JP7081161B2 - 電解コンデンサ用重合液、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

電解コンデンサ用重合液、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7081161B2
JP7081161B2 JP2018004273A JP2018004273A JP7081161B2 JP 7081161 B2 JP7081161 B2 JP 7081161B2 JP 2018004273 A JP2018004273 A JP 2018004273A JP 2018004273 A JP2018004273 A JP 2018004273A JP 7081161 B2 JP7081161 B2 JP 7081161B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
conductive
cathode
polymer layer
substrate
electrolytic
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018004273A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018117123A (ja
Inventor
良弥 小関
健治 町田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Chemi Con Corp
Original Assignee
Nippon Chemi Con Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Chemi Con Corp filed Critical Nippon Chemi Con Corp
Publication of JP2018117123A publication Critical patent/JP2018117123A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7081161B2 publication Critical patent/JP7081161B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/13Energy storage using capacitors

Landscapes

  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Description

本発明は、導電性基体と該導電性基体の表面に設けられたレドックス容量を発現する導電性高分子層とを有する陰極を備えた電解コンデンサにおける上記導電性高分子層を製造するための電解重合用重合液に関する。本発明はまた、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法に関する。
チオフェン、アニリン、ピロールのようなπ-共役二重結合を有するモノマーの重合により得られる導電性高分子は、導電性に優れ、様々な電気化学的用途に適しており、電極材料、ポリマー電池、帯電防止フィルム等の幅広い分野に応用されてきた。これらの導電性高分子は、電解重合法又は化学重合法により得ることができるが、電解重合法によると、少量のモノマーから機械的強度に優れた導電性高分子層が短時間で電極上に形成されるため好ましい。これらの導電性高分子層を得るために使用される電解重合用重合液には、通常、π-共役二重結合を有するモノマーと、支持電解質と、これらを溶解するための溶媒とが含まれている。重合液の溶媒は、モノマーの溶解性等を考慮して適宜選択され、ドーパントとしても作用する支持電解質は、溶媒への溶解度、得られるポリマーからのドーパントの脱離非容易性等を考慮して適宜選択されるが、経済性及び安全性の観点から重合液の溶媒として水を使用することが望ましく、支持電解質も水溶媒に溶解する安価なものを使用するのが望ましい。さらに、導電性高分子の様々な用途において導電性高分子が高温下に置かれることがあるため、重合液から得られる導電性高分子には高い耐熱性が望まれる。
出願人は、特許文献1(WO2012/118161号公報)及び特許文献2(WO2012/118162号公報)において、上述の要請に答えることができる電解重合用重合液を提案した。特許文献1には、100~80質量%の水と0~20質量%の有機溶媒とから成る溶媒(以下、100~80質量%の水と0~20質量%の有機溶媒とから成る溶媒を「水リッチ溶媒」と表す。)と、3位と4位に置換基を有するチオフェンから成る群から選択された少なくとも一種のモノマーと、非スルホン酸系有機支持電解質であって該支持電解質のアニオンの分子量が200以上である少なくとも一種の支持電解質、好ましくはボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された支持電解質、とを含み、耐熱性に優れる導電性高分子を与える重合液が開示されており、特許文献2には、水リッチ溶媒と、π-共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーと、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩から成る群から選択された少なくとも一種の支持電解質と、ニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された少なくとも一種の安定化剤とを含む重合液が開示されている。ニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体からなる群から選択された安定化剤は、水リッチ溶媒中でのボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制するために使用されている。
また、出願人は、本願の優先権主張の基礎となる出願の出願時には未公開であるPCT/JP2017/013331において、
導電性基体と該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
弁金属からなる基体と該基体の表面に設けられた上記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と上記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
上記空間に充填されているイオン伝導性電解質と
を備え、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することにより、上記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサを開示している。上記導電性高分子層は電解重合により形成されるのが好ましく、特許文献1又は特許文献2に開示された重合液を電解重合のために好適に使用することができる。電解コンデンサは、プラスチックコンデンサ、マイカコンデンサ等と比較して、小型で大容量を有するという利点を有するが、PCT/JP2017/013331において開示された電解コンデンサによると、上記レドックス容量の発現のため、導電性高分子層を有していない陰極を備えた電解コンデンサと比較して、電解コンデンサの単位体積当たりの容量が大幅に増大し、電解コンデンサのさらなる小型化高容量化の要請に答えることが可能になる。
なお、導電性基体と該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極を備えた電解コンデンサ自体は知られている。例えば、特許文献3(特開平3-112116号公報)には、アルミニウム箔表面を粗面化して表面積を拡大した後陽極酸化皮膜を生成した陽極と、粗面化して表面積を拡大した陰極箔表面に化学酸化重合によりポリピロール層を形成した陰極とをスペーサを介して巻回した素子に、電解液としてのγ-ブチロラクトン-フタル酸系ペーストを含浸させた定格4VDC-100μFの実施例の電解コンデンサが、上記陰極に代えてアルミニウム箔表面を粗面化して表面積を拡大した後表面にチタン蒸着膜を形成した陰極を備えた従来例の電解コンデンサと比較して、若干大きな静電容量を示したことが報告されている。また、特許文献4(特開平7-283086号公報)には、実施例9として、エッチドアルミニウム箔の表面にポリピロールの電解重合膜を形成した陰極箔を備えた電解コンデンサが記載されているが、電解重合膜による静電容量の増減については記載されていない。さらに、特許文献5(特開2000-269070号公報)には、実施の形態16,17として、エッチドアルミニウム箔の表面にポリエチレンジオキシチオフェン分散液を塗布して導電性高分子層を形成した電極箔(陰極)を備えた電解コンデンサが記載されているが、これらの実施の形態について示された容量値は、電解液に代えてポリエチレンジオキシチオフェンから成る導電層を形成した実施の形態3の電解コンデンサのものと比較して増大していない(この文献の表1参照)。
PCT/JP2017/013331において開示された電解コンデンサでは、陽極と陰極との間に電圧を印加することにより、陰極における導電性基体から導電性高分子層に対してレドックス反応を進行させるための電子が供給されてレドックス容量が発現するため、陰極の容量が顕著に増大し、したがって電解コンデンサの単位体積あたりの容量が顕著に増大する。特許文献3~5の電解コンデンサでは、導電性高分子層に対する電子の供給が、レドックス容量を発現させるためには不十分であったと推測される。
WO2012/118161号公報 WO2012/118162号公報 特開平3-112116号公報 特開平7-283086号公報 特開2000-269070号公報
現在では、導電性高分子層がポリマーに対するドーパントとしてボロジサリチル酸イオンを有していると、周波数に応じた容量値や等価直列抵抗値の変化が少ない電解コンデンサが得られることが分かっている(以下に示す比較例2と比較例3とを参照)。しかしながら、電解コンデンサに対する周波数特性のさらなる改善の要請は常に存在する。
そこで、本発明の目的は、導電性基体と該導電性基体の表面に設けられたレドックス容量を発現する導電性高分子層とを有する陰極を備えた電解コンデンサの周波数特性のさらなる改善へと導くことが可能な、陰極形成のための電解重合用重合液、及び、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法を提供することである。
発明者らは、鋭意検討した結果、水リッチ溶媒と、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された支持電解質と、π-共役二重結合を有するモノマーとを含む電解重合用重合液において、陰イオン界面活性剤を使用して上記モノマーを上記溶媒に可溶化或いは乳化させると、電解コンデンサの周波数特性のさらなる改善へと導く重合液が得られることを発見し、発明を完成させた。
したがって、本発明はまず、
導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた上記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と上記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
上記空間に充填されているイオン伝導性電解質と、
を備え、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することにより、上記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、上記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサにおける上記導電性高分子層を製造するための電解重合用重合液であって、
水リッチ溶媒と、
ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された少なくとも一種の支持電解質と、
少なくとも一種の陰イオン界面活性剤と、
該界面活性剤により上記溶媒に可溶化或いは乳化させた、π-共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーと、
を含むことを特徴とする電解重合用重合液に関する。
上述したように、ボロジサリチル酸イオンを含む導電性高分子層は周波数特性に優れた電解コンデンサを与えるが、陰イオン界面活性剤の使用により、電解コンデンサの周波数特性がさらに改善される。上記陰イオン界面活性剤は、スルホン酸型界面活性剤及び/又は硫酸エステル型界面活性剤であるのが好ましい。なお、スルホン酸型界面活性剤とは、上記水リッチ溶媒中で-SO で表される基を有する界面活性剤を意味し、硫酸エステル型界面活性剤とは、上記水リッチ溶媒中で-OSO で表される基を有する界面活性剤を意味する。
本発明の重合液におけるπ-共役二重結合を有するモノマーとしては、水リッチ溶媒に安定であれば、従来導電性高分子の製造のために用いられているモノマーを使用することができるが、上記モノマーが3位と4位に置換基を有するチオフェン、特に3,4-エチレンジオキシチオフェン(以下、3,4-エチレンジオキシチオフェンを「EDOT」と表し、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェンを「PEDOT」と表す。)であるのが好ましい。PEDOTは、高いレドックス活性を示し、耐熱性にも優れているため、本発明においてEDOTを好ましく使用することができる。
また、水リッチ溶媒において、水と有機溶媒との合計量は100質量%であり、水リッチ溶媒中の水の含有量は80質量%以上であればよいが、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましく、100質量%であるのが特に好ましい。水リッチ溶媒における有機溶媒の含有量が20質量%を超えると、得られた導電性高分子層の耐熱性が低下する。
本発明の重合液は、導電性基体と該導電性基体の表面に設けられたレドックス容量を発現する導電性高分子層とを有する陰極を備えた電解コンデンサにおける陰極の製造のために好適に使用される。そこで、本発明はまた、
導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた上記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と上記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
上記空間に充填されているイオン伝導性電解質と、
を備え、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することにより、上記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、上記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサにおける陰極の製造方法であって、
上述した本発明の電解重合用重合液に導電性基体を導入して電解重合を行うことにより、上記導電性基体の表面に導電性高分子層を形成することを特徴とする陰極の製造方法に関する。
上記導電性基体は、1層の導電層から成っていても良く、複数層の異なる導電層から成っていても良い。複数層から成っている場合には、導電層間に絶縁層が存在していても、絶縁層の一部が破壊されて導電層間が導通しており、導電性高分子層にレドックス容量を発現させるために十分な量の電子の供給がなされれば、導電性基体として使用することができる。
上記導電性基体が、酸化アルミニウム皮膜を備えたアルミニウム箔と、上記酸化アルミニウム皮膜の表面に設けられた無機導電性材料を含む無機導電層と、を含み、上記無機導電層と上記アルミニウム箔とが導通している基体であるのが好ましい。この場合には、上記導電性高分子層は、上記無機導電層の表面に設けられる。酸化アルミニウム皮膜は、自然酸化皮膜であっても良く、化成処理により形成した化成酸化皮膜であっても良い。アルミニウム箔は電解液に対して良好な耐腐食性を示すため好ましい。また、酸化アルミニウム皮膜の表面に無機導電層を設ける過程で、酸化アルミニウム皮膜の一部を破壊し、無機導電層とアルミニウム箔とを導通させることにより、陰極の導電性高分子層によるレドックス容量を発現させることができる。
上記無機導電層を形成する無機導電性材料の種類及び無機導電層の形成方法には、導電性高分子層にレドックス容量を発現させるために十分な量の電子の供給がなされるのであれば特別な限定がないが、上記無機導電性材料がカーボン、チタン、窒化チタン、炭化チタン及びニッケルから成る群から選択された少なくとも1種の材料であると、耐久性に優れた陰極が得られるため好ましい。
本発明の陰極の製造方法において、上記導電性基体の表面に上記導電性高分子層を、上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が3Ωcm以下、好ましくは1Ωcm以下、特に好ましくは0.06Ωcm以下になるように形成するのが好ましい。上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が3Ωcm以下であれば、電解コンデンサの陽極と陰極との間に電圧を印加することによりイオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層にレドックス容量を発現させるのに十分な量の電子の供給がなされ、本発明による電解コンデンサの周波数特性の改善の効果が得られるが、上記接触抵抗が1Ωcm以下であるとレドックス容量が信頼性良く発現し、上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が低いほど本発明による電解コンデンサの周波数特性の改善の効果が顕著になる。上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が3Ωcm以下、好ましくは1Ωcm以下、特に好ましくは0.06Ωcm以下になるように形成するためには、上記導電性基体の抵抗が25Ωcm以下、好ましくは6Ωcm以下、特に好ましくは0.25Ωcm以下である導電性基体を電解重合のために使用することができる。
ここで、陰極における導電性基体と導電性高分子層との接触抵抗は、図1に示す方法により測定された値を意味する。図1(a)は、導電性基体が1層の導電層から成る場合の測定方法を示した図であり、図1(b)は、導電性基体が2層の導電層から成る場合の測定方法を示した図である。接触抵抗の測定の前にまず、導電性高分子層の表面にカーボンペースト(商品型式DY-200L-2、東洋紡株式会社製)を5~10μmの厚みで塗布し、150℃で20分乾燥させ、次いで、カーボン層の表面に銀ペースト(商品型式DW-250H-5、東洋紡株式会社製)を介して銅箔を固定し、150℃で20分乾燥させる。そして、図1(a)では、銅箔と導電性基体との間について、0.1Hz~100kHzの周波数の範囲で交流インピーダンス測定を行い、図1(b)では、銅箔と導電性基体のうち導電性高分子層と接触していない層(第1層)との間について、上述した交流インピーダンス測定を行う。得られたCole-Coleプロットの実数成分の値が、導電性基体と導電性高分子層との接触抵抗である。例えば、第1層がアルミニウム箔である場合には一般に表面に酸化アルミニウム皮膜が形成されているが、酸化アルミニウム皮膜の表面に第2層として導電層が形成されている場合には、図1(b)に示した測定方法が採用される。導電性基体が3層以上の導電層から成る場合には、導電性高分子層上に上述した方法によりカーボンペースト及び銀ペーストを介して接続された銅箔と導電性高分子層から最も離れた位置にある導電層との間について、上述した交流インピーダンス測定を行い、得られたCole-Coleプロットの実数成分の値が、陰極における導電性基体と導電性高分子層との接触抵抗である。また、導電性基体の抵抗は、上述した方法と同様の方法によって測定された値を意味する。すなわち、導電性基体における導電性高分子層が形成されるべき表面にカーボンペースト(商品型式DY-200L-2、東洋紡株式会社製)を5~10μmの厚みで塗布し、150℃で20分乾燥させ、次いで、カーボン層の表面に銀ペースト(商品型式DW-250H-5、東洋紡株式会社製)を介して銅箔を固定し、150℃で20分乾燥させる。そして、銅箔と導電性基体との間について0.1Hz~100kHzの周波数の範囲で交流インピーダンス測定を行う。得られたCole-Coleプロットの実数成分の値が、導電性基体の抵抗である。
導電性基体と該導電性基体の表面に設けられたレドックス容量を発現する導電性高分子層とを有する陰極を備えた電解コンデンサにおいて、本発明の電解重合用重合液を用いて製造された陰極を使用すると、電解コンデンサの周波数特性が顕著に改善される。そこで、本発明はまた、
導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた上記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と上記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
上記空間に充填されているイオン伝導性電解質と、
を備え、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することにより、上記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、上記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサの製造方法であって、
上述した本発明の陰極の製造方法により上記電解コンデンサのための陰極を得る、陰極形成工程、
弁金属からなる基体の表面を酸化して上記弁金属の酸化物からなる誘電体層を形成し、上記電解コンデンサのための陽極を得る、陽極形成工程、及び
上記陰極の導電性高分子層と上記陽極の誘電体層とを空間を開けて対向させ、上記空間にイオン伝導性電解質を充填する、電解質充填工程
を含むことを特徴とする電解コンデンサの製造方法に関する。なお、レドックス容量の発現のために、陰極の導電性高分子層はイオン伝導性電解質と直接接触している必要があるが、陽極の誘電体層はイオン伝導性電解質と直接接触していてもよく、他の導電性材料を介してイオン伝導性電解質と間接的に接続していても良い。
ボロジサリチル酸イオンを含む導電性高分子層は、周波数特性に優れた電解コンデンサを与えるが、本発明の重合液における陰イオン界面活性剤の使用により、電解コンデンサの周波数特性がさらに改善される。
陰極における導電性基体と導電性高分子層との接触抵抗の測定方法を説明するための概略図であり、(a)は導電性基体が1層の導電層から成る場合の測定方法を示した図であり、(b)は導電性基体が2層の導電層から成る場合の測定方法を示した図である。 電解コンデンサの容量の周波数依存性を示した図である。 電解コンデンサの等価直列抵抗の周波数依存性を示した図である。
まず本発明の電解重合用重合液について説明し、次いでこの重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法について説明する。
(A)電解重合用重合液
導電性基体と該導電性基体の表面に設けられたレドックス容量を発現する導電性高分子層とを有する陰極を備えた電解コンデンサにおける上記導電性高分子層を製造するための本発明の電解重合用重合液は、
水リッチ溶媒と、
ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された少なくとも一種の支持電解質と、
少なくとも一種の陰イオン界面活性剤と、
該界面活性剤により上記溶媒に可溶化或いは乳化させた、π-共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーと、
を含む。
本発明の重合液では、環境負荷が小さく、経済的にも優れる水が主溶媒として使用される。本発明の重合液には、水に加えて、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸メチルなどの有機溶媒が含まれていてもよいが、溶媒全体の80質量%以上は水である。水は溶媒全体の90質量%以上であるのが好ましく、溶媒全体の95質量%以上であるのがより好ましく、溶媒が水のみから成るのが特に好ましい。水リッチ溶媒における有機溶媒の含有量が溶媒全体の20質量%を超えると、得られた導電性高分子層の耐熱性が低下する。
本発明の重合液に含まれるモノマーとしては、従来導電性高分子の製造のために用いられているπ-共役二重結合を有するモノマーを特に限定なく使用することができる。以下に代表的なモノマーを例示する。これらのモノマーは、単独で使用しても良く、2種以上の混合物として使用しても良い。
まず、チオフェン及びチオフェン誘導体、例えば、3-メチルチオフェン、3-エチルチオフェン等の3-アルキルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3,4-ジエチルチオフェン等の3,4-ジアルキルチオフェン、3-メトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン等の3-アルコキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン等の3,4-ジアルコキシチオフェン、3,4-メチレンジオキシチオフェン、EDOT、3,4-(1,2-プロピレンジオキシ)チオフェン等の3,4-アルキレンジオキシチオフェン、3,4-メチレンオキシチアチオフェン、3,4-エチレンオキシチアチオフェン、3,4-(1,2-プロピレンオキシチア)チオフェン等の3,4-アルキレンオキシチアチオフェン、3,4-メチレンジチアチオフェン、3,4-エチレンジチアチオフェン、3,4-(1,2-プロピレンジチア)チオフェン等の3,4-アルキレンジチアチオフェン、チエノ[3,4-b]チオフェン、イソプロピルチエノ[3,4-b]チオフェン、t-ブチル-チエノ[3,4-b]チオフェン等のアルキルチエノ[3,4-b]チオフェン、を挙げることができる。
また、ピロール及びピロール誘導体、例えば、N-メチルピロール、N-エチルピロール等のN-アルキルピロール、3-メチルピロール、3-エチルピロール等の3-アルキルピロール、3-メトキシピロール、3-エトキシピロール等の3-アルコキシピロール、N-フェニルピロール、N-ナフチルピロール、3,4-ジメチルピロール、3,4-ジエチルピロール等の3,4-ジアルキルピロール、3,4-ジメトキシピロール、3,4-ジエトキシピロール等の3,4-ジアルコキシピロールを挙げることができる。さらに、アニリン及びアニリン誘導体、例えば、2,5-ジメチルアニリン、2-メチル-5-エチルアニリン等の2,5-ジアルキルアニリン、2,5-ジメトキシアニリン、2-メトキシ-5-エトキシアニリン等の2,5-ジアルコキシアニリン、2,3,5-トリメトキシアニリン、2,3,5-トリエトキシアニリン等の2,3,5-トリアルコキシアニリン、2,3,5,6-テトラメトキシアニリン、2,3,5,6-テトラエトキシアニリン等の2,3,5,6-テトラアルコキシアニリン、及び、フラン及びフラン誘導体、例えば、3-メチルフラン、3-エチルフラン等の3-アルキルフラン、3,4-ジメチルフラン、3,4-ジエチルフラン等の3,4-ジアルキルフラン、3-メトキシフラン、3-エトキシフラン等の3-アルコキシフラン、3,4-ジメトキシフラン、3,4-ジエトキシフラン等の3,4-ジアルコキシフランを挙げることができる。
モノマーとしては、3位と4位に置換基を有するチオフェンからなる群から選択されたモノマーを使用するのが好ましい。チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。特に、EDOTは、高いレドックス活性を示し、耐熱性にも優れたPEDOTを与えるため好ましい。これらのモノマーは、以下に示す陰イオン界面活性剤により水リッチ溶媒に可溶化或いは乳化させられて使用される。すなわち、本発明の重合液におけるモノマーの含有量は、陰イオン界面活性剤を含まない重合液における飽和溶解量を超える量である。
本発明の重合液には、支持電解質として、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された少なくとも一種の化合物が含まれる。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩等のジアルキルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩等のトリアルキルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム塩が例示される。
これらの支持電解質は、単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良く、支持電解質の種類に依存して、重合液に対する飽和溶解度以下の量で且つ電解重合のために充分な電流が得られる濃度、好ましくは水1リットルに対して10ミリモル以上の濃度で使用される。
本発明の重合液にはさらに、モノマーを水リッチ溶媒に可溶化或いは乳化させるための陰イオン界面活性剤が含まれる。陰イオン界面活性剤としては、水リッチ溶媒中で安定な陰イオン界面活性剤を特に限定なく使用することができる。以下に代表的な陰イオン界面活性剤を例示する。
まず、脂肪酸塩型界面活性剤、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウムが挙げられる。次に、アミノ酸型界面活性剤、例えば、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム及びラウロイルメチルアラニンナトリウムが挙げられる。次に、硫酸エステル型界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム及びミリスチル硫酸ナトリウムのようなアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムのようなアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。次に、スルホン酸型界面活性剤、例えば、デカンスルホン酸ナトリウム及びドデカンスルホン酸ナトリウムのようなアルカンスルホン酸塩、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム及びブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムのような高分子スルホン酸塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウムのようなオレフィンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのようなスルホ脂肪酸エステル塩が挙げられる。さらに、アルキルリン酸エステル型界面活性剤、例えば、ラウリルリン酸ナトリウム、ミリスチルリン酸ナトリウム及びポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウムが挙げられる。
上記陰イオン界面活性剤は、単独で使用しても良く、2種以上の混合物として使用しても良く、上記モノマーを可溶化或いは乳化させるのに十分な量で使用される。上記陰イオン界面活性剤がスルホン酸型界面活性剤及び/又は硫酸エステル型界面活性剤であると、特に周波数特性に優れた電解コンデンサへと導くため好ましい。
本発明の電解重合用重合液の調製は、以下のような方法により行う。重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、π-共役二重結合を有するモノマー、上記支持電解質、及び上記陰イオン界面活性剤を導入し、手作業により或いは機械的な攪拌手段を使用して或いは超音波を照射して、支持電解質及び陰イオン界面活性剤を水リッチ溶媒に溶解させ、同時にモノマーを可溶化或いは乳化させることにより、重合液を調製する。重合液における各成分が安定であれば、調製時の温度に制限は無い。
本発明の重合液には、水リッチ溶媒と、上記支持電解質と、上記陰イオン界面活性剤と、該陰イオン界面活性剤により上記溶媒に可溶化或いは乳化させたπ-共役二重結合を有するモノマーと、が必須成分として含まれるが、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、他の成分が含まれていても良い。このような成分の例としては、特許文献2において水リッチ溶媒中でのボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制するために提案されているニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体からなる群から選択された安定化剤、及びpH調整剤が挙げられる。
(B)電解コンデンサの製造
本発明の電解重合用重合液は、
導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた上記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と上記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
上記空間に充填されているイオン伝導性電解質と
を備え、上記陽極と上記陰極との間に電圧を印加することにより、上記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、上記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサを製造するために使用される。レドックス容量の発現により、電解コンデンサの単位体積当たりの容量が顕著に増加する。このコンデンサは、以下に示す、陰極形成工程、陽極形成工程、及び電解質充填工程により製造することができる。以下、各工程について詳細に説明する。本発明の電解重合用重合液は、陰極形成工程において使用される。
(1)陰極形成工程(陰極の製造方法)
本発明により製造される電解コンデンサの陰極は、導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する。導電性基体としては、導電性高分子層にレドックス容量を発現させるために十分な量の電子の供給が可能であれば、集電体として機能する基体を特に限定なく使用することができる。陰極形成工程では、導電性基体の抵抗が25Ωcm以下、好ましくは6Ωcm以下、特に好ましくは0.25Ωcm以下である導電性基体を好ましく使用することができる。このような導電性基体は、1層の導電層から成っていても良く、複数層の異なる導電層から成っていても良い。複数層から成っている場合には、導電層間に絶縁層が存在していても、絶縁層の一部が破壊されて導電層間が導通していれば、導電性基体として使用することができる。例えば、従来の電解コンデンサにおいて陰極のために使用されている、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の弁金属の箔、或いは、これらの弁金属箔に化学的或いは電気化学的なエッチング処理を施すことにより表面積を増大させた箔を、導電性基体として使用することができ、アルミニウム-銅合金等の合金を導電性基体とすることもできる。弁金属箔の表面には、一般に自然酸化皮膜が存在しているが、これに加えて、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等の化成液を使用した化成処理により形成した化成酸化皮膜が存在していても、酸化皮膜の表面に無機導電性材料を含む無機導電層を設ける過程で、酸化皮膜の一部を破壊し、導電層と弁金属箔とを導通させることにより、導電性基体として使用することができる。上記無機導電層を形成する無機導電性材料の種類及び無機導電層の形成方法には、導電性高分子層にレドックス容量を発現させるために十分な量の電子の供給がなされるのであれば特別な限定がない。例えば、炭素、チタン、白金、金、銀、コバルト、ニッケル、鉄等の無機導電性材料を真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、塗布、電解めっき、無電解めっき等の手段により酸化皮膜上に積層することにより無機導電層を設ける過程で、酸化皮膜の一部を破壊し、無機導電層と弁金属箔とを導通させることができる。
弁金属箔としては、アルミニウム箔又は必要に応じてエッチング処理を施したアルミニウム箔が、電解液に対して良好な耐腐食性を示すため好ましい。アルミニウム箔を使用する場合には、一般に自然酸化皮膜或いは化成酸化皮膜が存在しているため、上述したように、酸化アルミニウム皮膜上に無機導電層を設け、この過程で酸化アルミニウム皮膜の一部を破壊し、無機導電層とアルミニウム箔とを導通させるのが好ましい。無機導電層としてチタン蒸着膜を使用する場合には、蒸着処理における周囲雰囲気中の原子を含ませることができ、例えば、窒素や炭素を含ませて窒化チタン蒸着膜及び炭化チタン蒸着膜とすることができる。上記無機導電層が、カーボン、チタン、窒化チタン、炭化チタン及びニッケルから成る群から選択された少なくとも1種の無機導電性材料を含む層であると、耐久性に優れた陰極が得られるため好ましい。また、中でも、炭化チタン蒸着膜やカーボン蒸着膜は、以下に示す電解重合において安定した特性を示す重合膜を与えるため好ましく、カーボン塗布層は生産性に優れるため好ましい。
上記導電性基体の表面には、導電性高分子層が設けられる。上記無機導電層が設けられている場合には、無機導電層の表面に導電性高分子層が設けられる。導電性高分子層は、本発明の電解重合用重合液に上記基体と対極とを導入し、上記基体と対極との間に電圧を印加して電解重合を行うことにより形成される。対極としては、白金、ニッケル、鋼等の板や網を用いることができる。
電解重合は、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われる。定電位法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して1.0~1.5Vの電位が好適であり、定電流法による場合には、モノマーの種類に依存するが、1~10000μA/cmの電流値が好適であり、電位掃引法による場合には、モノマーの種類に依存するが、飽和カロメル電極に対して0~1.5Vの範囲を5~200mV/秒の速度で掃引するのが好適である。電解重合により基体上に形成される導電性高分子層の厚みは200~2450nmの範囲であるのが好ましい。導電性高分子層の厚みが200nm未満であると、高温耐久性が低下する傾向が認められ、また、導電性高分子層の厚みが2450nmより厚いと、容量の温度依存性が大きくなる上に、電解コンデンサの小型化に寄与しにくくなる。重合温度には厳密な制限がないが、一般的には10~60℃の範囲である。重合時間にも厳密な制限はないが、一般的には1分~10時間の範囲である。電解重合は、上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が3Ωcm以下、好ましくは1Ωcm以下、特に好ましくは0.06Ωcm以下になるように行うのが好ましい。上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が3Ωcm以下であれば、電解コンデンサの陽極と陰極との間に電圧を印加することによりイオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層にレドックス容量を発現させるのに十分な量の電子の供給がなされ、本発明による電解コンデンサの周波数特性の改善の効果が得られるが、上記接触抵抗が1Ωcm以下であるとレドックス容量が信頼性良く発現し、上記導電性基体と上記導電性高分子層との接触抵抗が低いほど本発明による電解コンデンサの周波数特性の改善の効果が顕著になる。
電解重合の過程でボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された支持電解質から放出されるボロジサリチル酸アニオンがドーパントとして導電性高分子層に取り込まれて電解コンデンサの周波数特性を改善する作用を主として果たし、陰イオン界面活性剤は主として上記モノマーの可溶化又は乳化の作用を果たすと考えられるが、本発明の重合液における支持電解質と陰イオン界面活性剤とが相互に無関係に作用するものでは無く、これらの相乗効果により、上記支持電解質を含むが陰イオン界面活性剤を含まない重合液(以下に示す比較例2参照)を使用した場合と比較して、支持電解質の量を大幅に減少させた重合液(以下に示す実施例4参照。ボロジサリチル酸アンモニウムの量が比較例2の1/8。)を使用しても、電解コンデンサの周波数特性の大幅な改善が認められる。
(2)陽極形成工程
本発明により製造される電解コンデンサの陽極は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた上記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有する。陽極のための基体としては、弁金属の箔に公知の方法により化学的或いは電気化学的なエッチング処理を施すことにより表面積を増大させたものが好ましく、エッチング処理を施したアルミニウム箔が特に好ましい。基体の表面の誘電体層は、基体にホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液等の化成液を使用した化成処理を施す公知の方法により形成することができる。
(3)電解質充填工程
この工程では、上記陰極形成工程において得られた陰極と、上記陽極形成工程において得られた陽極とを、陰極の導電性高分子層と陽極の誘電体層とが空間を開けて対向するように配置して組み合わせた後、上記空間にイオン伝導性電解質を充填する。
イオン伝導性電解質としては、電子伝導性を有していない公知のイオン伝導性電解質を特に限定なく使用することができる。まず、従来の電解コンデンサのために使用されている電解液、例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、スルホラン、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、水等の溶媒に、フタル酸塩、サリチル酸塩、安息香酸塩、アジピン酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩等の溶質を溶解させた電解液を使用することができる。塩としては、アミジニウム塩、イミダゾリニウム塩、ピリミジニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩等が挙げられる。電解液の溶媒は単一の化合物であっても2種以上の混合物であっても良く、溶質も単一の化合物であっても良く2種以上の混合物であっても良い。これらの電解液にはゲル化剤が含まれていても良い。さらに、常温溶融塩(イオン液体)をイオン伝導性電解質とすることができる。
例えば、帯状の上記陰極と上記陽極とをセパレータを介して陰極の導電性高分子層と陽極の誘電体層とが対向するように積層した後これを巻回することにより形成したコンデンサ素子に上記電解液或いはイオン液体を含浸させることにより、この工程を実施することができる。また、所望形状の上記陰極と上記陽極とをセパレータを介して陰極の導電性高分子層と陽極の誘電体層とが対向するように積層することにより形成したコンデンサ素子に上記電解液或いはイオン液体を含浸させることにより、この工程を実施することができる。複数組の陰極と陽極とをセパレータを間に挟んで陰極の導電性高分子層と陽極の誘電体層とが対向するように交互に積層したコンデンサ素子に上記電解液或いはイオン液体を含浸させても良い。セパレータとしては、セルロース系繊維で構成された織布又は不織布、例えば、マニラ紙、クラフト紙、エスパルト紙、ヘンプ紙、コットン紙及びこれらの混抄紙に加えて、合成繊維紙、ガラスペーパー、ガラスペーパーとマニラ紙、クラフト紙との混抄紙等を使用することができる。上記電解液或いはイオン液体の含浸は、開口部を有する外装ケース内に上記コンデンサ素子を収容した後に実施しても良い。ゲル化剤を含む電解液を使用すると、上記コンデンサ素子に電解液を含浸させた後加熱することにより、電解液をゲル状とすることができる。
また、陰極の導電性高分子層と陽極の誘電体層とを絶縁性のスペーサーを介して対向させることにより形成したコンデンサ素子の上記スペーサーにより形成された空間にイオン伝導性電解質を充填することにより、この工程を実施しても良い。この形態の場合には、イオン伝導性電解質として、上記電解液或いはイオン液体に加えて、上記電解液をポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等に吸収させたゲル状電解質、或いは、上述した塩とポリエチレンオキサイド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート等の高分子化合物との複合体からなる固体状電解質も使用可能である。陰極の導電性高分子層の上にゲル状又は固体状の電解質を積層し、次いでこの電解質上に陽極を誘電体層が接触するように積層しても良い。
本発明により製造される電解コンデンサでは、陰極の導電性高分子層はイオン伝導性電解質と直接接触している必要があり、陰極の導電性高分子層は陽極と直接接触せずイオン伝導性電解質を介して陽極と接続(導通)しているが、陽極の誘電体層はイオン伝導性電解質と直接接触していてもよく、他の導電性材料を介してイオン伝導性電解質と間接的に接続していても良い。好適な他の導電性材料として導電性高分子層を挙げることができる。この導電性高分子層は、上記陽極形成工程において陽極を形成した後、陽極の誘電体層の表面に公知の電解重合法又は化学重合法により形成することができ、また、導電性高分子の粒子と分散媒とを少なくとも含む分散液を陽極の誘電体層の表面に適用して乾燥することにより形成することもできる。陽極の誘電体層に隣接して導電性高分子層が設けられている場合には、この導電体層と陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置して組み合わせた後、上記空間にイオン伝導性電解質を充填すれば良い。
外装ケース内に収容されて封止されたコンデンサ素子の陽極と陰極との間に電圧が印加されると、上記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、上記イオン伝導性電解質と接触している上記陰極の導電性高分子層にレドックス容量が発現するため、電解コンデンサの単位体積当たりの容量が顕著に増大する。レドックス容量発現の過程で、上記陰極の導電性高分子層にイオン伝導性電解質中のイオンが取り込まれる。
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(1)陰イオン界面活性剤ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムの利用
実施例1
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.04Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.04Mのブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムとを添加して撹拌し、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムによりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。
酸化アルミニウム皮膜を備えたアルミニウム箔を投影面積1cmに打ち抜き、酸化アルミニウム皮膜上に炭素を含むチタン蒸着膜(炭化チタン蒸着膜)を形成し、導電性基体を得た。この導電性基体の炭化チタン蒸着膜の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、上記導電性基体の抵抗は2.4×10-1Ωcmであった。この導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、上述した電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。なお、PEDOT層の厚みは、100μA/cmの条件での定電流電解重合を時間を変えて複数回実施し、各回の実験において得られたPEDOT層の厚みを原子間力顕微鏡或いは段差計を用いて測定し、PEDOT層の厚みと電荷量との関係式を導出した後、導出した関係式を用いて電解重合の電荷量をPEDOT層の厚みに換算して求めた値である。以下の電解重合の実験においても、同様の手順で導電性高分子層の厚みを求めた。上記陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は4.1×10-2Ωcmであった。
エッチング処理を施して表面積を増大させたアルミニウム箔の表面に化成処理により酸化アルミニウム皮膜を形成した後、投影面積2cmに打ち抜き、陽極(容量:370μF/cm)を得た。次いで、この陽極と上記陰極とをセルロース系セパレータを介して積層したコンデンサ素子を作成し、この素子にフタル酸のアミジニウム塩をγ-ブチロラクトンに15質量%の濃度で溶解させた電解液を含浸させ、ラミネートパックした。次いで、105℃の温度で2.9Vの電圧を60分印加するエージング処理を行い、平板型の電解コンデンサを得た。このコンデンサについて、0.02~100kHzの範囲で、容量及び等価直列抵抗を測定した。
比較例1
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.021MのEDOTと0.08Mのボロジサリチル酸アンモニウムとを添加して撹拌し、すべてのEDOTが溶解した電解重合用重合液を得た。
実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、上述した電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は3.4×10-2Ωcmであった。得られた陰極を用いて、実施例1と同様の手順で電解コンデンサを作成し、得られたコンデンサについて、0.02~100kHzの範囲で、容量及び等価直列抵抗を測定した。
図2に、実施例1及び比較例1のコンデンサについての周波数と容量(Cap)との関係を示す。図2から明らかなように、実施例1のコンデンサでは、比較例1のコンデンサと比較して、0.02kHzでの高い容量値が維持される周波数の範囲が広がり、高い周波数領域でもより高い容量値が得られた。図3に、実施例1及び比較例1のコンデンサについての周波数と等価直列抵抗(ESR)との関係を示す。図3から明らかなように、実施例1のコンデンサでは、比較例1のコンデンサと比較して、100kHzでの低い等価直列抵抗値が維持される周波数の範囲が広がり、低い周波数領域でもより低い等価直列抵抗値が得られた。したがって、実施例1の重合液において、比較例1における重合液中のボロジサリチル酸アンモニウム濃度の半量をブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムに置き換え、これによってEDOTを水に可溶化させたことにより、コンデンサの周波数特性が改善されたことが分かる。周波数特性の改善の原因を調査するために、以下の実験を行った。
実施例2
エッチング処理を施して表面積を増大させたアルミニウム箔の表面に化成処理により酸化アルミニウム皮膜を形成した後、投影面積2cmに打ち抜き、陽極(容量:360μF/cm)を得た。次いで、この陽極と実施例1において得られた陰極とをセルロース系セパレータを介して積層したコンデンサ素子を作成し、この素子にフタル酸のアミジニウム塩をγ-ブチロラクトンに15質量%の濃度で溶解させた電解液を含浸させ、ラミネートパックした。次いで、105℃の温度で3.35Vの電圧を60分印加するエージング処理を行い、平板型の電解コンデンサを得た。得られたコンデンサについて、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
比較例2
実施例2において得られた陽極と比較例1において得られた陰極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
比較例3
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.08Mのブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムとを添加して撹拌し、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムによりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は5.9×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
実施例3
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.07Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.01Mのブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムとを添加して撹拌し、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムによりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は4.3×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
実施例4
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.01Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.07Mのブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムとを添加して撹拌し、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムによりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は5.0×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
表1に、実施例2~4及び比較例2,3において得られた電解コンデンサについての120Hz及び10kHzの条件下での容量(Cap)を示す。表1において、ボロジサリチル酸アンモニウムが「AmBS」と表されており、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムが「BNS」と表されている。
Figure 0007081161000001
表1において、比較例2の電解コンデンサの容量値と比較例3の電解コンデンサの容量値とを比較すると、120Hzでの容量値は略等しいものの、10kHzでは、比較例2の電解コンデンサにおける容量値が比較例3の電解コンデンサにおける容量値よりも大きいことが分かる。したがって、比較例2のボロジサリチル酸アンモニウムを含む重合液から得られた陰極を備えた電解コンデンサは、比較例3のブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムを含む重合液から得られた陰極を備えた電解コンデンサに比較して周波数特性に優れることが分かった。
また、表1において実施例2~4の電解コンデンサの容量値を比較すると、120Hzでの容量値は略等しいものの、10kHzでは重合液中のボロジサリチル酸アンモニウムの濃度が高いほど大きな容量値が得られ、ボロジサリチル酸アンモニウムの濃度がブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムの濃度以上であると、10kHzで大きな容量値が得られることが分かる。このことから、電解コンデンサの周波数特性の改善に寄与するのは、主としてドーパントとしてPEDOT層に取り込まれたボロジサリチル酸イオンであり、陰イオン界面活性剤(ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム)は主としてEDOTを可溶化させる作用を果たしていると考えられた。しかしながら、表1から明らかなように、実施例4において用いた重合液の支持電解質(ボロジサリチル酸アンモニウム)の濃度が比較例2において用いた重合液の支持電解質の濃度の1/8であるにもかかわらず、実施例4の電解コンデンサが比較例2の電解コンデンサより改善された周波数特性を示すことから、支持電解質と陰イオン界面活性剤とは相互に無関係に作用するものでは無く、これらの相乗効果により電解コンデンサの周波数特性の大幅な改善が達成されると判断された。
(2)界面活性剤の種類の影響
実施例5
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.04Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.04Mの陰イオン界面活性剤としてのドデシル硫酸ナトリウムとを添加して撹拌し、この陰イオン界面活性剤によりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は5.6×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
実施例6
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.04Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.04Mの陰イオン界面活性剤としてのポリスチレンスルホン酸ナトリウムとを添加して撹拌し、この陰イオン界面活性剤によりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は6.8×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
実施例7
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.04Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.04Mの陰イオン界面活性剤としてのブチルヘキシルスルホコハク酸エステルナトリウム塩とを添加して撹拌し、この陰イオン界面活性剤によりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は4.4×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
実施例8
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、40℃に加熱した。この液に、0.030MのEDOTと0.04Mのボロジサリチル酸アンモニウムと0.04Mの陰イオン界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとを添加して撹拌し、この陰イオン界面活性剤によりEDOTを水に可溶化させた電解重合用重合液を得た。実施例1において得られた導電性基体(作用極)と、10cmの面積を有するSUSメッシュの対極とを、得られた電解重合用重合液に導入し、100μA/cmの条件で定電流電解重合を10分間行った。重合後の作用極を水で洗浄した後、100℃で30分間乾燥し、炭化チタン蒸着膜上のPEDOT層の厚みが350nmである陰極を得た。この陰極のPEDOT層の表面にカーボンペースト及び銀ペーストを介して銅箔を固定し、銅箔とアルミニウム箔との間について交流インピーダンス測定を行ったところ、導電性基体とPEDOT層との接触抵抗は7.1×10-2Ωcmであった。得られた陰極と実施例2において得られた陽極とを用いて、実施例2と同様の手順で電解コンデンサを作成し、120Hz及び10kHzの条件下で容量を測定した。
表2に、実施例2、5~8において得られた電解コンデンサについての120Hz及び10kHzの条件下での容量(Cap)を示す。
Figure 0007081161000002
表2から明らかなように、いずれの陰イオン界面活性剤の利用においても、優れた周波数特性を有する電解コンデンサが得られた。
本発明により、小型で大容量を有する上に周波数特性に優れた電解コンデンサが得られる。

Claims (9)

  1. 導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
    弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた前記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と前記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
    前記空間に充填されているイオン伝導性電解質と、
    を備え、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより、前記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、前記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサにおける前記導電性高分子層を製造するための電解重合用重合液であって、
    100~80質量%の水と0~20質量%の有機溶媒とからなる溶媒と、
    ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩からなる群から選択された少なくとも一種の支持電解質と、
    少なくとも一種の陰イオン界面活性剤と、
    該界面活性剤により前記溶媒に可溶化或いは乳化させた、π-共役二重結合を有する少なくとも一種のモノマーと、
    を含むことを特徴とする電解重合用重合液。
  2. 前記陰イオン界面活性剤が、スルホン酸型界面活性剤及び硫酸エステル型界面活性剤からなる群から選択されている、請求項1に記載の電解重合用重合液。
  3. 前記モノマーが3,4-エチレンジオキシチオフェンである、請求項1又は2に記載の電解重合用重合液。
  4. 前記溶媒が水のみから成る、請求項1~3のいずれか1項に記載の電解重合用重合液。
  5. 導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
    弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた前記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と前記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
    前記空間に充填されているイオン伝導性電解質と、
    を備え、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより、前記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、前記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサにおける陰極の製造方法であって、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の電解重合用重合液に導電性基体を導入して電解重合を行うことにより、前記導電性基体の表面に導電性高分子層を形成することを特徴とする陰極の製造方法。
  6. 前記導電性基体が、酸化アルミニウム皮膜を備えたアルミニウム箔と、前記酸化アルミニウム皮膜の表面に設けられた無機導電性材料を含む無機導電層と、を含み、
    前記無機導電層と前記アルミニウム箔とが導通しており、
    前記導電性高分子層が、前記無機導電層の表面に設けられている、請求項5に記載の陰極の製造方法。
  7. 前記無機導電性材料が、カーボン、チタン、窒化チタン、炭化チタン及びニッケルから成る群から選択された少なくとも1種の材料である、請求項6に記載の陰極の製造方法。
  8. 前記導電性基体と前記導電性高分子層との接触抵抗が1Ωcm以下である、請求項5~7のいずれか1項に記載の陰極の製造方法。
  9. 導電性基体と、該導電性基体の表面に設けられた導電性高分子層とを有する陰極と、
    弁金属からなる基体と、該基体の表面に設けられた前記弁金属の酸化物からなる誘電体層とを有し、該誘電体層と前記陰極の導電性高分子層とが空間を開けて対向するように配置されている陽極と、
    前記空間に充填されているイオン伝導性電解質と、
    を備え、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより、前記陰極の導電性基体から導電性高分子層に電子が供給されて、前記イオン伝導性電解質と接触している導電性高分子層がレドックス容量を発現する電解コンデンサの製造方法であって、
    請求項5~8のいずれか1項に記載の陰極の製造方法により、前記電解コンデンサのための陰極を得る、陰極形成工程、
    弁金属からなる基体の表面を酸化して前記弁金属の酸化物からなる誘電体層を形成し、前記電解コンデンサのための陽極を得る、陽極形成工程、及び
    前記陰極の導電性高分子層と前記陽極の誘電体層とを空間を開けて対向させ、前記空間にイオン伝導性電解質を充填する、電解質充填工程
    を含むことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
JP2018004273A 2017-01-13 2018-01-15 電解コンデンサ用重合液、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法 Active JP7081161B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017003986 2017-01-13
JP2017003986 2017-01-13

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018117123A JP2018117123A (ja) 2018-07-26
JP7081161B2 true JP7081161B2 (ja) 2022-06-07

Family

ID=62984389

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018004273A Active JP7081161B2 (ja) 2017-01-13 2018-01-15 電解コンデンサ用重合液、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7081161B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102224357B1 (ko) * 2018-10-10 2021-03-10 (주)플렉솔루션 도데실 설페이트 도핑된 pedot 필름 및 그 제조방법
CN116134566A (zh) * 2020-07-31 2023-05-16 松下知识产权经营株式会社 固体电解电容器元件及固体电解电容器

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000269087A (ja) 1999-03-19 2000-09-29 Matsushita Electric Ind Co Ltd コンデンサの製造方法
JP2006108132A (ja) 2004-09-30 2006-04-20 Nippon Chemicon Corp 固体電解コンデンサ及びその製造方法
WO2012115050A1 (ja) 2011-02-21 2012-08-30 日本蓄電器工業株式会社 電極箔、集電体、電極及び、これを用いた蓄電素子
JP2014053387A (ja) 2012-09-05 2014-03-20 Nippon Chemicon Corp 固体電解コンデンサの製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06120086A (ja) * 1992-10-05 1994-04-28 Fujitsu Ltd 固体電解コンデンサの製造方法
JP3443927B2 (ja) * 1994-04-14 2003-09-08 松下電器産業株式会社 電解コンデンサ及びその製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000269087A (ja) 1999-03-19 2000-09-29 Matsushita Electric Ind Co Ltd コンデンサの製造方法
JP2006108132A (ja) 2004-09-30 2006-04-20 Nippon Chemicon Corp 固体電解コンデンサ及びその製造方法
WO2012115050A1 (ja) 2011-02-21 2012-08-30 日本蓄電器工業株式会社 電極箔、集電体、電極及び、これを用いた蓄電素子
JP2014053387A (ja) 2012-09-05 2014-03-20 Nippon Chemicon Corp 固体電解コンデンサの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018117123A (ja) 2018-07-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6056012B2 (ja) 導電性高分子分散溶液の製造方法及び電解コンデンサの製造方法
JP5388811B2 (ja) 固体電解コンデンサおよびその製造方法
JP5939454B2 (ja) 固体電解コンデンサ用分散液の製造方法及び固体電解コンデンサの製造方法
CN110797199B (zh) 导电高分子复合材料及电容器
TW202143266A (zh) 混合型電解電容器及其製造方法
EP3693983B1 (en) Electrolytic capacitor and method for manufacturing same
JP7081161B2 (ja) 電解コンデンサ用重合液、この重合液を用いた電解コンデンサ用陰極及び電解コンデンサの製造方法
JP6878896B2 (ja) 電解コンデンサ及びその製造方法
JP5828588B2 (ja) 固体電解コンデンサの製造方法
WO2019230676A1 (ja) 電解コンデンサ及びその製造方法
JP5696928B2 (ja) 非水系電解質、これを含む蓄電デバイスおよび非水系電解質の製造方法
JP6060893B2 (ja) 重合液、この重合液から得られた導電性ポリマーフィルム及び固体電解コンデンサ
JP2012153867A (ja) 導電性組成物ならびにその製造方法とその導電性組成物を用いたキャパシタ
KR102337435B1 (ko) 전해 콘덴서 및 그 제조 방법
TWI836647B (zh) 用於電解電容器的組成物以及包括其的電解電容器
JP2019068006A (ja) 電解コンデンサ
JP7004198B2 (ja) 電解コンデンサ
JP2019068007A (ja) 電解コンデンサ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201102

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210915

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210930

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20211110

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220426

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220509

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7081161

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150