JP7075878B2 - 耐火システム用フェノール樹脂発泡体 - Google Patents

耐火システム用フェノール樹脂発泡体 Download PDF

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Description

本発明は、耐火システム用フェノール樹脂発泡体、耐火システム用フェノール樹脂発泡体を含む積層体、耐火システム、及び耐火システム用フェノール樹脂発泡体の製造方法に関する。
LNG、LPG等の可燃性の液体を扱うプラントは、二次被害を最小限に食い止める為にタンク等の重要な設備には、可燃性液体が噴出して発生した炎に対しても一定時間設備を保護できる耐火システムが適用されている。
従来のプラントにおける耐火システムとしては、発泡ガラスや発泡ガラスとセラミックファイバーを組み合わせて外装鋼板で被覆する方法や、耐火性塗料で被覆する方法が用いられてきた。しかし発泡ガラスは重く脆いため施工性が悪く、また耐火塗料は断熱性を有さないため断熱が必要となる場合には別途断熱材と組み合わせて施工しなければならない等の課題があった。
ところでフェノール樹脂発泡体は、軽量でありつつ、耐熱性、耐火性及び施工性に優れた材料であり、繊維強化樹脂層や防火材層と組み合わせた構造体(特許文献1)や、プラント設備用途の耐火保冷構造(特許文献2)に用いられ、所望の性能を発現させ得ることが知られている。
特開平11-254567号公報 特開平10-196879号公報
しかしながら従来のフェノール樹脂発泡体を用いて特許文献1、2に記載の構造体を作り上げたとしても、噴出する炎に対するプラント用耐火に要求されるISO-22899-1試験における30分耐火に合格するには不十分であった。このような現状から、本試験に合格し得る、高い耐火性能を有するフェノール樹脂発泡体が望まれていた。
従って本発明の目的は、ISO-22899-1試験における30分耐火に合格する耐火性を有するプラント用耐火システムに用いる、耐火性に優れたフェノール樹脂発泡体を提供することにある。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
凹面を有し、密度が30kg/m3以上85kg/m3以下であるフェノール樹脂発泡体であって、前記凹面を水平面に相対させて静置して、水平面上の一点から水平面と直交する直線を前記凹面に向けて伸ばしたときの、前記凹面に達するまでの前記直線の長さのうち最大の長さをX、長さXの直線が到達する凹面上の点をZとし、前記フェノール樹脂発泡体を、200℃で24時間熱処理して、熱処理後の前記フェノール樹脂発泡体の凹面を水平面に相対させて静置し、前記点Zから、水平面に向けて水平面と直交する直線を伸ばしたときの、水平面に達するまでの前記直線の長さをYとしたとき、|X-Y|/Xが0.5以下である、厚さ0.2mm以上2.0mm以下の金属外装材が配置された耐火システム用のフェノール樹脂発泡体。
[2]
前記フェノール樹脂発泡体がフィラーを含有する、[1]に記載の耐火システム用フェノール樹脂発泡体。
[3]
独立気泡率が85%以上であり、脆性が50%以下、熱伝導率0.025[W/mK]以下である、[1]又は[2]に記載の耐火システム用フェノール樹脂発泡体。
[4]
防湿層を[1]乃至[3]のいずれかのフェノール樹脂発泡体の表面に配置させた、耐火システム用フェノール樹脂発泡体を含む積層体。
[5]
プラント設備の表面の少なくとも一部に、[1]乃至[3]の耐火システム用フェノール樹脂発泡体の単層体又は積層体、又は[4]の積層体が配置され、その上に厚さ0.2mm以上2.0mm以下の金属外装材が配置された、耐火システム。
本発明の耐火システム用フェノール樹脂発泡体は、軽量で施工性に優れるとともに、高い耐火性を有する。
耐火システム用フェノール樹脂発泡体の製造方法に含まれる発泡硬化工程を行う製造装置の一部の構成を示す概略図である。 本実施形態のフェノール樹脂発泡体の変形量の測定方法を説明する概略図である。 本実施形態の耐火システムにおけるフェノール樹脂発泡体の概略施工図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、耐火システム用フェノール樹脂発泡体を単に「フェノール樹脂発泡体」「発泡体」と称する場合がある。
以下、本発明の耐火システム用フェノール樹脂発泡体について説明する。
本実施形態の耐火システム用フェノール樹脂発泡体は、凹面を有し、密度が30kg/m3以上85kg/m3以下であり、前記凹面を水平面に相対させて静置して、水平面上の一点から水平面と直交する直線を前記凹面に向けて伸ばしたときの、前記凹面に達するまでの前記直線の長さのうち最大の長さをX、長さXの直線が到達する凹面上の点をZとし、その後、フェノール樹脂発泡体を200℃で24時間熱処理して、熱処理後の前記フェノール樹脂発泡体の凹面を水平面に相対させて静置し、前記点Zから、水平面に向けて水平面と直交する直線を伸ばしたときの、水平面に達するまでの前記直線の長さをYとしたとき、|X-Y|/Xが0.5以下であるフェノール樹脂発泡体の、単層体又は積層体上に、厚さ0.2mm以上2.0mm以下の金属外装材が配置された耐火システムに用いられるフェノール樹脂発泡体である。
上記フェノール樹脂発泡体は、後述するフェノール樹脂発泡板を施工対象のプラント設備に合わせて研磨・切削加工することにより得られる。施工対象のプラント設備は、具体的にはLNGタンク及び配管があり、これらプラント設備は凸面を有しており、フェノール樹脂発泡体はプラント設備の凸面に合うように凹面を有している。凹部の形状は、特に限定されず、本実施形態のフェノール樹脂発泡体を含む耐火システムを適用する設備の形状に合わせて適宜選択することができる。凹部の形状としては、例えば、球状、円筒状、楕円体状等の表面に対応する形状等が挙げられる。
上記フェノール樹脂発泡体を積層体とする場合、積層したフェノール樹脂発泡板を研磨切削加工して得てもよいし、研磨切削加工後のフェノール樹脂発泡体を積層して得てもよい。研磨・切削加工の手段は特に限定しないが、ワイヤーソー、バンドソー、フライス盤等を使用することが出来る。
フェノール樹脂発泡板又はフェノール樹脂発泡体を積層(貼合)する際には接合材として、例えば、ウレタン系接着剤、SBR系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、酢ビ系接着剤、でんぷん糊、各種粘着剤、ニカワ等を使用することができる。中でも、耐火という観点から、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、が好ましい。
フェノール樹脂発泡板を積層する際、フェノール樹脂発泡板の面材を除去すると後述する変形割合が、より小さくなるため好ましい。上記フェノール樹脂発泡体の形状は、凹部を有していれば特に限定されない。
フェノール樹脂発泡板は、例えば、フェノール樹脂と、界面活性剤と、硬化触媒と、発泡剤とを含有する発泡性フェノール樹脂組成物を第1の面材の上に吐出して、その後第2の面材で被覆して発泡、硬化させた、板状の発泡板である。
上記フェノール樹脂発泡板の原料であるフェノール樹脂は、典型的には、フェノール類とホルムアルデヒド類との縮合重合体である。上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒド類を原料として、アルカリ触媒により40℃以上、100℃以下の温度範囲で加熱してこれらを重合させることによって得られるフェノール樹脂等が挙げられる。
上記フェノール樹脂合成の際に好ましく使用されるフェノール類は、フェノール自体、及び他のフェノール類であり、他のフェノール類の例としては、レゾルシノール、カテコール、o-、m-及びp-クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p-tertブチルフェノール等が挙げられる。また、2核フェノール類も使用できる。
上記フェノール樹脂合成の際に使用されるアルデヒド類は、アルデヒド源となり得る化合物であればよく、ホルムアルデヒド自体、及び他のアルデヒド類やその誘導体が好ましい。他のアルデヒド類の例としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
重合によって得られる上記フェノール樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)は、500以上3000以下であることが好ましく、より好ましくは600以上2500以下であり、更に好ましくは900以上2500以下であり、特に好ましくは1500以上2400以下である。
上記フェノール樹脂のゲル浸透クロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、2.0以上7.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以上7.0以下であり、更に好ましくは3.0以上6.5以下である。分子量分布が好ましい範囲であると、後述する変形割合が小さくなる傾向がある。
発泡性フェノール樹脂組成物の一成分としての上記フェノール樹脂の40℃における粘度は、5000mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは7000mPa・s以上40000mPa・s以下であり、更に好ましくは7000mPa・s以上30000mPa・s以下であり、特に好ましくは7000mPa・s以上20000mPa・s以下である。
上記界面活性剤としては、一般にフェノール樹脂発泡板の製造に使用されるものが使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的である。上記界面活性剤としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体であるポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド)、アルキレンオキサイドとヒマシ油との縮合物、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物、アルキルエーテル部分の炭素数が14~22のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン化合物、及びポリアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の界面活性剤の質量割合は、特に制限はないが、好ましくは、フェノール樹脂100質量部に対して0.3質量部以上、10質量部以下である。
上記硬化触媒としては、フェノール樹脂を硬化できる酸性の硬化触媒であればよいが、無水酸硬化触媒が好ましい。無水酸硬化触媒としては、無水リン酸及び無水アリールスルホン酸が好ましい。無水アリールスルホン酸としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらを一種類で用いても、二種類以上組み合わせてもよい。
また、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o-メチロールフェノール)、p-メチロールフェノール等を添加してもよい。
また、上記硬化触媒及び硬化助剤を、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の硬化触媒の質量割合は、特に制限はないが、好ましくは、フェノール樹脂と界面活性剤との合計量100質量部に対して、3質量部以上、30質量部以下である。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の上記発泡剤としては、塩素化ハイドロフルオロオレフィン又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを用いることができる。
塩素化又は非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、例えば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン等が使用できる。
ハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩素化炭化水素として、ジクロロエタン、プロピルクロライド、イソプロピルクロライド、ブチルクロライド、イソブチルクロライド、ペンチルクロライド、イソペンチルクロライド等、炭素数が2~5であるものが好ましく用いられる。
この他にも、例えば、フッ素化炭化水素として、ジフルオロメタン、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン等が使用できる。その中で、オゾン破壊係数が低く、環境適合性に優れるイソプロピルクロライドは特に好ましく用いられる。
炭化水素としては、例えば、炭素数が3~7の環状または鎖状のアルカン、アルケン、アルキンを発泡剤として用いることができる。具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。その中でも、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン及びネオペンタン等のペンタン類、並びにノルマルブタン、イソブタン及びシクロブタン等のブタン類から選ばれる化合物が好ましい。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の上記発泡剤の質量割合は、フェノール樹脂と界面活性剤の合計量100質量部に対して、好ましくは3.0質量部以上、25.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以上、20.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以上、15.0質量部以下、特に好ましくは7.0質量部以上、13.0質量部以下である。
上記発泡性フェノール樹脂組成物は、発泡核剤を含んでいることが好ましい。発泡核剤としては、主に、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気などの、発泡剤よりも沸点が50℃以上低い低沸点物質のような気体発泡核剤を用いることができる。また、水酸化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、炭酸カルシウム粉、タルク、はくとう土(カオリン)、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉、ワラストナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏粉、ホウ砂、スラグ粉、アルミナセメント、ポルトランドセメント等の無機粉、および、フェノール樹脂発泡体の粉砕粉のような有機粉等の固体発泡核剤を添加することもできる。これらは、単独で使用してもよいし、気体及び固体の区別なく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。発泡核剤の添加タイミングは、発泡性フェノール樹脂組成物を混合する混合機内に供給されていればよく、任意に決めることができる。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の質量に対する気体発泡核剤の質量割合は、発泡剤の量を100質量%として、0.2質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下である。また、発泡剤の質量に対する固体発泡核剤の質量割合は、フェノール樹脂および界面活性剤との合計100質量部に対して、3.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4.0質量部以上8.0質量部以下である。
上記発泡性フェノール樹脂組成物は、無機又は有機の繊維状のフィラーを含んでいてもよい。上記フィラーとしては、例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維等があげられる。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中のフィラーの質量割合は、発泡性フェノール樹脂組成物100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。フィラーの質量割合が5質量部以上30質量部以下であると、フェノール樹脂発泡体の密度が適度になり、成形も良好で、フェノール樹脂発泡体の強度が増し、耐火性が向上する。
上記発泡性フェノール樹脂組成物は、上記成分の他に、添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤として尿素を添加する場合は、一般的に知られているようにフェノール樹脂の反応の途中または終点付近のタイミングで尿素を反応液に直接添加してもよいし、予めアルカリ触媒でメチロール化した尿素をフェノール樹脂と混合してもよい。尿素以外の添加剤としては、例えば、可塑剤として一般的に用いられているフタル酸エステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類などを用いることができる。また、脂肪族炭化水素、高沸点の脂環式炭化水素、またはそれらの混合物を添加剤として用いてもよい。
上記発泡性フェノール樹脂組成物中の添加剤の質量割合は、フェノール樹脂100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下が望ましい。添加剤の質量割合が20質量部以下であると、フェノール樹脂の粘度が最適となり、発泡、硬化時の破泡を防ぐ傾向にある。添加剤の質量割合が0.5質量部以上であると添加剤の効果が顕著になる傾向にある。
発泡性フェノール樹脂組成物を挟む第1の面材および第2の面材は、シート状の基材であり、生産時の面材破断を防止する目的で、可撓性を有していることが好ましい。可撓性を有する面材としては、合成繊維不織布、合成繊維織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布、ガラス繊維不織布、ガラス繊維混抄紙、紙類、金属フィルム等が挙げられる。
発泡時の発泡性フェノール樹脂組成物の面材からの滲み出し、及び発泡性フェノール樹脂組成物と面材との接着性の観点から、面材の目付け量は好ましくは15~200g/m2、より好ましくは15~150g/m2、更に好ましくは15~100g/m2、特に好ましくは15~80g/m2、最も好ましくは15~60g/m2である。
なお、フェノール樹脂発泡板の互いに対向する両面にそれぞれ設けられた第1の面材と第2の面材の種類、厚さ、目付量が全て同様の場合は、発泡性フェノール樹脂組成物の面材への染み込みの程度に差が生じ難いため、面材内に保持される量をコントロールしやすくなるため、好ましい。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の原料であるフェノール樹脂発泡板の製造方法は、吐出工程、発泡硬化工程、後硬化工程及び最終硬化工程を含む。
以下、図面を用いて、本実施形態のフェノール樹脂発泡体の原料であるフェノール樹脂発泡板の製造方法の一例を説明する。
吐出工程では、第1の面材(図1では下面材10)上に発泡性フェノール樹脂組成物12をノズル11より吐出し、吐出された発泡性フェノール樹脂組成物12に上方から第2の面材(図1では上面材13)により被覆する。
下面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する方法は、特に限定されない。例えば、上記吐出工程では、図1に示すように、下面材10を走行させている製造ラインのTD方向に並んだ複数のノズル11から発泡性フェノール樹脂組成物12を吐出させてもよい。
上面材により、発泡性フェノール樹脂組成物12を被覆する方法は、例えば以下の様にして行う。下面材10の走行方向におけるノズル11の下流には、下面材10に平行かつ当該走行方向に垂直な方向を軸に回動可能なロール14が設けられている。製造装置15において、上面材13は、下面材10及びロール14の間を通過した後、下面材10と同じ走行方向に走行する。ノズル11から吐出された発泡性フェノール樹脂組成物12は、最初に、走行している下面材10に接触する。
図1に示すように、連続的に吐出され続ける発泡性フェノール樹脂組成物は、下面材10によって、走行方向に移動して、ロール14の位置近傍で上面材13に接触し、上面材13により被覆される。
上記吐出工程における雰囲気温度は、30℃以上60℃以下であり、このときの相対湿度は、5%以上80%以下である。相対湿度は、好ましくは10%以上70%以下、より好ましくは15%以上60%以下である。温度が30℃以上60℃以下の範囲から外れると、独立気泡率等の物性が低下する傾向がある。また、相対湿度が5%未満であると、後述する変形割合が大きくなる。相対湿度が5%未満であると、発泡性フェノール樹脂組成物の表面からの水蒸気の蒸散速度が速くなり表面温度が低下する為、表面と内部の硬化反応の進行度の差が生じ、フェノール樹脂発泡板内に応力が発生する事が考えられる。また、吐出工程の雰囲気相対湿度が80%を超えると、発泡性フェノール樹脂組成物表面に水が凝縮して表面気泡構造を破壊して独立気泡率が低くなる。
下面材10及び上面材13に挟まれた発泡性フェノール樹脂組成物12は、続いて発泡硬化工程へと送られる。発泡硬化工程では、例えば、以下の方法により、積層体内の発泡性フェノール樹脂組成物12を発泡及び硬化させる。
図1に示すように、発泡硬化工程では、積層体が、第1のコンベア16及び第2のコンベア17の間に送られる。ロール14の位置から走行方向に搬送される積層体における下面材10が第1のコンベア16に接触し、上面材13が第2のコンベア17に接触するように、第1のコンベア16及び第2のコンベア17は構成されている。なお、第1のコンベア16及び第2のコンベア17は、定められた間隔で互いに平行でかつ対向している。第1のコンベア16及び第2のコンベア17は同じ長さであり、両者の間の積層体を走行方向に搬送する。更に、後述するように、第1のコンベア16及び第2のコンベア17は加熱されており、下面材10及び上面材13に挟まれた発泡性フェノール樹脂組成物12は、ロール14から、第1のコンベア16及び第2のコンベア17に近付くに連れて、雰囲気温度の上昇により発泡して厚みを増していく。
発泡硬化工程における雰囲気温度は、60℃以上90℃以下であり、この時の相対湿度は、5%以上85%以下である。相対湿度は、好ましくは10%以上80%以下、より好ましくは20%以上70%以下である。発泡硬化工程での温度が60℃以上90℃以下の範囲から外れると、発泡と硬化のバランスが崩れ、独立気泡率が低下し熱伝導率が高くなる。相対湿度が5%未満であると、後述する変形割合が大きくなる。相対湿度が5%未満であると、面材を介して発泡性フェノール樹脂組成物の表面からの水蒸気の蒸散速度が速くなり、上下面材に接触した表面と内部に硬化反応の進行度の差が生じ、フェノール樹脂発泡板内に応力が発生する可能性が考えられる。発泡硬化工程の雰囲気相対湿度が85%を超えると、硬化反応の進行が遅くなり、生産性が低下する。
上記発泡硬化工程においては、その後、下面材10及び上面材13に挟まれた発泡性フェノール樹脂組成物12は、フェノール樹脂発泡板となって、後硬化オーブン、ポストキュアオーブンへと送られ、さらに加熱される。
後硬化オーブンにより加熱を行う後硬化工程では、温度は80℃以上、110℃以下であり、相対湿度は5%以上80%以下である。相対湿度は、好ましくは10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下の雰囲気下で発泡性フェノール樹脂組成物12の後硬化が行われる。後硬化工程の温度が、80℃以上110℃以下の範囲を外れると、発泡と硬化のバランスが崩れ、独立気泡率が低下し熱伝導率が高くなる。また、相対湿度が5%未満であると、後述する変形割合が大きくなる。発泡硬化工程の相対湿度が5%未満であると、面材を介して発泡性フェノール樹脂組成物の表面からの水蒸気の蒸散速度が速くなる為、上下面材に接触した表面と内部の硬化反応の進行度に差が生じ、フェノール樹脂発泡板内に応力が発生すると考えている。雰囲気相対湿度が80%を超えると、硬化反応の進行が遅くなり、生産性が低下する。後硬化オーブン温度は単一の温度でもよく、80℃から110℃の範囲で、段階的に複数の温度に変更してもよい。
ポストキュアオーブンにより加熱を行う最終硬化工程では、温度は90℃以上、120℃以下であり、相対湿度は5%以上80%以下である。相対湿度は、好ましくは10%以上60%以下、より好ましくは20%以上50%以下の雰囲気下である。最終硬化工程の温度が90℃以上120℃以下の範囲を外れると、発泡と硬化のバランスが崩れ、独立気泡率が低下し、熱伝導率が高くなる。相対湿度が5%未満であると、後述する変形割合が大きくなる。最終硬化工程の相対湿度が5%未満であると、面材を介して発泡性フェノール樹脂組成物の表面からの水蒸気の蒸散速度が速くなる為、硬化反応が急激に進行し、上下面材に接触した面と内部の硬化反応の進行度に差が生じて、フェノール樹脂発泡板内に応力が発生する可能性がある。雰囲気相対湿度が80%を超えると、硬化反応の進行が遅くなり、生産性が低下する。部分硬化したフェノール樹脂発泡板はスペーサー又はトレイを用いて一定の間隔で重ねてもよい。ポストキュアオーブン内の温度が120℃を超えると、発泡板の気泡内部の発泡剤の圧力がコントロール出来ず、独立気泡が低下する。また、ポストキュアオーブンの温度は、90℃未満では、フェノール樹脂の反応が進まず、硬化が不十分となり脆性が大きくなる。
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の密度は、30kg/m3以上85kg/m3以下であり、好ましくは35kg/m3以上80kg/m3以下であり、より好ましくは40kg/m3以上75kg/m3以下である。
密度が30kg/m3よりも低いと強度が低く、運搬又は施工時に発泡体が破損しやすい。また、加熱による収縮応力に耐えることが出来ず、変形割合が高くなる。更に、密度が30kg/m3よりも低いと、気泡膜が薄くなる傾向にあり、気泡膜が薄いと炎にさらされたときに気泡膜が破れやすくなることから耐火性が低下する。一方、密度が85kg/m3より高いと、重くなり施工性が低下する。
上記密度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の好ましい独立気泡率は、85%以上であり、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは96%以上である。
独立気泡率が85%未満では、気泡に内包された発泡剤が空気と置換しやすくなることから長期間経過後の熱伝導率が高くなり、炎による熱が伝わりやすくなることから耐火性が低下する傾向がある。
上記独立気泡率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の好ましい脆性は、50%以下であり、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。
脆性が50%以下であると、加熱されたときに気泡構造を維持し、耐火性が向上する傾向がある。脆性の測定方法に関しては、後述する実施例において具体的に説明される。
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体の好ましい熱伝導率は、0.025[W/mK]以下であり、より好ましくは0.023[W/mK]以下、更に好ましくは0.021[W/mK]以下である。熱伝導率が0.025[W/mK]以下であると、熱が伝わり難く、耐火性が向上する傾向がある。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、上記凹面を水平面に相対させて静置して、水平面上の一点から水平面と直交する直線を前記凹面に向けて伸ばしたときの、前記凹面に達するまでの前記直線の長さのうち最大の長さをX、長さXの直線が到達する凹面上の点をZとし、前記フェノール樹脂発泡体を200℃で24時間の熱処理後に、熱処理後の前記フェノール樹脂発泡体の凹面を水平面に相対させて静置し、前記点Zから、水平面に向けて水平面と直交する直線を伸ばしたときの、水平面に達するまでの前記直線の長さをYとしたとき、|X-Y|/Xが、0.5以下であり、好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.3以下である。なお、熱処理は、フェノール樹脂発泡体の凹面を下にして、水平な床面又は棚板と相対させた状態で行う。
|X-Y|/Xが0.5を超えると、耐火試験の耐火時間が短くなる。
なお、本明細書において、上記|X-Y|/Xを、「変形割合」と称する場合がある。
上記|X-Y|/Xは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。また、上記|X-Y|/Xは、フェノール樹脂発泡板製造工程における、吐出工程、発泡硬化工程、後硬化工程、最終硬化工程での温度と相対湿度を好適範囲に調整することにより、上記範囲とすることができる。中でも、発泡硬化工程は重要である。ただし、フェノール樹脂発泡体の形状やサイズが変わると、変形割合が変わることが有る。
本実施形態の積層体は、上記フェノール樹脂発泡体の単層体又は積層体に、防湿層を積層させた積層体である。
本明細書において、上記フェノール樹脂発泡体の表面に、防湿層を配置させた積層体を「防湿積層体」と称する場合がある。
上記防湿層は、ペットフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム等の樹脂フィルムを使用する事ができる。また、これら樹脂フィルムにアルミを蒸着又は積層させたものを使うと防湿効果が高まるので好ましい。更に、これら樹脂フィルムは、接着剤が付いているとフェノール樹脂発泡体に接着施工しやすくなり好ましい。
防湿層は、フェノール樹脂発泡体の凹面と対向する面に配置すると外気からの水蒸気を遮断するので好ましい。防湿層は、フェノール樹脂発泡体を複数積層した場合にフェノール樹脂発泡体間に配置することもできる。
上記防湿層は、研磨・切削加工によってフェノール樹脂発泡板からフェノール樹脂発泡体を得る前に、フェノール樹脂発泡板上に配置させてもよいし、研磨・切削加工により得られたフェノール樹脂発泡体の表面上に配置してもよい。上記防湿層を積層する際に用いる接合材としては、前述の接合材が挙げられる。
本実施形態の耐火システムは、プラント設備の表面上の少なくとも一部に、上記フェノール樹脂発泡体の単層体若しくは積層体、又は上記防湿積層体が配置され、更にその上に厚さ0.2mm以上2.0mm以下の金属外装材が配置されている。
上記フェノール樹脂発泡体は2層以上積層して使用することが出来るが、フェノール樹脂発泡体1層の厚みが厚いと耐火性がより向上する。フェノール樹脂発泡体1層の厚みは、50mm以上が好ましく、より好ましくは100mm以上、更に好ましくは150mm以上である。ここで言う、フェノール樹脂発泡体の厚みとは、凹面から、凹面に相対する面までの距離のうち最短の長さを言う。
上記金属外装材(金属外装鋼板)は、特に限定されないが、錆び難い特性からステンレス外装鋼板が好ましく、SUS304、SUS310、SUS316、SUS347、SUS410、SUS430、SUS444、SUS329J4L等が好ましく使用できる。
上記金属外装鋼板の厚みは、0.2mm以上2.0mm以下であり、好ましくは0.4mm以上1.6mm以下であり、更に好ましくは0.5mm以上1.2mm以下である。金属外装鋼板の厚みが0.2mmより薄いと、噴出する炎により外装鋼板が変形して耐火性が低下する。また、金属外装鋼板の厚みが2.0mm以上であると、耐火システムが重くなり施工性が低下する。
上記耐火システムにおいて、上記フェノール樹脂発泡体の単層体又は積層体、更には防湿積層体と、上記金属外装材とは、接していてもよいし、間に他の層を介していてもよい。
上記耐火システムは、後述の耐火試験において、耐火時間が30分以上である。耐火時間は、好ましくは32分以上、より好ましくは34分以上である。
本明細書において、耐火試験は、ISO-22899-1「Determination of the resistance to jet fires of passive fire protection materials」に則り、パイプ形状試験体で実施される試験を指す。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例中のフェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体の組成、構造、特性に関して、以下の項目の評価を行った。なお、評価サンプルは、フェノール樹脂発泡板から切出した。
(1)密度
JIS-K-7222に従い測定した。フェノール樹脂発泡板から切り出した20cm角の評価サンプルを試料として用いた。発泡体試料の質量と見かけ容積を測定し、これらの値から密度を求めた。
(2)脆性
JIS-A-9511記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。
フェノール樹脂発泡板から、一辺25±1.5mmの立方体12個を切り出して評価サンプルとした。23℃相対湿度50%で5日間乾燥した、比重0.65、一辺19±0.8mmの樫製の立方体24個と評価サンプル12個を、埃が箱の外へ出ないように密閉できる内寸191×197×197mmの樫製の木箱に入れ、毎分60±2回転の速度で600±3回転させる。回転終了後、箱の中身を、呼び寸法9.5mmの網に移し、ふるい分けをして小片を取り除き、残った試験片の質量を測定し、試験前の評価サンプル質量から減少した質量の割合を百分率で示し、これを脆性(%)とした。
(3)平均気泡径
JIS-K-6402記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。
フェノール樹脂発泡板から評価サンプルを切削し、切削断面を50倍に拡大した写真を撮影した。得られた写真の任意の位置に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値を求めた。この平均値で1,800μmを除した値を平均気泡径とした。
(4)独立気泡率
ASTM-D-2856-94(1998)A法を参考に以下の方法で測定した。
フェノール樹脂発泡板から、約25mm角の立方体を6個切り出した。各辺の長さをノギスにより測定し、見かけ体積(V1:cm3)を計測すると共に試片の質量(W:有効数字4桁、g)を測定した。引き続き、エアーピクノメーター(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し、ASTM-D-2856のA法に記載の方法に従い、試片の閉鎖空間体積(V2:cm3)を測定した。また、上述の平均気泡径の測定法に従い平均気泡径(t:cm)を計測した。既に測定した各辺の長さより、試片の表面積(A:cm3)を算出した。求められたt及びAを式:VA=(A×t)/1.14に代入して、立方体表面にある切断された気泡の開孔体積(VA:cm3)を算出した。また、固形フェノール樹脂の密度を1.3g/mlとみなして、立方体に含まれる気泡壁を構成する固体部分の体積(VS:cm3)を、式:VS=試片質量(W)/1.3により、算出した。
下記式により独立気泡率を算出した。
独立気泡率(%)=[(V2-VS)/(V1-VA-VS)]×100
6個の独立気泡率を測定し、それらの平均値を独立気泡率とした。
(5)熱伝導率
フェノール樹脂発泡板から直径60mm、厚さ5mmの円板を切り出し、小型熱伝導率測定装置HC-110(英弘精機株式会社製)で、低温側13℃、高温側33℃、の条件で測定した。
(6)フェノール樹脂の粘度
回転粘度計(東機産業(株)製、R-100型、ローター部は3°×R-14)を用い、40℃で3分間安定させた後の粘度の値を、測定値とした。
(7)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び分子量分布Mw/Mn
以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の測定を行った。得られたクロマトグラムと、後に示す3つの標準物質の溶出時間と分子量の関係によって得られた検量線より、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを求めた。また、これらの値から分子量分布Mw/Mnを算出した。
前処理:
フェノール樹脂約10mgをN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株製、高速液体クロマトグラフ用)1mlに溶解し、0.2μmメンブレンフィルターでろ過して測定溶液として用いた。
測定条件:
測定装置:Shodex System21(昭和電工株式会社社製)
カラム:Shodex asahipak GF-310HQ(7.5mmI.D.×30cm)
溶離液:臭化リチウムを濃度0.1質量%でN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株製、高速液体クロマトグラフ用)に溶解した溶液を溶離液として使用した。
流量:0.6ml/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
標準物質:標準ポリスチレン(昭和電工株式会社製 Shodex standard SL-105)、2-ヒドロキシベンジルアルコール(シグマアルドリッチ社製 99%品)、フェノール(関東化学株式会社製 特級)
(8)変形割合
フェノール樹脂発泡体を、23℃相対湿度50%の環境で7日間養生する。養生後、図2に示すように、フェノール樹脂発泡体18の凹面が水平板19の水平面に相対するように置いたときに、水平面上の一点から水平面と直交する直線を前記凹面に向けて伸ばして、前記凹面に達するまでの前記直線の長さのうち最大の長さを測定し、これをXとする。長さXの直線が到達する凹面上の点を特定し、これをZとする。次に、前記フェノール樹脂発泡体の凹面を下向きにして水平な床面と相対するようにオーブン内に静置して、200℃で24時間の熱処理を行い、熱処理後に、フェノール樹脂発泡体を23℃相対湿度50%の環境で7日間養生する。養生後の前記フェノール樹脂発泡体の凹面を水平面に相対させて静置し、前記点Zから、水平面に向けて水平面と直交する直線を伸ばしたときの、水平面に達するまでの前記直線の長さをYとする。そして、|X-Y|/Xの値を算出し、変形割合とする。
(9)耐火時間
ISO-22899-1「Determination of the resistance to jet fires of passive fire protection materials」に則り、次のように実施した。
試験体は、長さ2500mm、外径42.4mm、肉厚3.2mmのカーボンスチールパイプの外周に、50mm厚みのフェノール樹脂発泡体を3層積層又は150mm厚みのフェノール樹脂発泡体1層を配して、防湿シート(IWR-701 PAP Butyl Rubber Tape :INSU-W-RAPID社製)を継ぎ目50mmのオーバーラップで巻いた。その上に所定厚みのSUS304製鋼板を継ぎ目50mmのオーバーラップで巻いて、20mm幅0.5mm厚みのSUS304製バンドを250mm間隔で巻いて、SUS304製のラチェット式締め付け金具で固定した。
温度は、カーボンスチールパイプ表面の火炎を当てる中央部と、そこから300mm間隔でそれぞれの端部に向かって2箇所の合計5箇所において、それぞれその円周上に等間隔で2箇所を加え、合計15箇所を測定した。
上記の試験体を、1400mm×1400mmのフレームリサイクルチャンバーの高さ中央部に横たえ、炎噴出ノズルと試験体の距離は1000mmに固定した。
炎は、燃料のプロパンガス流量が300g/秒となるように調整後、試験体に向けて噴出し、炎噴出時より15箇所のパイプ表面温度測定点の何れかが500℃に達するまでの時間を計測し耐火時間とした。
<フェノール樹脂Iの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3500kgと99質量%フェノール2510kg(不純物として水を含む)を仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで48質量%水酸化ナトリウム水溶液をpHが8.7になるまで加えた後85℃まで昇温して、反応を行わせた。反応液のオストワルド粘度が190平方ミリメートル毎秒(=190mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、フェノール樹脂中の尿素含有量が4.6質量%となるように尿素を添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.3になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によって濃縮処理し、40℃における粘度が9,800mPa・s、のフェノール樹脂を得た。得られたフェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)は2050で、分子量分布(Mw/Mn)は6.2であった。これを、フェノール樹脂Iとする。
<フェノール樹脂IIの合成>
反応液のオストワルド粘度が59平方ミリメートル毎秒(=59mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で反応液を冷却した以外は、フェノール樹脂Iと同様にしてフェノール樹脂を得た。これを、フェノール樹脂IIとする。フェノール樹脂IIの40℃における粘度は、10000mPa・s、重量平均分子量(Mw)は570、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
<フェノール樹脂発泡板Aの製造>
合成したフェノール樹脂I100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体とポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを質量比率でそれぞれ50%ずつ含有する組成物を3.0質量部の割合で、フェノール樹脂Iに混合した。
その後、フェノール樹脂I100質量部に対して、発泡剤としてシクロペンタン(cP)50質量%とイソブタン(iB)50質量%との混合物(これを、発泡剤aとする。)を6.5質量部、発泡核剤として窒素を発泡剤に対して0.40質量%、更に、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物10質量部を、上述のフェノール樹脂及び界面活性剤の混合物に添加し、30℃に温調した回転数可変式のミキシングヘッドに供給した。最終的な混合物である発泡性フェノール樹脂組成物をトーナメント配管で分配し、移動する面材上に吐出した。吐出工程から被覆工程までの雰囲気温度は40℃で相対湿度は40%であった。この時の発泡硬化工程である第1のコンベアと第2のコンベアの間隔は54mm、コンベア温度と雰囲気温度は80℃で雰囲気の相対湿度は40%であった。その後、90℃相対湿度40%のオーブンで5分間後硬化させ、更に、100℃相対湿度30%のオーブンで2時間の加熱によりフェノール樹脂組成物を最終硬化させて、板状のフェノール樹脂発泡板を得た。面材としては、ポリエステル不織布(エルタスE05030:旭化成株式会社製)、目付量30g/m2を使用した。これを、フェノール樹脂発泡板Aとする。
<フェノール樹脂発泡板Bの製造>
ガラス繊維(CS 3 J-888 日東紡績株式会社製)をフェノール樹脂100質量部に対して、7質量部添加した以外は、フェノール樹脂発泡板Aと同様にしてフェノール樹脂発泡板を得た。これを、フェノール樹脂発泡板Bとする。
<フェノール樹脂発泡板Cの製造>
発泡剤を、シクロペンタン(cP)25質量%と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO)75質量%との混合物(これを発泡剤bとする。)に変えて、添加部数を8.2質量部に変えた以外は、フェノール樹脂発泡板Aと同様にしてフェノール樹脂発泡板を得た。これを、フェノール樹脂発泡板Cとする。
<フェノール樹脂発泡板D~Oの製造>
以下同様に、フェノール樹脂、発泡剤組成、製造工程の温度と相対湿度条件を表1に示すように調整して、フェノール樹脂発泡板DからOを得た。
(実施例1)
フェノール樹脂発泡板Aを1820mm×910mmの大きさに切断し、上下面材を剥いで、ロールコーターにより、エポキシ接着剤を200g/m2上面に塗工し、上下面材を剥いだもう一枚のフェノール樹脂発泡板を重ねて、フェノール樹脂発泡板と同じ大きさの1600kgの板を載せ、24時間静置した。
この面材を除去して2枚貼合したフェノール樹脂発泡板積層体から、ワイヤーソーにより図3に示す円筒状のカーボンスチールパイプ20を覆う厚さ50mmの3種類の曲率半径が異なる凹部を有するフェノール樹脂発泡体18を成形した。上述の耐火試験において、カーボンスチールパイプ20を覆うフェノール樹脂発泡体18を、パイプの外側に向けて、フェノール樹脂発泡体18-1、18-2、及び18-3とした(図3(a))。
このフェノール樹脂発泡体を用いて、上述の耐火試験を行った。鋼板厚みは0.5mmであった。評価結果を表2に示す。
(実施例2)
フェノール樹脂発泡板Aの面材を除去せずにフェノール樹脂発泡板Aを貼合した以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得て、実施例1と同様に評価を行った。鋼板厚みは0.5mmであった。評価結果を表2に記載した。
(実施例3)
フェノール樹脂発泡板Bを用いた以外は、実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体を得て、耐火試験を行った。鋼板厚みは0.25mmであった。評価結果を表2に示す。
(実施例4)
フェノール樹脂発泡板Aの面材を除去し、4枚積層した。このフェノール樹脂発泡板積層板からワイヤーソーにより厚さ150mmのフェノール樹脂発泡体を得た。この、フェノール樹脂発泡体を用いて、上述の耐火試験を行った(図3(b))。鋼板厚みは0.8mmであった。評価結果を表2に示す。
(実施例5~10、比較例1~7)
実施例5から10及び比較例1から7についても同様に夫々表2に示すフェノール樹脂発泡板を用いて厚さ150mmのフェノール樹脂発泡体を作製し、鋼板厚み0.5mmで耐火試験を実施した。評価結果を表2に示す。
Figure 0007075878000001
Figure 0007075878000002
実施例、比較例のフェノール樹脂発泡体は軽量であり、耐火試験の試料を作製する際の施工が容易であった。
10 下面材
11 ノズル
12 発泡性フェノール樹脂組成物
13 上面材
14 ロール
15 製造装置
16 第1のコンベア
17 第2のコンベア
18 フェノール樹脂発泡体
18-1 フェノール樹脂発泡体
18-2 フェノール樹脂発泡体
18-3 フェノール樹脂発泡体
19 水平板
20 カーボンスチールパイプ

Claims (5)

  1. 凹面を有し、密度が30kg/m3以上85kg/m3以下であるフェノール樹脂発泡体であって、前記凹面を水平面に相対させて静置して、水平面上の一点から水平面と直交する直線を前記凹面に向けて伸ばしたときの、前記凹面に達するまでの前記直線の長さのうち最大の長さをX、長さXの直線が到達する凹面上の点をZとし、前記フェノール樹脂発泡体を、200℃で24時間熱処理して、熱処理後の前記フェノール樹脂発泡体の凹面を水平面に相対させて静置し、前記点Zから、水平面に向けて水平面と直交する直線を伸ばしたときの、水平面に達するまでの前記直線の長さをYとしたとき、|X-Y|/Xが0.5以下である、厚さ0.2mm以上2.0mm以下の金属外装材が配置された耐火システム用のフェノール樹脂発泡体。
  2. 前記フェノール樹脂発泡体がフィラーを含有する、請求項1に記載の耐火システム用フェノール樹脂発泡体。
  3. 独立気泡率が85%以上であり、脆性が50%以下、熱伝導率0.025[W/mK]以下である、請求項1又は2に記載の耐火システム用フェノール樹脂発泡体。
  4. 防湿層を請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体の表面に配置させた、耐火システム用フェノール樹脂発泡体を含む積層体。
  5. プラント設備の表面の少なくとも一部に、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の耐火システム用フェノール樹脂発泡体の単層体又は積層体、又は請求項4記載の積層体が配置され、その上に厚さ0.2mm以上2.0mm以下の金属外装材が配置された、耐火システム。
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