JP7067215B2 - コバルト電解採取方法 - Google Patents
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Description
本発明は、コバルト電解採取方法に関するものであり、塩化コバルト水溶液から電解処理により電気コバルトを製造するコバルト電解採取方法に関する。
ニッケル、コバルト等を含む金属硫化物からニッケル、コバルト等の金属を回収する湿式製錬方法としては、ニッケル、コバルト、銅、及び硫黄を含む金属硫化物から、金属を浸出させ、得られた浸出液から不純物を除去した後、電解採取により金属を回収する方法が実用化されている。
例えば図1は、MCLEプロセスと称される、ニッケル及びコバルトの湿式製錬プロセスの工程図である。図1に示すように、MCLEプロセスでは、様々な工程を経て得られた塩化コバルト水溶液に基づき、コバルト電解工程にて電解採取することによって電気コバルトが製造される。
具体的に、コバルト電解工程では、正極として例えば不溶性アノードを、負極として例えばステンレスカソードを使用し、負極表面にコバルトを析出させることにより、電気コバルトを生成させている。このとき、正極を構成する不溶性アノードは、アノードボックスに収納され、正極から発生する塩素ガスを回収し、図1中で示す塩素浸出工程に移送されて、繰り返し使用される。
ここで、コバルト電解工程にて使用する電解装置における正極では、上述のように塩素ガスが発生することから、その塩素ガス発生に伴って過電圧が生じ、電流効率を低下させる一因にもなる。しかしながら、この点に関しては、塩素ガス発生による過電圧が低い電極、例えばデノラ・ペルメレック電極社製の塩素発生用電極を使用することにより、電流効率の低下を抑制することができる。なお、電流効率は、以下のように定義される。
電流効率(%)=A/B×100 ・・・[式1]
A:採取した電気コバルトの重量
B:電解採取に使用した電気量から計算される電気コバルトの重量
電流効率(%)=A/B×100 ・・・[式1]
A:採取した電気コバルトの重量
B:電解採取に使用した電気量から計算される電気コバルトの重量
電流効率低下の一因となる過電圧は、上述した塩素ガスによる過電圧のほか、負極における水素ガスの発生に伴う過電圧や、正極において目的金属以外の金属が電極付着物(不良導体物)として付着することによる過電圧等が知られている。そのなかでも、ガス発生に伴う過電圧は、電位-pH図から予測することが可能であるため、電解液のpHを過電圧が発生し難い範囲に調整することが一般的に行われる。
MCLEプロセスでは、上述のとおり、正極に発生した塩素ガスを回収して再利用するようにしているため、塩素発生用電極を使用して塩素ガス発生に伴う過電圧が低い状況で塩素ガスを発生させることは許容される。一方で、水素ガスの発生については、その発生を抑制するためにpH範囲を調整することが指向され、また同様に、電極への付着物について、その付着を抑制するためにpH範囲を調整することが指向される。
なお、以下に、本願明細書における過電圧と電解採取で無駄に使用される電気量Cとの関係についてのモデルを示す。一般的には、例示した過電圧の要因以外にも接触抵抗に伴う過電圧等が知られている。
C=(過電圧1+過電圧2+過電圧3+・・・)×電解槽電流×操業時間
・・・[式2]
過電圧1:塩素ガス発生に伴う過電圧
過電圧2:水素ガス発生に伴う過電圧
過電圧3:電極付着物発生に伴う過電圧
C=(過電圧1+過電圧2+過電圧3+・・・)×電解槽電流×操業時間
・・・[式2]
過電圧1:塩素ガス発生に伴う過電圧
過電圧2:水素ガス発生に伴う過電圧
過電圧3:電極付着物発生に伴う過電圧
さて、MCLEプロセスにおいて、コバルト電解工程に供される塩化コバルト水溶液は、ニッケル電解工程に供される塩化ニッケル水溶液に比べて不純物が多い。このことは、図2に示すように、溶媒抽出工程から得られる塩化コバルト水溶液のほか、溶媒抽出工程から得られる粗塩化ニッケル水溶液に由来する水溶液が含まれ、ニッケル電解工程で不要とされる不純物が合わせて含まれていることによる。
また、MCLEプロセスの原料となるニッケルマットやMS(ニッケルコバルト混合硫化物)に含まれるニッケルとコバルトの比率(Ni/Co比率)は5~10程度であり、ニッケルに比べてコバルトの含有率が低い。そのため、電解処理に用いる電解液中の金属濃度を同程度にしようとすれば、コバルト電解液(塩化コバルト溶液)に含まれる不純物の濃度は高めになる傾向がある。
このことから電解処理では、不純物に起因する目的金属以外の金属が電極(正極)表面に付着物(電極付着物)として発生しやすくなる。そのため、塩素発生用電極を使用することで塩素ガス発生に伴う過電圧を抑制することは可能になるものの、その塩素発生用電極の表面においても目的金属以外の金属による電極付着物(例えば水酸化物)が発生し、過電圧を生じさせて、電流効率を低下させる原因となっている。
ここで、塩素発生用電極は、概略的には、チタン基板表面に白金族酸化物を多孔質状にコーティングして構成されており、このような構造により、塩素ガス発生による過電圧を低下させている。したがって、そのような塩素発生用電極の表面に電極付着物が発生すると、チタン基板表面のコーティングによる効果が低下し、塩素ガス発生による過電圧低下効果が得られなくなる可能性があり、これにより電流効率が低下する。
また、電極付着物は、電極間の電流密度のバラつきを生じさせることが多く、局所的に電流密度が高くなると目的金属が異常成長する原因にもなり、突起状に成長した金属がアノードボックスの隔膜を破損させるという別の問題を発生させることがある。
このため、例えば特許文献1に開示されているような、水酸化物等の電極付着物を除去する方法を行うことが必要となる。特許文献1には、塩素発生用電極の表面の不要な付着物を除去する方法が開示されており、電流効率の低下を抑制する方法として有効であるとも考えられる。しかしながら、電極表面の付着物を完全に除去できるわけではなく、徐々に蓄積されて多孔質のコーティングの孔部分のほとんどが付着物でふさがれると、塩素ガス発生に伴う過電圧を低下させる効果が実質的に無くなる。
そして、塩素発生用電極の表面のコーティングの孔部分がふさがれた状態になった場合には、その塩素発生用電極を新しく更新するか、あるいは白金族酸化物を再度コーティング(以下、「リコーティング」ともいう)して電極再生することが考えられる。
しかしながら、電解採取の実操業では、多数の電解槽が使用され、塩素発生用電極は電解槽1槽あたりに40枚~60枚程度装入されており、操業上及び経済上の要請から、一度に全部の電極を更新あるいはリコーティングすることはできない。
そのため、多数ある塩素発生用電極のうち、使用期間が長くなって寿命に近づいている一部の電極をリコーティングして操業を継続するという態様が一般的となっているが、どの程度の割合で電極をリコーティングすればよいかの知見はなく、コバルト電解処理の実操業における電流効率は90%未満と低いレベルに留まっている。
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、塩化コバルト水溶液から電解処理により電気コバルトを製造するコバルト電解操業において、電流効率の低下を抑えることができ、経済的にも効率的な操業を可能にする方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の第1の発明は、正極と負極からなる電極対が複数設けられた電解槽が10槽以上で構成されている電解処理装置により、塩化コバルト水溶液を電解液として電解処理を施すことによって電気コバルトを採取するコバルト電解採取方法であって、前記電解槽に備えられた正極は、チタン基板表面に白金族酸化物がコーティングされて構成されており、前記電解液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に制御して電解処理を施し、前記電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったとき、該電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%~40%の割合に相当する槽数の電解槽におけるすべての正極の表面を、前記白金族酸化物で再度コーティングする、コバルト電解採取方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%以上36%未満の割合に相当する槽数の電解槽における正極の表面を再度コーティングした場合には、前記電解液のpHが1.0を超え1.1未満の範囲となるように制御する、コバルト電解採取方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1の発明において、前記電解処理装置を構成する電解槽のうちの36%以上40%以下の割合に相当する槽数の電解槽における正極の表面を再度コーティングした場合には、前記電解液のpHが1.2を超え1.3未満の範囲となるように制御する、コバルト電解採取方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記電解液としての塩化コバルト水溶液は、ニッケル及びコバルトを含む硫化物に対して酸化浸出して得られた溶液から銅を除去して溶媒抽出に付し、該溶媒抽出の処理を経て得られた溶液である、コバルト電解採取方法である。
本発明によれば、塩化コバルト水溶液から電解処理により電気コバルトを製造する操業において、電流効率の低下を抑えることができ、経済的にも効率的な操業を可能にする。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
≪1.コバルト電解採取方法の概要≫
本実施の形態に係るコバルト電解採取方法は、例えばMCLEプロセスを経て得られた塩化コバルト溶液を電解液とし、正極と負極との電極対を備えた電解採取装置により電解処理を行うことで、負極にコバルトを析出させて電解コバルトを採取する方法である。
本実施の形態に係るコバルト電解採取方法は、例えばMCLEプロセスを経て得られた塩化コバルト溶液を電解液とし、正極と負極との電極対を備えた電解採取装置により電解処理を行うことで、負極にコバルトを析出させて電解コバルトを採取する方法である。
具体的に、このコバルト電解採取方法にて用いられる電解採取装置は、正極と負極とからなる電極対が複数設けられた電解槽が10槽以上で構成されている装置である。一例としては、30~50槽の電解槽で構成されており、電解槽1槽あたりに正極と負極とからなる電極対が50~60対設けられている電解採取装置が想定される。
ここで、電解採取装置において、電解槽に備えられている正極は、不溶性電極であって、チタン基板表面に白金族酸化物がコーティング(白金族酸化物の活性被覆が形成)されて構成されている。また、負極は、例えばステンレス等により構成されている。
そして、このコバルト電解採取方法では、電解採取装置に収容させた電解液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に制御して電解処理を施す。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったとき、その電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%~40%の割合に相当する槽数の電解槽におけるすべての正極の表面を、白金族酸化物で再度コーティングすることを特徴としている。
なお、電流効率は、電解採取に使用した電気量から計算される電気コバルトの重量(B)に対する、採取した電気コバルトの重量(A)の百分率により定義される(電流効率(%)=A/B×100)。
このようなコバルト電解採取方法によれば、電流効率の低下を有効に抑えることができ、電解処理装置に設けられたすべての電解槽におけるすべての正極の表面を白金族酸化物で再度コーティングすることを要せず、経済的にも効率的な操業を行うことが可能となる。また、すべての正極の再コーティングを行わないため、電解処理の停止時間を最低限に抑えることができ、操業効率の低下を抑えることもできる。
≪2.塩化コバルト水溶液からの電気コバルトの製造プロセス≫
本実施の形態に係るコバルト電解採取方法の詳細な説明に先立ち、電解液として用いる塩化コバルト水溶液の精製プロセスを含めた電気コバルトの製造プロセスについて概要を説明する。
本実施の形態に係るコバルト電解採取方法の詳細な説明に先立ち、電解液として用いる塩化コバルト水溶液の精製プロセスを含めた電気コバルトの製造プロセスについて概要を説明する。
図1は、ニッケル及びコバルトの硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物(MS:ミックスサルファイド))を原料として塩素ガスにより酸化浸出して得られた塩素浸出液から、電気ニッケル、電気コバルトを製造するプロセス(以下、「MCLEプロセス」ともいう)の流れを示す工程図である。
MCLEプロセスは、銅を含有するニッケルコバルト混合硫化物を原料としてニッケルやコバルト、銅の金属成分を塩素浸出して塩素浸出液を生成する塩素浸出工程S1と、得られた塩素浸出液に含まれる銅を固定化し除去するセメンテーション工程S2と、セメンテーション終液から不純物である鉄を除去する脱鉄工程S3と、脱鉄後液を溶媒抽出に付して塩化ニッケル水溶液と塩化コバルト水溶液とを得る溶媒抽出工程S4を有する。そして、得られた塩化ニッケル水溶液を電解液として電解採取を行うニッケル電解工程S5と、得られた塩化コバルト水溶液を電解液として電解採取を行うコバルト電解工程S6と、を有しており、コバルト電解工程S6を経て電気コバルトが製造される。
[塩素浸出工程]
塩素浸出工程S1では、銅を含有するニッケルコバルト混合硫化物を原料として塩素を用いた浸出処理(酸化浸出処理)を施し、その硫化物に含まれるニッケル、コバルト、及び銅の金属成分を浸出する。ここで、ニッケルコバルト混合硫化物としては、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理により製造される硫化物を用いることができる。
塩素浸出工程S1では、銅を含有するニッケルコバルト混合硫化物を原料として塩素を用いた浸出処理(酸化浸出処理)を施し、その硫化物に含まれるニッケル、コバルト、及び銅の金属成分を浸出する。ここで、ニッケルコバルト混合硫化物としては、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬処理により製造される硫化物を用いることができる。
具体的には、浸出処理対象である、銅を含有するニッケルコバルト混合硫化物は、後述するセメンテーション工程S2を経て得られるセメンテーション残渣である。塩素浸出工程S1では、ニッケルコバルト混合硫化物により構成されるセメンテーション残渣と共に、ニッケル電解工程S5やコバルト電解工程S6にて回収される塩素ガスによって塩素浸出処理を行う。そして、この塩素浸出処理により、ニッケルコバルト混合硫化物中のニッケル、コバルト、銅を浸出して、塩素浸出液を生成する。
なお、セメンテーション残渣は、レパルプされてスラリー化したものが用いられる。レパルプ液としては、特に限定されず、例えばニッケル電解工程S5やコバルト電解工程S6にて得られる塩化ニッケル溶液等を好適に用いることができる。
この塩素浸出処理では、ニッケルコバルト混合硫化物中に含まれる硫化ニッケル及び硫化銅等の金属成分が、塩素ガスにより酸化された2価銅イオンによって酸化浸出され、塩素浸出液が生成する。一方で、硫黄を主成分とした塩素浸出残渣は固相に残存する。得られた塩素浸出液11は、後述するセメンテーション工程S2に送液されて銅が固定除去された後、電気ニッケルや電気コバルトを製造するための電解液となる。一方で、塩素浸出残渣は、硫黄を回収するための原料、あるいは後述するセメンテーション工程にて銅イオンを固定するための硫黄源となる。
[セメンテーション工程]
セメンテーション工程S2では、塩素浸出工程S1にて得られた塩素浸出液が送液され、その塩素浸出液に含まれている銅を固定化して除去する。具体的には、塩素浸出液に対して、所定の粒径に粉砕されてスラリー状となったニッケルマット(粉砕工程S21後のマットスラリー)を添加し、塩素浸出液中の銅イオンを還元して硫化銅(Cu2S)の形態として固定化する。このセメンテーション処理により、銅イオンが固定化されて生じた硫化銅がセメンテーション残渣として分離除去され、銅を除去した後の溶液がセメンテーション終液として、次の脱鉄工程S3へ送液される。
セメンテーション工程S2では、塩素浸出工程S1にて得られた塩素浸出液が送液され、その塩素浸出液に含まれている銅を固定化して除去する。具体的には、塩素浸出液に対して、所定の粒径に粉砕されてスラリー状となったニッケルマット(粉砕工程S21後のマットスラリー)を添加し、塩素浸出液中の銅イオンを還元して硫化銅(Cu2S)の形態として固定化する。このセメンテーション処理により、銅イオンが固定化されて生じた硫化銅がセメンテーション残渣として分離除去され、銅を除去した後の溶液がセメンテーション終液として、次の脱鉄工程S3へ送液される。
図示しないが、セメンテーション工程S2としては、塩素浸出液にニッケルコバルト混合硫化物を添加して、主として2価の銅イオンを1価の銅イオンに還元する第1のセメンテーション工程と、第1のセメンテーション工程を経て得られた塩素浸出液にニッケルマットを添加して、主として1価銅イオンを硫化物として固定化する第2のセメンテーション工程と、を有する処理工程としてもよい。このような方法によれば、銅イオンの還元に用いるニッケルマットの組成が変化した場合でも、有効に塩素浸出液中の銅を固定化し、系内を循環させることができる。
[脱鉄工程]
脱鉄工程S3では、セメンテーション工程S2を経て得られたセメンテーション終液が送液され、そのセメンテーション終液に含まれる不純物の鉄を分離除去する。具体的には、セメンテーション終液に対して、塩素ガスや酸素、空気等の酸化剤を添加するとともにアルカリ溶液を添加することによって中和処理(酸化中和処理)を施し、溶液中に含まれる鉄を水酸化鉄の沈殿物として固定化し、分離除去する。
脱鉄工程S3では、セメンテーション工程S2を経て得られたセメンテーション終液が送液され、そのセメンテーション終液に含まれる不純物の鉄を分離除去する。具体的には、セメンテーション終液に対して、塩素ガスや酸素、空気等の酸化剤を添加するとともにアルカリ溶液を添加することによって中和処理(酸化中和処理)を施し、溶液中に含まれる鉄を水酸化鉄の沈殿物として固定化し、分離除去する。
[溶媒抽出工程]
溶媒抽出工程S4では、脱鉄工程S3を経て得られた脱鉄後液を溶媒抽出処理に付す。具体的には、脱鉄後液に、例えばアミン系抽出剤であるトリ-ノルマル-オクチルアミン(TNOA)や酸性リン酸エステル系抽出剤であるジ-(2-エチルヘキシル)ホスホン酸(D2EHPA)等の抽出剤を混合、接触させることによって、脱鉄後液に含まれるコバルトや不純物としての銅、亜鉛、鉄等を有機相に移行させ、これらの成分が除去されたニッケルを含む抽出残液(水相)を得る。
溶媒抽出工程S4では、脱鉄工程S3を経て得られた脱鉄後液を溶媒抽出処理に付す。具体的には、脱鉄後液に、例えばアミン系抽出剤であるトリ-ノルマル-オクチルアミン(TNOA)や酸性リン酸エステル系抽出剤であるジ-(2-エチルヘキシル)ホスホン酸(D2EHPA)等の抽出剤を混合、接触させることによって、脱鉄後液に含まれるコバルトや不純物としての銅、亜鉛、鉄等を有機相に移行させ、これらの成分が除去されたニッケルを含む抽出残液(水相)を得る。
このような溶媒抽出処理を経て、有機相に移行したコバルト等は塩酸溶液等の逆抽出剤により逆抽出することによって、塩化コバルト水溶液として回収することができる。一方で、抽出残液は、ニッケルが含まれている塩化ニッケル水溶液であり、次工程のニッケル電解工程S5に用いる電解液として回収することができる。
[ニッケル電解工程]
ニッケル電解工程S5では、溶媒抽出工程S4を経て得られた塩化ニッケル水溶液を電解液として用い、正極と負極とを備えた電解槽により構成される電解処理装置にて電解処理が行われる。この電解処理により、負極側において、塩化ニッケル水溶液中のニッケルイオンがメタル(電気ニッケル)として析出する。また、正極側では、塩化ニッケル水溶液中の塩素イオンが塩素ガスとなり発生する。なお、発生した塩素ガスは、回収塩素ガスとして塩素浸出工程S1等で用いられる。
ニッケル電解工程S5では、溶媒抽出工程S4を経て得られた塩化ニッケル水溶液を電解液として用い、正極と負極とを備えた電解槽により構成される電解処理装置にて電解処理が行われる。この電解処理により、負極側において、塩化ニッケル水溶液中のニッケルイオンがメタル(電気ニッケル)として析出する。また、正極側では、塩化ニッケル水溶液中の塩素イオンが塩素ガスとなり発生する。なお、発生した塩素ガスは、回収塩素ガスとして塩素浸出工程S1等で用いられる。
[コバルト電解工程]
コバルト電解工程S6では、溶媒抽出工程S4を経て得られた塩化コバルト水溶液を電解液として用い、正極と負極とを備えた電解槽により構成される電解処理装置にて電解処理が行われる。この電解処理により、以下の反応式に示すように、負極側において、塩化コバルト水溶液中のコバルトイオンがメタル(電気コバルト)として析出する。また、正極側では、塩化コバルト水溶液中の塩素イオンが塩素ガスとなり発生する。なお、発生した塩素ガスは、回収塩素ガスとして塩素浸出工程S1等で用いられる。
(負極側)Co2++2e-→Co0
(正極側)2Cl-→Cl2+2e-
コバルト電解工程S6では、溶媒抽出工程S4を経て得られた塩化コバルト水溶液を電解液として用い、正極と負極とを備えた電解槽により構成される電解処理装置にて電解処理が行われる。この電解処理により、以下の反応式に示すように、負極側において、塩化コバルト水溶液中のコバルトイオンがメタル(電気コバルト)として析出する。また、正極側では、塩化コバルト水溶液中の塩素イオンが塩素ガスとなり発生する。なお、発生した塩素ガスは、回収塩素ガスとして塩素浸出工程S1等で用いられる。
(負極側)Co2++2e-→Co0
(正極側)2Cl-→Cl2+2e-
≪3.コバルト電解工程におけるコバルト電解採取≫
ここで、コバルト電解工程S6における電解採取についてより詳しく説明する。
ここで、コバルト電解工程S6における電解採取についてより詳しく説明する。
(電解処理装置)
コバルト電解工程S6における電解採取は、電解槽から構成される電解処理装置により行われる。具体的に、電解処理装置は、正極と負極とで対をなした電極対が複数設けられた電解槽が10槽以上で構成されている。言い換えると、電解槽1槽あたりに、複数の正極と負極とが設けられており、そのような電解槽が10槽以上並列して設けられて電解処理装置を構成している。
コバルト電解工程S6における電解採取は、電解槽から構成される電解処理装置により行われる。具体的に、電解処理装置は、正極と負極とで対をなした電極対が複数設けられた電解槽が10槽以上で構成されている。言い換えると、電解槽1槽あたりに、複数の正極と負極とが設けられており、そのような電解槽が10槽以上並列して設けられて電解処理装置を構成している。
電解処理装置においては、装置を構成するすべての電解槽に、同じ電解液(塩化コバルト水溶液)が供給され、すべての電解槽にて同じ処理条件で電解処理が行われる。したがって、1つの電解処理装置(全体)において印加電圧等の処理条件が制御され、また、電解処理における電流効率とは電解処理装置全体における電流効率をいう。
電解処理装置において、電解槽の数(槽数)は上述のように10槽以上からなり、好ましくは20槽以上であり、より好ましくは30槽以上である。
また、電解槽1槽あたりの電極対の数としては、好ましくは30対以上であり、より好ましくは40対以上である。
ここで、電解槽内に設けられる正極は、不溶性電極であり、チタン基板表面に白金族酸化物がコーティング(白金族酸化物の活性被覆が形成)されて構成されている。具体的に、この正極としては、デノラ・ペルメレック電極社製の不溶性電極であるDSE(登録商標)塩素発生用電極を好適に用いることができる。
また、電解槽内に設けられる負極は、例えば、ステンレス等により構成されている。
(電解処理条件)
本実施の形態に係るコバルト電解採取方法では、電解処理装置において、電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に制御して電解処理を施すことを特徴としている。
本実施の形態に係るコバルト電解採取方法では、電解処理装置において、電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に制御して電解処理を施すことを特徴としている。
上述したように、電解処理においては、正極において塩素ガスが発生する一方で、負極側では電極表面にコバルトが析出するとともに、水素ガスが発生する。電流効率低下の一因となる過電圧は、負極での水素ガス発生に伴うものや、正極における目的金属であるコバルト以外の金属成分の付着(電極付着物)によるものもある。
このとき、電解液のpHを調整することが重要であり、電解液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に調整し維持して電解処理を施すことによって、負極における水素ガス発生や正極におけるコバルト以外の金属成分の電極付着物の発生を抑制することができ、これらに起因する過電圧を効果的に抑制することができる。
電解液のpH調整に関して、pHが1.0以下であると、水素ガスの発生が進行して過電圧が生じ、電流効率が低下する可能性がある。一方で、電解液のpHが1.5以上であると、正極においてコバルト以外の金属成分による電極付着物の発生が増える。
電解液である塩化コバルト水溶液のpH調整方法としては、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリからなるpH調整剤を用いて行うことができる。例えば、pHを上昇させる場合には、例えば水酸化ナトリウム水溶液等が添加され、一方でpHを下げる場合には、例えば塩酸等が添加される。また、電解槽に電解液を調整するにあたって、電解槽の前段にpH調整槽を設けて、そのpH調整槽にてpH調整剤を用いて調整するようにしてもよい。なお、電解液のpHを制御するにあたっては、電解槽から排出される電解液の経路にpH計を設けてpHを監視し、例えばその測定結果を電解槽やpH調整槽にフィードバックするようにすることができる。
電解採取においては、電解液中に溶解している目的金属であるコバルトを陰極側に電析させるが、電解処理が進むにつれて電解液中の目的金属の濃度が低下することになるため、電解槽には新しい電解液が補充され、補充された新しい電解液と同量の電解液(目的金属の濃度が低下した(古くなった)電解液)が電解槽から排出される。新しい電解液としては、上述した脱鉄工程S3や溶媒抽出工程S4等のコバルトの浄液処理を行う工程から得られる、pHがおよそ2.0程度の塩化コバルト水溶液の純液をpH調整したものが供給されることになる。そのため、例えば電解槽の前段に設けたpH調整槽にて、浄液処理を経て得られた塩化コバルト溶液を滞留させ、そこでpHを調整した後に、電解液として電解槽に供給することが好ましい。
(リコーティング)
ここで、上述したようにこの電解採取方法では、正極として、チタン基板表面に白金族酸化物がコーティングされてなる不溶性電極を用いている。白金族酸化物としては、例えば、ルテニウム酸化物やパラジウム酸化物、白金酸化物等である。このような不溶性電極を用いることで、塩素ガス発生時における過電圧を抑制することができる。
ここで、上述したようにこの電解採取方法では、正極として、チタン基板表面に白金族酸化物がコーティングされてなる不溶性電極を用いている。白金族酸化物としては、例えば、ルテニウム酸化物やパラジウム酸化物、白金酸化物等である。このような不溶性電極を用いることで、塩素ガス発生時における過電圧を抑制することができる。
ところが、不溶性電極においては、使用による経時的な劣化が生じ、また電解液中の不純物成分に基づいて目的とするコバルト以外の金属成分が不良導体物(電極付着物)として電極に付着する。このように正極の表面に電極付着物が発生すると、表面に被覆した白金族酸化物による機能が低下し、塩素ガス発生時における過電圧を抑制することができなくなる。
電極付着物によって過電圧抑制効果が低下した正極においては、チタン基板表面に白金族酸化物を再度コーティングすることによって、その機能を回復させることが可能となる。なお、正極において、チタン基板表面に白金族酸化物を再度コーティングすることを「リコーティング」ともいう。
しかしながら、複数の電極対を設けた電解槽を10槽以上備えた電解処理装置において、すべての正極に対してリコーティングの作業を実行することは、コーティングコストや時間がかかるとともに、電解処理の操業を一旦停止させることが必要となり、処理操業の効率を著しく低下させることになる。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、10槽以上の電解槽を備えた電解処理装置において、電解処理装置を構成するすべての電解槽のうちのリコーティングを実行する電解槽の「槽数」と、電解処理装置全体における「電流効率」とに相関があることを見出した。
そこで、本実施の形態に係るコバルト電解採取方法では、電解液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に制御して電解処理を施すとともに、電解処理装置の全体の電流効率が90%未満となったときに、その電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%~40%の割合に相当する槽数の電解槽におけるすべての正極に対してリコーティングを実行する。なお、電解処理装置を構成するすべての電解槽のうちのリコーティングを実行する電解槽の槽数の割合を「リコーティング率」という。
このような方法によれば、電流効率の低下を有効に抑えることができ、電解処理装置に設けられたすべての電解槽におけるすべての正極の表面を白金族酸化物でリコーティングすることを要せず、経済的にも効率的な操業を行うことが可能となる。また、すべての正極のリコーティングを行わないため、電解処理の停止時間を最低限に抑えることができ、操業効率の低下を抑えることもできる。
電解処理装置の電流効率が90%未満となったときのリコーティング率に関し、リコーティング率が10%未満であると、電解処理装置全体としてリコーティングにより再生した正極の数が不十分であり、塩素ガス発生による過電圧の抑制効果が十分に回復しない。その結果、電流効率の低下を効果的に抑制することができなくなる。一方で、リコーティング率が40%を超えると、リコーティングに要するコストが高まる不経済になるとともに、電解処理の停止時間が相対的に長くなり、操業効率を低下させる可能性がある。
リコーティングを実行する対象電極の選定については、新しい電極への更新履歴やリコーティング履歴を管理し、さらに表面状態を観察することにより、その電極の寿命を判断し、例えば1か月程度に亘って更新しておらず、またリコーティングを実行していない電極を、優先的にリコーティング対象に選定するようにすることができる。
ここで、本発明者による更なる検討の結果、電解処理装置におけるリコーティング率と、電解液のpH調整との間に特定の関係があることが見出された。
具体的には、電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%以上36%未満の割合に相当する槽数の電解槽における正極の表面を再度コーティングした場合、つまり、リコーティング率を10%以上36%未満とした場合には、電解液のpHが1.0を超えて1.1未満の範囲(1.0<pH<1.1)となるように制御することが好ましいことを見出した。このように、リコーティング率を10%以上36%未満としたときには電解液のpHが1.0を超えて1.1未満となるように制御することで、より効果的に電解効率の低下を抑制することができるとともに、また、電解効率を向上させることができる。
また、電解処理装置を構成する電解槽のうちの36%以上の割合に相当する槽数の電解槽における正極の表面を再度コーティングした場合、つまり、リコーティング率を36%以上(40%以下)とした場合には、電解液のpHが1.2を超えて1.3未満の範囲(1.2<pH<1.3)となるように制御することが好ましいことを見出した。このように、リコーティング率を36%以上40%以下としたときには電解液のpHが1.2を超えて1.3未満となるように制御することで、より効果的に電解効率の低下を抑制することができるとともに、また、電解効率を向上させることができる。
なお、リコーティング率を36%以上とした場合には、負極における水素ガス発生のpH範囲や正極における電極付着物発生のpH範囲が上方にシフトすると推定される。したがって、このようにリコーティング率に合わせてより適切な範囲に電解液のpHを制御することで、水素ガス発生に基づく電流効率が低下や電極付着物に基づく電流効率の低下を、より効率的にかつ効果的に抑制することができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
MCLEプロセスのコバルト電解工程において、35槽の電解槽を備えた電解処理装置を用いてコバルトの電解採取を行った。なお、電解槽1槽あたりには、正極として不溶性電極(DSE(登録商標)塩素発生用電極,デノラ・ペルメレック電極社製)を50枚設置した。したがって、正極と負極とからなる電極対は50対となる。
[実施例1]
実施例1では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.1未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの11%の割合に相当する4槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を11%とした。なお、リコーティング率からの槽数の算出では、小数点以下1位を四捨五入して自然数とした(以下も同様)。
実施例1では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.1未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの11%の割合に相当する4槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を11%とした。なお、リコーティング率からの槽数の算出では、小数点以下1位を四捨五入して自然数とした(以下も同様)。
なお、電流効率は、電解採取に使用した電気量から計算される電気コバルトの重量(B)に対する、採取した電気コバルトの重量(A)の百分率により定義される(電流効率(%)=A/B×100)。
このような操業の結果、電流効率の低下を抑制することができた。具体的に、電解処理装置の電流効率を約91%として処理することができた。
[実施例2]
実施例2では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.2を超え1.3未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの11%の割合に相当する4槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を11%とした。
実施例2では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.2を超え1.3未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの11%の割合に相当する4槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を11%とした。
このような操業の結果、電流効率の低下を抑制することができた。具体的に、電解処理装置の電流効率を約90%として処理することができた。
なお、実施例1と実施例2の結果とを比べると、実施例1では、リコーティング率を同じ条件としながらも電流効率を向上させることができた。このことは、リコーティン率を11%としたことに合わせ、電解液のpHを、1.0を超え1.1未満の条件に制御したことによると考えられ、負極における水素ガスの発生や正極における電極付着物の発生による過電圧をより効果的に抑制することができたと推測される。
[実施例3]
実施例3では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.1未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの36%の割合に相当する13槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を36%とした。
実施例3では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.1未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの36%の割合に相当する13槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を36%とした。
このような操業の結果、電流効率の低下を抑制することができた。具体的に、電解処理装置の電流効率を約91%として処理することができた。
[実施例4]
実施例4では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.2を超え1.3未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの36%の割合に相当する13槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を36%とした。
実施例4では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.2を超え1.3未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの36%の割合に相当する13槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を36%とした。
このような操業の結果、電流効率の低下を抑制することができた。具体的に、電解処理装置の電流効率を約93%として処理することができた。
なお、実施例3と実施例4の結果とを比べると、実施例4では、リコーティング率を同じ条件としながらも電流効率を向上させることができた。このことは、リコーティン率を36%以上としたことに合わせ、電解液のpHを、1.2を超え1.3未満の条件に制御したことによると考えられ、負極における水素ガスの発生や正極における電極付着物の発生による過電圧をより効果的に抑制することができたと推測される。
[比較例1]
比較例1では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.1未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの7%の割合に相当する2槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を7%とした。
比較例1では、電解処理装置に供給される電解液である塩化コバルト水溶液のpHを、1.0を超え1.1未満の範囲に制御し維持させて操業した。また、電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったときに、電解処理装置を構成する35槽の電解槽のうちの7%の割合に相当する2槽の電解槽におけるすべての正極に対して、リコーティングを実行した。すなわち、リコーティング率を7%とした。
しかしながら、電流効率の低下を抑制することができず、電解処理装置の電流効率は約88%となってしまった。
下記表1に、実施例1~実施例4、比較例1の処理条件と電流効率の結果を示す。改めて表1に示されるように、実施例1~実施例4の処理条件にてリコーティングを行うことで、操業効率の低下を効果的に抑制することができることが分かった。
Claims (4)
- 正極と負極からなる電極対が複数設けられた電解槽が10槽以上で構成されている電解処理装置により、塩化コバルト水溶液を電解液として電解処理を施すことによって電気コバルトを採取するコバルト電解採取方法であって、
前記電解槽に備えられた正極は、チタン基板表面に白金族酸化物がコーティングされて構成されており、
前記電解液のpHを、1.0を超え1.5未満の範囲に制御して電解処理を施し、
前記電解処理装置の全体における電流効率が90%未満となったとき、該電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%~40%の割合に相当する槽数の電解槽におけるすべての正極の表面を、前記白金族酸化物で再度コーティングする
コバルト電解採取方法。 - 前記電解処理装置を構成する電解槽のうちの10%以上36%未満の割合に相当する槽数の電解槽における正極の表面を再度コーティングした場合には、
前記電解液のpHが1.0を超え1.1未満の範囲となるように制御する
請求項1に記載のコバルト電解採取方法。 - 前記電解処理装置を構成する電解槽のうちの36%以上40%以下の割合に相当する槽数の電解槽における正極の表面を再度コーティングした場合には、
前記電解液のpHが1.2を超え1.3未満の範囲となるように制御する
請求項1に記載のコバルト電解採取方法。 - 前記電解液としての塩化コバルト水溶液は、ニッケル及びコバルトを含む硫化物に対して酸化浸出して得られた溶液から銅を除去して溶媒抽出に付し、該溶媒抽出の処理を経て得られた溶液である
請求項1乃至3のいずれかに記載のコバルト電解採取方法。
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