JP7071894B2 - 魚介類の麻酔維持装置 - Google Patents
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Description
そこで、生きている魚介類を、商品価値を下げることなく輸送し消費者に提供することが要求されている。
たとえば特許文献1には、気液が旋回可能な気液旋回室内へ液体を圧送するとともに気液旋回室内へ空気を流入させることにより気液旋回室内に気液旋回流を発生させることにより、液中の溶存酸素濃度を高めるとともに、高めた溶存酸素濃度を比較的長時間維持できる微細気泡発生装置が開示されている。
また特許文献2には、魚介類を麻酔させるための工程と、麻酔された魚介類の麻酔状態を維持するための工程とにおいて、水中環境を各工程に適したものに設定することで、魚介類のガス病を防止し、魚介類の覚醒が可能な麻酔状態をより長く維持できる麻酔方法が開示されている。
[1]
マダイ類を水または海水とともに収容する水槽と、
ガス分離膜モジュールを有し前記水または海水に酸素富化空気を供給する酸素富化空気供給手段と、を備えた魚介類の麻酔維持装置であって、
前記酸素富化空気供給手段は、前記水槽中の前記水または海水に、酸素濃度が40%O2以上、50%O2以下の前記酸素富化空気を、5NL/min以上、10NL/min以下で供給することにより、
前記水または海水中の溶存酸素濃度が60%以上であり、かつ、溶存二酸化炭素濃度が10ppm以上を維持するように制御すること、を特徴とする魚介類の麻酔維持装置。
[2]
前記ガス分離膜モジュールは、ガス分離膜を搭載しており、
前記ガス分離膜は、25℃における酸素透過係数が1GPU以上、2000GPU以下であり、かつ、酸素透過係数を窒素透過係数で除した値が2以上、20以下である、[1]に記載の麻酔維持装置。
本発明に係る麻酔維持装置を利用することで、活魚を生きた状態で、かつ、麻酔状態で、個体に損傷を与えることなく輸送することが可能となり、新鮮な魚介類を商品価値を下げることなく消費者に提供することが可能となった。
[発明の詳細な説明]
図1は、本発明に係る麻酔維持装置の一構成例を模式的に示す図である。
本発明の魚介類の麻酔維持装置1は、魚介類2を水または海水3とともに収容する水槽10と、ガス分離膜モジュール21を有し水または海水3に酸素富化空気4を供給する酸素富化空気供給手段20と、を備えた魚介類の麻酔維持装置であって、
酸素富化空気供給手段20は、水槽10中の水または海水3に、酸素濃度が30%O2より大きく、60%O2未満の酸素富化空気4を、0.5NL/minより大きく、150NL/min未満で供給することにより、水または海水3中の溶存酸素濃度が60%以上であり、かつ溶存二酸化炭素濃度が10ppm以上であるように制御すること、を特徴とする。
本発明に係る麻酔維持装置1を利用することで、新鮮な魚介類2を、商品価値を下げることなく消費者に提供することが可能となった。
なお、本発明において、魚介類2とは、魚類の他に、頭足類および甲殻類等の、鰓呼吸によって酸素を摂取する遊泳性を持った水生生物を含む概念である。
水槽10は、直方体、多角形筒若しくは円筒状の容器であり、内部に水または海水3を満たして、対象となる魚介類2を収容する。
本実施形態において、水槽10は、活魚(魚介類2)を輸送するための水槽である。活魚を輸送するための水槽10は、単数もしくは複数の活魚を輸送するために必要な容量であって、車や船等の輸送手段に搭載可能な容量を備える。
水槽10に収容される水または海水3は、酸素富化空気供給手段20から得られる酸素富化空気4が気泡発生装置28を経て水中に導入されることにより、所定の水中環境下(溶存酸素濃度および溶存二酸化炭素濃度)に調整される。気泡発生装置28としては、気泡を発生させる装置であればよく、その気泡のサイズは特に限定されず、粗大気泡、ファインバブル、ウルトラファインバブルなどいずれでもよい。
酸素富化空気供給手段20は、ガス分離膜モジュール21と空気圧縮機25とを備え、水槽10中の水または海水3に、特定の酸素濃度を有する酸素富化空気4を特定の流量で供給する。
具体的には、酸素富化空気供給手段20は、水槽10中の水または海水3に、酸素濃度が30%O2より大きく、60%O2未満の酸素富化空気4を、0.5NL/minより大きく、150NL/min未満で供給する。
ガス分離膜モジュール21は、ガス分離膜22を搭載し、酸素富化空気4を生成する。
ガス分離膜22を用いたガス分離法は、ガス分子が高分子膜(ガス分離膜22)を透過する際に、ガス種によって透過性が異なるという選択的透過性を利用している。
空気圧縮機25を用いて加圧された空気6をガス分離膜22の第1の表面に接触させ、第1の表面と反対側の第2の表面を透過した酸素富化空気4を取り出す。
有機系高分子材料のガス分離膜としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリブタジエン樹脂などのゴム状ポリマー材料や、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、セルロース、主鎖に含フッ素脂環構造を有する重合体などのガラス状ポリマー材料などから成るガス分離膜が挙げられる。
無機系材料のガス分離膜としては、例えば、LTA(A型)、MFI(ZSM-5型)、MOR、FER、FAU(X型、Y型)などの結晶性アルミノケイ酸塩や、金属塩と有機配位子とを合成することによって得られる金属有機構造体(MOF:Metal Organic Framework)などから成るガス分離膜が挙げられる。
有機-無機複合材料のガス分離膜としては、上記の素材を複合化した材料から成るガス分離膜が挙げられる。
ガス分離膜22は、25℃における酸素透過係数が1GPU以上、2000GPU以下であることが好ましい。
酸素透過係数が前記下限値未満であると、所定の酸素濃度を有する酸素富化空気4を得ることが困難になる。一方、酸素透過係数が前記上限値を超えると、酸素富化空気4を得るのに多量の圧縮空気が必要となり、多数の空気圧縮機が必要となる。酸素透過係数が前記範囲であることにより、現実的な装置構成で、所定の酸素濃度を有する酸素富化空気4を得ることができる。
酸素透過係数を窒素透過係数で除した値が前記下限値未満であると、高濃度の所望のガスを得るには多くの工程が必要になり、実用的ではない。一方、前記値が前記上限値を超えると、得られる酸素富化空気4の酸素濃度が所定の濃度を超えてしまう。前記値が前記範囲であることにより、現実的な装置構成で、所定の酸素濃度を有する酸素富化空気4を得ることができる。
空気圧縮機25(コンンプレッサー)は、空気を加圧できるものであればよく、その種類等は特に限定されず、公知の装置を用いることもできる。例えば、ターボ型圧縮機等が挙げられる。
空気圧縮機25の動力としては、電気、エンジンの軸動力等のエネルギーを使用できる。またこの空気圧縮機25は空気加圧の能力が適宜選択され、低圧のブロアーから高圧のコンプレッサーまで幅広く選択が可能である。
酸素富化空気供給手段20は、水槽10中の水または海水3に、酸素濃度が30%O2より大きく、60%O2未満の酸素富化空気4を、0.5NL/minより大きく、150NL/min未満で供給する。
酸素富化空気4の酸素濃度が前記下限値よりも低いと、水または海水3中の酸素濃度が保てなくなり、魚介類2が鰓から吸収される酸素量が不足し、各個体の酸素需要量を充分には満たすことができず、魚介類2が呼吸不全を起こして短時間で斃死してしまう。一方、酸素濃度が前記上限値よりも大きいと、水または海水3中の酸素濃度が高くなりすぎ、麻酔状態を維持できず、覚醒した魚介類2が水槽10内で動くことにより個体損傷の原因となってしまう。酸素富化空気4の酸素濃度を前記範囲とすることで、魚介類2の斃死を防止しつつ麻酔状態を維持することができる。
酸素富化空気4の供給量が前記下限値よりも低いと、水または海水3中の酸素濃度が保てなくなり、魚介類2が斃死してしまう。一方、供給量が前記上限値よりも大きいと、水または海水3中の酸素濃度が高くなりすぎ、麻酔状態を維持できなくなる。酸素富化空気4の供給量を前記範囲とすることで、魚介類2の斃死を防止しつつ麻酔状態を維持することができる。
水または海水3中の溶存二酸化炭素濃度は、10ppm以上であることが好ましい。水または海水3中の溶存二酸化炭素濃度が10ppm未満であると、二酸化炭素濃度が足りずに麻酔状態を維持できず、覚醒した魚介類2が動くことにより個体が損傷を負ったりする場合がある。水または海水3中の溶存二酸化炭素濃度は、15ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることが最も好ましい。溶存二酸化炭素濃度の上限としては、40ppm未満であることが好ましく、35ppm未満であることがより好ましい。
具体的には、酸素富化空気供給手段は、水槽中の水または海水に、酸素濃度が30%O2より大きく、60%O2未満の酸素富化空気を、0.5NL/minより大きく、150NL/min未満で供給することにより、水または海水中の溶存酸素濃度が60%以上であり、かつ溶存二酸化炭素濃度が10ppm以上を維持するように制御する。これにより、魚介類を斃死させることなく、かつ、麻酔状態を維持し、個体に損傷を負わせることなく輸送を可能とすることができる。
そして本発明に係る麻酔維持装置を利用することで、活魚を生きた状態で、かつ、個体に損傷を与えることなく輸送することが可能となり、新鮮な魚介類を商品価値を下げることなく消費者に提供することが可能となる。
泡沫処理用の空気をエアポンプで通気させながら、ガス分離膜とコンプレッサーを用いて発生させた所定の濃度の酸素富化空気を、所定の流量で微細気泡発生装置に導入し、生じた微細気泡を水槽内の海水に導入した。
なお、実験は、水槽内に溶存酸素濃度計(YSI社製ProODO)と溶存二酸化炭素計(ケー・エンジニアリング社製OxyGuard CO2)を入れ、溶存ガス濃度を測定しながら実施した。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、40%O2の酸素富化空気を10NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度と二酸化炭素濃度はそれぞれ60%以上、10ppm以上で維持されていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ麻酔状態(〇)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、50%O2の酸素富化空気を10NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度と二酸化炭素濃度はそれぞれ60%以上、10ppm以上で維持されていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ麻酔状態(〇)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、40%O2の酸素富化空気を5NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度と二酸化炭素濃度はそれぞれ60%以上、10ppm以上で維持されていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ麻酔状態(〇)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、50%O2の酸素富化空気を5NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度と二酸化炭素濃度はそれぞれ60%以上、10ppm以上で維持されていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ麻酔状態(〇)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、20%O2の酸素富化空気を20NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度は60%以上で維持されていたが、二酸化炭素濃度はある時間においては10ppmを下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ覚醒状態(△)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、40%O2の酸素富化空気を20NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度は60%以上で維持されていたが、二酸化炭素濃度はある時間においては10ppmを下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ覚醒状態(△)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、50%O2の酸素富化空気を20NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度は60%以上で維持されていたが、二酸化炭素濃度はある時間においては10ppmを下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ覚醒状態(△)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、60%O2の酸素富化空気を20NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度は60%以上で維持されていたが、二酸化炭素濃度はある時間においては10ppmを下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ覚醒状態(△)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、60%O2の酸素富化空気を10NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度は60%以上で維持されていたが、二酸化炭素濃度はある時間においては10ppmを下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ覚醒状態(△)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、60%O2の酸素富化空気を5NL/minで用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の溶存酸素濃度は60%以上で維持されていたが、二酸化炭素濃度はある時間においては10ppmを下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、生存かつ覚醒状態(△)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、30%O2の酸素富化空気を10NL/min用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の二酸化炭素濃度は10ppm以上で維持されていたが、溶存酸素濃度は、ある時間においては60%を下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、斃死状態(×)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、30%O2の酸素富化空気を5NL/min用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の二酸化炭素濃度は10ppm以上で維持されていたが、溶存酸素濃度は、ある時間においては60%を下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、斃死状態(×)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、40%O2の酸素富化空気を2NL/min用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の二酸化炭素濃度は10ppm以上で維持されていたが、溶存酸素濃度は、ある時間においては60%を下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、斃死状態(×)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、60%O2の酸素富化空気を2NL/min用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の二酸化炭素濃度は10ppm以上で維持されていたが、溶存酸素濃度は、ある時間においては60%を下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、斃死状態(×)であった。
マダイをいれた水槽において、泡沫処理用空気120L/minを通気させながら、80%O2の酸素富化空気を2NL/min用いた微細気泡を流通させた。
24時間の間、水槽内の二酸化炭素濃度は10ppm以上で維持されていたが、溶存酸素濃度は、ある時間においては60%を下回っていた。
24時間後のマダイの状態を観察したところ、最も数の多い状態は、斃死状態(×)であった。
すなわち本発明によれば、個体に損傷を与えることなく輸送することが可能となるため、新鮮な魚介類を、商品価値を下げることなく消費者に提供することが可能となると推察される。
2:魚介類
3:水または海水
4:酸素富化空気
5:大気
6:加圧された空気
10:水槽
20:酸素富化空気供給手段
21:ガス分離膜モジュール
22:ガス分離膜
25:空気圧縮機
26:空気配管
27:空気配管
28:気泡発生装置
Claims (2)
- マダイ類を水または海水とともに収容する水槽と、
ガス分離膜モジュールを有し前記水または海水に酸素富化空気を供給する酸素富化空気供給手段と、を備えた魚介類の麻酔維持装置であって、
前記酸素富化空気供給手段は、前記水槽中の前記水または海水に、酸素濃度が40%O2以上、50%O2以下の前記酸素富化空気を、5NL/min以上、10NL/min以下で供給することにより、
前記水または海水中の溶存酸素濃度が60%以上であり、かつ、溶存二酸化炭素濃度が10ppm以上を維持するように制御すること、を特徴とする魚介類の麻酔維持装置。 - 前記ガス分離膜モジュールは、ガス分離膜を搭載しており、
前記ガス分離膜は、25℃における酸素透過係数が1GPU以上、2000GPU以下であり、かつ、酸素透過係数を窒素透過係数で除した値が2以上、20以下である、請求項1に記載の麻酔維持装置。
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