[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るワイパ装置10の構成を示す概略図である。ワイパ装置10は、例えば、乗用自動車等の車両に備えられたウィンドシールドガラス12を払拭するためのものであり、一対のワイパ14、16と、ワイパモータ18と、リンク機構20と、制御回路22とを備えている。
ワイパ14、16は、それぞれワイパアーム24、26とワイパブレード28、30とにより構成されている。ワイパアーム24、26の基端部は、後述するピボット軸42、44に各々固定されており、ワイパブレード28、30は、ワイパアーム24、26の先端部に各々固定されている。
ワイパ14、16は、ワイパアーム24、26の動作に伴ってワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12上を往復動作し、ワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12を払拭する。
ワイパモータ18は、主にウォームギアで構成された減速機構52を介して、正逆回転可能な出力軸32を有し、リンク機構20は、クランクアーム34と、第1リンクロッド36と、一対のピボットレバー38、40と、一対のピボット軸42、44と、第2リンクロッド46とを備えている。
クランクアーム34の一端側は、出力軸32に固定されており、クランクアーム34の他端側は、第1リンクロッド36の一端側に動作可能に連結されている。また、第1リンクロッド36の他端側は、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端寄りの箇所に動作可能に連結されており、ピボットレバー38のピボット軸42を有する端とは異なる端及びピボットレバー40におけるピボットレバー38の当該端に対応する端には、第2リンクロッド46の両端がそれぞれ動作可能に連結されている。
また、ピボット軸42、44は、車体に設けられた図示しないピボットホルダによって動作可能に支持されており、ピボットレバー38、40におけるピボット軸42、44を有する端は、ピボット軸42、44を介してワイパアーム24、26が各々固定されている。
ワイパ装置10では、出力軸32が所定の範囲の回転角θ1で正逆回転されると、この出力軸32の回転力がリンク機構20を介してワイパアーム24、26に伝達され、このワイパアーム24、26の往復動作に伴ってワイパブレード28、30がウィンドシールドガラス12上における下反転位置P2と上反転位置P1との間で往復動作をする。θ1の値は、ワイパ装置のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として140°とする。
本実施の形態に係るワイパ装置10では、図1に示されるように、ワイパブレード28、30が格納位置P3に位置された場合には、クランクアーム34と第1リンクロッド36とが直線状をなす構成とされている。
格納位置P3は、下反転位置P2の下方に設けられている。ワイパブレード28、30が下反転位置P2にある状態から、出力軸32がθ2回転することにより、ワイパブレード28、30は格納位置P3に動作する。θ2の値は、ワイパ装置のリンク機構の構成等によって様々な値をとり得るが、本実施の形態では、一例として10°とする。
なお、θ2が「0」の場合は、下反転位置P2と格納位置P3は一致し、ワイパブレード28、30は、下反転位置P2で停止し、格納される。
ワイパモータ18には、ワイパモータ18の回転を制御するための制御回路22が接続されている。本実施の形態に係る制御回路22は、例えば、ワイパモータ18の出力軸32の回転速度及び回転角を検知する回転角センサ54、ワイパモータ18を作動させるための電流をパルス幅変調(PWM)によって生成してワイパモータ18に供給する駆動回路56を有している。
本実施の形態に係るワイパモータ18は、前述のように減速機構52を有しているので、出力軸32の回転速度及び回転角は、ワイパモータ本体の回転速度及び回転角と同一ではない。しかしながら、本実施の形態では、ワイパモータ本体と減速機構52は一体不可分に構成されているので、以下、出力軸32の回転速度及び回転角を、ワイパモータ18の回転速度及び回転角とみなすものとする。
回転角センサ54は、ワイパモータ18の減速機構52内に設けられ、出力軸32に連動して回転する励磁コイル又はマグネットの磁界(磁力)を電流に変換して検出する。
制御回路22は、回転角センサ54が検出した出力軸32の回転角からワイパブレードのウィンドシールドガラス12上での位置を算出可能で当該位置に応じて出力軸32の回転速度が変化するように駆動回路56を制御するマイクロコンピュータ58を有する。制御回路22には、駆動回路56の制御に用いるデータ及びプログラムを記憶した記憶装置であるメモリ60が設けられている。メモリ60は、ワイパブレード28、30のウィンドシールドガラス12上の位置に応じて出力軸32の回転速度を算出するためのデータ及びプログラムを記憶している。マイクロコンピュータ58には、車両のエンジン等の制御を統括する車両ECU(Electronic Control Unit)90が接続されている。
車両ECU90には、ワイパスイッチ50、ウォッシャスイッチ62、間欠ボリューム92及びウィンドシールドガラス12表面の水滴を検知するレインセンサ94が接続されている。
ワイパスイッチ50は、車両のバッテリからワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ワイパスイッチ50は、ワイパブレード28、30を、低速で動作させる低速作動モード選択位置、高速で動作させる高速作動モード選択位置、一定周期で間欠的に動作させる間欠作動モード選択位置、レインセンサ94が雨滴を検知した場合に動作させるAUTO(オート)作動モード選択位置、格納(停止)モード選択位置に切替可能である。また、各モードの選択位置に応じた信号を車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に出力する。
ワイパスイッチ50から各モードの選択位置に応じて出力された信号が車両ECU90を介してマイクロコンピュータ58に入力されると、マイクロコンピュータ58がワイパスイッチ50からの出力信号に対応する制御をメモリ60に記憶されたデータ及びプログラムを用いて行う。
ウォッシャスイッチ62は、車両のバッテリからウォッシャモータ64及びワイパモータ18に供給される電力をオン又はオフするスイッチである。ウォッシャスイッチ62は、例えば、前述のワイパスイッチ50を備えたレバー等の操作手段に一体に設けられ、当該レバー等を乗員が手元に引く等の操作を継続している間にワイパモータ18及びウォッシャモータ64を作動させる。
ウォッシャモータ64の回転でウォッシャポンプ66が駆動され、ウォッシャポンプ66はウォッシャ液タンク68内のウォッシャ液をオープン時噴射用ホース72A又はクローズ時噴射用ホース72Bに圧送する。オープン時噴射用ホース72Aは、ワイパアーム24、26の先端付近に各々設けられたオープン時噴射用ノズル74Aに接続されている。また、クローズ時噴射用ホース72Bは、ワイパアーム24、26の先端付近に各々設けられたクローズ時噴射用ノズル74Bに接続されている。
図1に示したように、オープン時噴射用ノズル74Aは、ワイパブレード28、30が下反転位置P2から上反転位置P1まで払拭するオープン動作の場合にワイパブレード28、30が動作する方向、すなわち上反転位置P1に向けて設けられている。本実施の形態では、オープン動作の場合に、オープン時噴射用ノズル74Aからオープン時噴射方向76Aにウォッシャ液を噴射する。
また、図1に示したように、クローズ時噴射用ノズル74Bは、ワイパブレード28、30が上反転位置P1から下反転位置P2まで払拭するクローズ動作の場合にワイパブレード28、30が動作する方向、すなわち下反転位置P2に向けて設けられている。本実施の形態では、クローズ動作の場合に、クローズ時噴射用ノズル74Bからクローズ時噴射方向76Bにウォッシャ液を噴射する。
ウォッシャモータ64は、オープン動作とクローズ動作とでは回転方向を逆転させて、オープン動作ではオープン時噴射用ノズル74Aから、クローズ動作ではクローズ時噴射用ノズル74Bから、各々ウォッシャ液を噴射するようにウォッシャポンプ66を駆動させる。
間欠ボリューム92は、ワイパスイッチ50が間欠作動モード選択位置の場合に、間欠的にワイパブレード28、30が動作する周期を変更するためのスイッチである。
レインセンサ94は、例えば、赤外線の発光素子であるLED、受光素子であるフォトダイオード、赤外線の光路を形成するレンズ及び制御回路を含んでいる。LEDから放射された赤外線はウィンドシールドガラス12で全反射するが、ウィンドシールドガラス12の表面に水滴が存在すると赤外線の一部が水滴を透過して外部に放出されるため、ウィンドシールドガラス12での反射量が減少する。その結果、受光素子であるフォトダイオードに入る光量が減少する。かかる光量の減少に基づいて、ウィンドシールドガラス12表面の水滴を検知する。
図2は、本実施の形態に係るワイパ装置10の回路を模式的に示した回路図である。図2に示すように、ワイパ装置10は、ワイパモータ18を駆動することで、出力軸32とリンク機構を介して連結されたワイパアーム24、26を往復動作させるワイパ駆動回路88と、ウォッシャモータ64を駆動させるポンプ駆動回路57と、ワイパ駆動回路88及びポンプ駆動回路57を駆動させる駆動回路56と、駆動回路56を制御する制御回路22と、を含んでいる。本実施の形態に係るワイパ装置10の制御回路22は、図2に示したマイクロコンピュータ58を含み、駆動回路56は、プリドライバ98、リレー駆動回路78及びFET駆動回路80を含んで構成されている。マイクロコンピュータ58には、車両ECU90(図示せず)を介して、ワイパスイッチ50、ウォッシャスイッチ62、レインセンサ94、間欠ボリューム92が各々接続されている。
ワイパ駆動回路88は、4個のFET82A~82Dを含んでいる。FET82Aは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートがプリドライバ98に接続され、ソースがワイパモータ18の一端部に接続されている。FET82Bは、ドレインが電源(+B)に接続され、ゲートがプリドライバ98に接続され、ソースがワイパモータ18の他端部に接続されている。FET82Cは、ドレインがワイパモータ18の一端部に接続され、ゲートがプリドライバ98に接続され、ソースが接地されている。FET82Dは、ドレインがワイパモータ18の他端部に接続され、ゲートがプリドライバ98に接続され、ソースが接地されている。
プリドライバ98は、FET82A~82Dのゲートに供給する制御信号を切り替えることで、ワイパモータ18の駆動を制御する。すなわち、プリドライバ98は、ワイパモータ18の出力軸32を所定方向に回転させる場合には、FET82AとFET82Dの組をオンさせ、ワイパモータ18の出力軸32を所定方向と逆方向に回転させる場合には、FET82BとFET82Cの組をオンさせる。また、プリドライバ98は、ワイパモータ18の出力軸32の目標回転速度に応じて、所定の制御周期のうちオンさせるFET82の組がオンしている時間の割合(デューティー比)を変化させるPWMを行う。上記の制御により、ワイパモータ18の出力軸32の回転方向及び回転速度が制御される。
ポンプ駆動回路57は、2個のリレーRLY1、RLY2を内蔵したリレーユニット84、2個のFET86A、86Bを含んでいる。リレーユニット84のリレーRLY1、RLY2のリレーコイルはリレー駆動回路78に各々接続されている。リレー駆動回路78はリレーRLY1、RLY2のオンオフ(リレーコイルの励磁/励磁停止)を切り替える。リレーRLY1、RLY2は、リレーコイルが励磁されていない間は、共通端子84Cが第1端子84Aと接続している状態(図2に示す状態:オフ状態)を維持し、リレーコイルが励磁されると共通端子84Cを第2端子84Bと接続する状態に切り替わる。リレーRLY1の共通端子84Cはウォッシャモータ64の一端に接続されており、リレーRLY2の共通端子84Cはウォッシャモータ64の他端に接続されている。また、リレーRLY1、RLY2の第1端子84AはFET86Bのドレインに接続され、リレーRLY1、RLY2の第2端子84Bは電源(+B)に接続されている。
FET86BはゲートがFET駆動回路80に接続され、ソースが接地されている。FET86Bのオンオフと、FET86Bのオン時間のデューティ比(所定の制御周期のうちFET86Bがオンしている時間の割合)はFET駆動回路80によって制御される。FET86Bのドレインと電源(+B)との間にはFET86Aが設けられている。FET86Aは、ゲートに制御信号が入力されないのでオンオフの切り替えは行われず、寄生ダイオードをサージの吸収に用いる目的で設けられている。
リレー駆動回路78及びFET駆動回路80は、2個のリレーRLY1、RLY2とFET86Bとのオンオフを切り替えることで、ウォッシャモータ64の駆動を制御する。すなわち、ウォッシャモータ64の出力軸を所定方向に回転させる場合、リレー駆動回路78はリレーRLY1をオンさせ(リレーRLY2はオフ)、FET駆動回路80は所定のデューティ比でFET86Bをオンさせる。ウォッシャモータ64を所定方向とは逆方向に回転させる場合には、リレー駆動回路78はリレーRLY2をオンさせ(リレーRLY1はオフ)、FET駆動回路80は所定のデューティ比でFET86Bをオンさせる。上記の制御により、ウォッシャモータ64の出力軸の回転方向及び回転速度が制御される。なお、本実施の形態に係るワイパ装置10の回路には、ワイパモータ18のコイルに流れる電流(モータ電流)を検出する電流センサ(図示せず)が設けられている。
図3は、本実施の形態に係るウォッシャポンプ66の一例を示す断面図である。本実施の形態に係るウォッシャポンプ66は、ウォッシャモータ64で駆動されるタービン66Aを備えたターボポンプの一種である。タービン66Aは、オープン動作には矢印OPEN方向に、クローズ動作には矢印CLOSE方向に、各々駆動させる。
タービン66Aが駆動されることにより、吸入口66Cからウォッシャ液タンク68内のウォッシャ液がポンプハウジング66B内に吸引される。そして、タービン66Aが矢印OPEN方向に駆動された場合にはオープン時吐出口66Dから、タービン66Aが矢印CLOSE方向に駆動された場合にはクローズ時吐出口66Eに、ポンプハウジング66B内のウォッシャ液が吐出される。オープン時吐出口66Dは、オープン時噴射用ホース72Aを介してオープン時噴射用ノズル74Aに、クローズ時吐出口66Eはクローズ時噴射用ホース72Bを介してクローズ時噴射用ノズル74Bに、各々接続されている。したがって、ウォッシャ液は、タービン66Aが矢印OPEN方向に駆動されるとオープン時噴射用ノズル74Aから、タービン66Aが矢印CLOSE方向に駆動されるとクローズ時噴射用ノズル74Bから、各々噴射される。
本実施の形態に係るウォッシャポンプ66は、図3に示したように、ゴム又は合成樹脂等の弾性体で構成された弁66Fを有している。弁66Fは、タービン66Aが圧送してきたウォッシャ液の圧力でたわみ、オープン時ウォッシャ液入口66G又はクローズ時ウォッシャ液入口66Hを閉塞する。
例えば、タービン66Aが矢印OPENの方向に駆動された場合には、オープン時ウォッシャ液入口66G側の圧力が高まることで弁66Fがたわんでクローズ時ウォッシャ液入口66Hを閉塞する。また、タービン66Aが矢印CLOSEの方向に駆動された場合には、クローズ時ウォッシャ液入口66H側の圧力が高まることで弁66Fがたわんでオープン時ウォッシャ液入口66Gを閉塞する。その結果、タービン66Aが駆動される方向を正回転又は逆回転させることにより、ウォッシャ液をオープン時噴射用ノズル74A又はクローズ時噴射用ノズル74Bから選択的に噴射させる。
図4は、びびり発生と払拭速度との関係を例示した概略図である。びびり発生は、ウィンドシールドガラス表面の撥水コートの有無、及びワイパブレード28、30の低μコートの有無によって変化する。図4において、曲線100は撥水コート無しかつ低μコート有りの場合であり、曲線102は撥水コート無しかつ低μコート無しの場合であり、曲線104は撥水コート有りかつ低μコート有りの場合であり、曲線106は撥水コート有りかつ低μコート無しの場合である。
図4が示すように、払拭速度がある程度まで低下すると、びびりが発生するようになるが、びびりが発生し始める払拭速度は、ウィンドシールドガラス12表面の撥水コート及びワイパブレード28、30の低μコートの各々の有無によって異なる。
図5は、本実施の形態に係るワイパ装置10における、ウィンドシールドガラス12表面の撥水コートの有無及びワイパブレード28、30の低μコートの有無に応じた払拭速度モードの一例を示した表である。図5に示した払拭速度モードであるA+、A、B+、Bにおける払拭速度は以下のような大小関係を示す。
A+ > A > B+ > B
従って、撥水コート無しかつ低μコート有りの場合に対応する払拭速度が最も低速で、撥水コート無しかつ低μコート無しの場合がそれに次ぎ、撥水コート有りかつ低μコート有りの場合がさらにそれに次ぎ、そして撥水コート有りかつ低μコート無しの場合に対応する払拭速度が最も高速となる。
図5に示した払拭速度モードA+、A、B+、Bの各々における払拭速度は、例えば、実機を用いた実験等を通じて、具体的に決定する。
以上の関係から、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コートの存在は、ワイパブレード28、30のびびりを誘発する因子であり、ワイパブレード28、30の低μコートの存在は、ワイパブレード28、30のびびりの発生を抑制する因子であると考えられる。
本実施の形態では、図6に示したように、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コートの有無に応じて、払拭速度モードを設定する制御を行う。図6に示した払拭速度モードの設定は、車両メーカー又は車両販売店で主に行われ、選択された払拭速度モードは、意図的に変更しない限り維持される。すなわち、車両のイグニッションスイッチのオンオフではリセットされない。
図7は、本実施の形態に係るワイパ装置10の払拭速度モード設定の処理の一例を示したフローチャートである。ステップ700では、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されているか否かを判定する。ステップ700で、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されている場合は手順をステップ702に移行し、撥水コートが施されていない場合は手順をステップ704に移行する。
ステップ702では、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを図4に示したAに設定して処理を終了する。ステップ704では、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを図4に示したAよりも低速なBに設定して処理を終了する。
図7に示した処理の工程は、図8に示した車両のダッシュボード200の例えばステアリングホイール204の近くに設けられたタッチパネルであるインフォメーションディスプレイ202を用いて行われる。又は、車両ECU90に接続されたパーソナルコンピュータ等の機器を用いて設定してもよい。
以上説明したように、本実施の形態に係るワイパ装置10は、ウィンドシールドガラス12の表面における撥水コートの有無に応じてワイパブレード28、30の払拭速度モードを変更することにより、びびりを検知するセンサを用いずに、ワイパブレード28、30のびびりを抑制することができる。
本実施の形態に係るワイパ装置10は、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを変更するというシンプルな対策で、ワイパブレード28、30のびびりを的確に抑制できる。また、本実施の形態に係るワイパ装置10は、びびりを検知するセンサを用いないので、センサ追加による部品点数の増加に伴うワイパ装置10の製造コストの高騰及びメンテナンスの煩雑さを回避できる。
また、本実施の形態に係るワイパ装置10は、ウィンドシールドガラス12の表面の状態に応じて設定した払拭速度モードでワイパブレード28、30を払拭動作させることにより、びびりによる不快な現象をユーザが覚知することを防止できる。
[第1の実施の形態の発展例]
続いて、本発明の第1の実施の形態の発展例を説明する。本発展例は、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コートの有無に加えて、ワイパブレード28、30の低μコートの有無を考慮してワイパブレード28、30の払拭速度モードを決定する点で第1の実施の形態と相違するが、その他の構成は第1の実施の形態と同様なので、第1の実施の形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図9は、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コートの有無及びワイパブレード28、30の低μコートの有無に応じた払拭速度モードの一例を示した表である。図9に示したように、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施され、ワイパブレード28、30に低μコートが施されていない場合は、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを最も高速なA+に設定する。また、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施され、ワイパブレード28、30に低μコートが施された場合は、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを次に高速なAに設定する。また、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されず、ワイパブレード28、30に低μコートが施されていない場合は、ワイパブレード28、30の払拭速度モードをAに次いで高速なB+に設定する。そして、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されず、ワイパブレード28、30に低μコートが施された場合は、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを最も低速なBに設定する。
図10は、本実施の形態の発展例に係るワイパ装置10の払拭速度モード設定の処理の一例を示したフローチャートである。ステップ100では、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されているか否かを判定する。ステップ100で、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されている場合は手順をステップ102に移行し、撥水コートが施されていない場合は手順をステップ108に移行する。
ステップ102では、ワイパブレード28、30に低μコートが施されているか否かを判定する。ステップ102で、ワイパブレード28、30に低μコートが施されている場合は手順をステップ104に移行し、ワイパブレード28、30に低μコートが施されていない場合は手順をステップ106に移行する。
ステップ104では、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを図9に示したAに設定して処理を終了する。ステップ106では、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを図9に示したAよりも高速なA+に設定して処理を終了する。
ステップ100でウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されていない場合は、ステップ108でワイパブレード28、30に低μコートが施されているか否かを判定する。ステップ108で、ワイパブレード28、30に低μコートが施されている場合は手順をステップ110に移行し、ワイパブレード28、30に低μコートが施されていない場合は手順をステップ112に移行する。
ステップ110では、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを図9に示したBに設定して処理を終了する。ステップ112では、ワイパブレード28、30の払拭速度モードを図9に示したBよりも高速でAよりも低速なB+に設定して処理を終了する。
図10に示した処理の工程は、図7に示した処理の工程と同様に、図8に示した車両のダッシュボード200の例えばステアリングホイール204の近くに設けられたタッチパネルであるインフォメーションディスプレイ202を用いて行われる。又は、車両ECU90に接続されたパーソナルコンピュータ等の機器を用いて設定してもよい。
以上説明したように、本発展例に係るワイパ装置は、ウィンドシールドガラス12の表面における撥水コートの有無及びワイパブレード28、30の低μコートの有無に応じてワイパブレード28、30の払拭速度モードを変更することにより、びびりを検知するセンサを用いずに、ワイパブレード28、30のびびりを抑制することができる。
また、本発展例に係るワイパ装置10は、ウィンドシールドガラス12の表面の状態及びワイパブレード28、30の状態に応じて設定した払拭速度モードでワイパブレード28、30を払拭動作させることにより、びびりによる不快な現象をユーザが覚知することを防止できる。
[第2の実施の形態]
続いて、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コートの有無に加えて、ワイパブレード28、30の低μコートの有無を考慮してワイパブレード28、30の払拭速度モードを決定すると共に、経年劣化等を考慮して車両の定期点検時等に払拭速度モードを見直す点で第1の実施の形態と相違するが、その他の構成は第1の実施の形態と同様なので、第1の実施の形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図11は、本実施の形態に係るワイパ装置10の払拭速度モード設定の処理の一例を示したフローチャートである。ステップ200では、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されているか否かを判定する。ステップ200で、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されている場合は手順をステップ202に移行し、撥水コートが施されていない場合は手順をステップ204に移行する。
ステップ202では、3得点を加算して手順をステップ206に移行する。ステップ204では、得点を加算せずに手順をステップ212に移行する。
ステップ206では、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートを施してから一定期間が経過したか否かを判定する。一定期間は、撥水コートの種類によるが、一例として半年から1年である。ステップ206で、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートを施してから一定期間が経過した場合は手順をステップ208に移行し、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートを実施してから一定期間が経過していない場合は手順をステップ210に移行する。
ステップ208では、2得点を加算して手順をステップ212に移行する。ステップ210では、得点を加算せずに手順をステップ212に移行する。ステップ208では、撥水コートの実施後の経過期間に応じて得点を加算してもよい。例えば、撥水コートの実施後、ステップ206での一定期間を1週間又は1カ月とし、ステップ208で1週間毎又は1カ月毎に所定の得点を加算する。
ステップ212では、ワイパブレード28、30に低μコートが施されているか否かを判定する。ステップ212で、ワイパブレード28、30に低μコートが施されている場合は手順をステップ214に移行し、ワイパブレード28、30に低μコートが施されていない場合は手順をステップ216に移行する。
ステップ214では、2得点を減算して手順をステップ218に移行する。ステップ216では、1得点を加算して手順をステップ218に移行する。
ステップ218では、ワイパブレード28、30(ラバー)の交換後に一定期間が経過したか否かを判定する。一定期間は、ワイパブレード28、30の種類によるが、一例として半年から1年である。
ステップ218で、ワイパブレード28、30の交換後に一定期間が経過した場合は手順をステップ220に移行し、ワイパブレード28、30の交換後に一定期間が経過していない場合は手順をステップ222に移行する。
ステップ220では、2得点を加算して手順をステップ224に移行する。ステップ222では、得点を加算せずに手順をステップ224に移行する。ステップ220では、ワイパブレード28、30の交換後の経過期間に応じて得点を加算してもよい。例えば、ワイパブレード28、30の交換後、ステップ218での一定期間を1週間又は1カ月とし、ステップ220で1週間毎又は1カ月毎に所定の得点を加算する。
ステップ224では、合計得点を出力して処理を終了する。本実施の形態では、ステップ224で出力した合計得点に基づいてワイパブレード28、30の払拭速度モードを自動設定又は手動設定する。払拭速度モードは、合計得点が高いほど高速に設定する。
一例として、合計得点が4以上の場合は払拭速度モードを図9に示したA+に設定する。また、合計得点が2以上4未満の場合は払拭速度モードを図9に示したAに設定する。また、合計得点が1の場合は払拭速度モードを図9に示したB+に設定する。そして、合計得点が1未満の場合は払拭速度モードを図9に示したBに設定する。
以上説明したように、本実施の形態に係るワイパ装置は、ウィンドシールドガラス12の表面における撥水コートの有無と、ワイパブレード28、30の低μコートの有無と、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コート及びワイパブレード28、30の各々の経年劣化とに応じてワイパブレード28、30の払拭速度モードを変更することにより、びびりを検知するセンサを用いずに、ワイパブレード28、30のびびりを抑制することができる。
ウィンドシールドガラス12の表面とワイパブレード28、30との摩擦は、ウィンドシールドガラス12の表面における撥水コートの有無、及びワイパブレード28、30の低μコートの有無のみならず、撥水コート又は低μコートの経年劣化に影響される。本実施の形態では、撥水コート及び低μコートの各々の有無と経年劣化とを考慮しているので、ワイパブレード28、30のびびりを抑制できる払拭速度モードを的確に設定することが可能となる。
[第2の実施の形態の発展例]
続いて、本発明の第2の実施の形態の発展例を説明する。本発展例は、ウィンドシールドガラス12の表面の撥水コート及びワイパブレード28、30の低μコートの経年劣化を考慮して撥水コートの再度の実施(更新)時期及びワイパブレード28、30の交換時期を報知する点で第1の実施の形態と相違するが、その他の構成は第1の実施の形態と同様なので、第1の実施の形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図12は、本発展例に係るワイパ装置10のメンテナンス時期通知の処理の一例を示したフローチャートである。ステップ300では、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されているか否かを判定する。ステップ300で、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートが施されている場合は手順をステップ302に移行し、撥水コートが施されていない場合は手順をステップ308に移行する。
ステップ302では、撥水コートの施工日時を取得する。施工日時は、メモリ60に記憶された施工日時を読み出してもよいし、オペレータが入力してもよい。
ステップ304では、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートを施してから一定期間(再実施期間)が経過したか否かを判定する。一定期間は、撥水コートの種類によるが、一例として半年から1年である。ステップ304で、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートを施してから一定期間が経過した場合は手順をステップ306に移行し、ウィンドシールドガラス12の表面に撥水コートを施してから一定期間が経過していない場合は手順をステップ308に移行する。
ステップ306では、撥水コートの更新時期であることを報知して、手順をステップ308に移行する。報知は、撥水コートの更新を要する旨を、文字、記号又は画像としてインフォメーションディスプレイ202に表示してもよいし、スピーカ(図示せず)から音声で出力してもよい。
ステップ308では、ワイパブレード28、30の交換日時を取得する。交換日時は、メモリ60に記憶された交換日時を読み出してもよいし、オペレータが入力してもよい。
ステップ310では、ワイパブレード28、30を交換してから一定期間(要交換期間)が経過したか否かを判定する。一定期間は、ワイパブレード28、30の種類によるが、一例として半年から1年である。ステップ310で、ワイパブレード28、30の交換から一定期間が経過した場合は、ステップ312でワイパブレード28、40の交換時期であることを報知して処理を終了する。報知は、ワイパブレード28、30の交換を要する旨を、文字、記号又は画像としてインフォメーションディスプレイ202に表示してもよいし、スピーカ(図示せず)から音声で出力してもよい。
ステップ310でワイパブレード28、30の交換から一定期間が経過していない場合は、ワイパブレード28、30の交換時期を報知せずに処理を終了する。
以上説明したように、本発展例に係るワイパ装置は、ウィンドシールドガラス12の表面における撥水コートの更新時期と、ワイパブレード28、30の交換時期とを報知することができる。報知に従って、撥水コートの更新とワイパブレード28、30の交換とを行うことにより、ワイパブレード28、30のびびりを防止できる。
また、第1の実施の形態、第1の実施の形態の発展例及び第2の実施の形態のいずれかと本発展例とを併用することにより、びびりを検知するセンサを用いずに、ワイパブレード28、30のびびりを抑制することができる。