JP7081414B2 - 車両用フロントグリル - Google Patents

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本発明は、ミリ波レーダ装置が搭載された車両において、そのミリ波レーダ装置よりも前側に配置される車両用フロントグリルに関する。
フロントグリルの後側にミリ波レーダ装置が搭載された車両では、フロントグリルの骨格部分がグリル本体によって構成される。グリル本体の一部であってミリ波レーダ装置の前方となる箇所は、ミリ波透過性を有するミリ波透過部によって構成される(例えば、特許文献1参照)。そして、ミリ波レーダ装置から、ミリ波が前方へ送信されると、そのミリ波はミリ波透過部を透過した後に、先行車両、歩行者等を含む車外の対象物に当たって反射される。反射されたミリ波は、ミリ波透過部を透過してミリ波レーダ装置によって受信される。ミリ波レーダ装置は、送信及び受信されたミリ波に基づき、車両と上記対象物との距離や相対速度を検出する。
特開2005-112193号公報
ところで、フロントグリルのミリ波透過部に雪が付着すると、ミリ波が減衰され、ミリ波レーダ装置の検出性能が低下するおそれがある。ところが、上記特許文献1を含む従来のフロントグリルでは、雪によるミリ波の減衰を抑制する対策が特に講じられていない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、雪によるミリ波の減衰を抑制することのできる車両用フロントグリルを提供することにある。
上記課題を解決する車両用フロントグリルは、ミリ波を前方へ送信するとともに反射されたミリ波を受信するミリ波レーダ装置が搭載された車両において、同ミリ波レーダ装置よりも前側に配置されるグリル本体を骨格部分として備え、前記グリル本体の一部であって前記ミリ波レーダ装置の前方となる箇所は、ミリ波透過性を有するミリ波透過部により構成され、前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方には、通電により発熱するヒータ線を有するとともにミリ波透過性を有する発熱体が固定されている。
上記の構成によれば、ミリ波レーダ装置から前方へミリ波が送信されると、そのミリ波は、フロントグリルのうち、ミリ波レーダ装置の前方のミリ波透過部及び発熱体を透過する。先行車両、歩行者等を含む車外の対象物に当たって反射されたミリ波は、上記送信されたミリ波と同様にミリ波透過部及び発熱体を透過し、ミリ波レーダ装置によって受信される。ミリ波レーダ装置では、送信及び受信されたミリ波により、車両と対象物との距離や相対速度が検出される。
また、ヒータ線は、通電されると発熱する。
従って、発熱体がミリ波透過部の前面に固定されている場合に、その発熱体に雪が付着しても、ヒータ線が通電されることで発熱すれば、その熱により雪が溶かされ、雪によるミリ波の減衰が抑制される。
また、発熱体がミリ波透過部の後面に固定されている場合に、そのミリ波透過部の前面に雪が付着しても、ヒータ線が通電されることで発熱すれば、その熱により雪が溶かされ、雪によるミリ波の減衰が抑制される。
上記車両用フロントグリルにおいて、前記グリル本体の少なくとも前記ミリ波透過部は、透明な樹脂材料により形成された基材と、前記基材の後面に形成された加飾層とを備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、フロントグリルを車両前方から見た場合、ミリ波透過部では、透明な基材を通して、同基材の後面に形成された加飾層が見える。表現を変えると、透明な基材の前面から後方へ奥まった箇所に加飾層が位置するように見える。このようにして、加飾層によってミリ波透過部が装飾される。
また、ミリ波透過部の加飾層は、それよりも後側に位置するミリ波レーダ装置を隠す機能を発揮する。そのため、車両の前方からミリ波レーダ装置が見えることが抑制される。
上記車両用フロントグリルにおいて、前後方向における前記ミリ波透過部の厚みをTとし、ミリ波の波長をλeとし、前記基材の比誘電率をεpとし、整数をnとするとき、前記ミリ波透過部の全体について、前記厚みTが次式 T={(λe/2)/√(εp)}n を満たす値に設定されていることが好ましい。
ミリ波透過部の全体について、厚みTが上記の式を満たす値に設定されることで、ミリ波がミリ波透過部を透過する際に生ずる減衰量が、上記式を満たさない場合よりも少なくされる。
上記車両用フロントグリルにおいて、前記発熱体は、樹脂材料により形成され、かつ前記ヒータ線を前後両側から挟み込む一対のシートをさらに備えており、前記発熱体は、一方の前記シートにおいて前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方に固定されていることが好ましい。
上記の構成によれば、発熱体の一方のシートがミリ波透過部の前面及び後面の一方に固定されることで、ヒータ線が所定の配線パターンで、ミリ波透過部の前側及び後側の一方に配置される。
また、ミリ波レーダ装置から送信されたミリ波、及び車外の対象物に当たって反射されたミリ波は、発熱体では、例えばヒータ線の設けられていない箇所を透過する。
上記車両用フロントグリルにおいて、前記グリル本体には、エンブレムを取り付けるための取り付け孔が形成されており、前記ミリ波透過部は前記取り付け孔から離間した箇所に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、グリル本体では、ミリ波の透過がミリ波透過部において行われる。そのため、グリル本体において、ミリ波透過部とは異なる箇所には、ミリ波の透過性が要求されない。該当する箇所には、取り付け孔が含まれる。取り付け孔においてグリル本体に取り付けられるエンブレムについても、ミリ波の透過性が要求されない。従って、エンブレム及び取り付け孔は、ミリ波を透過させる役割とは異なる役割、例えば、発光部、電気車両における充電ポート等の設置箇所となるといった役割を担うことで、フロントグリルの多機能化を図ることが可能となる。
上記車両用フロントグリルによれば、雪によるミリ波の減衰を抑制することができる。
一実施形態におけるフロントグリルの正面図。 図1のフロントグリルにおけるミリ波透過部及び発熱体を拡大して示す部分正面図。 一実施形態におけるフロントグリルの断面構造をミリ波レーダ装置とともに示す説明図。 変形例におけるフロントグリルの断面構造をミリ波レーダ装置とともに示す説明図。
以下、車両用フロントグリルを具体化した一実施形態について図1~図3を参照して説明する。
図1及び図3に示すように、車両10のエンジンルーム11の前部には、走行風等の外気を同エンジンルーム11に導入してラジエータ(図示略)を冷却するためのフロントグリル12が配置されている。なお、図3では、フロントグリル12における各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更して示している。変形例を示す図4についても同様である。
また、フロントグリル12の後側であってラジエータの前側には、A.C.C.(アダプティブクルーズコントロール)におけるセンサとして機能するミリ波レーダ装置40が取付けられている。ミリ波レーダ装置40は、図3において矢印で示すように、ミリ波を前方へ送信し、かつ、先行車両、歩行者等を含む車外の対象物に当たって反射したミリ波を受信する。ミリ波レーダ装置40は、送信及び受信されたミリ波に基づき、車両10と上記対象物との距離や相対速度を検出する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。A.C.C.は、ミリ波レーダ装置40による検出結果をもとにエンジンのスロットルやブレーキを制御して車両10を加減速し、車間距離をコントロールする。
フロントグリル12の骨格部分は、グリル本体13によって構成されている。グリル本体13の一部、ここでは車幅方向における中央部上部には、図1において二点鎖線で示すエンブレム14を取り付けるための取り付け孔15が形成されている。取り付け孔15は、ミリ波レーダ装置40に対しては、斜め前上方に位置している。グリル本体13の下部には、格子状をなすロアグリル16が形成されている。ロアグリル16は、ミリ波レーダ装置40に対しては、斜め前下方に位置している。
グリル本体13の一部であって、ミリ波レーダ装置40の前方となる箇所は、ミリ波透過性を有するミリ波透過部21によって構成されている。ミリ波透過部21は、上記取り付け孔15とロアグリル16との間に位置している。
なお、グリル本体13において、ミリ波透過部21と、それ以外の箇所とを区別するために、後者をグリル一般部17というものとする。グリル本体13では、ミリ波透過部21とグリル一般部17とが、境界部分に凹凸がない状態で一体に形成されている。上述した取り付け孔15やロアグリル16は、このグリル一般部17に形成されている。グリル一般部17の周縁部の複数箇所には取り付け座18が形成されている。フロントグリル12は、これらの取り付け座18において、車体に対し直接に又は他の部品を介して間接に取り付けられている。
グリル本体13におけるミリ波透過部21及びグリル一般部17は、透明な樹脂材料により形成された基材22と、基材22の後面に形成された加飾層23とを備えている。本実施形態では、透明な樹脂材料として、PC(ポリカーボネート)樹脂が用いられているが、それ以外にもPMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂が用いられてもよい。
加飾層23は、ミリ波透過部21を含めグリル本体13を装飾するためのものである。加飾層23は、例えば、塗装、印刷等をすることで、黒色、青色、赤色等の色が着いた状態で形成される有色層によって構成されている。
上記加飾層23は金属光沢を有する光輝加飾層によって構成されてもよい。光輝加飾層は、例えば、金属皮膜によって構成される。この場合、金属皮膜が一面にわたって連続した状態で形成されると、ミリ波が遮断又は大きく減衰される。そのため、金属皮膜は、インジウム等の金属材料によって海島構造をなすように形成される。海島構造は、金属皮膜が一面に連続しておらず、多数の微細な金属皮膜が島状に互いに僅かに離間し又は一部接触した状態で敷き詰められてなる不連続構造である。この構造を採用することにより、金属皮膜は不連続構造となり、電気抵抗が高くなり、ミリ波透過性を有する。金属被膜は、例えば、スパッタリング、蒸着等により形成される。
また、金属被膜が海島構造をなすように形成される場合には、金属被膜の耐食性向上等のために、同金属皮膜の後側に黒色等の有色の押さえ塗膜が形成されてもよい。
さらに、加飾層23は、有色層及び光輝加飾層の組み合わせによって構成されてもよい。
ところで、ミリ波透過部21には、ミリ波が透過する際に生ずる減衰量が少ないことが要求される。一方で、ミリ波の減衰量と、ミリ波透過部21の厚みとの間に一定の関係があること、すなわち、一定の条件(下記式1参照)を満たす複数の厚みでは減衰量が少なくなることが判っている。
このことから、本実施形態では、前後方向におけるミリ波透過部21の寸法(厚み)をTとし、ミリ波の波長をλeとし、基材22の比誘電率をεpとし、整数をnとしたとき、厚みTが、次式1を満たす値に設定されている。
T={(λe/2)/√(εp)}n・・・(式1)
このように、ミリ波透過部21の厚みTは、半波長を比誘電率の平方根にて除算した値の整数倍の値に設定されている。整数nは2,3が好ましく、基材22が上記のようにPC樹脂によって形成される場合には、厚みTは、2.4mm、3.6mmに設定される。この厚みであると、フロントグリル12としての剛性を保持し、かつ発熱体24を配置しても熱伝導性もよく、融雪の機能も満足する。
なお、グリル本体13のうち、グリル一般部17については、ミリ波の透過性が要求されない。そのため、グリル一般部17については、上記のような厚みについての制約を受けない。グリル一般部17の厚みは、上記式1を満たさない値に設定されてもよい。また、グリル一般部17については、厚みが均一に設定されてもされなくてもよく、前後方向に凹凸状をなす形状に形成されてもよい。
ミリ波透過部21の後面には発熱体24が固定されている。発熱体24は、通電により発熱するヒータ線25と、樹脂材料により形成され、かつヒータ線25を前後両側から挟み込むことでヒータ線25を被覆する一対のシート28,29とを備えている。こうした構成の発熱体24は、面状発熱体、フィルムヒータ等とも呼ばれる。
ヒータ線25としては、例えば、ニクロム線が用いられる。そのほかにも、ヒータ線25として、透明導電膜、カーボン発熱体、銀ペースト等によって線状に形成されたものが用いられてもよい。このうち、透明導電膜は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)を材料として用い、スパッタリング、蒸着等することによって形成される。この場合には、ヒータ線25が見えにくくなるため、発熱体24の見栄えが向上する。これに伴い、ミリ波透過部21、ひいてはグリル本体13の外観品質が向上する。
図2に示すように、ヒータ線25は、波形状に繰り返し屈曲された状態で形成されている。より詳しくは、ヒータ線25は、互いに平行な状態で延びる複数の直線部26と、隣り合う直線部26の端部同士を連結する折り返し部27とを備えている。
図3に示すように、シート28,29は、PC樹脂等の透明な樹脂材料によって形成されており、ミリ波透過性を有している。なお、シート28,29として、可撓性を有する積層体であり、フィルムと呼ばれる薄い積層体が用いられてもよい。
そして、発熱体24は、前側のシート28の前面において、ミリ波透過部21(加飾層23)の後面に対し、接着により固定されている。
発熱体24は、フロントグリル12の製造に際し、グリル本体13の成形後に、次の発熱体固定工程が行われることにより、ミリ波透過部21に固定される。すなわち、発熱体固定工程では、発熱体24における前側のシート28が、真空状態のもとで、ミリ波透過部21の後面に接着される。そのため、ミリ波透過部21との間に気泡が入るのを抑制しつつ、発熱体24を同ミリ波透過部21に固定することが可能である。
次に、上記のように構成された本実施形態のフロントグリル12の作用及び効果について説明する。
フロントグリル12では、加飾層23を有するミリ波透過部21が、そのミリ波透過部21よりも後側に配置されている発熱体24及びミリ波レーダ装置40を覆い隠す機能を発揮する。そのため、車両10の前方から発熱体24及びミリ波レーダ装置40が見えるのを抑制することができる。
また、フロントグリル12を車両10の前方から見た場合、ミリ波透過部21では、透明な基材22を通して、同基材22の後面に形成された加飾層23が見える。表現を変えると、透明な基材22の前面から後方へ奥まった箇所に加飾層23が位置するように見える。加飾層23は、ミリ波透過部21を装飾する機能を発揮する。従って、加飾層23によってミリ波透過部21ひいてはグリル本体13の外観品質を向上することができる。
ミリ波レーダ装置40から前方へミリ波が送信されると、そのミリ波は、図3において矢印で示すように、同ミリ波レーダ装置40の前方に位置する発熱体24のうち、ヒータ線25の設けられていない箇所を透過する。また、ミリ波は、発熱体24の前側に位置するミリ波透過部21を透過する。この際、加飾層23が金属被膜によって構成されている場合には、ミリ波は、蒸着等された金属粒子間の隙間を透過する。先行車両、歩行者等を含む車外の対象物に当たって反射されたミリ波は、上記送信されたミリ波と同様にミリ波透過部21及び発熱体24を透過し、ミリ波レーダ装置40によって受信される。ミリ波レーダ装置40では、送信及び受信されたミリ波により、車両10と対象物との距離や相対速度が検出される。
ここで、本実施形態では、ミリ波透過部21の厚みTが、同ミリ波透過部21の部位によらず上記の式1を満たす値に均一に設定されている。そのため、ミリ波がミリ波透過部21を透過する際に生ずる減衰量が、上記式1を満たさない場合よりも少なくされる。式1を満たさないものには、ミリ波透過部21が前後方向に凹凸状をなすように形成されていて、前後方向の厚みが均一でないものも含まれる。
また、ヒータ線25が通電により発熱すると、その熱はミリ波透過部21に伝わる。従って、ミリ波透過部21の前面に雪が付着しても、その雪は、ヒータ線25から伝わる熱によって溶かされ、雪によるミリ波の減衰が抑制される。雪の付着が原因でミリ波レーダ装置40の検出性能が低下するのを抑制することができる。
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・発熱体24として、樹脂材料により形成された一対のシート28,29によって、ヒータ線25を前後両側から挟み込んで被覆する構成を有するものを用いている。そのため、発熱体24における前側のシート28をミリ波透過部21の後面に固定することで、ヒータ線25を、所定の配線パターンで、ミリ波透過部21の後側に配置することができる。
・ミリ波透過部21を、上記エンブレム14と同様に、グリル一般部17とは別の部品によって構成することも可能である。この場合、グリル一般部17に孔が形成され、ここにミリ波透過部21が嵌め込まれることにより、両者が結合される。しかし、別体のミリ波透過部21とグリル一般部17との境界部分に分割線が生じ、グリル本体13の外観品質が低下する。
この点、本実施形態では、ミリ波透過部21がグリル本体13の一部として、グリル一般部17に一体に形成されている。そのため、ミリ波透過部21とグリル一般部17との境界部分に分割線が生じず、グリル本体13の外観品質の向上を図ることができる。
・上述したように、グリル本体13では、ミリ波の透過がミリ波透過部21において行われる。そのため、グリル本体13において、ミリ波透過部21とは異なる箇所であるグリル一般部17には、ミリ波の透過性が要求されない。該当する箇所には、取り付け孔15が含まれる。取り付け孔15においてグリル一般部17に取り付けられるエンブレム14についても、ミリ波の透過性が要求されない。従って、エンブレム14及び取り付け孔15に対し、ミリ波を透過させる役割とは異なる役割、例えば、発光部、電気車両における充電ポート等の設置箇所となるといった役割を担わせることで、フロントグリル12の多機能化を図ることが可能となる。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・ヒータ線25は、ミリ波の透過を阻害しにくい配線パターンで配置されることが望ましい。この観点からは、ヒータ線25の少なくとも一部は、ミリ波透過部21におけるミリ波の透過領域よりも外側に配置されてもよい。透過領域に配置された場合に比べ、ミリ波の透過が妨げられにくく、ミリ波が発熱体24を透過する際の減衰量が少なくなるからである。
例えば、上記実施形態では、各折り返し部27がミリ波の透過領域から外れた箇所に配置されてもよい。
また、ヒータ線25が、上記透過領域を取り囲む環状となるように配置されてもよい。このようにすると、ヒータ線25がミリ波の透過を妨げるのを抑制する効果が得られるほかにも、次の効果もある。通電によりヒータ線25が発熱すると、その熱の一部は、ミリ波透過部21のうちヒータ線25によって囲まれた領域(透過領域)の中心部に向けて、全方向から伝わる。フロントグリル12の前面であってミリ波透過部21に対応する箇所に雪が付着しても、その雪を、付着箇所に拘わらずヒータ線25からの熱によって一様に溶かすことが可能である。
また、ヒータ線25は、一直線状をなすように配置されてもよい。この形状のヒータ線25が用いられる場合にも、ミリ波の透過を妨げにくくするために、同ヒータ線25は、上記と同様、ミリ波透過部21のうちミリ波の透過領域よりも外側の部分に配置されることが望ましい。
・発熱体24におけるシート28,29の一方が省略されてもよい。
・発熱体24からシート28,29が省略され、シート28,29が用いられることなくヒータ線25が単独でミリ波透過部21に配置されてもよい。
・フロントグリル12の製造に際し、発熱体固定工程における発熱体24のミリ波透過部21に対する固定が、真空圧空成形法によって行われてもよい。真空圧空成形法は、ヒータ線25を一対のシート28,29で挟み込んでなる発熱体24を室温で又は加熱雰囲気下で、延伸させながら、圧力差を用いて、予め成形されたグリル本体13におけるミリ波透過部21の後面に貼り付ける方法である。
グリル本体13の成形後に、発熱体24を上記真空圧空成形によりミリ波透過部21の後面に貼り付けることで、同発熱体24をミリ波透過部21に固定することができる。
・上記実施形態におけるグリル一般部17の一部又は全部については、基材22及び加飾層23を備えるといったミリ波透過部21の構成とは異なる構成が採られてもよい。
・グリル本体13における加飾層23が基材22の後面に代えて、前面に形成されてもよい。この場合には、基材22は必ずしも透明な樹脂材料によって形成されなくてもよい。
・グリル本体13における基材22は、それ自体が加飾機能を有するものであってもよい。この場合には、加飾層23は不要である。
・上記実施形態では、発熱体24がミリ波透過部21の後側に位置する。そのため、シート28,29は、必ずしも透明な樹脂材料によって形成されなくてもよい。
・図4に示すように、発熱体24がミリ波透過部21の前側に配置され、後側のシート29においてミリ波透過部21(基材22)の前面に固定されてもよい。シート28,29としては、上記実施形態と同様、PC等の透明な樹脂材料によって形成されたものが用いられることが望ましい。なお、図4において、上記実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号が付されている。
この場合には、発熱体24に雪が付着しても、ヒータ線25が通電されることで発熱すれば、その熱により雪が溶かされ、雪によるミリ波の減衰が抑制される。ヒータ線25が雪に近い箇所で発熱するため、発熱体24がミリ波透過部21の後側に配置される上記実施形態に比べ、ヒータ線25の熱が雪に伝わりやすく、雪を効率よく溶かすことができる。
また、フロントグリル12を車両10の前方から見た場合、シート28,29が透明な樹脂材料によって形成された発熱体24、透明な基材22を通して加飾層23が見える。発熱体24が加飾層23の装飾機能を損なうのを抑制することができる。
・フロントグリル12は、上記実施形態とは異なり、グリル一般部17に取り付け孔15が設けられず、別体のエンブレム14が取り付けられないものであってもよい。
その他、上記各実施形態から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに記載する。
(A)ミリ波を前方へ送信するとともに反射されたミリ波を受信するミリ波レーダ装置が搭載された車両において、同ミリ波レーダ装置よりも前側に配置されるグリル本体を骨格部分として備え、
前記グリル本体の一部であって前記ミリ波レーダ装置の前方となる箇所が、ミリ波透過性を有するミリ波透過部により構成され、
ミリ波透過性を有する発熱体が前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方に設けられ、
前記発熱体が、通電により発熱するヒータ線と、樹脂材料により形成され、かつ前記ヒータ線を前後両側から挟み込む一対のシートとを備え、一方の前記シートにおいて前記ミリ波透過部に固定される車両用フロントグリルを製造する方法であって、
前記グリル本体の成形後に、前記発熱体における一方のシートを真空状態のもとで、前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方に接着することにより、同発熱体を前記ミリ波透過部に固定する発熱体固定工程を備える車両用フロントグリルの製造方法。
上記の製造方法によれば、フロントグリルの製造に際し、グリル本体が成形された後に行われる発熱体固定工程では、発熱体における一方のシートが真空状態のもとで、ミリ波透過部の前面及び後面の一方に接着される。そのため、ミリ波透過部との間に気泡が入るのを抑制しつつ発熱体を同ミリ波透過部に固定することが可能である。
(B)ミリ波を前方へ送信するとともに反射されたミリ波を受信するミリ波レーダ装置が搭載された車両において、同ミリ波レーダ装置よりも前側に配置されるグリル本体を骨格部分として備え、
前記グリル本体の一部であって前記ミリ波レーダ装置の前方となる箇所が、ミリ波透過性を有するミリ波透過部により構成され、
ミリ波透過性を有する発熱体が前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方に設けられ、
前記発熱体が、通電により発熱するヒータ線と、樹脂材料により形成され、かつ前記ヒータ線を前後両側から挟み込む一対のシートとを備え、一方の前記シートにおいて前記ミリ波透過部に固定される車両用フロントグリルを製造する方法であって、
前記グリル本体の成形後に、前記発熱体を真空圧空成形法により前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方に貼り付けることで、同発熱体をミリ波透過部に固定する発熱体固定工程を備える車両用フロントグリルの製造方法。
上記の製造方法によれば、フロントグリルの製造に際し、グリル本体が成形された後に行われる発熱体固定工程では、発熱体が真空圧空成形法によりミリ波透過部の前面及び後面の一方に貼り付けられる。この貼り付けにより、発熱体がミリ波透過部に固定される。
10…車両、12…フロントグリル、13…グリル本体、14…エンブレム、15…取り付け孔、21…ミリ波透過部、22…基材、23…加飾層、24…発熱体、25…ヒータ線、28,29…シート、40…ミリ波レーダ装置。

Claims (3)

  1. ミリ波を前方へ送信するとともに反射されたミリ波を受信するミリ波レーダ装置が搭載された車両において、同ミリ波レーダ装置よりも前側に配置されるグリル本体を骨格部分として備え、
    前記グリル本体の一部であって前記ミリ波レーダ装置の前方となる箇所は、ミリ波透過性を有するミリ波透過部により構成され、
    前記グリル本体において、前記ミリ波透過部と同ミリ波透過部以外の部分とは、境界部分に凹凸がない状態で一体に形成され、
    前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方には、通電により発熱するヒータ線を有するとともにミリ波透過性を有する発熱体が固定されている車両用フロントグリル。
  2. 前記発熱体は、樹脂材料により形成され、かつ前記ヒータ線を前後両側から挟み込む一対のシートをさらに備えており、
    前記発熱体は、一方の前記シートにおいて前記ミリ波透過部の前面及び後面の一方に固定されている請求項1に記載の車両用フロントグリル。
  3. 前記グリル本体には、エンブレムを取り付けるための取り付け孔が形成されており、
    前記ミリ波透過部は前記取り付け孔から離間した箇所に形成されている請求項1又は2に記載の車両用フロントグリル。
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