本発明によれば、分子量分布の幅が狭い多分岐ポリマーを、ワンポットで製造することができる、多分岐ポリマーの製造方法及び多分岐ポリマー、多分岐ポリマーの製造に使用される共役ジエンモノマーを提供することができる。
<製造方法>
本発明の製造方法は、ビニル結合のα位に重合開始基を有する共役ジエンモノマーと、ビニル結合のα位に重合開始基を有さないビニルモノマーとをリビングラジカル重合する工程を備える、製造方法である。なお、本発明において、「ビニル結合」とはラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合のことをいい、「共役ジエンモノマー」とは分子中にラジカル重合可能な共役する2つの炭素-炭素二重結合を有するモノマーのことをいう。
共役ジエンモノマーとしては、一方のビニル結合のα位にリビングラジカル重合の重合開始部位として機能する官能基(重合開始基)を有する共役ジエンモノマーであれば特に限定されないが、下記一般式(1)で表される化合物が好ましく用いられる。
〔一般式(1)において、Zは重合開始基を表す。R1a~R1eは、同一または相異なり、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基又はフッ素原子を表す。〕
R1a~R1eとして表される基は、上記のように、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基又はフッ素原子であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。また、上記アルキル基はヘテロ元素官能基が置換していてもよい。好ましくは炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR111R112(R111、R112は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、-COOR12(R12は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がよい。
シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等を挙げることができる。
Zで表される基は、重合開始基であり、リビングラジカル重合の重合開始部位として機能する官能基(重合開始基)であれば特に制限はないが、該重合開始基としては-Te-R2、-Cl、-Br、-I、-SC(=S)R2、-SC(=S)OR2、-S(C=S)N(R2)2等が挙げられる。これらのなかでも使用できるモノマーの多様性の観点から、重合開始基としては、好ましくは-Te-R2がよい。
R2として表される基は炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
本発明で用いる共役ジエンモノマーは、例えば、下記一般式(1B)で表される化合物の場合、該化合物におけるC-Teの結合解離エネルギーは分子軌道計算により225kJ/molと算出される。そして、例えば、下記一般式(6)の化合物におけるC-Teの結合解離エネルギーは121kJ/molと算出され、下記一般式(7)の化合物におけるC-Teの結合解離エネルギーは108kJ/molと算出され、下記一般式(8)の化合物におけるC-Teの結合解離エネルギーは123kJ/molと算出される。
この計算結果から、共役ジエンモノマーの重合開始基は、sp2炭素と直接結合している(ビニル結合のα位にある)ため、このままでは重合開始基として機能しないが、共役ジエンモノマーのビニル結合がラジカル重合によりsp3炭素との結合になることで、はじめて重合開始基として機能すると考えられる。そのため、重合性官能基(ビニル結合)と重合開始基の反応性が連動するものと考えられ、本発明で使用する共役ジエンモノマー(以下、ブランマーともいう。)を、連鎖移動剤を用いてリビングラジカル重合すると、分岐構造が均一に制御できるものと考えられる。これに後述するビニルモノマーを併用することで、分子量、分岐度等が高度に制御された多分岐ポリマーを製造できる。
ビニルモノマーとしては、前述の共役ジエンモノマーに示される重合開始基をビニル結合のα位に有さないビニルモノマーであって、ラジカル重合可能なものであればよいが、好ましくは分子内に重合開始基を有さないことがよい。具体的には下記のビニルモノマーを挙げることができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及びメタクリルの少なくとも一方」をいい、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方」をいい、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方」をいう。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレート。
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環族アルキル基を有する(メタ)アクリレート。
(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の芳香環基を有する(メタ)アクリレート。
(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基を有する(メタ)アクリレート。
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート。
スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等の芳香族ビニルモノマー。
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー等のカルボキシル基を有するビニルモノマー。
スチレンスルホン酸、ジメチルプロピルスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スルホン酸エチル(メタ)アクリレート、スルホン酸エチル(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニルモノマー。
メタクリロイロキシエチルリン酸エステル等のリン酸基を有するビニルモノマー。
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド。
N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の3級アミン含有不飽和モノマー。
N-2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド、N-メタクリロイルアミノエチル-N,N,N-ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩基含有不飽和モノマー。
(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有不飽和モノマー。
2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、1-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等のヘテロ環含有不飽和モノマー。
N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のビニルアミド。
1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等のα-オレフィン。
ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、 2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、クロロプレン等のジエン類。
(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン。
これらのなかでも、好ましくは脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリレート、脂環族アルキル基を有する(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレート、芳香族ビニルモノマー、(メタ)アクリルアミド、3級アミン含有不飽和モノマー、ヘテロ環含有不飽和モノマー、芳香族ビニルモノマー、ジエン類がよい。
リビングラジカル重合は、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、使用する連鎖移動剤も異なる。例えば、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)、有機ヨウ素化合物を用いる方法等を挙げることができる。これらのなかでも使用できるモノマーの多様性の観点からTERP法が好ましい。
本発明の製造方法において、重合の連鎖移動剤に対する共役ジエンモノマーの使用量を制御することで生成するデンドリマー状構造を持つ多分岐ポリマーの平均分岐数を制御できる。すなわち、N世代のデンドリマーを合成するには、連鎖移動剤1molに対して共役ジエンモノマーを(2N-1)mol用いればよい。世代Nは1以上の任意の世代を製造することができ、好ましくはN=1~15であり、より好ましくはN=3~10である。
本発明で製造されるデンドリマー状構造を持つ多分岐ポリマーの分岐鎖の平均数は〔2(N+1)-1〕となることから、本発明の製造方法における連鎖移動剤1molに対するビニルモノマーの使用量は、連鎖移動剤1molに対して〔2(N+1)-1〕molを超える量を用いることが好ましく、その量は所望するデンドリマー状構造により任意に選択することができる。さらに好ましくは、連鎖移動剤1molに対するビニルモノマーの使用量が、平均分子鎖数の1~10,000倍量であり、より好ましくは5~1,000倍量である。
本発明の製造方法における、ビニルモノマーの使用量としては、例えば連鎖移動剤1molに対して、ビニルモノマーを10~50,000molとすることができ、好ましくは25~10,000molであり、より好ましくは50~5,000molであり、さらに好ましくは75~1,000molである。
本発明の製造方法における共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率(共役ジエンモノマー:ビニルモノマー)は、例えば、共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率がモル比で、0.01:99.99~50:50とすることができ、好ましくは0.1:99.9~25:75であり、より好ましくは0.1:99.9~20:80であり、さらに好ましくは0.5:99.5~15:85である。
(重合方法(TERP法))
有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)は、連鎖移動剤として下記の一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)若しくは一般式(5)で表される有機テルル化合物、又は該有機テルル化合物から得られるマクロ連鎖移動剤(以下、これらを総称して単に有機テルル化合物という)等を連鎖移動剤とするリビングラジカル重合である。また、TERP法において、連鎖移動剤は有機テルル化合物の中から1種を選択して使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
マクロ連鎖移動剤とは、ビニルモノマーを下記の一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)若しくは一般式(5)で表される有機テルル化合物を用いてリビングラジカル重合して得られるビニル重合体であり、ビニル共重合体の成長末端がテルル化合物由来の-TeR3(式中、R3は下記と同じである)の形態であることから、リビングラジカル重合の連鎖移動剤として用いることができる。ビニルモノマーは、求める多分岐ポリマーの構造から、例えば、ビニルモノマーのなかから任意に選択することができる。
〔一般式(2)~(5)において、R3は炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。R6は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基又はプロパルギル基を表す。R7は、炭素数1~18のアルキレン基を表す。X1は、酸素原子又は-NZ-を表し、Nは窒素原子を表し、Zは水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基を表す。一般式(3)においてX2は2価の有機基を表し、一般式(4)においてX2は3価の有機基を表し、一般式(5)においてX2は4価の有機基を表す。〕
上記のように、R3で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
R4及びR5で表される基は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
R6で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基又はプロパルギル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。上記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-COR61で示されるカルボニル含有基(R61は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、炭素数1~8のアルコキシ基又はアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、1個又は2個置換しているのがよい。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR621R622(R621、R622は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることがきる。
オキシカルボニル基としては、-COOR63(R63は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がよい。
アリル基としては、-CR641R642-CR643=CR644R645(R641、R642は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であり、R643、R644、R645は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基であり、それぞれの置換基が環状構造で繋がっていてもよい)等を挙げることができる。
プロパルギル基としては、-CR651R652-C≡CR653(R651、R652は、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基、R653は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基又はシリル基)等を挙げることができる。
R7として表される基は炭素数1~18のアルキレン基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~18のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン基、1-エチル-n-プロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基又はエチレン基である。
X1として表される基は、酸素原子又は-NZ-である。Nは窒素原子であり、Zは水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はフェニル基である。好ましくは-NH-である。
X2して表される基は多価の有機基であり、複数のR7をつなぐものであれば特に制限はない。一般式(3)においてX2は2価の有機基を表し、一般式(4)においてX2は3価の有機基を表し、一般式(5)においてX2は4価の有機基を表す。一般式(3)におけるX2は、-NH-、-CH2-、-O-等で表される基が挙げられる。一般式(4)におけるX2は、-N<、-CH<等で表される基が挙げられる。一般式(5)におけるX2は、>C<等で表される基が挙げられる。
一般式(2)で示される有機テルル化合物は、具体的には(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-トリメチルシロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート、(3-トリメチルシリルプロパルギル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピネート等を挙げることができる。
リビングラジカル重合がTERP法である場合、共役ジエンモノマーとしては、一般式(1A)で表されるビニルモノマーであることが好ましい。
〔一般式(1A)において、R1は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基シリル基又はフッ素原子を表す。R2は炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。〕
上記のように、R1として表される基は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR111R112(R111、R112は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、-COOR12(R12は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基がよい。
シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等をあげることができる。
R2として表される基は炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、さらに好ましくはメチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
一般式(1A)で表される共役ジエンモノマーとしては、具体的には1-メチルテラニル-3-メチルブタジエン、1-ブチルテラニル-3-メチルブタジエン、1-フェニルテラニル-3-メチルブタジエン、1-フェニル-1-メチルテラニル-3-メチルブタジエン等を挙げることができる。
TERP法は、ビニルモノマーの種類に応じ反応促進、分子量の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤及び/又は一般式(9)で表される有機ジテルル化合物を加えて重合を行ってもよい。
具体的には、共役ジエンモノマーとビニルモノマーとを、下記(a)~(d)のいずれかを用いて重合し、ビニル重合体を製造する方法が挙げられる。
(a)有機テルル化合物。
(b)有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物。
(c)有機テルル化合物と有機ジテルル化合物との混合物。
(d)有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と有機ジテルル化合物との混合物。
(R3Te)2 (9)
〔一般式(9)において、R3は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基又は芳香族ヘテロ環基を表す。〕
一般式(9)で示される有機ジテルル化合物は、具体的には、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-s-ブチルジテルリド、ジ-t-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等を挙げることができる。
アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等を挙げることができる。
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、共役ジエンモノマー、ビニルモノマーと有機テルル化合物とに、ビニルモノマーの種類に応じ反応促進、分子量の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤及び/又は有機ジテルル化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。特に好ましくは、窒素がよい。
上記(a)、(b)、(c)及び(d)におけるビニルモノマーの使用量としては、目的とするビニル重合体の構造により適宜調節することができる。例えば、有機テルル化合物1molに対して、ビニルモノマーを10~50,000molとすることができ、好ましくは25~10,000molであり、より好ましくは50~5,000molであり、さらに好ましくは75~1,000molである。
上記(a)、(b)、(c)及び(d)における共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率は、目的とするビニル共重合体の分岐度により適宜調節することができる。例えば、共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率(共役ジエンモノマー:ビニルモノマー)がモル比で0.01:99.99~50:50とすることができ、好ましくは0.1:99.9~25:75であり、より好ましくは0.1:99.9~20:80であり、さらに好ましくは0.5:99.5~15:85である。
有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、アゾ系重合開始剤の使用量としては、通常、有機テルル化合物1molに対して、アゾ系重合開始剤を0.01~1molとすることができ、好ましくは25~5,000であり、より好ましくは50~1,000である。
有機テルル化合物と有機ジテルル化合物を併用する場合、有機ジテルル化合物の使用量としては、通常、有機テルル化合物1molに対して、有機ジテルル化合物を0.1~10molとすることができる。
有機テルル化合物と有機ジテルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、アゾ系重合開始剤の使用量としては、通常、有機テルル化合物と有機ジテルル化合物の合計1molに対して、アゾ系重合開始剤を0.01~10molとすることができる。
重合工程は、無溶剤でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される溶媒(非プロトン性溶媒又はプロトン性溶媒)を使用し、上記混合物を撹拌して行われる。
使用できる非プロトン性溶媒としては、特に限定はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、ヘキサフルオロイソプロパオール、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
使用できるプロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、通常0.001~50mlの範囲であり、好ましくは0.01~10mlの範囲であり、より好ましくは0.02~3mlの範囲である。
反応温度及び反応時間は、目的とするビニル重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよく、通常、0℃~150℃の範囲で、1分~150時間撹拌する。
重合工程により得られるビニル共重合体の成長末端は、有機テルル化合物由来の-TeR2(式中、R2は上記と同じである)及び-TeR3(式中、R3は上記と同じである)の形態であることから、成長末端に様々な置換基・官能基を導入しビニル重合体の機能向上が可能である。また、マクロ連鎖移動剤として用いることもできる。
重合工程の終了後、重合溶液から使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的とするビニル重合体を取り出したり、不溶性溶媒を使用して再沈殿処理により目的とするビニル重合体を単離することができる。
重合工程終了後の空気中の操作により、得られたビニル重合体の成長末端は失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存したビニル重合体は着色したり、熱安定性に劣ることから、トリブチルスタンナン又はチオール化合物等を用いるラジカル還元方法、さらに活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブス及び高分子吸着剤等で吸着する方法、イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法や、また過酸化水素水や過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気や酸素を系中に吹き込むことでビニル重合体末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液-液抽出法や固-液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限界ろ過等の溶液状態での精製方法を用いることができ、また、これらの方法を組み合わせることもできる。
(重合方法(ATRP法))
遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法)は、遷移金属錯体からなるレッドクス触媒の存在下、有機ハロゲン化合物、又は該有機ハロゲン化合物から得られるマクロ連鎖移動剤(以下、これらを総称してATRP開始剤という)を連鎖移動剤とするリビングラジカル重合法である。また、ATRP法において、連鎖移動剤は、有機ハロゲン化合物の中から1種を選択して使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
レドックス触媒として用いられる遷移金属錯体は、周期表第8族~第11族から選ばれる金属元素の錯体である。遷移金属錯体は、遷移金属、及び有機配位子からなる。遷移金属の具体例としては、銅、ニッケル、ルテニウム又は鉄である。これらの中でも、反応制御やコストの観点から銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などが挙げられる。その中でも塩化第一銅、臭化第一銅が、重合制御の観点から好ましい。より安定で取扱いの容易な塩化第二銅、臭化第二銅に還元剤を加え、重合系中で塩化第一銅、臭化第一銅を発せさせ、重合を行うこともできる。
また、遷移金属とともに錯体を形成する有機配位子としては、2座以上の窒素配位子が好ましく、例えば、2,2’-ビピリジル、4,4’-ビピリジル、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[2-(ピリジル)メチル]アミンなどが挙げられる。
上記遷移金属の塩と有機配位子とは、別々に添加して重合系中で遷移金属錯体を生成させてもよいし、予め遷移金属の塩と有機配位子とから調製した遷移金属錯体を重合系中へ添加してもよい。遷移金属が銅である場合には前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルの場合は後者の方法が好ましい。
有機ハロゲン化合物としては、分子内に1個以上の炭素-ハロゲン結合(但し、ハロゲンはフッ素以外とする)を有する種々の有機化合物が使用でき、脂肪族炭化水素系ハロゲン化物、芳香族系炭化水素系ハロゲン化物などが挙げられる。
脂肪族炭化水素系ハロゲン化物の具体例としては、2-クロロプロピオンアミド、2-ブロモプロピオンアミド、2-クロロアセトアミド、2-ブロモイソ酪酸エチル、2-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモプロピオン酸t-ブチル、2-ブロモイソ酪酸メチル、2-ブロモイソ酪酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。
芳香族系炭化水素系ハロゲン化物の具体例としては、ベンザルクロリド、ベンジルブロミド、4-ブロモベンジルブロミド、ベンゼンスルホニルクロリド等が挙げられる。
リビングラジカル重合がATRP法である場合、共役ジエンモノマーとしては、一般式(1C)で表されるビニルモノマーであることが好ましい。
〔一般式(1C)において、R1a~R1eは、同一または相異なり、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、シリル基又はフッ素原子を表す。Z2は塩素又はヨウ素を表す。〕
上記のように、R1a~R1eとして表される基は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、芳香族へテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基又はシアノ基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tet-ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、ヘプチロキシ基、オクチロキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR111R112(R111、R112は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)を挙げることができる。
オキシカルボニル基としては、-COOR12(R12は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又はアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、ter-ブトキシカルボニル基、n-ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等をあげることができる。
重合工程では、容器で、共役ジエンモノマーと、ビニルモノマーと、遷移金属錯体と、ATRP開始剤とを混合する。混合時、混合後の反応は、副反応を抑制するため窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
ビニルモノマーの使用量としては、目的とするビニル重合体の物性により適宜調節することができる。例えば、ATRP開始剤1molに対して、ビニルモノマーを10~50,000molとすることができ、好ましくは25~10,000molであり、より好ましくは50~5,000molであり、さらに好ましくは75~1,000molである。
共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率は、目的とするビニル共重合体の分岐度により適宜調節することができる。例えば、共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率(共役ジエンモノマー:ビニルモノマー)がモル比で0.01:99.99~50:50とすることができ、好ましくは0.1:99.9~25:75であり、より好ましくは0.1:99.9~20:80であり、さらに好ましくは0.5:99.5~15:85である。
遷移金属錯体の使用量は、ATRP開始剤1molに対して0.03~3mol、好ましくは0.1~2molの割合で用いられる。また、有機配位子の使用量は、遷移金属1molに対し、通常1~5mol、好ましくは1~3molである。
重合工程は、無溶剤でも行うことができるが、ATRP法で使用される溶媒を使用し、上記混合物を攪拌して行うこともできる。
反応温度及び反応時間は、目的とするビニル重合体の分子量あるいは分子量分布により適宜調節すればよく、通常、0~150℃の範囲で、1分~150時間攪拌する。
重合工程により得られるビニル重合体の成長末端には重合開始基を有していることから、成長末端に様々な置換基・官能基を導入しビニル重合体の機能向上が可能である。また、マクロ連鎖移動剤として用いることもできる。
重合工程の終了後、重合溶液から使用溶媒や残存モノマーを減圧下除去して目的とするビニル重合体を取り出したり、不溶溶媒を使用して再沈殿処理により目的とするビニル重合体を単離したりすることができる。
<多分岐ポリマー>
本発明の多分岐ポリマーは、ビニル結合のα位に重合開始基を有する共役ジエンモノマーに由来する構造単位と、ビニル結合のα位に重合開始基を有さないビニルモノマーに由来する構造単位とを含む、ビニル重合体である。本発明の多分岐ポリマーは、例えば、上述した製造方法により得ることができる。
本発明の製造方法で得られるビニル重合体(多分岐ポリマー)の絶対分子量は、反応時間及び連鎖移動剤等の量により適宜調整可能であるが、1,000~3,000,000であることが好ましく、3,000~1,000,000であることがより好ましく、5,000~500,000であることが更に好ましい。
本発明において、ビニル重合体(多分岐ポリマー)の絶対分子量は、核磁気共鳴スペクトル(以下「NMR」という)法又はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)/多角度光散乱(MALLS)法により測定される数平均分子量であり、得られるビニル重合体の特性に適した測定方法を選択すればよい。また、GPC/MALLS法の数平均分子量(Mn(MALLS))は、実測したGPC/MALLS法により得られる重量平均分子量(Mw(MALLS))と、GPC法により測定される分子量分布(PDI)により算出してもよい。
多分岐ポリマーは線状ポリマーに比べて流体力学半径が小さいため、GPC法で得られる分子量は絶対分子量よりも小さく見積もられる。そのため、多分岐ポリマーの分岐度は、GPC法に得られる分子量と絶対分子量との差により判断することも可能である。
本発明の製造方法で得られるビニル重合体(多分岐ポリマー)のGPC法により測定される分子量分布(PDI)は2.5未満に制御することができ、好ましくは2.3未満であり、より好ましくは2.0未満である。PDIとは、(ビニル重合体の重量平均分子量(Mw(GPC)))/(ビニル重合体の数平均分子量(Mn(GPC)))によって求められるものであり、PDIは小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろったビニル重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。反対に、PDIが大きいほど設計したビニル重合体の分子量に比べて、分子量が小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになる。
本発明の製造方法で得られるビニル重合体(多分岐ポリマー)は、共役ジエンモノマーが多分岐ポリマーの分岐部になるものと考えられ、多分岐ポリマーの分岐度は、共役ジエンモノマーとビニルモノマーとの使用比率により適宜調節することがでる。
本発明の製造方法は、上述のようにワンポットで行うことができ簡便な製造方法で分子量分布の幅が狭い多分岐ポリマーを得ることができる方法あり、工業的に有利な方法である。また、本発明の製造方法で得られる多分岐ポリマーは、高度に分岐が制御されており、またポリマー末端も適宜置換基、官能基を導入することが可能であり、例えば診断や薬物輸送システム等の医療用途、電池等の環境材料、触媒の担持体、潤滑油添加剤、航空燃料への添加剤等で好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて、本明細書において開示される事項をより詳細に説明する。
本発明の実施例の合成スキームを以下に示す。
実施例1
概要:酸素と水分に感受性の化合物を扱う全ての反応条件は、窒素雰囲気の乾燥した反応 容器で行った。全ての計算は、Te 原子についてLANL2DZ 基底関数及び他の原子について6-31G(d, p) 基底関数を用いたB3LYP法又はM062X法を使用するGaussian 09プログラムで行った(Gaussian 09 v. Gaussian 09 (Gaussian, Inc., Wallingford, CT, 2009))。
材料:特に言及しない限り、化学物質は市販品を用いた。スチレン(St)は5% NaOH水溶液で洗浄し、CaH2上で蒸留し、窒素ガスを通して脱気した。MeOHはCaH2から蒸留し、窒素ガスを通して脱気した。PhSHは冷凍-ポンプ-解凍サイクルを4回行い脱気した。有機テルル連鎖移動剤(CTAs) 化合物2は報告されたように調製した。
特徴付け. 1H NMR (400 MHz)及び13C NMR (128 MHz) スペクトルはサンプルのCDCl3溶液で測定し、1H NMRについては内部標準のテトラメチルシランからのppm (δ) で記載し、13C NMR については溶媒ピークからのppm (δ) で記載した。赤外(IR)スペクトルはcm-1で記載した。高分解能質量分析(HRMS)は電子イオン化(EI)条件下で得た。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、示差屈折率(RI)検出器とマルチアングルレーザ光散乱(MALLS)検出器 (Wyatt Technology, DAWN EOS)を用いた40℃での2つの直列に接続したポリスチレン (PSt)混合ゲルカラム (Shodex LF-604)を備えた装置で行った。THF、CHCl3及びDMF (LiBr を0.01 mol L-1含む)を溶離液として用いた。SECトレースはポリスチレン (PSt)標準物質で較正した。MALLS分析で使用されるdn/dc値は報告されたデータとして利用した。500 W高圧水銀ランプ、6 W白色LEDとニュートラル・デンシティー・フィルター(Sigma Koki)及びカットオフフィルター(Asahi Techno Glass)を組み合わせて光源として使用した。
Z-1-メチルテラニル-3-メチル-1,3-ブタジエン (化合物6)の合成
ジメチルジテルリド(0.64 ml, 6.0 mmol)と無水MeOH(10 ml)をSchlenk チューブに加えた。NaBH4(1.33 ml, 35 mmol)を赤色が薄くなるまで室温で少量ずつ加えた。混合物を室温で5分間撹拌し、J Youngバルブを備えたSchlenkチューブに移した。2-メチル-1-ブテン-3-イン(2.8 ml, 30 mmol)を室温で加えた。J Youngバルブを備えたSchlenkチューブを密封し、90℃に加熱した。90分後、反応混合物を室温に冷却し、脱気した蒸留水(5 ml)を加えて反応を停止した。得られた混合物を脱気したヘキサン(5 ml)で5回抽出した。得られた有機相を脱気した蒸留水(5 ml)で5回洗浄した。洗浄後、得られた溶液をMgSO4を通して濾過し、溶媒を減圧下に留去した。赤色の油状物(1.83 g)を3%の異性体を含む粗生成物として72%の収率で得た。生成物はプレパラティブSEC でさらに精製し、66%の収率で橙色液体を得た。
1H NMR (CDCl3) 1.90 (s, 3H), 1.97 (s, Te satellite with JHTe = 22.5 Hz, 3H), 4.81 (s, 1H), 5.08 (s, 1H), 6.70 (d, J = 10.5 Hz, 1H), 6.82 (d, J = 10.5 Hz, 1H) 13C NMR (CDCl3) -15.72, 22.09, 105.26, 115.05, 138.84, 144.07, Calcd for [M]+ , 211.9845, found 211.9852.
化合物9の合成(ラン1):化合物2 (1.8 μl, 0.01 mmol)、化合物6(9.5 μl, 0.07 mmol), スチレン(St)(0.57 ml, 5 mmol)の溶液を暗所で36時間100℃に加熱した。反応容器を-20℃のフリーザー中に5分間置くことにより重合を停止した。化合物6 (94%)とスチレン(St)(71%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF(5 ml)に溶解し、PhSH(10 μl, 0.1 mmol)を室温で加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、MeOH (100 ml)中で2回沈殿させて0.22 gの生成物を得た。ポリマーサンプルを取り出し、SEC-MALLS(Mn(SEC) = 2.04 × 104 g/mol, D = 1.99, Mn(MALLS) = 3.66 × 104 g/mol)で分析した。
化合物9の合成(ラン2): 化合物2 (1.8 μl, 0.01 mmol), 化合物6 (9.5 μl, 0.07 mmol), スチレン(St)(1.15 ml, 10 mmol)の溶液を暗所で45時間100℃で加熱した。化合物6(>99%)とスチレン(St)(73%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水 THF(10 ml)に溶解し、PhSH (10 μl, 0.1 mmol)を室温で加えた。得られた溶液を室温で1時間撹拌し、MeOH(100 ml)中で2回沈殿させて0.80 gの生成物を得た。ポリマーサンプルをSEC-MALLS (Mn(SEC) = 4.17 × 104 g/mol, D = 2.10, Mn(MALLS) = 8.13× 104 g/mol)で分析した。
化合物9の合成(ラン3):化合物2 (3.5 μl, 0.02 mmol)、化合物6(19 μl, 0.14 mmol)、スチレン(St)(0.57 ml, 5 mmol)の溶液を暗所で36時間100℃で加熱した。化合物6(94%)とスチレン(St)(78%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF (5 ml)に溶解し、PhSH (20 μl, 0.2 mmol)を室温で加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、MeOH(100 ml)中で2回沈殿させて0.26 gの生成物を得た。ポリマーサンプルをSEC-MALLS (Mn(SEC) = 1.58 × 104 g/mol, D = 1.91, Mn(MALLS) = 2.71× 104 g/mol)で分析した。
化合物9の合成(ラン4):化合物2 (8.8 μl, 0.05 mmol)、化合物6(47.5 μl, 0.35 mmol)、 スチレン(St)(0.57 ml, 5 mmol)の溶液を暗所で35時間100℃で加熱した。反応容器を-20℃のフリーザー中に5分間置くことにより重合を停止した。化合物6(>99%)とスチレン(St)(76%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF(5 ml)に溶解し、PhSH(50 μl, 0.5 mmol)を室温で加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、MeOH (100 ml)中で2回沈殿させて0.31 gの生成物を得た。ポリマーサンプルをSEC-MALLS(Mn(SEC) = 0.88 × 104 g/mol, D = 1.91, Mn(MALLS) = 1.10× 104 g/mol)で分析した。ラン1~ラン4で得られた化合物9のSECトレースと溶出時間(min)の関係を図1に示す。
化合物9の合成(ラン5):化合物2 (1.8 μl, 0.01 mmol)、化合物6(4.0 μl, 0.03 mmol)、 スチレン(St)(0.57 ml, 5 mmol) の溶液を暗所で48時間100℃で加熱した。反応容器を-20℃のフリーザー中に5分間置くことにより重合を停止した。化合物6 (>99%)とスチレン(St) (78%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF(5 ml)に溶解し、PhSH (50 μl, 0.5 mmol)を室温で加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、MeOH(100 ml)中で 2回沈殿させて0.31 gの生成物を得た。ポリマーサンプルをSEC-MALLS(Mn(SEC) = 2.81 × 104 g/mol, D = 1.69, Mn(MALLS) = 4.43× 104 g/mol)で分析した。
化合物9の合成(ラン6):化合物2 (1.8 μl, 0.01 mmol)、化合物6 (20.5 μl, 0.15 mmol), スチレン(St) (0.57 ml, 5 mmol) の溶液を暗所で36時間100℃で加熱した。反応容器を-20℃のフリーザー中に5分間置くことにより重合を停止した。化合物6 (94%)とスチレン(St) (72%) の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF(5 ml)に溶解し、PhSH (20 μl, 0.2 mmol)を室温で加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、MeOH(100 ml)中で 2回沈殿させて0.26 gの生成物を得た。ポリマーサンプルをSEC-MALLS (Mn(SEC) = 2.29 × 104 g/mol, D = 2.74, Mn(MALLS) = 4.25 × 104 g/mol)で分析した。
化合物9の合成(ラン7):化合物2(1.8 μl, 0.01 mmol)とスチレン(St) (0.57 ml, 5 mmol) の溶液を19時間100℃で加熱した。反応容器を-20℃のフリーザー中に5分間置くことにより重合を停止した。一部のサンプルを反応溶液から取り出し、スチレン(St)(31%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。これに対し、PhSH (5 μl, 0.05 mmol)を該NMRサンプル溶液に室温で加え、この温度で30分反応を行った後、SEC測定を行い、生成したlinear PSt(マクロ開始剤)の分子量と分散度とを求めた(Mn(SEC) = 1.80 × 104 g/mol, D = 1.27)。反応溶液に化合物6(9.5 μl, 0.07 mmol)を加え、得られた混合溶液を暗所で36時間100℃で加熱した。反応容器を-20℃のフリーザー中に5分間置くことにより重合を停止した。化合物6(>99%)とスチレン(St)(76%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF(5 ml)に溶解し、PhSH(10 μl, 0.1 mmol) を室温で加えた。得られた溶液を室温で2時間撹拌し、MeOH(100 ml)中で 2回沈殿させて0.28 gの生成物を得た。ポリマーサンプルを取り出し、SEC-MALLS(Mn(SEC) = 2.52 × 104 g/mol, D = 1.82, Mn(MALLS) = 3.82 × 104 g/mol)により解析した。ラン8で得られた、linear PSt(マクロ開始剤)とlinear-PSt-block-hb-PStのSECトレースと溶出時間(min)の関係を図3に示す。
化合物9の合成(ラン8):化合物2(1.8 μl, 0.01 mmol)、化合物6(9.5 μl, 0.07 mmol), スチレン(St)(0.57 ml, 5 mmol) の溶液を暗所で40時間100℃で加熱した。化合物6(>99%) とスチレン(St)(76%)の変換率を1H NMRスペクトルから決定した。粗混合物を無水THF(5 ml)に溶解し、Bu3SnD (43 μl, 0.16 mmol)及びAIBN(12 μl, ベンゼン中0.16 mol L-1)を室温で加えた。得られた溶液を60℃で3時間撹拌し、MeOH(100 ml)中で 2回沈殿させて0.40 gの生成物を得た。ポリマーサンプルをSEC-MALLS(Mn(SEC) = 2.67 × 104 g/mol, D = 2.07, Mn(MALLS) = 4.85 × 104 g/mol)により分析した。
Results of SEC及びNMR分析の結果
ラン1~4、6とlinearポリスチレン(PSt)標準物質の溶出時間と重量平均分子量の相関を図4に示す。Linear PSt標準物質から較正されたSECカラムのユニバーサルプロットを図5に示す。Mark-Hauwink定数は報告されたデータを使用した。また、新規な化合物6の1H-NMRと13C-NMRのデータを図6,7に示す。さらに、ラン1~8の反応条件、得られたポリマーの物性値を表1にまとめて示す。