JP7067217B2 - 熱交換装置 - Google Patents

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Description

本開示は、被冷却対象を冷媒との熱交換によって冷却させる熱交換装置に関する。
従来、超音波によって液状態の冷媒に泡を発生させることで、熱交換器内部の冷媒の流通路に堆積した異物を洗浄する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、熱交換器に対して超音波を発生させる超音波発生部が設けられている。
特開2017-67412号公報
しかしながら、特許文献1の如く、異物洗浄のために超音波発生部という専用機器を熱交換器に設けると、部品点数の増加や装置の複雑化が避けられない。部品点数の増加や装置の複雑化は、製造コストの増大や製品の適用範囲を狭める要因となることから好ましくない。
本開示は、簡素な構成によって冷媒が流通する流通路に堆積した異物を剥離可能な熱交換装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、
被冷却対象(20、ARc)を液状態の冷媒と熱交換させて冷却する熱交換装置であって、
冷媒が流通する流通路(140)を有し、流通路を流れる冷媒と被冷却対象とを熱交換させる熱交換器(14)と、
熱交換器に対して冷媒を供給する冷媒供給ポンプ(12)と、
流通路における少なくとも一部に異物の堆積が予測される際に成立する異物堆積条件の成否を判定する堆積判定部(100c)と、
異物堆積条件が成立する場合に、流通路に堆積した異物を剥離させて流通路を洗浄する異物洗浄処理を実行する処理実行部(100a)と、を備える。
そして、処理実行部は、異物洗浄処理において、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態となるように冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくするように構成されている。
これによると、熱交換器の流通路の少なくとも一部に異物の堆積が予測される場合に、冷媒が過熱度を有する状態となるように熱交換器への冷媒の供給量が小さくなる。冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態になると、流通路内に気泡が生じ、この気泡の体積変化や気泡の消滅時に生ずる力によって流通路に堆積した異物を剥離させることが可能となる。
このように、熱交換器への冷媒の供給量を調整することによって異物を剥離させることが可能な構成では、超音波発生部等の専用機器を設ける必要がないので、熱交換装置の簡素化を図ることができる。すなわち、本開示の熱交換装置によれば、簡素な構成で流通路に堆積した異物を剥離させて流通路を洗浄することが可能となる。
ここで、本開示における「冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態」とは、冷媒の過熱度が、沸騰曲線に示される飽和開始点を上回り、且つ、バーンアウト点以下となる状態を意味する。「過熱度」は、被冷却対象と冷媒との伝熱部位の温度と冷媒の飽和温度との温度差であり、例えば、被冷却対象と冷媒との伝熱部位の温度から冷媒の飽和温度を差し引いた値として定義される。
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
第1実施形態に係る熱交換装置の概略構成図である。 第1実施形態に係る熱交換装置における冷媒と電子部品との熱交換を説明するための説明図である。 第1実施形態に係る熱交換装置における冷媒の流通路に異物が堆積した状態を説明するための説明図である。 第1実施形態に係る熱交換装置の制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。 第1実施形態に係る熱交換装置における閉塞度合の算出手法を説明するための説明図である。 第1実施形態に係る熱交換装置の制御装置が実行する異物洗浄処理の一例を示すフローチャートである。 第1実施形態に係る熱交換装置における過熱度の算出手法を説明するための説明図である。 過熱度と熱伝達率との関係を説明するための説明図である。 第1実施形態に係る熱交換装置における冷媒供給ポンプの作動を説明するための説明図である。 冷媒の流通路に堆積した異物の剥離を説明するための説明図である。 第1実施形態に係る熱交換装置における熱伝達率を説明するための説明図である。 第2実施形態に係る熱交換装置の概略構成図である。 第2実施形態に係る熱交換装置における閉塞度合の算出手法を説明するための説明図である。 第3実施形態に係る熱交換装置の概略構成図である。 第3実施形態に係る熱交換装置の制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。 第3実施形態に係る熱交換装置における基準時間の算出手法を説明するための説明図である。 第4実施形態に係る熱交換装置の概略構成図である。 第4実施形態に係る熱交換装置の制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。 低負荷条件の成否の判定処理の一例を示すフローチャートである。 第5実施形態に係る熱交換装置の制御装置が実行する制御処理の一例を示すフローチャートである。 第6実施形態に係る熱交換装置の制御装置が実行する異物洗浄処理の一例を示すフローチャートである。 第7実施形態に係る熱交換装置の概略構成図である。 第7実施形態に係る熱交換装置における冷媒と電子部品との熱交換を説明するための説明図である。 第7実施形態に係る熱交換装置における冷媒の流通路に異物が堆積した状態を説明するための説明図である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態の熱交換装置1について、図1~図11を参照して説明する。熱交換装置1は、被冷却対象を冷媒と熱交換させる装置である。本実施形態の熱交換装置1は、車両に搭載される車載装置であり、車両に搭載された発熱機器等を被冷却対象として当該被冷却対象を冷却する構成になっている。
図1に示すように、熱交換装置1は、冷媒が循環する循環回路10、冷媒を循環させる循環ポンプ12、被冷却対象を冷媒と熱交換させて冷却する熱交換器14、冷媒を放熱させる放熱器16、制御装置100を含んで構成されている。
循環回路10は、閉回路として構成されている。循環回路10には、液状態の冷媒が充填されている。冷媒は、錆の発生を抑える防錆剤を含む不凍液で構成されている。不凍液は、ロングライククーラントとして知られるものである。不凍液は、例えば、エチレングリコールを含む水に防錆剤、酸化抑制剤等が加えられた液状態の冷媒である。
循環ポンプ12は、循環回路10に設けられた電動式のポンプである。循環ポンプ12は、電動モータを備え、当該電動モータの駆動力によって駆動される。循環ポンプ12は、電動モータの回転数(すなわち、ポンプ回転数)を変えることで、循環回路10における冷媒の流量を変更可能になっている。ポンプ回転数は、後述する制御装置100からの制御信号に応じて変更可能になっている。本実施形態では、循環ポンプ12が、熱交換器14に対して冷媒を供給する冷媒供給ポンプを構成している。
熱交換器14は、循環回路10に設けられている。熱交換器14は、冷媒が流通する流通路140を形成する複数の冷却管142を有し、当該流通路140を流れる冷媒と被冷却対象とを熱交換させるものである。
本実施形態の熱交換器14は、車両に搭載されたインバータに用いられる電子部品20を冷却対象とし、電子部品20を冷媒との熱交換によって冷却する部品冷却器で構成されている。熱交換器14は、複数の冷却管142の間に電子部品20を介在させた状態で、複数の冷却管142を積層した積層体として構成されている。
電子部品20は、通電により発熱する。このため、電子部品20は、通電により発熱する発熱体を構成している。電子部品20は、駆動回路22に接続されている。電子部品20は、例えば、Si基板で構成される半導体素子等の他の半導体素子に比べて高温時の動作特性に優れたSiC基板で構成される半導体素子が内蔵された半導体モジュールで構成されている。
駆動回路22は、電子部品20への通電量を調整するための調整部を構成している。駆動回路22は、後述する制御装置100からの制御信号に応じて、電子部品20への通電量を変更可能に構成されている。
放熱器16は、循環回路10における熱交換器14の冷媒流れ下流側に設けられている。放熱器16は、熱交換器14にて昇温した冷媒を外気と熱交換させて放熱させるものである。放熱器16は、冷媒を貯留する冷媒タンクとしても機能する。なお、放熱器16は、熱交換器14にて昇温した冷媒を外気以外の熱媒体との熱交換によって放熱させる構成になっていてもよい。
次に、熱交換装置1の電子制御部を構成する制御装置100について説明する。制御装置100は、プロセッサ、メモリ110を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。なお、制御装置100のメモリ110は、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
制御装置100の入力側には、循環回路10における冷媒の状態等を検出する手段として、流量センサ101、差圧センサ102、冷媒温度センサ103等が接続されている。
流量センサ101は、熱交換器14に流入する冷媒の流量Grを検出するセンサである。流量センサ101は、循環回路100における循環ポンプ12の冷媒出口から熱交換器14の冷媒入口に至る部位に設けられている。
差圧センサ102は、熱交換器14の冷媒出入口の圧力差を熱交換器16の圧力損失ΔPとして検出するセンサである。差圧センサ102は、熱交換器14の冷媒入口側の圧力から熱交換器14の冷媒出口側の圧力を減算した値を圧力差として出力する構成になっている。
冷媒温度センサ103は、熱交換器14に流入する冷媒の温度(すなわち、冷媒温度Tw)を検出するセンサである。冷媒温度センサ103は、循環回路100における放熱器16の冷媒出口から循環ポンプ12の冷媒入口に至る部位に設けられている。
また、制御装置100の入力側には、電子部品30の温度である機器温度Tdを検出する機器温度センサ104が接続されている。機器温度センサ104は、機器温度Tdを直に検出する構成になっている。なお、機器温度センサ104は、電子部品30への通電量等に基づいて機器温度Tdを間接的に検出する構成になっていてもよい。
さらに、制御装置100は、車両の運転操作等を制御する車両制御装置120に対して、双方向通信可能に接続されている。これにより、制御装置100は、車両制御装置120を介して車両の走行状態等の情報を取得可能になっている。
一方、制御装置100の出力側には、循環ポンプ12の電動モータ、電子部品20の駆動回路22等が接続されている。制御装置100は、各種センサ等から取得した情報に基づいて循環ポンプ12の電動モータ、電子部品20の駆動回路22等を制御する。
ここで、制御装置100には、各種処理を実行する処理実行部、各種条件の成否を判定する判定部、各種演算を行う演算部等を構成するハードウェアおよびソフトウェアが集約されている。
制御装置100には、例えば、熱交換器14の流通路140に堆積した異物を剥離させて流通路140を洗浄する異物洗浄処理を実行する処理実行部100aが集約されている。この異物洗浄処理は、冷媒に気泡を発生させ、当該気泡の体積変化や消滅時に生ずる力によって流通路140に堆積した異物を剥離させる処理である。
また、制御装置100には、流通路140における閉塞度合OD等を算出する演算部100bが集約されている。閉塞度合ODは、流通路140における目詰まりの目安となる指標である。閉塞度合ODは、異物が堆積していない状態が最小値(例えば、ゼロ%)になり、異物等によって流通路140が完全に閉塞された状態が最大値(例えば、100%)になるように設定される。
さらに、制御装置100には、流通路140における少なくとも一部に異物の堆積が予測される際に成立する異物堆積条件の成否を判定する堆積判定部100cが集約されている。本実施形態の異物堆積条件は、閉塞度合ODが所定の閉塞閾値ODth1を上回っている場合に成立する条件である。
次に、本実施形態の熱交換装置1の作動について説明する。熱交換装置1は、例えば、車両の起動後に電子部品20が発熱すると、制御装置100が循環ポンプ12を駆動させて電子部品20の冷却処理を実行する。循環ポンプ12から吐出された冷媒は、図2に示すように、熱交換器14の流通路140に流入する。この際、電子部品20の熱が流通路140を流れる冷媒に移動することで、電子部品20が冷却される。熱交換器14の流通路140から流出した冷媒は、放熱器16に外気に放熱した後、循環ポンプ12に吸入される。
ここで、流通路140を流れる冷媒は、電子部品20の熱によって昇温する。電子部品20が高温になる場合、冷媒の温度が飽和温度Ts付近まで上昇することがある。本発明者らの調査検討によると、冷媒の温度が飽和温度Ts付近まで上昇すると、冷媒に含まれる防錆剤の一部や水に含まれる不純物が変質して固形化し、この固形化したものが図3に示すように異物として流通路140の壁面に堆積することがあった。このような事象は、沸騰により生じた気泡の周囲に冷媒を構成する成分が局所的に濃縮され、水素イオン指数phが上昇することで、防錆剤や水に含まれる不純物に由来する異物が析出されることで生ずると考えられる。そして、このような異物の堆積は、主に熱交換器14の熱交換部で生ずることになるが、外部から侵入する異物とは異なり、熱交換器14の熱交換部におけるどの部分で発生するかの予測が困難である。このため、例えば、熱交換器14の熱交換部における冷媒流れ上流側に異物を捕捉するフィルタを設置しても、当該フィルタによる異物の捕捉効果を得ることが困難である。なお、不凍液の防錆剤や水に含まれる不純物が固形化して異物として堆積することは、本発明者らの検討の末に見いだされたものである。
流通路140に異物が堆積すると、堆積した異物が冷媒と電子部品20との間の熱移動を妨げる熱抵抗となることで、電子部品20の冷却性能が低下してしまう。また、流通路140に異物が堆積すると、流通路140の内壁に形成される微細な凹凸が異物によって平滑化されることで、冷媒と電子部品20との伝熱面積が小さくなる。このことも電子部品20の冷却性能の低下を招く要因となる。
これに対して、熱交換装置1は、制御装置100が異物洗浄処理を含む制御処理を実行する構成になっている。以下、制御装置100が実行する制御処理の一例について図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4に示す制御処理は、例えば、車両の起動後に、周期的または不定期に制御装置100によって実行される。なお、図4に示す制御処理の各制御ステップは、制御装置100が実行する各種機能を実現する機能実現部を構成している。
図4に示すように、制御装置100は、ステップS100で、各種センサや車両制御装置120等から各種信号を取得する。そして、制御装置100は、ステップS110で、熱交換器14の流通路140の閉塞度合ODを算出する。
ここで、熱交換器14は、異物によって流通路140の閉塞度合ODが高まると、熱交換器14に流入する冷媒の流量Grが低下したり、熱交換器14における圧力損失ΔPが高くなったりする。このように、流通路140における閉塞度合ODは、冷媒の流量Grや圧力損失ΔPに強い相関性がある。
そこで、制御装置100は、図5に示すように、演算部100bが、熱交換器14に流入する冷媒の流量Grおよび熱交換器14における圧力損失ΔPに基づいて流通路140における閉塞度合ODを算出する構成になっている。演算部100bは、例えば、冷媒の流量Gr、圧力損失ΔP、および閉塞度合ODの対応関係が規定された制御マップを参照し、流量センサ101の検出値および差圧センサ102の検出値に基づいて閉塞度合ODを算出する。なお、演算部100bは、例えば、冷媒の流量Gr、圧力損失ΔP、および閉塞度合ODの対応関係を数式として規定した関数を用いて閉塞度合ODを算出する構成になっていてもよい。
図4に戻り、制御装置100は、ステップS120で、閉塞度合ODが所定の閉塞閾値ODth1よりも大きいか否かを判定する。閉塞閾値ODth1は、熱交換器14における電子部品20の冷却性能が確保可能な値に予め設定されている。なお、閉塞閾値ODth1は、予め設定された固定値に限らず、例えば、継時的に変化する可変値が採用されていてもよい。
閉塞度合ODが閉塞閾値ODth1以下である場合、流通路140に異物があまり堆積していない状態であり、熱交換器14にて電子部品20の冷却を充分に行うことが可能と考えられる。このため、制御装置100は、ステップS130で、電子部品20の冷却処理を実行する。この冷却処理では、循環ポンプ12のポンプ回転数Nを通常の回転数Nnとなるように制御装置100が循環ポンプ12を制御する。
一方、閉塞度合ODが閉塞閾値ODth1よりも大きい場合、流通路140に異物が堆積した状態であり、熱交換器14における電子部品20の冷却性能が低下する虞がある。このため、制御装置100は、ステップS140に移行して、流通路140に堆積した異物を剥離させる異物洗浄処理を実行する。この異物洗浄処理の詳細については、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図6に示すように、制御装置100は、まず、ステップS141で、流通路140を流れる冷媒の過熱度ΔTを算出する。冷媒の過熱度ΔTは、冷媒と電子部品20との伝熱部位の温度と冷媒の飽和温度Tsとの温度差である。
冷媒と電子部品20との伝熱部位の温度は、電子部品20の機器温度Tdに相関性を有する。また、冷媒の飽和温度Tsは、熱交換器14に流入する冷媒の温度である冷媒温度Twに相関性を有する。このため、冷媒の過熱度ΔTは、機器温度Tdおよび冷媒温度Twに相関性を有することになる。
そこで、制御装置100は、図7に示すように、演算部100bが、電子部品20の機器温度Tdおよび熱交換器14に流入する冷媒の温度である冷媒温度Twに基づいて冷媒の過熱度ΔTを算出する構成になっている。演算部100bは、例えば、機器温度Td、冷媒温度Tw、および過熱度ΔTの対応関係が規定された制御マップを参照し、機器温度センサ104の検出値および冷媒温度センサ103の検出値に基づいて冷媒の過熱度ΔTを算出する。なお、演算部100bは、例えば、機器温度Td、冷媒温度Tw、および過熱度ΔTの対応関係を数式として規定した関数を用いて冷媒の過熱度ΔTを算出する構成になっていてもよい。
続いて、制御装置100は、ステップS142で、目標過熱度ΔTtrを設定する。目標過熱度ΔTtrは、異物洗浄処理の実行時の冷媒の過熱度ΔTの目標値であり、核沸騰域となる範囲に収まる値に設定される。
図8は、冷媒の沸騰現象の形態を冷媒の過熱度ΔTと冷媒と電子部品20との伝熱部位における熱伝達率Hとの関係で表した沸騰曲線である。図8に示すように、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTs未満となる非沸騰域では、冷媒が沸騰せず、自然対流による熱伝導となる。なお、飽和開始点ΔTsは、冷媒に気泡が生じ始める過熱度である。
冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTsを上回る核沸騰域では、沸騰が始まり、熱流束が増大することで、熱伝達率Hが大きくなる。核沸騰域では、過熱度ΔTが大きくなるほど熱伝達率Hが大きくなる。核沸騰域は、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTsからバーンアウト点ΔTmまでの領域である。なお、バーンアウト点ΔTmは、核沸騰域において熱伝達率Hが極大となる過熱度である。
また、冷媒の過熱度ΔTがバーンアウト点ΔTmを上回る膜沸騰域では、冷媒と電子部品20との伝熱部位付近に蒸気膜が拡がる。このため、膜沸騰域では、伝熱部位付近に形成される蒸気膜が冷媒と電子部品20との熱交換を妨げる熱抵抗となり、熱伝達率Hが低下する。また、膜沸騰域では、伝熱部位付近における気泡の発生が抑制されることで、核沸騰域に比べて異物が剥離され難くなる。
ここで、核沸騰域では、飽和開始点ΔTsとバーンアウト点ΔTmとの中間点ΔTc付近で熱伝達率Hの傾きが極大となる。本実施形態では、核沸騰域のうち、飽和開始点ΔTsから中間点ΔTcまでの領域を低過熱度域とし、中間点ΔTcからバーンアウト点ΔTmまでの領域を高過熱度域とする。高過熱度域は、飽和開始点ΔTsよりもバーンアウト点ΔTmに近い過熱度となる領域でもある。
核沸騰域では、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTsよりもバーンアウト点ΔTmに近い高過熱度域になると、気泡の発泡点が増えること等によって、低過熱度域に比べて、気泡の体積変化や気泡の消滅時に生ずる力が大きくなる傾向がある。このため、高過熱度域は、低過熱度域に比べて、異物を剥離させ易いと考えられる。
そこで、制御装置100は、目標過熱度ΔTtrを高過熱度域となる過熱度を目標過熱度ΔTtrに設定する。目標過熱度ΔTtrは、例えば、閉塞度合ODが大きいほど高い過熱度となるように設定される。なお、目標過熱度ΔTtrは、可変値ではなく、予め定められた固定値が採用されていてもよい。
続いて、制御装置100は、ステップS143で、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態となるように循環ポンプ12から熱交換器14への冷媒の供給量を小さくする。すなわち、制御装置100は、図9に示すように、冷却処理時のポンプ回転数Nnよりも小さいポンプ回転数Ncとなるように循環ポンプ12の作動を制御する。
本実施形態の制御装置100は、飽和開始点ΔTsよりもバーンアウト点ΔTmに近い過熱度を目標過熱度ΔTtrとし、冷媒の過熱度ΔTが目標過熱度ΔTtrに近づくように循環ポンプ12から熱交換器14への冷媒の供給量を小さくする。具体的には、制御装置100は、フィードバック制御によって、冷媒の過熱度ΔTが目標過熱度ΔTtrに近づくように循環ポンプ12のポンプ回転数Nを低下させる。
熱交換器14への冷媒の供給量が低下すると、冷媒と電子部品20との伝熱部位の温度が上昇する。そして、過熱度ΔTが核沸騰域に達すると、図10に示すように、流通路140内に気泡が生じ、この気泡の体積変化や気泡の消滅時に生ずる力によって流通路140に堆積した異物が剥離する。
図4に戻り、制御装置100は、ステップS150で、再び流量センサ101の検出値、差圧センサ102の検出値等を取得し、取得した情報に基づいて閉塞度合ODを算出する。このステップS150では、ステップS110と同様の手法で閉塞度合ODを算出する。このため、ステップS150における閉塞度合ODの算出手法についての説明を省略する。
続いて、制御装置100は、ステップS160で、冷媒の閉塞度合ODが所定の解除閾値ODth2を上回っているか否かを判定する。解除閾値ODth2は、閉塞閾値ODth1よりも低い値に設定されている。解除閾値ODth2は、例えば、以下の式F1で示すように、閉塞閾値ODth1から所定値αを減算した値に設定される。
ODth2=ODth1-α …(F1)
閉塞度合ODが所定の解除閾値ODth2を上回っている場合、異物の剥離が完了してないと考えられる。このため、制御装置100は、閉塞度合ODが所定の解除閾値ODth2を上回っている場合、ステップS140に戻り異物洗浄処理を継続する。
一方、閉塞度合ODが所定の解除閾値ODth2以下である場合、異物の剥離が完了していると考えられる。このため、制御装置100は、閉塞度合ODが所定の解除閾値ODth2以下である場合、ステップS130に移行して電子部品20の冷却処理を実施する。
ここで、本実施形態では、ステップS120の判定処理を実行する構成が、異物堆積条件の成否を判定する堆積判定部100cを構成している。そして、異物堆積条件は、閉塞度合ODが閉塞閾値ODth1を上回っている場合に成立する条件になっている。
また、本実施形態では、ステップS120の処理を実行する構成が、異物洗浄処理を実行する処理実行部100aを構成し、ステップS141の処理を実行する構成等が、流通路140における閉塞度合ODを算出する演算部100bを構成している。
以上説明した熱交換装置1によれば、熱交換器14の流通路140の少なくとも一部に異物の堆積が予測される場合に、冷媒が核沸騰域となる過熱度ΔTを有する状態となるように熱交換器14への冷媒の供給量を小さくする構成になっている。これによると、流通路140内に生ずる気泡の体積変化や気泡の消滅時に生ずる力によって流通路140に堆積した異物を剥離させることが可能となる。このような構成では、超音波発生部等の専用機器を設ける必要がないので、熱交換装置1の簡素化を図ることができる。すなわち、本実施形態の熱交換装置1によれば、簡素な構成で流通路140に堆積した異物を剥離させて流通路140を洗浄することが可能となる。
ここで、図11は、熱交換器14を所定期間使用した際の本実施形態の熱交換装置1における熱伝達率Hと本実施形態の比較例となる熱交換装置における熱伝達率Hとを比較した結果を示している。なお、比較例の熱交換装置では、異物洗浄処理を行わない点が本実施形態の熱交換装置と異なっている。図11によれば、本実施形態の熱交換装置1では、比較例の熱交換装置に比べて熱伝達率Hが15%程度大きくなっている。このことは、異物洗浄処理によって流通路140の異物が洗浄されたことで、熱交換器14の冷却性能が改善されることを示している。
本実施形態の熱交換装置1は、異物洗浄処理において、飽和開始点ΔTsよりもバーンアウト点ΔTmに近い過熱度ΔTを目標過熱度ΔTmとし、冷媒の過熱度ΔTが目標過熱度ΔTmに近づくように循環ポンプ12を作動させる。これによると、気泡の体積変化や気泡の消滅時に生ずる力が大きくなるので、流通路140に堆積した異物を剥離させ易くなる。
また、本実施形態の熱交換装置1は、冷媒の流量Grおよび圧力損失ΔPから流通路140における閉塞度合ODを算出し、当該閉塞度合ODが閉塞閾値ODth1を上回っている場合に異物洗浄処理を実行するように構成されている。これによると、流通路140に異物が堆積した状態で異物洗浄処理を実行することができる。換言すれば、異物が堆積していない状態では異物洗浄処理が実行されないので、不必要な異物洗浄処理の実行を抑えることができる。
さらに、本実施形態の熱交換器14は、通電により発熱する電子部品20を被冷却対象とし、電子部品20を冷媒との熱交換によって冷却する部品冷却器で構成されている。これによると、熱交換器14における流通路140の異物堆積に伴う電子部品20の冷却不足を簡素な構成で抑制することができる。
特に、本実施形態では、電子部品20が他の半導体素子と比べて高温時の動作特性に優れたSiC半導体素子で構成されている。これによると、異物洗浄処理によって熱交換器14における冷却性能が若干低下しても、電子部品20の動作を継続させることが可能になる。
(第1実施形態の変形例)
上述の第1実施形態では、異物洗浄処理を実行した後、閉塞度合ODが所定の解除閾値ODth2以下となる場合に電子部品20の冷却処理を実施する構成を例示したが、これに限定されない。熱交換装置1は、例えば、異物洗浄処理を実行した後、異物洗浄処理の実行開始から所定時間経過した際に電子部品20の冷却処理を実施する構成になっていてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の熱交換装置10について、図12、図13を参照して説明する。本実施形態では、閉塞度合ODの算出手法が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図12に示すように、熱交換装置1は、熱交換器14の圧力損失ΔPを検出するための差圧センサ102が省略されている。すなわち、熱交換装置1には、流量センサ101、冷媒温度センサ103等が設けられるだけで、差圧センサ102が設けられていない構成になっている。
そして、図13に示すように、制御装置100の演算部100bは、流通路140の閉塞度合ODを流量センサ101の検出値に基づいて算出する構成になっている。具体的には、演算部100bは、例えば、冷媒の流量Grと閉塞度合ODとの対応関係が規定された制御マップを参照し、流量センサ101の検出値に基づいて閉塞度合ODを算出する。なお、演算部100bは、例えば、冷媒の流量Grとおよび閉塞度合ODとの対応関係を数式として規定した関数を用いて閉塞度合ODを算出する構成になっていてもよい。
本実施形態の熱交換装置1は、閉塞度合ODの算出手法が異なるものの、その他の構成および作動が第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の熱交換装置1は、第1実施形態と同様の構成および作動から奏される採用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
特に、本実施形態の熱交換装置1は、閉塞度合ODを検出するために差圧センサ102を利用していないので、簡素化で流通路140に堆積した異物を洗浄できるといった利点がある。
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、流通路140の閉塞度合ODを流量センサ101の検出値に基づいて算出する例について説明したが、これに限定されない。熱交換装置1は、例えば、熱交換器14における圧力損失ΔPに基づいて閉塞度合ODを算出する構成になっていてもよい。この場合、差圧センサ102を備えるものの、流量センサ101が不要となるので、簡素化で流通路140に堆積した異物を洗浄することが可能になる。
また、熱交換装置1は、例えば、冷媒の流量Grや圧力損失ΔPだけでなく、熱交換器14の使用期間、ポンプ回転数N、冷媒温度Twを加味して閉塞度合ODを算出する構成になっていてもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の熱交換装置1について、図14~図16を参照して説明する。本実施形態では、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tv等が異物堆積条件の成否を決める因子となっている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
本実施形態の熱交換装置1は、制御装置100が、熱交換器14の使用開始からの経過時間または異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間を計測可能に構成されている。すなわち、図14に示すように、制御装置100には、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tvまたは異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間Tvを計測するためのタイマ部100dが集約されている。このタイマ部100dは、制御装置100を構成するハードウェアおよびソフトウェアによって実現されている。
ここで、本発明らの知見によれば、流通路140における異物の堆積は、熱交換器140の使用開始からの経過時間Tvや異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間Tvが長くなるほど生じ易いという傾向がある。
このため、本実施形態の制御装置100は、流通路140の閉塞度合ODではなく、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tvまたは異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間Tvに基づいて、異物洗浄処理を実行する構成になっている。なお、本実施形態の熱交換装置1は、流通路140の閉塞度合ODを算出する必要がないので、流量センサ101や差圧センサ102が設けられていない構成になっている。
以下、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の一例について図15を参照して説明する。図15に示す制御処理は、例えば、車両の起動後に、周期的または不定期に制御装置100によって実行される。なお、図15に示す制御処理の各制御ステップは、制御装置100が実行する各種機能を実現する機能実現部を構成している。
図15に示すように、制御装置100は、ステップS100で、各種センサや車両制御装置120等から各種信号を取得する。その後、制御装置100は、ステップS160で、タイマ部100dを作動させて、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tvまたは異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間Tvを計測する。そして、制御装置100は、ステップS170で、上述の経過時間Tvが所定の基準時間Tvthを上回っているか否かを判定する。本実施形態では、ステップS170の判定処理を実行する構成が、異物堆積条件の成否を判定する堆積判定部100cを構成している。そして、異物堆積条件は、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tvまたは異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間Tvが所定の基準時間Tvthを上回っている場合に成立する条件となっている。
ここで、熱交換装置1の各機器等の使用態様によっては、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tv等が短くても流通路140に異物の堆積が生ずることがあり得る。例えば、循環ポンプ12が低い能力で稼働されていたり、流通路140に流入する冷媒の温度が高い状態が継続されたりすると、短期間で流通路140に異物の堆積が生じ得る。
このため、異物堆積条件の判定閾値となる基準時間Tvthは、循環ポンプ12の稼働状況、冷媒の温度変化に応じて可変する可変閾値になっている。具体的には、制御装置100は、図16に示すように、演算部100bが、循環ポンプ12のポンプ回転数Nおよび冷媒温度Twに基づいて基準時間Tvthを設定する構成になっている。演算部100bは、例えば、循環ポンプ12が低い能力で稼働する状態や、流通路140に流入する冷媒の温度が高い状態が継続している場合に、基準時間Tvthを短い時間に設定する。また、演算部100bは、例えば、循環ポンプ12が高い能力で稼働する状態や、流通路に流入する冷媒の温度が低い状態が継続している場合に、基準時間Tvthを長い時間に設定する。
図15に戻り、経過時間Tvが基準時間Tvth以下である場合、流通路140に異物があまり堆積していない状態であり、熱交換器14にて電子部品20の冷却を充分に行うことが可能と考えられる。このため、制御装置100は、ステップS130で、電子部品20の冷却処理を実行する。この冷却処理は、第1実施形態で説明したものと同じである。
一方、経過時間Tvが基準時間Tvthよりも大きい場合、流通路140に異物が堆積した状態であり、熱交換器14における電子部品20の冷却性能が低下する虞がある。このため、制御装置100は、ステップS140に移行して、流通路140に堆積した異物を剥離させる異物洗浄処理を実行する。この異物洗浄処理は、第1実施形態で説明したものと基本的に同じである。但し、本実施形態の制御装置100は、異物の剥離に要する時間が経過するまで異物洗浄処理を継続する構成になっている。
ステップS140の異物洗浄処理が終了すると、制御装置100は、ステップS190に移行してタイマリセット処理を実行する。この処理では、タイマ部100dで計時した時間がリセットされる。
本実施形態の熱交換装置1は、異物堆積条件の成否を判定する処理の内容が異なるものの、その他の構成および作動が第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の熱交換装置1は、第1実施形態と同様の構成および作動から奏される採用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
本実施形態の熱交換装置1は、熱交換器14の使用開始からの経過時間Tv等が基準時間Tvthを上回っている場合に異物洗浄処理を実行するように構成されている。これによると、流通路140に異物が堆積した状態で異物洗浄処理を実行することができる。換言すれば、異物が堆積していない状態では異物洗浄処理が実行されないので、不必要な異物洗浄処理の実行を抑えることができる。
特に、本実施形態の熱交換装置1は、流通路140の閉塞度合ODを算出する必要がないので、流量センサ101や差圧センサ102が不要となる。このため、より簡素な構成で流通路140に堆積した異物を剥離させることが可能になる。
(第3実施形態の変形例)
上述の第3実施形態では、異物堆積条件の判定閾値となる基準時間Tvthを可変閾値とする例について説明したが、これに限定されない。基準時間Tvthは、例えば、固定閾値になっていてもよい。
上述の第3実施形態では、異物堆積条件が、経過時間Tvが所定の基準時間Tvthを上回っている場合に成立する条件となっているものを例示したがこれに限定されない。異物堆積条件は、例えば、経過時間Tvが所定の基準時間Tvthを上回っている場合、または、閉塞度合ODが閉塞閾値ODth1を上回っている場合に成立する条件になっていてもよい。すなわち、異物堆積条件は、経過時間Tvおよび閉塞度合ODの双方を加味して成立する条件になっていてもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図17~図19を参照して説明する。本実施形態では、異物堆積条件の成否だけでなく、低負荷条件の成否を加味して異物洗浄処理を実行する構成になっている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
本実施形態の熱交換装置1は、制御装置100が、被冷却対象である電子部品20を含む機器(例えば、インバータ)の負荷が所定の基準負荷よりも低いと予測される際に成立する低負荷条件の成否を判定可能に構成されている。すなわち、図17に示すように、制御装置100には、低負荷条件の成否を判定するための負荷判定部100eが集約されている。この負荷判定部100eは、制御装置100を構成するハードウェアおよびソフトウェアによって実現されている。
ここで、被冷却対象である電子部品20を含む機器の負荷が高い場合、被冷却対象の発熱量が大きくなっていると予測されるので、異物洗浄よりも被冷却対象の冷却を優先させる必要がある。そこで、本実施形態の制御装置100は、異物堆積条件および低負荷成立条件の双方が成立した際に異物洗浄処理を実行する構成になっている。
以下、本実施形態の制御装置100が実行する制御処理の一例について図18を参照して説明する。図18に示す制御処理は、例えば、車両の起動後に、周期的または不定期に制御装置100によって実行される。なお、図18に示すステップS100~S160の処理は、図4に示す制御処理のステップS100~S160の処理と同様であるため、その説明を省略することがある。
図18に示すように、ステップS120の判定処理で閉塞度合ODが閉塞閾値ODth1よりも大きいと判定された場合、制御装置100は、ステップS200で、低負荷条件が成立したか否かを判定する。この結果、低負荷条件が不成立となる場合、制御装置100は、ステップS130で、冷却処理を実行する。一方、低負荷条件が成立する場合、制御装置100は、ステップS140で、異物洗浄処理を実行する。
ここで、被冷却対象である電子部品20を含む機器の負荷が低い場合、被冷却対象の発熱量が小さく、冷媒の受熱量が小さいので、冷媒温度Twが飽和温度Ts以下になっている場合が多いと考えられる。このため、低負荷条件は、異物洗浄処理を実行する直前の冷媒温度Twが飽和温度Ts以下である場合に成立する条件になっている。以下、制御装置100が実行する低負荷条件の成否を判定する判定処理について図19を参照して説明する。
図19に示すように、制御装置100は、ステップS201で、冷媒温度Twが予め設定された飽和温度Ts以下であるか否かを判定する。この結果、冷媒温度Twが飽和温度Ts以下であれば、制御装置100は、低負荷条件が成立すると判断する。一方、冷媒温度Twが飽和温度Tsを上回っている場合、制御装置100は、低負荷条件が不成立であると判断する。
ここで、本実施形態では、ステップS200の判定処理を実行する構成が、低負荷条件の成否を判定する負荷判定部100eを構成している。そして、低負荷条件は、異物洗浄処理を実行する直前の冷媒温度Twが飽和温度Ts以下である場合に成立する条件となっている。
以上の如く、本実施形態の熱交換装置1は、低負荷条件の成否を判定する判定処理が追加されているものの、その他の構成および作動が第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の熱交換装置1は、第1実施形態と同様の構成および作動から奏される採用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
本実施形態の熱交換装置1は、異物堆積条件が成立し、且つ、低負荷条件が成立した際に、異物洗浄処理を実行する構成になっている。これによると、冷却対象である電子部品20を含む機器の負荷が高い場合には、異物洗浄よりも被冷却対象の冷却を優先されるので、被冷却対象の保護を充分に図ることができる。
(第4実施形態の変形例)
上述の第4実施形態では、低負荷条件として、冷媒温度Twが飽和温度Ts以下となっている際に成立する条件を例示したが、これに限定されない。低負荷条件は、例えば、電子部品20を含む機器を停止させる処理(例えば、車両の駆動停止処理)の実行時や、電子部品20を含む機器がアイドル状態(例えば、車両のアイドル状態)となる際に成立する条件になっていてもよい。なお、電子部品20を含む機器を停止させる処理の実行時や、電子部品20を含む機器のアイドル状態は、車両制御装置12から取得した情報に基づいて特定可能である。また、低負荷条件は、車両のメンテナンス時に実行される過度放電処理等の実行時に成立する条件になっていてもよい。
また、上述の第4実施形態では、第1実施形態で説明した制御処理に対して、低負荷条件の成否を判定する判定処理を追加する例について説明したが、これに限定されない。低負荷条件の成否を判定する判定処理は、例えば、第3実施形態で説明した制御処理に対して追加されていてもよい。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の熱交換装置10について、図20を参照して説明する。本実施形態では、低負荷条件の成否を判定する判定処理を、異物堆積条件の成否を判定する判定処理に先立って実行する構成になっている点が第4実施形態と相違している。本実施形態では、第4実施形態と異なる部分について主に説明し、第4実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図20に示すように、ステップS100で各種センサや車両制御装置120等から各種信号を取得した後、制御装置100は、ステップS200で、低負荷条件が成立したか否かを判定する。この結果、低負荷条件が不成立となる場合、制御装置100は、ステップS130で、冷却処理を実行する。一方、低負荷条件が成立する場合、制御装置100は、ステップS120で、流通路140の閉塞度合ODを算出する。
以上の如く、本実施形態の熱交換装置1は、低負荷条件の成否を判定する判定処理を異物堆積条件の成否を判定する判定処理に先立って実行するものの、その他の構成および作動が第4実施形態と同様である。したがって、本実施形態の熱交換装置1は、第4実施形態と同様の構成および作動から奏される採用効果を第4実施形態と同様に得ることができる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態の熱交換装置10について、図21を参照して説明する。本実施形態では、異物洗浄処理の実行時に、制御装置100が電子部品20の発熱量を大きくする点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図21は、本実施形態の制御装置100が実行する異物洗浄処理の一例を示すフローチャートである。なお、図21に示すステップS141~S143の処理は、図6に示す制御処理のステップS141~S143の処理と同様であるため、その説明を省略することがある。
図21に示すように、制御装置100は、ステップS143でポンプ回転数Nを低下させた後、ステップS144に移行する。すなわち、制御装置100は、ステップS144で、各種センサや車両制御装置120等から各種信号を取得する。そして、制御装置100は、ステップS145で、流通路140を流れる冷媒の過熱度ΔTを算出する。冷媒の過熱度ΔTの算出手法は、ステップS141と同様であるため、その説明を省略する。
続いて、制御装置100は、ステップS146で、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTsよりも大きいか否かを判定する。すなわち、制御装置100は、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態であるか否かを判定する。
この結果、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTsよりも大きい場合、異物を剥離可能な状態であると考えられる。このため、制御装置100は、電子部品20の発熱量を増大させることなく、異物洗浄処理を抜ける。
一方、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTs以下である場合、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態ではなく、異物の剥離が難しい状態であると考えられる。このため、制御装置100は、ステップS147で、電子部品20の発熱量を増大させる。具体的には、制御装置100は、電子部品20の発熱量が増大するように、駆動回路22によって電子部品20への通電量を増加させる。
以上の如く、本実施形態の熱交換装置1は、異物洗浄処理の実行時に制御装置100が電子部品20の発熱量を大きくするものの、その他の構成および作動が第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態の熱交換装置1は、第1実施形態と同様の構成および作動から奏される採用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
特に、本実施形態の熱交換装置1は、異物洗浄処理の実行時に被冷却対象である電子部品20の発熱量を大きくするので、異物洗浄処理の実行時に電子部品20と冷媒との伝熱部位の温度が上昇する。これに伴い冷媒の過熱度ΔTが大きくなることで、流通路140に堆積した異物を剥離させ易くなる。
具体的には、熱交換装置1は、循環ポンプ12による冷媒の供給量の調整だけは冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態にならない場合に、電子部品20の発熱量を大きくする構成になっている。これによると、異物洗浄処理の実行時に、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態にして、流通路140に堆積した異物を剥離させ易くなる。
(第6実施形態の変形例)
上述の第6実施形態では、異物洗浄処理にて循環ポンプ12のポンプ回転数Nを低下させた後、冷媒の過熱度ΔTが飽和開始点ΔTsよりも大きい場合に限って、電子部品20の発熱量を増大させる例について説明したが、これに限定されない。
熱交換装置1は、例えば、異物洗浄処理にて循環ポンプ12のポンプ回転数Nを低下させた後、冷媒の過熱度ΔTによらず、電子部品20の発熱量を増大させる構成になっていてもよい。また、熱交換装置1は、例えば、異物洗浄処理にて循環ポンプ12のポンプ回転数Nを低下させた後、電子部品20の機器温度Tdが所定の温度以下である場合に、電子部品20の発熱量を増大させる構成になっていてもよい。
ここで、電子部品20を含む機器の負荷が高い場合に、電子部品20の発熱量を増大させると、電子部品20の発熱量の増大が電子部品20を含む機器の作動に大きく影響する可能性がある。このため、熱交換装置1は、例えば、異物洗浄処理にて循環ポンプ12のポンプ回転数Nを低下させた後、低負荷条件が成立した場合に、電子部品20の発熱量を増大させる構成になっていることが望ましい。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態の熱交換装置10について、図22~図24を参照して説明する。本実施形態の熱交換装置1は、車両に搭載された過給機SCによって内燃機関EGに過給される過給吸気ARcが熱交換器14Aの被冷却対象になっている点が第1実施形態と異なっている。
熱交換装置1が搭載される車両には、図22に示すように、車両を駆動させる内燃機関EGの吸気系に、過給機SCが設けられている。この過給機SCは、内燃機関EGに供給する空気を圧縮し、その密度を高めることで、内燃機関EGの出力を向上させるために設けられている。
熱交換装置1は、熱交換器14Aが、内燃機関EGの吸気系において、内燃機関EGと過給機SCとの間に配置されている。すなわち、熱交換器14Aは、過給機SCによって内燃機関EGに過給される過給吸気ARcを被冷却対象とし、過給吸気ARcを冷媒との熱交換によって冷却するインタークーラで構成されている。
ここで、過給機SCには、空気の圧縮能力を調整するための駆動回路DCが設けられている。過給機SCで圧縮された過給吸気ARcは、その発熱量が駆動回路DCによって調整可能になっている。本実施形態では、駆動回路DCが被冷却対象である過給吸気ARcの発熱量を調整する調整部を構成している。駆動回路DCは、制御装置100からの制御信号に応じて、過給吸気ARcの発熱量を変更可能に構成されている。
次に、本実施形態の制御装置100について説明すると、制御装置100の入力側には、流量センサ101、差圧センサ102、冷媒温度センサ103等が接続されている。また、制御装置100は、車両制御装置120に対して双方向通信可能に接続されている。
さらに、制御装置100の入力側には、熱交換器14Aに流入する過給吸気ARcの温度である吸気温度Taを検出する吸気温度センサ105が接続されている。吸気温度センサ105は、吸気温度Taを直に検出する構成になっている。吸気温度センサ105は、冷媒と過給吸気との伝熱部位の温度を把握するために設けられている。吸気温度センサ105で検出される吸気温度Taは、冷媒の過熱度ΔT等の算出に用いられる。なお、吸気温度センサ105は、過給機SCの温度等に基づいて吸気温度Taを間接的に検出する構成になっていてもよい。
一方、制御装置100の出力側には、循環ポンプ12の電動モータ、過給機SCの駆動回路DC等が接続されている。制御装置100は、各種センサ等から取得した情報に基づいて循環ポンプ12の電動モータ、過給機SCの駆動回路DC等を制御する。本実施形態の熱交換装置1は、他の構成が第1実施形態と同様に構成されている。
次に、本実施形態の熱交換装置1の作動について説明する。熱交換装置1は、例えば、車両の起動後に過給吸気ARcの温度が高くなると、制御装置100が循環ポンプ12を駆動させて過給吸気ARcの冷却処理を実行する。循環ポンプ12から吐出された冷媒は、図23に示すように、熱交換器14Aの流通路140に流入する。この際、過給吸気ARcの熱が流通路140を流れる冷媒に移動することで、過給吸気ARcが冷却される。熱交換器14の流通路140から流出した冷媒は、放熱器16に外気に放熱した後、循環ポンプ12に吸入される。
ここで、流通路140を流れる冷媒は、過給吸気ARcの熱によって昇温する。過給吸気ARcが高温になる場合、冷媒温度Twが飽和温度Ts付近まで上昇することがある。そして、冷媒温度Twが飽和温度Ts付近まで上昇すると、冷媒に含まれる防錆剤の一部や水に含まれる不純物が変質して固形化し、この固形化したものが図24に示すように異物として流通路140に堆積することがある。
このため、本実施形態の熱交換装置1は、制御装置100が異物洗浄処理を含む制御処理を実行する構成になっている。本実施形態の制御装置100が実行する制御処理は、第1実施形態で説明した制御処理に対して、被冷却対象が異なるだけ、基本的には同じ処理内容となっている。このため、制御処理100が実行する制御処理の説明については省略する。
以上説明した本実施形態の熱交換装置1は、第1実施形態に対して被冷却対象が異なるものの、基本的に同様に構成されている。したがって、本実施形態の熱交換装置1は、第1実施形態と同様の構成および作動から奏される採用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
特に、本実施形態の熱交換装置1は、熱交換器14Aが過給吸気ARcを被冷却対象とするインタークーラで構成されている。これによると、熱交換器14Aにおける流通路140の異物堆積に伴う過給吸気の冷却不足を簡素な構成で抑制することができる。
(第7実施形態の変形例)
上述の第7実施形態では、第1実施形態で説明した熱交換器14の被冷却対象を電子部品20から過給吸気ARcに変更した構成を例示したが、これに限定されない。熱交換装置1は、例えば、第2~第6実施形態で説明した熱交換器14の被冷却対象を電子部品20から過給吸気ARcに変更された構成になっていてもよい。第6実施形態の如く、異物洗浄処理にて循環ポンプ12のポンプ回転数Nを低下させた後に被冷却対象の発熱量を増大させる場合、過給吸気ARcの温度が高くなるように制御装置100によって駆動回路DCを制御する構成にすればよい。
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
上述の実施形態では、熱交換装置1として冷媒が循環する循環回路10を備えるものを例示したが、これに限定されない。熱交換装置1は、例えば、冷媒が循環しない開放型の冷媒回路を備える構成になっていてもよい。
上述の実施形態では、目標過熱度ΔTtrを沸騰曲線にて示される飽和開始点ΔTsよりもバーンアウト点ΔTmに近い過熱度に設定するものを例示したが、これに限定されない。熱交換装置1は、例えば、目標過熱度ΔTtrがよりもバーンアウト点ΔTmよりも飽和開始点ΔTsに近い過熱度に設定される構成になっていてもよい。
上述の実施形態では、冷媒としてロングライククーラント(すなわち、防錆剤を含む不凍液)が採用されるものを例示したが、これに限定されない。ロングライククーラント以外の冷媒を用いる場合であっても、熱交換器14の内部に酸化物等の異物が堆積することがあり得る。このため、熱交換装置1は、冷媒として、ロングライククーラント以外の液状態の流体が採用されていてもよい。
上述の実施形態では、電子部品20がSiC半導体素子で構成される例について説明したが、これに限定されない。電子部品20は、例えば、Si半導体素子で構成されていてもよい。
上述の実施形態では、熱交換装置1として車両に搭載されるものを例示したが、これに限定されない。熱交換装置1は、車両に搭載されるものに限らず、例えば、定置型の機器等に搭載されていてもよい。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、熱交換装置は、熱交換器と、冷媒供給ポンプと、異物堆積条件の成否を判定する堆積判定部と、異物堆積条件が成立する場合に異物洗浄処理を実行する処理実行部と、を備える。そして、処理実行部は、異物洗浄処理において、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態となるように冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくする。
第2の観点によれば、熱交換装置の処理実行部は、異物洗浄処理において、冷媒の沸騰曲線にて示される飽和開始点からバーンアウト点までの範囲のうち、飽和開始点よりもバーンアウト点に近い過熱度を目標過熱度とする。そして、処理実行部は、冷媒の過熱度が目標過熱度に近づくように冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくする。
冷媒は、飽和開始点よりもバーンアウト点に近い過熱度になると、気泡の発泡点が増えること等によって、気泡の体積変化や気泡の消滅時に生ずる力が大きくなる。このため、異物洗浄処理において、冷媒がバーンアウト点に近い過熱度となるように熱交換器への冷媒の供給量を小さくすれば、流通路に堆積した異物を剥離させ易くなる。
ここで、「飽和開始点」は、冷媒に気泡が生じ始める過熱度である。また、「バーンアウト点」は、核沸騰域において熱伝達率が極大となる過熱度である。
第3の観点によれば、熱交換装置は、熱交換器に流入する冷媒の流量および熱交換器における圧力損失の少なくとも一方に基づいて、流通路における閉塞度合を算出する演算部を備える。そして、異物堆積条件は、閉塞度合が所定の閉塞閾値を上回っている場合に成立する条件を含んでいる。
流通路に異物が堆積して流通路の閉塞度合が高まると、熱交換器に流入する冷媒の流量が低下したり、熱交換器における圧力損失が高くなったりする。このように、流通路における閉塞度合は、冷媒の流量や圧力損失に強い相関性がある。すなわち、冷媒の流量や圧力損失に基づいて流通路の閉塞度合を把握可能となる。そして、冷媒の流量や圧力損失に基づいて算出した閉塞度合を異物堆積条件の成否を決める因子とすれば、流通路に異物が堆積した状態で異物洗浄処理を実行することができる。換言すれば、異物が堆積していない状態では異物洗浄処理が実行されないので、不必要な異物洗浄処理の実行を抑えて、被冷却対象の冷却を効率よく実施することができる。
第4の観点によれば、熱交換装置の異物堆積条件は、熱交換器の使用開始からの経過時間または異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間が所定の基準時間を上回っている場合に成立する条件を含んでいる。
本発明らの知見によれば、流通路における異物の堆積は、熱交換器の使用開始からの経過時間や異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間が長くなるほど生じ易いという傾向がある。このため、熱交換器の使用開始からの経過時間や異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間を異物堆積条件の成否を決める因子とすれば、流通路に異物が堆積した状態で異物洗浄処理を実行することができる。換言すれば、異物が堆積していない状態では異物洗浄処理が実行されないので、不必要な異物洗浄処理の実行を抑えて、被冷却対象の冷却を効率よく実施することができる。
ここで、熱交換装置の各機器等の使用態様によっては、熱交換器の使用開始からの経過時間等が短くても流通路に異物の堆積が生ずることがあり得る。例えば、冷媒供給ポンプが低い能力で稼働されていたり、流通路に流入する冷媒の温度が高い状態が継続されたりすると、短期間で流通路に異物の堆積が生じ得る。
このため、異物堆積条件の判定閾値となる基準時間は、冷媒供給ポンプの稼働状況、冷媒の温度変化に応じて可変する可変閾値になっていることが望ましい。可変閾値の設定手法としては、例えば、冷媒供給ポンプが低い能力で稼働する状態や、流通路に流入する冷媒の温度が高い状態が継続している場合に、基準時間を短い時間に設定することが挙げられる。また、可変閾値の設定手法としては、例えば、冷媒供給ポンプが高い能力で稼働する状態や、流通路に流入する冷媒の温度が低い状態が継続している場合に、基準時間を長い時間に設定することが挙げられる。
第5の観点によれば、熱交換装置は、被冷却対象の発熱量を調整する調整部を備える。そして、処理実行部は、異物洗浄処理において、調整部によって被冷却対象の発熱量を大きくする。このように、異物洗浄処理の実行時に被冷却対象の発熱量を大きくすれば、被冷却対象と冷媒との伝熱部位の温度が上昇し、冷媒の過熱度が大きくなるので、流通路に堆積した異物を剥離させ易くなる。
第6の観点によれば、熱交換装置の処理実行部は、冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくしても、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態にならない場合に、調整部によって被冷却対象の発熱量を大きくする。このように、冷媒の供給量の調整だけは冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態にならない場合に、被冷却対象の発熱量を大きくする構成とすれば、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態にすることができる。
第7の観点によれば、熱交換装置は、被冷却対象を含む機器の負荷が所定の基準負荷よりも低いと予測される際に成立する低負荷条件の成否を判定する負荷判定部を備える。そして、処理実行部は、異物堆積条件が成立し、且つ、低負荷条件が成立した際に、異物洗浄処理を実行する。
被冷却対象を含む機器の負荷が高い場合、被冷却対象の発熱量が大きくなっていると予測されるので、異物洗浄よりも被冷却対象の冷却を優先させる必要がある。このため、異物洗浄処理は、異物堆積条件および低負荷成立条件の双方が成立した際に実行されることが望ましい。
第8の観点によれば、熱交換装置の低負荷条件は、異物洗浄処理を実行する前の冷媒が飽和温度以下である場合に成立する条件を含んでいる。被冷却対象を含む機器の負荷が低い場合、被冷却対象の発熱量が小さく、冷媒の受熱量が小さいので、冷媒が飽和温度以下になっている場合が多いと考えられる。このため、低負荷条件は、異物洗浄処理を実行する前の冷媒が飽和温度以下である場合に成立する条件とすることができる。
第9の観点によれば、熱交換装置の熱交換器は、通電により発熱する電子部品を被冷却対象とし、電子部品を冷媒との熱交換によって冷却する部品冷却器で構成されている。これによると、熱交換器における流通路の異物堆積に伴う電子部品の冷却不足を簡素な構成で抑制することができる。
第10の観点によれば、熱交換装置の熱交換器は、過給機によって内燃機関に過給される過給吸気を被冷却対象とし、過給吸気を冷媒との熱交換によって冷却するインタークーラで構成されている。これによると、熱交換器における流通路の異物堆積に伴う過給吸気の冷却不足を簡素な構成で抑制することができる。
第11の観点によれば、熱交換装置に用いられる冷媒は、錆の発生を抑える防錆剤を含む不凍液で構成されている。
本発明者らは、冷媒として防錆剤を含む不凍液を採用し、当該不凍液によって被冷却対象を冷却することを検討している。ところが、不凍液を冷媒として採用した場合、冷媒が飽和温度付近まで上昇すると防錆剤の一部が変質して固形化し、この固形化したものが異物として堆積することがあった。このような異物の堆積は、外部からの侵入する異物とは異なり、熱交換器におけるどの部分で発生するかの予測が困難であり、フィルタ等で対応することが難しい。
これに対して、本開示の熱交換装置は、熱交換器に供給する冷媒の供給量を小さくすることで流通路内に気泡を生じさせ、当該気泡によって流通路に堆積した異物を剥離させる構成になっているので、効率よく異物の洗浄を行うことができる。
1 熱交換装置
12 循環ポンプ(冷媒供給ポンプ)
14 熱交換器
140 流通路
20 電子部品(被冷却対象)
100a 処理実行部
100c 堆積判定部

Claims (11)

  1. 被冷却対象(20、ARc)を液状態の冷媒と熱交換させて冷却する熱交換装置であって、
    冷媒が流通する流通路(140)を有し、前記流通路を流れる冷媒と前記被冷却対象とを熱交換させる熱交換器(14)と、
    前記熱交換器に対して冷媒を供給する冷媒供給ポンプ(12)と、
    前記流通路における少なくとも一部に異物の堆積が予測される際に成立する異物堆積条件の成否を判定する堆積判定部(100c)と、
    前記異物堆積条件が成立する場合に、前記流通路に堆積した異物を剥離させて前記流通路を洗浄する異物洗浄処理を実行する処理実行部(100a)と、を備え、
    前記処理実行部は、前記異物洗浄処理において、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態となるように前記冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくする熱交換装置。
  2. 前記処理実行部は、前記異物洗浄処理において、冷媒の沸騰曲線にて示される飽和開始点からバーンアウト点までの範囲のうち、前記飽和開始点よりもバーンアウト点に近い過熱度を目標過熱度とし、冷媒の過熱度が前記目標過熱度に近づくように前記冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくする請求項1に記載の熱交換装置。
  3. 前記熱交換器に流入する冷媒の流量および前記熱交換器における圧力損失の少なくとも一方に基づいて、前記流通路における閉塞度合を算出する演算部(100b)を備え、
    前記異物堆積条件は、前記閉塞度合が所定の閉塞閾値を上回っている場合に成立する条件を含んでいる請求項1または2に記載の熱交換装置。
  4. 前記異物堆積条件は、前記熱交換器の使用開始からの経過時間または前記異物洗浄処理を前回実行してからの経過時間が所定の基準時間を上回っている場合に成立する条件を含んでいる請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換装置。
  5. 前記被冷却対象の発熱量を調整する調整部(22、DC)を備え、
    前記処理実行部は、前記異物洗浄処理において、前記調整部によって前記被冷却対象の発熱量を大きくする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換装置。
  6. 前記処理実行部は、前記冷媒供給ポンプからの冷媒の供給量を小さくしても、冷媒が核沸騰域となる過熱度を有する状態にならない場合に、前記調整部によって前記被冷却対象の発熱量を大きくする請求項5に記載の熱交換装置。
  7. 前記被冷却対象を含む機器の負荷が所定の基準負荷よりも低いと予測される際に成立する低負荷条件の成否を判定する負荷判定部(100e)を備え、
    前記処理実行部は、前記異物堆積条件が成立し、且つ、前記低負荷条件が成立した際に、前記異物洗浄処理を実行する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換装置。
  8. 前記低負荷条件は、前記異物洗浄処理を実行する前の冷媒が飽和温度以下である場合に成立する条件を含んでいる請求項7に記載の熱交換装置。
  9. 前記熱交換器は、通電により発熱する電子部品(20)を前記被冷却対象とし、前記電子部品を冷媒との熱交換によって冷却する部品冷却器で構成されている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の熱交換装置。
  10. 前記熱交換器は、過給機(SC)によって内燃機関(EG)に過給される過給吸気(ARc)を前記被冷却対象とし、前記過給吸気を冷媒との熱交換によって冷却するインタークーラ(14A)で構成されている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の熱交換装置。
  11. 前記冷媒は、錆の発生を抑える防錆剤を含む不凍液で構成される請求項1ないし10のいずれか1つに記載の熱交換装置。
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