以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
実施形態における圧延機の蛇行検出装置は、圧延機の一対のワークロール以前の入側に配置され、前記圧延機によって圧延される圧延材の幅方向に沿った所定の測定位置での張力を測定する張力測定部と、前記張力測定部の測定結果に基づいて、前記圧延材の蛇行量(オフセンター量)の時間的な変化である蛇行挙動を判定する蛇行挙動判定部とを備える。以下、このような圧延機の蛇行検出装置について、第1および第2実施形態によってより具体的に説明する。
(第1実施形態)
図1は、実施形態の圧延システムにおける主に圧延機の構成を示す概略図である。図1には、第1および第2実施形態における圧延システムSa、Sbが図示されており、図1では、第1実施形態の圧延システムSaにおける構成には、添え字「a」を備えた符号が付され、第2実施形態の圧延システムSbにおける構成には、添え字「b」を備えた符号が付され、第1および第2実施形態の圧延システムSa、Sbにおける共通な構成には、添え字の無い符号が付されている。なお、図示の都合上、第2実施形態の張力測定部21bは、図1では省略されている(後述の図10参照)。図2は、前記圧延システムにおける第1実施形態の蛇行検出装置の構成を示すブロック図である。図3は、張力測定部における張力の算出方法を説明するための図である。図3Aは、圧延材およびセンサロールを示す斜視図であり、図3Bは、センサロールの圧電素子にかかる力の様子を示す断面図である。図4は、前記圧延機での圧延材の蛇行を説明するための図である。図4Bは、前記圧延機での圧延材の蛇行の様子を示す図であり、図4Aは、デフレクターロール(ここではステアリングロール)からの、搬送方向DRに沿った各位置で測定された圧延材の両端部の位置を示す図である。図4Aの横軸は、ミル中心(mill center)からの距離を示し、その縦軸は、デフレクターロール(deflector roll)からの距離を示す。図5は、蛇行と張力分布との関係を説明するための図である。蛇行の有る場合において、図5Aは、圧延機の入側直前の位置での圧延材の幅方向の張力分布を示し、図5Bは、圧延機とデフレクターロール(ここではステアリングロール)との中間位置での圧延材の幅方向の張力分布を示す。図6は、蛇行と張力分布との関係にかかる、シミュレーション結果を示す図である。図6Aは、蛇行の無い場合を示し、図6Bは、第1の状態で蛇行の有る場合を示し、図6Cは、第2の状態で蛇行の有る場合を示す。図7は、張力分布の測定位置と蛇行との関係を説明するための図である。圧延機とデフレクターロール(ここではステアリングロール)との間の距離をLとした場合に、図7Aは、圧延機のワークロール直下の位置(y=0)での張力分布を示し、図7Bは、圧延機のワークロール直下の位置から距離L/4の位置(y=L/4)での張力分布を示し、図7Cは、圧延機のワークロール直下の位置から距離2L/4の位置(y=2L/4=L/2)での張力分布を示し、図7Dは、圧延機のワークロール直下の位置から距離3L/4の位置(y=3L/4)での張力分布を示し、図7Eは、圧延機のワークロール直下の位置から距離Lの位置(y=L)での張力分布を示す。これら図5A、図5B、図6A~図6Cおよび図7A~図7Eにおける各横軸は、ライン中央(圧延材WKの搬送路の中央)からの距離を示し、これら各縦軸は、圧延材の長手方向の張力(圧延材の搬送方向の張力)を示す。図5ないし図7において、横軸とグラフとで囲まれた面積(圧延材WKにおける幅方向の一方端から他方端に亘るグラフの積分値)が張力を表す。
第1実施形態における圧延システムSaは、圧延機1で圧延材WKを圧延することによって圧延材WKを所定の厚さに加工するシステムであり、本実施形態では、圧延材WKの蛇行挙動を検出する圧延機の蛇行検出装置2aを備える。このような圧延システムSaは、例えば、図1および図2に示すように、図略の巻出し機と、ブライドルロールBLと、ステアリングロールSLと、圧延機1と、蛇行検出装置2aと、巻取り機VR(VR1)とを備える。図1には、蛇行検出装置2aの張力測定部21aのみが図示されている。これら前記巻出し機、ステアリングロールSL、ブライドルロールBL、蛇行検出装置2aの張力測定部21a、圧延機1および巻取り機VRは、この順で順次に、圧延材WKの搬送路(製造ライン)に沿って配置されている。
前記巻出し機は、圧延材WKを巻回した第1リールを備え、前記第1リールに巻回された圧延材WKを圧延機1へ、図1に示す例ではブライドルロールBLへ送り出す装置である。
ステアリングロールSLは、圧延材WKに対し幅方向(ロールの軸方向)の送出し位置を調整し、ステアリングロール設置位置で圧延材をミル中心にセンタリングする装置である。ステアリングロールSLは、第1および第2ステアリングロールSL-1、SL-2を備え、第1および第2ステアリングロールSL-1、SL-2は、これら各回転中心(軸心)を結ぶ線分が圧延材WKの搬送方向DRと直交するように、垂直方向(上下方向)に沿って圧延材WKを介して当接するように並置されている。前記巻出し機から送り出された圧延材WKは、側面視にてその断面が逆S字に見えるように、第2ステアリングロールSL-2に掛けられ、第1および第2ステアリングロールSL-1、SL2で挟み込まれて第1ステアリングロールSL-1から、ブライドルロールBLへ送り出される。
ブライドルロールBLは、圧延材WKにかかる張力を調整する装置である。図1に示す例では、ブライドルロールBLは、第1および第2ブライドルロールBL-1、BL-2を備え、第1および第2ブライドルロールBL-1、BL-2は、これら各回転中心(軸心)を結ぶ線分が圧延材WKの搬送方向DRと斜めに交差するように、搬送方向DRに沿って並置されている。両ロールのモータに負荷差をつけることで張力を発生させている。より高い張力を得るには、4本から6本くらいのロールが使用される。ステアリングロールSLから送り出された圧延材WKは、第1ブライドルロールBL-1に掛けられ、第1ブライドルロールBL-1で搬送方向DRの逆方向に折り返されて第2ブライドルロールBL-1に掛けられ、第2ブライドルロールBL-2で搬送方向DRに折り返されて張力測定部21aを介して圧延機1へ送り出される。
圧延機1は、例えばフィルムや鋼板等の圧延材WKを、所望の品種の製品を加工するために、ロールギャップ長を調整して稼動することによって、長尺な圧延材WKを所定の厚さに圧延する装置である。圧延機1は、例えば、本実施形態では、複数、例えば4個の圧延スタンド10(10-1~10-4)を配置することによって、製品の元になる圧延材WKを連続的に圧延するタンデム型圧延機である。圧延スタンド10(10-1~10-4)は、例えば、所定のロールギャップ長で圧延材WKを圧延する一対の第1および第2ワークロール11、12(11-1~11-4、12-1~12-4)と、前記一対の第1および第2ワークロール11、12の弾性変形等を抑制するように前記一対の第1および第2ワークロール11、12それぞれを支持する一対の第1および第2バックアップロール13、14(13-1~13-4、14-1~14-4)とを備える。圧延機1には、この他、圧延スタンド10の動作を制御する図略の圧延制御部や、圧延条件を修正入力する圧延入力部や、圧延材WKの圧延中に、圧延荷重、圧下位置および圧延速度等を検出する図略の各センサ(圧延荷重センサ、圧下位置センサおよび圧延速度センサ等)が備えられている。ブライドルロールBL(図1に示す例では第2ブライドルロールBL-2)から送り出された圧延材WKは、上述のように、張力測定部21aを介して圧延機1に送り込まれる。圧延機1では、第1ないし第4圧延スタンド10-1~10-4における各一対のワークロール11-1~11-4、12-1~12-4における各間(各パス)を順次に、圧延材WKを通過させることによって順次にその厚さを減じ、所定の厚さで所定の断面形状に圧延して成形する。圧延機1で圧延された圧延材WKは、巻取り機VRへ送り出される。
なお、圧延機1の圧延スタンド10は、4個に限定されるものではなく、任意であって良い。
巻取り機VR(VR1)は、圧延材WKを巻回す第2リールを備え、圧延機1から送り出された圧延材WKを前記第2リールに巻回して巻き取る装置である。
第1実施形態における蛇行検出装置2aは、例えば、張力測定部21aと、制御処理部22aと、記憶部23と、入力部24と、出力部25と、インターフェース部(IF部)26とを備える。
張力測定部21aは、圧延機1の一対のワークロール11、12以前の入側に配置され、圧延機1によって圧延される圧延材WKの幅方向に沿った所定の測定位置での張力を測定する装置である。張力測定部21aは、制御処理部22aに接続され、その測定した張力を制御処理部22aへ出力する。
圧延材WKの幅方向は、圧延材WKが蛇行せずに搬送方向DRに沿って搬送されている場合に、搬送方向DRに直交する方向であり、圧延機1における前記1対のワークロール11、12の各軸方向と同方向である。このような圧延材WKの幅方向に沿った所定の測定位置は、第1実施形態では、前記幅方向に沿って所定の間隔を空けた複数の位置である。したがって、第1実施形態における張力測定部21aは、これら複数の位置それぞれで搬送方向DRに沿った方向の各張力を測定することで幅方向の張力分布を測定する。
このような幅方向の張力分布を測定できれば、張力測定部21aは、任意の装置であって良く、例えば、軸方向に所定の間隔を空けてその表面に配置された複数の圧力センサを備えるセンサロール211aと、前記搬送方向DRの張力を前記複数の圧力センサで検出可能に、圧延材WKをセンサロール211aに押し当てる一対の第1および第2押当てロール212a、213aとを備える。これら第1押当てロール212a、センサロール211aおよび第2押当てロール213aは、搬送方向DRに沿ってこの順で順次に、各回転中心(軸心)で三角形を形成するように配置され、第1および第2押当てロール212a、213aは、圧延材WKをセンサロール211aに向けて押し当てる。前記圧力センサは、印加された力を電気信号(電圧)に変換する圧電素子(ピエゾ素子)であり、例えば水晶圧電素子等である。前記複数の圧力センサに対する前記所定の間隔は、幅方向の張力分布に求められる空間分解能に応じて適宜に設定される。このような構成の張力測定部21aでは、図3に示すように、圧延材WKがセンサロール211aに当接する当接位置から搬送方向DRおよびその逆方向に生じている各張力t1、t1によって形成される力f1を前記圧力センサで測定することによって前記各張力t1、t1が求められる。
入力部24は、制御処理部22aに接続され、例えば、蛇行挙動の判定開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、例えば蛇行挙動の判定する上で必要な各種データを蛇行検出装置2aに入力する装置であり、例えば、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ、キーボードおよびマウス等である。出力部25は、制御処理部22aに接続され、制御処理部22aの制御に従って、入力部24から入力されたコマンドやデータ、および、当該蛇行検出装置2aによって判定された蛇行挙動等を出力する装置であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示部(表示装置)や、プリンタ等の印刷装置等である。IF部26は、制御処理部22aに接続され、制御処理部22aの制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB(Universal Serial Bus)規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部26は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であっても良い。なお、張力測定部21aは、このようなIF部26を介して有線や無線で接続されて良い。
記憶部23は、制御処理部22aに接続され、制御処理部22aの制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、蛇行検出装置2aの各部21a、23~26を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御する制御プログラムや、張力測定部21aの測定結果に基づいて、圧延材WKにおける蛇行量(オフセンター量)の時間的な変化である蛇行挙動を判定する蛇行挙動判定プログラムや、張力測定部21aの測定結果に基づいて圧延材WKの蛇行量を求める蛇行量処理プログラム等の等の制御処理プログラムが含まれる。前記各種の所定のデータには、例えば張力測定部21aの測定結果や蛇行量変換情報等の、各プログラムを実行する上で必要なデータ等が含まれる。記憶部23は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。記憶部23は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部22aのワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部23は、比較的大きな記憶容量を持つハードディスク装置を備えても良い。
記憶部23は、前記蛇行量変換情報を記憶する蛇行量変換情報記憶部231を機能的に備える。前記蛇行量変換情報は、張力測定部21aの測定結果を圧延材WKの蛇行量に変換するために、張力測定部21aの測定結果と圧延材WKの蛇行量との対応関係を表す情報であり、例えば関数式やルックアップテーブルで蛇行量変換情報記憶部231に予め記憶される。
前記対応関係の演算には、例えば、特開2018-1271号公報に開示された手法が利用できる。この特開2018-1271号公報に開示された手法の利用では、大略、次の手順で張力測定部21aの測定結果(張力分布)と蛇行量との関係が求められる。まず、張力測定部21aで測定されると想定される互いに異なる複数の張力分布が用意される。これら複数の張力分布それぞれについて、張力分布に基づいて荷重分布が演算され、この荷重分布を含む、ワークロール11、12における左右の圧下率の違いに影響を与える因子(例えば、ワークロール11、12における左右のレベリング差、左右の入側板厚Hの差、左右のミル定数の差など)を用いることによって、出側板厚hの幅方向の分布が演算され、この出側板厚hの分布に基づいて圧延材WKの進入角度θが計算され、そして、この圧延材WKの進入角度θに基づいて蛇行量が演算される。これによって複数の張力分布それぞれについて各蛇行量が求められ、張力分布と蛇行量との関係が求められる。
あるいは、前記対応関係は、例えば、複数のサンプルを実測し、統計処理することによって求められても良い。
制御処理部22aは、蛇行検出装置2aの各部21a、23~26を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、張力測定部21aの測定結果に基づいて、圧延材WKの蛇行挙動を判定するための回路である。制御処理部22aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部22aは、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部221、蛇行挙動判定部222aおよび蛇行量処理部223を機能的に備える。
制御部221は、蛇行検出装置2aの各部21a、23~26を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、蛇行検出装置2a全体の制御を司るものである。
蛇行量処理部223は、張力測定部21aの測定結果に基づいて圧延材WKの蛇行量を求めるものである。より具体的には、蛇行量処理部223は、蛇行量変換情報記憶部231に記憶されている蛇行量変換情報から、張力測定部21aの測定結果に対応する蛇行量を求める。例えば、蛇行量変換情報が関数式で表されている場合には、張力測定部21aの測定結果が前記関数式に代入されることで蛇行量が求められる。また例えば、蛇行量変換情報がルックアップテーブルで表されている場合には、張力測定部21aの測定結果に一致する、あるいは、最も近い張力分布が選定(検索)され、この選定された張力分布に対応する蛇行量が求められる。なお、張力測定部21aの測定結果に近い2つの張力分布に対応する2つの蛇行量を用いた補間によって、張力測定部21aの測定結果に対応する蛇行量が求められても良い。
蛇行挙動判定部222aは、張力測定部21aの測定結果に基づいて、圧延材WKの蛇行挙動を判定するものである。より具体的には、第1実施形態では、蛇行挙動判定部222aは、張力分布傾き処理部2221および第1判定部2222を機能的に備える。
張力分布傾き処理部2221は、張力測定部21aで測定された複数の位置それぞれの各張力を張力分布として前記張力分布の傾きを求めるものである。
第1判定部2222は、前記張力分布傾き処理部で求められた張力分布の傾きに基づいて圧延材WKの蛇行挙動を判定するものである。前記蛇行挙動は、前記特開2018-1271号公報に開示されているように、蛇行開始後に、前記蛇行が蛇行先の位置で止む状態である蛇行の停留と、蛇行開始後、前記蛇行の停留が生ぜずに、蛇行が継続する状態である蛇行の発散とを含む。
圧延システムSaによって圧延される圧延材WKは、その搬送方向DRに対する送出し方向およびミル中心に対する送出し位置がブライドルロールBLによって拘束され、このブライドルロールBLと圧延機1の第1圧延スタンド10-1における一対のワークロール11-1、12-1との間に張力(ライン張力)が掛けられた状態で、第1圧延スタンド10-1における一対のワークロール11-1、12-1に進入し、圧延される。このような圧延材WKには、図4に示すように、その圧延中に何らかの外乱によって圧延材WKの位置がミル中心(ワークロール11、12の軸方向における中央位置)から連続的にずれる現象である蛇行が生じることがある。このような蛇行が生じると、入側では、蛇行していく側(図4では平面視にて右側)で圧延材WKの長尺方向(長手方向)の引張り、その逆側(図4では平面視にて左側)で圧延材WKの長尺方向の圧縮の応力が、前記ライン張力に重畳される。なお、張力は、引張り応力だけでなく圧縮応力も含む広い概念である。このため、圧延材WKにおける幅方向の張力分布を測定すると、一測定例として図5Aに示すように、幅方向の張力分布に傾きが生じる。図5Aは、蛇行の有る場合において、圧延機1の入側直前の位置、すなわち、第1圧延スタンド10-1の前記一対のワークロール11-1、12-に近い位置での圧延材の幅方向の張力分布を示す。また、所定のシミュレーション条件で公知の常套手法を用いてシミュレーションした結果が図6に示されている。前記所定のシミュレーション条件は、入側板厚が0.5mmであり、出側板厚が0.38mmであり、板幅が52mmであり、ワークロール径がφ50mmであり、レベル差が0.2mm(左ロールギャップが相対的に小さく、右ロールギャップが相対的に大きい)であり、入側張力が30MPaであり、出側張力が50MPaであり、オフセンター量が図6Aでは0mm、図6Bでは5mm、図6Cでは20mmである。図6Aは、蛇行の無い場合の張力分布を示し、図6Bは、第1の状態で蛇行の有る場合の張力分布を示し、図6Bは、前記第1の状態とは異なる第2の状態で蛇行の有る張力分布を示す。このシミュレーションからも蛇行により幅方向の張力分布に傾きが生じることが理解される。したがって、圧延材WKにおける幅方向の張力分布を測定することによって、張力分布の傾きの有無によって蛇行の有無が検出でき、張力分布の傾きの時間的な変化を観測することによって蛇行挙動が検出できる。前記張力分布の傾きは、圧延材WKの幅方向(ワークロール11、12の軸方向)における単位長さ当たりの張力変化量(応力変化量)であり、グラフでは、横軸と張力分布との交差角である。前記張力分布の傾きの変化は、前記傾きの大きさの変化(前記交差角の大きさの変化、傾き具合の変化)である。
このような知見ならびに蛇行の発散および停留の定義から、第1判定部2222は、より具体的には、張力分布傾き処理部2221で求められた張力分布の傾きが変化し始めてから、前記張力分布の傾きが時間の経過に従って変化し続けている場合には前記蛇行の発散と判定し、前記張力分布の傾きが時間の経過に従って変化しなくなった場合には前記蛇行の停留と判定する。
また、このような蛇行の発生によって生じる張力分布の傾きは、一測定例として図5Bに示すように、第1圧延スタンド10-1における一対のワークロール11-1、12-1からブライドルロールBLに向かって所定の距離、図5Bではその中間位置までの距離だけ離れると、観測(測定)されなくなる。このため、第1圧延スタンド10-1における一対のワークロール11-1、12-1からブライドルロールBLまでの距離をLとし、蛇行が生じている場合に、第1圧延スタンド10-1における一対のワークロール11-1、12-1略直下の位置(y≒0、張力測定部21aが配置可能な前記一対のワークロールに最も近い直前位置)、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離L/4の位置(y=L/4)、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離2L/4の位置(y=2L/4=L/2)、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離3L/4の位置(y=3L/4)、および、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離Lの位置(y=2L/4=L/2)の各位置で、幅方向の張力分布が測定された。その測定結果の一例が図7Aないし図7Eそれぞれに示されている。図7Aないし図7Eに示すように、前記蛇行の発生によって生じる張力分布の傾きは、第1圧延スタンド10-1における一対のワークロール11-1、12-1略直下の位置(y≒0)、および、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離L/4の位置(y=L/4)では、観測(測定)されるが、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離2L/4の位置(y=2L/4=L/2)になると、それ以降、観測(測定)されなくなる。したがって、張力測定部21aは、圧延機1の入側における、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置より前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置から距離L/4の位置(y=L/4)までの範囲内(0<(張力測定部21aの配置位置)≦L/4)に少なくとも配置されることが好ましく、前記一対のワークロール11-1、12-1直下の位置のより近くに配置されることがより好ましく、張力測定部21aが配置可能な前記一対のワークロール11-1、12-1に最も近い直前位置に配置されることがより好ましい。
このような制御処理部22a、記憶部23、入力部24、出力部25およびIF部26は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。あるいは、制御処理部22a、記憶部23、入力部24、出力部25およびIF部26は、圧延機1を制御する制御コンピュータと兼用されても良い。
次に、圧延システムSaの動作について、蛇行検出装置2aの動作を中心に説明する。図8は、前記蛇行検出装置の動作を示すフローチャートである。図8には、第1および第2実施形態の圧延システムSa、Sbにおける蛇行検出装置2a、2bの動作が図示されており、図1と同様に、第1実施形態の蛇行検出装置2aにおける動作には、添え字「a」を備えた符号が付され、第2実施形態の蛇行検出装置2bにおける動作には、添え字「b」を備えた符号が付され、第1および第2実施形態の蛇行検出装置2a、2bにおける共通な構成には、添え字の無い符号が付されている。
圧延システムSaが稼働され、蛇行検出装置2aは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部22aには、制御部221、蛇行挙動判定部222aおよび蛇行量処理部223が機能的に構成され、蛇行挙動判定部222aには、張力分布傾き処理部2221および第1判定部2222が機能的に構成される。
前記巻出し機から巻出された圧延材WKは、ステアリングロールSLでその送出し位置が調整され、ブライドルロールBLでその張力が調整され、蛇行検出装置2aの張力測定部21aで幅方向の各位置で張力が測定され、圧延機1で圧延され、そして、巻取り機VRで巻き取られる。
このように圧延材WKが圧延機1によって圧延されている間、蛇行検出装置2aは、所定の時間間隔(サンプリング間隔)で繰り返し次のように動作することで、圧延材WKの蛇行挙動を判定している。前記サンプリング間隔は、適宜に設定されて良いが、例えば、1秒、0.5秒、0.3秒、0.1秒および0.05秒等に設定される。蛇行により圧延材WKが搬送路のガイド部材へ衝突したり、圧延ロールのバレル幅内から外れたり(ロールアウト)等の、圧延中のトラブルを回避するために、実操業の圧延速度(例えば、50mpm、100mpmおよび200mpm等)を勘案することによって、前記サンプリング間隔は、0.5秒以下であることが好ましく、0.1秒以下であることがより好ましい。例えば、圧延速度が200mpmである場合、圧延材WKは、0.5秒間に約1.67m搬送され、0.1秒間に約0.34m搬送される。
図8において、まず、張力測定部21aは、幅方向の各測定位置(第1実施形態ではセンサロール211aにおける前記複数の位置)で圧延材WKの各張力を測定し、これら各張力を制御処理部22aへ出力する(S1a)。
次に、制御処理部22aは、蛇行挙動判定部222aの張力分布傾き処理部2221によって、前記張力分布の傾きを求める(S2a)。より具体的には、例えば、張力分布傾き処理部2221は、張力測定部21aで測定された各張力にフィットする直線を例えば最小二乗法によって求め、前記直線の傾きを求める。
次に、制御処理部22aは、蛇行挙動判定部222aの第1判定部2222によって、圧延材WKの蛇行挙動を判定する(S3a)。第1判定部2222は、前記張力分布傾き処理部で求められた張力分布の傾きに基づいて圧延材WKの蛇行挙動を判定する。より具体的には、第1判定部2222は、張力分布傾き処理部2221で求められた張力分布の傾きが変化し始めてから、前記張力分布の傾きが時間の経過に従って変化し続けている場合には前記蛇行の発散と判定し、前記張力分布の傾きが時間の経過に従って変化しなくなった場合には前記蛇行の停留と判定する。
より詳しくは、第1判定部2222は、まず、既に、蛇行が検出されているか否かを取得する。ただし、蛇行量が極僅か(例えば数ミリメートル等)の場合には圧延作業に有害ではない(支障がない)ため、蛇行とは、判定されない。すなわち、予め設定された所定の閾値以下の蛇行量では、蛇行とは判定されない。前記所定の閾値は、圧延材WKのサイズ、強度に応じたテーブルとして記憶部231に予め記憶される。
例えば、蛇行の検出を表すフラグ(蛇行フラグ)が記憶部23に記憶され、第1判定部2222は、記憶部23から前記蛇行フラグを取得する。前記蛇行フラグは、例えば、「0」が蛇行の検出無しを表し、「1」が蛇行の検出中を表す。あるいは、蛇行の検出中では、後述のようにタイマーがセットされ、前記タイマーによって計時されるので、このタイマーの有無によって前記蛇行フラグに代えても良い(前記タイマー無しは、蛇行の検出無しを表し、前記タイマー有りは、蛇行の検出中を表す)。
次に、第1判定部2222は、張力分布傾き処理部2221で求められた張力分布の傾きの絶対値を求め、この張力分布の傾きの絶対値が予め設定された所定の閾値(傾き判定閾値Th1)以上であるか否かを判定する。前記傾き判定閾値Th1は、0(張力分布が水平)であっても良いが、ノイズ等を考慮した所定のマージンを含むように、例えば複数のサンプルから適宜に設定される。この判定の結果、前記張力分布の傾きの絶対値が前記傾き判定閾値Th1以上ではない場合、第1判定部2222は、蛇行が無いと判定し、前記取得した蛇行フラグを判定する。この判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出無しを表す「0」である場合には、前回の判定で蛇行が無いと判定され今回の判定でも蛇行が無いと判定されたため、第1判定部2222は、蛇行が無いと最終的に判定し、この処理S3aを終了し、続く後述の処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出中を表す「1」である場合には、前回の判定で蛇行が有ると判定され今回の判定で蛇行が無いと判定されたため、第1判定部2222は、蛇行挙動が蛇行の停留と最終的に判定し、前記蛇行フラグを「0」にリセットし、前記タイマーを削除(消去、解除)し、この処理S3aを終了し、続く後述の処理S4を実行する。
一方、前記判定の結果、前記張力分布の傾きの絶対値が前記傾き判定閾値Th1以上である場合、第1判定部2222は、蛇行が有ると判定し、前記取得した蛇行フラグを判定する。この判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出無しを表す「0」である場合には、前回の判定で蛇行が無いと判定され今回の判定で蛇行が有ると判定されたため、第1判定部2222は、蛇行の開始と最終的に判定し、蛇行の発散を判定するためのタイマーをセット(制御処理部22aに機能的に構成)して前記タイマーの計時を開始し、この処理S3aを終了し、続く後述の処理S4を実行する。前記タイマーは、蛇行の発散と判定する判定時間でタイムアップするようにセットされる。蛇行の発散と判定する前記判定時間は、例えば前記圧延中のトラブル等を回避できるように、例えば過去の事例等を参照することで、予め適宜に設定される。一方、前記判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出中を表す「1」である場合には、前回の判定で蛇行が有ると判定され今回の判定でも蛇行が有ると判定されたため、第1判定部2222は、前記タイマーが計時中であるか否かを判定する。この判定の結果、前記タイマーが計時中である場合には、蛇行中ではあるが蛇行の発散に未だ至っていないので、蛇行が有る(蛇行中)と最終的に判定し、この処理S3aを終了し、続く後述の処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記タイマーがタイムアップしている場合には、第1判定部2222は、今回の張力分布の傾きと前回の張力分布の傾きとの差分を求め、この求めた差分が十分に小さければ(すなわち、この求めた差分が予め設定された所定の閾値未満である場合)、蛇行量に変化がないため、蛇行が停留していると判定し、前記求めた差分が十分に小さくなければ(すなわち、前記求めた差分が前記所定の閾値以上である場合)、蛇行挙動が蛇行の発散と最終的に判定し、前記蛇行フラグを「0」にリセットし、前記タイマーを削除(消去、解除)し、この処理S3aを終了し、続く後述の処理S4を実行する。
一例では、このように処理S3aが実行される。
そして、制御処理部22aは、制御部221によって、処理S3aで判定された判定結果(上述の例では、蛇行無し、蛇行の開始、蛇行の停留、蛇行有り(蛇行中)、蛇行の発散)を出力部25へ出力する。この際に、蛇行が有る場合には、制御処理部22aは、蛇行量処理部223によって、張力測定部21aの測定結果および蛇行量変換情報記憶部231に記憶されている蛇行量変換情報に基づいて圧延材WKの蛇行量を求め、この求めた蛇行量を出力部25へ出力する。なお、必要に応じて、前記判定結果および前記蛇行量は、IF部26から外部の機器へ出力されても良い。
以上説明したように、実施形態における圧延システムSa、蛇行検出装置2aおよびこれに実装された蛇行検出方法は、圧延材WKの幅方向に沿った所定の測定位置での張力を測定することによって圧延材WKの蛇行挙動を判定するので、従来のように圧延材WKの端を検出する必要がない。したがって、上記圧延システムSa、蛇行検出装置2aおよび蛇行検出方法は、圧延材WKの蛇行挙動をより適切に検出できる。
上記圧延システムSa、蛇行検出装置2aおよび蛇行検出方法は、張力分布の傾きから、蛇行挙動として蛇行の停留と蛇行の発散とを判定できる。
上記圧延システムSa、蛇行検出装置2aおよび蛇行検出方法は、蛇行量をさらに求めることができる。
次に、別の実施形態について説明する。
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の蛇行検出装置の構成を示すブロック図である。図10は、第2実施形態の蛇行検出装置における張力測定部を説明するための図である。図10Aは、上面図であり、図10Bは、側面図であり、図10Cは、測定原理を説明するための図である。図11は、蛇行と張力差との関係を説明するための図である。図11Aは、蛇行の無い場合を示し、図11Bは、蛇行の有る場合を示し、図11Cは、図11Bに示す蛇行からさらに蛇行が進展(進行)した場合を示す。図12は、蛇行と張力差との関係にかかる、シミュレーション結果を示す図である。図12Aは、蛇行の無い場合を示し、図12Bは、図11Bに示す状態で蛇行の有る場合を示し、図12Cは、図11Cに示す状態で蛇行の有る場合を示す。図12Aないし図12Cの横軸は、張力の測定位置を示し、その縦軸は、張力を示す。
第1実施形態では、圧延材WKにおける蛇行挙動の判定に張力分布が利用されたが、第2実施形態では、圧延材WKにおける蛇行挙動の判定に張力差が利用される。
このような第2圧延システムSbは、例えば、図1および図9に示すように、図略の巻出し機と、ブライドルロールBLと、ステアリングロールSLと、圧延機1と、蛇行検出装置2bと、巻取り機VR(VR1)とを備える。これら前記巻出し機、ブライドルロールBL、ステアリングロールSL、蛇行検出装置2bの張力測定部21b、圧延機1および巻取り機VRは、この順で順次に、圧延材WKの搬送路(製造ライン)に沿って配置されている。これら第2実施形態の圧延システムSbにおける前記巻出し機、ブライドルロールBL、ステアリングロールSL、圧延機1および巻取り機VRは、それぞれ、第1実施形態の圧延システムSaにおける前記巻出し機、ブライドルロールBL、ステアリングロールSL、圧延機1および巻取り機VRと同様であるので、その説明を省略する。
第2実施形態における蛇行検出装置2bは、例えば、張力測定部21bと、制御処理部22bと、記憶部23と、入力部24と、出力部25と、IF部26とを備える。これら第2実施形態の蛇行検出装置2bにおける記憶部23、入力部24、出力部25およびIF部26は、それぞれ、第1実施形態の蛇行検出装置2aにおける記憶部23、入力部24、出力部25およびIF部26と同様であるので、その説明を省略する。
張力測定部21bは、圧延機1の一対のワークロール11、12以前の入側に配置され、圧延機1によって圧延される圧延材WKの幅方向に沿った両端それぞれの一方位置および他方位置での張力を測定する装置である。張力測定部21bは、制御処理部22bに接続され、その測定した張力を制御処理部22bへ出力する。
このような一方位置および他方位置それぞれで各張力を測定できれば、張力測定部21bは、任意の装置であって良く、例えば、図10に示すように、張力測定部21bは、圧延機1の入側に配置され、張力を測定するためのロールである張力測定用ロール150と、張力測定用ロール150でバスラインから上方に持ち上げられた圧延材WKを押さえ、搬送方向で張力測定用ロール150を挟むように配置される一対の第1および第2押さえ用ロール151-1、151-2と、張力測定用ロール150を、その軸方向の両端それぞれから支持する第1および第2支持部材15-1、15-2と、第1および第2支持部材15-1、15-2の各荷重を前記一方位置および他方位置それぞれの各張力として測定する第1および第2ロードセル(張力計)21b-1、21b-2とを備える。これら3本の第1押さえ用ロール151-1、張力測定用150および第2押さえ用ロール151-2は、圧延材WKの搬送方向DRに沿ってこの順に、側面視にて各軸位置が互い違いとなるように配置される。すなわち、第1および第2押さえ用ロール151-1、151-2は、圧延材WKの上方に配置され、張力測定用ロール150は、圧延材WKの下方に配置されている。このため、この図10に示す例では、図10Cに示すように、張力測定部21bは、張力測定用ロール150で圧延材WKを持ち上げることによって、圧延材WKにかかる張力t2により生じるラジアル力f2を両端のロードセル21b-1、21b-2で計測し、張力t2を計測している。このように配置される第1および第2ロードセル21-1b、21b-2は、図1では、図示の都合上、その図示が省略されている。なお、タンデム型圧延機では、例えば、右側(図10では平面視にて圧延材WKの上側)は、各ロールを回転駆動させるための例えばモータ等を備える駆動機構が配置された駆動側と、通常、呼ばれ、その対向側、すなわち、左側(図10では平面視にて圧延材WKの下側)は、オペレータの作業領域である作業側と呼ばれる。
制御処理部22bは、蛇行検出装置2bの各部21b、23~26を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、張力測定部21bの測定結果に基づいて、圧延材WKの蛇行挙動を判定するための回路である。制御処理部22bは、例えば、CPUおよびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部22bは、その制御処理プログラムが実行されることによって、制御部221、蛇行挙動判定部222bおよび蛇行量処理部223を機能的に備える。これら第2実施形態の制御処理部22bにおける制御部221および蛇行量処理部223は、それぞれ、第1実施形態の制御処理部22aにおける制御部221および蛇行量処理部223と同様であるので、その説明を省略する。なお、第2実施形態では、上述のように、前記一方位置および他方位置それぞれの各張力が測定されるが、これら各張力が第1実施形態で説明した幅方向の張力分布を直接的にまたは間接的に表していると見ることができるから(すなわち、前記一方位置および他方位置それぞれの各張力を結ぶ線分は、第1実施形態で説明した幅方向の張力分布のプロファイルまたはこれを定数倍したプロファイルと略重なるから)、第1実施形態で説明した蛇行量変換情報を利用できる。
蛇行挙動判定部222bは、張力測定部21bの測定結果に基づいて、圧延材WKの蛇行挙動を判定するものである。より具体的には、第1実施形態では、蛇行挙動判定部222bは、張力差処理部2226および第2判定部2227を機能的に備える。
張力差処理部2226は、張力測定部21bで測定された前記一方位置および他方位置それぞれの各張力の差を張力差として求めるものである。
第2判定部2227は、張力差処理部2226で求められた張力差に基づいて圧延材WKの蛇行挙動を判定するものである。
圧延材WKが蛇行していない場合には、上述の図6Aおよび図11Aに示すように、幅方向の張力分布は、傾かずに、幅方向の各位置での各張力は、均一である。このため、張力測定部21bによって測定される、前記一方位置の張力(図10および図11では駆動側の張力)と、前記他方位置の張力(図10および図11では作業側の張力)とは、等しく、これらの張力差は、略ゼロである。一方、上述したように、圧延材WKに蛇行が生じると、張力分布は、上述の図5A、図6B、図6C、図11Bおよび図11Cに示すように、蛇行していく側(図11Bおよび図11Cでは平面視にて右側)の張力が高くなる分布となり、圧延材WKが、蛇行した側のロードセル(張力計)21bに近づいて、圧延材WKと、前記蛇行した側のロードセル(張力計)21bとの距離が短くなることによって、前記蛇行した側のロードセル(張力計)21bで検出される張力が高くなる。このため、前記蛇行した側のロードセル(張力計)21bで検出される張力と、前記蛇行で離れていく側のロードセル(張力計)21bで検出される張力とに差ができる。そして、図11Bおよび図11Cに示すように、その蛇行が進展すると、前記張力差がより大きくなる。また、第1実施形態で説明した上述のシミュレーション条件で公知の常套手法を用いてシミュレーションした結果が図12に示されている。図12Aは、蛇行の無い場合の張力差を示し、図12Bは、図11Bに示す状態で蛇行の有る場合の張力差を示し、図12Cは、前記図11Bに示す状態とは異なる図11Cに示す状態、例えばより蛇行が進展した状態で蛇行の有る場合の張力差を示す。このシミュレーションからも蛇行により張力差が生じることが理解される。したがって、前記幅方向における圧延材WKの両端それぞれの一方位置の張力および他方位置の張力を測定することによって、前記一方位置の張力と前記他方位置の張力との張力差の有無によって蛇行の有無が検出でき、前記張力差の時間的な変化を観測することによって蛇行挙動が検出できる。
このような知見ならびに蛇行の発散および停留の定義から、第2判定部2227は、より具体的には、第2判定部2227は、張力差処理部2226で求められた張力差が変化し始めてから、前記張力差が時間の経過に従って変化し続けている場合には前記蛇行の発散と判定し、前記張力差が時間の経過に従って変化しない場合には前記蛇行の停留と判定する。
このような第2実施形態では、圧延システムSbが稼働され、蛇行検出装置2bは、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。その制御処理プログラムの実行によって、制御処理部22bには、制御部221、蛇行挙動判定部222bおよび蛇行量処理部223が機能的に構成され、蛇行挙動判定部222bには、張力差処理部2226および第2判定部2227が機能的に構成される。
圧延材WKは、第1実施形態と同様に圧延され、圧延材WKが圧延機1によって圧延されている間、蛇行検出装置2bは、所定の時間間隔(サンプリング間隔)で繰り返し次のように動作することで、圧延材WKの蛇行挙動を判定している。
図8において、まず、張力測定部21bは、幅方向の各測定位置(第2実施形態では前記一方位置および前記他方位置)で圧延材WKの各張力を測定し、これら各張力を制御処理部22aへ出力する(S1b)。
次に、制御処理部22bは、蛇行挙動判定部222bの張力差処理部2226によって、前記一方位置の張力と前記他方位置の張力との張力差を求める(S2b)。
次に、制御処理部22bは、蛇行挙動判定部222bの第2判定部2227によって、圧延材WKの蛇行挙動を判定する(S3b)。第2判定部2227は、張力差処理部2226で求められた張力差に基づいて圧延材WKの蛇行挙動を判定する。より具体的には、第2判定部2227は、張力差処理部2226で求められた張力差が変化し始めてから、前記張力差が時間の経過に従って変化し続けている場合には前記蛇行の発散と判定し、前記張力差が時間の経過に従って変化しない場合には前記蛇行の停留と判定する。
より詳しくは、第2判定部2227は、まず、第1実施形態と同様に、既に、蛇行が検出されているか否かを取得する。
次に、第2判定部2227は、張力差処理部2226で求められた張力差の絶対値を求め、この張力差の絶対値が予め設定された所定の閾値(差判定閾値Th2)以上であるか否かを判定する。前記差判定閾値Th2は、0(張力差無し、すなわち、張力分布が水平)であっても良いが、ノイズ等を考慮した所定のマージンを含むように、例えば複数のサンプルから適宜に設定される。この判定の結果、前記張力差の絶対値が前記差判定閾値Th2以上ではない場合、第2判定部2227は、蛇行が無いと判定し、前記取得した蛇行フラグを判定する。この判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出無しを表す「0」である場合には、前回の判定で蛇行が無いと判定され今回の判定でも蛇行が無いと判定されたため、第2判定部2227は、蛇行が無いと最終的に判定し、この処理S3bを終了し、続く後述の処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出中を表す「1」である場合には、前回の判定で蛇行が有ると判定され今回の判定で蛇行が無いと判定されたため、第2判定部2227は、蛇行挙動が蛇行の停留と最終的に判定し、前記蛇行フラグを「0」にリセットし、前記タイマーを削除(消去、解除)し、この処理S3bを終了し、続く後述の処理S4を実行する。
一方、前記判定の結果、前記張力差の絶対値が前記差判定閾値Th2以上である場合、第2判定部2227は、蛇行が有ると判定し、前記取得した蛇行フラグを判定する。この判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出無しを表す「0」である場合には、前回の判定で蛇行が無いと判定され今回の判定で蛇行が有ると判定されたため、第2判定部2227は、蛇行の開始と最終的に判定し、蛇行の発散を判定するためのタイマーをセット(制御処理部22bに機能的に構成)して前記タイマーの計時を開始し、この処理S3bを終了し、続く後述の処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記蛇行フラグが蛇行の検出中を表す「1」である場合には、前回の判定で蛇行が有ると判定され今回の判定でも蛇行が有ると判定されたため、第2判定部2227は、前記タイマーが計時中であるか否かを判定する。この判定の結果、前記タイマーが計時中である場合には、蛇行中ではあるが蛇行の発散に未だ至っていないので、蛇行が有る(蛇行中)と最終的に判定し、この処理S3bを終了し、続く後述の処理S4を実行する。一方、前記判定の結果、前記タイマーがタイムアップしている場合には、第2判定部2227は、今回の張力差と前回の張力差との差分を求め、この求めた差分が十分に小さければ(すなわち、この求めた差分が予め設定された所定の閾値未満である場合)、張力差に変化がないため、蛇行が停留していると判定し、前記求めた差分が十分に小さくなければ(すなわち、前記求めた差分が前記所定の閾値以上である場合)、蛇行挙動が蛇行の発散と最終的に判定し、前記蛇行フラグを「0」にリセットし、前記タイマーを削除(消去、解除)し、この処理S3bを終了し、続く後述の処理S4を実行する。
一例では、このように処理S3bが実行される。
そして、制御処理部22bは、制御部221によって、処理S3bで判定された判定結果(上述の例では、蛇行無し、蛇行の開始、蛇行の停留、蛇行有り(蛇行中)、蛇行の発散)を出力部25へ出力する。この際に、蛇行が有る場合には、制御処理部22bは、蛇行量処理部223によって、張力測定部21bの測定結果および蛇行量変換情報記憶部231に記憶されている蛇行量変換情報に基づいて圧延材WKの蛇行量を求め、この求めた蛇行量を出力部25へ出力する。なお、必要に応じて、前記判定結果および前記蛇行量は、IF部26から外部の機器へ出力されても良い。
以上説明したように、実施形態における圧延システムSb、蛇行検出装置2bおよびこれに実装された蛇行検出方法は、圧延材WKの幅方向に沿った所定の測定位置での張力を測定することによって圧延材WKの蛇行挙動を判定するので、従来のように圧延材WKの端を検出する必要がない。したがって、上記圧延システムSb、蛇行検出装置2bおよび蛇行検出方法は、圧延材WKの蛇行挙動をより適切に検出できる。
上記圧延システムSb、蛇行検出装置2bおよび蛇行検出方法は、張力差の傾きから、蛇行挙動として蛇行の停留と蛇行の発散とを判定できる。
上記圧延システムSb、蛇行検出装置2bおよび蛇行検出方法は、蛇行量をさらに求めることができる。
なお、上述の第1および第2実施形態では、圧延材WKの拘束は、ブライドルロールBLで実施されたが、これに限定されるものではない。図13は、圧延システムの変形形態を説明するための図である。図13Aは、変形形態との対比のために、図1に示す第1および第2実施形態の構成を再掲した図であり、図13Bは、第1変形形態を示し、図13Cは、第2変形形態を示す。なお、図13では、蛇行検出装置2a、2bの張力測定部21a、21bは、その図示が省略されている。
例えば、第1変形形態では、図13Bに示すように、前記巻出し機、ブライドルロールBL、ステアリングロールSL、圧延機1および巻取り機VRは、この順で順次に、圧延材WKの搬送路(製造ライン)に沿って配置され、圧延材WKの拘束は、ステアリングロールSLで実施される。
また例えば、第2変形形態では、図13Bに示すように、圧延システムSa、Sbは、巻出し機VR2、圧延機1および巻取り機VR1を備え、巻出し機VR2、圧延機1および巻取り機VR1は、この順で順次に、圧延材WKの搬送路(製造ライン)に沿って配置され、圧延材WKの拘束は、巻出し機VR2で実施される。
また、第1および第2実施形態において、蛇行の発散は、次のように判定されても良い。図14は、蛇行の発散を判定する変形形態を説明するための張力分布の傾きに関する図である。図14Aは、張力分布を示し、その横軸は、幅方向の位置を示し、その縦軸は、張力を示す。図14Bは、張力分布の傾きを示し、その横軸は、時間ステップ(サンプリングも回数)を示し、その縦軸は、張力分布の傾きを示す。図14Cは、張力分布の傾きの変化量を示し、その横軸は、時間ステップ(サンプリングも回数)を示し、その縦軸は、張力分布の傾きの変化量を示す。図15は、蛇行の発散を判定する変形形態を説明するための張力差に関する図である。図15Aは、張力差を示し、その横軸は、幅方向の位置を示し、その縦軸は、張力を示す。図15Bは、張力差を示し、その横軸は、時間ステップ(サンプリングも回数)を示し、その縦軸は、張力差を示す。図15Cは、張力差の変化量を示し、その横軸は、時間ステップ(サンプリングも回数)を示し、その縦軸は、張力差の変化量を示す。
例えば、張力分布では、図14に示すように、張力分布の傾きk(i)が、通続するn+1保持(記憶)され、i回目とi-1回目との張力分布の傾きの差(変化量)を△k(i)とし(△k(i)=k(i)-k(i-1))、今回のサンプリングをnとした場合、△k(n)>△k(n-1)>・・・・>△k(1)=φ、または、△k(n)<△k(n-1)<・・・・<△k(1)<φのいずれかの条件が満たされた場合に、蛇行の発散と判定される。ただし、φは、所定の定数である。
張力差では、図15に示すように、張力差δT(i)が、通続するn+1保持(記憶)され、i回目とi-1回目との張力差の差(変化量)を△δT(i)とし(△δT(i)=δT(i)-δT(i-1))、今回のサンプリングをn回目とした場合、△δT(n)>△δT(n-1)>・・・・>△δT(1)>0、または、△δT(n)<△δT(n-1)<・・・・<△δT(1)<0のいずれかの条件が満たされた場合に、蛇行の発散と判定される。
また例えば、張力分布では、図14に示すように、サイズや強度クラス別に予め設定された許容値(閾値)ThAAを、張力分布の傾きk(i)が越えたとき、すなわち、k(n)>ThAA>0、または、k(n)<ThAA<0を満たす場合に、蛇行の発散と判定される。
張力差では、図15に示すように、サイズや強度クラス別に予め設定された許容値(閾値)ThBBを、張力差δT(i)が越えたとき、すなわち、δT(n)>ThBB>0、または、δT(n)<ThBB<0を満たす場合に、蛇行の発散と判定される。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。