以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示される合繊糸用スプライサ1は、合成繊維からなる第1糸(一方の糸)Y1(図6参照)の糸端と合成繊維からなる第2糸(他方の糸)Y2(図6参照)の糸端との糸継ぎを行う装置である。本実施形態では、合繊糸用スプライサ1は、太さが55dtex以下であり、且つ、フィラメント数が10f以下である第1糸Y1及び第2糸Y2の糸継ぎを行う。合繊糸用スプライサ1は、例えば、供給ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取機において、一の供給ボビンの糸の終端と他の供給ボビンの糸の始端との糸継ぎを行うために使用される。本実施形態では、合繊糸用スプライサ1は、いわゆるハンドスプライサである。
合繊糸用スプライサ1は、本体3と、糸継機構5と、を備えている。本体3は、糸継機構5を保持する筐体である。本体3は、第1本体部3aと、第2本体部3bと、から構成されている。本体3は、側面から見て、例えば略L字形状を呈している。
第1本体部3aは、合繊糸用スプライサ1を使用する際に、作業者によって把持される部分である。第1本体部3aは、例えば、略直方体形状を呈している。第1本体部3aには、操作部7が設けられている。操作部7は、合繊糸用スプライサ1において糸継作業を行う際に操作されるボタンである。本実施形態では、操作部7は、第1本体部3aの長手方向の一端部側(第2本体部3b側)において、第1本体部3aが作業者に把持されたときに人差し指の稼動範囲内に位置する部位に設けられている。
第1本体部3aの下端部(長手方向の他端部)には、接続部9が設けられている。接続部9には、圧縮空気(流体)(以下、単に「空気」とも称する。)を供給するチューブ(図示省略)が接続される。第1本体部3aには、操作部7の動作に連動するスイッチ、及び、接続部9を介して供給された圧縮空気を分岐する部品等が収容されていてもよい。
第2本体部3bには、糸継機構5が設けられている。第2本体部3bは、例えば、略直方体形状を呈している。第2本体部3bは、第1本体部3aの一端部に設けられている。具体的には、第2本体部3bは、第2本体部3bの長手方向と第1本体部3aの長手方向とが所定の角度(例えば90°以下)を成すように、第1本体部3aと一体に設けられている。第2本体部3bは、糸継機構5を露出させている。第2本体部3bには、後述する第1挟持機構20及び第2挟持機構30を駆動させる駆動部等(例えば、シリンダ等)が収容されている。
図2又は図3に示されように、糸継機構5は、糸継部10と、第1挟持機構20と、第2挟持機構30と、を備えている。第1挟持機構20及び第2挟持機構30は、糸継部10のチャンバー14を挟む位置に設けられている。
図4に示されるように、糸継部10は、糸継ノズル12と、スリット13と、チャンバー(通路)14と、空気流路16と、を有している。
糸継ノズル12は、金属又はセラミック材料で形成されているブロック体である。糸継ノズル12は、上面12aと、一対の側面12b,12cと、を有している。スリット13は、糸継ノズル12に設けられている。スリット13は、チャンバー14に連通しており、チャンバー14に糸を導入する部分である。スリット13は、糸継ノズル12の上面12aとチャンバー14とにわたって形成されている。スリット13の幅は、例えば、0.4mmである。スリット13の上部には、傾斜面15が設けられている。傾斜面15は、スリット13に糸を案内する。傾斜面15は、糸継ノズル12の上面12aからスリット13に向かって先細りとなるテーパー状を呈している。
チャンバー14は、第1糸Y1及び第2糸Y2が挿通される通路である。図5に示されるように、チャンバー14は、糸継ノズル12の一方の側面12bと他方の側面12cとを貫通している。すなわち、チャンバー14の貫通方向は、一対の側面12b,12cの対向方向であり、スリット13に対する第1糸Y1及び第2糸Y2の挿入方向に直交している。チャンバー14は、第1糸Y1及び第2糸Y2が挿通可能である空間を形成している。図4に示されるように、チャンバー14は、側面12b,12cから見て、円形状を呈している。本実施形態では、チャンバー14は、真円形状を呈している。チャンバー14の直径R1は、φ3.0mm以上φ4.0mm以下である。
空気流路16は、チャンバー14に供給する空気を流通させる。空気流路16は、チャンバー14に開口する噴射孔16aを有している。噴射孔16aは、空気流路16とチャンバー14とを連通させる。噴射孔16aからは、チャンバー14に対して、空気が噴射される。噴射孔16aは、円形状を呈している。本実施形態では、噴射孔16aは、真円形状を呈している。噴射孔16aの直径は、φ0.8mm以上φ1.3mm以下であることが好ましく、φ1.0mm以上φ1.3mm以下であることが更に好ましい。本実施形態では、噴射孔16aは、チャンバー14の中心を通り、且つ、スリット13に対する第1糸Y1及び第2糸Y2の挿入方向に直交する直線上に配置されている。空気流路16の上流側(噴射孔16aと反対側)には、接続部18が設けられている。接続部18には、空気を供給する供給管等が接続される。
図2及び図3に示されるように、第1挟持機構20は、支持部22と、挟持部23と、を有している。第1挟持機構20は、糸継部10のチャンバー14に挿通される糸を挟持(クランプ)する。
支持部22は、直方体形状(角柱状)を呈している。図5に示されるように、支持部22は、互いに対向する一対の主面22a,22bと、互いに対向する一対の側面22c,22dと、を有している。側面22dは、糸継ノズル12の側面12bと対向する面である。
支持部22は、挟持部23を保持する。支持部22は、揺動可能に設けられている。具体的には、図2に示されるように、支持部22の基端部(長手方向の一端部)には、軸21が設けられている。軸21は、図示しないフレーム等に固定されている。支持部22は、軸21を中心に揺動する。支持部22は、先端部(長手方向の他端部)が糸継部10に近づく第2位置P2(図6(b)参照)と、先端部が第2位置P2よりも糸継部10から離間する第1位置P1(図6(a)参照)と、の間で移動する。すなわち、第1挟持機構20は、第1位置P1と第2位置P2との間で移動する。支持部22は、例えばシリンダ等の駆動部(図示省略)の駆動によって移動する。本実施形態では、上記のように、支持部22において、軸21が設けられている長手方向の一端部を基端部、当該一端部の反対側の長手方向の他端部を先端部とする。
支持部22には、凹部25が設けられている。凹部25は、支持部22の先端部側に設けられている。凹部25は、支持部22の主面22a及び一対の側面22c,22dに開口している。凹部25は、挟持部23の一部を露出させる。図2に示されるように、凹部25は、支持部22の主面22a側から見て、矩形形状を呈している。図3に示されるように、凹部25は、支持部22の側面22c側から見て、矩形形状を呈している。
図5に示されるように、支持部22は、挟持部23の後述する第2挟持部材26(第1挟持部材24)を摺動可能に支持する支持面27aを有している。支持面27aは、支持部22の一対の側面22c,22dの対向方向において、中央部に設けられている。支持面27aは、第2挟持部材26(第1挟持部材24)の外周面の形状に応じて、下方に凸状に湾曲した形状(半円形状)を呈している。支持面27aは、支持部22の長手方向に沿って延在している。
支持部22は、一対の側面22c,22dの対向方向(第1挟持機構20と第2挟持機構30との対向方向)において支持面27aを挟む位置に、第1当接面27bと、第2当接面27cと、を有している。第1当接面27b及び第2当接面27cは、凹部25の底面を構成している。第1当接面27bは、挟持部23に挟持される第1糸Y1及び第2糸Y2と当接可能な面である。当接可能とは、挟持部23に挟持される第1糸Y1及び第2糸Y2と第1当接面27bとが当接する場合、及び、第1糸Y1及び第2糸Y2と第1当接面27bとが当接しない場合を含むことを意味する。第2当接面27cは、挟持部23に挟持される第1糸Y1及び第2糸Y2と当接する面である。図2に示されるように、第1当接面27b及び第2当接面27cは、少なくとも、第1挟持部材24と第2挟持部材26とが当接する位置に設けられている。
図5に示されるように、第1当接面27bは、支持面27aの一端(側面22c側の端)に連続する平坦面である。第2当接面27cは、支持面27aの他端(側面22d側の端)に連続する平坦面である。支持部22では、一対の主面22a,22bの対向方向から見て、糸継部10側から、第2当接面27c、支持面27a及び第1当接面27bの順で各面が設けられている。すなわち、第2当接面27cは、糸継部10と挟持部23との間に配置されている。第2当接面27cは、糸継部10を間に挟んで対向する第1挟持機構20と第2挟持機構30との対向方向において内側に位置しており、第1当接面27bは、当該対向方向において外側に位置している。
第1当接面27bは、主面22a,22bと略平行である。第1当接面27bは、支持面27aと側面22cとにわたって設けられている。第2当接面27cは、主面22a,22bと略平行である。第2当接面27cは、支持面27aと側面22dとにわたって設けられている。第1当接面27bと第2当接面27cとは、支持部22の一対の主面22a,22bの対向方向における高さ位置が同じである。
第2当接面27cと側面22dとは、略90°の角度を成している。第2当接面27cと側面22dとにより形成される角の頂部は、表面研磨されていることが好ましい。この構成では、第1糸Y1及び第2糸Y2が上記頂部から離間するときにおいて、第1糸Y1及び第2糸Y2がダメージを受けることを抑制できる。
図2に示されるように、挟持部23は、第1挟持部材24と、第2挟持部材26と、を有している。第1挟持部材24及び第2挟持部材26のそれぞれは、円柱状を呈している。第1挟持部材24及び第2挟持部材26のそれぞれは、例えば、耐摩耗性を有するSUS等の金属で形成されている。第1挟持部材24及び第2挟持部材26のそれぞれの直径は、適宜設定されればよい。
第1挟持部材24及び第2挟持部材26は、支持部22において、それぞれの端面が対向するように配置されている。具体的には、第1挟持部材24は、支持部22の先端部側に配置されており、第2挟持部材26は、第1挟持部材24よりも支持部22の基端部側に配置されている。第1挟持機構20では、挟持部23において、第1挟持部材24の端面と第2挟持部材26の端面との間で糸を挟持することにより、糸を保持する。
第1挟持部材24の一部は、支持部22に収容されており、第1挟持部材24の一部は、支持部22の凹部25において露出している。第1挟持部材24は、支持部22に固定されていてもよいし、第1挟持部材24と第2挟持部材26との対向方向(以下、単に「対向方向」とも称する。)において移動自在(支持面27aに摺動可能)に設けられていてもよい。
第2挟持部材26一部は、支持部22に収容されており、第2挟持部材26の一部は、支持部22の凹部25において露出している。第2挟持部材26は、支持部22において移動可能に設けられている。第2挟持部材26は、上記対向方向において移動する。第2挟持部材26は、ばね等の付勢部材(図示省略)によって、第1挟持部材24に向かって付勢されている。すなわち、第2挟持部材26と第1挟持部材24とは、第2挟持部材26に付勢部材以外の力が作用していない状態では、付勢部材の付勢力によって、互いの端面が当接している。
第2挟持部材26は、支持部22の移動に連動して移動する。第2挟持部材26は、支持部22の第2位置P2(図6(b)参照)から第1位置P1(図6(a))への移動によって、第1挟持部材24から離間する方向に移動する。具体的には、第2挟持部材26は、支持部22が第2位置P2から第1位置P1に移動すると、図示しないカム機構等によって、付勢部材の付勢方向に反した方向に押し下げられる。これにより、挟持部23では、第1挟持部材24と第2挟持部材26との間に隙間(空間)が形成される。なお、第2挟持部材26の移動は、支持部22の移動と連動しなくてもよい。
図2及び図3に示されるように、第2挟持機構30は、支持部32と、挟持部33と、を有している。第2挟持機構30は、糸継部10のチャンバー14に挿通される糸を挟持(クランプ)する。
支持部32は、直方体形状(角柱状)を呈している。図5に示されるように、支持部32は、互いに対向する一対の主面32a,32bと、互いに対向する一対の側面32c,32dと、を有している。側面32dは、糸継ノズル12の側面12cと対向する面である。
支持部32は、挟持部33を保持する。支持部32は、揺動可能に設けられている。具体的には、図2に示されるように、支持部32の基端部(長手方向の一端部)には、軸31が設けられている。軸31は、図示しないフレーム等に固定されている。支持部32は、軸31を中心に揺動する。支持部32は、先端部(長手方向の他端部)が糸継部10に近づく第2位置P2(図6(b)参照)と、先端部が第2位置P2よりも糸継部10から離間する第1位置P1(図6(a)参照)と、の間で移動する。すなわち、第1挟持機構20は、第1位置P1と第2位置P2との間で移動する。支持部32は、例えばシリンダ等の駆動部(図示省略)の駆動によって移動する。当該駆動部は、支持部22を駆動する駆動部と同じであってもよいし、別途設けられていてもよい。本実施形態では、上記のように、支持部32において、軸31が設けられている長手方向の一端部を基端部、当該一端部の反対側の長手方向の他端部を先端部とする。
支持部32には、凹部35が設けられている。凹部35は、支持部32の先端部側に設けられている。凹部35は、支持部32の主面32a及び一対の側面32c,32dに開口している。凹部35は、挟持部33の一部を露出させる。図2に示されるように、凹部35は、支持部32の主面32a側から見て、矩形形状を呈している。凹部35は、支持部32の側面32c,32d側から見て、矩形形状を呈している。
図5に示されるように、支持部32は、挟持部33の後述する第2挟持部材36(第1挟持部材34)を摺動可能に支持する支持面37aを有している。支持面37aは、支持部32の一対の側面32c,32dの対向方向において、中央部に設けられている。支持面37aは、第2挟持部材36(第1挟持部材34)の外周面の形状に応じて、下方に凸状に湾曲した形状(半円形状)を呈している。支持面37aは、支持部32の長手方向に沿って延在している。
支持部32は、一対の側面32c,32dの対向方向において支持面37aを挟む位置に、第1当接面37bと、第2当接面37cと、を有している。第1当接面37b及び第2当接面37cは、凹部35の底面を構成している。第1当接面37bは、挟持部33に挟持される第1糸Y1及び第2糸Y2と当接可能な面である。第2当接面37cは、挟持部33に挟持される第1糸Y1及び第2糸Y2と当接する面である。図2に示されるように、第1当接面37b及び第2当接面37cは、少なくとも、第1挟持部材34と第2挟持部材36とが当接する位置に設けられている。
図5に示されるように、第1当接面37bは、支持面37aの一端(側面32c側の端)に連続する平坦面である。第2当接面37cは、支持面37aの他端(側面32d側の端)に連続する平坦面である。支持部32では、一対の主面32a,32bの対向方向から見て、糸継部10側から、第2当接面37c、支持面37a及び第1当接面37bの順で各面が設けられている。すなわち、第2当接面37cは、糸継部10と挟持部33との間に配置されている。第2当接面37cは、糸継部10を間に挟んで対向する第1挟持機構20と第2挟持機構30との対向方向において内側に位置しており、第1当接面37bは、当該対向方向において外側に位置している。
第1当接面37bは、主面32a,32bと略平行である。第1当接面37bは、支持面37aと側面32cとにわたって設けられている。第2当接面37cは、主面32a,32bと略平行である。第2当接面37cは、支持面37aと側面32dとにわたって設けられている。第1当接面37bと第2当接面37cとは、支持部32の一対の主面32a,32bの対向方向における高さ位置が同じである。
第2当接面37cと側面32dとは、略90°の角度を成している。第2当接面37cと側面32dとにより形成される角の頂部は、表面研磨されていることが好ましい。
図2に示されるように、挟持部33は、第1挟持部材34と、第2挟持部材36と、を有している。第1挟持部材34及び第2挟持部材36のそれぞれは、円柱状を呈している。第1挟持部材34及び第2挟持部材36のそれぞれは、例えば、耐摩耗性を有するSUS等の金属で形成されている。第1挟持部材34及び第2挟持部材36のそれぞれの直径は、適宜設定されればよい。
第1挟持部材34及び第2挟持部材36は、支持部32において、それぞれの端面が対向するように配置されている。具体的には、第1挟持部材34は、支持部32の先端部側に配置されており、第2挟持部材36は、第1挟持部材34よりも支持部32の基端部側に配置されている。第2挟持機構30では、挟持部33において、第1挟持部材34の端面と第2挟持部材36の端面との間で糸を挟持することにより、糸を保持する。
第1挟持部材34の一部は、支持部32に収容されており、第1挟持部材34の一部は、支持部32の凹部35において露出している。第1挟持部材34は、支持部32に固定されていてもよいし、第1挟持部材34と第2挟持部材36との対向方向において移動自在(支持面37aに摺動可能)に設けられていてもよい。
第2挟持部材36一部は、支持部32に収容されており、第2挟持部材36の一部は、支持部32の凹部35において露出している。第2挟持部材36は、支持部32において移動可能に設けられている。第2挟持部材36は、上記対向方向において移動する。第2挟持部材36は、ばね等の付勢部材(図示省略)によって、第1挟持部材34に向かって付勢されている。すなわち、第2挟持部材36と第1挟持部材34とは、第2挟持部材36に付勢部材以外の力が作用していない状態では、付勢部材の付勢力によって、互いの端面が当接している。
第2挟持部材36は、支持部32の移動に連動して移動する。第2挟持部材36は、支持部32の第2位置P2(図6(b)参照)から第1位置P1(図6(a))への移動によって、第1挟持部材34から離間する方向に移動する。具体的には、第2挟持部材36は、支持部32が第2位置P2から第1位置P1に移動すると、図示しないカム機構等によって、付勢部材の付勢方向に反した方向に押し下げられる。これにより、挟持部33では、第1挟持部材34と第2挟持部材36との間に隙間(空間)が形成される。なお、第2挟持部材36の移動は、支持部32の移動と連動しなくてもよい。
続いて、合繊糸用スプライサ1を用いた絡合部の形成方法(糸継ぎ方法)について説明する。
最初に、図6(a)に示されるように、第1糸Y1及び第2糸Y2を、合繊糸用スプライサ1にセットする。具体的には、第1糸Y1及び第2糸Y2を、糸継部10のスリット13を介してチャンバー14に位置させると共に、第1位置P1に位置する第1挟持機構20及び第2挟持機構30に配置する。より詳細には、第1糸Y1及び第2糸Y2を、第1挟持機構20の第1挟持部材24と第2挟持部材26との間に配置すると共に、第2挟持機構30の第1挟持部材34と第2挟持部材36との間に配置する。これにより、第1糸Y1及び第2糸Y2は、第1挟持機構20の第1当接面27b及び第2当接面27c上に載置されると共に、第2挟持機構30の第1当接面37b及び第2当接面37c上に載置される。
合繊糸用スプライサ1に第1糸Y1及び第2糸Y2をセットすると、操作部7を操作(押下)する。これにより、合繊糸用スプライサ1では、駆動部が作動し、第1挟持機構20及び第2挟持機構30が動作する。
具体的には、第1挟持機構20において、第1挟持部材24と第2挟持部材26とにより第1糸Y1及び第2糸Y2が挟持される。また、第2挟持機構30において、第1挟持部材34と第2挟持部材36とにより第1糸Y1及び第2糸Y2が挟持される。その後、図6(b)に示されるように、第1挟持機構20及び第2挟持機構30は、第1位置P1から第2位置P2に移動する。これにより、第1糸Y1及び第2糸Y2は、挟持部23と挟持部33との間で弛んだ状態で保持される。また、第1糸Y1及び第2糸Y2は、少なくとも第2当接面27c及び第2当接面37cに当接した状態で保持される。
また、操作部7が操作されると、空気流路16を介して、噴射孔16aからチャンバー14に対して空気が噴射される。これにより、チャンバー14内に位置する第1糸Y1及び第2糸Y2は、空気の作用によって糸継ぎされ、絡合部が形成される。
続いて、操作部7の操作を解除する。これにより、合繊糸用スプライサ1では、噴射孔16aからチャンバー14に対しての空気の噴射が停止されると共に、第1挟持機構20及び第2挟持機構30が動作する。
具体的には、図6(a)に示されるように、第1挟持機構20及び第2挟持機構30は、第2位置P2から第1位置P1に移動する。この動作に伴って、第1挟持機構20において、第2挟持部材26が第1挟持部材24から離間する方向に移動し、第1挟持部材24と第2挟持部材26とによる第1糸Y1及び第2糸Y2の挟持が解除される。第2挟持機構30においても同様に、第2挟持部材36が第1挟持部材34から離間する方向に移動し、第1挟持部材34と第2挟持部材36とによる第1糸Y1及び第2糸Y2の挟持が解除される。なお、第1挟持機構20が第2位置P2から第1位置P1に移動した後に、第1挟持部材24と第2挟持部材26とによる第1糸Y1及び第2糸Y2の挟持が解除されてもよい。同様に、第2挟持機構30が第2位置P2から第1位置P1に移動した後に、第1挟持部材34と第2挟持部材36とによる第1糸Y1及び第2糸Y2の挟持が解除されてもよい。以上により、合繊糸用スプライサ1による、第1糸Y1及び第2糸Y2の糸継ぎが完了する。これにより、第1糸Y1及び第2糸Y2は、一本の糸になる。
以上説明したように、本実施形態に係る合繊糸用スプライサ1では、第1挟持機構20及び第2挟持機構30に保持された第1糸Y1及び第2糸Y2を、第1挟持機構20及び第2挟持機構30により挟持されている位置を固定点としてチャンバー14内で振り回して、絡合部を形成する。噴射孔16aの直径R2がφ0.8mmよりも小さい場合、チャンバー14内に噴射される空気の力が小さいため、第1糸Y1及び第2糸Y2に対して空気が適切に作用せず、チャンバー14内で第1糸Y1及び第2糸Y2が適切に振り回されないため絡合部が形成され難い。噴射孔16aの直径R2がφ1.3mmよりも大きくなると、細くてフィラメント数が少ない糸の場合、第1糸Y1及び第2糸Y2に空気が過剰に作用するおそれがあり、絡合部が適切に形成され難い。
本実施形態に係る合繊糸用スプライサ1では、噴射孔16aの直径R2は、φ0.8mm以上φ1.3mm以下である。これにより、合繊糸用スプライサ1では、細くてフィラメント数が少ない糸であっても、第1糸Y1及び第2糸Y2に空気を適切に作用させることができ、チャンバー14内で第1糸Y1及び第2糸Y2が適切に振り回されるため、絡合部を適切に形成できる。したがって、合繊糸用スプライサ1では、細くてフィラメント数が少ない糸において絡合部を形成できると共に、絡合部の引張伸度の低下を抑制できる。
本実施形態に係る合繊糸用スプライサ1では、チャンバー14は、チャンバー14の貫通方向から見て円形状を呈している。チャンバー14の直径R1は、φ3.0mm以上φ4.0mm以下である。チャンバー14の直径R1がφ3.0mmよりも小さいと、第1糸Y1及び第2糸Y2がチャンバー14内で振り回されたときに、チャンバー14の内周面と接触し易く、チャンバー14内において糸が旋回し難い。そのため、絡合部が適切に形成されないおそれがある。チャンバー14の直径R1がφ4.0mmよりも大きいと、噴射孔16aから噴射された空気がチャンバー14内で分散し得るため、第1糸Y1及び第2糸Y2に対して空気が適切に作用し難くなり、絡合部が形成され難い。合繊糸用スプライサ1では、チャンバー14の直径R1がφ3.0mm以上φ4.0mm以下であるため、チャンバー14の内周面との接触による影響を抑制することができると共に、第1糸Y1及び第2糸Y2に空気を適切に作用させることができる。したがって、合繊糸用スプライサ1では、細くてフィラメント数が少ない糸において絡合部をより確実に形成できると共に、絡合部の引張伸度の低下をより一層抑制できる。
本実施形態に係る合繊糸用スプライサ1は、太さが55dtex以下であり、且つ、フィラメント数が10f以下である第1糸Y1と第2糸Y2との糸継ぎを行う。太さが55dtex以下であり、且つ、フィラメント数が10f以下の糸は、絡合部が形成され難い。合繊糸用スプライサ1は、上記の構成を有することにより、太さが55dtex以下であり、且つ、フィラメント数が10f以下である糸においても、絡合部を形成することができる。
図7(a)及び図8(a)は、本実施形態に係る合繊糸用スプライサ1において、チャンバー14の直径R1及び噴射孔16aの直径R2の組み合せを変えて絡合部を形成したときの絡合部の引張伸度の測定結果を示す図である。図7(a)及び図8(a)に示す測定結果は、絡合部を形成した後に引っ張り試験を行い、絡合部において糸抜けが生じなかった7回の測定結果の平均値である。なお、糸抜けが3回確認された場合には、その時点で測定を終了している。そのため、糸抜けが3回生じた場合の測定結果は、1回の測定結果、又は、複数回の測定結果の平均値である。
引張伸度の測定には、USTER社製のTENSORAPID4(商品名)を用いた。図7(a)及び図8(a)は、噴射孔16aから噴射される空気の圧力を7kgf/cm2に設定した場合の結果を示している。糸は、半延伸糸(POY:Pre Oriented Yarn)である。図7(a)及び図8(a)に示す結果において、「×」は、絡合部が形成されなかったことを示している。
図7(a)において測定対象とした糸は、40dtex-10fである。図7(a)の測定に用いた絡合部が形成されていない糸(原糸)の引張伸度は、64.6(%)であった(以下、「原糸伸度A」と称する。)。図8(a)において測定対象とした糸は、20dtex-5fである。図8(a)の測定に用いた絡合部が形成されていない糸の引張伸度は、68.6(%)であった(以下、「原糸伸度B」と称する。)。
図7(a)及び図8(a)に示されるように、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm、φ1.0mm及びφ1.3mmの場合には、噴射孔16aの直径R2がφ0.6mm、φ1.6mm及びφ1.8mmに比べて、原糸伸度A,B各々に対する引張伸度の低下量(%)が比較的小さいことが確認された。
チャンバー14の直径R1がφ2.5mmの場合には、第1糸Y1と第2糸Y2とが絡まず、絡合部が形成されなかった。チャンバー14の直径R1がφ3.0mm、φ3.5mm及びφ4.0mmの場合と、直径R1がφ4.5mm、φ5.5mm及びφ6.0mmの場合とでは、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm、φ1.0mm及びφ1.3mmの場合において、原糸伸度A,B各々に対する引張伸度の低下量(%)において大きな差が確認されなかった。噴射孔16aの直径R2がφ1.0mmであり、チャンバー14の直径R1がφ3.5mmの場合には、原糸伸度A,B各々に対する引張伸度の低下量(%)が明確に小さいことが確認された。
図9(a)及び図9(b)に、チャンバー14の直径R1と噴射孔16aの直径R2との所定の組み合せにおける、CV値(引張伸度の複数の測定結果を基に計算した標準偏差を引張伸度の平均値で除した値)を示す。図9(a)は、40dtex-10fの糸の結果を示している。図9(b)は、20dtex-5fの糸の結果を示している。
図9(a)に示されるように、原糸伸度Aは64.6(%)であり、原糸のCV値は3.4%である。チャンバー14の直径R1がφ3.5mm、噴射孔16aの直径R2がφ1.0mmの場合において、引張伸度の平均値は59.7(%)であり、CV値は4.5(%)である。チャンバー14の直径R1がφ4.0mm、噴射孔16aの直径R2がφ1.3mmの場合において、引張伸度の平均値は58.2(%)であり、CV値は5.7(%)である。
チャンバー14の直径R1がφ6.0mm、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mmの場合において、引張伸度の平均値は58.2(%)であり、CV値は15.7(%)である。チャンバー14の直径R1がφ6.0mm、噴射孔16aの直径R2がφ1.3mmの場合において、引張伸度の平均値は58.9(%)であり、CV値は10.5(%)である。このように、チャンバー14の直径R1がφ3.5mm及びφ4.0mmとφ6.0mmとでは、引張伸度の平均値の差は大きくないが、CV値が大きく異なる。チャンバー14の直径R1がφ3.5mm及びφ4.0mmの場合には、チャンバー14の直径R1がφ6.0mmの場合に比べて、何れもCV値が小さい。すなわち、何れも引張伸度の低下量(%)のばらつきが小さい。そのため、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm以上φ1.3mm以下であり、チャンバー14の直径R1がφ3.0mm以上φ4.0mm以下である場合には、原糸伸度に対する引張伸度の低下量(%)が低く、且つ、引張伸度の低下量(%)のばらつきを抑制できることが確認された。したがって、合繊糸用スプライサ1では、40dtex-10fの糸において、絡合部を安定的に形成できることが確認された。
図9(b)に示されるように、原糸伸度Bは68.6(%)であり、原糸のCV値は2.5%である。チャンバー14の直径R1がφ3.5mm、噴射孔16aの直径R2がφ1.0mmの場合において、引張伸度の平均値は57.9(%)であり、CV値は6.8(%)である。チャンバー14の直径R1がφ4.0mm、噴射孔16aの直径R2がφ1.3mmの場合において、引張伸度の平均値は50.8(%)であり、CV値は11.0(%)である。
チャンバー14の直径R1がφ6.0mm、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mmの場合において、引張伸度の平均値は56.9(%)であり、CV値は11.3(%)である。チャンバー14の直径R1がφ6.0mm、噴射孔16aの直径R2がφ1.3mmの場合において、引張伸度の平均値は57.7(%)であり、CV値は13.6(%)である。このように、チャンバー14の直径R1がφ3.5mm及びφ4.0mmとφ6.0mmとでは、引張伸度の平均値の差は大きくないが、CV値が異なる。チャンバー14の直径R1がφ3.5mm及びφ4.0mmの場合には、チャンバー14の直径R1がφ6.0mmの場合に比べて、何れもCV値が小さい。すなわち、何れも引張伸度の低下量(%)のばらつきが小さい。したがって、合繊糸用スプライサ1では、20dtex-5fの糸において、絡合部を安定的に形成できることが確認された。
図7(b)及び図8(b)は、引っ張り試験による糸抜け回数を示している。引っ張り試験では、合繊糸用スプライサ1を用いて第1糸Y1及び第2糸Y2に絡合部を形成した後、絡合部を所定の力で両側から引っ張る。第1糸Y1及び第2糸Y2に張力を掛けたときに、絡合部が解れて第1糸Y1と第2糸Y2との結合が維持できなった場合、糸抜けと判断する。
図7(b)に示されるように、40dtex-10fの糸では、糸抜けが発生しなかった。そのため、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm以上φ1.3mm以下であり、チャンバー14の直径R1がφ3.0mm以上φ4.0mm以下である場合においても、40dtex-10fの糸において、安定的に絡合部を形成できることが確認された。
図8(b)に示されるように、噴射孔16aの直径R2がφ0.6mm、φ1.6mm及びφ1.8mmの場合には、糸抜けが比較的発生している。チャンバー14の直径R1がφ3.5mmであり、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm及びφ1.3mmである場合においても、糸抜けが1回発生している。これについて、フィラメントは、温度及び湿度等の条件によって、解れ方が変化する。そのため、糸抜けが1回生じた原因は、絡合部を形成したときの環境が影響していると考えられる。以上のことから、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm以上φ1.3mm以下である場合には、糸抜けが比較的少ないことが確認された。
噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm以上φ1.3mm以下であり、チャンバー14の直径R1がφ3.0mm以上φ4.0mm以下である場合には、その他の組み合せに比べて、糸抜けの回数が比較的少なく、CV値も小さい。そのため、噴射孔16aの直径R2がφ0.8mm以上φ1.3mm以下であり、チャンバー14の直径R1がφ3.0mm以上φ4.0mm以下である場合には、20dtex-5fの糸において、絡合部を安定的に形成し易いことが確認された。噴射孔16aの直径R2がφ1.0mmであり、チャンバー14の直径R1がφ3.5mmである場合には、糸抜けは確認されなかった。そのため、噴射孔16aの直径R2がφ1.0mmであり、チャンバー14の直径R1がφ3.5mmである場合には、20dtex-5fの糸において、特に安定的に絡合部を形成できることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上記実施形態では、本体3の形状として、図1に示される形態を一例に説明した。しかし、本体3の形状は、図1に示される形態に限定されない。
上記実施形態では、第1挟持部材24,34及び第2挟持部材26,36が円柱状を呈する、すなわち第1挟持部材24,34及び第2挟持部材26,36の断面が円形状を呈する形態を一例に説明した。しかし、第1挟持部材及び第2挟持部材は、糸を挟持可能な形状であれば、円柱状に限定されず、様々な形状(例えば、角柱状等)とすることができる。
上記実施形態では、支持部22,32が軸21,31を中心に揺動することにより、第1位置P1及び第2位置P2に移動する形態を一例に説明した。しかし、支持部22,32は、例えば、互いに平行な状態で、互いに近づく方向及び互いに離間する方向に移動してもよい。
上記実施形態では、第1糸Y1及び第2糸Y2を第1位置P1に位置する第1挟持機構20及び第2挟持機構30に配置した後で、第1挟持機構20及び第2挟持機構30を第1位置P1から第2位置P2に移動させて、噴射孔16aからチャンバー14に対して空気を噴射して絡合部を形成する形態を一例に説明した。しかし、合繊糸用スプライサ1を用いた絡合部の形成方法はこれに限定されない。
例えば、第1糸Y1及び第2糸Y2を第2位置P2に位置する第1挟持機構20及び第2挟持機構30に配置した後で、第1挟持機構20及び第2挟持機構30を第2位置P2から第1位置P1に移動させて、更に、第1挟持機構20及び第2挟持機構30を第1位置P1から第2位置P2に移動させた後に、噴射孔16aからチャンバー14に対して空気を噴射して絡合部を形成してもよい。
上記実施形態では、合繊糸用スプライサ1が、作業者によって把持されて使用されるハンドスプライサである形態を一例に説明した。しかし、合繊糸用スプライサは、装置等に設置されてもよい。