以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<画像形成システム>
図1は、実施形態に係る画像形成システム1を示す構成図である。
実施形態に係る画像形成システム1は、図1に示すように、搬送路R1に沿って、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置10と、帯電処理装置50と、排紙収容手段70とを有する。
画像形成装置10は、電子写真方式を利用して、記録媒体であるシートS上に画像を形成するために使用される。電子写真方式は、トナーが適用され、帯電、露光、現像、転写および定着工程を含んでおり、シートSの第1面に対するトナーの転写によって、シートSは帯電する。これによりシートSを積層する場合、用紙同士が貼り付くこととなる。なお、シートSについて「第1面」とは、片面印刷及び両面印刷を問わず画像が形成される面を指し、「第2面」とは、片面印刷では画像が形成されず、両面印刷では第1面における画像の形成後に画像が形成される面を指す。
画像形成システム1では、画像形成装置10によって表面にトナー画像が形成されたシートSは、搬送路R1に沿って搬送されて帯電処理装置50を通過する。帯電処理装置50では、トナー画像が形成されたシートSの表面電位(帯電状態)が調整され、シートS同士の貼り付きを抑制する処理が施され、その後、シートSは排紙収容手段70に排出される。
<画像形成装置>
画像形成装置10は、複数の画像形成ユニット20(20V,20W,20Y,20M,20C,20K)と、各画像形成ユニット20で形成されたトナー画像をシートSに転写する転写部22と、転写部22によってシートSに転写されたトナー画像をシートSに定着する定着部40とを備える。
本実施形態の画像形成装置10は、第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計6色に応じた6つの画像形成ユニット20を備える。図1に示す画像形成装置10では、中間転写ベルト24の周回方向(図中矢印参照)の上流側から、画像形成ユニット20V、画像形成ユニット20W、画像形成ユニット20Y、画像形成ユニット20M、画像形成ユニット20C、画像形成ユニット20Kの順番に並んで配置されている。なお、以下の説明において各色を区別する必要が無い場合は、符号に付するV、W、Y、M、C、及びKを省略する。
各色の画像形成ユニット20は、回転する円筒状の像保持体12と、像保持体12を帯電する帯電器14と、帯電した像保持体12に露光光を照射して静電潜像を形成する露光装置16と、トナーを含んだ現像剤で静電潜像をトナー画像として現像する現像装置18とを備える。像保持体12は、周回移動する中間転写ベルト24に接触しており、像保持体12を囲む円周上に、帯電器14、露光装置16、現像装置18、中間転写ベルト24が、この順序で配置されている。これにより、画像形成ユニット20は、中間転写ベルト24に各色の画像を転写する。
転写部22は、図1に示すように、中間転写ベルト24と、一次転写ロール26と、二次転写ロール28と、ロール30とを備える。
中間転写ベルト24は、複数のロール(符号省略)に巻き掛けられて図中矢印方向に周回する。一次転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで像保持体12の反対側に配置されており、図示しない給電部によって、トナー極性(本実施形態では一例として負極性)とは逆極性の転写バイアス電圧(正極の電圧)が印加される。この転写バイアス電圧の印加によって一次転写ロール26と像保持体12との間に転写電流が流れ、像保持体12に形成された各色のトナー画像が中間転写ベルト24に転写される。よって、中間転写ベルト24には、第1特別色(V)、第2特別色(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の順番で、各色のトナー画像が重畳して一次転写される。
ロール30には、中間転写ベルト24が巻き掛けられている。中間転写ベルト24に対してロール30の反対側には、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像をシートSに転写する二次転写ロール28が配置されている。二次転写ロール28と中間転写ベルト24とが対向する位置に配置されることにより、転写ニップNTが形成されている。
画像形成装置10において、記録媒体としてのシートSは用紙供給装置34により供給される。用紙供給装置34は、シートSを収容する給紙カセット36と、給紙カセット36に収容されているシートSを1枚ずつ搬送路R1に送り出す搬送ロール38とを備える。
二次転写ロール28には、図示しない給電部によって、トナー極性とは逆極性の転写バイアス電圧(正極の電圧)が印加される。転写バイアス電圧が印加され、二次転写ロール28とロール30とに転写電流が流れることによって、中間転写ベルト24のトナー画像が、搬送ロール38により搬送されて転写ニップNTを通過するシートSへと、転写される。これにより、シートSに画像が形成される。画像が形成されたシートSは、中間転写ベルト24から剥離され、搬送路R1の用紙搬送方向下流側に設けられた定着部40へと搬送される。
定着部40は、定着ロール42および加圧ロール44を有する。定着ロール42は、図示しない加熱源を内蔵し回転可能に配設されており、シートSにおいて未定着の画像が配置されている側に位置する。加圧ロール44は、シートSに対して定着ロール42の反対側に位置し、シートSに圧力を加えるために弾性的に付勢されている。シートSに転写された画像は、定着ロール42と加圧ロール44との間を通過する際、圧力および熱が加えられ、溶融定着する。定着ロール42は、ヒーターを有するロールとヒーターを有しないロールとを有する複数のロールによって構成することも可能である。
定着部40を通過して定着画像が形成されたシートSは、定着部40に対して用紙搬送方向の下流側に配置された搬送ロール(図示しない)により、画像形成装置10から排出され、帯電処理装置50へと搬送される。
<帯電処理装置>
次に、本実施形態に係る帯電処理装置50について説明する。図2は、帯電処理装置50の構成を示す図であり、図3は、帯電処理ユニット52の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、帯電処理装置50は、シートSの帯電処理を行う複数の帯電処理ユニット52a,52b,52c,52d,52e,52f(帯電手段)と、表面電位センサ58(電位検出手段)と、制御部60とを備える。
表面電位センサ58は、シートSの表面電位を検出する電位検出手段であり、図1及び図2に示すように、帯電処理装置50に搬送されたシートSの、画像が形成された第1面側に配置されている。表面電位センサ58は、シートSの第1面の表面電位を測定し、その測定値に基づく電気信号を制御部60に送信するように構成されている。
ここで、帯電処理装置50においてシートSが搬送される搬送路R1は、定着装置から合流点GまでシートSを搬送する搬送区間R11と、合流点Gから分岐点BまでシートSを搬送する搬送区間R12と、分岐点Bから合流点GまでシートSを戻し搬送する搬送区間R13と、分岐点Bから排紙収容手段70までシートSを搬送する搬送区間R14と、を備えている。合流点Gは、搬送区間R11の下流端であり、搬送区間R12の上流端でもあり、搬送区間R13の下流端でもある。また、分岐点Bは、搬送区間R12の下流端であり、搬送区間R13の上流端でもあり、搬送区間R14の上流端でもある。そして、搬送区間R12,R13は、合流点G及び分岐点Bで連続しており、搬送区間R12,R13によって循環搬送路が構成されている。なお、これら搬送区間R11~R14には図示しない搬送ロール又は搬送ベルトが設けられている。
これにより、図2に示す帯電処理装置50には、シートSを搬送区間R12,R13で循環して搬送させる循環搬送路が設けられている。帯電処理装置50が有する循環搬送路のうち、搬送区間R12には帯電処理ユニット52aが設けられ、搬送区間R13には、帯電処理ユニット52b,52c,52d,52e,52fが設けられている。また、分岐点Bでは、シートSの搬送方向を、循環搬送路を構成する搬送区間R13と、排紙収容手段70へと搬送する搬送区間R14とに切り替える切替機構64が設けられている。切替機構64は、例えば、搬送区間R13及びR14と接続する位置に移動可能なガイド機構や、分岐部に設けられ搬送方向を切り替えるゲート機構等、公知の切替装置を使用すればよい。
図2に示す帯電処理装置50では、複数の帯電処理ユニット52が経路上に設けられた循環搬送路に沿ってシートSを搬送することにより、シートSに対して複数回の帯電処理を行うことができる。このとき、例えば、シートSが異なる帯電処理ユニット52と接触しないように、当該循環搬送路に沿った帯電処理ユニット52同士の距離がシートSの搬送方向のサイズよりも長くなるように各帯電処理ユニット52を配置することにより、シートSと接触させる帯電処理ユニット52による帯電処理が確実に実施される。また、この循環搬送路に沿ってシートSを搬送することにより、帯電処理ユニット52aの搬送方向下流側から、帯電処理ユニット52aの搬送方向上流側にシートSを戻し、帯電処理ユニット52aによる帯電処理を繰り返し実施することができる。
図3に、帯電処理ユニット52a,52b,52c,52d,52e,52fの構成の一例を示す。以下、帯電処理ユニット52a,52b,52c,52d,52e,52fを区別する必要が無い場合は、単に帯電処理ユニット52と記載する。
図3に示すように、帯電処理ユニット52は、帯電ロール54(第1ロール)と対向ロール56(第2ロール)とを有する。帯電ロール54は、シートSの画像が形成された第1面に接触するように配設され、対向ロール56は、帯電ロール54に対向してシートSの第2面に接触するように配置されている。帯電ロール54には、電源62により帯電バイアスが印加され、また、図示しないモータによって回転駆動される。対向ロール56は、接地されており、回転自在に構成される。また、対向ロール56は、帯電ロール54に向かって弾性的に付勢され、これにより、シートSが通過するニップ部を形成する。なお、帯電ロール54及び対向ロール56は、それぞれ、金属ロールやゴムロール等より適宜選択することができる。
電荷調整用の電源62は、直流(DC)電源であって、帯電ロール54と電気的に接続されている。制御部60の制御により、電源62から帯電ロール54に電流が供給され、帯電ロール54に電圧が印加される。電圧が印加された帯電ロール54と対向ロール56とで形成されるニップ部にシートSを通過させることにより、シートSを帯電させる帯電処理が行われる。なお、本明細書における「帯電処理」とは、概して記録媒体の表面電位を調整することを意味し、処理前後の記録媒体の表面電位の高低差や、印加電圧の正負により限定されるものではない。
図3に示す帯電処理ユニット52には、帯電ロール54及び対向ロール56を、互いに圧接してシートSを挟むニップ部を形成する位置と、互いに離間して帯電ロール54及び対向ロール56の両者がシートSと接触しない位置とに移動させる、リトラクト手段66(移動手段)が設けられている。ここで、例えばシートSの長さが帯電処理ユニット52の間隔よりも長い場合、複数の帯電処理ユニット52に接触して帯電処理が無効化されるおそれがある。本実施形態に係る帯電処理装置50では、シートSが異なる帯電処理ユニット52と接触しないように、リトラクト手段66を有する帯電処理ユニット52を設け、当該帯電処理ユニット52の帯電ロール54及び対向ロール56をシートSと接触しない位置に退避させることで、シートSと接触させる帯電処理ユニット52による帯電処理を確実に実施することができる。
なお、帯電処理装置50は、図3に示すようなリトラクト手段66を有する帯電処理ユニット52を備えるとともに、リトラクト手段66を有さない帯電処理ユニット52を備える構成としてもよい。いずれの帯電処理ユニット52においてリトラクト手段66を有する構成とするかの選択は、各帯電処理ユニット52の設置間隔、画像形成装置10に給紙可能な記録媒体のサイズ等によって、適宜決定される。
例えば、本実施形態に係る帯電処理装置50として、搬送区間R12及びR13で構成される循環搬送路に沿った各帯電処理ユニット52同士の間隔がA4判の長手方向のサイズ(297mm)であって、帯電処理ユニット52b,52d,52fがリトラクト手段66を有し、帯電処理ユニット52a,52c,52eがリトラクト手段66を有さない構成を備えるものが挙げられる。このような構成を備える帯電処理装置50において、例えばB4判の記録媒体を長手方向(364mm)に沿って搬送する場合、帯電処理ユニット52b,52d,52fに設けたリトラクト手段66を用いて、それらの帯電ロール54及び対向ロール56を当該記録媒体と接触しない位置に移動させることにより、複数の帯電処理ユニット52が記録媒体と接触する事態を回避し、帯電処理ユニット52a,52c,52eによる帯電処理を確実に実行することができる。
図2に戻り、制御部60は、帯電処理装置50の各部を制御するために使用され、後述するように、表面電位センサ58が検出したシートSの表面電位に基づいて、電源62(図2では省略)から各帯電ロール54に供給する電流、切替機構64の搬送路切り替え動作、及び、リトラクト手段66(図2では省略)の動作等を制御する。
また、制御部60は、表面電位センサ58によって測定されたシートSの表面電位に基づいて、電源62を制御して適切な電流を各帯電処理ユニット52に供給するとともに、切替機構64の切り替え動作を制御してシートSを搬送区間R13(循環搬送路)又は搬送区間R14のいずれかに搬送させる。また、制御部60は、帯電処理ユニット52が有するリトラクト手段66を制御して、当該帯電処理ユニット52の帯電ロール54及び対向ロール56の搬送されるシートSの位置を設定する。これにより、帯電処理装置50に搬送されたシートSに対して、シートSの表面電位に基づいて、実施する帯電処理の回数及び各帯電処理における印加電圧を調整することができる。
<排紙収容手段>
図1に戻り、帯電処理装置50による帯電処理を受け、帯電処理装置50から排出されたシートSは、排紙ロール72により排紙収容手段70に搬送され、排紙収容部74において順に積み重ねられる。
次に、本実施形態に係る画像形成装置10により得られる作用効果について説明する。
転写部材に形成されたトナー画像を記録媒体に転写して画像を形成する方法では、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂で構成されたフィルム等の体積抵抗の高い記録媒体を用いたときなど、バイアス電圧の印加によって画像が形成された記録媒体の表面電位が高くなる場合がある。その場合、排紙収容手段に積み重ねられたとき、記録媒体同士が貼り付き、収容性が低下してしまう。
そこで、画像形成装置における搬送経路に、除電装置又は帯電制御装置を設け、画像が形成された記録媒体の表面電位を制御することで、記録媒体同士が貼り付く現象を抑え、収容性の向上を図る技術が知られている。
ここで、本発明者らは、このような記録媒体の除電処理に関して、除電装置への印加電圧と記録媒体の表面電位との電位差Δに対する、除電処理後の記録媒体の表面電位の面内におけるばらつきの程度について予備実験を行った。なお本明細書において、単に「表面電位」と記載した場合は、記録媒体の主面における表面電位の平均値を意味し、「表面電位のばらつき」等と記載した場合は、当該主面内の位置に対する表面電位の高低差の度合を意味する。
この予備実験では、記録媒体の表面電位のばらつきを評価するため、カスケード法による記録媒体の表面電位分布の可視化方法を利用した。即ち、除電処理後の記録媒体の表面に対して、プラスの電荷を有するトナー(マゼンタ)及びマイナスの電荷を有するトナー(シアン)を吹き付けることにより、図4に示すような記録媒体のカスケード現像画像を得た。この現像画像について、トナーの粒径及び付着量(濃度)に基づいて、直線上のトナー濃度プロファイルを作成し、当該プロファイルの算術平均粗さRzを算出した。図4(a)に示すように、記録媒体の表面電位のばらつきが大きい場合、トナー濃度プロファイルの凹凸が大きくなり、算術平均粗さRzも大きくなる一方、図4(b)に示すように、記録媒体の表面電位のばらつきが小さい場合、トナー濃度プロファイルの凹凸及び算術平均粗さRzは小さくなる。そのため、この方法で得られた算術平均粗さRzは、記録媒体の表面電位のばらつきを評価する評価指標として使用できる。
予備実験により、記録媒体として厚さ100μmのPETフィルム(体積抵抗値:15logΩ)を用いて画像を形成し、帯電処理装置への印加電圧と画像形成後の記録媒体の表面電位との電位差Δに対する、帯電処理後の記録媒体の表面電位のばらつきの変化を確認した。図5は、上記の予備実験の結果であって、印加電圧と記録媒体の表面電位との電位差Δに対する、帯電処理後の記録媒体の表面電位のばらつきとの関係を示すグラフである。即ち、印加電圧と記録媒体の表面電位との電位差Δが大きくなるにつれて、算術平均粗さRzが大きくなり、表面電位のばらつきが大きくなることが明らかとなった。記録媒体の表面電位の面内のばらつきが大きいと、表面電位が全体としては抑えられていたとしても、排紙収容手段に積み重ねられた際、一方の記録媒体の高電位の部分と他方の記録媒体の低電位の部分とが対向したときに記録媒体同士が静電吸着により貼り付くため、収容性が低下することになる。
上述の通り、画像形成後の記録媒体、特に、体積抵抗値が11logΩ以上であり、普通紙等と比較して画像形成により帯電し易い性質を有する抵抗記録媒体に対する除電処理方法の改善が求められる。
それに対して、本発明者らは、上記の予備実験により得られた知見に基づいて、画像形成後の表面電位が高い記録媒体に対して、1回のみで帯電処理を完了させる場合に比較して、より電位差Δが小さくなるような印加電圧を用いて、帯電処理を複数回実施することにより、表面電位の面内のばらつきを抑えながら、表面電位を全体として接地電圧(0V)に近づけることができることを見出し、本発明を完成させた。
本実施形態に係る帯電処理装置50では、上述の通り、各帯電処理ユニット52、表面電位センサ58、制御部60、搬送区間R12及びR13で構成される循環搬送路、及び、切替機構64を有することにより、帯電処理装置50に搬送されたシートSに対して、検出したシートSの表面電位に基づいて、実施する帯電処理の回数及び各帯電処理における印加電圧を制御することができる。より具体的には、所望する表面電位のばらつきの程度に応じて、実施する帯電処理を1回とするか複数回とするかの閾値となる表面電位(第1閾値)を予め設定し、この第1閾値を制御部60の記憶部(図示しない)に記憶させておく。そして、シートSが帯電処理装置50に搬送されると、表面電位センサ58によりシートSの表面電位を検出し、検出されたシートSの表面電位に基づく入力値(以下「検出値」とも記載する)と記憶部に記憶された第1閾値とを比較する。その結果、検出値が第1閾値以内であれば、帯電処理ユニット52aにより1回の帯電処理を適切な印加電圧で実施し(場合により、帯電処理を実施せず)、検出値が第1閾値を超える場合は、シートSを循環搬送路に搬送することで、複数の帯電処理ユニット52を用いて複数回の帯電処理をそれぞれ適切な印加電圧で実施することができる。このように、本実施形態に係る帯電処理装置50では、シートSの表面電位に基づいて適切な回数及び印加電圧での帯電処理を実施することが可能になる。
本実施形態に係る帯電処理装置50において複数回の帯電処理を実施するか否かを分ける第1閾値は、シートSの体積抵抗率やサイズ等の特性、使用する帯電ロール54の材質等によって、また、所望する表面電位の面内のばらつきの程度及び帯電処理が完了し帯電処理装置50から排紙されるシートSの表面電位の目標値に応じて、適宜設定すればよい。図5に示すように、表面電位のばらつきの程度は、帯電処理ユニット52への印加電圧とシートSの表面電位との電位差Δと相関関係を有する。帯電処理ユニット52への印加電圧を設定する際、電位差Δが大き過ぎると表面電位のばらつきが大きくなって収容性が低下し、電位差Δが小さ過ぎるとシートSの表面電位を変えるのに十分な電位差が得られず、また、帯電処理の回数が増えて効率性が低下する。この観点から、帯電処理ユニット52への印加電圧とシートSの表面電位との電位差Δ(第2閾値)は、1000V以上2500V以下が好ましく、1500V以上2000V以下がより好ましい。
図6に、記録媒体の表面電位に対する除電装置への印加電圧の電位差Δと、その電位差Δでの帯電処理による記録媒体の表面電位の変化量(除電量)との関係の一例を示す。図6に示すように、帯電処理の際、ある程度の電位差Δを設けなければ、記録媒体を除電することはできないが、電位差Δがその閾値を超えれば、電位差Δと除電量とはおよそ比例関係に近い相関関係を有する。よって、このような電位差Δと除電量との関係に基づいて、電位差Δから除電量を推測することが可能となる。
また、帯電処理装置50による処理後のシートSの表面電位の目標値は、特に限定されず適宜設定すればよいが、例えば帯電処理装置50から排出される記録媒体の収容性の観点から、接地電圧を基準として-250V以上250V以下が好ましく、0V以上150V以下がより好ましい。
本実施形態に係る帯電処理装置50を用いた帯電処理における第1閾値は、上記の表面電位のばらつきと電位差Δとの関係、電位差Δと表面電位の変化量との関係、並びに、表面電位の目標値に基づいて、設定することができる。例えば、表面電位のばらつきに基づいて、各帯電処理における印加電圧と検出された記録媒体の表面電位との電位差Δの上限を2000Vと設定する。そして、帯電処理完了後の記録媒体の表面電位の目標値を0V以上150V以下と設定する。すると、電位差Δが2000Vである場合、図6に示す関係によれば、記録媒体の表面電位を500V変化させることができる。そのため、画像形成により記録媒体が負に帯電する場合は、1回の帯電処理により目標値の範囲内にまで変えることが可能な表面電位の値は、-500Vになると推定される。そこで、本実施形態に係る帯電処理プロセスにおける第1閾値を-500Vに設定し、表面電位センサ58によるシートSの表面電位の検出値が-500V以上であれば、1回又は0回の帯電処理を行い、当該検出値が-500Vを超えれば、複数回の帯電処理を行うものとすればよい。
さらに、上記の表面電位のばらつきと電位差Δとの関係、電位差Δと表面電位の変化量との関係、並びに、表面電位の目標値は、本実施形態に係る帯電処理装置50を用いた帯電処理の回数及び各帯電処理を行う帯電処理ユニット52への印加電圧を制御部60が設定する際にも利用される。
例えば、上記の通り、電位差Δの上限を2000Vに、記録媒体の表面電位の目標値を0V以上150V以下にそれぞれ設定した帯電処理装置50において、画像形成装置10から搬送されたシートSの表面電位が表面電位センサ58により-3000Vと検出された場合を考える。この場合、検出値と目標値との差が3000Vであり、電位差Δの上限2000Vのときの表面電位の変化量が500Vであることから、目標値に達するまでに必要な帯電処理の回数は少なくとも6回であると算出される。そして、帯電処理を6回行う場合、各回の帯電処理はシートSの表面電位との電位差Δが2000Vとなるように設定されるため、1回目~6回目の帯電処理を担当する帯電処理ユニット52の印加電圧は、-1000V、-500V、0V、+500V、+1000V、+1500Vにそれぞれ設定される。上記の印加電圧を有する各帯電処理ユニット52を通過する毎に、シートSの表面電位は-3000Vから500Vずつ変化させ、6回の帯電処理後の表面電位を0Vにすることができる。
このように、画像が形成されたシートSの表面電位が高い場合であっても、本実施形態に係る帯電処理装置50を用いて複数回の帯電処理を行うことにより、帯電処理による表面電位のばらつきを抑えながら、記録媒体の表面電位を接地電圧に近い目標値にまで低下させ、シートSの収容性を改善することができる。
なお、上記の帯電処理における電位差Δと表面電位のばらつきの程度との関係、並びに、電位差Δと記録媒体の表面電位の変化量との関係は、記録媒体の体積抵抗率やサイズ等の特性、表面形状(粗さ)等によって異なる。そのため、使用する記録媒体の体積抵抗率やサイズ、表面形状(粗さ)がわかる場合は、予め実験等を行ってこれらの関係を関係式又はテーブル等として記憶しておき、その上で、表面電位センサ58による表面電位の検出値とともに、帯電処理の回数及び印加電圧の算出に利用すればよい。また、予め記憶されていない種類の記録媒体に対しては、例えば、予め記憶された記憶媒体の情報及び関係式等と、ユーザから画像形成システム1の入力装置(図示しない)に入力される記録媒体の体積抵抗率、サイズ、材質等の情報とから推測して、帯電処理の回数及び印加電圧の算出を行えばよい。
以下、制御部60による帯電処理装置50の各部の具体的な制御方法について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
シートSが画像形成装置10から帯電処理装置50に搬送されると、制御部60は帯電処理プロセスを開始する。まず、ステップS1において、表面電位センサ58によってシートSの第1面の表面電位が検出され、表面電位に基づく検出信号が制御部60に入力される。ステップS2では、制御部60により、検出されたシートSの表面電位に基づく入力値(検出値)と、制御部60の図示しない記憶部に記憶された表面電位の目標値とが比較され、検出値が目標範囲内であるか否かが判定される。
ステップS2において、検出値が目標値以内であると判定された場合(YES)、ステップS3に進む。ステップS3では、制御部60は、帯電処理ユニット52aの帯電ロール54に対して電源62から電流を供給せず、シートSを帯電処理ユニット52aに通過させ、切替機構64へとシートSを搬送する。次いで、ステップS4では、制御部60は切替機構64を制御して、シートSを搬送区間R14に向けて搬送させ、帯電処理装置50から排出させ、帯電処理プロセスを終了する。
ステップS2において、検出値が目標値を超えると判定された場合(NO)、ステップS5に進む。ステップS5では、制御部60により、検出値と、記憶部に記憶された第1閾値とが比較され、検出値が第1閾値以内であるか否かが判定される。この第1閾値は、例えば、予備実験により求めた、1回の帯電処理でシートSの表面電位のばらつきを抑えることができるシートSの表面電位の限界値である。
ステップS5において、検出値が第1閾値以内であると判定された場合(YES)、ステップS6に進む。ステップS6では、制御部60により、検出値から記憶部に記憶された関係式又はテーブル等を参照して、帯電ロール54に印加される印加電圧が決定され、制御部60によって制御された電源62から、決定された印加電圧に応じた電流が帯電ロール54に供給される。
次いで、ステップS7では、シートSが帯電処理ユニット52aのニップ部に搬送され、当該ニップ部を通過するシートSに対して帯電処理が施される。その後、ステップS4に進み、上述の通り、制御部60により切替機構64が制御され、帯電処理ユニット52aを通過したシートSが搬送区間R14へと搬送され、帯電処理装置50から排出され、帯電処理プロセスを終了する。即ち、ステップS5において、検出値が第1閾値以内であると判定された場合は、帯電処理ユニット52aにより1回の帯電処理が実施される。
一方、ステップS5において、検出値が第1閾値を超えると判定された場合(NO)、ステップS8に進む。ステップS8では、入力された検出値、及び、制御部60に記憶された関係式又はテーブル等を用いて、帯電処理を行う帯電処理ユニット52の割り当て、切替機構64の切り替え動作のタイミング、及び、割り当てられた帯電処理ユニット52に印加される印加電圧が決定される。この決定に従い、電源62から、割り当てられた帯電処理ユニット52ごとに決定された印加電圧に応じた電流が、対応する帯電ロール54に供給される。
また、ステップS8では、シートSのサイズと、隣り合う帯電処理ユニット52の循環搬送路(搬送区間R12及びR13)に沿った搬送距離とが比較され、比較結果に基づいて、帯電処理ユニット52に設けたリトラクト手段66の動作が制御される。具体的には、シートSのサイズが隣り合う帯電処理ユニット52の距離よりも長ければ、シートSに対して複数の帯電処理ユニット52が接触しないように、制御部60はリトラクト手段66を制御して、帯電処理を行わない帯電処理ユニット52の帯電ロール54及び対向ロール56を離間した位置に移動させ、保持する。シートSに複数の帯電ロール54が接触すると、一方の帯電ロール54からの荷電が他方の帯電ロール54に移動するため、シートSの帯電処理が実施できないためである。なお、シートSのサイズの情報は画像形成装置10から提供される。
ステップS9では、シートSに対して、帯電処理ユニット52による複数回の帯電処理が実施される。より具体的には、シートSは、帯電処理ユニット52aにより初回の帯電処理を受けた後、制御部60により制御された切替機構64により、搬送区間R13に向けて搬送される。そして、搬送区間R13に設けた帯電処理ユニット52b、52c、52d、52e及び52f、並びに、搬送区間R12に設けた帯電処理ユニット52aのうち、制御部60によって割り当てられた帯電処理ユニット52によって、シートSに対して帯電処理が実施される。搬送区間R12を2回通過したシートSは、シートSを通過させる帯電処理ユニット52の個数と帯電処理の回数とに応じて、切替機構64により搬送区間R13に搬送されて2周回目の循環搬送路に入り、割り当てられた帯電処理ユニット52により追加の帯電処理が施される。
ステップS9による複数回の帯電処理が完了すると、ステップS4に進む。ステップS4では、上述の通り、シートSは切替機構64により搬送区間R14に向けて搬送され、帯電処理装置50から排出され、帯電処理プロセスを終了する。なお、帯電処理装置50から排出されたシートSは、排紙収容手段70の排紙収容部86に、順に積み重ねられる。
上記の通り、本実施形態に係る帯電処理装置50は、画像が形成されたシートSの表面電位を検出する表面電位センサ58と、シートSの帯電処理を行う帯電処理ユニット52と、制御部60とを備え、表面電位センサ58により検出されたシートSの表面電位が、予め定められた第1閾値を超える場合、帯電処理ユニット52による帯電処理を複数回行うという構成を有することにより、表面電位センサ58により検出したシートSの表面電位が当該第1閾値を超える場合であってもシートSの帯電処理を複数回行わないときに比べて、帯電処理による表面電位のばらつきを抑えることができる。そして、その結果、帯電処理装置50から排出されたシートSの収容性を改善することができる。
以上、本発明の実施形態について具体例を挙げて説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
図8には、本実施形態の他の例である帯電処理装置80が示されている。本実施形態では、搬送区間R12及びR13で構成される循環搬送路を有する帯電処理装置50に換えて、図8に示すように、6つの帯電処理ユニット52a,52b,52c,52d,52e,52fを有し、且つ、循環搬送路を有さない構成を備える帯電処理装置80を用いてもよい。帯電処理装置50のように循環搬送路を設ける場合、帯電処理の回数が制限されず、所望の印加電圧での帯電処理を実施できるという利点がある一方、帯電処理装置80のように循環搬送路を設けない場合、短期間で処理が終了するという利点がある。
図9には、本実施形態の他の例である帯電処理装置82a及び82bが示されている。本実施形態では、6つの帯電処理ユニット52を備える帯電処理装置50に換えて、搬送区間R12及びR13で構成される循環搬送路を有し、且つ、帯電処理ユニット52を2つ(図9(a)参照)有する構成を備える帯電処理装置82aを用いてもよい。また、搬送区間R12及びR13で構成される循環搬送路を有し、且つ、帯電処理ユニット52を1つ(図9(b)参照)有するを備える帯電処理装置82bを用いてもよい。帯電処理ユニット52の数が多いほど所望の印加電圧で帯電処理を実施でき、所望の品質をより確実に確保できるという利点がある一方、帯電処理ユニット52の数が少なければ、帯電処理装置が占める空間を小さくできるという利点がある。
上述の説明では、電位検出手段として、シートSの表面電位を計測する表面電位センサ58を使用したが、記録媒体の表面電位の検出は、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像をシートSに転写する際に、二次転写ロール28に印加される転写バイアス電圧に基づいて、制御部60が記録媒体の表面電位を推定することにより、行ってもよい。この場合、公知の手段に基づいて、電位検出手段は制御部60であり、画像形成装置10から送信された二次転写ロール28に印加される転写バイアス電圧に関する電気信号と、図示しない記憶部に記憶されたテーブル等とを参照して、記録媒体の表面電位を算出すればよい。