃吸収材料を構成する成分(具体的には、上記樹脂又はエラストマー等)の溶融液を調製し、次いで、この液状物又は溶融液を樹脂フィルムに塗布し、その後、必要により溶媒の除去等をすることにより、樹脂フィルム(又はHC層付き樹脂フィルムの樹脂フィルム)上に衝撃吸収層を作製することができる。
上記溶媒は特に制限されず、例えば、HC層形成用硬化性組成物における溶媒の記載を適用することができ、メチルイソブチルケトン及びトルエン等が好ましく挙げられる。
また、溶媒と固形分との配合比についても、特に制限されず、適宜調整することができる。例えば、溶媒と固形分の合計量に対し、固形分の割合は10~90質量%とすることができる。
また、剥離処理が施された剥離シートの剥離処理面に衝撃吸収層材料を上記と同様に塗布、乾燥し、衝撃吸収層を有するシートを形成し、このシートの衝撃吸収層を樹脂フィルムと貼り合せることで、樹脂フィルム(又はHC層付き樹脂フィルムの樹脂フィルム)上に衝撃吸収層を作製することもできる。
衝撃吸収層が樹脂で構成されている場合、衝撃吸収層は、架橋されていない樹脂により構成されていてもよいし、少なくとも一部が架橋された樹脂により構成されていてもよい。樹脂を架橋する方法については特に限定はなく、例えば、電子線照射、紫外線照射、及び架橋剤(例えば、有機過酸化物等)を用いる方法から選ばれる手段が挙げられる。樹脂の架橋を電子線照射により行う場合は、得られた架橋前の衝撃吸収層に対し、電子線照射装置により電子線を照射することにより、架橋を形成することができる。また、紫外線照射の場合は、得られた架橋前の衝撃吸収層について、紫外線照射装置により紫外線を照射することにより、必要に応じて配合された光重合開始剤等の光増感剤の効果によって架橋を形成することができる。更に、架橋剤を用いる場合は、得られた架橋前の衝撃吸収層について、通常、窒素雰囲気下等、空気の存在しない雰囲気で加熱することにより、必要に応じて配合された有機過酸化物等の架橋剤、更には架橋助剤によって架橋を形成することができる。
上記重合性基含有化合物を含有する場合には、電子線照射、紫外線照射及び架橋剤を用いるいずれかの方法による架橋を行い、衝撃吸収層を形成することが好ましい。
(衝撃吸収層の保護フィルム層)
上記光学フィルムは、衝撃吸収層の樹脂フィルムとは反対側の面に、剥離可能な保護フィルム層を設けることが好ましい。かかる保護フィルム層を有することにより、使用前の光学フィルムが有する衝撃吸収層の破損並びに埃及び汚れ等の付着を防ぐことができ、使用時には上記保護フィルム層を剥がすことで使用することができる。
なお、上記衝撃吸収層の保護フィルム層は、使用時には剥離して使用する点で、構成部材として製品中に組み込まれた状態で使用される偏光板の保護フィルム等とは、異なるものを意味する。
保護フィルム層と衝撃吸収層との間には、保護フィルム層の剥離を容易にするために、剥離層を設けることができる。かかる剥離層を設ける方法は、特に限定されるものではなく、例えば、保護フィルム層及び衝撃吸収層のうちの少なくともいずれかの表面に剥離コート剤を塗布することにより設けることができる。剥離コート剤の種類については特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン系コート剤、無機系コート剤、フッ素コート剤及び有機無機ハイブリッド系コート剤が挙げられる。
保護フィルム層と剥離層とを備える光学フィルムは、通常は保護フィルム層表面に剥離層を設けた後、衝撃吸収層の表面に積層することにより得ることができる。この場合、上記剥離層は保護フィルム層表面ではなく、衝撃吸収層の表面に設けてもよい。
(3)ハードコート層(HC層)
本発明の液晶パネルに用いられる光学フィルムは、図2に示すように、樹脂フィルム1Aの衝撃吸収層2Aが配されたのとは逆面にハードコート層(HC層、3A)を有してもよい。このハードコート層を有する上記光学フィルムは、フロント側偏光板の保護フィルム又はタッチパネルの前面板として用いてもよい。この場合、ハードコート層が視認側に配され、かつ、衝撃吸収層が偏光子と対向している。すなわち、フロント側偏光板としては、視認側から、ハードコート層、樹脂フィルム、衝撃吸収層及び偏光子の順に配された積層構造を有し、タッチパネルの前面板としては、視認側から、ハードコート層、樹脂フィルム、衝撃吸収層及びタッチセンサーフィルムの順に配された積層構造を有している。
本発明におけるHC層は、分子中に重合性基を有する含ポリシロキサン化合物と、分子中に重合性基を有する含フッ素化合物と、これらの化合物以外の、後述の分子中に重合性基を有する重合性化合物とを重合硬化してなることが好ましく、これらの重合性基がラジカル重合性基であることがより好ましい。これにより、HC層中において、含ポリシロキサン化合物及び含フッ素化合物がHC層を形成する重合性化合物と結合した状態で存在し、より優れた防汚性を付与することができる。HC層の形成に用いる含ポリシロキサン化合物及び含フッ素化合物が重合性基を有する場合、後述する含ポリシロキサン化合物及び含フッ素化合物中の重合性基は反応して結合を形成した状態でHC層中に存在することとなる。
なお、HC層が後述する2層以上の積層構造である場合には、含ポリシロキサン化合物及び含フッ素化合物は、樹脂フィルムから最も離れたHC層が少なくとも含有することが好ましく、樹脂フィルムから最も離れたHC層のみが含有することがより好ましい。
以下、HC層の具体的態様を説明するが、本発明は下記態様に限定されるものではない。
[含フッ素化合物]
本発明における含フッ素化合物は、含ポリシロキサン化合物と併用することでHC層に耐擦性を付与できるものであれば、特に制限されることなく、分子中にフッ素原子を有する化合物を用いることができる。含フッ素化合物としては、防汚剤の性質を示す含フッ素防汚剤が好ましく用いられる。
本発明において、含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい。含フッ素化合物は、HC層中でその他の成分(例えば、含ポリシロキサン化合物、樹脂の構成成分である重合性モノマー及び樹脂)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であればよく、好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基及びアミノ基等が挙げられる。その中でもラジカル重合性基が好ましく、中でもアクリロイル基又はメタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物は、フッ素原子を含まない化合物を共重合成分とする、ポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
上記含フッ素防汚剤は、下記一般式(F)で表されるフッ素系化合物が好ましい。
一般式(F):
(R)-[(W)-(R
(式中、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表し、Wは単結合又は連結基を表し、Rは重合性不飽和基を表す。nは1~3の整数を表す。mは1~3の整数を表す。ただし、Wにおける連結基の価数は(n+1)価である。)
一般式(F)において、Rは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線及び電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる不飽和結合を有する基(すなわち、ラジカル重合性基)であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基及びアリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基、並びにこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換された基が好ましく用いられる。
一般式(F)において、Rは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されたフルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦性の観点では、R中のフッ素原子の含有率は高いほうが好ましい。
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1~20の基が好ましく、より好ましくは炭素数1~10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば-CFCF、-CH(CFH、-CH(CFCF及び-CHCH(CFH)であっても、分岐構造(例えば-CH(CF、-CHCF(CF及び-CH(CH)CFCF及び-CH(CH)(CFCFH)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価の基でも2価又は3価の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば-CHOCHCFCF、-CHCHOCHH、-CHCHOCHCH17、-CHCHOCFCFOCFCFH及びフッ素原子を4個以上有する炭素数4~20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、-(CFO)-(CFCFO)-、-[CF(CF)CFO]―[CF(CF)]-、-(CFCFCFO)-及び-(CFCFO)-などが挙げられる。
上記p及びqはそれぞれ独立に0~20の整数を表す。ただしp+qは1以上の整数である。
p及びqの総計は1~83が好ましく、1~43がより好ましく、5~23が更に好ましい。
上記含フッ素防汚剤は、耐擦性に優れるという観点から-(CFO)-(CFCFO)-で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
本発明においては、含フッ素防汚剤は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
一般式(F)において、Wは単結合又は連結基を表す。Wにおける連結基としては、例えばアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアルキレン基、並びにこれらの基が組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基(-O-)、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基及びスルホンアミド基等、並びにこれらの基が組み合わさった官能基を有してもよい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
含フッ素防汚剤のフッ素原子含有量には特に制限はないが、20質量%以上が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~70質量%が更に好ましい。
好ましい含フッ素防汚剤の例としては、ダイキン化学工業(株)製のR-2020、M-2020、R-3833、M-3833及びオプツールDAC(以上商品名)並びに大日本インキ(株)製のメガファックF-171、F-172、F-179A、RS-78、RS-90、ディフェンサMCF-300及びMCF-323(以上商品名)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
耐擦性の観点から、一般式(F)において、nとmの積(n×m)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
一般式(F)において、nとmが同時に1である場合について、好ましい態様の具体例として下記一般式(F-1)~(F-3)が挙げられる。
一般式(F-1):
f2(CFCF22CHCH21OCOCR11=CH
(式中、Rf2は、フッ素原子、又は炭素数が1~10であるフルオロアルキル基を示し、R11は水素原子又はメチル基を示し、R21は単結合又はアルキレン基を示し、R22は単結合又は2価の連結基を示し、pは重合度を示す整数であり、重合度pはk(kは3以上の整数)以上である。)
22が2価の連結基を表す場合、この2価の連結基としては、前述のWにおける2価の連結基と同様のものが挙げられる。
一般式(F-1)におけるフッ素原子を含むテロマー型(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類等が挙げられる。
上記の一般式(F-1)で表される化合物は、合成の際にテロメリゼイションを用いると、テロメリゼイションの条件及び反応混合物の分離条件等によっては、一般式(F-1)の基であるRf2(CFCF22CHCH21O-のpがそれぞれk、k+1、k+2、・・・等である、複数の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むことがある。
一般式(F-2):
F(CF-CH-CHX-CH
(式中、qは1~20の整数、X及びYは(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基を示し、X及びYの少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
一般式(F-2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端にトリフルオロメチル基(-CF)をもつ炭素数1~20のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。
耐擦性及び化合物の製造の容易性の点から、qは6~20の整数が好ましく、8~10の整数がより好ましい。炭素数8~10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、他の鎖長(炭素数)のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても、摩擦係数の低減において優れた効果を発現し、耐擦性に優れる。
一般式(F-2)で表される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、1-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13-ヘンエイコサフルオロトリデカン、2-(メタ)アクリロイルオキシ-1-ヒドロキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13-ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2-ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13-ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。本発明においては、1-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13-ヘンエイコサフルオロトリデカンが好ましい。
一般式(F-3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOCOCR=CH
(式中Rは水素原子又はメチル基であり、sは1~20の整数であり、rは1~4の整数を表す。)
上記一般式(F-3)で表されるフッ素原子含有単官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(FG-3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させることにより得ることができる。
一般式(FG-3):
F(CFO(CFCFO)CFCHOH
(一般式(FG-3)中、sは1~20の整数の整数であり、rは1~4の整数を表す。)
上記一般式(FG-3)表されるフッ素原子含有アルコール化合物の具体例としては、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサオクタン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12-テトラオキサトリデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12-テトラオキサヘキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサヘキサデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサヘプタデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15-ペンタオキサノナデカン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサイコサン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15,18-ヘキサオキサドコサン-1-オール、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサトリコサン-1-オール及び1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12,15,18,21-ヘプタオキサペンタコサン-1-オール等を挙げることができる。
これらは市販品を入手でき、その具体例としては、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサヘプタン-1-オール(商品名「C5GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサデカン-1-オール(商品名「C7GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H-ペルフルオロ-3,6-ジオキサデカン-1-オール(商品名「C8GOL」、エクスフロアー社製)、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデカン-1-オール(商品名「C10GOL」、エクスフロアー社製)及び1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12-テトラオキサヘキサデカン-1-オール(商品名「C12GOL」、エクスフロアー社製)等が挙げられる。
本発明においては、1H,1H-ペルフルオロ-3,6,9,12-テトラオキサトリデカン-1-オールを用いることが好ましい。
また、上記一般式(FG-3)で表されるフッ素原子含有アルコール化合物と反応させる(メタ)アクリル酸ハライドとしては、(メタ)アクリル酸フルオライド、(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド及び(メタ)アクリル酸アイオダイドを挙げることができる。入手しやすさ等の観点から(メタ)アクリル酸クロライドが好ましい。
以下に一般式(F-3)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお、一般式(F-3)で表される好ましい具体例は、特開2007-264221号公報にも記載がある。
(b-1):FOCOCOCFCHOCOCH=CH
(b-2):FOCOCOCFCHOCOC(CH)=CH
更に一般式(F-3)で表される化合物とは別に、下記一般式(F-3)’で表される化合物も好ましく用いることができる。
一般式(F-3)’:
f3-[(O)(O=C)(CX-CX=CX
(式中、X及びXは、H又はFを表し、XはH、F、CH又はCFを表し、X及びXは、H、F又はCFを表し、a、b及びcは0又は1を表し、Rf3は炭素数18~200であって、エーテル結合を含む含フッ素有機基を表す。)
上記一般式(F-3)’で表される化合物は、Rf3基中に、一般式(FG-3)’:-(CX CFCFO)- (式中、XはF又はH)で示される繰り返し単位を6個以上有する、含フッ素不飽和化合物である。
上記一般式(F-3)’表される含フッ素ポリエーテル化合物の例としては、
(c-1) Rf3-[(O)(O=C)-CX=CX
(c-2) Rf3-[(O)(O=C)-CX=CX
(c-3) Rf3-[(O)(O=C)-CF=CH
などを挙げることができる((c-1)~(c-3)における各記号の定義は一般式(FG-3)’と同義である。)。
上記含フッ素ポリエーテル化合物の重合性不飽和基としては、以下の構造を含むものを好ましく用いることができる。
また、上記一般式(F-3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物は、重合性不飽和基を複数個有していてもよい。
本発明においては、-O(C=O)CF=CHの構造を有する化合物が重合(硬化)反応性が特に高く、効率よく硬化物を得ることができる点で好ましい。
上記一般式(F-3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物は、Rf3基中に一般式(FG-3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖を繰り返し単位で6個以上含んでいることが重要であり、これによって耐擦性を付与できる。
また上記含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上の化合物を含む混合物でもよく、混合物の形で使用する場合、上記繰り返し単位が6個未満の含フッ素不飽和化合物と6個以上の含フッ素不飽和化合物との分布において、ポリエーテル鎖の繰り返し単位が6個以上の含フッ素不飽和化合物の存在比率が最も高い混合物とすることが好ましい。
一般式(FG-3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖の繰り返し単位は6個以上であり、10個以上が好ましく、18個以上がより好ましく、20個以上がさらに好ましい。これによって、動摩擦係数を低減し、耐擦性を向上することができる。また、含フッ素ポリエーテル鎖はRf3基の末端にあっても、鎖中に存在していてもよい。
f3基は具体的には、下記一般式(c-4)で表される基が好ましい。
一般式(c-4):
-(CX CFCFO)-(R
(式中、Xは式(FG-3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖中のXと同義であり、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、含フッ素アルキル基、エーテル結合を含むアルキル基又はエーテル結合を含む含フッ素アルキル基を表し、Rは二価以上の有機基を表し、tは6~66の整数を表し、eは0又は1を表す。)
つまり、Rf3基は、二価以上の有機基Rを介して、反応性の炭素-炭素二重結合と結合し、更に末端にRを有する含フッ素有機基であることが好ましい。
は一般式(FG-3)’で表される含フッ素ポリエーテル鎖を反応性の炭素-炭素二重結合に結合させることができる有機基であれば、如何なるものでもよい。例えば、アルキレン基、含フッ素アルキレン基、エーテル結合を含むアルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基が挙げられる。中でも含フッ素アルキレン基及びエーテル結合を含む含フッ素アルキレン基の少なくともいずれかが、透明性及び低屈折率性の点で好ましい。
一般式(F-3)’で表される含フッ素ポリエーテル化合物の具体例としては、再公表特許WO2003/022906号公報に挙げられる化合物などが好ましく用いられる。本発明においては、CH=CF-COO-CHCFCF-(OCFCFCF-OCを特に好ましく用いることができる。
一般式(F)において、nとmが同時に1でない場合については、好ましい態様として一般式(F-4)及び一般式(F-5)が挙げられる。
一般式(F-4):
(Rf1)-[(W)-(R
(一般式(F-4)中、Rf1は(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表し、Wは連結基を表し、Rは重合性不飽和基を表す。nは1~3の整数を表し、mは1~3の整数を表し、nとmは同時に1であることはない。)
撥水撥油性に優れると共に撥水撥油性の持続(防汚耐久性)に優れるという観点からnが2又は3、mが1~3の整数であることが好ましく、nが2又は3、mが2又は3であることがより好ましく、nが3、mが2又は3であることが更に好ましい。
f1は一価~三価のものを用いることができる。Rf1が一価の場合、末端基としては(C2n+1)-、(C2n+1O)-、(XC2nO)-、(XC2n+1)-(式中Xは水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、nは1~10の整数)であることが好ましい。具体的にはCFO(CO)CF-、CO(CFCFCFO)CFCF-、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)-及びF(CF(CF)CFO)CF(CF)-等を好ましく使用することができる。
ここでpの平均値は0~50である。好ましくは3~30、より好ましくは3~20、更に好ましくは4~15である。
f1が二価の場合は、-(CFO)(CO)CF-、-(CFO(CO)(CF-、-CFO(CO)CF-、-CO(CO)-、-CF(CF)(OCFCF(CF))OC2tO(CF(CF)CFO)CF(CF)-及び-(CF(CF)CFO)CF(CF)-等を好ましく使用することができる。
ここで、式中p、q、r、sの平均値は0~50である。好ましくは3~30、より好ましくは3~20、最も好ましくは4~15である。tは2~6の整数である。
一般式(F-4)で表される化合物の好ましい具体例及び合成方法は国際公開第2005/113690号公報に記載されている。
以下では、F(CF(CF)CFO)CF(CF)-においてpの平均値が6~7のものを“HFPO-”と記載し、-(CF(CF)CFO)CF(CF)-においてpの平均値が6~7のものを“-HFPO-”と記載し、一般式(F-4)の具体的化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
(d-1):HFPO-CONH-C-(CHOCOCH=CHCHCH
(d-2):HFPO-CONH-C-(CHOCOCH=CH
(d-3):HFPO-CONH-CNHCHとトリメチロールプロパントリアクリレートの1:1マイケル付加重合物
(d-4):(CH=CHCOOCHH-C-CONH-HFPO-CONH-(CHOCOCH=CH
(d-5):(CH=CHCOOCH-C-CONH-HFPO-CONH-C-(CHOCOCH=CH
更に、一般式(F-4)で表される化合物として下記一般式(F-5)で表される化合物を用いることもできる。
一般式(F-5):
CH=CX-COO-CHY-CH-OCO-CX=CH
(式中X及びXは、水素原子又はメチル基を示し、Yは、フッ素原子を3個以上有する炭素数2~20のフルオロアルキル基又はフッ素原子を4個以上有する炭素数4~20のフルオロシクロアルキル基を示す。)
本発明において、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物は、複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していてもよい。含フッ素防汚剤が複数の(メタ)アクリロイルオキシ基を有していることにより、硬化させた際に、三次元網目構造となり、ガラス転移温度が高く、防汚剤の転写性が低く、また汚れの繰り返しの拭取りに対する耐久性を向上させることができる。更には、耐熱性及び耐候性等に優れたHC層を得ることができる。
上記一般式(F-5)で表される化合物の具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,2-トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ノナデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-3-トリフルオロメチル-4,4,4-トリフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-1-メチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸-1-メチル-2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルエチレングリコール等を好ましく挙げることができ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。このようなジ(メタ)アクリル酸エステルを調製するには、特開平6-306326号公報に挙げられるような公知の方法により製造できる。本発明においては、ジアクリル酸-2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコールが好ましく用いられる。
本発明においては、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルオキシ基である化合物として、一分子中に複数個の(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を有している化合物であってもよい。
(含フッ素化合物の分子量)
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
本発明で用いられる含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。上記好ましい下限値以上であると、防汚剤のHC層中での表面移行性が高くなるため好ましい。また、上記好ましい上限値未満であると、HC層形成用硬化性組成物を塗布してから硬化する工程の間に、含フッ素化合物の表面移行性が妨げられず、HC層表面への偏在がより均一に起こりやすくなり、耐擦性及び膜硬度が向上するため好ましい。また、含フッ素化合物は重量平均分子量に関して多峰性であってもよい。
(含フッ素化合物の添加量)
含フッ素化合物の添加量は、HC層形成用硬化性組成物中の全固形分に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~5質量%が更に好ましく、0.5~2質量%が特に好ましい。添加量が上記好ましい上限値以上であると、スチールウールに対する摩擦係数を低減でき、耐擦性がより向上される。また、添加量が上記好ましい下限値以下であると、HC層形成用硬化性組成物中の重合性化合物(HC層を形成する際の樹脂成分)との混合が不十分な含フッ素化合物が表面に析出することがなく、HC層が白化したり表面に白粉を生じたりすることが抑制されるため好ましい。
なお、HC層が後述する2層以上の積層構造である場合には、含フッ素化合物及び含ポリシロキサン化合物を含有するHC層を形成する、HC層形成用硬化性組成物中での添加量を意味する。
[含ポリシロキサン化合物]
本発明における含ポリシロキサン化合物は、含フッ素化合物と併用することでHC層に防汚性を付与できるものであれば、特に制限されることなく、分子中にポリシロキサン構造を有する化合物を用いることができる。
含ポリシロキサン化合物が有するポリシロキサン構造としては、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよい。
含ポリシロキサン化合物としては、防汚剤の性質を示すポリシロキサン防汚剤が好ましく用いられる。
上記ポリシロキサン防汚剤は、好ましくは下記一般式(F-6)で表される。
一般式(F-6):
SiO(4-a-b)/2
(式中、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はフェニル基であり、Rは重合性不飽和基を含有する有機基であり、0<aであって、0<bであり、a+b<4である。)
aは好ましくは1~2.75、より好ましくは1~2.5であり、1以上であると化合物の合成が工業的に容易となり、2.75以下であると、硬化性と防汚性の両立がしやすくなる。
における重合性不飽和基としては、上記一般式(F)におけるRと同様の重合性不飽和基(すなわち、ラジカル重合性基)が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリロイルオキシ基並びにこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換した基である。
ポリシロキサン防汚剤においても、膜強度の観点から一分子中に重合性不飽和基を複数有することが好ましく、一分子中に重合性不飽和基を複数有するポリジメチルシロキサンであることがより好ましい。
ポリシロキサン防汚剤の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端及び側鎖の少なくともいずれかに置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。この置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。
この置換基は重合性基が好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性基記基であればよい。好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、((メタ)アクリロイルオキシ)基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基及びアミノ基などを含む基が挙げられる。なかでも、ラジカル重合性基が好ましく、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が防汚性を向上する観点で好ましい。
また、化合物中の上記置換基数は、官能基等量として100~10000g/molが膜強度と防汚性とを両立する観点から好ましく、100~3000g/molがより好ましく、100~2000g/molが更に好ましく、100~1000g/molが特に好ましい。官能基当量を上記好ましい下限値以上にすることで、HC層形成用硬化性組成物中の重合性化合物(HC層を形成する際の樹脂成分)と必要以上に相溶することがなく、防汚剤のHC層中での表面移行性が高くなるため好ましい。官能基当量を上記好ましい上限値以下にすることで、膜硬度を向上し、防汚性を向上させることができるため好ましい。
は(メタ)アクリロイル基を含有する有機基が好ましく、工業的な合成のし易さから上記有機基のSi原子への結合がSi-O-C結合となることがより好ましい。bは好ましくは0.4~0.8、より好ましくは0.6~0.8であり、上記好ましい下限値以上であると硬化性が向上し、上記好ましい上限値以下であると防汚性が向上する。
また、a+bは好ましくは3~3.7であり、より好ましくは3~3.5である。上記好ましい下限値以上であると化合物のHC層表面への偏在化が起こりやすくなり、上記好ましい上限値以下であると硬化性と防汚性の両立を向上させることができる。
ポリシロキサン防汚剤は、1分子中にSi原子を3個以上有することが好ましく、Si原子を3~40個含有することがより好ましい。Si原子が3個以上あると化合物のHC層表面への偏在化が促進され、十分な防汚性がより得られやすくなる。
ポリシロキサン防汚剤は、特開2007-145884号公報に挙げられる公知の方法などを用いて製造することができる。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、ポリシロキサン(例えば“KF-96-10CS”、“KF-100T”、“X-22-169AS”、“KF-102”、“X-22-3701IE”、“X-22-164”、“X-22-164A”、“X-22-164AS”、“X-22-164B”、“X-22-164C”、“X-22-5002”、“X-22-173B”、“X-22-174D”、“X-22-167B”及び“X-22-161AS”(商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK-5”、“AK-30”及び“AK-32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;「サイラプレーンFM0725」及び「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製;“DMS-U22”、“RMS-033”及び“UMS-182”(商品名)、以上Gelest製;「アクリット8SS-723」(商品名)、以上大成ファインケミカル(株)製等)を添加するのも好ましい。また、特開2003-112383号公報の表2、表3に記載のポリシロキサン系化合物も好ましく使用できる。
[含ポリシロキサン化合物の分子量]
含ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、300以上が好ましく、300以上100000以下がより好ましく、300以上30000以下が更に好ましい。含ポリシロキサン化合物の重量平均分子量が300以上であると、含ポリシロキサン化合物のHC層表面への偏在化が促進され、耐擦性及び硬度がより向上される。
[含ポリシロキサン化合物の添加量]
含ポリシロキサン化合物の添加量は、HC層形成用硬化性組成物中の全固形分に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.5~5質量%が更に好ましく、0.5~2質量%が特に好ましい。添加量が上記好ましい下限値以上であると、防汚性をより向上することができる。また、添加量が上記好ましい上限値以下であると、HC層形成用硬化性組成物中の重合性化合物(HC層を形成する際の樹脂成分)との混合が不十分な含ポリシロキサン化合物が表面に析出することがなく、HC層が白化したり表面に白粉を生じたりすることが抑制されるため好ましい。
なお、HC層が後述する2層以上の積層構造である場合には、含ポリシロキサン化合物を含有するHC層を形成する、HC層形成用硬化性組成物中での添加量を意味する。
(光学フィルムにおけるハードコート層の表面粗さSa)
本発明において、光学フィルムにおけるハードコート層の表面粗さSaとは、樹脂フィルムとハードコート層が積層された状態での、樹脂フィルムを有する面とは反対側の面の表面粗さ(以下、単に表面粗さSaとも称す。)を意味する。
ハードコート層の表面粗さSaは、測定視野4mm×5mmで、60nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下が更に好ましい。下限値は1nm以上であることが実際的である。
なお、ハードコート層が、樹脂フィルムを有する面とは反対側の面(以下、視認側の面とも称す。)に、後述するその他の層を有する場合には、上記「ハードコート層の表面粗さSa」は、ハードコート層が光学フィルムの視認側最表面に位置する光学フィルムの状態で測定される、ハードコート層の表面粗さSaを意味する。
(ハードコート層(HC層)形成用硬化性組成物を硬化したHC層)
本発明に用いられるHC層は、HC層形成用硬化性組成物に活性エネルギー線を照射し、硬化することで得ることができる。なお本明細書において、「活性エネルギー線」とは、電離放射線をいい、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電子線、α線、β線及びγ線等が包含される。
HC層の形成に用いられるHC層形成用硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する性質を有する少なくとも一種の成分(以下、「活性エネルギー線硬化性成分」とも記載する。)を含む。活性エネルギー線硬化性成分としては、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物のうちの少なくとも一種の重合性化合物が好ましい。なお本明細書において、「重合性化合物」とは、分子中に重合性基を有する化合物であり、この重合性基は1分子中に1個以上あればよい。重合性基とは、重合反応に関与し得る基であり、具体例としては、後述の各種重合性化合物に含まれる基を例示することができる。また、重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合及びアニオン重合等の各種重合反応を挙げることができる。
また、本発明におけるHC層は、分子中に重合性基を有する含ポリシロキサン化合物と、分子中に重合性基を有する含フッ素化合物と、これらの化合物以外の、分子中に重合性基を有する重合性化合物とを含有するHC層形成用硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射し、重合硬化することで得られることが好ましい。この場合、含ポリシロキサン化合物、含フッ素化合物及び重合性化合物が有する重合性基は、ラジカル重合性基であることがより好ましい。
本発明に用いられるHC層は、1層構造でも2層以上の積層構造であってもよく、下記に詳細を記載する1層構造又は2層以上の積層構造からなるHC層が好ましい。
1)1層構造
1層構造のHC層形成用硬化性組成物の好ましい態様としては、第一の態様として、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物を少なくとも一種含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。エチレン性不飽和基とは、エチレン性不飽和二重結合を含有する官能基をいう。
第一の態様のHC層形成用硬化性組成物に含まれる1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート及びポリエステルポリアクリレート〕、上記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ポリエチレンオキサイド変性体及びカプロラクトン変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体〔例えば、1,4-ジビニルベンゼン、4-ビニル安息香酸-2-アクリロイルエチルエステル及び1,4-ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、並びに、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。
上記の1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物の重合は、ラジカル光重合開始剤の存在下、活性エネルギー線の照射により行うことができる。ラジカル光重合開始剤としては、後述するラジカル光重合開始剤が好ましく適用される。また、HC層形成用硬化性組成物中の、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物に対するラジカル光重合開始剤の含有量比については、後述するラジカル重合性化合物に対するラジカル光重合開始剤の含有量比の記載が好ましく適用される。
また、第二の態様として、少なくとも一種のラジカル重合性化合物(B)と少なくとも一種のカチオン重合性化合物(A)とを含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。好ましい態様としては、
(b-1)アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(B)と;
カチオン重合性化合物(A)と;
を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。
上記HC層形成用硬化性組成物は、ラジカル光重合開始剤とカチオン光重合開始剤とを含むことがより好ましい。第二の態様の好ましい一形態としては、
(b-1)アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(B)と;
カチオン重合性化合物(A)と;
ラジカル光重合開始剤と;
カチオン光重合開始剤と;
を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。以下において、本態様を、第二の態様(1)と記載する。
第二の態様(1)において、上記のラジカル重合性化合物は、1分子中に2個以上の上記ラジカル重合性基とともに、1分子中に1個以上のウレタン結合を含むことが好ましい。
第二の態様の他の好ましい一態様では、
(a-1)脂環式エポキシ基及びエチレン性不飽和基を含み、1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数が1個であり、かつ1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1個であり、分子量が300以下であるカチオン重合性化合物(A)と;
(b-2)1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を含むラジカル重合性化合物(B)と;
(c)ラジカル重合開始剤と;
(d)カチオン重合開始剤と;
を含むHC層形成用硬化性組成物を挙げることができる。以下において、本態様を、第二の態様(2)と記載する。第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層は、好ましくは、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、上記(a-1)由来の構造を15~70質量%、上記(b-2)由来の構造を25~80質量%、上記(c)を0.1~10質量%、上記(d)を0.1~10質量%含むことができる。また、一態様では、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、このHC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、上記(a-1)を15~70質量%含むことが好ましい。なお、「脂環式エポキシ基」とは、エポキシ環と飽和炭化水素環とが縮合した環状構造を有する1価の官能基をいうものとする。
以下、第二の態様、好ましくは第二の態様(1)又は第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物に含まれ得る各種成分(重合性化合物及び重合開始剤)について、更に詳細に説明する。
-重合性化合物-
ラジカル重合性化合物(B)
第二の態様のHC層形成用硬化性組成物は、少なくとも一種のラジカル重合性化合物(B)を含む。
ラジカル重合性化合物(B)としては、ラジカル重合可能な重合性基(ラジカル重合性基)を有するものであれば、何ら制限なく用いることができる。また、1分子中に含まれるラジカル重合性基の数は、少なくとも1個であればよい。すなわち、ラジカル重合性化合物(B)は、ラジカル重合性基を1分子中に1個含む単官能化合物であっても、2個以上含む多官能化合物であってもよい。多官能化合物に含まれるラジカル重合性基の数は、特に限定されるものではないが、例えば1分子中に2~6個である。また、多官能化合物の1分子中に2個以上含まれるラジカル重合性基は、同一であってもよく、構造が異なる二種以上であってもよい。
第二の態様(1)におけるラジカル重合性化合物(以下、ラジカル重合性化合物(b-1)と略す。)は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含む。上記ラジカル重合性化合物(b-1)は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を、1分子中に、好ましくは例えば2~10個含むことができ、より好ましくは2~6個含むことができる。
上記ラジカル重合性化合物(B)としては、分子量が200以上1000未満のラジカル重合性化合物が好ましい。なお本明細書において「分子量」とは、多量体については、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)によりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量をいうものとする。重量平均分子量の具体的な測定条件の一例としては、以下の測定条件を挙げることができる。
GPC装置:HLC-8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL-M(東ソー社製、内径7.8mm×カラム長30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン
上記ラジカル重合性化合物(b-1)は、前述の通り、1分子中に1個以上のウレタン結合を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性化合物(b-1)の1分子中に含まれるウレタン結合の数は、好ましくは1個以上であり、より好ましくは2個以上であり、さらに好ましくは2~5個であり、例えば2個とすることができる。なお1分子中にウレタン結合を2個含むラジカル重合性化合物(b-1)において、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基は、一方のウレタン結合のみに直接又は連結基を介して結合していてもよく、2個のウレタン結合にそれぞれ直接又は連結基を介して結合していてもよい。一態様では、連結基を介して結合している2個のウレタン結合に、それぞれアクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基が1個以上結合していることが、好ましい。
より詳しくは、上記ラジカル重合性化合物(b-1)において、ウレタン結合とアクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基とは直接結合していてもよく、ウレタン結合とアクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基との間に連結基が存在していてもよい。連結基としては、特に限定されるものではなく、直鎖及び分岐のいずれでもよく、飽和及び不飽和のいずれでもよい、炭化水素基、及び環状基、並びに、これらを2つ以上の組み合わせからなる基等を挙げることができる。上記炭化水素基の炭素数は、例えば2~20程度であるが、特に限定されるものではなない。また、環状基に含まれる環状構造としては、一例として、脂肪族環(シクロヘキサン環など)及び芳香族環(ベンゼン環、ナフタレン環など)などが挙げられる。上記の基は、無置換であっても置換基を有していてもよい。なお、本明細書において、特記しない限り、記載されている基は置換基を有してもよく無置換であってもよい。ある基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1~6のアルキル基)、水酸基、アルコキシ基(例えば炭素数1~6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基及びカルボキシ基等を挙げることができる。
以上説明したラジカル重合性化合物(b-1)は、公知の方法で合成することができる。また、市販品として入手することも可能である。例えば、合成方法の一例としては、アルコール、ポリオール及び水酸基含有(メタ)アクリル酸等の水酸基含有化合物とイソシアネートとを反応させる方法、又は必要に応じて、上記反応によって得られたウレタン化合物を(メタ)アクリル酸でエステル化する方法を挙げることができる。なお「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方を意味するものとする。
上記の1分子中に1個以上のウレタン結合を含むラジカル重合性化合物(b-1)の市販品としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、いずれも商品名で、共栄社化学社製のUA-306H、UA-306I、UA-306T、UA-510H、UF-8001G、UA-101I、UA-101T、AT-600、AH-600、AI-600、BPZA-66及びBPZA-100、新中村化学社製のU-4HA、U-6HA、U-6LPA、UA-32P、U-15HA及びUA-1100H、並びに日本合成化学工業社製の紫光UV-1400B、同UV-1700B、同UV-6300B、同UV-7550B、同UV-7600B、同UV-7605B、同UV-7610B、同UV-7620EA、同UV-7630B、同UV-7640B、同UV-6630B、同UV-7000B、同UV-7510B、同UV-7461TE、同UV-3000B、同UV-3200B、同UV-3210EA、同UV-3310EA、同UV-3310B、同UV-3500BA、同UV-3520TL、同UV-3700B、同UV-6100B、同UV-6640B、同UV-2000B、同UV-2010B及び同UV-2250EAを挙げることができる。また、日本合成化学工業社製の紫光UV-2750B、共栄社化学社製のUL-503LN、大日本インキ化学工業社製のユニディック17-806、同17-813、同V-4030及び同V-4000BA、ダイセルUCB社製のEB-1290K、並びに、トクシキ社製のハイコープAU-2010及び同AU-2020等も挙げられる。
以下に、上記の1分子中に1個以上のウレタン結合を含むラジカル重合性化合物(b-1)の具体例として例示化合物A-1~A-8を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
Figure 0007083030000001
Figure 0007083030000002
以上、1分子中に1個以上のウレタン結合を含むラジカル重合性化合物(b-1)について説明したが、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(b-1)は、ウレタン結合を有さないものであってもよい。また、第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(b-1)に加えて、かかるラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物を一種以上含んでいてもよい。
以下において、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含み、かつウレタン結合を1分子中に1個以上含むラジカル重合性化合物(b-1)を、第一のラジカル重合性化合物と記載し、上記第一のラジカル重合性化合物に該当しないラジカル重合性化合物を「第二のラジカル重合性化合物」と記載する。すなわち、第二のラジカル重合性化合物は、第一のラジカル重合性化合物に該当しない限り、ウレタン結合を1分子中に1個以上有していてもよく、有さなくてもよく、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含んでいても、含んでいなくてもよい。第一のラジカル重合性化合物と第二のラジカル重合性化合物とを併用する場合、それらの質量比は、第一のラジカル重合性化合物/第二のラジカル重合性化合物=3/1~1/30であることが好ましく、2/1~1/20であることがより好ましく、1/1~1/10であることが更に好ましい。
第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物のアクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(ウレタン結合の有無を問わない)の含有量は、組成物全量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。また、第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物のアクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に2個以上含むラジカル重合性化合物(ウレタン結合の有無を問わない)の含有量は、組成物全量100質量%に対して、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。
また、第二の態様(1)のHC層形成用硬化性組成物の第一のラジカル重合性化合物の含有量は、組成物全量100質量%に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上である。一方、第一のラジカル重合性化合物の含有量は、組成物全量100質量%に対して、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。
第二のラジカル重合性化合物は、一態様では、好ましくは、ラジカル重合性基を1分子中に2個以上含み、ウレタン結合を持たないラジカル重合性化合物である。第二のラジカル重合性化合物に含まれるラジカル重合性基は、好ましくはエチレン性不飽和基であり、一態様では、ビニル基が好ましい。他の一態様では、エチレン性不飽和基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基であることが好ましい。即ち、第二のラジカル重合性化合物は、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に1個以上有し、かつウレタン結合を持たないことも好ましい。また、第二のラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性化合物として、一分子中に、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基の1個以上と、これら以外のラジカル重合性基の1個以上とを含むこともできる。
第二のラジカル重合性化合物の1分子中に含まれるラジカル重合性基の数は、好ましくは、少なくとも2個であり、より好ましくは3個以上であり、更に好ましくは4個以上である。また、第二のラジカル重合性化合物の1分子中に含まれるラジカル重合性基の数は、一態様では、例えば10個以下であるが、10個超であってもよい。また、第二のラジカル重合性化合物としては、分子量が200以上1000未満のラジカル重合性化合物が好ましい。
第二のラジカル重合性化合物としては、例えば以下のものを例示できる。ただし本発明は、下記例示化合物に限定されるものではない。
例えば、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール300ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば長瀬産業社製のデナコールDA-811等)、ポリプロピレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール700ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO;Ethylene Oxide)・プロピレンオキシド(PO;Propylene Oxide)ブロックポリエーテルジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば日本油脂社製のブレンマーPETシリーズ等)、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成社製のM-210、新中村化学工業社製のNKエステルA-BPE-20等)、水添ビスフェノールA EO付加型ジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製のNKエステルA-HPE-4等)、ビスフェノールA PO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば共栄社化学社製のライトアクリレートBP-4PA等)、ビスフェノールA エピクロルヒドリン付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えばダイセルUCB社製のエベクリル150等)、ビスフェノールA EO・PO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東邦化学工業社製のBP-023-PE等)、ビスフェノールF EO付加型ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成社製のアロニックスM-208等)、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びそのエピクロルヒドリン変性品、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びそのカプロラクトン変性品、1,4- ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンアクリル酸・安息香酸エステル、並びに、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成社製のアロニックスM-215等)等の2官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO又はエピクロルヒドリン変性品、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO又はエピクロルヒドリン変性品、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート(市販品として、例えば東亜合成社製のアロニックスM-315等)、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素-(2,2,2-トリ-(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO又はエピクロルヒドリン変性品等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO又はエピクロルヒドリン変性品、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸又はアルキル変性品等の5官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸又はアルキル変性品、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸又はアルキル変性品等の6官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
第二のラジカル重合性化合物は2種以上併用してもよい。この場合、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”(日本化薬社製)などを好ましく用いることができる。
また、第二のラジカル重合性化合物として、重量平均分子量が200以上1000未満の、ポリエステル(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレートも好ましい。市販品では、ポリエステル(メタ)アクリレートとして、荒川化学工業社製の商品名ビームセット700シリーズの、例えばビームセット700(6官能)、ビームセット710(4官能)及びビームセット720(3官能)等が挙げられる。また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、昭和高分子社製の商品名SPシリーズの、例えばSP-1506、500、SP-1507及び480、同社の商品名VRシリーズの、例えばVR-77、並びに、新中村化学工業社製の商品名EA-1010/ECA、EA-11020、EA-1025、及び、EA-6310/ECA等が挙げられる。
また、第二のラジカル重合性化合物の具体例としては、下記例示化合物A-9~A-11を挙げることもできる。
Figure 0007083030000003
第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、(b-2)の1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を含むラジカル重合性化合物を含む。(b-2)の1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を含む化合物を、以下において「(b-2)成分」とも記載する。
(b-2)成分としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、ビニルベンゼン及びその誘導体、ビニルスルホン並びに(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に3個以上含むラジカル重合性化合物が好ましい。具体例としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであって、1分子中に3個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。より詳しくは、例えば、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート及びペンタグリセロールトリアクリレート等が挙げられる。なお上記の「(ジ)ペンタエリスリトール」とは、ペンタエリスリトールとジペンタエリスリトールの一方又は両方の意味で用いられる。
更に、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に3個以上含む樹脂も好ましい。
アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に3個以上含む樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、スピロアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリチオールポリエン系樹脂及び多価アルコール等の多官能化合物等の重合体等も挙げられる。
アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に3個以上含むラジカル重合性化合物の具体例としては、特開2007-256844号公報段落0096に示されている例示化合物等を挙げることができる。
更に、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基を1分子中に3個以上含むラジカル重合性化合物の具体例としては、日本化薬社製のKAYARAD DPHA、同DPHA-2C、同PET-30、同TMPTA、同TPA-320、同TPA-330、同RP-1040、同T-1420、同D-310、同DPCA-20、同DPCA-30、同DPCA-60及び同GPO-303、大阪有機化学工業社製のV#400及びV#36095D等のポリオールと(メタ)アクリル酸のエステル化物を挙げることができる。また紫光UV-1400B、同UV-1700B、同UV-6300B、同UV-7550B、同UV-7600B、同UV-7605B、同UV-7610B、同UV-7620EA、同UV-7630B、同UV-7640B、同UV-6630B、同UV-7000B、同UV-7510B、同UV-7461TE、同UV-3000B、同UV-3200B、同UV-3210EA、同UV-3310EA、同UV-3310B、同UV-3500BA、同UV-3520TL、同UV-3700B、同UV-6100B、同UV-6640B、同UV-2000B、同UV-2010B、同UV-2250EA及び同UV-2750B(いずれも日本合成化学社製)、UL-503LN(共栄社化学社製)、ユニディック17-806、同17-813、同V-4030及び同V-4000BA(いずれも大日本インキ化学工業社製)、EB-1290K、EB-220、EB-5129、EB-1830及びEB-4358(いずれもダイセルUCB社製)、ハイコープAU-2010及び同AU-2020(いずれもトクシキ社製)、アロニックスM-1960(東亜合成社製)、アートレジンUN-3320HA、UN-3320HC、UN-3320HS、UN-904及びHDP-4T等の3官能以上のウレタンアクリレート化合物、及び、アロニックスM-8100、M-8030及びM-9050(いずれも東亜合成社製)、並びに、KBM-8307(ダイセルサイテック社製)の3官能以上のポリエステル化合物なども好適に使用することができる。上記具体例は、いずれも商品名である。
また、(b-2)成分としては、一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
前述の通り、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層は、好ましくは、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、上記(a-1)由来の構造を15~70質量%、上記(b-2)由来の構造を25~80質量%、上記(c)由来の構造を0.1~10質量%、上記(d)由来の構造を0.1~10質量%含むことができる。(b-2)由来の構造は、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、40~75質量%含有されることが好ましく、60~75質量%含有されることがより好ましい。また、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、このHC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、(b-2)成分を40~75質量%含むことが好ましく、60~75質量%含むことがより好ましい。
カチオン重合性化合物(A)
第二の態様のHC層形成用硬化性組成物は、少なくとも一種のカチオン重合性化合物(A)を含む。
カチオン重合性化合物(A)としては、カチオン重合可能な重合性基(カチオン重合性基)を有するものであれば、何ら制限なく用いることができる。また、1分子中に含まれるカチオン重合性基の数は、少なくとも1個であればよい。すなわち、カチオン重合性化合物(A)は、カチオン重合性基を1分子中に1個含む単官能化合物であっても、2個以上含む多官能化合物であってもよい。多官能化合物に含まれるカチオン重合性基の数は、特に限定されるものではないが、例えば1分子中に2~6個である。また、多官能化合物の1分子中に2個以上含まれるカチオン重合性基は、同一であってもよく、構造が異なる二種以上であってもよい。
また、カチオン重合性化合物(A)は、一態様では、カチオン重合性基とともに、1分子中に1個以上のラジカル重合性基を有することも好ましい。上記カチオン重合性化合物(A)が有してもよいラジカル重合性基については、前述のラジカル重合性化合物(B)におけるラジカル重合性基に係る記載を参照できる。好ましくは、エチレン性不飽和基であり、エチレン性不飽和基は、より好ましくは、ビニル基、アクリロイル基及びメタクリロイル基のうちの少なくとも一方のラジカル重合性基である。ラジカル重合性基を有するカチオン重合性化合物の1分子中のラジカル重合性基の数は、少なくとも1個であり、1~3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
カチオン重合性基としては、好ましくは、含酸素複素環基及びビニルエーテル基を挙げることができる。なおカチオン重合性化合物は、1分子中に、1個以上の含酸素複素環基と1個以上のビニルエーテル基とを含んでいてもよい。
含酸素複素環としては、単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、ビシクロ骨格を有するものも好ましい。含酸素複素環は、非芳香族環であっても芳香族環であってもよく、非芳香族環であることが好ましい。単環の具体例としては、エポキシ環(オキシラン環)、テトラヒドロフラン環、オキセタン環を挙げることができる。また、ビシクロ骨格を有するものとしては、オキサビシクロ環を挙げることができる。なお含酸素複素環を含むカチオン重合性基は、1価の置換基として、又は2価以上の多価置換基として、カチオン重合性化合物に含まれる。また、上記縮合環は、2個以上の含酸素複素環が縮合したものであっても、1個以上の含酸素複素環と、上記の含酸素複素環以外の環構造の1個以上とが縮合したものであってもよい。上記の含酸素複素環以外の環構造としては、これらに限定されるものではないが、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環を挙げることができる。
以下に、含酸素複素環の具体例を示す。ただし、本発明は、下記具体例に限定されるものではない。
Figure 0007083030000004
カチオン重合性化合物(A)には、カチオン重合性基以外の部分構造が含まれていてもよい。そのような部分構造は、特に限定されるものではなく、直鎖構造であっても、分岐構造であっても、環状構造であってもよい。これら部分構造には、酸素原子及び窒素原子等のヘテロ原子が1個以上含まれていてもよい。
カチオン重合性化合物(A)の好ましい一態様としては、カチオン重合性基として、又はカチオン重合性基以外の部分構造として、環状構造を含む化合物(環状構造含有化合物)を挙げることができる。環状構造含有化合物に含まれる環状構造の数は、1分子中に、例えば1個であり、2個以上であってもよく、例えば1~5個であるが、特に限定されるものではない。1分子中に2個以上の環状構造を含む化合物は、同一の環状構造を含んでいてもよく、構造の異なる二種以上の環状構造を含んでいてもよい。
上記環状構造含有化合物に含まれる環状構造の一例としては、含酸素複素環を挙げることができる。その詳細は、先に記載した通りである。
カチオン重合性化合物(A)の1分子中に含まれるカチオン重合性基の数(以下、「C」と記載する。)によって分子量(以下、「B」と記載する。)を除して求められるカチオン重合性基当量(=B/C)は、例えば300以下であり、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点からは、150未満であることが好ましい。一方、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層の吸湿性の観点からは、カチオン重合性基当量は、50以上であることが好ましい。また、一態様では、カチオン重合性基当量を求めるカチオン重合性化合物に含まれるカチオン重合性基は、エポキシ基(オキシラン環)であることができる。即ち、一態様では、カチオン重合性化合物(A)は、エポキシ基(オキシラン環)含有化合物である。エポキシ基(オキシラン環)含有化合物は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点からは、1分子中に含まれるエポキシ基(オキシラン環)の数によって分子量を除して求められるエポキシ基当量が、150未満であることが好ましい。また、エポキシ基(オキシラン環)含有化合物のエポキシ基当量は、例えば50以上である。
また、カチオン重合性化合物(A)の分子量は500以下であることが好ましく、300以下であることが更に好ましい。上記範囲の分子量を有するカチオン重合性化合物は、樹脂フィルムへ浸透しやすい傾向があり、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上に寄与することができると推察される。
第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、(a-1)の脂環式エポキシ基及びエチレン性不飽和基を含み、1分子中に含まれる脂環式エポキシ基の数が1個であり、かつ1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1個であり、分子量が300以下であるカチオン重合性化合物を含む。以下において、上記(a-1)のカチオン重合性化合物を、「(a-1)成分」と記載する。
エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基及びアリル基等を含むラジカル重合性基が挙げられ、中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基又はC(=O)OCH=CHが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。1分子中の脂環式エポキシ基とエチレン性不飽和基の数は、それぞれ1個であることが好ましい。
(a-1)成分の分子量は、300以下であり、210以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。
(a-1)成分の好ましい一態様としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0007083030000005
一般式(1)中、環Rは単環式炭化水素又は架橋炭化水素を表し、Lは単結合又は2価の連結基を表し、Qはエチレン性不飽和基を表す。ここで、環Rは、環構成原子として、上記式(1)におけるオキシラン環を構成する2つの炭素原子及びRを少なくとも有する環を意味する。
一般式(1)中のRが単環式炭化水素の場合、単環式炭化水素は脂環式炭化水素であることが好ましく、中でも炭素数4~10の脂環(基)であることがより好ましく、炭素数5~7の脂環(基)であることが更に好ましく、炭素数6の脂環(基)であることが特に好ましい。好ましい具体例としては、シクロブチル基(シクロブタン)、シクロペンチル基(シクロペンタン)、シクロヘキシル基(シクロヘキサン)及びシクロヘプチル基(シクロヘプタン)を挙げることができ、シクロヘキシル基(シクロヘキサン)がより好ましい。
一般式(1)中のRが架橋炭化水素の場合、架橋炭化水素は、2環系架橋炭化水素(ビシクロ環)、3環系架橋炭化水素(トリシクロ環)が好ましい。具体例としては、炭素数5~20の架橋炭化水素が挙げられ、例えば、ノルボルニル基(ノルボルナン)、ボルニル基(ボルナン)、イソボルニル基(イソボルナン)、トリシクロデシル基(トリシクロデカン)、ジシクロペンテニル基(ジシクロペンテン)、ジシクロペンタニル基(ジシクロペンタン)、トリシクロペンテニル基(トリシクロペンテン)、トリシクロペンタニル基(トリシクロペンタン)、アダマンチル基(アダマンタン)及び低級(例えば炭素数1~6)アルキル基置換アダマンチル基(アダマンタン)等が挙げられる。
Lが2価の連結基を表す場合、2価の連結基は、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~6であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基が好ましく、直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基が更に好ましい。
Qとしては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基及びアリル基等を含むエチレン性不飽和基が挙げられ、中でも、アクリロイル基、メタクリロイル基又はC(=O)OCH=CHが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。
(a-1)成分の具体例としては、特開平10-17614号公報段落0015に例示されている各種化合物、下記一般式(1A)又は(1B)で表される化合物、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等を挙げることができる。中でも、下記一般式(1A)又は(1B)で表される化合物がより好ましい。なお、下記一般式(1A)で表される化合物は、その異性体も好ましい。
Figure 0007083030000006
Figure 0007083030000007
一般式(1A)及び(1B)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素数1~6の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
一般式(1A)及び(1B)中のLで表される2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~6であり、1~3であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。2価の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基が好ましく、直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、直鎖状のアルキレン基が更に好ましい。
第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層は、好ましくは、HC層の全固形分を100質量%とした場合に、上記(a-1)由来の構造を15~70質量%含むことが好ましく、18~50質量%含むことがより好ましく、22~40質量%含むことが更に好ましい。また、第二の態様(2)のHC層形成用硬化性組成物は、(a-1)成分を、HC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、15~70質量%含むことが好ましく、18~50質量%含むことがより好ましく、22~40質量%含むことが更に好ましい。
上記環状構造含有化合物に含まれる環状構造の他の一例としては、含窒素複素環を挙げることができる。含窒素複素環含有化合物は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点から好ましいカチオン重合性化合物である。含窒素複素環含有化合物としては、イソシアヌレート環(後述の例示化合物B-1~B-3に含まれる含窒素複素環)及びグリコールウリル環(後述の例示化合物B-10に含まれる含窒素複素環)のうちの少なくとも一方の含窒素複素環を1分子中に1個以上有する化合物が好ましい。中でも、イソシアヌレート環を含む化合物(イソシアヌレート環含有化合物)は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点から、より好ましいカチオン重合性化合物である。これは、イソシアヌレート環が樹脂フィルムを構成する樹脂との親和性に優れるためと、本発明者らは推察している。この点からは、アクリル系樹脂フィルムを含む樹脂フィルムがより好ましく、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と直接接する表面がアクリル系樹脂フィルム表面であることが更に好ましい。
また、上記環状構造含有化合物に含まれる環状構造の他の一例としては、脂環構造を挙げることができる。脂環構造としては、例えば、シクロ環、ジシクロ環及びトリシクロ環構造を挙げることができ、具体例としては、ジシクロペンタニル環及びシクロヘキサン環等を挙げることができる。
以上説明したカチオン重合性化合物は、公知の方法で合成することができる。また、市販品として入手することも可能である。
カチオン重合性基として含酸素複素環(基)を含むカチオン重合性化合物(A)の具体例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(株式会社ダイセル製サイクロマーM100等の市販品)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ユニオンカーバイド社製のUVR6105及びUVR6110並びにダイセル化学社製のCELLOXIDE2021等の市販品)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、ユニオンカーバイド社製のUVR6128)、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド(例えば、ダイセル化学社製のCELLOXIDE2000)、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ダイセル化学社製のCELLOXIDE2081)、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン(例えば、ダイセル化学社製のCELLOXIDE3000)、7,7’‐ジオキサ‐3,3’‐ビ[ビシクロ[4.1.0]ヘプタン](例えば、ダイセル化学社製のCELLOXIDE8000)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、並びに、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン及びジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル等を挙げることができる。
また、カチオン重合性基としてビニルエーテル基を含むカチオン重合性化合物(A)の具体例としては、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル及びペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。ビニルエーテル基を含むカチオン重合性化合物としては、脂環構造を有するものも好ましい。
更に、カチオン重合性化合物(A)としては、特開平8-143806号公報、特開平8-283320号公報、特開2000-186079号公報、特開2000-327672号公報、特開2004-315778号公報及び特開2005-29632号公報等に例示されている化合物を用いることもできる。
以下に、カチオン重合性化合物(A)の具体例として例示化合物B-1~B-14を示すが、本発明は下記具体例に限定されるものではない。
Figure 0007083030000008
Figure 0007083030000009
Figure 0007083030000010
また、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層と樹脂フィルムとの密着性向上の観点からは、HC層形成用硬化性組成物の好ましい態様としては、下記(1)~(4)の態様を挙げることができる。下記態様の1つ以上を満たすことがより好ましく、2つ以上を満たすことが更に好ましく、3つ以上を満たすことがいっそう好ましく、すべて満たすことがよりいっそう好ましい。なお1つのカチオン重合性化合物が、複数の態様を満たすことも好ましい。例えば、含窒素複素環含有化合物が、カチオン重合性基当量150未満であること等を、好ましい態様として例示できる。
(1)カチオン重合性化合物として、含窒素複素環含有化合物を含む。好ましくは、含窒素複素環含有化合物が有する含窒素複素環は、イソシアヌレート環及びグリコールウリル環のうちの少なくとも1種である。含窒素複素環含有化合物は、より好ましくは、イソシアヌレート環含有化合物である。更に好ましくは、イソシアヌレート環含有化合物は、1分子中に1つ以上のエポキシ環を含むエポキシ環含有化合物である。
(2)カチオン重合性化合物として、カチオン重合性基当量が150未満のカチオン重合性化合物を含む。好ましくは、エポキシ基当量が150未満のエポキシ基含有化合物を含む。
(3)カチオン重合性化合物が、エチレン性不飽和基を含む。
(4)カチオン重合性化合物として、1分子中に1個以上のオキセタン環を含むオキセタン環含有化合物を、他のカチオン重合性化合物とともに含む。好ましくは、オキセタン環含有化合物は、含窒素複素環を含まない化合物である。
上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン重合性化合物(A)の含有量は、ラジカル重合性化合物(B)とカチオン重合性化合物(A)との合計含有量100質量部に対して、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上であり、更に好ましくは20質量部以上である。また、上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン重合性化合物(A)の含有量は、ラジカル重合性化合物(B)とカチオン重合性化合物(A)との合計含有量100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。
また、上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン重合性化合物(A)の含有量は、第一のラジカル重合性化合物の含有量とカチオン重合性化合物(A)との合計含有量100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.1質量部以上であり、更に好ましくは1質量部以上である。一方、カチオン重合性化合物(A)の含有量は、第一のラジカル重合性化合物の含有量とカチオン重合性化合物(A)との合計含有量100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。
なお本明細書において、カチオン重合性基とラジカル重合性基をともに有する化合物は、カチオン重合性化合物(A)に分類し、HC層形成用硬化性組成物における含有量についても、この分類に従い規定するものとする。
-重合開始剤-
HC層形成用硬化性組成物は重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤を含むことがより好ましい。ラジカル重合性化合物(B)を含むHC層形成用硬化性組成物は、ラジカル光重合開始剤を含むことが好ましく、カチオン重合性化合物(A)を含むHC層形成用硬化性組成物は、カチオン光重合開始剤を含むことが好ましい。なおラジカル光重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。この点は、カチオン光重合開始剤についても同様である。
以下、各光重合開始剤について、順次説明する。
(i)ラジカル光重合開始剤
ラジカル光重合開始剤としては、光照射により活性種としてラジカルを発生することができるものであればよく、公知のラジカル光重合開始剤を、何ら制限なく用いることができる。具体例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、及び、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等のアセトフェノン類;1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及び、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、及び、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、オルト-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、及び、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、及び、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、及び、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;等が挙げられる。また、ラジカル光重合開始剤の助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等を併用してもよい。
以上のラジカル光重合開始剤及び助剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品として入手も可能である。市販のラジカル光重合開始剤としては、BASF社製のイルガキュア(127,651,184,819,907,1870(CGI-403/Irg184=7/3混合開始剤),500,369,1173,2959,4265,4263及びOXE01)等、日本化薬社製のKAYACURE(DETX-S,BP-100,BDMK,CTX,BMS,2-EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC及びMCAなど)、並びに、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150及びTZT)等を好ましい例として挙げられる。
上記HC層形成用硬化性組成物のラジカル光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物の重合反応(ラジカル重合)を良好に進行させる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。上記HC層形成用硬化性組成物に含まれるラジカル重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1~20質量部であり、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~10質量部である。
(ii)カチオン光重合開始剤
カチオン光重合開始剤としては、光照射により活性種としてカチオン(酸)を発生することができるものであればよく、公知のカチオン光重合開始剤を、何ら制限なく用いることができる。具体例としては、公知のスルホニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩及びイミニウム塩などが挙げられる。より具体的には、例えば、特開平8-143806号公報段落0050~0053に示されている式(25)~(28)で表されるカチオン光重合開始剤及び特開平8-283320号公報段落0020にカチオン重合触媒として例示されているもの等を挙げることができる。また、カチオン光重合開始剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品としても入手可能である。市販品としては、例えば、日本曹達社製のCI-1370、CI-2064、CI-2397、CI-2624、CI-2639、CI-2734、CI-2758、CI-2823、CI-2855及びCI-5102等、ローディア社製のPHOTOINITIATOR2047等、ユニオンカーバイド社製のUVI-6974及びUVI-6990、並びに、サンアプロ社製のCPI-10Pを用いることができる。
カチオン光重合開始剤としては、光重合開始剤の光に対する感度、化合物の安定性等の点からは、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩又はイミニウム塩が好ましい。また、耐候性の点からは、ヨードニウム塩が最も好ましい。
ヨードニウム塩系のカチオン光重合開始剤の具体的な市販品としては、例えば、東京化成社製のB2380、みどり化学社製のBBI-102、和光純薬工業社製のWPI-113、和光純薬工業社製のWPI-124、和光純薬工業社製のWPI-169、和光純薬工業社製のWPI-170及び東洋合成化学社製のDTBPI-PFBSを挙げることができる。
また、カチオン光重合開始剤として使用可能なヨードニウム塩化合物の具体例としては、下記化合物PAG-1社製のPAG-2を挙げることもできる。
Figure 0007083030000011
Figure 0007083030000012
上記HC層形成用硬化性組成物のカチオン光重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物の重合反応(カチオン重合)を良好に進行させる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。カチオン重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1~200質量部であり、好ましくは1~150質量部、より好ましくは2~100質量部である。
その他の光重合開始剤としては、特開2009-204725号公報の段落0052~0055に記載の光重合開始剤を挙げることもでき、この公報の内容は本発明に組み込まれる。
-HC層形成用硬化性組成物に任意に含まれ得る成分-
HC層形成用硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化する性質を有する少なくとも一種の成分と含フッ素化合物と含ポリシロキサン化合物とを含み、任意に少なくとも一種の重合開始剤を含むことができ、含むことが好ましい。それらの詳細は、先に記載した通りである。
次に、HC層形成用硬化性組成物に任意に含まれ得る各種成分について説明する。
(i)無機粒子
HC層形成用硬化性組成物は、平均一次粒径が2μm未満の無機粒子を含むことができる。HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層を有する前面板の硬度向上(更にはこの前面板を有する液晶パネルの硬度向上)の観点からは、HC層形成用硬化性組成物及びこの組成物を硬化したHC層は、平均一次粒径が2μm未満の無機粒子を含むことが好ましい。無機粒子の平均一次粒径は、10nm~1μmであることが好ましく、10nm~100nmであることがより好ましく、10nm~50nmであることが更に好ましい。
無機粒子及び後述のマット粒子の平均一次粒径については、透過型電子顕微鏡(倍率50万~200万倍)で粒子の観察を行い、無作為に選択した粒子(一次粒子)100個を観察し、それらの粒径の平均値をもって平均一次粒径とする。
上記無機粒子としては、シリカ粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子社製の酸化アルミニウム粒子などが挙げられる。中でもシリカ粒子が好ましい。
上記無機粒子は、HC層形成用硬化性組成物に含まれる有機成分との親和性を高めるために、その表面が有機セグメントを含む表面修飾剤で処理されていることが好ましい。表面修飾剤としては、無機粒子と結合を形成するか無機粒子に吸着し得る官能基と、有機成分と高い親和性を有する官能基とを同一分子内に有するものが好ましい。無機粒子に結合又は吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン系表面修飾剤、アルミニウム、チタニウム及びジルコニウム等の金属アルコキシド表面修飾剤、並びに、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基及びカルボン酸基等のアニオン性基を有する表面修飾剤が好ましく挙げられる。有機成分との親和性の高い官能基としては、有機成分と同様の親疎水性を有する官能基、及び、有機成分と化学的に結合し得る官能基等が挙げられる。中でも、有機成分と化学的に結合し得る官能基等が好ましく、エチレン性不飽和基又は開環重合性基がより好ましい。
好ましい無機粒子表面修飾剤は、金属アルコキシド表面修飾剤又はアニオン性基とエチレン性不飽和基若しくは開環重合性基とを同一分子内に有する重合性化合物である。これら表面修飾剤によって無機粒子と有機成分とを化学的に結合させることによりHC層の架橋密度を高めることができ、その結果、前面板の硬度(更にはこの前面板を含む液晶パネルの硬度)を向上させることができる。
上記表面修飾剤の具体例としては、以下の例示化合物S-1~S-8が挙げられる。
S-1 HC=C(X)COOCSi(OCH
S-2 HC=C(X)COOCOTi(OC
S-3 HC=C(X)COOCOCOC10OPO(OH)
S-4 (HC=C(X)COOCOCOC10O)POOH
S-5 HC=C(X)COOCOSO
S-6 HC=C(X)COO(C10COO)
S-7 HC=C(X)COOC10COOH
S-8 CHCH(O)CHOCSi(OCH
(Xは、水素原子又はメチル基を表す)
表面修飾剤による無機粒子の表面修飾は、溶液中で行うことが好ましい。無機粒子を機械的に分散する際に、一緒に表面修飾剤を存在させるか、無機粒子を機械的に分散した後に表面修飾剤を添加して攪拌するか、又は、無機粒子を機械的に分散する前に表面修飾を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、又はpH(power of hydrogen)変更を行う)、その後に分散を行ってもよい。表面修飾剤を溶解する溶媒としては、極性の大きな有機溶媒が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン及びエステル等の公知の溶媒が挙げられる。
無機粒子の含有量は、HC層形成用硬化性組成物の全固形分を100質量%とした場合に、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。上記含有量の下限値は、特に限定されるものではなく、0質量%であってもよい(HC層中に無機粒子が含まれなくてもよい)が、含まれる場合には、1質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。上記無機粒子の一次粒子の形状は、球形、非球形を問わないが、無機粒子の一次粒子は球形であることが好ましく、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層中においては球形の2~10個の無機粒子(一次粒子)が連結した非球形の2次粒子以上の高次粒子として存在することが更なる硬度向上の観点からより好ましい。
無機粒子の具体的な例としては、ELCOM V-8802(日揮触媒化成社製の平均一次粒径12nmの球形シリカ粒子)、ELCOM V-8803(日揮触媒化成社製の異形シリカ粒子)、MIBK-SD(日産化学工業社製の平均一次粒径10~20nmの球形シリカ粒子)、MEK-AC-2140Z(日産化学工業社製の平均一次粒径10~20nmの球形シリカ粒子)、MEK-AC-4130(日産化学工業社製の平均一次粒径45nmの球形シリカ粒子)、MIBK-SD-L(日産化学工業社製の平均一次粒径40~50nmの球形シリカ粒子)及びMEK-AC-5140Z(日産化学工業社製の平均一次粒径85nmの球形シリカ粒子)等を挙げることができる。中でも、日揮触媒化成社製のELCOM V-8802が、更なる硬度向上の観点から好ましい。
(ii)マット粒子
HC層形成用硬化性組成物は、マット粒子を含むこともできる。マット粒子とは、平均一次粒径が2μm以上の粒子をいうものとし、無機粒子であっても有機粒子であってもよく、又は無機と有機の複合材料の粒子であってもよい。マット粒子の形状は、球形及び非球形を問わない。マット粒子の平均一次粒径は、2~20μmであることが好ましく、4~14μmであることがより好ましく、6~10μmであることが更に好ましい。
マット粒子の具体例としては、シリカ粒子及びTiO粒子等の無機粒子、並びに、架橋アクリル粒子、架橋アクリル-スチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子及びベンゾグアナミン樹脂粒子等の有機粒子を挙げることができる。中でも、マット粒子は有機粒子であることが好ましく、架橋アクリル粒子、架橋アクリル-スチレン粒子又は架橋スチレン粒子であることがより好ましい。
マット粒子は、HC層形成用硬化性組成物を硬化したHC層における単位体積あたりの含有量として、0.10g/cm以上であることが好ましく、0.10g/cm~0.40g/cmであることがより好ましく、0.10g/cm~0.30g/cmであることが更に好ましい。
(iii)紫外線吸収剤
HC層形成用硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物及びトリアジン化合物を挙げることができる。ここでベンゾトリアゾール化合物とは、ベンゾトリアゾール環を有する化合物であり、具体例としては、特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。トリアジン化合物とは、トリアジン環を有する化合物であり、具体例としては、特開2013-111835号公報段落0033に記載されている各種トリアジン系紫外線吸収剤を挙げることができる。HC層中の紫外線吸収剤の含有量は、例えばHC層に含まれる樹脂(重合体成分)100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、特に限定されるものではない。また、紫外線吸収剤については、特開2013-111835号公報段落0032も参照できる。なお本明細書における紫外線とは200~380nmの波長帯域に発光中心波長を有する光をいうものとする。
(iv)レベリング剤
HC層形成用硬化性組成物は、レベリング剤を含有することも好ましい。
レベリング剤としては、含フッ素ポリマーが好ましく用いられる。例えば、特許第5175831号に記載されているフルオロ脂肪族基含有ポリマーが挙げられる。またフルオロ脂肪族基含有ポリマー中、このポリマーを構成する成分として、同特許文献に記載の一般式(1)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの含有量が全重合単位の50質量%以下のフルオロ脂肪族基含有ポリマーをレベリング剤として用いることもできる。
なお、後述の(vi)その他の成分に記載するレベリング剤も、上記に加えて含有することができる。
HC層形成用硬化性組成物が、レベリング剤を含有する場合の含有量は、HC層形成用硬化性組成物の固形分中、0.01~7質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~2質量%が更に好ましい。
HC層形成用硬化性組成物は、レベリング剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含まれている場合、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
(v)溶媒
HC層形成用硬化性組成物は、溶媒を含むことも好ましい。溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の1種又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール及びi-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又は酢酸メチルが好ましく、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及び酢酸メチルのうちの少なくとも2種以上を任意の割合で混合して用いることがより好ましい。このような構成とすることにより、耐擦性、打抜き性及び密着性により優れた光学フィルムが得られる。
HC層形成用硬化性組成物中の溶媒量は、上記組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、重合性化合物及び光重合開始剤の合計量100質量部に対して、溶媒を50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
また、HC形成用硬化性組成物中の固形分は、合計で、10~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましく、65~75質量%であることが特に好ましい。
(vi)その他の成分
HC層形成用硬化性組成物は、上記成分に加えて、公知の添加剤の一種以上を任意の量で含むことができる。添加剤としては、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤及びポリロタキサン等を挙げることができる。それらの詳細については、例えば特開2012-229412号公報の段落0032~0034を参照できる。ただし添加剤はこれらに限らず、HC層形成用硬化性組成物に一般に添加され得る各種添加剤を用いることができる。
HC層形成用硬化性組成物は、上述の各種成分を同時に、又は任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
2)2層以上の積層構造
上記光学フィルムは、図1におけるHC層2Aが、少なくとも、第1のHC層及び第2のHC層を樹脂フィルム1A側から順に有する態様も好ましい。
樹脂フィルム1Aの表面に、第1のHC層が位置していても、間に他の層を有していてもよい。同様に、第1のHC層の表面に、第2のHC層が位置していても、間に他の層を有していてもよい。第1のHC層と第2のHC層の密着性を高める観点からは、第1のHC層の表面に第2のHC層が位置する、すなわち、両層は、膜面の少なくとも一部において接している方が好ましい。
また、第1のHC層及び第2のHC層は、それぞれ、1層であっても、2層以上であってもよく、1層が好ましい。
更に、詳細を後述するとおり、上記光学フィルムをタッチパネルの前面板又はタッチパネルディスプレイの前面板に用いたり、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、上記第2のHC層が画像表示素子の前面側(視認側)となるように光学フィルムを配置することが好ましい。光学フィルム表面の耐擦性及び打抜き性を優れたものにするためには、上記第2のHC層が光学フィルムの表面側、特に、最表面に配置されることが好ましい。
<第1のHC層、第1のHC層形成用硬化性組成物>
本発明に用いられる第1のHC層は、第1のHC層形成用硬化性組成物から形成される。
第1のHC層形成用硬化性組成物は、ラジカル重合性基を有する重合性化合物1と、同一分子内にカチオン重合性基とラジカル重合性基を有し、かつ重合性化合物1とは異なる重合性化合物2とを含有することが好ましい。
(重合性化合物)
重合性化合物1としては、前述のラジカル重合性化合物(B)の記載が好ましく適用され、重合性化合物2としては、前述のカチオン重合性化合物(a-1)成分の記載が好ましく適用される。
また、第1のHC層形成用硬化性組成物は、重合性化合物1とも重合性化合物2とも異なる他の重合性化合物を有していてもよい。
上記他の重合性化合物は、カチオン重合性基を有する重合性化合物であることが好ましい。上記カチオン重合性基としては、重合性化合物2で述べたカチオン重合性基(すなわち、重合性化合物2で引用するカチオン重合性化合物(a-1)におけるカチオン重合性基)と同義であり、好ましい範囲も同様である。特に、本発明では、他の重合性化合物として、カチオン重合性基を含む、含窒素複素環含有化合物が好ましい。このような化合物を用いることにより、樹脂フィルムと第1のHC層の密着性をより効果的に向上させることができる。含窒素複素環としては、イソシアヌレート環(後述の例示化合物B-1~B-3に含まれる含窒素複素環)及びグリコールウリル環(後述の例示化合物B-10に含まれる含窒素複素環)のうちの少なくとも一方の含窒素複素環が例示され、イソシアヌレート環が好ましい。他の重合性化合物が有するカチオン重合性基の数は、1~10が好ましく、2~5がより好ましい。また、他の重合性化合物として、カチオン重合性基と含窒素複素環構造とを有する重合性化合物を用いる場合、第1のHC層と貼り合わせる樹脂フィルムとしては、アクリル系樹脂フィルムを含む樹脂フィルムが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂フィルムと第1のHC層の密着性がより向上する傾向にある。
他の重合性化合物の具体例としては、前述の例示化合物B-3~B-9が挙げられるが、本発明は前述の具体例に限定されるものではない。
(その他)
その他、前述の含フッ素化合物、含ポリシロキサン化合物、重合開始剤、無機粒子、マット粒子、紫外線吸収剤、レベリング剤、溶媒及びその他の成分の記載を好ましく適用することができる。
特に第1のHC層形成用硬化性組成物は、溶媒を含むことが好ましい。
<第2のHC層、第2のHC層形成用硬化性組成物>
本発明に用いられる第2のHC層は、第2のHC層形成用硬化性組成物から形成される。
第2のHC層形成用硬化性組成物は、前述の活性エネルギー硬化成分を少なくとも含有し、加えて、前述の含ポリシロキサン化合物及び含フッ素化合物を含むことが好ましい。上記活性エネルギー硬化成分としては、前述のラジカル重合性化合物(B)を少なくとも含有することが好ましい。
その他、第1及び第2のHC層及びHC層形成用硬化性組成物について、特に制限することなく、前述のHC層及びHC層形成用硬化性組成物の記載を適用することができる。
(HC層の厚み)
HC層の厚みは、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下が更に好ましい。
(HC層の鉛筆硬度)
HC層の鉛筆硬度は、硬いほどよく、具体的には3H以上が好ましく、5H以上がより好ましく、7H以上が更に好ましい。
-HC層の形成方法-
HC層形成用硬化性組成物を、樹脂フィルム上に直接、又は易接着層等の他の層を介して、塗布し、活性エネルギー線を照射することにより、HC層を形成することができる。塗布は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法及びグラビアコート法等の公知の塗布方法により行うことができる。なおHC層は、二種以上の異なる組成の組成物を同時又は逐次塗布することにより2層以上(例えば2層~5層程度)の積層構造のHC層として形成することもできる。
塗布されたHC層形成用硬化性組成物に対して活性エネルギー線照射を行うことにより、HC層を形成できる。例えば、HC層形成用硬化性組成物がラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、ラジカル光重合開始剤及びカチオン光重合開始剤を含む場合、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合反応を、それぞれラジカル光重合開始剤及びカチオン光重合開始剤の作用により開始させ進行させることができる。照射する光の波長は、用いる重合性化合物及び重合開始剤の種類に応じて決定すればよい。光照射のための光源としては、150~450nm波長帯域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ及びLED(Light Emitting Diode)等を挙げることができる。また、光照射量は、通常、30~3000mJ/cmであり、好ましくは100~1500mJ/cmである。光照射の前及び後の一方又は両方において、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、温風の吹き付け、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送等により行うことができる。HC層形成用硬化性組成物が溶媒を含む場合、加熱温度は、溶媒を乾燥除去できる温度に設定すればよく、特に限定されるものではない。ここで加熱温度とは、温風の温度又は加熱炉内の雰囲気温度をいうものとする。
<<偏光板>>
本発明の液晶パネルに用いられる偏光板は、偏光膜(偏光子とも称す。)と上記光学フィルムを少なくとも有し、更に、偏光膜の上記光学フィルムが設けられていない側の面に位相差フィルムを有していてもよい。位相差フィルムは特に限定されず、常用のものを用いることができる。
また、上記偏光板は、偏光膜の両側に、衝撃吸収層が配されてもよい。具体的には、上記光学フィルム、偏光膜及び衝撃吸収層をこの順に有する偏光板、並びに、上記光学フィルム、偏光膜、樹脂フィルム及び衝撃吸収層をこの順に有する偏光板が挙げられる。この衝撃吸収層は、偏光板において通常使用される衝撃吸収層を特に制限されることなく用いることができ、上記光学フィルムにおける衝撃吸収層が好ましく挙げられる。
上記偏光板は、上記光学フィルムの衝撃吸収層が設けられた側と偏光膜とが直接貼り合わされてもよく、衝撃吸収層とは反対側の面(すなわち、樹脂フィルム側の面)が貼り合わされてもよく、衝撃吸収層と偏光膜の間に樹脂フィルムを介して貼り合わされてもよい。
上記光学フィルムと偏光膜との貼り合わせ、及び、衝撃吸収層と偏光膜との貼り合わせにおいては、接着剤又は粘着剤を使用してもよい。この場合、常用の接着剤又は粘着剤を使用することができる。なお、衝撃吸収層が貼り合わせ面に位置する場合には、この衝撃吸収層により貼り合わせることもできる。
上記偏光板はフロント側及びリア側のいずれの偏光板としても好ましく用いられる。フロント側偏光板として用いられる場合、上記光学フィルムはハードコート層を有していても有していなくてもよいが、ハードコート層を有することが好ましく、液晶パネルに組み込まれた際に、最も視認側にハードコート層を有することがより好ましい。また、リア側偏光板として用いられる場合、上記光学フィルムはハードコート層を有していても有していなくてもよい。
偏光膜(偏光子とも称す。)としては、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜及びポリエン系偏光膜等が挙げられる。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコールフィルムを用いて製造することができる。偏光膜の、上記光学フィルムが設けられていない側の保護フィルムは、通常、樹脂フィルムである。かかる保護フィルムは、セルロースアシレートフィルムが例示される。
(輝度向上フィルム)
上記偏光板は、輝度向上フィルムが配置されてもよい。輝度向上フィルムは特に限定されず、各種公知のものを用いることができる。具体的には、例えば特許04091978号記載の誘電体多層膜、3M社製DBEF(商品名)、並びに、3M社製のいずれも商品名で、APF-V3及びAPF-V4等が挙げられる。輝度向上フィルムは、衝撃吸収層を介して偏光板に配置してもよく、接着剤又は粘着剤を介して偏光板に配置してもよい。その場合、接着剤又は粘着剤としては各種公知のものが使用できる。
<<液晶パネル>>
液晶パネルは、少なくとも、液晶セルと偏光板とを含む。
上記液晶セルを構成するガラス基板としては、通常、厚さ1mm以下のものが使用され、液晶パネルの軽量化の観点から、好ましくは厚さ0.5mm以下であり、さらに好ましくは厚さ0.3mm以下のものが使用される。
好ましくは、液晶パネルには、フロント側偏光板、液晶セル、及びリア側偏光板が含まれる。
本発明の液晶パネルは、液晶セルと、この液晶を挟むフロント側偏光板とリア側偏光板とを有する。本発明の液晶パネルにおけるフロント側偏光板及びリア側偏光板、並びに、それぞれの偏光板における衝撃吸収層の記載については、上述のフロント側偏光板及びリア側偏光板、並びに、それぞれの偏光板における衝撃吸収層の記載をそれぞれ適用することができる。
すなわち、本発明の液晶パネルは、上述の通り、フロント側偏光板の衝撃吸収層及びリア側偏光板の衝撃吸収層における貯蔵弾性率が、下記(i)及び(ii)を満たす。
(i)フロント側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’が、1GPa(1.00×10MPa)超えである。
(ii)フロント側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’と、リア側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’との関係が下記式を満たす。
E’-E’>0
ここで、フロント側偏光板及びリア側偏光板において、偏光板が有する偏光膜と衝撃吸収層との関係に特に制限はないが、フロント側偏光板は、フロント側偏光板が有する偏光膜に対して、少なくとも視認側に上記の貯蔵弾性率E’を満たす衝撃吸収層を有することが好ましく、リア側偏光板は、リア側偏光板が有する偏光膜に対して、少なくとも反視認側に上記の貯蔵弾性率E’を満たす衝撃吸収層を有することが好ましい。
上記構成のフロント側偏光板及びリア側偏光板を有することにより、本発明の液晶パネルは、外部からの衝撃を吸収及び分散等して、優れた衝撃吸収性を発現することができる。この理由は推定であるが、次のように考えられる。すなわち、本発明の衝撃吸収層は、衝撃によって変形することで衝撃による応力を分散するため、衝撃吸収層は変形しやすいこと(弾性率が低いこと)が望ましいが、一方でフロント側衝撃吸収層が十分な弾性率を保持しないと、衝撃吸収層の変形が大きくなりすぎ、液晶セルへ直接衝撃が伝わってしまうこと、また、衝撃吸収層をフロント側とリア側の両方に設けることで、両方の層で衝撃を分散できるが、リア側衝撃吸収層の弾性率がフロント側衝撃吸収層よりも大きいと、フロント側の衝撃吸収層が優先的に変形してしまいリア側の衝撃吸収層を付与した効果を得られないことなどが一因と考えられる。このため、本発明の液晶パネルは、液晶セルを構成するガラス基板として厚さが0.5mm以下といった薄型ガラスを用いた場合にも、優れた衝撃吸収性を示すことができる。
上記液晶セルは、液晶とそれを挟む2枚の配向膜とを少なくとも有し、通常は配向膜の外側にガラス基板が配されている。本発明の液晶パネルが有する画像表示素子は、液晶表示素子である限り特に制限されない。例えば、薄膜トランジスタ液晶表示素子が挙げられる。液晶表示素子は、上記液晶セルそのものでもよく、下記オンセルタッチパネルのように、液晶セルの片面にタッチセンサーフィルム又はタッチパネルを有する形態とすることもできる。
本発明の液晶パネルは、タッチセンサー機能を備える液晶タッチパネルであることも好ましい。この場合、上記液晶表示素子は、インセルタッチパネル表示素子又はオンセルタッチパネル表示素子となる。インセルタッチパネル表示素子及びオンセルタッチパネル表示素子は、後述の画像表示装置において詳述する通りである。
本発明の液晶パネルが上記インセルタッチパネル表示素子を備える場合、本発明の液晶パネルは、フロント側偏光板、インセルタッチパネル表示素子及びリア側偏光板を少なくとも含む。
本発明の液晶パネルが上記オンセルタッチパネル表示素子を備える場合、本発明の液晶パネルは、フロント側偏光板、タッチセンサーフィルムを有するオンセルタッチパネル表示素子及びリア側偏光板を少なくとも含む。
上記偏光板と液晶セル等との貼り合わせにおいては、接着剤又は粘着剤を使用してもよい。この場合、常用の接着剤又は粘着剤を使用することができる。なお、衝撃吸収層が貼り合わせ面に位置する場合には、この衝撃吸収層により貼り合わせることもできる。
上記記載の他に、上記偏光板以外の液晶パネルの構成材料、液晶パネルの構成及び液晶パネルの形成方法等については、常用の技術を何ら制限なく適用することができる。
<<画像表示装置>>
上記光学フィルムを有する画像表示装置としては、上記光学フィルム又は上記偏光板(フロント側偏光板及びリア側偏光板の少なくとも一方の偏光板)と、画像表示素子とを有する画像表示装置が挙げられる。
上記画像表示装置としては、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置及びタッチパネルディスプレイのような画像表示装置を挙げることができる。
本発明の画像表示装置は、本発明の液晶パネルを有する液晶表示装置である。
液晶表示装置としては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super-Twisted Nematic)型、TSTN(Triple Super Twisted Nematic)型、マルチドメイン型、VA(Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型及びOCB(Optically CompensatedBend)型等が挙げられる。
画像表示装置は、脆性が改良されハンドリング性に優れ、表面平滑性及びシワ等による表示品位を損なう事が無く、湿熱試験時の光漏れを低減できることが好ましい。
すなわち、上記光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子が液晶表示素子であることが好ましい。液晶表示素子を有する画像表示装置としては、ソニーエリクソン社製、エクスペリアP(商品名)などを挙げることができる。
上記光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子が有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence;EL)表示素子であることも好ましい。
有機エレクトロルミネッセンス表示素子は、公知技術を、何ら制限なく適用することができる。有機エレクトロルミネッセンス表示素子を有する画像表示装置としては、SAMSUNG社製、GALAXY SII(商品名)などを挙げることができる。
上記光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子がインセル(In-Cell)タッチパネル表示素子であることも好ましい。インセルタッチパネル表示素子とは、タッチパネル機能を画像表示素子セル内に内蔵したものである。
インセルタッチパネル表示素子は、例えば、特開2011-76602号公報、特開2011-222009号公報等の公知技術を、何ら制限なく適用することができる。インセルタッチパネル表示素子を有する画像表示装置としては、ソニーエリクソン社製、エクスペリアP(商品名)などを挙げることができる。
また、上記光学フィルムを有する画像表示装置は、画像表示素子がオンセル(On-Cell)タッチパネル表示素子であることも好ましい。オンセルタッチパネル表示素子とは、タッチパネル機能を画像表示素子セル外に配置したものである。
オンセルタッチパネル表示素子は、例えば、特開2012-88683号公報等の公知技術を、何ら制限なく適用することができる。オンセルタッチパネル表示素子を有する画像表示装置としては、SAMSUNG社製、GALAXY SII(商品名)などを挙げることができる。
<<タッチパネル>>
上記光学フィルムを有するタッチパネルは、上記光学フィルムにタッチセンサーフィルムを貼り合わせてタッチセンサーを含むタッチパネルである。上記光学フィルムをタッチパネルに用いる場合、上記光学フィルムはHC層を有していても有していなくてもよいが、HC層を有することが好ましく、HC層が配置された面とは反対側の樹脂フィルム面(例えば、図2における衝撃吸収層2A面)にタッチセンサーフィルムを貼り合わせることが好ましい。
タッチセンサーフィルムとしては特に制限はないが、導電層が形成された導電性フィルムであることが好ましい。
導電性フィルムは、任意の支持体の上に導電層が形成された導電性フィルムであることが好ましい。
本発明の液晶パネルとしては、上記タッチパネルを有する液晶パネルも好ましく挙げられる。
上記タッチパネルは、アウトセルタッチパネルとして好ましく使用することができる。アウトセルタッチパネルとは、液晶パネルの視認側の面に貼り合せて使用されるものである。この液晶パネルとしては、通常用いられる液晶パネルを特に制限することなく使用することができ、例えば、前述の本発明の液晶パネル(ただし、タッチセンサー機能を備えるものを除く。)を好ましく使用することもできる。
また、上記タッチパネルは、オンセルタッチパネルにおけるタッチパネルとして好ましく使用することもできる。この場合、上記タッチパネルをオンセルタッチパネル表示素子の視認側の面に有する画像表示素子として使用することができる。この画像表示素子としては、通常用いられるオンセルタッチパネル等の画像表示素子を特に制限することなく使用することができ、例えば、前述のオンセルタッチパネル表示素子が挙げられる。また、前述の光学フィルム及び前述の偏光板の少なくとも1種を、組み合わせて用いてもよい。
以下に、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、表中における「-」の表記は、その欄における成分若しくは構成を有しないこと、又は、貯蔵弾性率E’若しくはtanδの測定対象がないことを示している。
<実施例>
<<光学フィルムの作製>>
[製造例1]
<1.樹脂フィルム1の作製>
(1)コア層セルロースアシレートドープ液の調製
下記の組成物をミキシングタンクに投入して撹拌し、コア層セルロースアシレートドープ液を調製した。
----------------------------------------
コア層セルロースアシレートドープ液
----------------------------------------
アセチル置換度2.88、重量平均分子量260,000のセルロースアセテート・・・100質量部
下記構造のフタル酸エステルオリゴマーA・・・10質量部
下記式Iで表される化合物(A-1)・・・4質量部
下記式IIで表される紫外線吸収剤(BASF社製)・・・2.7質量部
光安定剤(BASF社製、商品名:TINUVIN123)・・・0.18質量部
N-アルケニルプロピレンジアミン3酢酸(ナガセケムテックス社製、商品名:テークランDO)・・・0.02質量部
メチレンクロライド(第1溶媒)・・・430質量部
メタノール(第2溶媒)・・・64質量部
----------------------------------------
使用した化合物を以下に示す。
フタル酸エステルオリゴマーA(重量平均分子量:750)
Figure 0007083030000013
下記式Iで表される化合物(A-1)
式I:
Figure 0007083030000014
式IIで表される紫外線吸収剤
式II:
Figure 0007083030000015
(2)外層セルロースアシレートドープ液の調製
上記のコア層セルロースアシレートドープ液90質量部に下記の無機粒子含有組成物を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ液を調製した。
----------------------------------------
無機粒子含有組成物
----------------------------------------
平均一次粒径20nmのシリカ粒子(日本アエロジル社製、商品名:AEROSIL R972)・・・2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒)・・・76質量部
メタノール(第2溶媒)・・・11質量部
コア層セルロースアシレートドープ液・・・1質量部
----------------------------------------
(3)樹脂フィルムの作製
外層セルロースアシレートドープ液がコア層セルロースアシレートドープ液の両側に配されるように、外層セルロースアシレートドープ液、コア層セルロースアシレートドープ液、及び外層セルロースアシレートドープ液の3種を、流延口から表面温度20℃の流延バンド上に同時に流延した。
流延バンドとして幅2.1mで長さが70mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。流延バンドは、厚みが1.5mm、表面粗さが0.05μm以下になるように研磨した。用いた流延バンドはSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有する。流延バンドの全体の厚みムラは0.5%以下であった。
得られた流延膜に、風速が8m/s、ガス濃度が16%、温度が60℃の急速乾燥風を流延膜表面に当てて初期膜を形成した。その後、流延バンド上部の上流側からは140℃の乾燥風を送風した。また下流側からは120℃の乾燥風及び60℃の乾燥風を送風した。
残留溶媒量を約33質量%にした後、バンドから剥ぎ取った。次いで、得られたフィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚みが100μm(外層/コア層/外層=3μm/94μm/3μm)である樹脂フィルム1を作製した。
[鹸化処理]
上記で作製した樹脂フィルム1を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に30秒流水下に通して水洗し、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理した樹脂フィルム1を作製した。
<2.衝撃吸収層の作製>
(1)衝撃吸収層(SA層)形成用組成物の調製
下記表1に記載の配合で各成分を混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、衝撃吸収層(SA層)形成用組成物SA-1~SA-5を調製した。
Figure 0007083030000016
表1に記載した各化合物の詳細を以下に示す。
<樹脂>
クラリティ LA2140E:商品名、クラレ社製、PMMA-PnBAブロック共重合体エラストマー
ハイブラー 5127:商品名、クラレ社製、ポリスチレンとビニル-ポリジエンとのブロック共重合体エラストマーの未水添タイプ
クラリティ LA4285:商品名、クラレ社製、PMMA-PnBAブロック共重合体エラストマー
ハイブラー 7311F:商品名、クラレ社製、ポリスチレンとビニル-ポリジエンとのブロック共重合体エラストマーの水添タイプ
<添加剤>
スーパーエステルA115:商品名、荒川化学工業社製、ロジンエステル
流動パラフィン:富士フイルム和光純薬社製、試薬特級
<溶媒>
MIBK:メチルイソブチルケトン
上記表1において、固形分及び溶媒の合計量がそれぞれ100質量%となるように記載している。組成物中の固形分濃度は、固形分及び溶媒の合計量に対する固形分の割合を示している。
(2)衝撃吸収層の作製
上記で鹸化処理した樹脂フィルム1の流延バンドが接していた側とは逆側の表面上に、SA層形成用組成物SA-1を塗布し、乾燥させてSA層を形成した。
塗布及び乾燥の方法は、具体的には、次の通りとした。特開2006-122889号公報の実施例1に記載のスロットダイを用いたダイコート法により、搬送速度30m/分の条件で、SA層形成用組成物を乾燥後の膜厚が40μmになるように塗布し、雰囲気温度60℃で150秒間乾燥させ、製造例1の光学フィルムを作製した。
[製造例2]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-2を使用した以外は製造例1と同様にして、製造例2の光学フィルムを作製した。
[製造例3]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-3を使用した以外は製造例1と同様にして、製造例3の光学フィルムを作製した。
[製造例4]
<1.樹脂フィルム2の作製>
樹脂フィルム1の厚みを140μm(外層/コア層/外層=3μm/134μm/3μm)とした以外は製造例1と同様にして、樹脂フィルム2を作製した。
<2.樹脂フィルム3の作製>
(1)ハードコート層(HC層)形成用硬化性組成物の調製
下記表2に示す配合で各成分を混合し、孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、HC層形成用硬化性組成物HC-1~HC-2を調製した。
Figure 0007083030000017
上記表2中の数値の単位は質量%である。上記表2において、固形分及び溶媒の合計量がそれぞれ100質量%となるように記載している。組成物中の固形分濃度は、固形分及び溶媒の合計量に対する固形分の割合を示している。
表2に記載した各化合物の詳細を以下に示す。
<重合性化合物>
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬社製、商品名:KAYARAD DPHA)
サイクロマーM100:3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル社製、商品名)
<重合開始剤>
Irg184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(α-ヒドロキシアルキルフェノン系のラジカル光重合開始剤、BASF社製、商品名:IRGACURE184)
PAG-1:以下に示すヨードニウム塩化合物であるカチオン光重合開始剤
Figure 0007083030000018
<含フッ素化合物>
RS-90:DIC社製、ラジカル重合性基を有する含フッ素防汚剤
<含ポリシロキサン化合物>
8SS-723:大成ファインケミカル社製、反応性基当量338g/molのアクリロイル基を有するポリシロキサン防汚剤
<レベリング剤>
P-112:レベリング剤、特許第5175831号の段落0053に記載の化合物P-112
<無機粒子>
MEK-AC-2140Z:日産化学工業社製、平均一次粒径10~20nmの球形シリカ微粒子
<溶媒>
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
(2)HC層の作製
(i)第1のHC層の作製
上記の樹脂フィルム2の流延バンドが接していた側に、HC層形成用硬化性組成物HC-1を塗布し、硬化させて膜厚16μmの第1のHC層を形成した。
塗布及び硬化の方法は、具体的には、次の通りとした。特開2006-122889号公報の実施例1に記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件でHC層形成用硬化性組成物を塗布し、雰囲気温度60℃で150秒間乾燥した。その後、更に窒素パージ下、酸素濃度約0.1体積%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)を用いて、照度20mW/cm、照射量30mJ/cmの紫外線を照射して、塗布したHC層形成用硬化性組成物を硬化させて第1のHC層を形成した後、巻き取りを行った。
(ii)第2のHC層の作製
上記で形成した第1のHC層の表面上に、HC層形成用硬化性組成物HC-2を塗布し、硬化させて膜厚4μmの第2のHC層を形成した。
塗布及び硬化の方法は、具体的には、次の通りとした。特開2006-122889号公報の実施例1に記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件でHC層形成用硬化性組成物を塗布し、雰囲気温度60℃で150秒間乾燥した。その後、更に窒素パージ下、酸素濃度約0.1体積%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)を用いて、照度300mW/cm、照射量600mJ/cmの紫外線を照射して、第2のHC層を形成した後、巻き取りを行い、HC層が付与された樹脂フィルム3(以下、HC層付き樹脂フィルム3と称す。)を作製した。
[鹸化処理]
上記で作製したHC層付き樹脂フィルム3を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に30秒流水下に通して水洗し、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したHC層付き樹脂フィルム3を作製した。
<3.衝撃吸収層の作製>
上記で鹸化処理したHC層付き樹脂フィルム3の、HC層を形成した側とは逆側の表面上に、SA層形成用組成物SA-1を塗布し、乾燥させてSA層を形成した。塗布及び乾燥の方法は、具体的には、次の通りとした。特開2006-122889号公報の実施例1に記載のスロットダイを用いたダイコート法により、搬送速度30m/分の条件で、SA層形成用組成物を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、雰囲気温度60℃で150秒間乾燥させ、製造例4の光学フィルムを作製した。
[製造例5]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-2を使用した以外は製造例4と同様にして、製造例5の光学フィルムを作製した。
[製造例6]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-3を使用した以外は製造例4と同様にして、製造例6の光学フィルムを作製した。
[製造例7]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-4を使用した以外は製造例1と同様にして、製造例7の光学フィルムを作製した。
[製造例8]
SA層の乾燥後の膜厚が10μmになるようにした以外は製造例7と同様にして、製造例8の光学フィルムを作製した。
[製造例9]
SA層の乾燥後の膜厚が80μmになるようにした以外は製造例7と同様にして、製造例9の光学フィルムを作製した。
[製造例10]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-5を使用した以外は製造例4と同様にして、製造例10の光学フィルムを作製した。
[製造例11]
SA層形成用組成物SA-1の代わりにSA-5を使用した以外は製造例1と同様にして、製造例11の光学フィルムを作製した。
上記で作製した光学フィルムを構成する衝撃吸収層について、以下の試験を行った。光学フィルムの構成及び試験の結果を下記表3にまとめて示す。
[試験例A]衝撃吸収層の動的粘弾性測定
<試料作製方法>
上記で調製した衝撃吸収層(SA層)形成用組成物を、剥離処理が施された剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)シートの剥離処理面に、乾燥後の厚みが40μmになるよう塗布、乾燥させた後、剥離PETシートから衝撃吸収層を剥離し衝撃吸収層の試験片を作製した。
<測定方法>
動的粘弾性測定装置((株)アイティー計測制御社製、商品名:DVA-225)を用いて、あらかじめ温度25℃、相対湿度60%雰囲気下で2時間以上調湿した上記試験片について、「ステップ昇温・周波数分散」モードにおいて下記条件において測定を行った後、「マスターカーブ」編集にて25℃における周波数に対する、tanδ、貯蔵弾性率及び損失弾性率のマスターカーブを得た。得られたマスターカーブから、25℃、周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’、及び、tanδの極大値極大値を示す周波数を求めた。
なお、以降の表中において、25℃、周波数10Hz(1.0×10Hz)における貯蔵弾性率E’を「貯蔵弾性率」の欄に、25℃、周波数10-1~1015Hz(1.0×10-1~1.0×1015Hz)の範囲におけるtanδの極大値を「tanδ」の欄に記載する。
リア側偏光板における衝撃吸収層の25℃、周波数10-1~10Hz(1.0×10-1~1.0×10Hz)の範囲におけるtanδの値は、いずれも3.0以下であった。
試料:5mm×50mm
試験モード:引張変形モード
つかみ間距離:20mm
設定歪み:0.10%
測定温度:-100℃~40℃
昇温条件:2℃/min
[試験例B]膜厚の測定
「膜厚」は、以下の方法により、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron microscope;SEM)により観察して測定した。
各構成部材(樹脂フィルム、衝撃吸収層及びHC層)または各構成部材を含む部材(例えば液晶パネル)の断面を、イオンビーム、ミクロトーム等の常法により露出させた後、露出した断面においてSEMによる断面観察を行った。断面観察において、部材の幅方向を4等分した際の、両端を除く3つの等分点における厚みの算術平均として、各種膜厚を求めた。
Figure 0007083030000019
<<偏光板の作製>>
<樹脂フィルム4>
市販のセルロースアシレートフィルム(商品名:フジタックZRD40、富士フィルム(株)製)を用意し、樹脂フィルム4として使用した。
<樹脂フィルム5の作製>
製造例1における樹脂フィルム1の作製において、樹脂フィルムの厚みが40μm(外層/コア層/外層=3μm/34μm/3μm)となるように変更した以外は製造例1と同様にして、樹脂フィルム5を作製した。
<鹸化処理>
上記の樹脂フィルム4及び5を、55℃に保った1.5mol/LのNaOH水溶液(鹸化液)に2分間浸漬した後、フィルムを水洗し、その後、25℃の0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、更に水洗浴を30秒流水下に通して、フィルムを中性の状態にした。そして、エアナイフによる水切りを3回繰り返し、水を落とした後に70℃の乾燥ゾーンに15秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理した樹脂フィルム4及び5を作製した。
<偏光子の作製>
特開2001-141926号公報の実施例1に従い、延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて膜厚26μmの偏光子を作製した。
(リア側偏光板の作製)
上述の方法で作製した両面になにも貼りあわせていない偏光子の一方の片側にポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上述の鹸化処理した樹脂フィルム4(インナー保護フィルム)を貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、貼合した。次いで、上述の方法で作製した偏光子の樹脂フィルム4を貼り合わせた面とは反対側の面にポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前述の製造例1~3、7~9及び11の光学フィルムのいずれか(アウター保護フィルム)を、衝撃吸収層が積層されていない面と偏光子とが向き合うようにして貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、下記表に記載の偏光板A1~A3、A7~A9及びb2を作製した。これらの偏光板は、光学フィルム(アウター保護フィルム)、偏光子、及び、樹脂フィルム4(インナー保護フィルム)の順に積層された構造を有する。
(フロント側偏光板の作製)
上述の方法で作製した両面になにも貼りあわせていない偏光子の一方の片側にポリビニルアルコール系接着剤を用いて、上述の鹸化処理した樹脂フィルム4(インナー保護フィルム)を貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、貼合した。次いで、上述の方法で作製した偏光子の樹脂フィルム4を貼り合わせた面とは反対側の面にポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前述の樹脂フィルム3(アウター保護フィルム)を貼り付け、70℃で10分以上乾燥して、下記表4に記載の偏光板a1を作製した。この偏光板a1は、樹脂フィルム3(アウター保護フィルム)、偏光子、及び、樹脂フィルム3(インナー保護フィルム)の順に積層された構造を有する。
また、上記偏光板a1の作製において、樹脂フィルム3の代わりに樹脂フィルム5を使用し、さらに樹脂フィルム5上に、製造例4~6及び製造例10の光学フィルム(アウター保護フィルム)を、光学フィルムの衝撃吸収層が積層されている面と樹脂フィルム5とが向き合うようにして貼り付け、下記表4に記載の偏光板A4~A6及びb1を作製した。これらの偏光板は、光学フィルム(アウター保護フィルム)、樹脂フィルム5、偏光子、及び、樹脂フィルム4(インナー保護フィルムの)順に積層された構造を有する。
Figure 0007083030000020
上記で作製した偏光板について、以下の試験を行った。試験結果を下記表5にまとめて記載する。
<模擬液晶パネルの作製>
[液晶セルの作製]
一枚のガラス板(Corning社製、商品名:イーグルXG、厚み0.2mm)上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行ない、ラビング処理済みガラス基板(以下、単にガラス基板と称す。)を二枚作製した。
上記の二枚のガラス基板の片方の配向膜上に厚みが4μmになるように液晶材料(「MLC6608」、メルク社製)を塗布し、もう片方のガラス基板の配向膜が液晶材料層と接するように、配向膜同士を対向させて、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、液晶セルを作製した。なお、液晶セルは10cm四方のサイズである。
[試験例1]衝撃吸収性
上記で作製した液晶セルと、偏光板A1~A9、a1及びb1~b2とを、偏光板の樹脂フィルム4と液晶セルが向かい合うようにして、厚み20μmの粘着剤(綜研化学社製、商品名:SK-2057)を介して、表5の構成になるように、ゴムローラーで2kgの荷重を掛けながら貼り合わせて、模擬液晶パネルを作製した。なお、フロント側の偏光板の吸収軸が長手方向(左右方向)に、そして、リア側の偏光板の透過軸が長手方向(左右方向)になるように、クロスニコル配置とした。なお、各偏光板は10cm四方のサイズに切り出して用いた。
その後、ステンレスからなる基台の上に、上記の模擬液晶パネルを、厚さ20mm、幅10mmのステンレス製スペーサー(10cm四方のスペーサーから、中央部9cm四方を打ち抜いた形状のスペーサー)が模擬液晶パネルとステンレス基台の間に挟まるように設置した。この状態を図3に示す。図3において、基台301、スペーサー302、リア側偏光板303、粘着層または衝撃吸収層304、液晶セル305、粘着層または衝撃吸収層306、フロント側偏光板307がこの順に積層されている。次いで、鉄球(直径3.2cm、質量130g)を、所定の高さ(10cm、25cm、40cm、50cm及び55cm)から落下させ、上記のフロント側偏光板と鉄球が接触するように衝突させた。その後、液晶セルのひび及び割れなどの破損を観察し、鉄球の落下高さとガラス板の破損の関係を以下の評価基準に当てはめ、衝撃吸収性を評価した。本試験においては、「B」以上が合格レベルである。
<評価基準>
A:50cmの落下高さでも破損せず、55cmの落下高さで破損した。
B:40cmの落下高さで破損せず、50cmの落下高さで破損した。
C:25cmの落下高さで破損せず、40cmの落下高さで破損した。
D:10cmの落下高さで破損せず、25cmの落下高さで破損した。
E:10cmの落下高さで破損した。
衝撃吸収性の試験の結果、下記表5に記載する。
Figure 0007083030000021

上記表5に示されるように、本発明で規定するフロント側偏光板を備えない比較例102~104の模擬液晶パネルは、衝撃吸収性に劣っていた。また、フロント側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’の値がリア側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’の値以下である比較例105の模擬液晶パネルは、衝撃吸収性に劣っていた。また、フロント側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’が960MPaであり、リア側偏光板の衝撃吸収層の貯蔵弾性率E’と同じ値である比較例101の模擬液晶パネルは、10cmの落下高さでも破損が生じ、比較例のなかでも、とくに衝撃吸収性に劣っていた。
これに対して、本発明で規定するフロント側偏光板及びリア側偏光板を備えた実施例101~106の模擬液晶パネルは、40cmの高さからの鉄球の落下でも破損が見られず、優れた衝撃吸収性を備えることがわかった。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2018年8月28日に日本国で特許出願された特願2018-159797に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1A 樹脂フィルム
2A 衝撃吸収層
3A ハードコート層
4A、4B 光学フィルム
301 基台
302 スペーサー
303 リア側偏光板
304 粘着層または衝撃吸収層
305 液晶セル
306 粘着層または衝撃吸収層
307 フロント側偏光板

Claims (5)

  1. フロント側偏光板及びリア側偏光板を有する液晶パネルであって、
    前記フロント側偏光板が、樹脂フィルムと該樹脂フィルムの片面に配された衝撃吸収層とを有する光学フィルムと、該光学フィルムが有する前記樹脂フィルムの、前記衝撃吸収層が配された面とは反対側の面に、ハードコート層とを有する偏光板であり、
    前記リア側偏光板が、樹脂フィルムと該樹脂フィルムの少なくとも片面に配された衝撃吸収層とを有する光学フィルムを有する偏光板であり、
    前記フロント側偏光板の衝撃吸収層の膜厚が10μm~80μmであって、
    前記フロント側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’が1GPaを超え、かつ、前記E’と、前記リア側偏光板の衝撃吸収層の、25℃、周波数10Hzにおける貯蔵弾性率E’との関係が下記式を満たす、液晶パネル。
    E’-E’>0
  2. 前記フロント側偏光板の衝撃吸収層がエラストマーを含む層である、請求項1に記載の液晶パネル。
  3. 前記リア側偏光板の衝撃吸収層の膜厚が10μm~80μmである、請求項1又は2に記載の液晶パネル。
  4. タッチセンサーを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶パネル。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶パネルを有する画像表示装置。
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