実施の形態1.
本実施形態においては、2スタンド連続圧延機の走間板厚変更に本発明を適用する場合について以下説明する。図1に示すような、2スタンド連続圧延機においては、圧延機を停止させることなく被圧延材の板厚設定を変更する走間板厚変更が実施される。
走間板厚変更の処理とは、異なる仕様の被圧延材を生産するために、圧延制御における制御対象値であるロールギャップ及びロール速度を、製品仕様に応じた値に、圧延機を停止することなく変更する処理である。これは、目標とする板厚の変更の他、圧延機に供給される被圧延材の元の板厚の変更をも伴う場合もあり得る。
この走間板厚変更は、圧延による製品品質上の問題及び生産効率低下の問題を解決するための処理である。製品品質上の問題とは、被圧延材が圧延機の作業ロール間に噛みこんだ状態で圧延機を停止すると、被圧延材上にストップマークと呼ばれる板厚が製品仕様を満足しない位に悪化する部分が生じるという問題である。他方、生産効率低下の問題とは、圧延機を停止することにより、再度圧延動作を開始するために要する時間の問題である。
圧延機に供給される被圧延材の元の板厚の変更をも伴う場合、圧延機の入側において異なる仕様の被圧延材を溶接することで接合し、溶接点が圧延機を通過するのにタイミングを合わせて制御操作端であるロールギャップやロール速度を変化させる。他方、目標とする板厚の変更のみの場合、同一の被圧延材上で圧延機出側板厚のみを変更するためにロールギャップやロール速度を変更する。以下の説明においては、後者の場合について説明するが、前者の場合であっても同様の処理となる。
図1に示す本実施形態に係る圧延制御装置の動作においては、走間板厚変更に際して、指令値発生装置104が、被圧延材の製品仕様に応じた指令値を出力する。指令値発生装置104が出力する指令値が変更されると、制御操作端変更パターン発生装置101が、指令値の変化を時系列変更パターンに変換して制御操作端であるロールギャップやロール速度を操作する。
図1に示すように、本実施形態に係る圧延機においては、ロール速度を制御するロール速度制御装置11、21、31、41、油圧シリンダーに係る油圧を変化させてロールギャップの位置制御を行う油圧圧下制御装置22、32が更に含まれる。制御操作端変更パターン発生装置101は、これらの制御装置に変更パターンを入力することにより、上述したロールギャップやロール速度を操作する。
一般的な圧延機において生じる走間板厚変更における圧延条件の変化は、予め設定された生産計画に則っている。即ち、走間板厚変更における圧延条件の変化態様は予め定められたものであり、それについての好適な時系列変更パターンも予め求めることができる。換言すると、上記時系列変更パターンとは、圧延制御装置における圧延動作の制御パラメータが時系列に定められた情報である。本実施形態においては、制御操作端変更パターン記憶部102が、圧延条件の変化態様に応じた時系列変更パターンである制御操作端変更パターンの情報を記憶しており、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、制御操作端変更パターン記憶部102から読み出した制御操作端変更パターンを制御操作端変更パターン発生装置101に入力することが要旨である。
図2に、圧延機制御システムの概要を示す。圧延機制御システムは、製品仕様に応じて制御状態量設定値とそれを実現するための制御操作端操作量を演算する指令値発生装置104、制御操作端操作量を時系列変更パターンに従って制御操作端への指令として出力する制御操作端変更パターン発生装置101による制御により、制御操作端への指令値が変更された結果、圧延機+圧延現象901にて圧延状態が変化し、制御状態量が変化する。その制御状態量実績と制御状態量目標値との偏差をゼロとするように、フィードバック制御装置901が、制御操作端に対する制御指令を出力する。
圧延は、非線形現象であるため、制御状態量である板厚や張力設定を変更する場合は、制御動作点の変更が必要となるが、それを実現するのが指令値発生装置104および制御操作端変更パターン発生装置101である。圧延状態が設定状態と異なり、制御操作端への指令値では過不足が発生した場合に、フィードバック制御装置901がそれを補正する。理想的には、指令値発生装置104および制御操作端変更パターン発生装置101により作成した制御操作端への時系列変更パターンにより、製品仕様を実現するための制御状態量が実現できれば、フィードバック制御装置901は動作する必要が無くなる。
現実的には、圧延の制御状態量が、制御外乱量である圧延機入側板厚や張力、出側張力等が変動するため設定値と異なって変動するため、それを補正する機能であるフィードバック制御装置901が必要となる。従来技術における走間板厚変更は、指令値発生装置104が、変更前後の制御操作端設定値を設定し、変更パターン発生装置101が、実際の制御操作端であるロールギャップおよびロール速度を、時系列変更パターンに従って操作することで実施される。即ち、本実施形態において時系列変更パターンに従って変更される圧延動作のパラメータは、ロールギャップ及びロール速度である。
次に、図3を用いて、2スタンド連続圧延機の圧延現象を説明する。図1に示すように、2スタンド連続圧延機においては、#1スタンド圧延機2、#2スタンド圧延機3と2台の圧延機の他、#1スタンド圧延機2の入側に入側ブライドルロール1、#2スタンド出側に出側ブライドルロール4が設置されている。コイル状に巻かれた被圧延材は、入側設備で巻き出されて、入側ブライドルロール1を経て圧延機に送り込まれ、#1スタンド圧延機2、#2スタンド圧延機3で所定の板厚まで圧延された後、出側ブライドルロール4を経由して出側設備でコイル状に巻き取られる。
圧延機スタンドでは、制御外乱量である入側板厚、入側張力、出側張力、および制御操作量である圧延機スタンドのロール速度およびロールギャップ、入側ブライドルロール速度、出側ブライドルロール速度に応じて、圧延機および圧延現象により、制御状態量である圧延機の出側板厚、出側速度、入側速度が決定される。入側ブライドルロール1と#1スタンド圧延機2間では、#1スタンド圧延機入側速度と入側ブライドルロール速度の差の時間積分から#1スタンド圧延機入側張力(入側張力とする)が発生し、#2スタンド圧延機3の入側速度と#1スタンド圧延機1の出側速度の差の時間積分から#2スタンド圧延機入側張力(=#1スタンド圧延機出側張力、以下スタンド間張力とする)が発生する。
また、出側ブライドルロール4速度と#2スタンド圧延機3の出側速度の差の時間積分から#2スタンド出側張力(出側張力とする)が発生する。また、#1スタンド圧延機2の出側板厚は、#1スタンド圧延機出側から#2スタンド圧延機入側まで被圧延材が移動することで、#2スタンド圧延機の入側板厚となる。圧延機の入側張力、出側張力および入側板厚により、圧延機の出側板厚、入側速度、出側速度は変動するため、入側張力、出側張力と入側板厚の時系列変動が、各圧延機スタンドの出側板厚、入側張力、出側張力の時系列変動となって現れることとなる。このため、上述した指令値発生装置104及び制御操作端変更パターン101並びにフィードバック制御装置902による制御のみでは、走間板厚変更における出側板厚の精度には限界がある。また、フィードバック制御のみによって目標とする板厚を得る場合、実績値が目標値に収束するまでに要する時間が長くなり、その分製品の歩留まりが低下する。
図4は、上述した積分による演算を利用して作成可能な時系列の変更パターンを示す図である。図4に示すように、所定の期間において一定の信号を入力する場合、出力信号は単純なランプ状変化パターンとなる。他方、所定期間徐々に上昇した後に一定となり、その後徐々に減少する信号を入力する場合、出力信号は、ランプ状変化パターンにおいて変化の開始及び終了時を滑らかにするSカーブ状変化パターンとなる。
これらの時系列変更パターンを用いては、走間板厚変更において生じる非線形の圧延現象に対応して、圧延機の制御状態量である出側板厚変動や出側板速変動、入側板速変動が発生しないように操作するのは困難である。また板速度変動により張力も変動し、張力変動によりさらに板厚変動や出側板速変動、入側板速変動が発生するため、板厚実績および張力実績の設定値からの偏差を最小にしつつ圧延機の操業状態を変化させるのは容易ではない。
本実施形態においては、走間板厚変更として、図5(a)、(b)に示すように板厚および張力を変更する場合を考える。図の横軸は被圧延材の板上の位置を表し、走間板厚変更領域にて板厚設定および張力設定を変更するものとする。制御状態量である出側板厚およびスタンド間張力の設定値の変更はランプ関数状(ある設定値から次の設定値まで直線状に変更する)に実施する。また、図の添字I、IIは、走間板厚変更前および後の制御状態量設定値であることを示す。板厚については、走間板厚前後で入側板厚は同じで、#1スタンド出側板厚、#2スタンド出側板厚が異なる。また、張力についても、入側張力は走間板厚変更領域前後で同じ設定であるが、スタンド間張力、出側張力については、異なる設定としている。
図6に、図5(a)、(b)に示すような走間板厚変更を実施するための、圧延機の制御操作端であるロールギャップおよびロール速度の変更方法を示す。図6の横軸は時間であり、#1スタンド圧延機および#2スタンド圧延機において、被圧延材の板上の同一地点で、スケジュールIからスケジュールIIへ板厚設定を変更するタイミングで、制御操作端であるロールギャップおよびロール速度を変更する。
即ち、走間板厚変更においては、被圧延材の板上において、目標とする板厚を変更する点(以降、板厚変更点とする)を決定し、その板厚変更点が#1スタンド圧延機及び#2スタンド圧延機2を通過する際に、夫々のロールギャップ及びロール速度を変更する。換言すると、それまでは、図6の板厚設定に係るグラフにおいて破線で示すスケジュールIから、実線で示すスケジュールIIの圧延状態に遷移する場合、板厚変更点が#1スタンド圧延機及び#2スタンド圧延機によって夫々圧延される間に、同じく図6のロールギャップに係るグラフ及びロール速度に係るグラフのようにロールギャップ及びロール速度を変更する。
スケジュールIおよびスケジュールIIにおけるロールギャップおよびロール速度は、圧延モデル式より求めることができる。ロールギャップおよびロール速度の演算は、図7に示すような式を用いて指令値発生装置104にて実施する。スケジュールIおよびスケジュールIIにおいて必要となるロールギャップおよびロール速度は指令値発生装置104における計算により設定されるので、次に変更パターン発生装置101で、設定されたロールギャップおよびロール速度への変更を実施する。この場合、ステップ状にスケジュールIからスケジュールIIへ圧延操業の安定化の観点から変更できないので、従来はこの変更を図6に示すようにランプ状関数を用いて実施していた。
圧延現象は、複雑な非線形現象であるため、図8(a)に示すように、ロールギャップをランプ状に変更した場合、出側板厚はランプ状の変動とはならず、複雑に変動する。即ち、ロールギャップおよびロール速度をランプ状に変更させても板厚および張力はランプ状に変動しない。
出側板厚変化をランプ状とするためには、ロールギャップ変更パターンを図8(b)に示すようなロールギャップの時系列変更パターンとする必要が有る。また、先進率は、ロールギャップのランプ状変更に応じてランプ状に変動すると仮定すると、出側板厚をランプ状に変更しようとして、ロールギャップの時系列変更パターンを図8(b)のようにした場合、先進率変動はランプ状にならなくなる。
圧延機スタンドの出側張力は、後段スタンド圧延機の入側速度と、当該圧延機のロール速度×(1+先進率)の差を時間積分したものである。後段スタンド圧延機の入側速度を一定とすると、先進率の変化に対応して、ロール速度を1/(1+先進率)状に操作すれば出側張力は一定になる。また、後段スタンド入側板速と一定値の差をつけて変更することで一定値の時間積分となることから、張力をランプ状に変更することも可能である。
従って、圧延における制御操作量である、ロールギャップおよびロール速度の変更パターンを最適化することで、制御状態量である板厚および張力をランプ状に変更することが可能となる。例えば、図8(b)の場合、ロール速度を図に示したような時系列パターンとすることで、ロール速度×(1+先進率)としては、ランプ状に変化するようにすることが可能である。
本実施形態においては、このように最適化されたロールギャップ及びロール速度の変更パターンが、制御操作端変更パターン記憶部102に記憶されており、図6に示す#1スタンド走間板厚変更領域及び#2スタンド走間板厚変更領域において、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、制御操作端変更パターン記憶部102に記憶された変更パターンを読み出して制御操作端変更パターン発生装置101に入力する。これにより、図8(b)に示すように、出側板厚が、変更前の状態から変更後の状態にランプ状に変化するようになる。即ち、制御操作端変更パターン記憶部102が、時系列変更パターン記憶部として機能すると共に、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、時系列変更パターン出力部として機能する。
ここで、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103は、少なくとも上記#1スタンド走間板厚変更領域の到来を事前に認識することになる。即ち、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、圧延条件変化認識部及び時系列変更パターン取得部として機能する。この認識は、指令値発生装置104から入力される指令値の変化を検知することによって実行される。
尚、上述したように、圧延機による圧延操業は、事前に策定されている生産計画に沿って実行される。圧延機においては、生産計画に従って、被圧延材の板厚を変更すべき被圧延材上の位置が予め定められており、その位置はロールの回転量を測定することにより圧延機からどれ位の距離にあるかを圧延制御装置は認識している。例えば、板厚を変更すべき被圧延材上の位置に、予めパンチ穴を開け、被圧延材に光を当てておくことで、パンチ穴を通過する光を検出することによりパンチ穴を検出する。圧延機入側にパンチ穴検出器50を図1のように接地することで、板厚を変更すべき点が圧延機入側に到達したことを検出できる。更に、入側ブライドルロールの回転数を検出することで、板厚を変更すべき点が#1スタンド走間板厚変更領域および#2スタンド走間板厚変更領域に到達したことを検出することができる。指令値発生装置104は、そのタイミングで指令値の変更を実施する。
尚、図6の例においては、#2スタンド走間板厚変更領域においても、#1スタンドのロールギャップも変更している。これは、一度に変化量を大きくとると、圧延機にかかる負荷が高くなり、装置の運用が非効率となることや、一度の変化量として可能な範囲には限界があることに起因する。即ち、#2スタンド走間板厚変更領域後の最終的な状態に少しずつ近付けることにより、このような課題を解決する趣旨である。
本実施形態においては、上述したような最適化された変更パターンを制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させるため、圧延シミュレーションによって変更パターンを生成する。図9に、本実施形態に係る制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させる変更パターンを生成するために用いられる圧延シミュレーション装置(圧延シミュレータと略記)の構成を示す。圧延シミュレータは、入側ブライドルロール1、#1スタンド圧延機2、#2スタンド圧延機3、出側ブライドルロール4の状態をシミュレーションする圧延機シミュレータと、入側張力、出側張力を含む圧延現象シミュレータのモデルから構成される。
圧延機シミュレータは、ロールギャップ指令値、ロール速度指令値を入力として圧延現象シミュレータに対してロールギャップおよびロール速度を出力する。圧延現象シミュレータは、更に、被圧延材の入側板厚、変形抵抗、および摩擦係数を入力として、各スタンド圧延機のロールギャップやロール速度より、各スタンド出側板厚や入側張力、スタンド間張力および出側張力を演算し、圧延状態量として出力する。
ここで、被圧延材の変形抵抗、摩擦係数は圧延機設備の機械仕様、被圧延材の製品仕様、圧延に用いられる潤滑材の仕様等により決定される。また、圧延の制御状態量である入側張力、スタンド間張力および出側張力は、速度差の積分となっていることから、外部から圧延シミュレータの張力をシミュレーションする積分項をチャージすることにより設定できるようにしておく。圧延現象は、非線形現象であることから、張力や圧延荷重、板厚等の初期値が異なると、板厚や張力の時系列変動が異なる為、できるだけ走間板厚変更前の圧延機状態に合致した状態で、シミュレーションを実施することができるようにするためである。また、このようにしておくことにより、種々の圧延における制御状態量を仮定して、圧延シミュレーションを実施することが可能となる。
ここで、ロール速度制御装置11〜41や、油圧圧下制御装置22、32等の制御操作端の制御装置は、いずれも図1及び図2に示すような圧延機制御用の計算機による制御周期よりも短い周期で計算制御を実施している。そのため、圧延機のシミュレータにおいては、制御操作端変更パターン発生装置101が、ロール速度およびロールギャップの変更パターンを出力した後、ロール速度制御装置11〜14および油圧圧下制御装置22、32がロール速度およびロールギャップを変更する時間応答まで考慮してシミュレーションを実施する。
本実施形態に係る圧延シミュレータにおいては、圧延機シミュレータが、制御操作端変更パターン発生装置101の操作出力に従ってロールギャップやロール速度をシミュレーションする。ロールギャップやロール速度は、圧延状態量と共に変化することから、圧延現象における演算周期で最終的には演算されることになる。これが圧延シミュレータの演算周期となる。
また、実操業時は被圧延材の入側板厚や変形抵抗、摩擦係数変動やロールの熱膨張等の機械的要因により、実際に走間板厚変更が始まる瞬間の板厚や張力等の圧延機状態量実績は設定値と異なる可能性がある。上述したように、圧延現象は非線形現象であることから、制御状態量である入側板厚や張力等の条件が異なる場合、異なった応答となる。それに対応するため、圧延における制御状態量実績の設定値からの偏差をいくつか想定して、それらについてのシミュレーションを実施し、夫々の結果について得られた変更パターンを、制御操作端変更パターン記憶部102に記憶しておくことが好ましい。
例えば、#1スタンド圧延機の入側板厚H1実績が設定値より厚い場合、薄い場合、設定値と同じ場合の3通り、スタンド間張力Tf1実績が設定より高い場合、低い場合、設定値と同じ場合の3通りを想定し、その組み合わせで9通りについてシミュレーションを実施する。
#1スタンド圧延機出側板厚h1および#2スタンド圧延機出側板厚h2は、圧延機の制御状態量および制御操作量であるロールギャップおよびロール速度により決定される。また、入側張力は、入側ブライドルロール速度または電流を操作端とする入側張力制御により、出側張力は、出側ブライドルロール速度または電流を操作端とする出側張力制御で設定値に維持されるため、ここでは制御状態量実績が設定値と一致していると仮定する。入側ブライドルロールおよび出側ブライドルロールにおいては、圧延を実施しないため先進率等の圧延状態により変動する要因が無いからである。
シミュレーションにおいては、結果の良否判定が必要となるが、ここでは、#1スタンド圧延機のロールギャップおよびロール速度変更パターンについては、#1スタンド出側板厚実績およびスタンド間張力実績の設定値からの偏差の走間板厚変更領域での時間軸方向の2乗平均誤差が小さいほど良いと評価する。また、#2スタンド圧延機のロールギャップおよびロール速度パターンについては、#2スタンド圧延機出側板厚実績およびスタンド間張力実績の設定値からの偏差の走間板厚変更領域での時間軸方向の2乗平均誤差が小さいほど良いと評価する。
図10(a)に、圧延機制御に用いられている制御用計算機、圧延機操作端の制御に用いられている制御操作端制御用計算機、および制御対象の物理現象である圧延機および圧延現象の圧延シミュレーションにおける計算周期について示す。制御操作端変更パターン発生装置101、指令値発生装置104等の圧延機の制御に用いられている制御用計算機(圧延機制御用計算機)は、例えば20ms程度の周期で動作する。そのため、操作端への時系列変更パターンも、制御周期より細かい分解能では制御操作端に対して出力することができない。
そこで、圧延制御用計算機制御周期より細かい刻み幅の制御操作端制御用計算機の制御周期で、制御操作端制御をシミュレーションし、さらに細かい刻み幅で、圧延機制御操作端動作および圧延現象のシミュレーションを実施する。つまり、圧延機制御用計算機の制御周期で出力した、制御操作端であるロールギャップおよびロール速度を指令値として、圧延機制御操作端制御装置が制御操作端実績値を指令値に合わせるように変更し、更にその結果に応じて圧延機および圧延現象をシミュレーションすることで、次の圧延制御用計算機の制御周期における圧延機の制御状態量である出側板厚、張力、圧延荷重等を計算することが可能となる。
ここで計算した次の制御周期における圧延機の制御状態量が、目標値に最も近くなるように、制御操作端操作指令値を変更する。圧延機制御用計算機の制御周期毎に同様の演算を、走間板厚変更領域の開始点から終了点までを順次実施することで、最適な時系列変更パターンを得ることができる。
図10(b)及び図11(a)に、走間板厚変更の場合における、ロールギャップおよびロール速度の最適時系列変更パターンの設定方法を示す。図5に示すような#1スタンド出側板厚、#2スタンド出側板厚、入側張力、スタンド間張力、出側張力が得られるような制御操作端の時系列変更パターンを、圧延機制御用計算機の各処理実行時におけるロールギャップおよびロール速度を決定しながらシミュレーションを実施し、時系列変更パターンを作成していく。
図10(b)において、圧延機制御用計算機の制御周期をk番目、圧延機制御操作端制御用計算機の制御周期をl番目と考えると、走間板厚変更中の圧延機制御用計算機の制御周期i番目においては、次のi+1番目の制御周期における出側板厚目標値となるように、ロールギャップを決定する。出側板厚目標値の変更に合わせて、ロールギャップ変更量を図7に示す計算式に従って決定する。、ロールギャップを変更したことで、先進率変動が発生し、張力も変動する。これを防止するためにロール速度も変更する必要がある。
この場合、ロールギャップとしてΔS1、ロール速度としてΔV1だけ変更する様な指令が出力されたとする。その指令に従って、圧延シミュレーションを実施する。制御操作端制御用計算機が、ロールギャップ変更指令を受取って、それに従ってロールギャップを変更して、図10(b)に示すようなロールギャップ実績が変更され、図11(a)に示すようにロール速度実績が変更される。
その結果として、図10(a)に示すように出側板厚実績が変化すると共に、図11(b)に示すようにスタンド間張力が変動することが、圧延シュミレーションの結果として得られたとする。出側板厚は、Δhだけ目標より小さく、スタンド間張力はΔTだけ目標より大きかった事が結果として得られる。次の圧延制御用計算機の制御周期における制御状態量の目標値からの偏差を最小とする制御操作端操作量を決定していく必要が有るが、そのために例えば山登り法を用いる。
山登り法においては、図12に示すように、出側板厚およびスタンド間張力の偏差割合から作成した評価関数Jが最小となる点を、制御操作端を操作可能な範囲で総当りにより操作して圧延シミュレーションを行って決定する。山登り法は、総当り探索方法であるが、探索効率を向上させる手法が種々提案されているのでそれらを利用する事で探索効率を向上させることが可能となる。
このような、圧延機制御用計算機の制御周期での制御操作端への最適操作指令を、図13に示すように、走間板厚変更領域全域にわたって求める事で、制御操作端に対する最適な時系列変更パターンを得る事ができる。
上記をまとめると、図14に示す最適制御操作端時系列変更パターン設定装置に示す動作概要のようになる。初期条件設定装置111にて、走間板厚変更前の板厚や張力といった制御状態量実績値と制御状態量設定値との偏差を複数種類仮定して、圧延シミュレータ110の制御状態量の初期条件を設定する。初期条件が設定された状態で、制御周期管理装置114が圧延制御用計算機の制御周期毎の状態量目標値を設定する。
設定された制御状態量目標値となるように、制御操作端操作量設定装置は、制御操作端操作量を出力し、圧延シミュレータ110に入力する。圧延シミュレータ110においては、圧延制御用計算機の次の制御周期までの圧延現象をシミュレーションにより演算し、次の制御周期における制御状態量実績を出力する。
最適判定装置においては、得られた制御状態量実績と制御状態量目標値との偏差の2乗誤差をとって評価関数Jを求め、これを、例えば前記の山登り法において予め定めたように制御操作端操作量を適当に変更しながら繰り返して、最適な制御操作端操作量を求める。これを、予め定めた制御状態量の初期設定条件分だけ実施することで、各初期設定条件における最適時系列変更パターンを得ることができる。
上記のようにして、様々な初期設定条件における最適時系列変更パターンを演算し、制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させることができる。従って、実際の圧延操業において走間板厚変更領域が開始される際には、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、圧延状態量実績に最も近い初期設定条件に基づいて演算された最適時系列変更パターンを選択し、その最適時系列変更パターンを用いて走間板厚変更を実施する。その方法を図15(a)、(b)を用いて説明する。
先に例示したように、#1スタンド圧延機の入側板厚H1が設定値より厚い場合、薄い場合、設定値と同じ場合の3通り、スタンド間張力Tf1が設定より高い場合、低い場合、設定値と同じ場合の3通りを想定し、その組み合わせで9通りについてシミュレーションを実施し、それぞれの組み合わせに対する制御操作端への最適な時系列変更パターンを決定しておく。
例えば、図15(b)に示すように、入側板厚が“厚い”、“設定値”、“薄い”の場合と、スタンド間張力が“高い”、“設定値”、“低い”の場合夫々に応じて、初期設定条件No.を1〜9まで付けておき、該当する初期条件における制御操作端時系列変更パターンと対応づけておく。
また、初期設定条件に対応させて、入側板厚については、設定値、厚い、薄いの範囲を予め定めておく。そして、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103は、入力された実績値に基づいて“設定値”、“厚い”、“薄い”の何れの範囲に含まれるかを判断し、最適時系列変更パターンを選択する。同様に、スタンド間張力についても、“高い”、“設定値”、“低い”の範囲を予め定めておき、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、入力された実績値に基づいて最適時系列変更パターンを選択する。
走間板厚変更領域開始時に、入側板厚実績およびスタンド間張力実績に基づき、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103により、初期設定条件No.が決定される。図15の例においては、入側板厚が厚い、スタンド間張力が設定値と判定され、初期設定条件No.として2が選択される。
これにより、走間板厚変更領域においては、選択された初期設定条件No.に対応する制御操作端の時系列変更パターンが、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103によって制御操作端変更パターン記憶部102から読み出されて制御操作端変更パターン発生装置101に与えられ、実際の制御操作端であるロールギャップおよびロール速度制御装置に対して圧延制御用計算機の制御周期ごとに、操作端指令値として与えられる。
以上により、走間板厚変更領域において、制御状態量実績の制御状態量設定値からの偏差を最小とする走間板厚変更が可能となる。これにより、圧延機にとって重要な被圧延材の板厚や張力等の制御状態量実績の設定値からの偏差を最小とするような、圧延機に対する制御操作端の時系列変更パターンを設定する事が可能となるため、製品品質および操業効率を向上させる事が可能となる。
尚、上記実施形態においては、図9に示すような圧延シミュレータによるシミュレーション結果を制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させる場合を例として説明したが、シミュレーションに限らず、様々な組み合わせによる実験値、実測値に基づいて生成された変更パターンを、最適時系列変更パターンとして記憶しても良い。この場合であっても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
また、上記実施形態のようにスケジュールI、IIの二つの圧延条件がある場合、スケジュールIからスケジュールIIへ遷移する走間板厚変更と、スケジュールIIからスケジュールIへ遷移する走間板厚変更との2種類の走間板厚変更がある。従って、制御操作端変更パターン記憶部102は、少なくとも2種類の時系列変更パターンを記憶しており、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103は、制御操作端変更パターン記憶部102から時系列変更パターンを読み出す際、いずれの時系列変更パターンを読み出すかを判断する。この判断は、上述したように圧延操業が生産計画に則って実行されることに鑑み、板厚を変更すべき被圧延材上の位置を監視することで実現できる。
実施の形態2.
実施の形態1においては、ロールギャップとロール速度を、圧延シミュレータを用いて圧延機制御用計算機の制御周期にて逐次最適値を計算していくことで求める方法を示したが、予め複数の時系列変更パターンを仮定しておき、それらを用いて走間板厚変更のシミュレーションを実施して、評価関数が最も小さい時系列変更パターンを採用することとしても良い。
この場合、図16に示すように、時系列パターン選択装置にて、予め設定してある時系列パターンを順次選択して、時系列操作量変更装置120に対して与え、実際の制御操作端操作量を時系列変更パターンとして圧延シミュレータ110に与え、得られた制御状態量(走間板厚変更領域の時系列量となる)から、最適判定装置122にて時間軸方向における制御状態量と状態量目標値との偏差の2乗平均和を求める。これを、時系列パターンを変更して実施し、最適な時系列変更パターンを選択する。
実施の形態3.
本方式は、圧延機のみならず、制御対象を制御状態量をある時系列パターンに従って変更するために、制御操作端をある時系列パターンでフィードフォワード的に変更する事が必要な制御対象に対して適用可能である。
実施の形態4
熱間連続圧延機においては、図17に示すように、圧延機スタンド間にルーパ装置200が設置される。ルーパ装置200は、ルーパ支点203を中心に回転するルーパアーム202、ルーパアーム202の先端に取り付けられ、被圧延材に接触して被圧延材を持ち上げるためのルーパロール201、ルーパロールの鉛直方向の位置、即ち高さおよびルーパロールが被圧延材に与える力を調整するための油圧シリンダー204を含む。即ち、ルーパロール201を含むルーパ装置200は、被圧延材を支持する支持部である。
そして、油圧シリンダー204がルーパアーム202から受ける反力を測定する事で、ルーパロール201が被圧延材から受ける力、ひいては被圧延材の張力が求められる。また、ルーパロール201の位置を変更する事で、スタンド間の被圧延材長さが変化するため、被圧延材にかかる張力が変更される。つまり、ルーパ装置200は、圧延機スタンド間の張力の制御手段であり、検出手段でもある。
スタンド間における被圧延材の張力を測定するためには、ルーパロール201が被圧延材を持ち上げている必要があるため、ルーパロール201上面位置は、前後スタンドの下作業ロール上面を結んだ線(パスライン)より上にする必要が有る。その場合でも、ルーパロール201に対する被圧延材の巻付角度が小さいと張力測定精度が落ちるため、ある程度の巻付角度が必要となる。
被圧延材を圧延機を通過させる場合、被圧延材の先端部の圧延機作業ロール間への噛込作業が必要となる。この場合、図18に示すように、#1スタンド圧延機から#2スタンド圧延機3まで被圧延材の先端部が移動するため、ルーパロール201が邪魔にならないようにパスラインより下げた状態とする。被圧延材の先端部が#2スタンド圧延機3に噛込んだ後、ルーパロール201を図17に示すような位置まで上昇させることで、スタンド間張力を測定可能な状態とするとともに、スタンド間張力制御の操作端として利用できる状態とする。
ここで、図19は、ルーパロール201の位置の変動とスタンド間張力の変動とを時系列を同じくして示したグラフである。図19に示すように、ルーパロール201を上昇させると、スタンド間の被圧延材の幾何学的長さが伸びるため、下図に示すようにスタンド間張力が上昇する。2つの圧延機スタンドのロール速度およびロール間隔が一定で有れば、スタンド間張力が上昇するのは、ルーパロール201の上昇によりスタンド間の被圧延材長さが変化している期間のみである。ルーパロール201の位置が固定され、スタンド間の被圧延材長さが一定となると、スタンド間張力は元に戻る。
スタンド間張力が上昇すると、被圧延材の板厚が薄くなるとともに、板幅が減少する。板厚については、後段の圧延機スタンドである#2スタンド圧延機3で修正可能であるが、板幅の減少(幅縮み)は修正不可であるため製品品質上問題となる。そのため、ルーパロール201を上昇させる間は、#1スタンドロール圧延機2のロール速度やロールギャップを補正し、ルーパロールの上昇による張力変動を防止する必要が有る。
実施の形態1においては、非線形な変化を検知する圧延条件の対象として被圧延材の板厚や圧延の目標値を例として説明した。本実施形態においては、上記ルーパロール201の位置変動を圧延条件の変化として捉え、#1スタンド圧延機2のロール速度、ロールギャップの時系列変更パターンを各制御操作端に与える。これにより、図19に示すようなスタンド間張力の変動を防止し、被圧延材の製品品質を向上することが本実施形態に係る趣旨である。
図20は、上述したようなルーパロール201の位置の変化に対する上記操作端の時系列変更パターン及びその結果得られるスタンド間張力の時系列変化の例を示す図である。上述したように、ルーパロール位置を上昇する事で、スタンド間の被圧延材長さは長くなるため、スタンド間張力は上昇する。その張力上昇を抑制するには、ルーパロール位置の変動による長さ変動に合せて#1スタンド圧延機2のロール速度を変化させ、幾何学的長さに被圧延材の長さが一致するようにする。具体的には、ルーパロール201の上昇に伴うスタンド間の被圧延材長さの上昇に合わせて被圧延材が#1スタンド圧延機2から送り出されるように、#1スタンド圧延機2のロール速度を速くする。
また、#1スタンド圧延機2のロール速度を変化させると、それに伴って圧延荷重、ひいては出側板厚が変動する。それを抑制するために#1スタンド圧延機2のロールギャップを操作する必要がある。具体的には、ロール速度の上昇に伴って圧延荷重が減少するため、圧延荷重の減少分に対応するように#1スタンド圧延機2のロールギャップを狭める。このように、ルーパロール201の位置の変化に応じて、#1スタンド圧延機2のロール速度およびロールギャップを変更することにより、図20に示すように、スタンド間張力の変動を一定の範囲内に抑えることができる。即ち、本実施形態においても、時系列変更パターンに従って変更される圧延動作のパラメータは、ロールギャップ及びロール速度である。
しかしながら、ルーパロール201の位置の変更に対するスタンド間の被圧延材の幾何学的長さは、ロールへの被圧延材の巻付等を考慮すると非線形である。そのため、ルーパロール201の位置をランプ状に変更しても、スタンド間の被圧延材の幾何学的長さはランプ状とはならない。これは幾何学的問題であるから、スタンド間の被圧延材の幾何学的長さがランプ状に変動するようにルーパロール201の位置変更指令を出力することは可能である。そのようにした場合においても、#1スタンド圧延機2のロール速度を変更することで、圧延状態が変化し先進率および圧延荷重が変動する。
圧延荷重の変動は#1スタンド圧延機のロールギャップを操作することで抑制するが、それが原因となっても先進率が変動する。そのため、スタンド間張力が変動し、それが原因となってまた先進率が変動する。といった具合に、各制御操作端の時系列操作パターンが適切でないと張力変動が抑制できない結果となる。
本実施例においては、図21に示すような圧延シミュレータにより、図20に示すような時系列制御パターンを求めて、制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させる。図21に示す圧延シミュレータにおいては、圧延機シミュレータが、ルーパロール201の位置変更指令値に基づいてスタンド間の被圧延材の幾何学的長さ(幾何学的板長)を求める。そして、圧延現象シミュレータが、上記幾何学的長さと、ロールギャップ、ロール速度より#1スタンド圧延機2の出側における板厚、張力を演算する。
スタンド間張力は、ルーパロール201の位置が上昇してからでないと測定不能である。従って、#1スタンド圧延機2の入側で測定した入側板厚実績と#1スタンド圧延機2における圧延荷重により初期設定条件を複数個設定し、図15(b)の例と同様に、それぞれに対する時系列制御パターンを求めて制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させる。
ルーパロール201の位置の変更タイミング、即ち、指令値発生装置104が、ルーパロール201の位置変更指令を出力するタイミングは、図20に示すように、被圧延材の先端部が#2スタンド圧延機に噛込んだタイミングを基準とし、それ以降のタイミングとする。具体的には、被圧延材の先端部分が#2スタンド圧延機に噛込んだタイミングから所定期間経過したタイミングとする。
指令値発生装置104は、#1スタンド圧延機2の回転数に基づいて被圧延材の先端部の位置を計算しており、その計算結果に基づいて上記のタイミングを判断する。この他、被圧延材が#2スタント圧延機3に噛込んだ際、#2スタンド圧延機3の圧延荷重が急上昇する。各スタンドの圧延荷重は、フィードバック制御のためにモニタされているため、指令値発生装置104は、#2スタンド圧延機3の圧延荷重のモニタリング結果に基づいて被圧延材が#2スタンド圧延機3に噛込んだタイミングを判断しても良い。
そして、実施の形態1と同様に、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、指令値発生装置104から入力される指令値の変化に基づいて操業状態の変化を検知し、図20に示すように設定された最適な時系列設定パターンを制御操作端変更パターン記憶部102から読み出して、制御操作端に与える。これにより、ルーパロール201の上昇による張力変動を最小限とすることができる。
尚、本実施形態においては、指令値発生装置104が図20の最上段に示すようなルーパロール201の位置変更指令を出力し、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、指令値発生装置104から出力された指令値に基づいて図20に示す“#1スタンド速度”、“#1スタンドロールギャップ”のような時系列変更パターンを制御操作端変更パターン記憶部102から取得して制御操作端変更パターン発生装置101に入力する場合を例として説明した。
この場合、制御操作端変更パターン発生装置101は、指令値発生装置104から入力されるルーパロール201の位置指令値と、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103から入力される時系列変更パターンとの同期をとる必要がある。
これに対して、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、上述したような、#1スタンド圧延機2の回転数に基づく被圧延材の先端部の位置の計算結果や、#2スタンド圧延機3の圧延荷重の急上昇の検知結果を取得することにより圧延状態の変化を検知し、図20の最上段に示すルーパロール201の位置変更指令の時系列パターンをも含む時系列変更パターンを制御操作端変更パターン記憶部102から取得し、制御操作端変更パターン発生装置101に入力するようにしても良い。
この場合、時系列変更パターンに従って変更される圧延動作のパラメータは、ルーパロール201の位置、ロールギャップ及びロール速度である。これにより、制御操作端変更パターン発生装置101は、図20に示す“ルーパロール位置”、“#1スタンド速度”、“#1スタンドロールギャップ”を含む時系列変更パターンを取得するため、指令値発生装置104から入力される指令値との同期をとる必要がなく、処理を簡略化することができる。
実施の形態5
図22は図1に示すような圧延機スタンドを被圧延材の搬送方向から見た状態を示す図である。図22に示すように、本実施形態に係る圧延機スタンドは、実際に被圧延材Pと接触して圧延を行うワークロール301、上下でロールを挟み込んでワークロールの圧延荷重をサポートするバックアップロール303、ワークロール301とバックアップロール303との間において、ワークロール301の撓みによる被圧延材P表面の湾曲を補正するための中間ロール302を含む。このような圧延機スタンドは、ロールの数が全部で6つであることから、6段圧延機と呼ばれる。
図23は、図22の状態から中間ロール302の配置を変化させた状態を示す図である。6段圧延機においては、に示すように、中間ロールのシフト位置、即ち、被圧延材Pの板面と平行な方向であって且つ搬送方向と垂直な方向(以降、板幅方向とする)における位置を変化させることで、被圧延材Pの板幅方向にかかる圧延荷重分布を調整し、ワークロール301の湾曲による被圧延材Pの板面の湾曲を防ぎ、良好な板プロファイルおよび形状を得ることができる。そのため、中間ロール302のシフト位置は、図22、図23に示すように、被圧延材Pの板幅に合わせて、板端部から一定の距離になるように設定される。
また、6段圧延機においては、隣接しているロール同士の圧力を調整するための機構としてベンダー304が設けられている。中間ロール302のシフト位置の調整に際しては、ベンダー304の圧力をも調整することにより、被圧延材Pの圧延荷重や張力への影響が補正される。
連続圧延機においては、板厚や板幅の異なる被圧延材Pを溶接してつなげることにより連続して圧延操業を行うため、被圧延材Pの板幅が変わるタイミング、即ち板幅が変わる溶接点が圧延機スタンドを通過するタイミングに応じて、中間ロール302のシフト位置を変更する(中間ロールシフト)必要がある。中間ロール302をシフトさせている期間は、被圧延材Pに対する圧延荷重が板幅方向の位置に応じて変化し、圧延された被圧延材Pの形状が大きく乱れるため、ベンダー304を操作することで中間ロールシフトに起因する形状不良を防止する必要がある。
中間ロールシフト位置、ベンダー圧と板形状の関係は、板幅方向の圧延現象、ロールの撓み等を含み複雑な非線形現象となる。従って、中間ロールシフト位置をランプ状に変更する場合における、ベンダー304の圧力調整は、ランプ状でなく形状変動を抑制するような時系列パターンで動作させる必要がある。本実施形態においては、この被圧延材Pの板幅の変化を圧延条件の変化として捉え、実施の形態1と同様に、制御操作端である中間ロール301のシフト位置、ベンダー304の圧力の時系列変更パターンを夫々の制御操作端に与える。これにより、上述したような被圧延材Pの形状の乱れを抑制し、製品品質を向上することが本実施形態に係る趣旨である。即ち、本実施形態においては、時系列変更パターンに従って変更される圧延動作のパラメータは、ベンダー304の圧力である。
そのため、図9、図21の例と同様に、圧延シミュレータにおいて中間ロール302のシフト位置、ベンダー304の圧力、圧延荷重に基づいて被圧延材Pの圧延後における板面の形状を求める圧延現象モデルを用いて、形状変動が最も小さくなるような中間ロールシフトおよびベンダの時系列操作パターンを求め、制御操作端変更パターン記憶部102に記憶させる。
中間ロール302のシフト位置変更のタイミング、即ち、指令値発生装置104が、流感ロール302のシフト位置変更指令を出力するタイミングは、被圧延材Pの板幅が変更される位置、即ち、異なる板幅の被圧延材Pの溶接点が、圧延スタンドに到達するタイミングに応じて決定される。指令値発生装置104は、圧延スタンドの回転数に基づいて被圧延材Pの搬送位置を計算しており、上記溶接点の位置を計算することによって、圧延スタンドに到達するタイミングを求めることができる。
そして、実施の形態1と同様に、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、指令値発生装置104から入力される指令値の変化に基づいて操業状態の変換を検知し、上述したように設定された最適な時系列設定パターンを、制御操作端変更パターン記憶部102から読み出して制御操作端に与える。これにより、被圧延材Pの板幅の変化に応じた中間ロール302のシフト位置の変更による板形状の乱れを最小限とすることができる。
尚、上記実施形態においては、中間ロール302のシフト位置変更に応じて読み出される時系列変更パターンは、ベンダー304の圧力についての時系列変更パターンを例として説明したが、これに限らず、実施の形態1、4のように、ロール速度、ロールギャップをも制御対象としても良い。
また、本実施形態においては、指令値発生装置104が中間ロール302のシフト位置変更指令を出力し、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、指令値発生装置104から出力された指令値に基づいてベンダー302の圧力の時系列変更パターンを制御操作端変更パターン記憶部102から取得して制御操作端変更パターン発生装置101に入力する場合を例として説明した。
この場合、制御操作端変更パターン発生装置101は、指令値発生装置104から入力される中間ロール302のシフト位置と、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103から入力される時系列変更パターンとの同期をとる必要がある。
これに対して、最適制御操作端時系列変更パターン設定装置103が、上述したような、被圧延材Pにおける板幅の変更点が圧延スタンドに到達するタイミングを検知し、中間ロール302のシフト位置の変更の時系列パターンをも含む時系列変更パターンを制御操作端変更パターン記憶部102から取得し、制御操作端変更パターン発生装置101に入力するようにしても良い。
この場合、時系列変更パターンに従って変更される圧延動作のパラメータは、中間ロール302のシフト位置及びベンダー304の圧力である。その結果、制御操作端変更パターン発生装置101は、中間ロール302のシフト位置の時系列変更パターン及びベンダー304の圧力の時系列変更パターンを取得するため、指令値発生装置104から入力される指令値との同期をとる必要がなく、処理を簡略化することができる。