JP6412417B2 - 水素発生電極およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光により電解水溶液を水素と酸素に分解する人工光合成モジュールに用いられる水素発生電極およびその製造方法に関し、特に、光電着法で助触媒を形成したものと同等以上の光電気化学特性を有する水素発生電極および生産性に優れた水素発生電極の製造方法に関する。
従来、再生可能なエネルギーである太陽光エネルギーを利用する形態の1つとして、太陽電池に使用される光電変換材料を用いて、この光電変換材料で得られる起電力を利用して、電解水溶液を分解して酸素と水素を製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、集電極上に、p型半導体、n型半導体、反応助触媒が、この順で積層された構造の光水分解用電極が記載されている。光水分解用電極を水中に保持し、太陽光等の光を照射することにより、水を分解して水素を製造することができる。特許文献1には、反応助触媒としてPtが好ましいことが記載されており、反応助触媒を積層する方法として、光電析法(光電着法ともいう)が例示されている。
特開2012−46385号公報
特許文献1に記載されているように、反応助触媒の積層に光電析法(光電着法)を用いた場合、その操作だけで3時間以上の時間が必要であり、電極の生産性が悪いという問題点がある。そこで、Ptを真空蒸着法により反応助触媒として担持する方法が考えられる。真空蒸着法では1時間程度で反応助触媒を担持することができ、かつ複数の電極を同時に、処理することができる。このため、電極の生産性を大幅に改善できる。しかしながら、真空蒸着法で反応助触媒を担持した場合、肝心の光電気化学特性は光電析法(光電着法)に比べると約40%低いという問題があった。
本発明の目的は、前述の従来技術に基づく問題点を解消し、光電着法で助触媒を形成したものと同等以上の光電気化学特性を有する水素発生電極および生産性に優れた水素発生電極の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、光により電解水溶液を水素と酸素に分解する人工光合成モジュール用の水素発生電極の製造方法であって、導電層上にpn接合を有する無機半導体層を形成する工程と、無機半導体層の表面に真空蒸着法により助触媒を形成し、積層体を得る工程と、積層体にアルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーを施す工程とを有することを特徴とする水素発生電極の製造方法を提供するものである。
無機半導体層を形成する工程は、導電層上にp型半導体層を形成し、p型半導体層上にn型半導体層を形成する工程を含むことが好ましい。
また、p型半導体層は、CIGS化合物半導体、CZTS化合物半導体、およびCGSe化合物半導体のうち、いずれかを含むことが好ましい。
例えば、助触媒は、Pt、Rh、Pd、Ir、またはRuで構成される。
本発明は、光により電解水溶液を水素と酸素に分解する人工光合成モジュール用の水素発生電極であって、導電層と、導電層上に設けられたpn接合を有する無機半導体層と、無機半導体層の表面に真空蒸着法により担持された助触媒とを有し、アルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーが施されたことを特徴とする水素発生電極を提供するものである。
無機半導体層はCIGS化合物半導体を含むことが好ましい。また、無機半導体層はCZTS化合物半導体を含むことが好ましい。また、無機半導体層はCGSe化合物半導体を含むことが好ましい。例えば、助触媒は、Pt、Rh、Pd、Ir、またはRuで構成される。
本発明によれば、高い生産性で水素発生電極を製造することができる。また、光電着法で助触媒を形成したものと同等以上の光電気化学特性を有する水素発生電極を得ることができる。
本発明の実施形態の水素発生電極の構成を示す模式的断面図である。 (a)〜(e)は本発明の実施形態の水素発生電極の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。 本発明の実施形態の水素発生電極を用いた人工光合成モジュールの構成を示す模式的断面図である。
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の水素発生電極およびその製造方法を詳細に説明する。本発明は、以下に説明する水素発生電極およびその製造方法の実施形態に限定されるものではない。
なお、以下において数値範囲を示す「〜」とは両側に記載された数値を含む。例えば、εが数値α〜数値βとは、εの範囲は数値αと数値βを含む範囲であり、数学記号で示せばα≦ε≦βである。
まず、水素発生電極の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態の水素発生電極の構成を示す模式的断面図である。
水素発生電極10は、絶縁基板12上に形成されるものであり、導電層14と、無機半導体層16とを有する。水素発生電極10を酸素発生電極(図示せず)と一緒に電解水溶液に浸漬して光を照射すると、電解水溶液が水素と酸素に分解されて、水素ガスと酸素ガスが得られる。
絶縁基板12は、水素発生電極10を支持するものであり、電気絶縁性を有するもので構成される。絶縁基板12は、特に限定されるものではないが、例えば、ソーダライムガラス基板(以下、SLG基板という)またはセラミックス基板を用いることができる。また、絶縁基板12には、金属基板上に絶縁層が形成されたものを用いることができる。ここで、金属基板としては、Al基板またはSUS基板等の金属基板、またはAlと、例えば、SUS等の他の金属との複合材料からなる複合Al基板等の複合金属基板が利用可能である。なお、複合金属基板も金属基板の一種であり、金属基板および複合金属基板をまとめて、単に金属基板ともいう。さらには、絶縁基板12としては、Al基板等の表面を陽極酸化して形成された絶縁層を有する絶縁膜付金属基板を用いることもできる。絶縁基板12は、フレキシブルなものであっても、そうでなくてもよい。なお、上述のもの以外に、絶縁基板12として、例えば、高歪点ガラスおよび無アルカリガラス等のガラス板、またはポリイミド材を用いることもできる。
絶縁基板12の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、20〜20000μm程度あればよく、100〜10000μmが好ましく、1000〜5000μmがより好ましい。なお、p型半導体層20に、CIGS化合物半導体を含むものを用いる場合には、絶縁基板12側に、アルカリイオン(例えば、ナトリウム(Na)イオン:Na)を供給するものがあると、光電変換効率が向上するので、絶縁基板12の表面12aにアルカリイオンを供給するアルカリ供給層を設けておくことが好ましい。なお、SLG基板の場合には、アルカリ供給層は不要である。
図1に示す水素発生電極10では、無機半導体層16の表面、すなわち、後述するn型半導体層22の表面22aに助触媒18が形成されている。助触媒18は、例えば、点在するように、島状に形成してもよい。
助触媒18は、例えば、Pt、Pd、Ni、Au、Ag、Ru、Cu、Co、Rh、Ir、Mn等により構成される単体、およびそれらを組み合わせた合金、ならびにその酸化物、例えば、NiOxおよびRuOで形成することができる。また、助触媒18のサイズは、特に限定されるものではなく、0.5nm〜1μmであることが好ましい。助触媒18は、真空蒸着法で形成される。
導電層14は、絶縁基板12の表面12aに形成され、無機半導体層16に電圧を印加するものである。導電層14は、導電を有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、Mo、CrおよびW等の金属、またはこれらを組み合わせたものにより構成される。この導電層14は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。この中で、導電層14は、Moで構成することが好ましい。導電層14の膜厚は、一般的に、その厚みが800nm程度であるが、導電層14は厚みが400nm〜1μmであることが好ましい。
無機半導体層16は、起電力を発生するものである。無機半導体層16は、p型半導体層20とn型半導体層22とを有し、p型半導体層20は、n型半導体層22との界面でpn接合を形成する。p型半導体層20が導電層14上に形成されている。
無機半導体層16では、n型半導体層22を透過して到達した光を吸収して、p側に正孔を、n側に電子を生じさせる層である。p型半導体層20は、光電変換機能を有する。p型半導体層20では、pn接合で生じた正孔をp型半導体層20から導電層14側に移動させ、pn接合で生じた電子をn型半導体層22から透明電極層50側に移動させる。p型半導体層20の膜厚は、好ましくは0.5〜3.0μmであり、1.0〜2.0μmが特に好ましい。
p型半導体層20は、例えば、カルコパイライト結晶構造を有するCIGS化合物半導体またはCuZnSnS等のCZTS化合物半導体で構成されるのが好ましい。CIGS化合物半導体層は、Cu(In,Ga)Se(CIGS)のみならず、CuInSe(CIS)、CuGaSe(CGS)等で構成してもよい。
なお、CIGS層の形成方法としては、1)多源蒸着法、2)セレン化法、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、および5)メカノケミカルプロセス法等が知られている。
その他のCIGS層の形成方法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、およびスプレー法(ウェット成膜法)等が挙げられる。例えば、スクリーン印刷法(ウェット成膜法)またはスプレー法(ウェット成膜法)等で、11族元素、13族元素、および16族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、16族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施する等により、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
n型半導体層22は、上述のようにp型半導体層20との界面でpn接合を形成するものである。また、n型半導体層22は、入射した光をp型半導体層20に到達させるため、光が透過するものである。
n型半導体層22は、例えば、CdS、ZnS,Zn(S,O)、および/またはZn(S,O,OH)、SnS,Sn(S,O)、および/またはSn(S,O,OH)、InS,In(S,O)、および/またはIn(S,O,OH)等の、Cd,Zn,Sn,Inからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属硫化物を含むもので形成される。n型半導体層22の膜厚は、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。n型半導体層22の形成には、例えば、化学浴析出法(以下、CBD法という)により形成される。
なお、n型半導体層22上に、例えば、窓層を設けてもよい。この窓層は、例えば、厚み10nm程度のZnO層で構成される。また、水素発生電極10は、後述する機能層19(図3参照)をn型半導体層22上に設け、この機能層19上に助触媒を設ける構成でもよい。
次に、水素発生電極10の製造方法について説明する。
図2(a)〜(e)は本発明の実施形態の水素発生電極の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。
まず、例えば、絶縁基板12となるソーダライムガラス基板を用意する。
次に、図2(a)に示すように、絶縁基板12の表面12aに導電層14となる、例えば、Mo膜等をスパッタ法により形成する。
次に、図2(b)に示すように、導電層14上に、p型半導体層20として、例えば、CIGS膜を形成する。このCIGS膜は、前述のいずれか成膜方法により形成される。
次に、図2(c)に示すように、p型半導体層20の表面20aにn型半導体層22となる、例えば、CdS層をCBD法により形成する。これにより、無機半導体層16が形成される。
次に、図2(d)に示すように、n型半導体層22の表面22aに、水素生成用の助触媒18として、例えば、真空蒸着法を用いてPt助触媒を担持させる。これにより、積層体24が形成される。
次に、積層体24に、アルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーを施す。具体的には、図2(e)に示すように、容器25内にアルカリ性の電解液26を満たし、この状態で容器25内に積層体24、参照電極27および対極28を配置する。そして、積層体24、参照電極27および対極28をポテンションスタット29に接続する。この状態で、予め設定した電位、掃引速度、掃引回数の条件にて、積層体24にアルカリ性の電解液26中でサイクリックボルタンメトリーを施す。これにより、図1に示す水素発生電極10を得ることができる。水素発生電極10は、アルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーが施されて活性化されたものである。なお、サイクリックボルタンメトリーに要する時間は数分程度である。
参照電極27には、例えば、Ag/AgCl電極を用い、対極28には、例えば、Ptワイヤーを用いる。積層体24が作用極に相当する。
アルカリ性の電解液26には、例えば、pH11.5に調整した、0.1M NaSOの電解質と純水からなる電解液を用いることができる。アルカリ性の電解液は、pHが7を超え14以下であれば、電解質、溶媒等は特に限定されるものではない。
水素発生電極10を、アルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーを施したものとすることにより、助触媒18を真空蒸着法で形成した場合でも、光電着法で形成したものと同程度の光電気化学特性を得ることができる。
上述のように、光電着法でPt助触媒を担持する場合、3時間以上の時間が必要であり、電極の生産性が悪い。一方、真空蒸着法でPt助触媒を担持する場合、1時間程度と1/3程度の時間で済む。しかも、複数同時に、例えば、10枚同時にPt助触媒を担持することができる。このように、真空蒸着法を用いて助触媒を担持すれば、助触媒を担持する工程の生産性を、光電着法に比して約30倍程度と、大幅に向上させることができる。さらにはサイクリックボルタンメトリーを数分程度施すことにより、光電気化学特性を光電着法と同程度にすることができる。このようなことから、光電着法と同程度の光電気化学特性を有する水素発生電極10を高い生産性で得ることができる。
上述の水素発生電極10は、光により電解水溶液を水素と酸素に分解する人工光合成モジュールに用いることができる。
以下、図1に示す水素発生電極10を用いた人工光合成モジュールについて説明する。
図3は、本発明の実施形態の水素発生電極を用いた人工光合成モジュールの構成を示す模式的断面図である。
なお、図3に示す人工光合成モジュール30において、図1に示す水素発生電極10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
人工光合成モジュール30は、容器32内に隔壁34により水素用電解室36と酸素用電解室38とが並んで配置されている。容器32内に電解水溶液AQ供給される。電解水溶液AQを容器32内に供給するために配管、ポンプ等が必要であるが、これらの図示は省略している。
容器32は、人工光合成モジュール30の外殻を構成するものであり、電解水溶液AQが漏れることなく内部に保持することができ、かつ外部からの光Lを内部に透過させることができれば、その構成は特に限定されるものではない。
ここで、電解水溶液AQとは、例えば、HOを主成分とする液体であり、蒸留水であってもよく、水を溶媒とし溶質を含む水溶液であってもよい。水の場合、例えば、電解質を含む水溶液である電解液であってもよく、冷却塔等で用いられる冷却水であってもよい。電解液の場合、例えば、電解質を含む水溶液であり、例えば、強アルカリ(KOH)、ポリマー電解質(ナフィオン(登録商標))、0.1MのHSOを含む電解液、0.1M硫酸ナトリウム電解液、0.1Mリン酸カリウム緩衝液等である。
隔壁34は、水素用電解室36で生成された水素ガスと、酸素用電解室38で生成された酸素ガスとが混合されないように隔離するためのものである。このため、隔壁34は、上述の隔離機能を有するものであれば、その構成は、特に限定されるものではない。
なお、隔壁34は、水素用電解室36内での水素の生成によって増加した水酸イオン(pHも増加)と酸素用電解室38内での酸素の生成によって増加した水素イオン(pHは減少)とが中和するように、水酸イオンおよび水素イオンを通過させるために、容器32内を、水素用電解室36と酸素用電解室38と分離するためのものであってもよい。この場合、隔壁34は、例えば、イオン透過性、かつガス非透過性を有するもので構成される。具体的には、例えば、イオン交換膜、セラミックフィルタ、多孔質ガラス等により構成される。隔壁34の厚みは、特に限定されるものではなく、10〜1000μmであることが好ましい。
人工光合成モジュール30では、平面状の絶縁基板12上に、例えば、2つの光電変換ユニット40と水素ガス生成部42と酸素ガス生成部44とが形成されており、これらは方向Mに電気的に直列に接続されている。
水素用電解室36に光電変換ユニット40と水素ガス生成部42が配置され、酸素用電解室38に光電変換ユニット40と酸素ガス生成部44が配置されている。
光電変換ユニット40は、光を受光して電力を発生させ水素ガス生成部42で水素ガスを発生させるための電力および酸素ガス生成部44で酸素ガスを発生させるための電力を供給するためのものである。
光電変換ユニット40は、絶縁基板12側から順に、導電層14、p型半導体層20、n型半導体層22、透明電極層50および保護膜52が積層されて構成されており、太陽電池に用いられる光電変換素子と同様の構成を有する。
光電変換ユニット40では、上述のようにp型半導体層20とn型半導体層22で無機半導体層16が構成され、p型半導体層20とn型半導体層22の界面においてpn接合が形成されている。
無機半導体層16は、入射された光Lを吸収して、p側に正孔を、n側に電子を生じさせる層である。p型半導体層20は、光電変換機能を有する。p型半導体層20では、pn接合で生じた正孔をp型半導体層20から導電層14側に移動させ、pn接合で生じた電子をn型半導体層22から透明電極層50側に移動させる。p型半導体層20の膜厚は、好ましくは0.5〜3.0μmであり、1.0〜2.0μmが特に好ましい。
2つの光電変換ユニット40が方向Mに直列に接続されているが、水素ガスおよび酸素ガスを発生させることができる起電力を得ることができれば、その数は限定されるものではなく、1つでも、2つ以上であってもよい。複数の光電変換ユニットを直列に接続する方が高い電圧を得ることができるため、複数の光電変換ユニットを直列接続することが好ましい。
光電変換ユニット40間に、n型半導体層22およびp型半導体層20を貫き導電層14の表面に達する開口溝P2が方向Mにおいて分離溝P1の形成位置とは異なる位置に形成されている。開口溝P2に隔壁34が設けられている。
人工光合成モジュール30では、光電変換ユニット40に、保護膜52側から光Lが入射されると、この光Lが、保護膜52、各透明電極層50および各n型半導体層22を通過し、各p型半導体層20で起電力が発生し、例えば、透明電極層50から導電層14に向かう電流(正孔の移動)が発生する。このため、人工光合成モジュール30では、水素ガス生成部42が負極(電気分解のカソード)となり、酸素ガス生成部44が正極(電気分解のアノード)になる。
なお、人工光合成モジュール30における生成ガスの種類(極性)は、光電変換ユニットの構成および人工光合成モジュール30構成等に応じて適宜変わるものである。
保護膜52は、弱酸性溶液および弱アルカリ性溶液に不溶であり、かつ光透過性、遮水性および絶縁性を兼ね備えるものである。
保護膜52は、透光性を有し、光電変換ユニット40を保護するため、具体的には、水素用電解室36内の水素ガス生成領域以外の部分、酸素用電解室38内の酸素ガス発生領域以外の部分を覆うように設けられるものである。具体的には、保護膜52は、透明電極層50の全面および水素発生電極10の側面を覆うものである。
保護膜52は、例えば、SiO、SnO、Nb、Ta、AlおよびGa等により構成される。また、保護膜52の厚みは、特に限定されるものではなく、100〜1000nmであることが好ましい。
なお、保護膜52の形成方法は、特に限定されるものではなく、RFスパッタ法、DCリアクティブスパッタ法およびMOCVD法等により形成することができる。
また、保護膜52は、例えば、絶縁性エポキシ樹脂、絶縁性シリコーン樹脂、絶縁性フッ素樹脂等により構成できる。この場合、保護膜52の厚みは、特に限定されるものではなく、2〜1000μmが好ましい。
水素ガス生成部42は、基本的に上述の水素発生電極10で構成されており、側面が保護膜52で覆われている。水素ガス生成部42では、n型半導体層22の表面22aに機能層19が形成されており、この機能層19の表面19aに助触媒18が形成されている。このようなことから、水素ガス生成部42においては、水素発生電極10の構成について、その詳細な説明は省略する。水素発生電極10は、電解水溶液AQ中に浸漬され、電解水溶液AQと接する。なお、水素発生電極10の側面の保護膜52により、電解水溶液AQとの接触による短絡が防止される。
機能層19は、無機半導体層16内部への水分侵入を防ぎ、無機半導体層16内部での気泡形成を抑制するものである。機能層19には、透明性、耐水性、遮水性および導電性が要求される。機能層19により、水素発生電極10の耐久性が向上する。
機能層19は、水分子からイオン化した水素イオン(プロトン)Hに電子を供給して水素分子、すなわち、水素ガスを発生させる(2H+2e ―>H)ものである。水素ガス生成部42では、機能層19の表面19aが水素ガス生成面として機能する。したがって、機能層19は、水素ガスの発生領域を構成する。
機能層19は、例えば、金属または導電性酸化物(過電圧が0.5V以下)もしくはその複合物であることが好ましい。より具体的には、機能層19は、ITO、Al、B、Ga、およびIn等がドープされたZnO、またはIMO(Moが添加されたIn)等の透明導電膜を用いることができる。機能層19は単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、機能層19の厚さは、特に限定されるものではなく、好ましくは、10〜1000nmであり、50〜500nmがより好ましい。
なお、機能層19の形成方法は、特に限定されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタ法およびCVD法等の気相成膜法または塗布法により形成することができる。水素ガス生成部42においても機能層19は必ずしも設ける必要はない。
酸素ガス生成部44は、右側の光電変換ユニット40の導電層14の延長部分の領域60で構成され、この領域60が酸素ガスの発生領域となる。
具体的には、光電変換ユニット40の導電層14の延長部分の領域60は、水分子からイオン化した水酸イオンOHから電子を取り出して酸素分子、すなわち、酸素ガスを発生させる(2OH ―>HO+O/2+2e)酸素ガス生成部44であり、表面60aがガス生成領域として機能する。
導電層14の領域60の表面60aには、酸素生成用の助触媒(図示せず)を形成してもよく、この場合、助触媒は、例えば、点在するように島状に形成してもよい。
酸素生成用の助触媒は、例えば、IrO、CoO等により構成される。また、酸素生成用の助触媒のサイズは、特に限定されるものではなく、0.5nm〜1μmであることが好ましい。なお、酸素生成用の助触媒の形成方法は、特に限定されるものではなく、塗布焼成法、浸漬法、含浸法、スパッタ法および蒸着法等により形成することができる。
上述のように、光電変換ユニット40は光電変換素子として機能するものであり、p型半導体層20とn型半導体層22を有する。p型半導体層20およびn型半導体層22は、上述の通りであるため、その詳細な説明は省略する。
なお、p型半導体層20を形成する無機半導体の吸収波長は、光電変換可能な波長域であれば、特に限定されるものではない。吸収波長としては、太陽光等の波長域、特に、可視波長域から赤外波長域を含んでいればよいが、その吸収波長端は800nm以上、すなわち、赤外波長域までを含んでいることが好ましい。その理由は、できるだけ多くの太陽光エネルギーを利用できるからである。一方、吸収波長端が長波長化することは、すなわち、バンドギャップが小さくなることに相当し、これは水分解をアシストするための起電力が低下することが予想でき、その結果、水分解のために、光電変換ユニット40を直列接続する接続数を増すことが予想できるので、吸収端が長ければ長い方がよいというわけでもない。
透明電極層50は、透光性を有し、光をp型半導体層20に取り込み、かつ導電層14と対になって、p型半導体層20で生成された正孔および電子を移動させる(電流が流れる)電極として機能すると共に、2つの光電変換ユニット40を直列接続するための透明導電膜として機能するものである。
透明電極層50は、例えばAl、B、Ga、In等がドープされたZnO、またはITOにより構成される。透明電極層50は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、透明電極の厚みは、特に限定されるものではなく、0.3〜1μmが好ましい。
なお、透明電極の形成方法は、特に限定されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタ法およびCVD法等の気相成膜法または塗布法により形成することができる。
次に、人工光合成モジュール30の製造方法について説明する。
なお、人工光合成モジュール30の製造方法は、以下に示す製造方法に限定されるものではない。
まず、例えば、絶縁基板12となるソーダライムガラス基板を用意する。
次に、絶縁基板12の表面に導電層14となる、例えば、Mo膜等をスパッタ法により形成する。
次に、例えば、レーザースクライブ法を用いて、Mo膜の所定位置をスクライブして、絶縁基板12の幅方向に伸びた分離溝P1を形成する。これにより、分離溝P1により互いに分離された導電層14が形成される。
次に、導電層14を覆い、かつ分離溝P1を埋めるように、p型半導体層20として、例えば、CIGS膜を形成する。このCIGS膜は、前述のいずれか成膜方法により、形成される。
次に、p型半導体層20上にn型半導体層22となる、例えば、CdS層をCBD法により形成する。
次に、方向Mにおいて、分離溝P1の形成位置とは異なる位置に、絶縁基板12の幅方向に伸び、かつn型半導体層22からp型半導体層20を経て導電層14の表面14aに達する2つの開口溝P2を形成する。この場合、スクライブ方法としては、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いることができる。
次に、絶縁基板12の幅方向に伸び、かつn型半導体層22上に、開口溝P2を埋めるように、透明電極層50となる、例えば、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO:Al層を、スパッタ法または塗布法により形成する。
次に、開口溝P2内のZnO:Al層の一部を残すようにして除去し、導電層14の表面に達する2つの少し幅の狭い開口溝P2を再び形成する。これにより、3つの積層体(図示せず)が形成される。1つは水素発生電極10になり、残りの2つは光電変換ユニット40になる。スクライブ方法としては、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いることができる。
次に、積層体の外面および側面と、2つの開口溝P2の底面の導電層14の表面に保護膜52となる、例えば、SiO膜をRFスパッタ法で形成する。
次に、2つの積層体の間で、開口溝P2に相当する位置に再度、溝を形成し、この溝に隔壁34を設ける。
次に、光電変換ユニット40のZnO:Al層を、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いて剥離し、露出したn型半導体層22の表面22aに機能層19として、例えば、アモルファスITO層を、パターニングマスクを用いたスパッタ法により形成する。
次に、n型半導体層22の表面22aに、例えば、真空蒸着法にて水素生成用の助触媒18となる、例えば、Pt助触媒を担持させる。これにより、積層体24(図2(d)参照)を得る。その後、上述のように積層体24(図2(d)参照)に、アルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーを施す。これにより、水素発生電極10が形成されて、水素ガス生成部42が形成される。
次に、光電変換ユニット40の導電層14の延長部分の領域60上の堆積物を、レーザースクライブ法またはメカスクライブ法を用いて取り除き、領域60を露出させる。これにより、酸素ガス生成部44が形成される。
絶縁基板12と略同じ大きさの容器32を用意し、この容器32内に、光電変換ユニット40、水素ガス生成部42および酸素ガス生成部44が形成された絶縁基板12を収納する。これにより、隔壁34で水素用電解室36および酸素用電解室38が形成される。このようにして、人工光合成モジュール30を製造することができる。
人工光合成モジュール30においても、上述の水素発生電極10と同じく、水素ガス生成部42について光電着法で形成したものと同程度の光電気化学特性を得ることができる。また、人工光合成モジュール30の生産性についても、上述の水素発生電極10と同じく、水素ガス生成部42の生産性も高い。このため、人工光合成モジュール30の生産性も高くすることができる。
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の水素発生電極およびその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
以下、本発明の水素発生電極の効果について詳細に説明する。
本実施例においては、本発明の効果を確認するために、以下に示す実施例1および比較例1〜3の水素発生電極を作製した。
実施例1、比較例1〜3および参考例の水素発生電極について、ABPE(Applied bias photon-to-current efficiency)(%)を測定し、その最大値を求めた。その結果を下記表1に示す。さらにABPEの最大値(%)を元にした判定結果を下記表1に示す。判定基準は、参考例のABPEの最大値(%)に対し以下のようにして定めた。
判定基準については、(ABPEの測定値の最大値)/(参考例のABPEの最大値)×100(%)=J(%)とするとき、J(%)≧90(%)であれば、参考例と同等以上であるとして「A」とし、J(%)<90(%)であれば、参考例と同等未満であるとして「B」とした。
なお、ABPE(%)は、疑似太陽光を水素発生電極に照射し、ポテンショスタットを用いた3電極系にて測定した。ABPE(%)の測定条件を以下に示す。
光源:ソーラーシミュレーター(AM1.5G) 三永電機製作所製 XES−70S1
電解液:0.5M NaSO+0.25M NaHPO+0.25M NaHPO pH7.0
電気化学測定置:ポテンショスタット 北斗電工製 HZ−5000
参照電極:Ag/AgCl電極
対極:白金ワイヤー
作用極:水素発生電極
以下、実施例1、比較例1〜3および参考例について説明する。
(実施例1)
実施例1の水素発生電極は、図1に示す水素発生電極10と同じ構成である。各部の構成は以下の通りである。実施例1の水素発生電極は、導電層に導線を接続した後、露出している部分をエポキシ樹脂で覆って絶縁した。実施例1では、アルカリ性の電解液中で、サイクリックボルタンメトリーを0〜0.65VRHE、CV(掃引速度)50mV/秒の条件にて施した。
なお、アルカリ性の電解液には、pH11.5に調整した、0.1M NaSOの電解質と純水からなる電解液を用いた。なお、ABPE(%)の測定は、上述の通りである。
<水素発生電極の構成>
絶縁基板:ソーダライムガラス、1mm厚
導電層:Mo、500nm厚
p型半導体層:CIGS、1500nm厚
n型半導体層:CdS、50nm厚
助触媒:Pt(真空蒸着法)
(比較例1)
比較例1は、実施例1に比して、サイクリックボルタンメトリーを実施していない以外は実施例1と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。比較例1では、サイクリックボルタンメトリーを実施していないので、下記表1の「サイクリックボルタンメトリー実施の電解液」の欄には「−」と記した。
なお、比較例1において、水素発生電極の製造方法およびABPE(%)の測定は、実施例1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
(比較例2)
比較例2は、実施例1に比して、サイクリックボルタンメトリーが中性の電解液で実施されていること以外は実施例1と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。中性の電解液には、pH7に調整した、0.1M NaSOの電解質と純水からなる電解液を用いた。
なお、比較例2において、水素発生電極の製造方法およびABPE(%)の測定は、実施例1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
(比較例3)
比較例3は、実施例1に比して、サイクリックボルタンメトリーが酸性の電解液で実施されていること以外は実施例1と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。酸性の電解液には、pH4.5に調整した、0.1M NaSOの電解質と純水からなる電解液を用いた。
なお、比較例3において、水素発生電極の製造方法およびABPE(%)の測定は、実施例1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
(参考例)
参考例は、実施例1に比して、Pt助触媒を光電着法で担持させたこと以外は実施例1と同じ構成であるため、その詳細な説明は省略する。
なお、参考例において、水素発生電極の製造方法およびABPE(%)の測定は、実施例1と同じであるため、その詳細な説明は省略する。参考例は、判定の基準になるものであるため、下記表1の「判定」の欄には「−」と記した。
なお、参考例では、サイクリックボルタンメトリーを実施しなくともABPEの最大値(%)が変わらないことを確認している。
実施例1は、ABPEの最大値(%)が参考例(ABPEの最大値7.1%)に比して同等以上であった。
一方、比較例1は、サイクリックボルタンメトリーが施されておらず、ABPEの最大値(%)が参考例に比して小さい。比較例2は、サイクリックボルタンメトリーが施されているが、電解液が中性(pH7)であるため、ABPEの最大値(%)が参考例に比して小さい。比較例3は、サイクリックボルタンメトリーが施されているが、電解液が酸性(pH4.5)であるため、ABPEの最大値(%)が参考例に比して小さい。
10 水素発生電極
12 絶縁基板
14 導電層
16 無機半導体層
18 助触媒
19 機能層
20 p型半導体層
22 n型半導体層
30 人工光合成モジュール
32 容器
34 隔壁
36 水素用電解室
38 酸素用電解室
40 光電変換ユニット
42 水素ガス生成部
44 酸素ガス生成部

Claims (7)

  1. 光により電解水溶液を水素と酸素に分解する人工光合成モジュール用の水素発生電極の製造方法であって、
    導電層上にpn接合を有する無機半導体層を形成する工程と、
    前記無機半導体層の表面に真空蒸着法により助触媒を形成し、積層体を得る工程と、
    前記積層体にアルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーを施す工程とを有し、
    前記無機半導体層を形成する工程は、前記導電層上にp型半導体層を形成し、前記p型半導体層上にn型半導体層を形成する工程を含み、
    前記p型半導体層は、CIGS化合物半導体、CZTS化合物半導体、およびCGSe化合物半導体のうち、いずれかを含むことを特徴とする水素発生電極の製造方法。
  2. 前記助触媒は、Pt、Rh、Pd、Ir、またはRuで構成される請求項1に記載の水素発生電極の製造方法。
  3. 光により電解水溶液を水素と酸素に分解する人工光合成モジュール用の水素発生電極であって、
    導電層と、
    前記導電層上に設けられたpn接合を有する無機半導体層と、
    前記無機半導体層の表面に真空蒸着法により担持された助触媒とを有し、
    前記無機半導体層は、前記導電層上に形成されたp型半導体層と、前記p型半導体層上に形成されたn型半導体層を有し、
    前記p型半導体層は、CIGS化合物半導体、CZTS化合物半導体、およびCGSe化合物半導体のうち、いずれかを含み、
    アルカリ性の電解液中でサイクリックボルタンメトリーが施されたことを特徴とする水素発生電極。
  4. 前記p型半導体層はCIGS化合物半導体を含む請求項3に記載の水素発生電極。
  5. 前記p型半導体層はCZTS化合物半導体を含む請求項3に記載の水素発生電極。
  6. 前記p型半導体層はCGSe化合物半導体を含む請求項3に記載の水素発生電極。
  7. 前記助触媒は、Pt、Rh、Pd、Ir、またはRuで構成される請求項3〜6のいずれか1項に記載の水素発生電極。
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