JP4997655B2 - ノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒並びにノルボルネン系付加重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は上記のような従来技術が有する問題点を解決し、無置換ノルボルネンのみならず極性置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合に対しても十分な触媒活性を有するとともに、安価で化学的安定性が高く、しかも溶媒溶解性に優れるノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒を提供することを課題とする。
このような本発明に係るノルボルネン系付加重合体の製造方法においては、前記ノルボルネン誘導体を5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルとすることができる。
また、本発明に係るノルボルネン系付加重合体の製造方法は、有害なハロゲン系溶媒を重合溶媒として使用する必要が無いことに加えて、重合性が低いノルボルネン誘導体を付加重合することができる。
このようなノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、2価のパラジウム錯体を還元し0価のパラジウムとしつつ、配位子であるジベンジリデンアセトン(1,5−ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン、以下dbaと略記することもある)を配位させて錯体とすることにより製造することができる。
このようなノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒は、化学的に非常に安定であるので、合成や取り扱いが容易である。また、安価であるとともに、溶媒溶解性に優れる。
なお、本発明においては、無置換ノルボルネンとノルボルネン誘導体とを総称してノルボルネン系モノマーと記すこともある。また、本発明においては、ノルボルネン誘導体の付加重合体と、該ノルボルネン誘導体及び無置換ノルボルネンの付加共重合体とを総称して、ノルボルネン系付加重合体と記す。
付加重合を行う際には、ノルボルネン系モノマー,重合溶媒,触媒,助触媒,安定化剤等を混合するが、その混合順序は特に限定されない。
(1)触媒
ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2 )は、文献 (T. Ukai, H. Kawazura, Y. Ishii, J. Organometal. Chem. 65 (1974) 253) に従って合成した。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2 (dba)3 )は、Aldrich 社製の市販品を使用した。なお、上記文献に従って簡便に合成したビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムをクロロホルム中で再結晶すると、クロロホルム付加体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム・CHCl3 が得られ、これも市販されている。
トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、Strem 社製のものを使用した。
(3)安定化剤
3級ホスフィン(PR3 )であるトリフェニルホスフィン(RがPh基),トリシクロヘキシルホスフィン(RがC6 H11基)については、市販品を使用した。また、ジベンジリデンアセトンについては、Aldrich 社製の市販品を使用した。
無置換ノルボルネン(以降はNBと記す)は、Aldrich 社製のものを使用した。5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル(以降はNBCと記す)は、Aldrich 社製のものを使用した。endo/exo比は約0.75であった。
(5)重合溶媒
ナトリウムケチルと還流した後に蒸留して精製したトルエン、又は、市販のトルエンにアルゴン若しくは窒素ガスをバブリングし脱酸素したものを使用した。
NBの付加重合体(ホモポリマー)を製造した例を説明する。アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NB 1.0g(10.64mmol)のトルエン溶液6mLを入れ、Pd(dba)2 1.2mg(2.09μmol)を含むトルエン溶液3mL、続いてトリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.92mg(2.08μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、室温で5分間攪拌した。
容器の内容物を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別及び洗浄した後、2時間減圧乾燥すると、1.0gのポリノルボルネンが得られた。得られたポリノルボルネンは、テトラヒドロフラン、クロロホルムに不溶であった。
NBCの付加重合体(ホモポリマー)を製造した例を説明する。アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NBC 1.246g(8.20mmol)のトルエン溶液6mLを入れ、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート37.5mg(40.65μmol)を含むトルエン溶液3mL、続いてPd(dba)2 23.4mg(40.70μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加し、室温で15h攪拌した。
触媒としてPd(dba)2を用いて、NBとNBCの付加共重合体(コポリマー)を、安定化剤の種類及び量並びに重合温度を種々変更して製造した例を説明する。まず、一例として、安定化剤としてトリフェニルホスフィンを触媒と等モル量使用し、重合温度が50℃である例(表1のrun8を参照)について説明する。
さらに、安定化剤としてトリフェニルホスフィンを触媒の0.5倍モル量使用したこと以外はrun7〜9と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun4〜6に示し、安定化剤としてトリシクロヘキシルホスフィンを触媒と等モル量使用したこと以外はrun7〜9と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun10〜12に示し、安定化剤を使用しなかったこと以外はrun7〜9と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表1のrun1〜3に示す。
触媒としてPd2 (dba)3 を用いて、NBとNBCの付加共重合体(コポリマー)を、仕込みモノマーのモル比(NB/NBC)、触媒量、助触媒の量、重合温度、及び重合時間を種々変更して製造した例を説明する。まず、一例として、仕込みモノマーのモル比(NB/NBC)が0.5、触媒量が5000、助触媒の量が0.5、重合温度が70℃、重合時間が40hである例(表2のrun28を参照)について説明する。なお、触媒量は、仕込みモノマーと触媒とのモル比(全モノマー/触媒)であり、助触媒の量は、触媒と助触媒とのモル比(触媒/助触媒)である。
次に、仕込みモノマーのモル比(NB/NBC)、触媒量、助触媒の量、重合温度、及び重合時間のうち1つ以上の条件を変更したこと以外はrun28と全く同様にして付加共重合体を製造した例を、表2のrun21〜27に示す。
触媒としてPd2 (dba)3 を用いて、NBとNBCの付加共重合体(コポリマー)を、安定化剤の種類及び量並びに重合温度を種々変更して製造した例を説明する。まず、一例として、安定化剤としてdbaを触媒と等モル量使用し、重合温度が50℃である例(表3のrun33を参照)について説明する。
次に、安定化剤の種類及び量並びに重合温度のうち1つ以上の条件を変更したこと以外はrun33と全く同様にしてコポリマーを製造した例を、表3のrun31,32,34〜40に示す。
エステル基が導入されたノルボルネン誘導体は、シクロペンタジエンとアクリル酸エステルのDiels−Alder反応で容易に合成されるため、入手し易いものの、同反応固有の立体選択性(endo−ruleとして良く知られている) によりendo体が優先して生成する。例えば、M. Onakaらの文献(M. Onaka, N. Hashimoto, R. Yamasaki, Y. Kitabata, Chem. Lett. 2002, pp. 166-167.)に従えば、95モル%endo体が容易に得られる。高温での反応でもendo/exo比はほぼ1前後であり、exo体を効率よく得ることは難しい。exo体は、endo体との混合物からガスクロマトグラフィー分取によって取得されているに過ぎない。
アルゴンガス(窒素ガスでもよい)で置換したガラス容器に、NBC 1.522g(10.0mmol、endo/ exo異性体比は0.75)を入れ、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート18.4mg(20.0μmol)とトリシクロヘキシルホスフィン5.6mg(20.0μmol)を含むトルエン溶液3mL、続いてPd(dba)2 11.5mg(20.0μmol)を含むトルエン溶液3mLを添加した後、さらにトルエンを加えて全量を20mLとした。そして、この混合溶液を70℃に加熱しながら所定の時間攪拌した。
メチルエステル基のメチルの水素のピーク(exo体は3.69ppm、endo体は3.62ppm)の面積から、回収されたNBCのendo/exo比を求めた結果を、表4に示す。
よって、本発明に係るノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒を用いれば、従来入手しやすかったモノマー、すなわち、endo体が主成分であるノルボルネン誘導体を原料とした場合にも、付加重合体を容易に製造することができる。
Claims (6)
- ノルボルネン又は置換基が導入されたノルボルネン誘導体の付加重合用の触媒として用いられるパラジウム触媒において、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、を含むことを特徴とするノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒。
- 下記化学式(I)で表されるノルボルネン系モノマーの付加重合用の触媒として用いられるパラジウム触媒において、0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、又は、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムと、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、を含むことを特徴とするノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒。
- 3級ホスフィンをさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノルボルネン系付加重合用パラジウム触媒。
- 0価のパラジウム1個にジベンジリデンアセトン2個が配位した錯体であるビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、及び、0価のパラジウム2個にジベンジリデンアセトン3個が配位した錯体であるトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムの少なくとも一方を触媒として用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを助触媒として用いて、ノルボルネン及び置換基が導入されたノルボルネン誘導体のうち少なくとも前記ノルボルネン誘導体からなるモノマーを付加重合することを特徴とするノルボルネン系付加重合体の製造方法。
- 3級ホスフィンを安定化剤として用いることを特徴とする請求項4に記載のノルボルネン系付加重合体の製造方法。
- 前記ノルボルネン誘導体が5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチルであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のノルボルネン系付加重合体の製造方法。
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