以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
〔内視鏡システム〕
本願の1つの発明(第1の発明)は、撮像装置を含む内視鏡本体を生体の管腔内で操作性よく、かつ管腔の形状を変化させることなく移動させることができ、これにより短時間で内視鏡本体の撮像装置による体内の撮影を行うことを可能とする、内視鏡システムを得ることを課題とし、
管腔内の撮影が可能な内視鏡システムであって、
撮像装置を含む内視鏡本体と、
内視鏡本体に流体を供給する少なくとも1つのチューブと
を備え、
少なくとも1つのチューブは可撓性を有し、
内視鏡本体は、
内視鏡本体に供給された流体を貯留して昇圧する貯留スペースと、貯留スペースで昇圧した流体を排出する1以上の排出口とを有し、1以上の排出口からの流体の排出により推進力を発生するように構成されている、内視鏡システムを提供することにより、上記の課題を解決したものである。
従って、本発明の内視鏡システムは、撮像装置を含む内視鏡本体と、内視鏡本体に流体を供給する少なくとも1つのチューブとを備え、少なくとも1つのチューブは可撓性を有し、内視鏡本体は、供給された流体を貯留して昇圧する貯留スペースを有し、昇圧した流体の排出により推進力を発生可能なものであれば、その他の構成は限定されるものではなく、以下に例示するように、任意であり得る。
(内視鏡本体)
内視鏡本体は、撮像装置と、流体の貯留スペースと、流体の排出口とを有するものであればその他の構成は限定されるものではない。
例えば、内視鏡本体は、本体筐体を有し、本体筐体の内部に流体を溜める貯留スペースが形成され、さらに、本体筐体の内部に撮像装置、照明装置などを収容する光学系収容部が形成されたものでもよい。
ここで、撮像装置などが収容される光学系収容部は、内視鏡本体の前方部に配置され、流体の排出口は内視鏡本体の後方部に配置されていることが好ましい。この場合、流体の排出による推進力は、内視鏡本体を前進させる推進力(つまり、内視鏡本体の後方部から前方部に向く方向の推進力)となり、内視鏡本体の前方部に収容されている撮像装置が前進方向の正面を撮影可能となるからである。なお、光学系収容部には、撮像装置に加えて集光レンズが収容されていてもよいし、撮像装置とは別体の集光レンズは設けられていなくてもよい。
一方、内視鏡本体は、本体筐体の代わりに流体の貯留スペースを形成するタンクを備え、タンクの先端に防水カメラを取り付けたものでもよい。
また、流体の排出口は、貯留スペースに供給されて昇圧された流体の排出により、内視鏡本体を移動させる推進力を発生させるものであればよく、排出口の個数あるいは向きは特に限定されるものではない。
例えば、内視鏡本体は、内視鏡本体を前進させる推進力を発生させる1以上の排出口(例えば、1つの実施形態では、1つまたは4つの主排出口)を有するものでもよいし、内視鏡本体は、1以上の排出口に加えて、内視鏡本体を方向転換させる推進力を発生させる1以上の補助排出口(例えば、1つの実施形態では4つの補助排出口)をさらに有するものでもよい。
具体的には、流体の排出口は、本体筐体の後方部だけでなく、前方部、あるいは側方部(前方部と後方部との間の本体筐体の側面部)に補助排出口として配置されていてもよい。例えば、本体筐体の側方部に排出口を補助排出口として配置した場合、この補助排出口からの流体の排出により内視鏡本体の方向転換を効果的に行うことが可能となる。
この補助排出口の配置は限定されるものではないが、例えば、内視鏡本体の前後方向に沿った軸(中心軸)の周りに等間隔で位置するように、内視鏡本体の外周上の数ヶ所(1つの実施形態では4箇所)に補助排出口を配置すると、内視鏡本体の方向転換を、数ヶ所に設けた補助排出口からの流体の排出を制御することで簡単に行うことが可能となる。
また、貯留スペースは、内視鏡本体に形成された空洞でもよいし、内視鏡本体にタンクを組み込んで形成したものでもよい。貯留スペースを形成するタンク(貯留タンク)は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。
また、貯留スペースは、隔壁により複数の貯留室に仕切られていることが好ましく、この場合、貯留室毎に排出口を設けることで、各排出口から排出される流体による推進力を、チューブにより貯留室に供給する流体の流量(単位時間当たりの供給量)により調節可能となる。また、貯留室毎に排出口とともに補助排出口を設けることで、内視鏡本体の進行方向の方向転換が行いやすくなる。なお、場合によっては、貯留スペースには隔壁がなく、貯留スペースは1つの空間となっていてもよい。
また、内視鏡本体に2つの貯留タンク(第1貯留タンクおよび第2貯留タンク)が組み込まれている場合、内視鏡本体の後方側の第1貯留タンクには隔壁が設けられておらず、内視鏡本体の前方側の第2貯留タンクには複数の貯留室を形成する隔壁が設けられていてもよい。あるいは逆に、内視鏡本体の後方側の第1貯留タンクには複数の貯留室を形成する隔壁が設けられ、内視鏡本体の前方側の第2貯留タンクには隔壁が設けられていなくてもよい。
(チューブ)
内視鏡本体に流体を供給するチューブは可撓性を有するものであればよく、その他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
このチューブは、実質的には、流体を発生する流体発生部と内視鏡本体の貯留スペースとを連結するものであり、柔らかい材料からなる管材である。このように内視鏡本体に流体を供給するチューブを柔らかい材料で構成することで、内視鏡本体が被検者の管腔内を移動するときにチューブが被検者の管腔の形状に沿って曲がることとなり、被検者が感じる痛みを和らげることできる。ここで、チューブの材料としての柔らかい材料はビニール、ナイロンなどの樹脂、あるいはゴムであってもよい。この場合、チューブは、当然のことながら、送り出しおよび巻き取りが可能なものとなっている。
また、チューブの直径などは特に限定されないが、好ましくは約5mm程度の細い直径であり得る。このようなチューブの断面形状は、円形でも楕円形でもよいし、あるいは、三角形、四角形、その他の多角形でもよい。また、複数のチューブが用いられる場合、複数のチューブは1つのチューブ束を形成するように一体化されたものでもよいし、1つ1つ分離されたものでもよい。
また、内視鏡システムで用いられるチューブの数は、流体を供給するタンクの数、タンク内に形成される貯留室の数などに応じて適宜設定される。
例えば、貯留スペースに1つの貯留タンクが組み込まれていて、貯留タンク内が仕切られておらず1つの空間となっている場合は、チューブの数は1つでよい。
また、貯留スペースに1つの貯留タンクが組み込まれていて、貯留タンク内が複数(実施形態では4つ)の貯留室に仕切られている場合は、少なくとも複数の貯留室の各々に少なくとも1つのチューブを設ける必要がある。これは、各貯留室に流体を供給するためである。ただし、1つの貯留室に2以上のチューブで流体を供給するようにしてもよい。
また、貯留スペースに2つ以上の貯留タンクが組み込まれている場合は、各貯留タンク内が複数の貯留室に仕切られているか、あるいは仕切られていないかに応じて、各タンク内に形成されている少なくとも1つの空間には、少なくとも1つのチューブで流体が供給されるようにする必要がある。
また、チューブ内には、内視鏡本体に電源を供給する電源線と、内視鏡本体に搭載されている撮像装置で撮影されたデータを送信する信号線とが設けられていてもよい。ただし、これらの電源線および信号線は、チューブの内部に設けられていてもよいし、あるいはチューブの外面に沿って設けられていてもよい。
また、内視鏡本体に流体を供給するチューブには、チューブと貯留室との接続が外れた場合には、送水チューブからの流体の流出を止める安全装置(例えば、安全弁など)が設けられていることが好ましい。チューブが貯留室から外れた場合に、送水チューブから被検者の管腔内へ流体が突発的に流入するのを即座に阻止することが可能となるからである。
さらに、本発明の内視鏡システムは、チューブとして、内視鏡本体が推進力を発生するように、内視鏡本体の貯留スペースに流体を供給する1以上のチューブに加えて、内視鏡本体の前面に設けられている集光レンズ、あるいはレンズカバーなどを洗浄する流体を供給する洗浄用チューブ、および、人体の管腔内に溜まった流体(例えば、液体)を吸引して人体の外部に排出する吸引用チューブの少なくとも1つを有していてもよい。人体の管腔内に溜まった流体は、主に、水推進力の発生のために人体の管腔内に排出した水である。ここで、吸引用チューブは、管腔内の組織を採取するための鉗子を挿入する鉗子用チューブとして用いてもよい。
(流体)
流体は、気体であってもよいし、液体であってもよい。気体は、人体に悪影響を及ぼさないものであれば任意であり得る。例えば、二酸化炭素、あるいは空気であり得る。二酸化炭素ガスは常温での液化圧力が空気より低いので取り扱いに有利である。好ましくは、流体は、気体に比べて密度の高い液体である。なぜなら、密度の高い流体を排出する場合の方が、密度の低い流体を排出する場合より大きな反動が得られるからである。例えば、内視鏡本体に供給する液体としては生理食塩水あるいは水である。
(管腔)
管腔は、生体(人体)を構成する管腔であれば、特定に限定されるものではないが、例えば、管腔は、大腸であってもよいし、胃であってもよいし、食道であってもよい。
(その他の構成)
また、本発明の内視鏡システムは、流体を発生する流体発生部とともに、流体発生部から1つ以上のチューブに流し込む流体の流量をチューブ毎に調整する制御手段を有することが好ましい。このような制御手段を備えることで、内視鏡本体の進行速度や進行方向を調整することができる。1つの実施形態では、この制御手段は、内視鏡システムに設けられている内視鏡操作装置での操作に基づいて流体の流量の制御を行うように構成される。
また、この制御手段は、内視鏡システムが洗浄用チューブを有する場合は、流体発生部から洗浄用チューブへの流体の供給を制御するものでもよいし、内視鏡システムが吸引用チューブを有する場合は、内視鏡システムは、流体吸引部(例えば、吸引ポンプ)を有し、制御手段は、吸引用チューブに接続された流体吸引部を吸引用チューブによる吸引が行われるように制御するものでもよい。
この内視鏡操作装置は、内視鏡本体の進行方向の調整を制御手段の操作により行うための方向調整パッドと、腸内送気チューブによる腸内への送気を操作する送気スイッチ(送気調整パッド)を有していてもよい。
また、内視鏡システムが洗浄用チューブを有する場合は、内視鏡操作装置は、流体発生部から洗浄用チューブへの流体の供給を制御手段に行わせるスイッチ(レンズ洗浄用スイッチ)を有していてもよいし、内視鏡システムが吸水用チューブを有する場合は、制御手段に、吸引用チューブからの吸引(例えば、吸水)が行われるように流体吸引部の制御を行わせるスイッチ(吸引ボタン)を有していてもよい。さらに、内視鏡操作装置は、内視鏡本体に搭載されている撮像装置(カメラ)のカメラフリーズを解消するリセット動作、あるいはシャッタ動作を制御手段に行わせるスイッチ(カメラスイッチ)を有していてもよい。
さらには、内視鏡操作装置は、1以上のチューブを巻き取る巻取り機、およびこの巻取り機(具体的にはチューブを巻き取るローラ)の駆動スイッチを有していてもよい。あるいは、内視鏡操作装置は、これらのスイッチを有していなくてもよい。例えば、内視鏡操作装置がこれらのスイッチを有しない場合は、これらのスイッチは、内視鏡操作装置とは別に設けられていてもよい。また、チューブの巻き取りを操作者が手作業で行う場合は、巻取り機(巻取りローラ)は不要であり、当然その駆動スイッチも不要である。
また、チューブと流体発生部とはコネクタにより着脱可能に接続されていることが好ましい。具体的には、チューブの一端にはチューブ側コネクタが取り付けられており、流体発生部の流体吐出口には流体発生部側コネクタが取り付けられており、これらの2つのコネクタが取外し可能に結合されている。この場合、チューブを流体発生部から取り外して別途洗浄することが可能である。ただし、内視鏡操作装置の構造の簡略化などのため、チューブと流体発生部とは取外し不能に連結されていてもよい。
また、内視鏡操作装置は、チューブを収納する収納ケースを有していてもよい。この場合、チューブの収納ケースは、内視鏡操作装置の装置筐体に着脱可能に構成されていることが好ましい。なぜなら、チューブを収納ケースに収納した状態で、収納ケースを内視鏡操作装置の装置筐体から取り外して収納ケースごと洗浄することが可能であるからである。ただし、チューブが流体発生部と取り外し不能に連結されている場合は、チューブの収納ケースは内視鏡操作装置の装置筐体に取り外し不能に固定されていてもよい。
内視鏡システムは、操作者が被検者と対面しながら内視鏡操作装置により、人体の管腔内での内視鏡本体の移動を操作するものが一般的である。ただし、内視鏡システムは、操作者が、被検者とは離れた場所で、被検者の管腔内での内視鏡本体の移動を遠隔操作することを可能にしたものでもよい。
例えば、チューブに供給される流体の流量を制御する制御手段が内視鏡操作装置の装置筐体に収容されている場合、この制御手段に1つの通信装置を接続するとともに、内視鏡操作装置の装置筐体に設置されている操作部を内視鏡操作装置の装置筐体から離れた遠隔の場所に設置し、制御手段に接続された通信装置と相互に通信するもう1つの通信装置を操作部に接続し、操作部での操作信号を操作部に接続された通信装置および制御手段に接続された通信装置を介して制御手段に送信するようにしてもよい。
さらに、本発明の内視鏡システムは、肛門に装着するリング状部材と、リング状部材に挿入されたシース部材とを備えた内視鏡補助具を有することが好ましい。ここで、シース部材は、内視鏡本体をガイドする部材であり、その内部を内視鏡本体が通過可能に構成されている。このような内視鏡補助具を有する場合、肛門にリング状部材を装着したときにシース部材が肛門を通過した状態となり、リング部材を肛門の周囲に固定することで、シース部材を肛門に固定できるからである。また、場合によっては、内視鏡補助具は、リング状部材の開口内にシース部材だけでなく、大腸内腔への送気を行う腸内送気チューブも挿入されたものでもよい。この場合、リング部材を肛門の周囲に固定することで、シース部材だけでなく腸内送気チューブも肛門に固定することができる。また、リング状部材は、対向する一対の部品、つまり、肛門外側に配置される外側リング部品と、肛門の内側に配置される内側リング部品とを有することが好ましい。この場合、外側リング部品と内側リング部品とで肛門部分をその外側と内側とから挟み込んで内視鏡補助具をより確実に肛門に固定することが可能である。また、内視鏡補助具は、外側リング部品、内側リング部品、シース部材、および腸内送気チューブを一体化したものであることが好ましい。内視鏡補助具の取り扱いが簡単になるからである。図に示す実施形態において、リング状部材は外側リング部品と内側リング部品の2つの場合を用いているが、リング部品の数は任意であり得る。1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
また、各リング部品を、空気の吹込みおよび吸出しにより膨らんだり萎んだりするバルーン構造とすれば、補助具の肛門への装着がより簡単になる。
このような一体化された構成の内視鏡補助具を用いることで、一対のリング部品を萎めた状態で、一方のリング部材とともにシース部材および腸内送気チューブの先端部が肛門内に挿入されるように内視鏡補助具を肛門内に挿入し、さらに、他方のリング部品が肛門の入り口に接するまで内視鏡補助具を大腸内に挿入する。この状態で、肛門の内外に位置する一対のリング部品を空気の充填により膨らませ、一対のリング部品で肛門を内側と外側の両側から挟み込むようにすることにより、簡単にかつ確実にこの内視鏡補助具を肛門部分に固定することができる。
以上説明したように、本願の1つの発明(第1の発明)に係る内視鏡システムは、撮像装置を含む内視鏡本体と、内視鏡本体に流体を供給する少なくとも1つのチューブとを備え、少なくとも1つのチューブは可撓性を有し、内視鏡本体は、供給された流体を貯留して昇圧する貯留スペースを有し、昇圧した流体の排出により推進力を発生可能なものであれば、その他の構成は限定されるものではないが、以下に説明する本願の1つの発明の実施形態(実施形態1)では、内視鏡システムとして、流体発生部から4つのチューブで内視鏡本体のサージタンクの4つの貯留室に液体(ここでは、水)を送り、4つの貯留室からの液体の排出により内視鏡本体を推進させるものを挙げる。
具体的には、実施形態1では、1つ以上の排出口として、液体の排出により内視鏡本体を前進させる推進力を発生させる排出口(4つの主排出口)のみを有する内視鏡本体を説明する。また、実施形態1の内視鏡本体の変形例1として、液体の排出により内視鏡本体を方向転換させる推進力を発生させる4つの補助排出口を、4つの主排出口に加えて有する内視鏡本体を挙げる。さらに、実施形態1の内視鏡本体の変形例2として、2つの貯留タンク(第1貯留タンクおよび第2貯留タンク)を組み込んだ内視鏡本体を挙げる。
〔もう1つの内視鏡システム〕
本願のもう1つの発明(第2の発明)は、上述した本願の1つの発明(第1の発明)と同様、撮像装置を含む内視鏡本体(例えば、光学系装置)を生体(人体)の管腔内で操作性よく、かつ管腔の形状を変化させることなく移動させることができ、これにより短時間で内視鏡本体の撮像装置による体内の撮影を行うことを可能とする、内視鏡システムを得ることを課題とし、
管腔内の撮影が可能な内視鏡システムであって、
撮像装置を含む光学系装置と、
流体を送る可撓性を有するチューブと
を備え、
チューブは、その先端の開口が塞がれ、かつ、チューブの内部空間にチューブの軸心に沿った複数の流体通路を有する構造であり、
光学系装置は、チューブの先端部に支持されており、
チューブは、複数の流体通路から流体を排出する複数の排出口を有し、排出口からの流体の排出により推進力が発生するように構成されている、内視鏡システムを提供することにより、上記の課題を解決したものである。
この発明の内視鏡システムは、複数の流体通路が形成されたチューブの先端部で光学系装置を支持し、チューブは、複数の流体通路から流体を排出する複数の排出口を有し、排出口からの流体の排出により推進力が発生するものであれば、その他の構成は限定されるものではない。
例えば、チューブは、その内部空間にチューブの軸心に沿った複数の通路が形成されるように内部空間が複数の隔壁で仕切られた構造となっていてもよい。
この場合、チューブの内部に形成される通路の数は限定されるものではないが、1つの実施形態では4つであり、この場合、チューブの先端付近の側壁に形成される排出口も4つとなる。
このように排出口から排出される流体の吐出方向をチューブの軸心に対して平行および垂直以外の適切な角度となる方向とすることで、流体を排出する排出口の選択によりチューブの先端部に軸心に平行な方向および軸心に垂直な方向の推進力を発生させて、光学系装置を前進および後進を行い、さらに、前進および後進の方向を変化させることができる。
チューブの材料としては、本願の第1の発明で説明した内視鏡システムにおけるものを用いることができる。
なお、チューブは、その内部空間にチューブの軸心に沿った複数の流体通路が形成されるように内部空間が複数の隔壁で仕切られた構造に限定されず、チューブはまとめられた複数の個別チューブを含み、複数の個別チューブの各々が流体通路を形成するものでもよい。この場合、個別チューブの数は限定されるものではないが、1つの実施形態では4つである。
また、光学系装置は、撮像装置と照明装置とを有するものであればよく、集光レンズを有することが好ましい。この場合、管腔の内面を拡大した画像を撮影可能となる。
なお、第2の発明の実施形態(実施形態2)としての内視鏡システムは、第1の発明の実施形態1で挙げた図1に示す内視鏡システム1の構成の一部を変更したものであり、両者の重複する部分の構成は同一であり、実施形態2の説明は、実施形態1の内視鏡システム1およびその変形例の説明(図10A)を行った後に、図10Bを用いて、図1に示す内視鏡システム1と異なる部分についてのみ行う。
〔さらなる1つの内視鏡システム〕
本願のさらなる1つの発明(第3の発明)は、上述した本願の1つの発明(第1の発明)と同様、撮像装置を含む内視鏡本体(たとえば、光学系装置)を生体(人体)の管腔内で操作性よく、かつ管腔の形状を変化させることなく移動させることができ、これにより短時間で内視鏡本体の撮像装置による体内の撮影を行うことを可能とする、内視鏡システムを得ることを課題とし、
管腔内の撮影が可能な内視鏡システムであって、
撮像装置を含む光学系装置と、
流体を送る可撓性を有するチューブと
を備え、
チューブは、
本体チューブと、
本体チューブの先端に取り付けられ、本体チューブと光学系装置とを連結する先端チューブとを有し、
本体チューブは、本体チューブの軸心に沿った複数の流体通路を有し、
先端チューブは、本体チューブの複数の流体通路からの流体を貯留する複数の貯留スペースと、貯留スペースに溜まった流体を排出する複数の排出口とを有し、排出口からの流体の排出により推進力が発生するように構成されている、内視鏡システムを提供することにより、上記の課題を解決したものである。
この発明の内視鏡システムは、複数の流体通路を有し、各流体通路で流体を送る本体チューブと、本体チューブと光学系装置とを連結する先端チューブとを有し、先端チューブは、本体チューブの複数の流体通路からの流体を排出する複数の排出口を有し、排出口からの流体の排出により推進力が発生するものであれば、その他の構成は限定されるものではない。
例えば、本体チューブは、その内部空間に本体チューブの軸心に沿った複数の通路が形成されるように内部空間が複数の隔壁で仕切られた構造となっていてもよい。この場合、本体チューブの内部に形成される通路の数は限定されるものではないが、1つの実施形態では4つであり、この場合、本体チューブの先端に取り付けられる先端チューブの排出口も4つとなる。
このように先端チューブに複数の排出口を設けることで、流体を排出する排出口の選択により先端チューブにその軸心に平行な方向およびその軸心に垂直な方向の所要の推進力を発生させて、光学系装置を前進させ、その際、前進の方向を変化させることができる。
なお、本体チューブの材料としては、本願の第1の発明で説明した内視鏡システムにおけるものを用いることができる。また本体チューブの材料は、先端チューブの材料と同じでもよいし異なるもの(例えば、本体チューブとは異なり、硬質の材料で構成されたもの)でもよい。
また、第3の発明の内視鏡システムにおける光学系装置は、生体の管腔内を撮影する点では第2の発明の内視鏡システムにおけるものと同じものであるが、第3の発明の内視鏡システムと第2の発明の内視鏡システムとでは、送気チューブの構造が異なるため、光学系装置の筐体は、それぞれの内視鏡システムで用いられる送気チューブの構造に合わせて送気チューブとの接続が簡単となる構造となっていることが好ましい。
なお、第3の発明の実施形態(実施形態3)としての内視鏡システムは、第2の発明の実施形態(実施形態2)で挙げた図10Bに示す内視鏡システム301の構成の一部を変更したものであり、両者の重複する部分の構成は同一である。従って、実施形態3の説明は、実施形態2の内視鏡システム301の説明(図10B)を行った後に、図10C、図10Dを用いて、図10Bに示す内視鏡システム301と異なる部分についてのみ行う。
〔カプセル内視鏡の操作器具およびカプセル内視鏡システム〕
本願のさらにもう1つの発明(第4の発明)は、生体の内腔内でカプセル内視鏡を操作性良く移動させることができ、これにより短時間でカプセル内視鏡による体内の撮影を行うことを可能とする、カプセル内視鏡の操作器具を得ることを課題とし、
カプセル内視鏡を大腸内で移動可能にするための操作器具であって、
カプセル内視鏡を保持可能な筐体(保持筐体)と、
筐体に接続された複数のチューブ(送気チューブ)と、
複数のチューブの送り出しおよび巻き取りを行うための送出巻取手段(送出巻取器)と、
複数のチューブに流体を供給する供給手段(送気機器)と
を備え、
複数のチューブは、複数のチューブの各々の先端部が流体を筐体から噴射する噴射ノズルとなるように筐体に取り付けられている、操作器具を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
従って、本発明の操作器具は、カプセル内視鏡を保持する筐体に、送り出しおよび巻き取り可能に設けられた複数のチューブを通して流体を供給可能であり、各チューブの先端部が、筐体から流体を噴射する噴射ノズルとなるものであれば、その他の構成が限定されるものではなく、以下に例示するように、任意であり得る。
(筐体)
筐体は、カプセル内視鏡を保持可能なものであれば、形状および素材は限定されるものではなく、カプセル内視鏡を収容する収容スペースを有するものでも、カプセル内視鏡を保持するフレームを有するものでも、磁石、吸盤、接着材などでカプセル内視鏡を筐体に固着するものでもよい。また、筐体の素材は、樹脂材料、金属材料、ゴム、あるいはセラミック材料などでもよい。
(複数のチューブ)
複数のチューブは、それぞれのチューブに供給された流体が、筐体から噴射されるように筐体に取り付けられるものであって、送出および巻取りが可能なものであれば、チューブの本数、形状、材質は限定されるものはなく、任意であり得る。
例えば、複数のチューブの本数は、2本でも3本でも4本でも、あるいはそれ以上でもよい。好ましくは、チューブは、大腸腸管形状を変化させることなく走行に沿って挿入可能な程度に屈曲自在のソフトな素材から構成され得る。また、チューブの直径などは特に限定されないが、好ましくは約5mm程度の細い直径であり得る。
例えば、複数のチューブのうち少なくとも1つは、その先端部が、カプセル内視鏡の後方に突出する前進用噴射ノズルとなるように、筐体に取り付けられていてもよい。
また、複数のチューブのうち少なくとも1つは、その先端部が筐体からカプセル内視鏡の前方に突出する後進用噴射ノズルとなるように筐体に取り付けられていてもよい。
ここで、複数のチューブは、チューブの先端から流体が噴射される反動で筐体を移動させるものであることから、カプセル内視鏡の前後左右、斜め前および斜め後ろなどの方向に推力が発生できるように4本以上あることが望ましい。
4本のチューブが接続されている筐体では、4本のチューブのうちの2本のチューブの先端部をカプセル内視鏡の後方側に向けた噴射ノズルとし、さらに、2本のチューブの先端部である噴射ノズルを、カプセル内視鏡の中心軸に対して所定の角度をなし、かつ中心軸に対して互いに対称な傾斜姿勢をなすように傾ける。この場合、2本のチューブの先端部(噴射ノズル)から噴射させる流体の勢い(単位時間当たりの噴射量)を調整することで、真っすぐ進めるだけでなく斜め方向にも進めることができる。
同様に、4本のチューブのうちの残りの2本のチューブの先端部をカプセル内視鏡の前方側に向けた噴射ノズルとし、さらに、残りの2本のチューブの先端部である噴射ノズルを、カプセル内視鏡の中心軸に対して所定の角度をなし、かつ中心軸に対して互いに対称な傾斜姿勢をなすように傾ける。この場合、残りの2本のチューブの先端部(噴射ノズル)から噴射させる流体の勢い(単位時間当たりの噴射量)を調整することで、筐体を真っすぐバックさせるだけでなく斜め方向にもバックさせることができる。
従って、4本のチューブが筐体に設けられていれば、筐体を任意の場所に到達させることができる。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、前進用噴射ノズルのみであってもよい。前進用噴射ノズルのみの場合は、大腸検査において、まずカプセル内視鏡を肛門から挿入し、前進用噴射ノズルの噴射で大腸内を移動し、大腸内の検査が終了すれば、複数のチューブを巻き取ることで後進させて、肛門から取り出すことが可能となる。
このような複数のチューブの各々の断面形状は、円形でも楕円形でもよいし、あるいは、三角形、四角形、その他の多角形でもよい。
また、複数のチューブは、1つのチューブ束を形成するように一体化されたものでもよいし、1つ1つ分離されたものでもよい。
また、複数のチューブの材質は、送り出しおよび巻き取りが可能な可撓性を有するものであれば、限定されるもではなく、任意であり得る。例えば、チューブはビニールチューブでもゴムチューブでもよい。
(供給手段)
供給手段は、複数のチューブに流体を供給するものであれば、その他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
例えば、供給手段は、圧縮空気を生成するポンプを含み、ポンプで生成した圧縮空気を流体として複数のチューブに供給するものでもよいし、圧縮空気を溜めた空気ボンベを含み、空気ボンベから吐出した圧縮空気を流体として複数のチューブに供給するむものでもよい。
また、供給手段は、ポンプあるいは空気ボンベなどの流体発生源から流体を複数のチューブに流体を供給するためのチューブ(基幹チューブ)を有するものでもよい。
(送出巻取手段)
送出巻取手段は、複数のチューブの送り出しおよび巻き取りを行うものであれば、その他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
例えば、送出巻取手段は、複数のチューブを巻回する回転可能なシャフト(回転シャフト)を有していてもよいし、あるいは、複数のチューブを巻回するための固定シャフトを有していてもよい。また、送出巻取手段は、複数のチューブを巻回するボビンを有するものでもよい。
さらに、供給手段が、流体を複数のチューブに供給するための基幹チューブを有する場合、送出巻取手段は、基幹チューブが複数のチューブ(送気チューブ)につながるように基幹チューブを複数のチューブに接続する接続機構を有していてもよいし、あるいは、複数のチューブは基幹チューブに直接接続されていてもよい。
さらに、送出巻取手段は、基幹チューブから複数のチューブに供給する流体の供給条件を複数のチューブの各々毎に調整可能に構成されていてもよい。
特に、送出巻取手段が基幹チューブを複数のチューブに接続する接続機構を有する場合、この接続機構が、基幹チューブから複数のチューブに供給する流体の供給条件を複数のチューブの各々毎に調整する流量調整機構を含んでいてもよい。ただし、送出巻取手段が接続機構を有する場合でも、複数のチューブの各々毎に流体の供給条件を調整する機構は、接続機構とは独立して設けられていてもよい。
ただし、以下説明する本願のさらなるもう1つの発明(第4の発明)の実施形態(実施形態4)では、カプセル内視鏡およびその操作器具とを備えたカプセル内視鏡システムとして、操作器具の筐体が内視鏡収容スペースを有し、複数のチューブが4本のチューブであり、供給手段が基幹チューブを含み、送出巻取手段が、基幹チューブと4本のチューブとを接続する接続機構を有し、接続機構が4本のチューブの各々毎に流体の供給条件を調整する流量調整機構を含むものを挙げる。
本願のさらなるもう1つの発明で使用されるカプセル内視鏡は、自走手段を備えない一般的に市販されているカプセル内視鏡全般を包含している。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1:第1の発明の実施形態)
図1は、本発明の実施形態1による内視鏡システム1を説明するための斜視図であり、この内視鏡システム1の構成を模式的に示す図である。
この実施形態1の内視鏡システム1は、図1に示すように、被検者の管腔内を撮影する光学系としてのレンズおよび撮像装置、さらに照明装置などを含む内視鏡本体10と、内視鏡本体10に流体(ここでは、水)を供給する4つの送水チューブ20a~20dとを備えている。
4つの送水チューブ20a~20dは可撓性を有し、1つの送水チューブ束20として一体化されている。また、内視鏡本体10aは、内視鏡本体10aに供給された流体を貯留して昇圧する貯留スペース11と、貯留スペース11で昇圧した流体を排出する4つの排出口13a~13d(図2(b)参照)とを有し、4つの排出口13a~13dからの流体の排出により推進力を発生するように構成されている。
また、この内視鏡システム1は、内視鏡本体10aの移動を操作する内視鏡操作装置50を有しており、内視鏡操作装置50の装置筐体50aには、流体を発生する流体発生部30が設けられており、この流体発生部30と内視鏡本体10aの貯留スペース11とが送水チューブ束20により連結されている。
ここで、被検者の管腔は大腸であるが、被検者の管腔は、大腸以外の食道、胃、小腸などの内部であってもよい。
また、流体は水であるが、流体は、生理食塩水などの他の液体であってもよいし、液体に限らず、空気あるいは二酸化炭素などの気体でもよい。なお、図1中、12cは、内視鏡本体10の前面をシールドする、透明樹脂あるいはガラスからなるシールドカバーである。また、図1では、光学系収容部12に収容されている光学系としてのレンズおよび撮像装置は省略している。なお、レンズが内視鏡本体10の前面をシールドするシールドガラスとして機能する場合は、シールドガラスは不要である。
以下、詳述する。
〔内視鏡本体10a〕
図2は、図1に示す内視鏡本体10aの外観を示す平面図であり、図2(a)は、図1の内視鏡本体10aをA方向から見た構造を示す図、図2(b)は、図1の内視鏡本体10aをB方向から見た構造を示す図である。なお、図2(b)では、図2(a)に示す光学系としてのレンズ12bおよび撮像装置12aは、内視鏡本体10の構造を見やすくするために省略している。
内視鏡本体10aの前方部には撮像装置12aが配置され、内視鏡本体10aの後方部には、4つの排出口13a~13dが配置されている。
具体的には、内視鏡本体10aは、そのケースとしての本体筐体10a1を含み、本体筐体10aの前方部には、密閉された空間として光学系収容部12が形成されており、光学系収容部12には、撮像装置12aが、レンズ12bなどの他の光学機器、および照明装置12cとともに収容されている。また、本体筐体10a1の後方部には、中空の貯留スペース11がサージタンクとして形成されており、サージタンク11の底面部には、4つの排出口13a~13dが形成されている。サージタンク11には、送水チューブ束20の各送水チューブ20a~20dから流体(水)が供給されるようになっている。
なお、サージタンク11は、本体筐体10aに形成された中空スペースに限定されず、例えば、本体筐体10aに樹脂製あるいは金属製の中空容器を組み込んだものでもよい。ここで、本体筐体10aの前方は、本体筐体10a1の後方部から前方部に向く方向であって、内視鏡本体10が被検者の肛門から腸管内に侵入した後、肛門から離れる方向に腸管内を移動するときの進行側であり、本体筐体10aの後方は、本体筐体10a1の前方部から後方部に向く方向であって、内視鏡本体10が腸管内を肛門に近づく方向に移動するときの進行側である。
以下、内視鏡本体10aのサージタンク11の構成および送水チューブ束20の構成を具体的に説明する。
図3は、図2に示す内視鏡本体10aの縦断面の構造を示す図であり、図3(a)は、図2(b)のC1-C1線断面の構造を示し、図3(b)は、図2(b)のC2-C2線断面の構造を示す。ここで、内視鏡本体10aの縦断面は、内視鏡本体10aの中心軸Axを含む断面である。
図4は、図2に示す内視鏡本体10aおよびその変形例1の横断面の構造を示す図であり、図4(a)は、図2(a)に示す内視鏡本体10aのC3-C3線断面の構造を示し、図4(b)は、内視鏡本体10aの変形例1である内視鏡装置10bの、図2(a)のC3-C3線断面に相当する断面の構造を示す。ここで、内視鏡本体10aの横断面は、中心軸Axに垂直な断面である。
本体筐体10aに形成されているサージタンク11は、図4(a)に示されるように、その内部空間がタンク隔壁11eに仕切られて4つの部屋(第1~第4の貯留室)11a~11dが形成されている。
第1の貯留室11aのうちの本体筐体10aの後端部中心に近接する部分には、送水チューブ束20を構成する4つの送水チューブのうちの1つ(第1送水チューブ)20aの一端が接続されている(図4(a)、図2(b)参照)。
同様に、第2貯留室11b、第3貯留室11c、および第4貯留室11dのうちの本体筐体10aの後端部中心に近接する部分にはそれぞれ、第2送水チューブ20b、第3送水チューブ20c、および第4送水チューブ20dの一端が接続されている(図4(a)、図2(b)参照)。
なお、これらの送水チューブ20a~20dには、送水チューブと貯留室との接続が外れた場合には、送水チューブ20a~20dからの流体の流出を止める安全弁が設けられていることが好ましい。送水チューブが貯留室、つまり、サージタンク11から外れた場合に、送水チューブから被検者の管腔内へ流体が突発的に流入するのを即座に阻止することが可能となるからである。
また、第1の貯留室11aの底面(本体筐体10a1の後端側の内面)のうちのその外周に近い部分には、第1送水チューブ20aから貯留室11aに供給された流体を排出する排出口(第1主排出口)13aが形成されている(図2(a)、図3(a)、図4(a)参照)。
同様に、第2貯留室11b、第3貯留室11c、および第4貯留室11dの底面のうちのその外周に近い部分にはそれぞれ、対応する第2、第3、第4送水チューブ20b、20c、20dから供給された流体を排出する排出口(第2、第3、第4主排出口)13b、13c、13dが形成されている(図2(a)、図3(b)、図4(a)参照)。
ここで、第1主排出口13a~第4主排出口13dは、これらの排出口から排出される流体の方向が内視鏡本体10の前後方向(中心軸Ax)と平行な方向となるように構成されている。具体的には、各主排出口13a~13dとサージタンク11の各貯留室11a~11dとをつなぐ排出通路は、内視鏡本体10の前後方向と略平行な方向となるように形成されている。これにより、これらの主排出口13a~13dから液体を排出する反動で、内視鏡本体10を前進させる推進力が発生する。
また、このように内視鏡本体10が4つの主排出口13a~13dを有する場合、それぞれの排出口から排出される流体の勢いを異ならせることで、内視鏡本体10aにその中心軸Axの向きを変化させる回転モーメントを発生させて内視鏡本体10aの方向転換を行うことは可能であるが、主排出口13a~13dから排出される流体の方向は、内視鏡本体10の前後方向と略平行であるので、急激な方向転換は容易ではない。
〔内視鏡本体10aの変形例1〕
これに対しては、この実施形態1の内視鏡本体10aの変形例として示す内視鏡本体10bのように、4つの主排出口13a~13dに加えて、方向転換のための排出口、例えば、図4(b)に示す4つの補助排出口14a~14dを有することが有効である。
これらの第1~第4の補助排出口14a~14dは、サージタンク11内に形成されている4つの貯留室11a~11d毎に、対応する主排出口13a~13dに隣接させて設けられており、これらの補助排出口14a~14dから排出される流体の方向が内視鏡本体10の前後方向(中心軸Ax)と所定の角度(例えば、約30度~約90度)をなす方向となるように構成されている。
具体的には、各補助排出口14a~14dとサージタンク11の各貯留室11a~11dとをつなぐ排出通路は、サージタンク11から補助排出口に近づくにつれて内視鏡本体10bの中心軸Axから離れるようにこの中心軸Axに対して所定の角度をなすように傾斜している。これにより、これらの補助排出口14a~14dから排出する流体の流量を異ならせることで、内視鏡本体10bにその中心軸Axの向きを変化させる大きな回転モーメントを発生させて内視鏡本体10bの急な方向転換を行うことが可能となる。
例えば、第1補助排出口14a~第4補助排出口14dのうちのいずれかで流体の排出を行うと、その反動として内視鏡本体10の中心軸Axの向きを変化させる大きな回転モーメントが発生して内視鏡本体10bの姿勢が効果的に変化することとなり、内視鏡本体10の進行方向を素早く変えることができる。
なお、上述したように、変形例1の内視鏡本体10bでは、各貯留室(第1貯留室~第4貯留室)11a~11dにはそれぞれ、図4(b)に示すように、主排出口13a~13dに加えて第1~第4の補助排出口14a~14dが設けられているが、これらの補助排出口14a~14dは、主排出口13a~13dとは異なり、内視鏡本体10aを移動させるのに必ずしも必要なものではなく、場合によっては第1補助排出口14a~14dは不要である。
なお、上述した内視鏡本体10aおよびその変形例1である内視鏡本体10bは、貯留スペースを形成する1つのサージタンク11を有するものであるが、内視鏡本体は、貯留スペースを形成する2以上のサージタンクを有するものでもよい。
〔内視鏡本体10aの変形例2〕
以下、実施形態1の内視鏡本体10aの変形例2として、2つのサージタンク11を有する内視鏡本体10cを説明する。
図4Aは、図2に示す内視鏡本体10aの変形例2である内視鏡本体10cを示す図であり、図4A(a)は、図1のA方向に相当する方向から内視鏡本体10cを見た構造を示す平面図、図4A(b)および図4A(c)はそれぞれ、図4A(a)のC5-C5線断面の構造および図4A(a)のC6-C6線断面の構造を示す。
図4Bは、図4Aに示す変形例2の内視鏡本体10cの断面構造を示す図であり、図4B(a)は、図4A(c)のC7-C7線の位置での内視鏡本体10cの縦断面の構造を示し、図4B(b)は、図4A(c)のC8-C8線の位置での内視鏡本体10cの縦断面の構造を示す。
この変形例2の内視鏡本体10cは、図4A(a)に示すように、送水チューブ束40から供給された流体を貯留する貯留スペースを形成する2つの貯留タンクを有している。ここで、内視鏡本体10cの本体筐体10c1の後方部側に位置する第1貯留タンク41は、図4A(b)に示すように、内部に隔壁は設けられておらず、1つの空間となっており、本体筐体10c1の前方部側に位置する第2貯留タンク42は、図4A(c)に示すように、内部は隔壁42eにより複数(ここでは4つの)の貯留室42a~42dに仕切られている。
第1貯留タンク41の底面のうちの本体筐体10c1の後端部の中心部分には、送水チューブ束40を構成する5つの送水チューブのうちの1つ主送水チューブ40eの一端が接続されている(図4A(b)、図4B(a)参照)。
また、第1貯留タンク41の底面のうちのその外周側の部分には、1つの主送水チューブ40eから第1貯留タンク41に供給された流体を排出する4つの主排出口43a~43dが形成されている。これらの主排出口43a~43dは、これらの排出口から排出される流体の方向が内視鏡本体10cの前後方向(中心軸Ax)と平行な方向となるように構成されている。これにより、これらの主排出口43a~43dは、液体の排出により、内視鏡本体10cを前進させる推進力が発生する排出口となっている。
また、4つの貯留室42a~42dに区分されている第2貯留タンク42では、各貯留室42a~42dには、送水チューブ束40を構成する5つの送水チューブのうちの4つの補助送水チューブ40a~40dの各々が接続されている(図4A(c)、図4B(b)参照)。
第2貯留タンク42の周壁には、内視鏡本体10cの方向転換のための補助排出口44a~44dが各貯留室42a~42d毎に形成されている(図4A(c)、図4B(b)参照)。これらの第1~第4の補助排出口44a~44dは、これらの補助排出口44a~44dから排出される流体の方向が内視鏡本体10cの前後方向(中心軸Ax)に対して略垂直な方向となるように構成されている。
従って、この変形例2の内視鏡本体10cでは、第2貯留タンク42の補助排出口44a~44dから排出する流体の流量を異ならせることで、内視鏡本体10cに、中心軸Axの向きを変える大きな回転モーメントを発生させて内視鏡本体10cの急激な方向転換を行うことが可能となる。
〔内視鏡操作装置50〕
次に内視鏡システム1の内視鏡操作装置50を説明する。
図5は、図1に示す内視鏡操作装置50の内部の構造を概念的に説明する図であり、図1の紙面上方(A方向)から見た内視鏡操作装置50の構造を示す模式図である。
内視鏡操作装置50は、装置筐体50aと、電源40と、モニター52と、内視鏡本体10aの動きを操作する第1操作部51と、送水チューブ束20に供給する水流を発生する流体発生部30と、被検者の腸管(腸内送気チューブ90d)内への送気および送水チューブ束20の巻取りを操作する第2操作部54と、送水チューブ束20を巻き取る巻取り機58とを有する。なお、電源40は装置筐体50aに内蔵され、モニター52は装置筐体50aの上部に取り付けられている。
ここで、流体発生部30は、加圧された水を発生させる給水ポンプ56aと、二酸化炭素ガスを充填したガスボンベ56bと、流量制御器57とを有する。この流量制御器57は、内視鏡操作装置50での操作者の操作に基づいて給水ポンプ56aから送水チューブ20a~20dに送り出す流水の流量を制御するとともに、ガスボンベ56bから腸内送気チューブ90dに送り出すガスの流量を制御するように構成されている。
第1操作部51は、図1に示すように、キーボード51aと、送水調整パッド51bと、方向調整パネル51cとを含み、これらは装置筐体50aに組み込まれている。キーボード51aは、内視鏡検査に必要な情報を内視鏡操作装置50に入力するための入力デバイスであり、送水調整パッド51bは、第1コネクタ55aに接続された送水チューブ20a~20dへの送水量を調整する入力デバイスであり、方向調整パネル51cは、第1コネクタ55aに接続された送水チューブ20a~20dへの送水および送水遮断を制御して内視鏡本体10の進行方向を操作する入力デバイスである。
第2操作部54は、送気フットスイッチ54aと巻取りフットスイッチ54bとを含み、これらのフットスイッチは装置筐体50aの前面下部に組み込まれている。
送気フットスイッチ54aは、被検者の腸管内への送気、つまり、第2コネクタ55bに接続された腸内送気チューブ90dへの送気を調整するスイッチである。巻取りフットスイッチ54bは、巻取り機58による送水チューブ束20の巻取りを操作するスイッチである。ここで、巻取り機58は、送水チューブ束20を巻き取る巻取りローラ58bと、巻取りローラ58bを駆動するモータ(巻取りモータ)58aとを含み、巻取りローラ58bは、装置筐体50aの側壁に取り付けられ、巻取りモータ58aは装置筐体50a内に取り付けられている。
また、内視鏡操作装置50の装置筐体50aの側面には、送水チューブ束20を収納するチューブ収納部53が装置筐体50aに対して着脱可能に取り付けられている。
図6は、図1に示す内視鏡操作装置50のチューブ収納部53および内視鏡本体10aの構造を模式的に示す図であり、図6(a)は、図1に示す内視鏡操作装置50の側面側(紙面右側)の構造を示す模式図であり、図6(b)は、図6(a)のM部分を拡大して送水チューブ20aに設けられた配線の具体的構造を示す。
チューブ収納部53は、図6(a)に示すように、送水チューブ束20を収納する収納ケース53aと、収納ケース53aの底部に設けられた送出しローラ53bとを含む。ここで、収納ケース53aは装置筐体50aの側面に着脱可能に固定されている。送出しローラ53bは、収納ケース53aから送水チューブ束20を送り出す際に送水チューブ束20の送出しがなめらかになるように回転する構成となっている。
さらに、装置筐体50aの側面には、送水チューブ束20を接続する第1コネクタ55aおよび腸内送気チューブ90dを接続する第2コネクタ55bが設けられている。
ここで、第1コネクタ55aは、送水チューブ束20の各送水チューブ20a~20dを流体発生部30に着脱可能に接続するものであり、送水チューブ束20の一端に取り付けられたチューブ側コネクタ20gに取り外し可能に接続される。また、第2コネクタ55bは、被検者の腸管内に送気を行う腸内送気チューブ90dの一端が第2コネクタ55bに着脱自在に連結されるようになっている。
また、この実施形態1の内視鏡システム1では、図6(b)に示すように、送水チューブ束20に含まれる4つの送水チューブ20a~20dのうちの送水チューブ20aには、撮像装置12aで得られた画像データをモニタ52に送信する信号線Lmが組み込まれ、送水チューブ20dには、内視鏡本体10に電源40の電力を供給する電源線Lpが組み込まれている。なお、信号線Lmおよび電源線Lpは、送水チューブ20aおよび20dの内部に組み込まれている場合に限定されず、信号線Lmおよび電源線Lpは、例えば、送水チューブ20aおよび20dに沿ってその外側に設けられていてもよい。
なお、上述した内視鏡システム1は、操作者が被検者と対面しながら内視鏡操作装置により、人体の管腔内での内視鏡本体の移動を操作するものであるが、内視鏡システムは、操作者が、被検者とは離れた場所で、被検者の管腔内での内視鏡本体の移動を遠隔操作することを可能にしたものでもよい。
〔遠隔操作可能な内視鏡操作装置59〕
以下、内視鏡操作装置50の変形例として内視鏡本体10aを遠隔操作可能な内視鏡操作装置59を説明する。
図6Aは、図5に示す内視鏡操作装置50の変形例として、内視鏡本体10aを遠隔操作可能に構成した内視鏡操作装置59を示す模式図である。
この内視鏡本体10aの遠隔操作を可能とする内視鏡操作装置59は、遠隔操作部59bと、遠隔操作部59bからの操作信号に基づいて内視鏡本体10aを移動させる内視鏡移動部59aとを備えたものである。
ここで、遠隔操作部59bは、第1操作部51、第2操作部54、モニター52および第1通信装置61を備えたものである。ここで、第1操作部51、第2操作部54、およびモニター52は、実施形態1で説明した内視鏡操作装置50におけるものと同じ機能を有するものであり、第1通信装置61は、第1操作部51および第2操作部54での操作による操作信号を送信するとともに、受信した画像データをモニター52に出力するものである。
内視鏡移動部59aは、実施形態1の内視鏡操作装置50において、第1操作部51および第2操作部54に代えて、遠隔操作部59bの第1通信装置61との間で通信を行う第2通信装置62を備えたものである。
すなわち、第2通信装置62は、第1通信装置61から送信されてくる操作信号を受信して流量制御器57および巻取りモーター58aに出力するとともに、内視鏡本体10aの撮像装置12aで撮影して得られた画像データを内視鏡本体10aから受信して第1通信装置61に送信するものである。
このような構成により、遠隔操作部59bの第1操作部51および第2操作部54での操作により、内視鏡移動部59aに内視鏡本体10aを大腸内で移動させ、さらに、腸内送気チューブ90dへの送気を行うことが可能となる。
〔内視鏡システム1のその他の構成〕
さらに、内視鏡システム1は、内視鏡本体10および腸内送気チューブ90dを被検者の肛門H2aから大腸へ挿入する作業をしやすくする内視鏡補助具90を備えている。
図7は、内視鏡補助具90を説明するための図であり、図1に示す内視鏡システム1の内視鏡本体10aを被検者の肛門H2aから大腸へ挿入する様子を示す。
内視鏡補助具90は、肛門に装着する一対のリング部品90a、90bと、内視鏡本体10aのガイド部材であるシース部材90dと、腸内への送気を行う腸内送気チューブ90dとを備え、これらの部材は、一対のリング部品の中央開口内にシース部材90dと腸内送気チューブ90dとが挿入された状態で一体化されている。また、各リング部品は、空気の吹込みおよび吸出しにより膨らんだり萎んだりするバルーン構造となっている。具体的には、各リング部品90a、90bは、空気取入れ口91a、91bを有し、これらの空気取入れ口91a、91bは、送水チューブとは別のチューブにより内視鏡操作装置50の装置筐体50aの空気の注入排出口55c、55dに接続されている。これにより、内視鏡補助具90は、補助具の肛門への装着が簡単なものとなっている。なお、これらの空気の注入排出口55c、55dは、図1、図5、図6では説明の簡略化のため図示していない。
次に実施形態1の内視鏡システム1の動作をその使用方法とともに説明する。
まず、図7に示すように、送水チューブ束20のチューブ側コネクタ20gを内視鏡操作装置50の第1コネクタ55aに接続するとともに、腸内送気チューブ90dの根元側端部を第2コネクタ55bに接続する。各リング部品90a、90bの空気取入れ口91a、91bを、内視鏡操作装置50の装置筐体50aの空気排出口55c、55dに接続する。
次に、図7に示すように、内視鏡補助具90を被検者の肛門H2aに取り付ける。
具体的には、一対のリング部品90a、90bを萎めた状態で、一方のリング部品90aとともにシース部材90cおよび腸内送気チューブ90dの先端部が肛門H2a内に挿入されるように内視鏡補助具90を肛門内に挿入し、さらに、他方のリング部品90bが肛門H2aの入り口に接するまで、内視鏡補助具90を大腸内に挿入する。
この状態で、肛門の内外に位置する一対のリング部品90a、90bを空気の充填により膨らませ、一対のリング部品90a、90bで肛門を内側と外側の両側から挟み込んで、内視鏡補助具90を肛門H2aに固定する。
その後、送水チューブ束20を内視鏡操作装置50のチューブ収納部53(図6(a)参照)から引き出して、送水チューブ束20の先端に取り付けられている内視鏡本体10をガイドシース90cを介して被検者の腸管内に挿入する。
次に、内視鏡操作装置50の第2操作部54の送気スイッチ54a(図1参照)を踏み込んで腸内送気チューブ90dから腸管内に気体(ここでは、二酸化炭素ガス)を送り込んで腸管を膨らませ、この状態で、内視鏡操作装置50の第1操作部51の操作により内視鏡本体10に推進力を発生させて腸管内を移動させ、内視鏡本体10aに搭載されている撮像装置12aで腸管の内面の撮影を行わせる。
図8は、図1に示す内視鏡システム1の内視鏡本体10aで被検者の管腔内部(大腸内部)を撮影してモニター52に表示する様子を模式的に示す図である。
内視鏡本体10aの推進力の大きさは、第1操作部51に含まれる送水調整パッド51bの操作により4つの送水チューブ20a~20dからサージタンク11の各貯留室11a~11dに供給する水流の量を変えることにより行う。
サージタンク11では、各貯留室11a~11dに供給された水流は、貯留室11a~11d内で圧縮により昇圧されて各第1主排出口13a~13dから排出される。このとき、昇圧された水流が各貯留室11a~11dから排出されるときの反動が内視鏡本体10aの推進力となる。
例えば、内視鏡本体10aの推進力が徐々に大きくなり、一定の推力以上になると、内視鏡本体10が腸管内を進むこととなり、これに伴ってチューブ収納部33に収納されている送水チューブ束20が収納ケース53aから引き出される。このとき、送水チューブ束20は、送出しローラ53c上に折りたたんだ状態で収納されているので、内視鏡本体10aにつながる送水チューブ束20が内視鏡本体10aにより引っ張られると、送出しローラ53cが回転することで、送水チューブ束20は収納ケース53aから滑らかに引き出されることとなる。
内視鏡本体10aの推進力の方向は、第1操作部51に含まれる方向調整パネル51cの操作により4つの送水チューブ20a~20dからサージタンク11の各貯留室11a~11dへの水流の供給あるいは供給停止を切り替えることにより行う。例えば、1つの貯留室11aへの水流の供給を行い、他の貯留室11b~11dへの水流の供給を停止すると、貯留室11aの排出口13aからの水流の排出による反動のみが生じ、他の貯留室11b~11dの排出口13b~13dからの水流の排出による反動は生じないので、内視鏡本体10aの姿勢(進行方向)が変化する。なお、各貯留室11a~11dに、排出口(第1主排出口~第4主排出口)13a~13dに加えて、補助排出口(第1補助排出口~第4補助排出口)14a~14dが形成されている場合は、内視鏡本体10aの姿勢(進行方向)の変化は、補助排出口からの排水による反動が加わることとなり、よりスムーズに行われることとなる。
内視鏡本体10aにつながる送水チューブ束20は柔らかい4つの送水チューブ20a~20dを束ねたものであるので、内視鏡本体10aが腸管R0内を移動するとき、送水チューブ束20は、図8に示すように、腸管R0の曲がりに合わせて変形する。なお、図8の太い点線で示す部分は、腸管R0のうちの送水チューブ束20が挿入された部分である。このため、内視鏡本体10aの進行により腸管R0が送水チューブ束20により変形させられることはなく、被検者が内視鏡本体10aの移動による痛みを感じることはない。
また、図6(b)および図8に示すように、内視鏡本体10aには、4つの送水チューブ20a~20dのうちの1つ(例えば、送水チューブ20d)に挿入された電源線Lpにより電源40から電力が供給され、撮像装置12aで撮影された画像データは、4つの送水チューブ20a~20dのうちの他の1つ(例えば、送水チューブ20a)に挿入された信号線Lmによりモニター52に出力されるようになっている。
このため、操作者は、被検者の腸管R0の表面の状態をモニター52によりリアルタイムで観察することができる。なお、撮像装置12aで撮影された画像データは、AI機能により解析によって手術が必要な個所などを判断するようにしてもよい。
このようにして被検者の腸管R0の表面を観察する作業が完了すると、第1操作部51の送水調整パッド51bの操作により送水チューブ束20から内視鏡本体10への送水を停止し、第2操作部54の巻取りスイッチ54bの操作により巻取りモータ58aを駆動して巻取りローラ58bを回転させる。これにより、巻取りローラ58bによる送水チューブ束20の巻取りにより被検者の腸管R0内から送水チューブ束20が引き抜かれることとなり、引き抜かれた送水チューブ束20は、チューブ収納部53の収納ケース53a内に収納される。
その後は、送水チューブ束20のチューブ側コネクタ20eを内視鏡操作装置50の第1コネクタ(操作送水コネクタ)55aから取り外し(図6(a))、送水チューブ20aがチューブ収納部33に収納された状態で、内視鏡操作装置50の装置筐体50aから取り外して消毒処理を施す。
また、腸内送気チューブ90dの一端は第2コネクタ(腸内送気コネクタ)55bから取り外され、腸内送気チューブ90dをリング状部材90a、90bから抜き取って被検者の肛門H2aから取り外す。取り外した腸内送気チューブ90dには消毒処理を施す。このようにすることにより、リサイクル可能となる。
次に、本実施形態1の内視鏡システム1の効果を説明する。
図9は、図1に示す内視鏡システム1の内視鏡本体10aを被検者の大腸に挿入する様子(図9(a))を、従来の内視鏡装置のカメラ部分1aを被検者の大腸に挿入する様子(図9(b))と比較して示す図である。
本発明の1つの効果は、内視鏡本体10aとその送水チューブ束20を腸管内に挿入する時に被検者が痛みを感じないことである。
つまり、本実施形態1の内視鏡システム1では、内視鏡本体10aに水流を供給して推進力を発生させる送水チューブ束20を構成する送水チューブ20a~20dは柔らかいビニールチューブであるので、内視鏡本体10aが被検者の腸管R0内に挿入されると、図9(a)に示すように、内視鏡本体10aにつながる送水チューブ20a~20dが腸管R0の形状に沿って変形する。このため、腸管R0の曲がりくねった部分BPが、この腸管R0に挿入される送水チューブ20a~20dにより無理に変形させられることがなく、被検者が送水チューブ束20の腸管R0への挿入時に痛みを感じることが少ない。
これに対し、従来の大腸内視鏡システムでは、カメラ部分1aにケーブル2aがつながっており、このケーブル2aは金属製の部材からなる関節を複数つなぎ合わせて折曲り可能となるように構成されたものであり、ビニールチューブに比べると曲がりにくく堅い素材である。このため、図9(b)に示すように、腸管R0の曲がりくねった部分BPにこの金属性ケーブル2aを挿入すると、曲がりくねった部分BPの腸管が、曲がりにくい金属性ケーブル2aの大きな曲率の弧を描く形状BP1に変化することとなり、被検者に痛みを与えてしまう。
本発明のもう1つの効果は、内視鏡システム1では腸内の鮮明な画像が得られることである。
すなわち、本実施形態1の内視鏡システム1では、内視鏡本体10aには、これにつながる複数の送水ューブ20a~20dのうちの1つ(例えば、送水チューブ20d)に挿入された電源線Lpにより電源が供給され、さらに、内視鏡本体10aに搭載されている撮像装置12aで得られた画像データが、複数の送水チューブ20a~20dのうちの他の1つ(例えば、送水チューブ20a)に挿入された信号線Lmを介してモニター52に出力されるようになっている(図6(b)参照)。なお、電源線および信号線は、チューブの内部に設けられている場合に限定されず、チューブの外面に沿って設けられていてもよい。
このため、この実施形態1の内視鏡システム1では、内視鏡本体10aの電源が尽きることはなく、撮像装置12aでは鮮明な動画像の撮影を継続して行うことができ、しかも、撮影により得られた画像データは、被検者の腸管の外部に設けられているモニターによりリアルタイムで観察することができる(図8参照)。しかも、内視鏡本体10aは、電源と流体の供給により繰り返し使用することが可能である。
これに対し、自走式でないカプセル内視鏡1bを被検者の管腔R0内で移動可能とするための操作器具にカプセル内視鏡1bを取り付けた内視鏡システムでは、カプセル内視鏡1bには外部から電源の供給ができず、また、この内視鏡システムで用いられるカプセル内視鏡1bは、これに搭載されているバッテリを充電する機能がないため、使用時間が約11時間以内に制限される消耗品となってしまう。
また、カプセル内視鏡の内臓カメラで得られた画像データは、カプセル内視鏡1bに内蔵されている送信機で外部に送信する必要があり、鮮明な画像を得ることができない。
図10は、既に開発されているカプセル内視鏡1bを用いて撮影した被検者の体内の画像を体外の記録装置に無線送信する方法を示す図である。
カプセル内視鏡1bを操作器具2bに取り付けて被検者の腸管R0内で移動可能とするシステムでは、予め、カプセル内視鏡1bから送信された画像データを受信するアンテナとしての電極パッドPaを被検者の腹部H1の複数箇所に張り付けておく。
電極パッドPaで受信した画像データは有線でレコーダRcに送信され、レコーダRcに記録した画像データがパソコンにダウンロードされて解析される。
この場合、カプセル内視鏡1bから電極パッドPaへの画像データの送信は、2~6枚/秒のコマ送りの無線送信であり、画像が不鮮明であり、また、さらにパソコンに画像データをダウンロードして診断する手間がかかる。
また、このシステムでは、内視鏡カプセル1bを操作器具2bの先端部(保持部)に取り付け、保持部を送水チューブからの送水による反動で移動させるようにしているため、カプセル内視鏡1bが操作器具2bから脱落したり、操作器具2bの先端(保持部)に流体を送る送水チューブが外れたりするおそれがある。
なお、上述した実施形態1では、内視鏡システム1に含まれるチューブ束20として、内視鏡本体10aの貯留スペース(サージタンク)11の各貯留室11a~11dに水を供給する4つの送水チューブ20a~20dを含む送水チューブ束20を示したが、内視鏡システムは、サージタンク11に水を供給するチューブ以外のチューブを有していてもよい。
図10Aは、本発明の実施形態1の内視鏡システム1の変形例(内視鏡システム201)を説明するための斜視図であり、この内視鏡システム201に含まれる内視鏡本体210aおよびチューブ束220の構成を模式的に示す図である。
この内視鏡システム201は、実施形態1の内視鏡システム1における4つの送水チューブ20a~20dを含む送水チューブ束20に加えて、洗浄チューブ20eおよび吸引チューブ20fを含むチューブ束220を有している。なお、吸引チューブ20fは、管腔内の組織を採取するための鉗子を挿入する鉗子用チューブとして用いてもよい。
これらの洗浄チューブ20eおよび吸引チューブ20fは、先端側部分が内視鏡本体210aの本体筐体210a1の壁部分に埋め込まれている。また、洗浄チューブ20eの先端は、本体筐体210a1の前面の縁部に取り付けられた洗浄ノズル12eに接続されている。吸引ノズル20fの先端は、本体筐体210a1の前面の縁部に取り付けられた吸引ノズル12fに接続されている。ここで、洗浄ノズル12eは、本体筐体210a1の前面に設けられているシールドガラス12dに水を吹き付けて洗浄するものである。なお、本体筐体210a1にシールドガラス12が設けられていない場合には、洗浄ノズル12eから吹き出される水でレンズの洗浄が行われる。また、吸引ノズル12fは、人体の管腔内に溜まった流体が人体の外部に排出されるように流体を吸引するノズルである。
ここでは、内視鏡操作装置250は、実施形態1の内視鏡システム1における内視鏡操作装置50に代わる内視鏡操作装置250を有している。この内視鏡操作装置250は、内視鏡システム1の内視鏡操作装置50のキーボード51a、送気調整パッド51b、および方向調整パネル51cに加えて、流体発生部から洗浄チューブへの流体の供給を制御手段に行わせるスイッチ(レンズ洗浄用スイッチ)51dを有し、さらに、制御手段に、吸引チューブ20からの吸水が行われるように流体吸引部の制御を行わせるスイッチ(吸水ボタン)51eを有している。さらに、内視鏡操作装置250は、内視鏡本体に搭載されている撮像装置(カメラ)のカメラフリーズを解消するリセット動作、あるいはシャッタ動作を制御手段に行わせるスイッチ(カメラスイッチ)51fを有している。
なお、図10Aで示した内視鏡システム201のその他の構成は、実施形態1の内視鏡システム1におけるものと同一である。
さらに、図1に示す内視鏡システム1の他の変形例を説明する。
(実施形態2:本願の第2の発明の実施形態)
実施形態2の内視鏡システム301は、本願の第2の発明の実施形態による内視鏡システムであり、実施形態1の内視鏡システム1の一部を変更したものであり、実施形態2の内視鏡システム301における、内視鏡システム1と共通する構成要素は、実施形態1の内視鏡システム1と同一の構成を有している。また、ここでは、流体としては、水(整理食塩水などでもよい)を使用している。なお、流体は、空気、酸素、炭酸ガスなどの気体でもよい。
図10Bは、図1に示す内視鏡システム1の他の変形例(内視鏡システム301)を示す図である。図10B(a)は、内視鏡システム301の全体を示す斜視図、図10B(b)は、図10B(a)のR部分を示す平面図、図10B(c)は、図10B(b)のC9-C9線断面図、図10B(d)は、図10B(b)のC10-C10線断面の構造を拡大して示す図である。
この内視鏡システム301は、図1に示す内視鏡システム1の内視鏡本体10aに代えて撮像装置を含む光学系装置310aを備え、図1に示す内視鏡システム1の送水チューブ束20に代えて、流体を送る可撓性を有する送水チューブ320を備え、送水チューブ320の先端部に光学系装置310aを取り付けて、送水チューブ320の先端部に液体の排出による推進力を発生するようにしたものである(図10B(a)参照)。この内視鏡システム301のその他の構成は、図1に示す内視鏡システム1におけるものと同一である。
以下、この内視鏡システム301における実施形態1の内視鏡システム1との相違点を詳述する。
送水チューブ320は、図10B(b)~図10B(d)に示すように、その先端側の開口が塞がれ、かつ、送水チューブ320の内部空間にチューブの軸心に沿った複数の流体通路321a~321dが形成されるように内部空間が複数の隔壁322a~322dで仕切られた構造となっている。
また、光学系装置310aは、送水チューブ320の先端部に支持されており、送水チューブ320は、複数の流体通路321a~321dから流体を排出する排出口323a~323dを有している。ここで、排出口323a~323dは、排出口からの流体の排出により先端部に推進力が発生するように送水チューブの先端付近の側壁に形成されている。
この内視鏡システム301における内視鏡操作装置50は、実施形態1の内視鏡システム1におけるものと同じものであり、第1操作部51での操作によって、各流体通路321a~321dに供給される流体の流量を調整することにより、光学系装置310aを支持する送水チューブ先端部に、光学系装置310aを所要の方向に進める推進力が発生するように構成されている。
なお、この内視鏡システム301におけるその他の構成は、実施形態1の内視鏡システム1におけるものと同一である。
また、送水チューブは、上述した構成、すなわち、その内部空間に送水チューブの軸心に沿った複数の通路が形成されるように内部空間が複数の隔壁で仕切られた構造に限定されず、送水チューブは、まとめられた複数の個別チューブを含み、複数の個別チューブの各々が流体通路を形成するものであり、各個別チューブに排出口が形成されたものでもよい。ここで、排出口は、排出口からの流体の排出により個別チューブの先端部に推進力が発生するように個別チューブの先端付近の側壁に形成されている。この場合、個別チューブの数は限定されるものではないが、例えば、4つである。
さらに、図1に示す内視鏡システム1のその他の変形例を説明する。
(実施形態3:本願の第3の発明の実施形態)
実施形態3の内視鏡システム401は、本願の第3の発明の実施形態による内視鏡システムであり、図10Bに示す実施形態2の内視鏡システム301の一部を変更したものであり、実施形態3の内視鏡システム401における、内視鏡システム301と共通する構成要素は、内視鏡システム301と同一の構成を有している。
図10Cは、図1に示す内視鏡システム1のその他の変形例(内視鏡システム401)を示す図である。図10C(a)は、内視鏡システム401の全体を示す斜視図、図10C(b)は、図10C(a)のR1部分(送水チューブ420の先端側部分の構成)を拡大して示す平面図、図10C(c)は、図10C(b)のC11-C11線断面図である。
この内視鏡システム401は、図10Bに示す内視鏡システム301の送水チューブ320に代えて、これとは構造が異なる送水チューブ420を備え、さらに、内視鏡システム301の光学系装置310aに代えて、これとは筐体の構造が異なる光学系装置410aを備えたものである。この内視鏡システム401のその他の構成は、図10Bに示す内視鏡システム301におけるものと同一である。
以下、この内視鏡システム401における、実施形態2の内視鏡システム301との相違点を詳述する。
この内視鏡システム401では、送水を行うための可撓性を有する送水チューブ420は、チューブ収納部53から繰り出される本体チューブ420aと、本体チューブ420aの先端に取り付けられ、本体チューブ420aと光学系装置410aとを連結する先端チューブ420bとを有している。
ここで、本体チューブ420aの内部空間には、本体チューブ420aの軸心に沿った複数(ここでは4つ)の流体通路が形成されている。ここでは、複数の流体通路は、束ねられた複数(ここでは4つ)の個別チューブ(図示せず)により形成されている。
また、先端チューブ420bは、図10C(c)に示すように、筒状体で構成されている。
先端チューブ420bの一端側(図10C(b)の紙面上側)の内部空間には複数の隔壁422b(図10C(c)参照)が形成されており、これらの隔壁422bにより、先端チューブ420bの一端側の内部空間には、先端チューブ420bの軸心に沿って伸びる複数(ここでは4つ)の貯留スペース423bが形成されている。
先端チューブ420bの他端側(図10C(b)の紙面下側)の内部空間は、本体チューブ420aの先端部を嵌め込んで固定するための嵌合部となっており、先端チューブ420bの他端側の周壁には、貯留スペース423bに溜まった流体を排出する複数(ここでは4つ)の排出口421bが形成されている。
さらに、この内視鏡システム401では、光学系装置410aの筐体は、先端チューブ420bの一端側端部に気密に嵌合する嵌合部と、撮像装置、集光レンズなどの光学機器を取り付けるための取付部とを有している。取付部は光学機器を収容するものでもよいし、あるいは、光学機器を嵌め込むものでもよい。
このように、光学系装置410aを支持する送水可能な送水チューブ420を、送水のための本体チューブ420aと、その先端に取り付けられる先端チューブ420bとで構成し、先端チューブ420bに、本体チューブ420aからの液体を排出する複数の排出口421bを設けることで、複数の排出口から必要な排出口を選択することにより先端チューブ420bにその軸心に平行な方向およびその軸心に垂直な方向の所要の推進力を発生させて、光学系装置410aを前進させ、その際、前進の方向を変化させることができる。
なお、本体チューブ420aの材料としては、実施形態2の内視鏡システム301におけるものを用いることができる。また先端チューブ420bの材料は、本体チューブ420aの材料と同じでもよいし、あるいは異なるもの(例えば、硬質な材料で構成されたもの)でもよい。また、実施形態3では、流体としては、水(生理食塩水などでもよい)を使用している。なお、流体は、空気、酸素、炭酸ガスなどの気体であってもよい。
(実施形態4:第4の発明の実施形態)
図11は、本発明の実施形態4によるカプセル内視鏡システム1000を説明するための斜視図であり、このシステムを構成する操作器具100をカプセル内視鏡80とともに模式的に示している。図12は、図11に示す操作器具100の保持筐体110に対してカプセル内視鏡80を着脱する様子を示す斜視図である。
この実施形態4のカプセル内視鏡システム1000は、図11に示すように、カプセル内視鏡80と、カプセル内視鏡80を移動させるための操作器具100とを有する。
操作器具100は、カプセル内視鏡80を保持可能な筐体(保持筐体)110と、筐体110に接続された複数のチューブ(第1~第4の送気チューブ)121~124と、第1~第4の送気チューブ121~124の送り出しおよび巻き取りを行うための送出巻取器(送出巻取手段)130と、第1~第4の送気チューブ121~124に流体を供給する送気機器(供給手段)140とを備えている。
なお、カプセル内視鏡80は、一般的なものであり、本体部80aと、前方の窓部80bとを有する。本体部80aには、体内を撮影するカメラ部、体内を照らす照明部、カメラ部に画像を結像する光学系、カメラ部で撮影した画像データを外部に送信し、かつ、外部からの制御信号を受信する送受信部、および電源を備えている。なお、窓部80bの外壁は、カメラ部による体内の撮影を可能とするため、透明体で構成されている。
(保持筐体110)
ここで、保持筐体110は、図12に示すように、カプセル内視鏡80を収容する内視鏡収容スペース110aを有し、カプセル内視鏡80をこのスペース110内に圧入することにより、カプセル内視鏡80の外面を収容スペース110の内面に密着させて保持可能な構造となっている。ここで、保持筐体110は、樹脂材料で構成されているが、その他の材料、例えば、金属材料、ゴム、あるいはセラミック材料などで構成されていてもよい。また、保持筐体110は、内視鏡収容スペース110aの代わりに、カプセル内視鏡を保持するフレームを有するものでも、磁石、吸盤、接着材などで保持筐体110にカプセル内視鏡を固着するものでもよい。
さらに、この保持筐体110には、第1~第4のチューブ121~124が、各々の先端部が流体を保持筐体110から噴射する噴射ノズル121a~124aとなるように取り付けられており、以下詳しく説明する。
(第1~第4の送気チューブ121~124)
図13は、図11に示す操作器具100の保持筐体110を説明するための斜視図であり、送気チューブ121~124が接続された保持筐体110の構造を示している。
ここで、複数の送気チューブ121~124は、1つのチューブ束120を形成するように一体化されたもの、具体的には結束されたものとするが、これらの複数の送気チューブは、1つ1つ分離されたものでもよい。また、ここでは、チューブを流れる流体としては、気体(空気、酸素、炭酸ガスなど)としている。なお、流体は、水や生理食塩水などの液体でもよい。
第1の送気チューブ121は、その先端部がカプセル内視鏡の後方に突出する第1の前進用噴射ノズルとなるように、保持筐体110に取り付けられており、第2の送気チューブ122は、その先端部が、カプセル内視鏡の後方に突出する第2の前進用噴射ノズルとなるように保持筐体110に取り付けられている。これらの噴射ノズル121および122は、カプセル内視鏡を前進させるための噴射ノズルであり、各噴射ノズルから流体が噴出されるときの反動が、カプセル内視鏡80を含めた保持筐体110の重心に作用するように各噴射ノズルの傾斜角度が決められている。これにより一方の前進用噴射ノズルからだけ流体を噴射したときでも保持筐体110の回転を抑制することができる。
また、第3の送気チューブ123は、その先端部がカプセル内視鏡の前方に突出する第1の後進用噴射ノズル123aとなるように、保持筐体110に取り付けられており、第4の送気チューブ124は、その先端部がカプセル内視鏡の前方に突出する第2の後進用噴射ノズル124aとなるように、保持筐体110に取り付けられている。これらの噴射ノズル123aおよび124aは、カプセル内視鏡を後進(バック)させるための噴射ノズルであり、各噴射ノズルから流体が噴出されるときの反動が、カプセル内視鏡80を含めた保持筐体110の重心に作用するように各噴射ノズルの傾斜角度が決められている。これにより一方の後進用噴射ノズルからだけ流体を噴射したときでも保持筐体110の回転を抑制することができる。
そして、第1の前進用噴射ノズル121aおよび第2の前進用噴射ノズル122aは、先端側ほど両者の距離が増大するように、保持筐体110に装着されたカプセル内視鏡の中心軸(保持筐体110の中心軸)Axに対して傾斜している。
このように2つの前進用噴射ノズル121aおよび122aを傾斜させることにより、2つの前進用噴射ノズル121aおよび122aから吹き出す空気の勢いを変えることで、カプセル内視鏡80の中心軸に対して任意の斜め方向への前進が可能となる。
また、第1の後進用噴射ノズル123aおよび第2の後進用噴射ノズル124aは、先端側ほど両者の距離が増大するように、保持筐体110に装着されたカプセル内視鏡の中心軸(保持筐体110の中心軸)Axに対して傾斜している。
このように2つの後進用噴射ノズル123aおよび124aを傾斜させることにより、2つの後進用噴射ノズル123aおよび124aから吹き出す空気の勢いを変えることで、カプセル内視鏡80の中心軸に対して任意の斜め方向への後進が可能となる。
(送出巻取器130)
送出巻取器130は、送出巻取器筐体130aと、送出巻取器筐体130aに固定された軸受け133と、軸受け133に回転可能に取り付けられた回転シャフト132と、回転シャフト132の先端側に取り付けられた外フランジ131aと、回転シャフト132の根元側に取り付けられた内フランジ131bとを有している。ここで、回転シャフト132、外フランジ131aおよび内フランジ131bによりチューブ巻回ボビン130bが形成されており、チューブ巻回ボビン130bには第1~第4の送気チューブ121~124が、それらの送り出しおよび巻き取りが可能になるように巻き付けられている。
また、軸受け133には、送気機器140から空気を送り出すための基幹チューブ142が接続され、軸受け133に支持されている回転シャフト132の内部を介して空気が送気チューブ121~124に分配されるようになっている。
すなわち、基幹チューブ142と4つの送気チューブ121~124とを接続する接続機構130cが軸受け133と回転シャフト132とで構成されている。
図14は、図11に示す送気機器140から延びる基幹チューブ142と複数のチューブ121~124とを接続する接続機構130cの外観を示す斜視図である。
ここで、回転シャフト132は、中空の円柱体形状を有し、回転シャフト132の外周面のうちの2つのフランジ131aおよび131bで挟まれた部分には4つのホースニップル21~24が固定されており、これらのホースニップル21~24には、第1~第4の送気チューブ121~124の根元部分が接続されている。
そして、回転シャフト132と2つのフランジ131aおよびフランジ131bで形成されるチューブ巻回ボビン130bには、第1~第4の送気チューブ121~124が、チューブ巻回ボビン130b(つまり、回転シャフト132)の回転により、これらの送気チューブ121~124の送り出しおよび巻き取りが可能となるように巻き付けられている。
この回転シャフト132には、基幹チューブ142と4つの送気チューブ121~124とを接続する接続機構130cに加えて、各送気チューブ121~124に供給される空気流の勢い(単位時間当たりの流量)を調整する機構(流量調整機構31~34)が設けられており、以下この回転シャフト132の内部の構造を説明する。
図15は、図14に示す接続機構(分岐機構)の内部構造を説明するための図であり、図4のX-X線断面の構造を示している。
この回転シャフト132のうちの軸受け133により支持されている部分には、基幹チューブ142からの空気を回転シャフト132の内部に取り入れるための複数の気体導入口132aが回転シャフト132の円周方向に沿って設けられており、回転シャフト132の内部に設けられている隔壁132cには気体通過口132bが形成されている。
複数の気体導入口132aから回転シャフト132内に導入された空気は、隔壁132cの気体通過口132bを介して、回転シャフト132のうちのチューブ巻回ボビン130bを形成する部分(チューブ巻回部分)132fに導入されるようになっている。
回転シャフト132のチューブ巻回部分132fには、ホースニップル21~24が装着される4つの気体排出口21a~24aが形成され、さらに、この気体排出口21a~24aに流れ込む空気の流量を調整する流量調整機構31~34が設けられている。
第1の送気チューブ121に対応する流量調整機構31は、弁体3aと、弁付勢バネ3cと、摺動ブロック3bと、ブロック支持台3dと、操作ワイヤ3eとを有する。ここで、弁体3aは、気体排出口21aに近づいたり遠ざかったりすることで、気体排出口21aの開口面積を調整するものであり、気体排出口21aから遠ざかる方向に弁付勢バネ3cにより付勢されている。この弁体3aの一端は、ブロック支持台3d上にスライド可能に支持された摺動ブロック3bの傾斜面に当接しており、これにより、摺動ブロック3bを摺動させることにより、弁体3aを弁付勢バネ3cの付勢力に対抗して気体排出口21aに近づけたり、あるいは、弁付勢バネ3cの付勢力により気体排出口21aから遠ざけたりすることが可能となっている。
なお、弁体3aは、回転シャフト132の内部に設けられた棒状基材132eにスライド可能に保持され、さらに、弁付勢バネ3cは、この棒状基材132eと弁体3aとの間に接続されている。
また、摺動ブロック3bの駆動は、摺動ブロック3bに接続されている操作ワイヤ3eを引っ張ることにより行うことができ、この操作ワイヤ3eは、ワイヤ保持具134により回転シャフト132の周壁に固定された中空のワイヤケーブル3を通して回転シャフト132の外部に引き出され、回転シャフト132の外部で操作レバーLにより操作可能となっている。
なお、第2~第4の送気チューブ122~124に対応する流量調整機構32~34も、第1の送気チューブ121に対応する流量調整機構31と同じ構成を有する。
(供給手段140)
供給手段140は、流体として空気を送る送気機器であり、送気機器筐体140aと、送気機器筐体140a内に設けられたポンプ(図示せず)と、送気機器筐体140aに取り付けられた基幹チューブ142とを有し、送気機器筐体140aに設けられた吸気口141からポンプで吸引した空気を、基幹チューブ142を介して送出巻取器130に供給するものである。
次に、図11に示す操作器具100によるカプセル内視鏡80の操作方法を説明する。
図16は、図11に示す操作器具100によるカプセル内視鏡80の操作方法を説明するための斜視図であり、図16(a)~図16(d)はそれぞれ、カプセル内視鏡80を前進させる場合、カプセル内視鏡80を後進させる場合、カプセル内視鏡80を左側に移動させる場合、カプセル内視鏡80を右側に移動させる場合を示している。
被検者の体内(例えば、胃や口側腸管の場合)の診断を行う場合、カプセル内視鏡80を操作器具100の保持筐体110に取り付けてカプセル内視鏡80の電源を入れた状態で、被検者にカプセル内視鏡80をその保持筐体110およびこれにつながる第1~第4の送気チューブ121~124とともに飲み込んでもらう。この送気チューブ121~124は、従来の内視鏡における、カメラが取り付けられた可撓性のケーブルに比べて、柔軟で軟質かつ細いものであるので、この送気チューブ121~124は、被検者は、これらの送気チューブを飲み込んでも大きな苦痛を感じることはない。
その後、カプセル内視鏡80が食道を通って胃の内部に到達した時点で、カプセル内視鏡80を保持する保持筐体110を4つの噴射ノズル121a~124aからの空気の噴射により所望の方向に移動させる。なお、被験者の肛門側腸管(例えば、大腸の場合)の診断を行う場合は、カプセル内視鏡80を肛門側から体内に挿入することになる。
なお、ここで、カプセル内視鏡80の前進は、カプセル内視鏡80を窓部80bの正面方向へ移動させることを言い、カプセル内視鏡80の後進は、カプセル内視鏡80の前進とは反対方向に移動させることをいう。カプセル内視鏡80の左方向の移動は、カプセル内視鏡80の位置で窓部の正面を向いたときの左側への移動をいい、カプセル内視鏡80の右方向の移動は、カプセル内視鏡80の位置で窓部の正面を向いたときの右側への移動をいう。
カプセル内視鏡80を保持筐体110の噴射ノズル121a~124aからの空気の噴射により移動させる場合は、送気機器140から空気が送出巻取器130に供給されている状態となるように送気機器140を動作させておく。
(カプセル内視鏡80の前進)
例えば、カプセル内視鏡80を前進させたい場合は、各送気チューブ121~124に対応する流量調整機構31~34の操作ワイヤ3eの操作により、それぞれの流量調整機構31~34の摺動ブロック3bを摺動させて、第1の送気チューブ121に対応する気体排出口21aおよび第2の送気チューブ122aに対応する気体排出口22aを開け、かつ、第3の送気チューブ123に対応する気体排出口23aおよび第4の送気チューブ124aに対応する気体排出口24aを閉じる。
これにより、図16(a)に示すように、保持筐体110の第1の前進用噴射ノズル121aおよび第2の前進用噴射ノズル122aから空気が噴射される。
すなわち、送気機器140から基幹チューブ142を介して送出巻取器130の軸受け133内に供給された空気は、気体導入口132aを介して回転シャフト132内に導入され、さらに隔壁132cに形成された気体通過口132bを介して回転シャフト132のチューブ巻回部分132fに導入される。
この状態で、操作者による各流量調整機構31~34の操作ワイヤ3eの操作により、第1、第2の送気チューブ121、122の流量調整機構31、32では、摺動ブロック3bの移動により弁体3aを気体排出口21a、22aから離れた位置に移動させ、同時に、第3、第4の送気チューブ123、124の流量調整機構33、34では、摺動ブロック3bの移動により弁体3aを気体排出口23a、24aに近接した位置に移動させる(図15参照)。
この状態では、気体排出口21a、22aは開き、気体排出口23a、24は閉じているので、回転シャフト132のチューブ巻回部分132fに導入された空気は、気体排出口21a、22aを通って第1、第2の送気チューブ121、122に排出されることとなり、これらの送気チューブ121、122の先端開口、すなわち、保持筐体110の噴射ノズル121a、122aから空気が噴射され、一方、気体排出口23a、24aにつながる第3、第4の送気チューブ123、124には空気は排出されず、保持筐体110の噴射ノズル123a、124aから空気が噴射されない。
その結果、保持筐体110は、第1の前進用噴射ノズル121aおよび第2の前進用噴射ノズル122aから空気が保持筐体110の後方に噴射される反動により前進することとなる。
(カプセル内視鏡80の後進)
また、カプセル内視鏡80を後進(バック)させたい場合は、各送気チューブ121~124に対応する流量調整機構31~34の操作ワイヤ3eの操作により、それぞれの流量調整機構31~34の摺動ブロック3bを摺動させて、第1の送気チューブ121に対応する気体排出口21aおよび第2の送気チューブ122aに対応する気体排出口22aを閉じ、かつ、第3の送気チューブ123に対応する気体排出口23aおよび第4の送気チューブ124aに対応する気体排出口24aを開ける。
これにより、図16(b)に示すように、保持筐体110の第1の後進用噴射ノズル123aおよび第2の後進用噴射ノズル124aから空気が噴射され、この空気の噴射の反動により保持筐体110はバックする。
(カプセル内視鏡80の左方向の移動)
また、カプセル内視鏡80をその左方向に移動させたい場合は、各送気チューブ121~124に対応する流量調整機構31~34の操作ワイヤ3eの操作により、それぞれの流量調整機構31~34の摺動ブロック3bを摺動させて、第1の送気チューブ121に対応する気体排出口21aおよび第3の送気チューブ123aに対応する気体排出口23aを開け、かつ、第2の送気チューブ122に対応する気体排出口22aおよび第4の送気チューブ124aに対応する気体排出口24aを閉じる。
これにより、図16(c)に示すように、保持筐体110の第1の前進用噴射ノズル121aおよび第1の後進用噴射ノズル123aから空気が噴射され、この空気の噴射の反動により保持筐体110は左側に移動する。
(カプセル内視鏡80の右方向の移動)
また、カプセル内視鏡80をその右方向に移動させたい場合は、各送気チューブ121~124に対応する流量調整機構31~34の操作ワイヤ3eの操作により、それぞれの流量調整機構31~34の摺動ブロック3bを摺動させて、第1の送気チューブ121に対応する気体排出口21aおよび第3の送気チューブ123aに対応する気体排出口23aを閉じ、かつ、第2の送気チューブ122に対応する気体排出口22aおよび第4の送気チューブ124aに対応する気体排出口24aを開ける。
これにより、図16(d)に示すように、保持筐体110の第2の前進用噴射ノズル122aおよび第2の後進用噴射ノズル124aから空気が噴射され、この空気の噴射の反動により保持筐体110は右側に移動する。
さらに、カプセル内視鏡80を前進あるいは後進させる場合の4つの噴射ノズルの使い方と、カプセル内視鏡80を左側あるいは右側に移動させる場合の4つの噴射ノズルの使い方とを組み合わせることで、斜め方向の前進や後進など所望した方向への移動を簡単に行うことができる。
図17に、本発明の実施形態4によるカプセル内視鏡システム1000による大腸内を移動する状態の模式的に示す。そのため、本発明の内視鏡システムでは、様々な3次元的形状を有する大腸内の移動にも対応することが可能である。
このように、本実施形態4のカプセル内視鏡システム1000では、被検者の体の内腔内でカプセル内視鏡を操作性良く移動させることができ、これにより短時間でカプセル内視鏡による体内の撮影を行うことを可能となる。
本発明の実施形態4のカプセル内視鏡80を大腸内で移動可能にするための操作器具100および内視鏡システム1000を使用した場合と、従来の大腸検査する内視鏡との評価を表1に示す。
表1でも分かるとおり、従来の大腸内視鏡は検査時間、操作性には優れるが被験者の疼痛が伴うという欠点がある。また、従来の自走式でないカプセル内視鏡は蠕動による移動のため、検査時間が長くまた操作性が悪いという欠点がある。また、従来の自走式のカプセル内視鏡では、磁力方式の場合は外部からの駆動のため操作性が良くなく、キャタピラおよび/またはジェット噴射方式では腸管液や残渣が内視鏡内部に入り込むなどで検査時間が長くなるなどの欠点がある。
それに対して、本発明の内視鏡システム1000では、チューブからの流体の供給で内視鏡自体を駆動させるが、その際に腸管液や残渣が内視鏡内部に入り込む危険性がないため、検査時間が長くなることが防止でき、かつ装置の故障も抑制できる。また、内視鏡を外部から駆動するものではないため、操作性も良い。また、被験者の疼痛もないため、従来の内視鏡とは異なり、検査時間、操作性、疼痛という課題全てを解決する画期的な装置である。
また、カプセル内視鏡80の移動は、カプセル内視鏡80を保持する保持筐体110に接続された送気チューブからの空気の噴射により行われるので、カプセル内視鏡80を移動させるための大掛かりな設備は不要であり、また、送気チューブ121~124への空気の供給は、体外に配置される送気機器140により行われるので、圧縮空気を溜めるタンクを備えたカプセル内視鏡などと比べて安全に行われる。
その結果、大腸内でのカプセル内視鏡の移動を操作性良く行うことができ、しかもカプセル内視鏡の自走のための構造を安全性の高い簡単なものとでき、経済的な負担も少なく抑えることができる。なお、上述の説明において、本発明は、大腸を検査するカプセル内視鏡について説明しているが、大腸以外の生体内にも適用可能であることは言うまでもない。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。