JP7077858B2 - 還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス - Google Patents

還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス Download PDF

Info

Publication number
JP7077858B2
JP7077858B2 JP2018150719A JP2018150719A JP7077858B2 JP 7077858 B2 JP7077858 B2 JP 7077858B2 JP 2018150719 A JP2018150719 A JP 2018150719A JP 2018150719 A JP2018150719 A JP 2018150719A JP 7077858 B2 JP7077858 B2 JP 7077858B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
reduction reaction
carbon
layer
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018150719A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020026542A (ja
Inventor
泰明 河合
真太郎 水野
直彦 加藤
康彦 竹田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP2018150719A priority Critical patent/JP7077858B2/ja
Publication of JP2020026542A publication Critical patent/JP2020026542A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7077858B2 publication Critical patent/JP7077858B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイスに関する。
太陽光エネルギーを用いて水(HO)から水素(H)、水(HO)と二酸化炭素(CO)から一酸化炭素(CO),ギ酸(HCOOH),メタノール(CHOH)などを合成する人工光合成に用いられる反応デバイスの技術が開示されている。これを実用化するためには、高い効率で反応を生じさせる反応用電極を実現することが必要である。
反応デバイスでは、還元反応用電極と酸化反応用電極とが組み合わせて用いられる。炭素化合物を還元する際の副反応による水素の発生を抑制しつつ、炭化化合物を効率的に還元する還元反応用電極を提供する技術が開示されている(特許文献1)。ここでは、金属又は半導体を含む基板と、当該基板の表面の少なくとも一部を覆い、構造体単体のサイズが1μm以下のカーボン素材からなるカーボン層と、当該カーボン層の表面を覆う錯体触媒層と、を備える構成が開示されている。
特開2017-125242号公報
従来の還元反応用電極は、小型の電極としてのみ実現されており、金属等の上にカーボンを接触させているだけの構造であるために大電流や大型化された電極として均等に電流を流したり、安定して二酸化炭素の還元反応を生じさせたりして使用することが考慮されていない。
本発明の1つの態様は、基板と、接着層を介して前記基板上に設けられたカーボン層と、前記カーボン層の前記基板との反対側の面に担持された錯体触媒層と、を備え、前記カーボン層は、1μm以上のサイズのカーボン素材と100nm以下のサイズのカーボン素材とが混在する複合層であることを特徴とする還元反応用電極である。
ここで、前記カーボン層は、グラファイト又はグラフェン、カーボンペーパー及びカーボンナノチューブの3種類のカーボン素材を含むことが好適である。
また、前記接着層は、前記カーボン層に浸透した部分を含めた厚さが60μm以上であることが好適である。
また、前記接着層は、1μm以上のサイズのカーボン素材とポリマーを含むことが好適である。
また、前記基板と前記カーボン層との界面に前記錯体触媒層に含まれる触媒体が存在しないことが好適である。
本発明の別の態様は、上記還元反応用電極と、酸化反応用電極と、を組み合わせて構成される反応デバイスである。
本発明によれば、大電流や大型化に適した還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイスを提供することができる。
本発明の実施の形態における還元反応用電極の構成を示す図である。 本発明の実施の形態における電気化学セルの構成を示す図である。 比較例1の還元反応用電極の構成を示す図である。 実施例1の還元反応用電極の構成を示す図である。 比較例1及び実施例1の還元反応用電極における接着剤重量と接着剤厚さとの関係を示す図である。 比較例1及び実施例1の還元反応用電極における断面の光学顕微鏡観察結果を示す図である。 実施例1の還元反応用電極における断面の走査電子顕微鏡観察結果を示す図である。 比較例1の還元反応用電極に対するX線CT観察結果を示す図である。 実施例1の還元反応用電極に対するX線CT観察結果を示す図である。 比較例1及び実施例1の還元反応用電極における接着剤重量に対する作動電位の関係を示す図である。
[還元反応用電極]
図1は、実施形態に関わる還元反応用電極100を示す。還元反応用電極100は、基板10、カーボン層12及び錯体触媒層14を積層した構成を有する。還元反応用電極100に電圧が印加されると、基板10に生じた電荷がカーボン層12を介して錯体触媒層14に渡され、錯体触媒層14における還元触媒反応に利用される。図1では、二酸化炭素(CO)がギ酸(HCOOH)に還元される態様が示されている。
基板10は、半導体層や透明導電層とすることができる。例えば、基板10は、酸化チタン(TiO)、シリコン(Si)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タンタル(Ta)等を含むものとすればよい。また、基板10は、錫(Sn)を含む材料としてもよい。例えば、基板10は、錫(Sn)の単材料で構成される。また、例えば、基板10は、錫(Sn)と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)との合金とすることができる。さらに、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等の基材上にこれらの半導体層、透明導電層、金属又は合金を被覆して基板10としてもよい。また、基板10は、全体が均一な材料で構成される必要はなく、リード線が接点部を介して接続される箇所が錫(Sn)を含む材料で構成されていることが好適である。
カーボン層12は、カーボン素材(C)を含む層である。本実施の形態において、カーボン層12は、グラファイト(又はグラフェン)、カーボンペーパー(CP)及びマルチウォール・カーボンナノチューブ(MWCNTs)を含む層である。カーボン層12は、グラファイトを構造体の基材として、カーボンペーパー(CP)とマルチウォール・カーボンナノチューブ(MWCNTs)とを構造体として混在させた複合層とすることが好適である。カーボン層12に含まれるカーボン素材の構造体は、単体のサイズが1nm以上100μm以下であることが好適である。グラファイト又はグラフェン及びカーボンペーパー(CP)は、少なくともサイズが1μm以上100μm以下のものを含むことが好適である。カーボンナノチューブは、少なくとも直径が1nm以上100nm以下のものを含むことが好適である。
カーボン層12は、接着層を介して基板10上に貼り合わせることができる。このとき、接着剤として、導電性のカーボン素材、例えばグラファイト又はグラフェン、を含むポリマーを用いることが好適である。接着層には、例えば、少なくとも1μm以上100μm以下のサイズのグラファイト又はグラフェンを含むことが好適である。
錯体触媒層14は、ルテニウム錯体とすることが好適である。錯体触媒層14は、例えば、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(MeCN)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)Cl]、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)、[Ru{4,4’-di(1-H-1-pyrrolypropyl carbonate)-2,2’-bipyridine}(CO)(CHCN)Cl]等とすることができる。さらに、錯体触媒層14は、Ru錯体モノマーと重合開始剤(例えばピロール)、触媒(例えば塩化鉄)を含むRu錯体が高分子化(ポリマー)の状態でもよい。
錯体触媒層14による修飾は、錯体をアセトニトリル(MeCN)溶液に溶解した液をカーボン層12の上に塗布することで作ることができる。また、錯体触媒層14による修飾は、電解重合法により行うこともできる。作用極としてカーボン層12を形成した基板10の電極、対極にフッ素含有酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基板、参照電極にAg/Ag電極を用い、錯体触媒を含む電解液中においてAg/Ag電極に対して負電圧となるようにカソード電流を流した後、Ag/Ag電極に対して正電位となるようにアノード電流を流すことによりカーボン層12を形成した基板10上を錯体触媒層14で修飾することができる。電解質の溶液には、アセトニトリル(MeCN)、電解質には、Tetrabutylammoniumperchlorate(TBAP)を用いることができる。
本実施の形態では、基板10上にカーボン層12を形成した後、基板10との界面と反対側のカーボン層12の表面のみに錯体触媒層14を担持させる。
このような構成の還元反応用電極100とすることによって、カーボン層12を介して基板10で発生した電子を錯体触媒層14へ効率的に受け渡すことができる。これにより、還元反応を生じさせる際の副反応である水素の発生を抑制することができ、炭素化合物を錯体触媒層14の表面において効率的に還元する還元反応用電極100を実現することができる。
[酸化反応用電極]
酸化反応用電極102は、酸化反応によって物質を酸化するために利用される電極である。酸化反応用電極102は、基板、透明導電層、集電配線及び酸化触媒を含んで構成される。
基板は、酸化反応用電極102を構造的に支持する部材である。基板は、特に材料が限定されるものではないが、酸化反応用電極102を透光性を有するようにするには、例えば、ガラス基板やプラスチック等とすることが好適である。
透明導電層は、酸化反応用電極102における集電を効果的にするために設けられる。透明導電層は、特に限定されるものではないが、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)等とすることが好適である。特に、熱的及び化学的な安定性を考慮するとフッ素ドープ酸化錫(FTO)を用いることが好適である。
集電配線は、酸化反応用電極102における集電の効果を高めるために設けられる。すなわち、酸化反応用電極102を大面積化した場合、透明導電層のみでは酸化反応用電極102の全面において十分な反応を促進させるための導電性を確保できなくなるので、酸化反応用電極102の導電性を高めるために設けられる。集電配線は、例えば、間隔を置いて櫛形状に配置された線状のフィンガー電極と、フィンガー電極を更に集電するためのバス電極とを組み合わせた構成とすることができる。集電配線は、導電部、第1シール部及び第2シール部から構成することが好適である。導電部は、導電性の高い材料で構成され、金属を含む材料で構成することが好適である。例えば、銀(Ag)、銅(Cu)等を含む材料で構成することが好適である。また、第1シール部及び第2シール部は、導電部を化学的及び機械的に保護するために少なくとも導電部の一部を被覆するように設けられる。第1シール部は、低融点のガラスコート材とすることができる。また、第2シール部は、シリコーンゴム(脱オキシムタイプ、低分子シロキサン低減材、耐油・耐溶剤フロロシリコーン等)、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、メタクリル(アクリル)、ポリカーボネート、フッ素樹脂(テフロン(商標登録))、エポキシ樹脂等の樹脂とすることができる。
酸化触媒は、酸化触媒機能を有する材料を含んで構成される。酸化触媒機能を有する材料は、例えば、酸化イリジウム(IrOx)を含む材料とすることができる。酸化イリジウムは、ナノコロイド溶液として透明導電層の表面上に担持することができる(T.Arai et.al, Energy Environ. Sci 8, 1998 (2015))。
[電気化学セル]
本実施の形態における電気化学セルは、図2に示すように、還元反応用電極100と酸化反応用電極102を組み合わせて構成される。還元反応用電極100と酸化反応用電極102を還元触媒及び酸化触媒が対向するように配置し、その間に反応物が溶解された電解液104を導入させる。反応物は、炭化化合物とすることができ、例えば、二酸化炭素(CO)とすることができる。また、電解液は、リン酸緩衝水溶液やホウ酸緩衝水溶液とすることが好適である。具体的な構成例では、二酸化炭素(CO)飽和リン酸緩衝液のタンクを設け、ポンプによって当該液を還元反応用電極100と酸化反応用電極102との間に設けられた間隙に供給し、還元反応によって生じたギ酸(HCOOH)や酸素(O)を外部の燃料タンクに回収する。
還元反応用電極100と酸化反応用電極102との間を電気的に接続し、適切なバイアス電圧を印加した状態とする。バイアス電圧を印加する手段は、特に限定されるものではなく、化学的電池(一次電池、二次電池等を含む)、定電圧源、太陽電池等が挙げられる。このとき、酸化反応用電極102の集電配線に正極が接続され、還元反応用電極100のリード線に負極が接続される。
本実施の形態では、太陽電池セル106を採用している。太陽電池セル106は、還元反応用電極100及び酸化反応用電極102に隣接して配置することができる。図2の例では、還元反応用電極100と酸化反応用電極102とを対向させた電気化学セルの還元反応用電極100の背面に太陽電池セル106を配置し、太陽電池セル106の正極を酸化反応用電極102に接続し、負極を還元反応用電極100に接続している。
二酸化炭素(CO)からギ酸(HCOOH)等を合成する場合、水(HO)は酸化されて二酸化炭素(CO)に電子とプロトンを供給する。pH7付近では水(HO)の酸化電位は0.82V、還元電位は-0.41V(何れもNHE)である。また、二酸化炭素(CO)から一酸化炭素(CO)、ギ酸(HCOOH)、メチルアルコール(CHOH)への還元電位はそれぞれ-0.53V,-0.61V,-0.38Vである。したがって、酸化電位と還元電位の電位差は1.20~1.43Vである。そこで、炭化化合物である二酸化炭素(CO)を還元する場合、太陽電池セル106は、4枚の結晶系シリコン太陽電池を直接に接続した構成や3枚のアモルファス系シリコン太陽電池を直列に接続したアモルファスシリコン系3接合太陽電池とすることが好適である。
太陽電池セル106に対しては、受光面側に窓材108を設けることが好適である。窓材108は、太陽電池セル106を保護する部材である。窓材108は、太陽電池セル106において発電に寄与する波長の光を透過する部材とし、例えば、ガラス、プラスチック等とすることができる。
還元反応用電極100、酸化反応用電極102、太陽電池セル106及び窓材108は、枠材110によって構造的に支持される。
以下、比較例及び実施例を示し、本実施の形態における還元反応用電極100の特徴及び特性について説明する。
[比較例1]
図3に示すように、Ru錯体モノマーとピロール、塩化鉄からなるRu錯体ポリマーのアセトニトリル溶液をカーボン層12に塗布後、溶媒を除去することによりカーボン層12に錯体触媒層14を担持させた後、基板10の一表面上に導電性を有するグラファイトを含む接着剤Xを用いてカーボン層12を接着して還元反応用電極を形成した。このとき、カーボン層12には、基板10と反対側の表面のみならず、基板10との界面側にも錯体触媒層14が担持された層が形成されていると推察される。
比較例1では、接着剤Xの塗布量を0.006g~0.03g(15mm×20mmの矩形領域当たり)の範囲にて変化させたサンプルを形成した。
[実施例1]
図4に示すように、基板10の一表面上に導電性を有するグラファイトを含む接着剤Xを用いて予めカーボン層12を接着した後、Ru錯体モノマーとピロール、塩化鉄からなるRu錯体ポリマーのアセトニトリル溶液をカーボン層12に塗布後、溶媒を除去することにより錯体触媒層14を担持させる処理を施した。これによって、カーボン層12には、基板10と反対側の表面のみに錯体触媒層14が担持された層が形成されていると推察される。
実施例1では、接着剤Xの塗布量を0.006g~0.03g(15mm×20mmの矩形領域当たり)の範囲にて変化させたサンプルを形成した。
(接着剤重量と接着剤厚さの関係)
比較例1及び実施例1における還元反応用電極のサンプルについて接着剤重量と接着剤厚さの関係を調べた。サンプルは、接着剤によってスライドガラスに貼り付けた後、ダイヤモンドカッターで切り欠きを入れたうえで手で破断してその断面を電子顕微鏡にて観察した。
図5は、比較例1及び実施例1における接着剤Xの塗布重量と厚みとの関係を示す。図5において、四角印が比較例1の結果を示し、菱形印が実施例1の結果を示す。実施例1の還元反応用電極では、比較例1の還元反応用電極と比較して、接着層のカーボン層12に浸透していない部分の厚さが10μm~15μm程度ほど小さい値を示した。具体的には、標準的な接着剤重量領域(0.015g/15×20mm)において、比較例1では45μmの接着剤厚さがあり、実施例1では30μmの接着剤厚さになっていた。
図6(a)及び図6(b)は、それぞれ同程度の接着剤Xを用いた場合における比較例1及び実施例1のサンプルの断面を光学顕微鏡にて観察した写真を示す。サンプルは、減圧下においてエポキシ樹脂に癌浸包埋させたうえで、機械研磨法にて断面を作製した。光学顕微鏡では、明視野像の観察条件にて撮像した。図6(a)及び図6(b)において、白色で観察されているのはカーボン(炭素)繊維である。比較例1のサンプルでは、接着剤Xが白色で観察されているカーボン繊維より概ね界面側にあり、界面における接着剤Xの染み込み領域が薄いことがわかった。比較例1では、接着層のカーボン層12に浸透した部分を含めた接着剤Xの厚さは45μm程度であった。これに対して、実施例1のサンプルでは、接着剤Xが白色で観察されているカーボン繊維より界面側から深い位置まで接着剤Xが染み込んでおり、界面における接着剤Xの染み込み領域が比較例1に比べて厚いことがわかった。実施例1では、接着層のカーボン層12に浸透した部分を含めた接着剤Xの厚さは60μm程度であった。なお、電極内部のグラファイト接着剤の染み込みは、カーボンペーパー(CP)/マルチウォール・カーボンナノチューブ(MWCNTs)の空間を網の目状のミクロ領域に亘って染み込むため100~150μm程度に染み込みが確認できるものもある。
このような比較例1と実施例1との差が生じる理由として、実施例1では、錯体触媒層14を担持(塗布)するまえに基板10とカーボン層12とを接着剤Xにて接着しており、錯体触媒層14やそのバインダである樹脂が基板10とカーボン層12との界面に存在しておらず、比較例1に比べて接着剤Xがカーボン層12の表面層により深く浸透したものと推察される。これに対して、比較例1では、錯体触媒層14を担持(塗布)した後に基板10とカーボン層12とを接着剤Xにて接着しており、錯体触媒層14やそのバインダである樹脂が基板10とカーボン層12との界面に存在し、接着剤Xがカーボン層12の表面層に浸透し難かったものと推察される。
(カーボン層の構造観察)
図7は、実施例1のサンプルを厚さ方向に斜めに切断したときの断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を示す。図7において、カーボン層12の内部中間の領域では、グラファイト、カーボンペーパー及びカーボンナノチューブの3種類のカーボンの形態が複雑に入り組み合って緻密な構造が形成されていた。すなわち、カーボンペーパーのカーボン繊維の表面に複数のカーボンナノチューブが存在し、その上にグラファイトが被覆された構造が観察された。このとき、カーボン層12の構造体を構成する要素として、鱗片状の1次粒子のサイズは数μm程度であり、それらが繋がり合って形成された2次粒子のサイズは数10μm程度であった。
実施例1において3種類のカーボンが複雑に入り組み合った構造が形成された理由は、基板10とカーボン層12との界面に錯体触媒層14が担持されておらず、当該界面近傍のカーボン層12にグラファイトを含む接着剤Xが浸透して3種類のカーボンの緻密な構造を形成したものと推察される。このような界面付近における緻密な構造によって、後述するように実施例1の還元反応用電極において作動電圧を低下させ、大電流及び大面積に適した還元反応用電極を提供することが可能になったと考えられる。
(X線CT評価)
比較例1及び実施例1のサンプルに対してX線CTによる非破壊観察を行った。X線CTの観察条件は、50kV及び65μAとした。X線を基準面(電極表面)から3μm刻みで深さ方向に移動させながら透過し、サンプルを回転させながらデータを集積して画像処理にて観察画像を得た。
図8及び図9は、それぞれ比較例1及び実施例1の観察結果を示す。図8及び図9における各像は、それぞれ縦60μm×横180μmの観察領域を示し、30μmの深さ毎に代表的な画像を7つ示している。すなわち、錯体触媒層14及びカーボン層12の表面を基準面として、基準面から基板10側に向かって30μm毎にX線CT観察を行った結果を示している。
原子番号が比較的大きくX線の吸収率が高い金属的な部位である塩化鉄やRu錯体ポリマーの濃度が高い部分及び透明導電層は白く観察された。比較例1では、深さ30μm及び120μmの領域において他の深さの領域に比べて観察結果が白味(薄い灰色)を帯びた像となった。すなわち、比較例1では、カーボン層12の表面上に錯体触媒層14のRu錯体ポリマーが存在するだけでなく、カーボン層12と基板10との界面付近の領域にも錯体触媒層14のRu錯体ポリマーが存在していることを示している。これに対して、実施例1では、深さ30μmの領域では他の深さの領域に比べて観察結果が白味(薄い灰色)を帯びた像となったが、深さ120μmの領域では他の深さの領域と同様の像となった。すなわち、実施例1では、カーボン層12の表面上のみに錯体触媒層14のRu錯体ポリマーが存在し、カーボン層12と基板10との界面領域には錯体触媒層14のRu錯体ポリマーは存在していないことを示している。
X線CTによる評価においても、比較例1の還元反応用電極では基板10とカーボン層12との界面近傍に錯体触媒層14が担持されており、当該界面において接着剤Xが浸透し難くなっていることを示している。一方、実施例1の還元反応用電極では基板10とカーボン層12との界面近傍に錯体触媒層14が担持されておらず、当該界面において接着剤Xが浸透し易くなっていることを示している。
(電気化学特性評価)
比較例1及び実施例1の還元反応用電極を用いて3極式セルを構成して電気化学特性の評価を行った。還元反応用電極は1cm角とし、酸化反応用電極にはPtワイヤ、参照電極としてはカロメル電極(HgSO)を適用した。電解液として0.1MのKHPO+KHPOを用いて、二酸化炭素ガス(CO)をバブリングにより溶解させた。
測定は、-0.4Vから-2Vまで5mV/sにて電圧走査するリニアスイープボルタンメトリー(LSV)を電流-時間測定(i-t測定)の前後において行って電気化学反応について評価した。電流-時間測定(i-t測定)は、-2mA/cmの定電流密度で6時間行った。
電流-時間測定(i-t測定)では、比較例1のサンプル(四角印)に比べて実施例1のサンプル(菱形印)における作動電圧が低下した。例えば、-2mA/cm2の定電流状態における電流-時間測定(i-t測定)では、比較例1の還元反応用電極では作動電圧が-1.35V程度であったのに対して、実施例1の還元反応用電極では作動電圧は-1.23V程度まで低下した。すなわち、実施例1の還元反応用電極は、比較例1の還元反応用電極に比べて低電圧かつ大電流で使用することができることが分かった。
図10は、比較例1及び実施例1において接着剤重量を変化させたときの電流-時間測定(i-t測定)における電位を示す。図10において、菱形印が実施例1の結果を示し、四角印が比較例1の結果を示す。標準的な接着剤重量の使用範囲(約0.015g/300mm)において、比較例1と実施例1との電位が大きく異なった。このとき、実施例1における還元反応用電極では、比較例1における還元反応用電極の電位よりも0.16V程度ほど低電圧で使用することができた。また、接着剤重量が0.0125g/300mm以上の領域において実施例1の還元反応用電極は比較例1の還元反応用電極よりも低電位で作動させることができた。
また、実施例1において錯体触媒層14であるRu錯体ポリマーの担持量を変化させたときの電流-時間測定(i-t測定)における作動電位を測定した。Ru錯体ポリマーの担持量を標準量の1/4まで低減した場合でも標準量のときと同様の低電位にて作動させることができた。すなわち、実施例1における還元反応用電極では、錯体触媒層14の担持量を低減させたときの作動電位に対する影響を小さくすることができた。
また、電流-時間測定(i-t測定)において、実施例1における還元反応用電極では比較例1の還元反応用電極に比べて高い電流が流れた。例えば、-1.4Vの電圧を印加した際の実施例1における還元反応用電極を流れる電流は2.8mAであったが、比較例1の還元反応用電極を流れる電流は2.25mAであった。さらに、電気化学インピーダンスを測定したところ、実施例1における還元反応用電極は、低周波側において比較例1の還元反応用電極に比べてインピーダンスが小さく、インピーダンス測定時の電流が数倍大きくなった。
また、電流-時間測定(i-t測定)におけるギ酸生成のファラデー効率は、比較例1が63%~78%であり、実施例1が58%~77%であった。すなわち、ギ酸生成のファラデー効率は、実施例1と比較例1とでほぼ同じ程度であった。
このように、実施例1の還元反応用電極は比較例1の還元反応用電極に比べて電気化学特性が向上した。その理由として、少なくとも基板10とカーボン層12との界面近傍において3種類のカーボンが複雑に入り組み合った構造が形成されており、当該構造によって基板10とカーボン層12との界面の電気抵抗(接触抵抗)が低下できたことによるものと推察される。すなわち、実施例1の還元反応用電極では、基板10とカーボン層12との界面において錯体触媒層14が担持されておらず、当該界面近傍のカーボン層12にグラファイトを含む接着剤Xが浸透して3種類のカーボンの緻密な構造が形成されており、このような界面における緻密な構造によって、界面の電気抵抗(インピーダンス)が下がり、作動電圧を低下させることができたものと考えられる。これに伴って、少ない錯体触媒層14の担持量でも従来と同様の特性を有する還元反応用電極を構成することができたものと考えられる。したがって、大電流及び大面積に適した還元反応用電極を提供することが可能になった。
10 基板、12 カーボン層、14 錯体触媒層、100 還元反応用電極、102 酸化反応用電極、104 電解液、106 太陽電池セル、108 窓材、110 枠材。

Claims (5)

  1. 基板と、
    接着層を介して前記基板上に設けられたカーボン層と、
    前記カーボン層の前記基板との反対側の面に担持された錯体触媒層と、
    を備え、
    前記カーボン層は、1次粒子が1μm以上のサイズのカーボン素材と直径が100nm以下のサイズのカーボンナノチューブとが混在し、グラファイトを含む接着剤が浸透した複合層であり、
    前記基板と前記カーボン層との界面に前記錯体触媒層に含まれる触媒体が存在しないことを特徴とする還元反応用電極。
  2. 請求項1に記載の還元反応用電極であって、
    前記カーボン層に含まれる前記カーボン素材は、鱗片状であることを特徴とする還元反応用電極。
  3. 請求項1又は2に記載の還元反応用電極であって、
    前記接着層は、前記カーボン層に浸透した部分を含めた厚さが60μm以上であることを特徴とする還元反応用電極。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の還元反応用電極であって、
    前記接着層は、カーボン素材とポリマーを含むことを特徴とする還元反応用電極。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の還元反応用電極と、
    酸化反応用電極と、を組み合わせて構成される反応デバイス。
JP2018150719A 2018-08-09 2018-08-09 還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス Active JP7077858B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018150719A JP7077858B2 (ja) 2018-08-09 2018-08-09 還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018150719A JP7077858B2 (ja) 2018-08-09 2018-08-09 還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020026542A JP2020026542A (ja) 2020-02-20
JP7077858B2 true JP7077858B2 (ja) 2022-05-31

Family

ID=69619644

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018150719A Active JP7077858B2 (ja) 2018-08-09 2018-08-09 還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7077858B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7283455B2 (ja) * 2020-08-26 2023-05-30 株式会社豊田中央研究所 還元反応電極

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014531710A (ja) 2011-09-21 2014-11-27 エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピアSGL Carbon SE 改善された導電率およびガス透過性を有するガス拡散層
JP2017171963A (ja) 2016-03-22 2017-09-28 株式会社豊田中央研究所 二酸化炭素還元用電極および二酸化炭素還元装置

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1086929A (zh) * 1992-09-04 1994-05-18 单一检索有限公司 挠性塑料电极及其制造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014531710A (ja) 2011-09-21 2014-11-27 エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピアSGL Carbon SE 改善された導電率およびガス透過性を有するガス拡散層
JP2017171963A (ja) 2016-03-22 2017-09-28 株式会社豊田中央研究所 二酸化炭素還元用電極および二酸化炭素還元装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020026542A (ja) 2020-02-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ma et al. Hierarchical Cu2O foam/g-C3N4 photocathode for photoelectrochemical hydrogen production
Poli et al. Graphite-protected CsPbBr3 perovskite photoanodes functionalised with water oxidation catalyst for oxygen evolution in water
KR102014990B1 (ko) 광전극 구조체용 복합 보호층, 이를 포함하는 광전극 구조체 및 이를 포함하는 광전기화학 전지
JP6316436B2 (ja) 水素発生電極、および人工光合成モジュール
CN103204494A (zh) 规模化量产制造石墨烯及石墨烯氧化物的设备及其方法
Chen et al. Self‐Biasing Photoelectrochemical Cell for Spontaneous Overall Water Splitting under Visible‐Light Illumination
Peng et al. Fabrication and electrochemical properties of novel nanoporous platinum network electrodes
JP6372695B2 (ja) 導電性粒子及びそれを適用した担体材料、並びに、燃料電池デバイス及び水電解デバイス
Ongaro et al. Closed bipolar electrochemistry for the low‐potential asymmetrical functionalization of micro‐and nanowires
Navarro-Pardo et al. Nanofiber-supported CuS nanoplatelets as high efficiency counter electrodes for quantum dot-based photoelectrochemical hydrogen production
CN108611651A (zh) Ti3C2量子点及其电化学制备方法
JP7069611B2 (ja) 電気化学セル及び光合成装置
JP7077858B2 (ja) 還元反応用電極及びそれを用いた反応デバイス
Spătaru et al. Electrocatalytic and photocatalytic activity of Pt–TiO2 films on boron-doped diamond substrate
JP6412417B2 (ja) 水素発生電極およびその製造方法
Aldosari et al. Surface modified carbon nanotubes fiber as flexible bifunctional electrocatalyst for overall electrochemical water splitting reactions
JP7104500B2 (ja) 化学反応用電極及びそれを用いた電気化学セル
JP6322558B2 (ja) 水素発生電極の再生方法
Yoon et al. Enhanced electrocatalytic activity of the Au-electrodeposited Pt nanoparticles-coated conducting oxide for the quantum dot-sensitized solar cells
JP6950384B2 (ja) 還元反応用電極
JP2016145408A (ja) 水の分解方法、水分解装置および酸素生成用のアノード電極
KR20160034193A (ko) 공기 전지
JP6922580B2 (ja) 酸化反応用電極及び還元反応用電極並びにそれらを用いた電気化学セル及び人工光合成装置
JP2020196944A (ja) 還元反応用電極、およびそれを用いた反応デバイス
JP2020139201A (ja) 酸化反応用電極及びそれを用いた電気化学反応装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210406

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220121

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220201

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220301

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220419

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220502

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7077858

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150