JP7068552B2 - 摩耗監視装置およびボールねじ - Google Patents

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Description

本発明は、転動要素の摩耗監視のための、連続した強磁性転動要素、特にボールねじまたはリニア軸受を有する機械要素の摩耗監視装置に関する。
(先行技術)
様々な機械的用途では、機械要素、例えば軸受け、ガイドウェイ、歯車または駆動装置が使用され、この場合、転動要素により、機械要素の様々な構成要素間の摩擦が減少し、機械要素の様々な構成要素の互いに対する動きが極端に容易になる。使用される転動要素は、例えば、ボール、ローラー、球状ローラー、針、錐体、または他の回転要素であってよく、例えば、鋼、セラミックまたは特殊な超硬質プラスチックから製造することができる。このような機械要素のいくつかの態様では、個々の転動要素を互いに分離する転動要素ケージが提供される。
しかし、他の機械要素では、このような転動要素ケージの使用は不可能である。これらの機械要素は、設計上の理由で、転動要素が閉サイクルで循環する無端連続の転動要素を有する。転動要素は、起動点から進行し、一方向にのみ摩擦低減された負荷を受け、逆方向に負荷なしで戻りチャネルを介して搬送され起動点に戻ることが多い。一般に、この連続した転動要素は、互いにほぼ接触するが、一定のクリアランスを確保するため、連続する最大の転動要素容量により許容されるよりも1~3個少なく配置される。このような機械要素の例は、ボールねじまたはリニア軸受けである。
転動要素は、機械要素の動作中に磨耗を受け、これは、機械要素の構成要素間のクリアランス、例えば軸受クリアランスをもたらし、動作持続時間が増大するにつれて増大する。これは、機械要素の全体的な故障につながる可能性があり、より高いレベルの機械の損傷、および/または機械加工された動作部品の破壊をもたらす可能性がある。
独国特許出願公開第102010017113号明細書 独国特許発明第69011907T2号明細書
独国特許出願公開第102010017113号明細書は、そのナット内部に移動要素と呼ばれる、磁気素子およびホール素子を有したセンサ装置を備えるボールねじを示す。これにより、転動要素の循環周波数を決定し、所定の値と比較することができ、この値に届かないときに警報を発することができる。さらに、転動要素およびチャネル間に偏りが存在するか否かを判定することができる。偏りがない場合には、転動要素はチャネル内を摺動するが、偏りがある場合、転動要素はチャネル内部を転動するので、記録された循環周波数は周期的にならない。しかし、これは、転動要素自体の摩耗判定を扱うものでなく、そこで提示された装置を用いても可能でないので、ボールねじの位置検出中に転動要素の磨耗を考慮することができない。
独国特許発明第69011907T2号明細書は、ボールねじ、または連続した磁気ボールを有するリニアガイドの位置検出装置を示し、その位置は、異なる磁気回路における磁気抵抗の変化によって決定することができる。これは、各磁気ボールの変位量がスピンドルの回転量に比例し、スピンドルの回転量が摺動部やナットの直線変位に比例するという事実を利用する。ここで、ボールの位置は、ボールの変位に対応する磁気抵抗変化に基づいて決定され、磁気抵抗変化の周期は、ボールの直径に対応する変位によって決定される。この公報には、当業者に、ボール径自体の決定や、位置検出装置の測定精度に対するボール径の摩耗関連減少の影響に関して、いかなる教示もない。
本発明の目的は、転動要素の摩耗を検出することができる摩耗監視を提供することである。
上記課題を、請求項1の特徴を有する摩耗監視装置によって解決する。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題を構成する。
連続した強磁性転動要素を有する機械要素、特にボールねじまたはリニア軸受のために、前記転動要素の摩耗監視のために使用される摩耗監視装置であって、測定磁場を生成する少なくとも一つの磁石と、前記測定磁場の磁束密度を測定する磁場センサ配置であって、前記センサ配値は、第1の測定位置で前記磁束密度を測定する少なくとも一つの第1の磁場センサと、第1の測定位置から離れた第2の測定位置で磁束密度を測定する第2の磁場センサとを有し、前記測定位置は、前記機械要素が動作中に循環する前記転動要素が前記測定位置を互いに近接して通過し、かつそれにより生じる前記測定磁場の変化が前記各磁場センサにより前記測定位置のうちの一つにおいて検出可能であるように選択されているものと、前記磁場センサ配置に接続され、前記磁場センサによって測定した前記磁束密度を記録および評価する評価部であって、前記評価部は、前記磁場センサによって測定した前記磁束密度の比較に基づいて、前記転動要素の直径および/または前記直径の変化を決定するように構成されているものと、を備える。
本発明に係る摩耗監視装置の測定原理は、転動要素が強磁性特性のために、測定磁場の磁場線の経路を変化させることに基づいており、影響を受けない測定磁場に比べて磁束密度の局所的な変化が生じ、磁場センサ配置によって検出可能な磁束密度の局所的な変化が、転動要素によって生成される。測定磁場中のこれらの局所的な変化を生じさせるために、転動要素は、強磁性材料、例えば、鉄、コバルトまたはニッケルから作製することが必要であり、または十分な比率の強磁性材料を含むことが必要である。また、転動要素は、永久磁気特性を有し、例えば、自身の磁場を発生させることができるとも考えられる。この場合、測定磁場のための磁石を不要にすることも可能である。
本発明の基礎となる思想は、転動要素の摩耗が、転動要素の材料摩耗および/または変形による転動要素の大きさ、もしくは直径の減少を伴うことである。循環転動要素が磁場センサ配置を互いに密着して通過すると、これにより、転動要素の直径が連続的に減少するにつれて、ピッチ、すなわち転動要素の中心点間の距離は減少する。この接続において、循環する転動要素が互いに密着して測定位置を通過する特徴とは、隣接する二つの転動要素間に、少なくとも測定位置領域および測定位置間の領域に、中間の空間がない、すなわち隣接する転動要素は、互いに接触することを意味すると理解されたい。測定磁場の磁束密度の測定を可能にするために、磁場センサ配置は、測定磁場の内側に配置される。測定した磁束密度の比較を行い、転動要素の直径または直径の変化を決定するために、機械要素が動作中であることが有利である。循環方向における転動要素の移動中に、磁場センサ配置は、正弦波推移を決定することができ、循環方向に空間的にオフセットされた二つの磁場センサにより、得られた位相シフトに基づいて摩耗を決定することができる。
本発明に係る摩耗監視装置は、転動要素直径の摩耗関連低減の際に、ピッチ、すなわち隣接する二つの転動要素間の距離、より正確には、その中心点または重心間の距離が小さくなるという事実を利用するものである。
測定位置間の距離が固定されているので、直径の減少により、第1および第2の測定位置で測定した異なる転動要素直径についての磁束密度はそれぞれ、それ以外が同一条件なら、互いに異なる。
例えば、二つの隣接する転動要素を考慮する場合、元の直径から開始する重心が第1または第2の測定位置に正確に位置している場合、直径の摩耗関連低減により、例えば一つの転動要素が第1の測定位置に正確に位置するとき、他方の転動要素は最早第2の測定位置に正確に位置せず、その代わりわずかに離れた位置にある。この結果、例えば、両磨耗状態について第1の測定位置で測定した磁束密度は同一であるが、第2の測定位置で測定した磁束密度は、磨耗によって互いに異なるものとなる。この差を評価部によって使用し、これらの異なる磁束密度または磁束密度比に基づいて、転動要素の直径または直径の摩耗関連変化を決定することができる。
評価部は、決定した直径または直径の変化に基づいて、磨耗検出信号を出すように構成することができ、この磨耗検出信号により、直径減少の対策を具体化でき、または、直径がしきい値に届かないことを表すことができる。
本発明の有利な実施形態によれば、前記転動要素の直径および/または直径の変化の決定は、重心間の距離、特に転動要素の少なくとも一部にわたる距離の平均値の決定を含む。前述したように、転動要素の直径を直接的ではなく、直接隣接する転動要素または三つ以上の転動要素の列の重心間の距離の決定により、間接的に決定する。複数の循環転動要素における距離の平均値を考慮することによって、測定公差に起因する、個々の転動要素の摩耗を誤って検出し大きく推定することを回避できる。
さらに有利な実施形態によれば、前記評価部は、前記磁場センサによって測定した磁束密度の時間経路を記録および評価するように構成される。転動要素が測定磁場を通って移動すると、それぞれで測定した磁束密度は周期的に変化する。これらの磁束密度の周期的な経路を記録し、特に保存し、評価することができる。
特に、磁場センサによって測定した磁束密度の比較には、磁場センサによって測定した磁束密度の時間経路間の時間差、特に位相差の決定が含まれ得る。転動要素が移動する場合には、第1および第2の磁場センサによって測定した磁束密度の時間経路間の位相シフトを、磁束密度の周期的な時間経路から決定することができる。さらに、信号値の振幅変化も検出可能である。位相シフトまたは位相差を用いて、転動要素の摩耗の尺度として使用することができる。位相シフトは、転動要素の直径を表し、位相シフトの変化は転動要素の直径の変化を表すからである。特に、時間差または位相差を決定することにより、既にいくつかの転動要素を平均化している。それにもかかわらず、振幅変化を、磨耗のための尺度として、代替的にまたは追加的に考慮し得る。
磁場センサを通過する転動要素の移動は、正弦波周期信号を生じ、その周波数は、最初、循環速度に依存する。一定の循環速度で、信号経路の信号波長の減少または周波数の増加が生じた場合、これは、転動要素の直径の減少の尺度である。有利には、循環方向Uにオフセットした二つの磁場センサの信号経路における位相差を考慮することにより、循環速度に関わらず、磨耗の尺度を表すことができる。これにより、循環速度によらない、すなわち、循環速度の変動や変化にも関わらない、位相差について考慮することができる。これは、一定の磁場中で転動要素が移動することによる正弦波信号変動の差分走査に基づく相対的な測定であるからである。
本発明のさらに有利な実施形態によれば、測定位置間の距離は、転動要素の公称直径よりも小さく、好ましくは公称直径の半分より小さく、特に公称直径の四分の一に等しい。転動要素の公称直径について、現在の文脈では、摩耗関連または変形関連の減少を伴わない元の直径として理解されたい。測定位置間の距離を転動要素の公称直径に調整することにより、直径変化を特に正確に記録することができる。特に、測定位置間の距離が、公称直径の半分または四分の一にほぼ等しいか、または、それからのずれが10%以下、最大で20%以下の場合、直径の変化を特に正確に決定することができる。例えば、転動要素の重心が第1の測定位置に正確に位置している場合には、第2の測定位置に正確に、この転動要素および隣接する転動要素間の隙間や中間の空間がある。これにより、測定する各磁束密度間の差が最大となる。第1および第2の測定位置で測定する磁束密度の時間経路を考慮する場合、この場合、二つの信号経路間に90°の位相シフトを観測することができる。この位相シフトは、転動要素の磨耗の増加と共に変化する。
さらなる有利な実施形態では、第1の磁場センサおよび第2の磁場センサは、それぞれが二つのハーフブリッジを有する一つの測定ブリッジを備え、二つの磁場センサハーフブリッジは、循環方向Uに互いに入れ子状に、オフセットをもって配置することができる。各ハーフブリッジの磁気抵抗ブリッジ抵抗器は、好ましくは、循環方向Uにおいて離れ、すなわち、ハーフブリッジの長手方向の範囲は、転動要素の循環方向Uに位置合わせされる。各ハーフブリッジは、二つの個別のブリッジ抵抗器を含み、少なくとも一つ、特に両方のブリッジ抵抗器は、磁気抵抗特性を有し、転動要素によって引き起こされる磁場、特に浮遊磁場の変化を測定することができる。各ハーフブリッジの二つのブリッジ抵抗器を循環方向Uに軸方向に整列させることができる循環方向Uにおけるブリッジ抵抗器の軸長手配向により、各ハーフブリッジは、転動要素の公称直径の大領域にまたがり、直径変化について測定ブリッジにおける一信号変化によって検出可能である。さらに、両磁場センサのブリッジ抵抗を循環方向Uにおいて互いに入れ子にかつ空間的にオフセットして配置している場合、両磁場センサは、転動要素の異なる直径領域を記録し、両磁場センサから決定可能な信号の位相変化および/または振幅変化の比較により、移動する転動要素の変化する直径の尺度が表される。
二つの前述の実施形態のうちの一つの有利な発展では、二つの入れ子状磁場センサの隣接するハーフブリッジ間の距離は、転動要素の直径のほぼ四分の一に対応し、個々の磁場センサの各個別ハーフブリッジの二つの磁気抵抗ブリッジ抵抗器間の距離は、転動要素の直径の約半分に対応する。二つの磁場センサのハーフブリッジ間の距離が転動要素の直径の四分の一に対応する場合、一方の磁場センサは、転動要素が循環方向に移動する正弦波推移の場合の、信号経路の上下最大を決定し、他方の磁場センサは、転動要素の移動に起因する信号経路のゼロ交差の領域における最大信号変動の二つの領域を決定することができる。信号経路の差は、可能であれば、ユークリッドノルムのような二つの信号経路のノルムが非常に安定した位相値をもたらす。位相値の変化やそれに由来する量は、転動要素の直径減少の指標であり、少ない配線消費で監視することができる。
本発明のさらに有利な実施形態によれば、磁石は、永久磁石として、特に双極子磁石として設計され、その磁場は測定位置を覆う。特に、これにより、測定磁場が少なくとも測定位置の領域において均一であり、かつ、実質的に同じ磁束密度を有することが保証される。永久磁石を用いることにより、摩耗監視装置の消費電力を低く抑えることができる。単一の磁石の代わりに、2つ以上の磁石を用いることもできる。また、永久磁石の代わりに電磁石を用いることもできる。
さらなる有利な実施形態によれば、摩耗監視装置は、転動要素のガイドチャネルを含み、前述の磁場センサ配置および磁石を、ガイドチャネルの走査壁上に配置する。ガイドチャネルは、転動要素の磁気走査のための磁場センサ配置および/または磁石に特に有利な取り付け位置をここに設けることができるように設計することができる。これについては、以下でより詳細に説明する。ガイドチャネルは、特に、摩耗監視装置の一体部分であってもよい。ガイドチャネルは、直線状であることが好ましく、曲線状の進路を有することも可能である。
有利には、磁石の磁場出口面は、走査壁に平行に走る。転動要素の特に良好な磁気走査が、結果として可能であることが明らかになった。このとき、磁場線は、一般に、少なくとも出口面に近接する転動要素の移動方向に対して垂直となる。
一般的な原理として、磁石は、磁石の磁場出口面が走査壁に対して垂直または他の方向に延びるように配置することもできる。
測定磁場の磁束密度、ならびに/または走査壁の材料および/もしくは厚さは、測定磁場によって検出された転動要素が、測定磁場によって好ましくは位置に関係なく走査壁に向かって引き付けられ、そこにおいて、特に、測定磁場によって検出された転動要素が互いに引き付け合うように、選択されるときに有利であることが判明した。
転動要素を走査壁に引き付けることにより、転動要素が常に所定の相対位置にあることが保証される。特に、転動要素が設計に起因して、または、摩耗が進行して、ガイドチャネル内の横方向の隙間を有する場合、ガイドチャネル内の転動要素の不適切な位置決めによる測定結果の偽造が回避される。例えば、転動要素が互いに対して交互に横方向に変位し、少なくとも転動要素が互いに相互接触していても、転動要素の重心間の距離が、二つの測定位置によって規定される測定距離に対して減少することが考えられるであろう。
測定磁場の適切な構成によって、特に磁場センサ配置の領域において、転動要素が互いに押圧し合うことを保証でき、その結果、測定結果を偽造する可能性のある隙間が二つの隣接する転動要素間に生じないようにすることができる。上述の効果を得るために必要な高磁束密度を達成するために、十分に強い磁石の選択の他に、ガイドチャネルまたは少なくとも走査壁を非磁性材料から構成することもできる。あるいは、または追加で、走査壁を薄くして、転動要素および磁石間の距離を最小にすることもできる。特に、走査壁への転動要素の十分な吸引により、重力に抗して転動要素をガイドチャネル壁に吸引し、位置に依存せず摩耗監視装置を使用可能であることを保証できる。
有利には、磁場センサ配置は、磁気抵抗性磁場センサ、特にAMR、CMR、TMRもしくはGMR磁場センサを含む。これらのセンサ種は、xMR磁場センサとしても知られており、同様に使用可能なホールセンサと、最大50倍に達する高感度により区別される。
上述した磁気抵抗センサは、異方性磁気抵抗(AMR)効果、超巨大磁気抵抗(CMR)効果、トンネル磁気抵抗(TMR)効果、または巨大磁気抵抗(GMR)効果に基づく。これらの種の磁場センサは、方向選択性を有し、すなわち、それらにより、磁場成分の量および方向を決定することができ、したがって、磁場角度決定に理想的である。有利には、全ての磁場センサは、複数の、特に二つまたは四つの磁気抵抗性抵抗素子を備えることができ、これらの磁気抵抗性抵抗素子を、それ自体公知の方法で接続し、ホイートストン測定ブリッジ、特にホイートストンハーフブリッジまたはホイートストンフルブリッジを形成する。このため、磁気抵抗効果素子を好適な方法で空間的に分散させることもあり得る。
一般に、摩耗監視は、新しい状態または較正状態から開始して、両磁場センサの位相値または振幅挙動の変化を比較することによって、転動要素の磨耗状態を示すことができる。これにより、較正された状態に対する監視を保証する。
一般に、直線運動の速度またはねじ駆動の速度、および転動要素の移動速度は、互いに直接依存しない。通常、転動要素運動は、直線行程運動またはねじ駆動よりも小さいが、特定の用途では、駆動運動および転動要素の運動間に直接的な相関を導出できる。これらの場合、摩耗監視装置は、ボールねじの速度を決定する速度センサ、またはリニア軸受の移動速度を決定する位置もしくは速度センサと、ボールねじもしくはリニア軸受の幾何学的パラメータ、および転動要素の直径および/または直径の変化を決定するための速度または移動速度を組み込んだ評価部と、を有利に含むことができる。幾何学的パラメータは、ボールねじのピッチ、ボールねじの直径およびボールねじのバイパスの長さであってもよいが、転動要素軌道長さのリニア軸受の長手方向寸法に対する比、等であってもよい。駆動モータの駆動電流もしくはボールねじのトルクまたはリニア軸受の加速力を含み得るセンサデータに基づいて、摩耗状態の絶対的な監視の改善が可能になる。センサデータにより、転動要素の移動速度を決定できる。これにより、例えば、発生する信号周波数に対する速度または移動速度の推定ができ、磁場センサ配置の単一磁場センサの測定信号だけに基づいて、循環方向Uにおけるボールねじまたはリニア軸受の移動経路を考慮し、転動要素の直径を推定できる。したがって、さらなる幾何学的パラメータおよびセンサデータを考慮して、相対的な監視に代えて、または追加して、絶対的な監視が可能となる。また、転動要素の移動速度を低下させる可能性のあるガイドチャネル壁に対する損傷を検出することも非常に簡単である。
また、本発明は、前記実施形態のいずれかに係る摩耗監視装置を備えたボールねじに関し、前記摩耗監視装置を、前記ボールねじのボール戻しチャネルに配置する。ボールねじとは、ボルトおよびナット間にボールが挿入されたねじ装置である。両部品は、ねじ状の溝を有し、これらの溝は、ボールが充填されるねじ状の管を形成する。ボルトおよびナット間の回転中、ボールは菅内を転がり、ナットの前端に向かって移動する。そこで、それらを受けて、大部分がねじ軸に平行で、ボール戻りチャネルとも呼ばれる管を通過させて、ナットの後端に送り、ねじ状管に再導入する。特に工作機械においてボールねじを使用し、可能な限り最小の軸受けクリアランスを有する特に高い精度が求められる。特に、方向反転の場合に、特に高速駆動時に歓迎されない待機期間につながる軸方向クリアランスは、できるだけ小さく保たれるべきである。一般に、転動要素は閉回路内を循環するので、直接的な摩耗監視は困難である。本発明に係る摩耗監視装置の使用は、ここで特に有利であることが証明されている。
図面および図面の関連する説明によって更なる利点を明らかにする。図面は、本発明の一例を示す。図面、説明および特許請求の範囲は、多くの特徴を組み合わせて含む。当業者は、これらの特徴を個々に考慮し、それらを意味のあるさらなる組み合わせにすることを、便宜的に考慮するであろう。
図面は以下のとおりである。
異なる磁極配置を有する、ガイドチャネル上に配置された磨耗監視装置の概略図の例である。 図1の摩耗監視装置の様々な詳細図であり、一部は変形例である。 異なる直径を有する転動要素の各々の場合における、図1の摩耗監視装置の概略図であり、測定した磁束密度についての関連する信号経路を含む。 磁場センサ配置の測定ブリッジ構成の一例の概略図である。 磁場センサ配置の測定ブリッジ構成のさらなる実施例の概略図である。
以下では、同一または類似の要素について、同一の参照番号を使用している。
図1は、二つの図1aおよび図1bにおいて、機械要素のガイドチャネル20、例えば、ボールねじまたはリニア軸受の戻りチャネル上に配置された摩耗監視装置10の例を示す。ガイドチャネル20には、循環方向Uに移動する複数の転動要素22が保持されており、ガイドチャネル20の断面は転動要素22の直径より僅かに大きいので、転動要素22に対して一種の強制案内を達成する。転動要素22は、例えば、球であるが、機械要素の設計に応じて、任意の他の回転固体によって形成することもできる。
この摩耗監視装置10は、ガイドチャネル20の外壁に配置された双極子として設計された磁石12を備え、磁石12の磁極を、北極の「N」および南極の「S」で示す。なお、逆極性を選択することも勿論、可能である。
図1aでは、磁石12は、磁石12の磁場出口面から出てくる、またはそこから出る磁場線(図示せず)が、磁石12から循環方向Uに垂直に出て、磁極の磁力線は、ガイドチャネル20の走査壁24に対して垂直となるように、ガイドチャネル20に配置される。これにより、磁力線は、紙面の平面内で転動要素22を通過する。
図1bでは、磁石12の磁極位置合わせは、磁場線が再び磁石12の磁極面から循環方向Uに垂直に出て、ここで、それらは、ガイドチャネル20の走査壁24の長手方向の範囲に対して接線方向に磁極面上に整列し、その範囲で、磁場線は、紙面方向に転動要素22を貫通する。
磁場センサ配置14を、磁石12と直接隣接して配置されるように、磁石12に直接接続し、それらをガイドチャネル20の表面上に配置する。ここで、PCBキャリアによって、磁場センサ配置14および磁石12間を有利に配置することができる。磁場センサ配置14は、図3a、3bおよび4、5に一例を示すように、循環方向Uに互いに離して第1の磁場センサ16および第2の磁場センサ18を備えることができる。磁場センサ16、18間の距離は、転動要素22の公称直径の約半分であり、磁場センサ16、18は、一つまたは複数の磁気抵抗性抵抗素子またはホールセンサを備えることができる。このような抵抗素子の配置および接続は、原理的に知られており、これについて、図4を参照してより詳細に説明する。
また、磁石12や磁場センサ配置14で覆われる、ガイドチャネル20の壁の領域も、以下では走査壁24という。
循環する強磁性転動要素22は、磁石12で発生した測定磁場に引き込まれ、重力に抗してさえも走査壁24に引かれ、押しつけられる。また、双極子磁石の磁場線の通常のドーナツ状経路も、測定磁場の領域において、転動要素22が同時に互いに押圧されるという効果を有し、転動要素22、より正確には、転動要素22の重心は、磁場センサ配置を一直線に、隣接する転動要素22間に隙間がないように通過する。転動要素22は、それらの強磁性特性により、磁束密度を局所的に変化させ、該磁束密度またはその変化が磁場センサ16、18によって記録される。
摩耗監視装置10は、評価部(図示せず)をさらに備え、該評価部は、磁場センサ配置14に接続され、磁場センサ16、18によって測定した磁束密度を記録および評価するために設けられる。評価部は、磁場センサ16、18によって測定した磁束密度の比較に基づいて、転動要素の直径または直径の変化を決定するように構成される。以下、これについて、より詳細に説明する。
図2は、ガイドチャネル20上に配置された摩耗監視装置10の様々な詳細図および様々な変形例を示す。
図2aに示す構成では、ガイドチャネル20は、強磁性材料で構成することができる。測定磁場が十分な強度を有することを保証するため、走査壁24の領域でガイドチャネル20の壁厚を薄くすることができ、好ましくは、壁厚を0.1~0.2mmに薄くして十分な磁場侵入を可能とすることができ、そのとき磁場は転動要素、特にボールを磁気的に吸引し、好ましくは、隙間なく隣接させて案内できるので、それらは磁場センサ配置14内を隙間なく隣接して通過できる。この目的のために、ガイドチャネル20の外面の壁に凹部26を設け、凹部26では、磁場センサ配置14を転動要素22に接近させることができるので、磁石12の強さを減じることができる。
図2bに係る構成の変更は、図1の実施例に実質的に対応し、磨耗監視装置10の異なる寸法はここでは重要ではない。ここで、走査壁24は、他の領域におけるガイドチャネル20の壁と同じ厚さを有する。測定磁場を走査壁24に十分侵入させるために、ガイドチャネル20の材料を非磁性材料から構成すると便利である。
図3を参照して、摩耗監視装置10の動作モードについて、以下でより詳細に説明する。
図3aおよび図3bは、それぞれ、磨耗監視装置10およびその内部を循環する転動要素22を含むガイドチャネル20を示す。図3aの転動要素22は、新品であり、したがって、その公称直径を有するが、図3bの転動要素22は、既にある程度の磨耗を受けており、それらの直径は減少している。選択したサイズ比は、縮尺どおりではないことに留意されたい。
図3aの上部および3aは、それぞれ磁場センサ16、18によって測定した磁束密度の時間経路を示し、実線で示す測定曲線S1は、第1の磁場センサ16によって決定した磁束密度経路を表し、破線で示す測定曲線S2は、第2の磁場センサ18によって決定した磁束密度経路を表す。
循環方向Uにおける磁場センサ16、18間の距離により、測定曲線S1、S2は互いに対して位相シフトする。結果として生じる位相差Pを、図3に適切に示す。
図3aで容易に分かるように、磁場センサ16、18間の距離は、公称直径を有する転動要素22の測定曲線S1、S2が互いに90°だけ正確に位相シフトするように選択されている。ここで、測定曲線S1、S2は、ほぼ正弦波または余弦波の経路を有するものと仮定する。
図3aを図3bと比較することにより、転動要素22の磨耗が増加すると、すなわち、直径が減少すると、測定曲線S1、S2が互いに相対的に移動し、これにより、位相差Pの選択した定義で、後者の減少につながることが示されている。したがって、位相差Pは、磨耗の尺度、すなわち、転動要素22の直径の変化の尺度を表す。
磁場センサ配置14が生成した信号の評価を、評価部において適切な方法で行う。特に、測定した位相差Pの時間平均を行うことができる。特に、方向とは独立して評価を行うことができ、循環方向Uと反対方向に循環する転動要素22や静止転動要素22に対しても、転動要素直径やその変化の決定を行うことができる。後者の場合には、平均化される可能性がないため、ある程度高い測定誤差を許容しなければならない場合がある。
図4は、磁場センサ配置14の測定ブリッジ構成を概略的に示す。測定ブリッジ構成14は、二つの測定ブリッジから構成され、測定ブリッジはそれぞれ、正弦成分用の第1磁場センサ16および余弦成分用の第2磁場センサ18を定義する。各測定ブリッジは、電源電圧電位VCCおよび戻り電源電位GND間の電源電圧に接続した磁気抵抗ブリッジ抵抗器28を用いた抵抗対R1、R2、およびR3、R4を有する、二つのハーフブリッジ16aおよび16b、ならびに18aおよび18bから構成される。各ハーフブリッジ16a、16b、および18a、18bの各抵抗対R1およびR2、ならびにR3およびR4間から、それぞれ、正弦成分SIN+、SIN-および余弦成分COS+、COS-のセンサ信号の一部をセンタータップで取り出し可能である。二つのタップSIN+およびSIN-間、ならびにCOS+およびCOS-間の電位差が、磁場センサ16、18のセンサ信号に対応する。磁場センサ16、18は、それぞれ転動要素公称直径の四分の一の距離にある場合、転動要素の直径が変化しないとき、二つのセンサ信号の差は一定のままである。しかしながら、摩耗したとき、信号差は変化し、これにより直径変化の尺度を表す。
図4は、磁場センサ配置14の可能な回路構成を示す。図5は、転動要素の循環方向Uに対して二つの測定ブリッジからなる磁場センサ16、18の有利な空間位置を示す。図5は、各磁場センサ16、18の個々の磁気抵抗ブリッジ抵抗器28の空間配置、および二つの測定ブリッジの可能な配線の両方を示す。第1および第2の磁場センサ16、18の二つのハーフブリッジ16a、18a、および16b、18bをそれぞれ、循環方向Uに対して互いにオフセットして入れ子状に配置し、ハーフブリッジ16aおよび18a間、ならびに16bおよび18b間の距離は、λ/4とし、λは、転動要素の公称直径に正確に対応する。各磁場センサ16、18の各ハーフブリッジ16a、16b、18a、18bの個々のブリッジ抵抗28は、ここでは、循環方向Uにおいてλ/2だけ離間する。
転動要素22は、磁石12の測定磁場を通って移動方向Uに移動し、磁場センサ配置14によって測定した磁場は、転動要素22の移動速度および大きさに応じて正弦波状に変化する。有利には、転動要素22は、実質的に距離λに対応する直径を有するので、第1および第2の磁場センサ16、18の測定値間に最大かつ安定したセンサ値差をもたらす。第1の磁場センサが、唯一の最大値を測定できるとき、他方の磁場センサは、ゼロ交差を測定できるからである。
したがって、転動要素の直径が、例えば、公称直径3mmを有すれば、磁場センサ16または18の各ハーフブリッジ16a、16b、または18a、18bの対応するブリッジ抵抗28を、1500μm離し、かつ二つの磁場センサ16、18のハーフブリッジ16a、18aおよび16b、18bを750μmだけ離間させることができる。もちろん、サイズは、転動要素22の対応する大きさに合わせて拡大伸縮することができ、追加のハーフブリッジまたは複数の磁場センサを設けて、センサを用いたより大きな領域を監視することもできる。二つの磁場センサ16、18のCOS+/-に対する測定値SIN+/-の位相比較に基づいて、転動要素22の移動中に位相差Pを決定することができ、この位相差の変化を摩耗の尺度として用いることができる。例えば、較正を、その公称直径を有する、新しい転動要素22の教示プロセスの一部として行うことができる。評価部は、例えば、現在決定した直径および/または較正された公称直径からのずれを連続的に示す磨耗インジケータを有することができる。
あるいは、または追加的に、転動要素22の現在の決定した直径が所定のしきい値を下回る場合に、適切な視覚、音響または他の警告信号を出すしきい値検出器を設けることもできる。
10 摩耗監視装置
12 磁石
14 磁場センサ配置
16 第1の磁場センサ
16a、16b 第1の磁場センサのハーフブリッジ
18 第2の磁場センサ
18a、18b 第2の磁場センサのハーフブリッジ
20 ガイドチャネル
22 転動要素
24 走査壁
26 凹部
28 磁気抵抗ブリッジ抵抗器
P 位相差
S1、S2 測定曲線
U 循環方向

Claims (15)

  1. ボールねじまたはリニア軸受類の連続した強磁性転動要素(22)を有する機械要素の前強磁性転動要素(22)の摩耗監視のために使用される摩耗監視装置(10)であって、
    測定磁場を生成する少なくとも一つの磁石(12)と、
    前記測定磁場の磁束密度を測定する磁場センサ配置(14)であって、前記磁場センサ配置(14)は、第1の測定位置で前記磁束密度を測定する少なくとも一つの第1の磁場センサ(16)と、第1の測定位置から離れた第2の測定位置で磁束密度を測定する第2の磁場センサ(18)とを有し、前記測定位置は、前記機械要素が循環方向Uに動作中に循環する前記強磁性転動要素(22)が前記測定位置を互いに近接して通過し、かつそれにより生じる前記測定磁場の変化は前記各磁場センサ(16、18)により前記測定位置のうちの一つにおいて検出可能であるように選択されているものと、
    前記磁場センサ配置(14)に接続され、前記磁場センサ(16、18)によって測定した前記磁束密度を記録および評価する評価部であって、前記評価部は、前記磁場センサ(16、18)によって測定した前記磁束密度の比較に基づいて、前記強磁性転動要素(22)の直径および/または前記直径の変化を決定するように構成されているものと、を備え、
    前記評価部は、前記磁場センサ(16、18)によって測定した磁束密度の周期的時間経路を記録および評価するように構成され、
    前記磁場センサ(16、18)によって測定した磁束密度の前記比較は、前記磁場センサ(16、18)によって測定した前記磁束密度の前記周期的時間経路間の位相差の決定を含むことを特徴とする摩耗監視装置(10)。
  2. 前記強磁性転動要素(22)の前記直径の変化の前記決定は、前記強磁性転動要素(22)の重心間の距離の決定を含むことを特徴とする、請求項1に記載の摩耗監視装置(10)。
  3. 前記強磁性転動要素(22)の前記直径の変化の前記決定は、前記強磁性転動要素(22)の少なくとも一部にわたる前記距離の平均値の決定を含むことを特徴とする、請求項2に記載の摩耗監視装置(10)。
  4. 前記測定位置間の距離は、前記強磁性転動要素(22)の公称直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  5. 前記測定位置間の距離は、前記公称直径の半分より小さい、または前記公称直径の四分の一に等しいことを特徴とする、請求項4に記載の摩耗監視装置(10)。
  6. 第1の磁場センサ(16)および第2の磁場センサ(18)は、それぞれが二つのハーフブリッジ(16a、16b、18a、18b)を有する一つの測定ブリッジを備え、前記二つの磁場センサ(16、18)の前記ハーフブリッジ(16a、16b、18a、18b)は、循環方向Uに互いに入れ子状に、オフセットをもって配置され、各ハーフブリッジ(16a、16b、18a、18b)の磁気抵抗ブリッジ抵抗器(28)は、前記循環方向Uに互いに離間して配置されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  7. 隣接するハーフブリッジ(16a、18a、18b、18b)間の距離は、強磁性転動要素(22)の前記直径のほぼ四分の一に対応し、磁場センサ(16、18)の各ハーフブリッジ(16a、16b、18a、18b)の二つの磁気抵抗ブリッジ抵抗器(28)間の距離は、強磁性転動要素(22)の前記直径の約半分に対応する、請求項に記載の摩耗監視装置。
  8. 前記磁石(12)は、永久磁石として設計され、その磁場は前記測定位置を覆うことを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  9. 前記強磁性転動要素(22)のガイドチャネル(20)を含み、前記磁場センサ配置(14)および前記磁石(12)は、前記ガイドチャネル(20)の走査壁(24)上に配置されることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  10. 前記磁石(12)の磁場出口面が、前記循環方向Uにおける前記走査壁(24)の長手方向の範囲に対して平行または垂直であることを特徴とする、請求項に記載の摩耗監視装置(10)。
  11. 前記測定磁場の前記磁束密度、ならびに/または前記走査壁(24)の材料および/もしくは厚さは、前記測定磁場によって検出された強磁性転動要素(22)が、前記測定磁場によって引き付けられ、それによって、検出された強磁性転動要素(22)が互いに引き付け合うように、選択されることを特徴とする、請求項または10に記載の摩耗監視装置(10)。
  12. 前記磁場センサ配置(14)は、AMR、CMR、TMRもしくはGMR磁場センサ(16、18)、またはホールセンサを含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  13. 前記評価部は、前記強磁性転動要素(22)の前記決定された直径が所定のしきい値を下回る場合に警告信号を出すように構成されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  14. 前記ボールねじの速度を決定する速度センサ、または前記リニア軸受の移動速度を決定する位置もしくは速度センサを含み、前記評価部は、前記強磁性転動要素(22)の前記直径および/もしくは前記直径の変化を決定するための前記ボールねじまたは前記リニア軸受の幾何学的パラメータ、および前記速度もしくは移動速度を組み込むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)。
  15. ボールねじのボール戻しチャネルに配置される、請求項1~14のいずれか1項に記載の摩耗監視装置(10)を備えたボールねじ。
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