JP7073563B1 - Ni基合金及びこれからなる熱処理炉用部品 - Google Patents
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Abstract
Description
質量%にて、
Al:8.0%~16.0%、
Zr:0.01%以上、
B:0.001%以上、及び、
残部Ni及び不可避的不純物からなり、
Al:12.0%超~13.5%未満を除き、
ZrとBは合計量で3.0%以下である。
析出したNi3Al、Ni、NiAl、NiZr化合物の面積率は、
0.2<(Ni+NiAl+NiZr化合物)/Ni3Al<2.0とすることができる。
電極材の製造に用いられる熱処理炉用部品であって、
上記記載のNi基合金からなる。
電極材の製造に用いられる熱処理炉用部品であって、
上記記載のNi基合金からなる管体どうしを溶接接続してなる。
上記を達成するため、本発明のNi基合金は、以下の組成を含有する。なお、特に明示しない限り、「%」は質量%である。
Alは、Ni基合金に含まれるNi相の析出、また、金属間化合物であるNi3Al相やNiAl相の析出に寄与する。上記のとおり、耐アルカリ腐食性を向上させるためには、Ni3Al相を多く析出させる必要があり、Alは、少なくとも8.0%以上、16.0%以下の範囲で含有させる。望ましくは、Alは9.0%以上である。一方で、Ni3Al相が多く析出すると、溶接性は低下する。この溶接性の低下を防止するために、Ni基合金にNi相又はNiAl相を析出させる必要がある。しかしながら、過度のNi相又はNiAl相の析出は耐アルカリ腐食性を低下させる。そこで、耐アルカリ腐食性を確保しつつ、溶接性を具備する程度のNi相を析出させるために、Alの含有量は12.0%以下、より望ましくは11.5%以下とする。また、耐アルカリ腐食性を確保しつつ、溶接性を具備する程度のNiAl相を析出させるために、Alの含有量は13.5%以上とする。すなわち、耐アルカリ腐食性と溶接性の観点から、好適にNi相、Ni3Al相、NiAl相を析出するために、Alの含有量は、8.0%~16.0%、ただし、12.0%超~13.5%未満を除く範囲とする。望ましくは、Alの下限は9.0%であり、より望ましくは9.5%である。
Niは、高い高温延性を具備するNi基合金の基本元素である。Niは、Alと結合して金属間化合物Ni3Alを生成させて、高温における耐アルカリ腐食性の向上に寄与する。また、Ni相やNiAl相は溶接性の向上に寄与する。
Zrは、Ni基合金の溶接割れ感受性を改善するため、0.01%以上を含有する。Zrは、Ni基合金の粒界に分布するため、結晶粒界における割れ感受性を低下させることができる。また、Zrは、Niとの複合添加により、耐アルカリ腐食性を高め、また、高温強度や延性を向上させる。一方で、Zrの含有量を過度に多くしても、溶接割れ感受性の改善効果は飽和するため、上限は次に説明するBとの合計量で3.0%以下、望ましくは2.0%以下とする。Zrの下限は0.8%、上限は2.0%が好適である。望ましくは、Zrの上限は1.8%である。
Bは、粒界に分布して、延性を高めると共に、高温でのクリープ破断強度を向上させるため、選択的に含有させる。これらの効果は、Bが微量であっても得られるため、0.001%以上含有させる。Bの含有量は、上記Zrの合計量で3.0%以下、望ましくは2.0%以下とする。Bの含有量は、より好適には0.003%以上、望ましくは0.01%以上とする。Bの上限は0.1%が好適であり、望ましくは0.025%、より望ましくは0.02%である。
不可避的不純物として、通常の溶製技術上不可避的に混入する元素として、Ti、Ta、W、Si、Mn、Fe、S、Mg、Cu、Zn,O、P、N、Hを例示できる。これらの元素は、夫々最大0.5%以下、望ましくは合計量で0.5%以下であれば、その含有が許容される。一方で、本発明のNi基合金を電極材である正極材料と接触するレトルトの如き熱処理炉用部品に用いる場合、正極材料と化学反応するCrの添加は許容されない。すなわち、本発明のNi基合金はCrを含まない構成とすることが望ましい。
表1に示すとおり、発明例1~20は、本発明範囲に含まれるNi基合金である。比較例1はAlが本発明範囲(Al:8.0%以上)から外れるもの、比較例2~4はZr+Bの合計量が本発明範囲(Zr+B:3.0%以下)を超えるもの、比較例5~7はAlが本発明範囲(Al:12.0%超~13.5%未満を除く)から外れるもの、さらに、比較例8は、Alが本発明範囲(Al:16.0%以下)を超えるものである。
各々の成分元素が後述する表1に掲げる含有量となるように、各々の成分元素の原材料を配合した。配合された原材料をアルミナ製るつぼ(内径185mm×高さ330mm)に入れ、高周波溶解炉にてアルゴンシールを行なった状態で溶解した。溶解温度は、たとえば1600~1720℃とした。次に、Ni基合金の溶湯を取鍋に移し、大気雰囲気下で金型遠心鋳造(表1中「金型遠心」)、または、砂型を用いた静置鋳造(同「砂型静置鋳造」)を行なってNi基合金のインゴットを作製した。得られたインゴットから各種試験用のテストピースを作製した。
テストピースの表面に析出するNi系金属間化合物(Ni3Al相、NiAl相、Ni5Zr、Ni7Zr2などNiZr化合物相)およびNi相の析出相を同定した。
得られたインゴットの製造性を、鋳造性と加工性で評価した。先に結果を表3に示す。
鋳造性は、得られた試験片の表面状態を観察することで評価した。鋳造性は「1」、「2」、「5」で点数化した。点数は低いものほど鋳造性にすぐれることを意味し、点数「5」は実製品として使用が困難な供試例である。具体的には、鋳造時に異物噛みや引け巣等が発生するが、加工等で除去可能な場合、鋳造性の点数を「1」とした。一方、鋳造時に異物噛みや引け巣、偏析等が発生するが、加工等で除去可能な場合、鋳造性の点数を「2」、鋳造時に異物噛み、引け巣および偏析等の鋳造不良が発生し易く、肉厚中央部にもこれらが存在して加工等で除去できない場合、鋳造性の点数は「5」とした。表3中「鋳造性(点数)」に示すように、比較例8のみ鋳造性が点数「5」であり、その他の発明例、比較例は何れも鋳造性の点数が「1」又は「2」であり、鋳造品質の問題はなかった。比較例8の鋳造性が悪いのは、Alが過多のためである。
加工性は、得られたインゴットに切削加工を施し、加工時間又は加工ツールの消耗状況で評価した。加工性も「1」、「2」、「5」で点数化した。点数は低いものほど鋳造性にすぐれることを意味し、点数「5」は実製品として使用が困難な供試例である。具体的には、加工に時間が掛からず、加工ツールの消耗もない場合、加工性の点数を「1」とした。一方、加工に時間が掛かり、加工ツールの消耗が激しいが加工可能な場合、加工性の点数を「2」、加工ツールの消耗が激しく、加工が不能な場合、加工性の点数を「5」とした。表3中「加工性(点数)」に示すように、比較例8のみ加工性の点数が「5」であった。その他の発明例、比較例は何れも加工性の点数が「1」又は「2」であり、加工性に問題はなかった。
上記した鋳造性と加工性の点数から製造性を評価した。製造性評価は、鋳造性と加工性の点数を加算し、その和が「2」のものを評価「◎(excellent)」、「3」又は「4」のものを評価「○(good)」、和が「5」以上を評価「×(bad)」とした。結果を表3中、「製造性」の「評価」に示す。
溶接性は、ビード置き試験により判定した。ビード置き試験は、テストピースの供試面にグラインダーにより機械加工を施し、Ni90.0%以上の溶接棒を用いたTIG溶接によりビードを形成し、その表面状態を観察することで実施した。ビードはストレートビード、ビード長は50~100mmである。
なお、ビード置き試験に際し、予熱、予後熱なしでも溶接は可能であるが、予熱、予後熱を施した方が良好な溶接性を示す。予熱温度と予後熱の有無を表3に示す。予熱温度「30℃」は予熱なし(室温)であり、予熱温度が30℃超のものは、予熱を行なっている。また、予熱を行なった発明例と比較例については、ビード形成の後、予後熱を加えた。
ビードが形成された各テストピースに浸透探傷試験(PT:liquid Penetrant Testing)を実施した。そして、ビード及び熱影響部から浸み出す浸透液(指示)の有無、また、その位置により溶接試験結果を得て点数化した。具体的には、図1(a)に示すように、ビード10及びビード10以外の部分に点状欠陥や割れがないものは溶接性の点数を「1」とした。また、図1(b)に示すように、点状欠陥12があっても、ビード10の最終位置であるクレータ11にのみ存在する場合、または、ビード10の横のみに存在する場合は、溶接性の点数を「2」とした。一方で、図1(c)に示すように、クレータ11以外の部分に割れ13が存在する場合は許容されないため、溶接性の点数を「5」とした。
耐アルカリ腐食性試験は、次の要領で実施した。まず、各々のテストピースから、縦幅10mm×横幅40mm×厚さ10mmの板状の観察試験片を2個ずつ作製し、試験面を#40の研磨紙で研磨した。そして、リチウム化合物を主体とするアルカリ金属塩などのアルカリ腐食試験用粉末を試験面に載せた各々のテストピースを90%以上の酸素雰囲気下、900℃で5時間焼成した。試験面に新たなアルカリ腐食性の粉末を毎回載せ替えて、この焼成を10回繰り返した。すべての焼成終了後、各々の観察試験片の中央部を切断して、切断面を鏡面研磨し、シュウ酸浴中で電解することによりエッチングした。エッチングした切断面は、エタノールで脱脂して乾燥させた。その後、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製)で切断面を観察し、試験面から厚さ方向に伸びるアルカリ腐食跡として減肉量及び粒界差込腐食長さの合計を腐食深さとして測定し、点数化した。腐食深さが1.0mm未満である場合を点数「1」とした。また、腐食深さが1.0mm以上且つ1.5mm未満である場合は点数「2」とした。一方、アルカリ腐食跡の程度が著しくて腐食深さの測定が不可能である場合、又は、腐食深さが1.5mm以上である場合、実製品として使用できないためアルカリ腐食試験の点数を「5」とした。「腐食深さ(mm)」と共に、表3に「耐アルカリ腐食性」の欄に「点数」で示す。なお、本試験数値は一例であり、焼成条件の違いやアルカリ腐食試験用粉末の種類等により腐食深さの数値(mm)にバラつきは発生するが、同様の傾向が得られる。
実施例2で実施した「溶接性」と「耐アルカリ腐食性」の試験について、合計評価を行なった。表3を参照すると、「溶接性」と「耐アルカリ腐食性」の評価が共に「◎(excellent)」のものはなかった。そこで、溶接性試験結果の点数と、耐アルカリ腐食性試験の点数を合計し、その合計が「3」以下の場合を合計評価「◎(excellent)」、合計が「4」の場合を合計評価「○(good)」、合計が「5」以上の場合を合計評価「×(bad)」とした。結果を表4中、合計評価(溶接性+耐アルカリ腐食性)に示す。
上記した「溶接性と耐アルカリ腐食性」の「合計評価」に加え、「製造性」を含めた総合評価を行なった。総合評価は、「溶接性」、「耐アルカリ腐食性」、「製造性」で夫々数値化した点数の合計で評価した。具体的には、点数の合計が「5」以下の場合を総合評価「◎(excellent)」、合計が「6」または「7」の場合を総合評価「○(good)」、合計が「8」以上を総合評価「×(bad)」とした。結果を表4中「総合評価」に示す。
11 クレータ
12 点状欠陥
13 割れ(クレータ以外)
20 浸透液の浸み出し
30 Ni基合金
Claims (6)
- 質量%にて、
Al:8.0%~16.0%、
Zr:0.68%以上2.999%以下、
B:0.001%以上0.033%以下、
残部Ni及び溶製技術上不可避的に混入する不可避的不純物からなり、
Al:12.0%超~13.5%未満を除き、
ZrとBは合計量で3.0%以下である、
耐アルカリ腐食性と溶接性にすぐれるNi基合金。 - Alの含有量は、質量%にて、9.5%~11.5%である、
請求項1に記載のNi基合金。 - 表面に少なくともNi3Al相と、Ni相、NiAl相、又は、NiZr化合物相の何れかが析出しており、
析出したNi3Al相、Ni相、NiAl相、NiZr化合物相の面積率は、
0.2<(Ni相+NiAl相+NiZr化合物相)/Ni3Al相<2.0である、
請求項1又は請求項2に記載のNi基合金。
- Crを含まない、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のNi基合金。 - 電極材の製造に用いられる熱処理炉用部品であって、
請求項1乃至請求項4の何れかのNi基合金からなる、
熱処理炉用部品。 - 電極材の製造に用いられる熱処理炉用部品であって、
請求項1乃至請求項4の何れかのNi基合金からなる管体どうしを溶接接続してなる、
熱処理炉用部品。
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